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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光線偏向器を有する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240305BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240305BHJP
   G03B 19/02 20210101ALI20240305BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20240305BHJP
   G02B 7/18 20210101ALI20240305BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240305BHJP
   G03B 17/17 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B5/00 J
G03B19/02
G02B5/04 A
G02B7/18 100
G02B7/00 B
G02B7/00 D
G03B17/17
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021516489
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2019077608
(87)【国際公開番号】W WO2020074711
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】18200220.4
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18215168.8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511009547
【氏名又は名称】ポライト アーエスアー
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】カルタショフ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】クレイン、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】タラロン、ニコラ
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504554(JP,A)
【文献】米国特許第03565514(US,A)
【文献】特開2012-133026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0154939(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104880746(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 5/00-5/08
G03B 19/02
G02B 7/18
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-少なくとも第1、第2、および第3の側面(111から113)を有し、第1および第2の側面の間の角度が180°未満であり、第3の側面が第1および第2の側面と非平行である透明光学素子(101)と、
-前記第1の側面を透過した光線(121)を偏向するように配置された光学反射面(102a、102b、102c)と、
-第1の表面(131)と反対側の第2の表面(132)を含む、透明で変形可能な非流動体(130)であって、前記光学反射面(102a、102b、102c)、前記非流動体の前記第1の表面(131)、および前記透明光学素子(101)の前記第1および第2の側面(111、112)が、1以上の相互接続された光学的に透明な部品を介して接続されており、接続部全体の屈折率が空気の屈折率よりも大きい非流動体(130)と、
-1以上のアクチュエータ(185)と、前記1以上のアクチュエータによる屈曲および/または変位を受けるように配置されたアクチュエータ構成要素(181、182)とを含み、前記アクチュエータ構成要素の側面が、前記非流動体の前記第2の表面(132)に当接するアクチュエータシステム(180)と、
を備え、
-前記1以上の相互接続された光学的に透明な部品は、前記非流動体(130)および前記透明な光学素子(101)を備え、前記非流動体(130)は、前記透明光学素子(101)および/またはアクチュエータ構成要素(181、182)と同じ屈折率を有し、
-前記透明光学素子の前記第3の側面(113)前記光学反射面(102a)を備え、あるいは、
-前記アクチュエータ構成要素(181)、A)前記透明光学素子(101)に面する前記アクチュエータ構成要素の表面に反射面(102b)として配置されているか、または、B)前記非流動体の前記第1の表面(131)が前記透明光学素子の前記第3の側面(113)に接している前記アクチュエータ構成要素の反対側の表面に反射面(102c)として配置されている、前記光学反射面を備え、
-前記光学反射面(102a、102b、102c)は、前記第1の側面(111)を透過した前記光線(121)を前記第2の側面(112)に向けて偏向するように配置され、
前記アクチュエータ構成要素(181)は透明カバー部材(182)であり、
複数の前記アクチュエータが、前記透明カバー部材(182)での屈折が、調整可能な角度での前記光線の偏向を可能にするように、円周に沿って異なる変位振幅および/または方向で前記透明カバー部材を変位させるよう配置されている、
光学アセンブリ(100)。
【請求項2】
前記1以上の相互接続された光学的に透明な部品は、同じ屈折率を有する、
請求項1に記載の光学アセンブリ(100)。
【請求項3】
-前記第1の表面(131)および前記反対側の第2の表面(132)を備える前記透明で変形可能な非流動体(130)は、前記非流動体の前記第1の表面が前記第1の側面、前記第2の側面および前記第3の側面のうちの1つに当接するように配置される、
請求項1又は2に記載の光学アセンブリ(100)。
【請求項4】
前記非流動体の前記第1の表面(131)は、前記透明光学素子の前記第1の側面または前記第2の側面(111、112)に当接し
複数のアクチュエータは、前記非流動体および前記透明カバー部材が光パワーを調整可能なレンズを形成させるように、前記透明カバー部材を屈曲させるよう配置される、
請求項に記載の光学アセンブリ。
【請求項5】
前記アクチュエータ構成要素(181)は、前記光学反射面(102a、102b)を備え、
前記非流動体の前記第1の表面(131)は、前記透明光学素子の前記第3の側面(113)に当接し、
前記複数のアクチュエータは、前記アクチュエータ構成要素を円周に沿って変位させるように配置される、
請求項1からのいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項6】
-2つ以上の非流動体(130)であって、前記非流動体のそれぞれの第1の表面(131)が、前記第1側面、前記第2側面および前記第3の側面(111から113)のそれぞれに当接する、2つ以上の非流動体(130)と、
-それぞれの前記非流動体に設けられた、2つ以上のアクチュエータシステム(180)と、
を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項7】
前記非流動体のうちの1つが、前記第1の側面または前記第2の側面(111、112)と前記アクチュエータシステムのうちの1つに含まれる透明カバー部材(182)との間に挟まれ、
前記非流動体のうちの別のものが、前記第3の側面(113)と前記アクチュエータシステムのうちの別のものに含まれる前記アクチュエータ構成要素(181)との間に挟まれている、
請求項に記載の光学アセンブリ。
【請求項8】
前記アクチュエータシステムは、1以上のアクチュエータを備え、
各アクチュエータは、磁気モータ、リニアモータ、ステッピングモータ、薄い圧電フィルムアクチュエータ、容量性アクチュエータ、またはバルク圧電アクチュエータであり、または
1以上のアクチュエータシステムの前記アクチュエータは、磁気モータ、リニアモータ、ステッピングモータ、薄い圧電フィルムアクチュエータ、容量性アクチュエータ、またはバルク圧電アクチュエータのいずれかの組み合わせである、
請求項1からのいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項9】
前記アクチュエータシステムは、リング状のアクチュエータを備え、
前記アクチュエータ構成要素は、前記リング状のアクチュエータの作動によって曲げられるように配置され、
前記リング状のアクチュエータは、前記リング状のアクチュエータの内側部分を通して前記光線の透過を可能にする、
請求項1からのいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項10】
前記光学アセンブリ(100)の厚さ(T)は、7.5mm未満である、
請求項1からのいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項11】
前記透明光学素子(101)は、モノリシックである、
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項12】
前記透明光学素子(101)は、プリズムである、
請求項1から11のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項13】
前記第3の側面(113)は、前記光学反射面(102a、102b、102c)と平行である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項14】
前記光学反射面(102a、102b、102c)は、部分反射を提供する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の光学アセンブリ(100)を備える、
カメラモジュール(210)。
【請求項16】
前記カメラモジュールのカバーガラスは、前記透明光学素子(101)を備える、
請求項15に記載のカメラモジュール。
【請求項17】
前記カメラモジュールは、光学手振れ補正および/または画像フォーカスを行うように、前記アクチュエータシステム(180)を制御するプロセッサを備える、
請求項15又は16に記載のカメラモジュール。
【請求項18】
イメージセンサ(201)を備え、
前記イメージセンサは、前記透明光学素子(101)の前記第2の側面(112)を透過する前記光線(121)を受け取るように配置される、
請求項15から17のいずれか一項に記載のカメラモジュール。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に記載の光学アセンブリを製造する方法であって、
-少なくとも第1、第2、および第3の側面(111から113)を有し、第1および第2の側面の間の角度が180°未満であり、第3の側面が第1および第2の側面と非平行である透明光学素子(101)を提供することと、
-前記第1の側面を透過した光線(121)を偏向するように配置された光学反射面(102a、102b、102c)を提供することと、
-第1の表面(131)と反対側の第2の表面(132)を含む、透明で変形可能な非流動体(130)であって、前記光学反射面(102a、102b、102c)、前記非流動体の前記第1の表面(131)、および前記透明光学素子(101)の前記第1および第2の側面(111、112)が、1以上の相互接続された光学的に透明な部品を介して接続されており、接続部全体の屈折率が空気の屈折率よりも大きい非流動体(130)を提供することと、
複数のアクチュエータ(185)と、前記複数のアクチュエータによる屈曲および/または変位を受けるように配置されたアクチュエータ構成要素(181、182)とを含み、前記アクチュエータ構成要素の側面が、前記非流動体の前記第2の表面(132)に当接し、複数の前記アクチュエータは屈折が調整可能な角度での前記透明カバー部材(182)での前記光線の偏向を可能にするように円周に沿って異なる変位振幅および/または方向で前記透明カバー部材を変位させるよう配置されている、アクチュエータシステム(180)を提供することと、
を備え、
-前記1以上の相互接続された光学的に透明な部品は、前記非流動体(130)および前記透明な光学素子(101)を備え、前記非流動体(130)は、前記透明光学素子(101)および/またはアクチュエータ構成要素(181、182)と同じ屈折率を有し、
-前記透明光学素子の前記第3の側面(113)は、前記光学反射面(102a)を備え、あるいは、
-前記アクチュエータ構成要素(181)は、A)前記透明光学素子(101)に面する前記アクチュエータ構成要素の表面に反射面(102b)として配置されているか、または、B)前記非流動体の前記第1の表面(131)が前記透明光学素子の前記第3の側面(113)に接している前記アクチュエータ構成要素の反対側の表面に反射面(102c)として配置されている、前記光学反射面を備え、
-前記光学反射面(102a、102b、102c)は、前記第1の側面(111)を透過した前記光線(121)を前記第2の側面(112)に向けて偏向するように配置される、
光学アセンブリを製造する方法。
【請求項20】
請求項15から18のいずれか一項に記載のカメラモジュール(210)を備える電子デバイス(200)であって、
前記デバイスは、
f.電話機能を有するデバイス、
g.時計、
h.タブレット、
i.ラップトップ、
j.カメラ、
のいずれか1つである、
電子デバイス(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学システム、特にコンパクトカメラやスマートフォンなどのデバイスのための光学撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカスおよび手ぶれ補正は、ほとんどのコンパクトカメラで一般的な機能であり、これらの機能を実現するシステムを小型化・低価格化・堅牢化しながら、同時に光学品質を高めることが求められている。
【0003】
オートフォーカスや手ぶれ補正、またはその両方を光学アセンブリに組み込む場合、アセンブリのサイズを犠牲にして、撮像特性を向上させ得る素子を含める必要がある。
【0004】
撮像特性の向上、および/またはサイズの増加の制限、さらには光学アセンブリのサイズや特定の寸法の縮小を実現するためには、アセンブリの設計を改善する必要がある。また、光学アセンブリの堅牢性を向上させる必要もある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、光学撮像システム、特にコンパクトカメラ用の撮像システムに使用される光学アセンブリを改良することである。改良は、撮像品質、手ぶれ補正、小型化、およびその他の光学的特性の1以上に関するものであってもよい。
【0006】
本発明の第1の態様では、
-少なくとも第1および第2の側面を有する透明光学素子と、
-第1の側面を透過する光線を偏向するように配置された光学反射面と、
-第1の表面と反対側の第2の表面を含む、透明で変形可能な非流動体であって、光学反射面、非流動体の第1の表面、および透明光学素子の第1および第2の側面が、1以上の相互接続された光学的に透明な素子を介して接続されており、接続部全体の屈折率が空気の屈折率よりも大きい非流動体と、
-1以上のアクチュエータと、1以上のアクチュエータによる屈曲および/または変位を受けるように配置されたアクチュエータ構成要素とを含み、アクチュエータ構成要素の側面が非流動体の第2表面に当接する、アクチュエータシステムと、
を備える、光学アセンブリが提供される。
【0007】
アクチュエータ構成要素の屈曲および/または変位が可能な状態とは、アクチュエータの作動によって非流動体の第2の表面の形状、向き(例えば、傾き)および/または位置を変化させることができるという効果がある。すなわち、アクチュエータ構成要素の屈曲は、非流動体の第2の表面の形状に影響を与え、アクチュエータ構成要素の変位は、非流動体の第2の表面の向きおよび/または位置に影響を与える。向きとは、第1の表面に対する第2の表面の角度を意味し、位置とは、第1の表面に垂直な方向における、第2の表面上の点から第1の表面までの距離を意味する。アクチュエータ構成要素は、非流動体の第2の表面の少なくとも中央部分、すなわち光軸が第2の表面に対して垂直になるように光を透過させる部分を覆うように配置されていてもよく、または、非流動体の第2の表面を覆って取り囲むように構成されていてもよい。したがって、アクチュエータ構成要素は、非流動体の第2の表面の形状、向きおよび/または位置に影響を与える機能と、非流動体から/または非流動体へ光を透過/反射する機能の両方を果たす。
【0008】
固体である透明光学素子の屈折率は、周囲の空気の屈折率よりも高い。これにより、光学素子は、透明光学素子内を伝播する光ビームの発散を、空気中を伝播する場合に比べて低減する。有利なことに、この発散する光線の閉じ込めは、光線の束の横方向への広がりを、空気中を伝播する場合に比べて抑えることを意味する。したがって、透明光学素子ではなく空気中を光線が伝播する場合と比較して、透明光学素子の横方向の広がりを同様に小さくすることができる。
【0009】
有利には、光学反射面、少なくとも非流動体の第1の表面、および透明光学素子の第1および/または第2の側面が、A)空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する、またはB)同じもしくは実質的に同じ屈折率であって空気の屈折率よりも高い屈折率を有する、またはC)透明光学素子と同じもしくは実質的に同じ屈折率を有する、1以上の相互接続された光学的に透明な素子を介して接続されるように光学アセンブリを構成することで、前述の発散する光線の有利な閉じ込めが、相互接続された透明な素子全体にわたって、かつ少なくとも光学反射面、非流動体の第1の表面、ならびに透明光学素子の第1および/または第2の側面の間で維持されることを意味する。
【0010】
光学素子は、プリズム、板状やブロック状の素子、または他の光学素子であってもよい。光学素子は、ガラス、ポリマー、ポリカーボネート、および他のプラスチック材料などの任意の光学的に透明な材料から作ることができる。第1および第2の側面は、光の透過、例えば光学素子への透過および光学素子からの透過、および/または、例えば反射面を介した、光の反射のために配置された、光学的に透明な側面を指す。したがって、少なくとも第1および第2の側面は、イメージセンサ上に結像されるべき光線などの光線を透過および/または反射するための光学界面である。光学アセンブリは、特に撮像目的のために構成される光学撮像アセンブリであってもよい。
【0011】
少なくとも第1および第2の側面のいずれかは、光パワーを提供するために、平面または曲面を有してもよい。
【0012】
光学反射面は、入射光線を、入射光線の方向とは異なる方向に偏向させるように配置されている。例えば、光学反射面は、第1の表面に対して45°の角度で配置され、第1の側面に垂直な入射光線が90°偏向されるようにしてもよい。反射面は、光学素子とは別個のもの、例えば、透明光学素子を介して透過された光線を反射するように配置されたミラー素子として構成されてもよく、または反射コーティングされた透明光学素子の表面などといった、光学素子の一部であってもよい。有利には、光学的アセンブリは、例えば前述の相互接続された光学的に透明な素子を介して、入射光および反射光が、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料を介してのみ伝播するように構成され得る。有利なことに、入射光および反射光は、非流動体、透明光学素子および/またはアクチュエータ構成要素の屈折率と同じまたは実質的に同じ屈折率を有する材料を介してのみ伝播する。
【0013】
相互接続された光学的に透明な素子は、非流動体、透明光学素子、アクチュエータ構成要素および/または接着剤、レンズ、プリズムなどの他の素子などといった他の透明光学素子を含んでもよい。有利なことに、非流動体が、透明光学素子および/またはアクチュエータ構成要素と同じまたは実質的に同じ屈折率を有する場合、これらの素子を介してビーム発散が低減される。また、他の透明光学素子も、発散および/または境界反射を低減するために、上述の光学素子と同じまたは実質的に同じ屈折率を持つことが有利であるということになる。
【0014】
アクチュエータシステムの手段によって、非流動体の第2の表面に影響を与えて、光学レンズ効果および/または光線の光学的偏向などの光学効果を発生させることができる。
【0015】
有利には、光学反射面は、異なる光学素子を、光学アセンブリのサイズまたは特定の寸法を減少させる方法で配置できるように、光学アセンブリの光軸の折り曲げを提供する。光軸を折り曲げることで、より長い光路、光軸に沿ってより多くのスペースを占める光学素子を使うこと、および/またはより多くの光学素子を使うことが可能になり、画質などの光学特性が向上する。
【0016】
有利には、非流動体の第1の表面が、第1および第2の側面のうちの1つに当接し、非流動体の第2の表面が、アクチュエータ構成要素に当接する。光学アセンブリは、非流動体の第1および第2の表面と、光学素子およびアクチュエータ構成要素の関連する側面との間に、それぞれ直接的な接触があるように構成されてもよい。さらに、非流動体は、透明光学素子および/またはアクチュエータ構成要素と同じまたは実質的に同じ屈折率を有することで、素子間の境界における反射を減らし、反射防止コーティングを不要とすることができる。実際には、同じまたは実質的に同じ屈折率には、例えば25%以下、または15%以下、10%以下、5%以下の差がある屈折率を含めてもよい。反射防止コーティングが光学素子の第1、第2、または第3の側面のいずれかに使用される場合は、屈折率が25%を超えて異なってもよい。25%の差は、((1.5-1.5*1.25)/(1.5+1.5*1.25))^2=((1.5*0.25)/(1.5*2.25))^2の反射率、すなわち1%の範囲になる。
【0017】
アクチュエータ構成要素の変位には、アクチュエータ構成要素が透明で変形可能な非流動体の第1の表面に対して平行に変位する並進を含めてもよい。アクチュエータ構成要素が透明であって、非流動体とアクチュエータ構成要素、および透明光学素子の屈折率がそれぞれ異なる例では(通常、実際にはそうなる)、非流動体とアクチュエータ構成要素、および透明光学素子の境界における反射率は、それぞれ、光学共振器または干渉計、例えばファブリペロー干渉計を構成する。アクチュエータ構成要素の変位を調整し、それによって2つの反射境界の間の離隔を調整することで、ファブリペロー干渉計を透過する光のスペクトルコンテンツを、干渉計の光学フィルタ特性に従ってフィルタリングすることができる。これを利用して、特定の波長域の強度を減衰させ、スペクトル分解画像を生成することができる。別の例では、アクチュエータ構成要素が反射面を含む場合、ファブリペロー干渉計を通って反射された光のスペクトルコンテンツを、同様の方法でフィルタリングすることができる。
【0018】
この第1の態様によれば、非流動体の第1の表面が、第1および第2の側面のいずれかに当接するように光学アセンブリが配置されてもよく、または、第1の表面が、偏向された光線を受けるように非流動体が配置されるように光学アセンブリが配置されてもよい。
【0019】
一実施形態によれば、透明光学素子は、少なくとも第1、第2、および第3の側面を含み、第1の側面と第2の側面との間の角度は180°未満であり、第3の側面は第1および第2の側面と平行ではなく、
-光学反射面は、第1の側面を透過した光線を第2の側面に向けて偏向するように配置されており、
-第1の表面および対向する第2の表面を含む透明で変形可能な非流動体は、非流動体の第1の表面が、第1、第2、および第3の側面のうちのいずれかに当接するように配置される。
【0020】
例えば、光学素子は、平面の第1、第2、および第3の側面を有するプリズムの形態であってもよく、または第1、第2、および第3の側面のうちの1つ以上が湾曲していてもよい。
【0021】
第1の側面と第2の側面との間の角度は、180°未満であってもよい。第1の側面と第2の側面との間の角度の例には、30°、45°、60°、または90°に等しいか、または実質的に等しい値が含まれる。
【0022】
一例では、第1の側面と第2の側面との間の角度は90°であり、透明光学素子は直角プリズムであってもよい。
【0023】
第3の側面は、第1および第2の側面と平行ではない。第3の側面が反射面を含む場合、第1の側面を介して光学素子に入射した光線は、第3の側面で反射されてもよい。あるいは、第1の側面を介して光学素子に入射した光線は、第3の側面を透過して、第3の側面から離れたところに位置するミラー等の反射面を介して反射してもよい。
【0024】
光学反射面は、第3の側面上に形成されても、含まれてもよく、または反射面は、光学素子から分離されていてもよく、例えば、光学素子を透過した光線を反射するように配置されたミラー素子の形態であってもよい。
【0025】
少なくとも第1、第2、および第3の側面のいずれかは、光パワーを提供するように、平面または曲面を有していてもよい。
【0026】
第1の態様と同様に、非流動体は、第1の態様について述べたのと同じ利点をもって、第3の側面に当接している、または接触していてもよい。したがって、アクチュエータ構成要素は、非流動体と組み合わせて第3の側面に配置されてもよい。
一実施形態によると、アクチュエータ構成要素は、透明カバー部材である。透明カバー部材は、ガラス、ポリマー、ポリカーボネート、プラスチックまたは他の材料からなる板状部材であってもよい。板状部材の対向する面は平坦であってもよく、または対向する面の一方または両方が曲面であってもよい。
【0027】
透明カバー部材は、1以上のアクチュエータによる屈曲を可能にする好適な剛性を有していてもよい。あるいは、位置および/または方向の変更のみが意図される場合には、屈曲を最小限に抑えるように剛性を選択することもできる。
【0028】
有利には、透明カバー部材は、画像の焦点を調整するために、光パワーを調整することができる。あるいは、またはこれに加えて、透明カバー部材は、ビームの偏向を行い、イメージセンサ上の画像位置を調整することができる。これは、1以上のアクチュエータの適切な電子制御により、オートフォーカスおよび/または手ぶれ補正のために使用することができる。
【0029】
一実施形態によれば、非流動体の第1の表面は、透明光学素子の第1または第2の側面に当接し、1以上のアクチュエータは、非流動体および透明カバー部材が調整可能な光パワーを有するレンズを形成するように、透明カバー部材を屈曲できるように配置されている。
【0030】
例えば、1以上のアクチュエータを制御して、外周に沿って同じ方向に、等しいまたは実質的に等しい変位振幅で透明カバー部材の変位を発生させ、透明カバー部材が光軸を中心に外向きまたは内向きに回転対称に曲がるようにしてもよい。
【0031】
一実施形態によれば、非流動体の第1の表面は、透明光学素子の第1または第2の側面に当接し、1以上のアクチュエータは、透明カバー部材での屈折が、調整可能な角度での光線の偏向を可能にするように、円周に沿って異なる変位振幅および/または方向で透明カバー部材を変位させるよう配置される。
有利には、異なる変位振幅および/または方向を有する透明カバー部材の変位を生成することによって、透明カバー部材を傾斜させることができる。異なる変位振幅はまた、光パワーと傾斜の両方を提供するように決定され得る。したがって、1以上のアクチュエータが、透明カバー部材の変位および/または屈曲の両方を可能にするように配置されるように、実施形態を組み合わせてもよい。
【0032】
光パワーを提供する代わりに、またはそれに加えて、アクチュエータおよび関連する制御システムは、例えば、他の光学素子の波面誤差を補正する目的で、非流動体および透明カバー部材が非点収差または他の波面誤差を発生させるように、透明カバー部材を屈曲できるように構成されてもよい。
【0033】
一実施形態によると、アクチュエータ構成要素は光学反射面を含み、非流動体の第1の表面は、透明光学素子の第3の側面に当接し、1以上のアクチュエータは、円周に沿ったアクチュエータ構成要素の変位を可能にするように配置される。
【0034】
アクチュエータ構成要素の変位は、光学反射面が調節可能な角度での光線の偏向を可能にするように、円周に沿った作動点で異なる変位振幅および/または方向の変位を含んでもよい。
【0035】
有利には、異なる変位振幅および/または変位の方向を適用することによって、アクチュエータ構成要素は、透明光学素子の第2の側面に向かって反射される光線の伝播方向を調整するように、調整可能な角度を有する反射器として使用され得る。特に、反射鏡の向きをある角度だけ調整すると、反射鏡の調整角度の2倍の反射光線の角度補正が生じる。したがって、ミラーは画像光線の方向を調整する効果的な方法を提供し、光学手ぶれ補正に使用することができる。
【0036】
あるいは、アクチュエータ構成要素の変位は、光学反射面が、透明で変形可能な非流動体の第1の表面に対して平行に変位するように、円周に沿った作動点で同じ方向に、等しいまたは実質的に等しい変位振幅を有する変位を含んでもよい。
【0037】
2つの反射面、すなわち、非流動体の第1の表面と光学透明素子の第3の側面との間のアクチュエータ構成要素の反射面および屈折反射境界は、光共振器または干渉計、例えばファブリペロー干渉計を構成する。したがって、2つの反射面の距離を調整することで、ファブリペロー干渉計を透過する光のスペクトルコンテンツを、干渉計の光学フィルタ特性に従ってフィルタリングすることができる。これを利用して、特定の波長域の強度を減衰させ、スペクトル分解画像を生成することができる。
【0038】
非流動体は、アクチュエータ構成要素と第3の側面との間に単に挟まれているだけなので、アクチュエータ構成要素およびその反射面は、第3の側面と実質的に平行となるように配置されていてもよい。ただし、他の非平行な構成も可能である。
【0039】
一実施形態によれば、光学アセンブリは2つ以上の非流動体を含み、非流動体の各々の第1の側面は、第1、第2、および第3の側面のそれぞれに当接し、2つ以上のアクチュエータシステムは、それぞれの非流動体に配置される。
【0040】
例えば、1つの非流動体および反射面を有する関連アクチュエータ構成要素を第3の側面に配置して、反射光の角度調整ができるようにしてもよく、別の非流動体および関連する屈曲可能なアクチュエータ構成要素(ここでは透明カバー部材)を第2の側面または第1の側面に配置して、光パワーの調整ができるようにしてもよい。
【0041】
別の例では、1つの非流動体および関連アクチュエータ構成要素(ここでは透明カバー部材)を第1、第2、または第3の側面のいずれかに配置して、屈折した光線の角度調整ができるようにしてもよく、別の非流動体および関連する屈曲可能なアクチュエータ構成要素(ここでは透明カバー部材)を第2の側面または第1の側面に配置して、光パワーの調整ができるようにしてもよい。
【0042】
したがって、一実施形態によれば、非流動体のうちの1つが、第1または第2の側面と、アクチュエータシステムの1つに含まれる透明カバー部材との間に挟まれ、別の非流動体が、第3の側面と、別のアクチュエータシステムに含まれるアクチュエータ構成要素の光学反射面との間に挟まれる。
【0043】
一実施形態によれば、アクチュエータシステムは、1以上のアクチュエータを含み、各アクチュエータは、磁気モータ、リニアモータ、ステッピングモータ、薄い圧電フィルムアクチュエータ、容量性アクチュエータ、またはバルク圧電アクチュエータとすることができ、または1以上のアクチュエータシステムのアクチュエータは、前記アクチュエータタイプの組合せとすることができる。
【0044】
有利には、2つ以上のアクチュエータの場合、アクチュエータは、アクチュエータ構成要素の向き調整を行うために、個別に制御可能であってもよい。
【0045】
一実施形態によると、アクチュエータシステムは、リング状のアクチュエータを含み、アクチュエータ構成要素は、リング状アクチュエータの作動によって屈曲されるように配置され、リング状アクチュエータは、リング状アクチュエータの内側部分を通して光線の透過を可能にする。
【0046】
一実施形態によれば、透明光学素子の第3の側面は、光学反射面を含む。例えば、第3の側面に金属コーティングなどの反射コーティングを施して反射面とすることができる。
【0047】
一実施形態によれば、高さは7.5mm未満、例えば4.9mm未満、例えば4.5mm未満、例えば4.0mm未満、例えば3.5mm未満、例えば3.0mm未満、例えば2.8mm未満である。高さとは、一般的に、第1の表面に垂直な方向における光学アセンブリの最大の延長範囲と理解される。
【0048】
一実施形態によると、透明光学素子はモノリシックであり、すなわち、光学素子は、単一材料から製造される。単一材料の素子は、製造コストを低減することができる。しかし、透明光学素子は、2つ以上の異なる材料から作製することも可能である。
【0049】
一実施形態によると、透明光学素子はプリズムである。
【0050】
一実施形態によれば、第3の側面は、光学反射面と平行または実質的に平行である。これは、反射面が第3の表面上に形成されるか、またはその一部である場合に明らかに当てはまる。反射面が透明光学素子から離れている場合、それらは平行である必要はないが、平行または実質的に平行であってもよい。
【0051】
一実施形態によれば、光学反射面は、部分的な反射を提供する。有利には、反射面は、入射光強度の一部を透過させる部分反射器であってもよい。透過光は、様々な目的のために光学センサによって測定されてもよい。
【0052】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る光学アセンブリを含むカメラモジュールに関する。
【0053】
第2の態様の一実施形態によれば、カメラモジュールのカバーガラスは、透明光学素子を含む。有利には、透明光学素子は、第1の側面がカメラモジュールの外部窓を形成するようにカバーガラスとして使用されてもよい。あるいは、透明光学素子の第1の側面が、交換可能な保護窓などの薄い透明板によって保護されてもよい。
【0054】
第2の態様の一実施形態によれば、カメラモジュールは、光学手振れ補正および/または画像フォーカスを行うように、アクチュエータシステムを制御するプロセッサを含む。
【0055】
第2の態様の一実施形態によれば、イメージセンサが、透明光学素子の第2の側面を透過する光線を受け取るように配置される。レンズまたはレンズのアセンブリなどのさらなる光学素子(すなわち、光学アセンブリの出力)が、イメージセンサと第2の側面または透明カバー部材との間に配置されてもよいことが理解される。
【0056】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係る光学アセンブリを製造する方法に関し、当該方法は、
-少なくとも第1および第2の側面を有する透明光学素子を提供することと、
-第1の側面を透過する光線を偏向するように配置された光学反射面を提供することと、
-第1の表面および反対側の第2の表面を含む、透明で変形可能な非流動体であって、光学反射面(102a、102b、102c)、非流動体の第1の表面(131)、および透明光学素子(101)の第1の側面および第2の側面(111、112)が、1以上の相互接続されており、接続部全体の屈折率が空気の屈折率よりも大きい非流動体を提供することと、
-1以上のアクチュエータと、前記1以上のアクチュエータによって屈曲および/または変位を受けるように配置されたアクチュエータ構成要素とを含み、アクチュエータ構成要素の側面が非流動体の第2の表面に当接する、アクチュエータシステムを提供することと、
を備える。
【0057】
このように、アクチュエータシステムの手段によって、非流動体の第2の表面の形、向き、および/または平行変位位置を、アクチュエータの作動によって変更することができる。
【0058】
本発明の第4の態様は、第2の態様に係るカメラモジュールを含む電子デバイスに関するものであって、前記電子デバイスは、
a.スマートフォンなどの電話、
b.スマートウォッチなどの時計、
c.iPad(登録商標)などのタブレット、
d.ラップトップ、および
e.カメラ、
のいずれか1つである。
【0059】
本発明の第5の態様は、画像を取得する、第2の態様に係るカメラモジュールを含む電子デバイスの使用に関する。
【0060】
一般に、本発明の様々な態様および実施形態は、本発明の範囲内で可能な任意の方法で組み合わせ、結合することができる。本発明のこれらおよび他の態様、特徴および/または利点は以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の実施形態は、単なる例として、図面を参照して説明される。
【0062】
図1A】透明光学素子を含む光学アセンブリの例を示す。
図1B】光学素子による有利なビームの閉じ込めを示す。
図1C】湾曲した側面を有する透明光学素子の例を示す。
図2A】透明光学素子が受け取った光を透過または反射するように配置された、少なくとも3つの主な側面を有する、光学アセンブリの代替実施形態を示す。
図2B】光学アセンブリを用いて構成された電子デバイスの主要な略図を示す。
図3A】異なるアクチュエータ構成、およびアクチュエータ効果によるアクチュエータ構成要素の変形、傾きおよび変位を示す。
図3B】異なるアクチュエータ構成、およびアクチュエータ効果によるアクチュエータ構成要素の変形、傾きおよび変位を示す。
図3C】異なるアクチュエータ構成、およびアクチュエータ効果によるアクチュエータ構成要素の変形、傾きおよび変位を示す。
図3D】異なるアクチュエータ構成、およびアクチュエータ効果によるアクチュエータ構成要素の変形、傾きおよび変位を示す。
図3E】異なるアクチュエータ構成、およびアクチュエータ効果によるアクチュエータ構成要素の変形、傾きおよび変位を示す。
図4A】光学アセンブリの別の代替的な構成を示す。
図4B】透明光学素子の例を示す。
図5】反射率および透過特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図2Bは、スマートフォン、タブレット、またはラップトップもしくは他のデバイスの一部などの電子デバイス200の断面図を示す。デバイス200は、開口220を介して光を受け取り、受け取った光の光線を、伝播方向に偏向するように配置された光学アセンブリ100を含む。伝播方向とは、例えば、偏向された光が電子デバイスの長手方向に沿って伝播する方向である。デバイス200の長手方向の長さは、デバイスの厚さよりも著しく長くてもよく、厚さは、開口220の平面に垂直または実質的に垂直に延在する。
【0064】
光学アセンブリ100は、カメラモジュール210の一部を形成し、このカメラモジュールは、偏向された光を受け取るように配置されたイメージセンサ201をさらに含んでもよく、また任意で、偏向された光の経路内に配置されたレンズ202または他の光学素子をさらに含んでもよい。
【0065】
電子デバイス200の厚さを薄くすることが望ましい場合がある。これは、光学アセンブリ100の厚さTの、対応する減少を必要とする場合があり、カメラモジュール210は、電子デバイス200の境界内に収容することができる。したがって、ビームを折り曲げない構成では、長すぎて、スリムな設計を可能にすることができない。一方で、偏向器を用いることで複雑さが増し、公差が増えることで画質が低下する場合がある。
【0066】
図1Aは、透明光学素子101を含む光学アセンブリ100の一例を示す。光学素子は、少なくとも第1、第2および第3の側面111~113を含む固体透明素子であってもよい。側面111~113のうちのいずれか1つは、例えば、図1Cに図示されるように、平面または曲面を形成してもよい。平側面111~113が曲面を含んでもよく、例えば、内向きまたは外向きの曲面が平側面の一部に形成されてもよい。例えば、側面のいずれかの曲面は、光線の入射角に応じて光の屈折、すなわち光パワーを提供し、例えば、光の集束や拡散の効果を提供してもよい。第1、第2、および第3の側面111~113の全てが平面を形成してもよく、すなわち、光学素子101がプリズムを構成するようにしてもよい。光学素子の第1、第2、および第3の側面は、曲面および平側面の任意の組み合わせを含んでもよい。この例では、第1の側面111と第2の側面112との間の角度は、180°未満、例えば90°であり、第3の側面113は、第1および第2の側面と非平行である。光学素子101は、図示されるように、直角プリズムであってもよい。プリズムは通常、平側面を有すると理解されるが、本明細書では、プリズムが曲面を含んでもよいことが理解される。
【0067】
光学アセンブリ100は、第1の側面111を透過した光線121を偏向させるように配置された光学反射面102a、102b、102cをさらに含む。反射面、すなわちミラーは、第3の表面113上に反射面102aとして配置されてもよく、アクチュエータ構成要素181の表面上、すなわち光学透明素子101に面する表面上に反射面102bとして配置されてもよく、また反対側の表面上に反射面102cとして配置されてもよい。便宜上、反射面102a、102b、102cのいずれかを使用することができるので、反射面102が反射面102a、102b、102cのいずれでもよい場合や、どの種類の反射面を指すのかが文脈から明らかな場合には、一般名の反射面102が用いられる。
【0068】
反射面102はまた、別のプリズムや他のミラー要素などといった他の要素上に設けることができる。反射面102は、光学素子101またはアクチュエータ構成要素181の表面上にコーティングされた金属層を含んでもよい。したがって、反射面102は、第3の側面113と平行または実質的に平行であってもよい。
【0069】
アクチュエータ構成要素181、182自体は平行な表面を有するスラブ形状であってもよく、またはアクチュエータ構成要素は湾曲していてもよい。湾曲した構成は、主要な対向する面の一方または両方が湾曲していることで実現され得る。したがって、アクチュエータ構成要素181または第3の側面113の表面である反射面102は、湾曲していてもよい。
【0070】
したがって、透明素子の構成におけるアクチュエータ構成要素181、182は、屈折光パワーを提供するように構成されてもよく、またはミラー素子の構成におけるアクチュエータ構成要素181、182は、反射光パワーを提供するように構成されてもよい。
【0071】
また、光学素子101と対向する側面などのアクチュエータ構成要素181、182は、ミラー機能以外の光学機能を含んで構成されてもよい。したがって、アクチュエータ構成要素181、182は、回折格子、マイクロレンズ、またはナノ構造インプリント面を含んで構成されて、透過または反射した光の少なくとも一部を再形成して、これを他の目的、例えば、光学素子のフィードバックループ制御、光のパラメータの検出などに使用できるようにしてもよい。一例では、アクチュエータ構成要素181、182またはミラー面102のミラー構成は、スペクトル帯域通過フィルタを提供するためにダイクロイックミラーとして構成されてもよい。
【0072】
いずれかのアクチュエータ構成要素の湾曲していてもよい面および少なくとも第1、第2、および第3の側面は、1次元または2次元で湾曲してもよい。
【0073】
一実施形態によると、光学反射面102は、光強度の一部が反射面を透過するように、部分反射器として構成される。透過光の一部は、光学センサによって測定され、アクチュエータシステム180を制御するために使用されてもよい。部分反射器の用途は、部分ミラーを透過した光強度に基づくフィードバックループを提供することであり、レンズの焦点やミラーの傾斜を制御するために、透過した光を測定し、フィードバックループの基準と比較することができる。
【0074】
光学アセンブリ100は、弾性ポリマー材料などの透明で変形可能な非流動体130をさらに含む。非流動体130は、第1の表面131と、反対側の第2の表面132とを含む。第1の表面は、第1、第2、または第3の側面111~113のうちの1つに当接する、すなわち接触する。あるいは、非流動体130、または複数のそのような非流動体130のうちの1以上は、第1、第2、または第3の側面111~113のいずれとも接触しない別個の素子として配置されてもよい。
【0075】
変形可能な非流動レンズ体は、弾性材料から作られることが好ましい。レンズ体は非流動体であるため、レンズ体を保持するために密閉された筐体を必要とせず、漏れのリスクがない。好ましい実施形態では、レンズ体は、シリコーン、ポリマーゲル、架橋または部分架橋ポリマーのポリマーネットワーク、および混和性のあるオイル、またはオイルの組み合わせなど多くの異なる材料を含むことができる軟質ポリマーから作られる。非流動レンズ体の弾性係数を300Paよりも大きくすることで、通常動作時における重力による変形を回避することができる。非流動レンズ体の屈折率は、1.3より大きくてもよい。
【0076】
軟質ポリマーの使用は、ポリマーが空気と接触しているレンズを製造することを可能にし、したがって、レンズの焦点距離を調整する際に必要とされる力が、はるかに小さくなる。また、たとえ異なる製造工程が、異なる場所または施設においてローカライズされている場合でも、ポリマーが適切に保持するので、製造が容易になる。上述したように、レンズを調整するために必要な力を低減するために、また環境における温度や圧力の変動によって起こる歪みを低減するために、圧縮性ガスの漏れチャネルまたは気泡を設けることも可能である。
【0077】
光学アセンブリ100は、1以上のアクチュエータ185およびアクチュエータ構成要素181、182を含むアクチュエータシステム180をさらに含む。アクチュエータ構成要素181、182は可撓性であり、アクチュエータ185の作動による屈曲を可能にする適切な剛性を有する。アクチュエータ構成要素は、透明または非透明な、例えばスラブ形状の要素として構成されてもよい。アクチュエータ構成要素181は、金属、ガラス、またはプラスチック要素であってもよく、または他の材料から作製されてもよい。あるいは、またはさらに、アクチュエータ構成要素181、182は、アクチュエータ185の作動によって変位されるように配置される。したがって、アクチュエータ構成要素は、屈曲を可能にする剛性を有しつつも、アクチュエータの作動による並進も可能にする十分な剛性を有し得る。十分な剛性を実現するために、アクチュエータ構成要素は、補強リングなどの補強素子を含んでもよく、アクチュエータは補強素子に作用するように配置されてもよい。図示の実施形態では、アクチュエータ構成要素の側面は、非流動体の第2の表面132に当接、すなわち接触する。非流動体130は弾性を有しているので、アクチュエータ構成要素が屈曲および/または変位した際に、第2の表面132が、アクチュエータ構成要素の当該側面と接触したままとなるように変形可能である。したがって、非流動体の第2の表面132の形状および/または向きを、アクチュエータの作動によって変更することができる。
【0078】
非流動体130および関連するアクチュエータシステム180は、第1、第2、または第3の側面111~113のうちのいずれか1以上に配置されてもよい。
【0079】
例えば、非流動体130およびアクチュエータシステム180が第3の側面に配置される場合、アクチュエータ構成要素181は、反射面、すなわち部分的または全体的な反射を提供するミラー面を有してもよく、この反射面は、非流動体130の第2の表面132に接触しているか、または透明要素、例えばガラス板であってもよいアクチュエータ構成要素181の反対側に配置される。したがって、入射光線の偏向角度は、アクチュエータ185の使用によって、第3の側面113に対するアクチュエータ構成要素181の向きを制御することで制御され得る。
【0080】
制御された光線の偏向は、光学手ぶれ補正を提供するために、すなわち、光学撮像の際の電子デバイス200の揺れを補償するために使用することができる。
【0081】
反射の法則を用いて得られるように、ミラー面102のこの配置は、結果として生じる光線偏向の変化と、アクチュエータ構成要素181の変化または角度との比を2倍に増大させる。
【0082】
あるいは、またはさらに、非流動体130およびアクチュエータシステム180は、第1または第2の側面に配置されてもよい。この場合、アクチュエータ構成要素181は、透明アクチュエータ構成要素182である。アクチュエータ構成要素は、アクチュエータ185の作動により、好ましくは光軸を中心とした回転対称な球面または非球面を達成するように、変形するように配置されてもよい(便宜上、アクチュエータは第1の側面111と共に図示されていない)。光軸(図示せず)は、光が光学アセンブリを通って伝播する経路を画定する線である。このようにして、透明アクチュエータ構成要素182の外向き表面における光線の屈折は、非流動体130およびアクチュエータ構成要素182によって形成されるレンズの焦点距離を調節するために使用されてもよい、調整可能な光パワーを提供する。調整可能な光パワーは、可変の焦点距離を提供し、カメラモジュール210のオートフォーカスのために使用することができる。
【0083】
非流動体130は、光学素子101および/またはアクチュエータ構成要素181、182の屈折率と等しいか、実質的に等しいか、または近い屈折率を有することができる。例えば、光学透明素子101を非流動体130に接続するように配置された他の光学透明素子、または本明細書に記載される他の光学素子は、非流動体130または他の素子の屈折率と等しいか、実質的に等しいか、または近い屈折率であって、空気の屈折率よりも高い屈折率を有していてもよい。このようにして、相互接続された光学素子を透過する光は、より少ない反射損失およびより少ない発散を経験し得る。
【0084】
1以上のアクチュエータは、光パワーまたは偏向の所望の変化を発生させるために、電子回路および/またはデジタルプロセッサによって制御されてもよい。制御は、所望の光学的変化または光学的結果に関する入力信号に基づくフィードフォワード制御であってもよく、または所望の光学的変化または結果に関する入力信号を実際の変化や結果の測定信号と比較するフィードバック制御であってもよい。プロセッサは、光学アセンブリ100またはカメラモジュール210に含まれてもよい。例えば、プロセッサは、アクチュエータ構成要素181、182の動きを測定するように配置された光学アセンブリ100に含まれる2Dまたは3Dモーションセンサからの入力、および/またはフォーカスレベルを測定するように配置された光学アセンブリ100に含まれる焦点検出器からの入力に基づいて、手ぶれ補正および/またはオートフォーカスモードでアクチュエータを制御するようにプログラムされてもよい。焦点検出器は、位相検出またはコントラスト検出オートフォーカスセンサのようにアクティブまたはパッシブとすることができる。アクチュエータ185は、アクチュエータ構成要素を1本の軸の周りに傾けることによってのみ1次元の光学手ぶれ補正を提供するように配置されてもよく、またはアクチュエータ構成要素を最大2本の軸の周りに傾けることによって2次元で光学手ぶれ補正を提供するように配置されてもよい。
【0085】
さらに、例えば、A)光学アセンブリが画像投影デバイスで使用するように構成される用途において、また、B)アクチュエータ構成要素181のミラーの、焦点/光パワーおよび/または傾きが、安定し、焦点の合った画像投影を得るために制御される用途において、1以上のアクチュエータは、制御されたビームステアリングを提供するように制御されてもよい。
【0086】
図1Bは、光学素子101の使用によって得られる有利な効果を示す。光学素子101の屈折率が周囲の環境、例えば空気の屈折率よりも高いため、すなわち、第1の側面111と90°とは異なる角度をなすように、第1の側面111に0°とは異なる入射角で衝突する光線122の入射角は、光学素子内を伝播する際に小さくなる。これにより、屈折による光線の広がりが抑えられる。これは、光線121、122が空気中を伝播する状況と比較して、第3の側面113の必要な面積および第2の側面112の面積が低減されるという効果を有する。その結果、アクチュエータシステム180の高さ、すなわち、アクチュエータ構成要素181、182の長手方向の寸法に沿った高さは、例えば、7.5mmよりも低い高さ、例えば、4.9mmまたは4.5mmよりも低い高さに低減することができる。そのため、プリズムなどの光学素子を用いてビーム折り曲げることは、空気中で光が伝播する、ミラーを用いる場合に比べて有利である。
【0087】
したがって、反射面および光学素子が複雑化し、画質が低下する可能性があっても、アクチュエータシステム180と反射面および光学素子を組み合わせることで、焦点や偏向の調整機能などの機能性が付加される。アクチュエータシステムおよび非流動体を、側面111~113の存在を利用して焦点および/またはビームの偏向特性を実現する光学素子とは異なる方法で利用することができる。
【0088】
さらに、光学素子と組み合わせにより、ビームの広がりが抑えられるため、非流動体130とアクチュエータ構成要素181、182の横方向のサイズが最小になる。
【0089】
図2Aは、透明光学素子101が少なくとも第1および第2の側面を含み、第1および第2の側面が平行または実質的に平行であってもよい、光学アセンブリ100の代替的な実施形態を示している。第1の側面111は、光を受け取るように配置された入力開口を構成してもよく、第2の側面112は、ミラーまたは反射面102に向かって光を放出するように配置された出力開口を構成してもよい。例えば、光学素子101は、透明なガラスまたはプラスチック材料の板またはブロックの形態であってもよい。有利には、図2Aの光学素子101は、図1Bに関連して説明したような光線の広がりを低減することに関して同じ有利な効果を提供する。
【0090】
光学素子101の第2の側面112と接触する側面を有するプリズムや他の光学固体素子201の表面に反射面が配置されている。光学固体素子201は透明である。
【0091】
このように、光学固体素子201は、透明光学素子101の第2の側面112から非流動体130の第1の表面131に透過した光が、接続部全体で、空気の屈折率よりも大きく、好ましくは光学素子間の界面で大きく変化しない屈折率で屈折するように、反射面102と非流動体130および透明光学素子101とを接続するように配置された、相互接続光学透明素子の一例である。
【0092】
アクチュエータシステム180および関連する非流動体130は、第1および第2の側面111、112のいずれか1以上と、A)光学固体素子201の傾斜面、またはB)第1および第2の側面111、112と直交する光学固体素子201の表面、に配置されてもよい。あるいは、またはさらに、アクチュエータシステム180および関連する非流動体130は、光学素子101または光学固体素子201のいずれかから分離して配置されてもよい。
【0093】
透明光学素子101を第1透明光学素子と見なして、光学固体素子201を第2透明光学素子201と呼ぶことができる。
【0094】
透明光学素子101と光学固体素子201を、例えば適切な透明接着剤を用いて、それぞれの素子の側面が接触するように配置する例は、反射面と、光線121を受光・出射するための入出力面とを有する透明光学素子を得るために有利であり得る。
【0095】
したがって、透明光学素子101は、単一の光学素子の形態であってもよく、または2つ以上の透明光学素子を含んでもよい。
【0096】
図4Aは、透明光学素子101が、対向する、平行または非平行な第1および第2の側面を有する透明光学素子などといった、少なくとも第1および第2の側面を有する素子であり、光学アセンブリ100が光学固体素子201を含む、光学アセンブリ100の代替構成を示している。この例では、光学固体素子201は、直角に交わる側面を介して受けた光線121を他の直角に交わる側面に向けて偏向するように配置された反射面を有するプリズムである。透明で変形可能な非流動体130は、光を受けるように配置された光学固体素子201の側面と、透明光学素子101の第2の側面112との間に挟まれている。当該変形可能な非流動体130に関連するアクチュエータシステム180(図示せず)は、ビーム偏向調整機能を提供するために、光学固体素子201の向きあるいは透明光学素子101の向きに影響を与えるように配置されてもよい。したがって、この例では、光学固体素子201あるいは透明光学素子101が、アクチュエータ構成要素を構成する。
【0097】
あるいは、光学固体素子201と透明光学素子101との間に挟まれた透明で変形可能な非流動体130が、パッシブな非流動体130として、すなわち関連するアクチュエータなしに適用されてもよい。
【0098】
光学固体素子201と透明光学素子101との間に挟まれた透明な変形可能な非流動体130は、アクチュエータ構成要素181、182と組み合わせて使用されるものと同じ非流動物質であってもよく、または別の透明な接着剤であってもよい。光学固体素子201と透明光学素子101との間に挟まれた非流動体130は、A)光学固体素子201と透明光学素子101との間の屈折率マッチングを行うために使用されてもよく、B)位置決め公差などといった、素子201と透明光学素子101の公差を許容するために使用されてもよく、また、C)素子間の空気ギャップに比べて高屈折率の光路を提供するために使用されてもよい。
【0099】
光学固体素子201が透過した反射光を受けるように配置された非流動体130は、光学固体素子201の側面に当接して配置されてもよく、相互に接続された光学透明素子を介して光学固体素子201に接続されていてもよい。
【0100】
図4Bは、プリズム401の形状をスラブ形状素子402と組み合わせた光学素子101の例を示す。プリズム401およびスラブ形状素子402は、一緒に接着されてもよく、または素子は、モノリシック光学素子、例えば、成形プラスチック要素として形成されてもよい。第1の側面111は、例えば電子デバイス200におけるカメラの入射窓のような、カメラの入射窓を形成してもよい。第2の側面112は、本明細書の他の例に記載されるような機能を有することができる。第3の側面113は、本明細書の例に従って構成された光学反射面102(図4Bには図示せず)を介してビーム偏向を提供するために使用される。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、光学反射面、非流動体の第1の表面、および透明光学素子の第1および第2の側面は、1以上の相互接続された光学的に透明な素子を介して接続されており、接続部全体の屈折率は空気の屈折率よりも大きい。この実施形態は、非流動体130および光学素子101が光学固体素子201に接触するように配置された図2Aの実施形態によってサポートされることが分かる。この実施形態は、光学固体素子201に当接するように配置された非流動体130を有する図4Aおよび図4Bの実施形態によってさらにサポートされる。この実施形態は、図1Aの実施形態によって同様にサポートされる。
【0102】
図3Aは、アクチュエータ構成要素181、182の上面図を示し、アクチュエータ185は、アクチュエータ構成要素181、182、特に透明素子181を屈曲させるように配置されたリング状の圧電素子などといったリング状アクチュエータを備える。
【0103】
図3Bは、アクチュエータシステム180が、2つ以上の個別に制御可能なアクチュエータ185を含む、アクチュエータ構成要素181、182の上面図を示す。このような個々に制御可能なアクチュエータは、磁気モータ、リニアモータ、ステッピングモータ、薄い圧電フィルムアクチュエータ、容量性アクチュエータ、またはバルク圧電アクチュエータによって、またこれらの組み合わせによって構成されてもよい。明らかに、異なるアクチュエータシステム180は、異なるタイプのリング状アクチュエータ185または個別に制御可能なアクチュエータ185で構成されてもよい。例えば、アクチュエータ構成要素181、182を屈曲させるように配置された1つのアクチュエータシステム180は、リング状圧電素子を含んでもよく、一方、アクチュエータ構成要素181、182を変位させるように配置された別のアクチュエータシステム180は、光軸と平行または実質的に平行な方向に変位させるように配置された個別に制御可能なアクチュエータを含んでもよい。
【0104】
図3Cは、アクチュエータ構成要素181、182の屈曲の例を示す。屈曲は、例えば、アクチュエータ構成要素181、182の円周に沿って同一方向に力を与えたり、あるいはトルクを与えたりするように配置された、個別に制御可能なアクチュエータを含むアクチュエータ185のいずれかによって得られてもよい。
【0105】
図3Dは、アクチュエータ構成要素181、182の向きおよび/または位置を変更する例を示す。これは、アクチュエータ構成要素181、182の円周に沿って同じ方向に、異なる力や変位を提供するように個別に制御可能なアクチュエータを制御することで、または、アクチュエータ構成要素181、182の円周に沿って異なる方向、例えば、反対方向に力または変位を提供するように制御可能なアクチュエータを制御することで実現されてもよい。
【0106】
図3Eに図示されるように、主に図示されている個別に制御可能なアクチュエータ185は、アクチュエータ構成要素181、182と光学素子101の側面111~113のうちの1つとの間に位置決めされて、レンズアセンブリ100の全体的なサイズを縮小することができる。
【0107】
例えば、個別に制御可能なアクチュエータは、音声コイル、すなわち、互いに対して直線的に変位可能な磁石およびコイルを含むリニア電磁石モータとして構成されてもよい。直線的な変位は、コイルに供給される電流を制御することで制御できる。アクチュエータの変位可能な端部は、アクチュエータ構成要素181、182と係合するように配置することができる一方、アクチュエータの固定部は、光学アセンブリ100の固定支持フレーム、または光学素子101などといった他の固定部に固定することができる。
【0108】
別の例によれば、個別に制御可能なアクチュエータは、梁の自由端が直線的または実質的に直線的な変位を提供する片持ち梁アクチュエータとして構成されてもよい。梁はまた、バイモルフ圧電片持ち梁として構成し、圧電素子に供給する電流を制御することで変位を制御してもよい。自由端に対向する梁の端部は、光学アセンブリ100の支持フレームまたは他の固定部分に固定することができる。梁は、自由端がアクチュエータ構成要素181、182を接続する点の接線方向に延在するように配置することができる。
【0109】
3つ以上の個別に制御可能なアクチュエータ185は、所望の光学的効果を実現するために、アクチュエータ構成要素181、182の形状および/または向きを変化させるように同期して制御されてもよい。例えば、全てのアクチュエータは、同じ方向に力を作用させて、アクチュエータ構成要素181、182の円周部分を光軸に沿って前方または後方に動かすように設定することができる。このようにして、アクチュエータ構成要素181、182によって提供される光パワーを調節することができる。アクチュエータシステム180の別の機能によれば、アクチュエータ185は、アクチュエータ構成要素の円周に沿って変化する異なる力(異なる方向および/または振幅を含む)をアクチュエータ構成要素に加えるように設定することができる。この作動は、アクチュエータ構成要素の光パワーを実質的に変化させずに、アクチュエータ構成要素を傾けることができる。さらに、この作動は、図3Cおよび図3Dに示されているように、アクチュエータ構成要素の傾きとアクチュエータ構成要素の光パワーの変化の両方、すなわち屈曲と、向き/位置の変化の組み合わせを生み出すことができる。
【0110】
アクチュエータ185は、リング状の圧電素子などのリング状のアクチュエータであり、圧電リングの穴が光線121の透過を可能にするように、光軸301を中心に配置されている。圧電リングに電流を供給することによって、または別のリング状のアクチュエータを電気的に励起することで、リングは接線方向に収縮または拡張し、実質的に光軸301に対して回転対称である。生成された力は、アクチュエータ構成要素181、182に伝達され、アクチュエータ構成要素を内側または外側方向へ屈曲させ、それによって、アクチュエータ構成要素および非流動性の弾性素子130を含むレンズの光パワーを生成または調整する。
【0111】
図3Eは、非流動体の第1の表面131と第2の表面132との間の距離d、すなわち、第1、第2または第3の側面111~113のいずれかと、非流動体130に面しているアクチュエータ構成要素181、182の表面との間の距離を示す。距離dは、アクチュエータ185の手段およびその制御によって制御可能であり、例えば、100~1000nmの間隔で、あるいは1μm~500μm(マイクロメートル)、10μm~500μmのように0.1μm~500μmの間隔で制御可能である。
【0112】
一例では、アクチュエータ構成要素181、182が平面であり、第1、第2、または第3の側面111~113も平面である場合、第1および第2の表面131、132の間の空洞は、ファブリペロー干渉計を構成する。したがって、ファブリペロー干渉計の反射境界間の間隔dは、1以上のアクチュエータ185によって調整することができる。
【0113】
第1の例では、アクチュエータ構成要素181、182は透明である。第1の表面131と透明光学素子101の第1、第2または第3の側面111~113との間の境界は反射率R1を有し、第2の表面132とアクチュエータ構成要素との間の境界は反射率R2を有するが、これらは、アクチュエータ構成要素の屈折率n1、非流動体の屈折率n2、透明光学素子101の屈折率n3の差に応じて与えられるものである。すなわち、n1≠n2、n3≠n2である。この例では、ファブリペロー干渉計は、透過型ファブリペロー干渉計である。
【0114】
第2の例では、アクチュエータ構成要素181は、ファブリペロー干渉計の反射境界のうちの1つを構成する反射面102b、102cを含む。ファブリペロー干渉計の別の反射境界は、第1の表面131と第3の側面113との境界で構成される。この例では、ファブリペロー干渉計は、反射型ファブリペロー干渉計である。
【0115】
図5は、ファブリペロー干渉計によって透過または反射される光のスペクトルコンテンツを、干渉計の光学フィルタ特性に従ってフィルタリングすることができる場合に、調整可能なフィルタ効果を得るためにファブリペロー干渉計を使用する方法を示す。
【0116】
ファブリペロー干渉計が透明アクチュエータ構成要素181、182を含む例では、スペクトル透過は、幅δλを有する曲線501によって与えられる。曲線501の外側の波長λの透過光の強度が減衰する(すなわち、透過係数Tが低い)のに対し、曲線501の内側の波長の透過光の強度は透過係数が高くなる。幅δλは、積R1×R2の値が低いほど幅δλが大きく、積R1×R2の値が高いほど幅δλが狭くなるように反射率R1とR2の積に依存する。
【0117】
曲線501のピークのスペクトル位置は、距離dに依存する。したがって、距離dを調整することによって、曲線501のスペクトル位置、およびそれによって透過波長または反射波長の選択を調整することができる。
【0118】
一例では、第1の表面131および第2の表面132の境界における反射率は、約46%である。これらの反射率では、幅δλは約100nmとなる。第1の表面131と第2の表面132との間の距離dは、258nm以下から387nm以上に調整することができる。258nmの距離では、曲線501のピークは、約400nmに位置する。287nmの距離では、曲線501のピークは、約600nmに位置する。したがって、100nm帯域内の波長の透過を400~600nmの間隔でシフトさせることができる。46%の反射率または他の相対的に高い反射率は、第1、第2、および第3の側面111~113のいずれかの上、および/または非流動体130に当接するアクチュエータ構成要素181、182の表面上、あるいは、板状アクチュエータ構成要素181、182の反対側の表面上に、金属材料または誘電材料を蒸着することによって実現されてもよい。
【0119】
上述のように、屈折率の違いによってファブリペロー干渉計の反射率を実現することもできるが、反射率は46%よりも大幅に低くなる。
【0120】
アクチュエータ構成要素181がミラー面、すなわち反射面102b、102cを有する例では、スペクトル反射特性は曲線502によって与えられる。便宜上、曲線502は、400nmの位置だけに示されているが、600nmの位置にシフトされ得る。このように、ファブリペロー干渉計の反射モードでは、曲線502の外側の波長λに対する反射光の強度は大きく減衰しない(すなわち、反射係数Rが高い)のに対し、曲線502の内側の波長に対する透過光の強度は減衰効果が生じることになる、すなわち、反射係数Rが低い。
【0121】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、提示された実施例に決して限定されるものとして解釈されるべきではない。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の技術的範囲に照らして解釈されるべきである。請求範囲の文脈において、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は他の可能性のある要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」または「an」などのような引例の記載は複数を排除するものと解釈されるべきではない。図面に示される要素に関する特許請求の範囲における参照符号の使用はまた、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求範囲に記載された個々の特徴は場合によっては有利に組み合わせることができ、異なる請求範囲におけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが可能でなく有利でないことを排除しない。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5