(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ピペラジニル-エトキシ-ブロモフェニル誘導体の新しい合成方法及びそれらを含有する化合物の製造におけるその応用
(51)【国際特許分類】
C07D 295/088 20060101AFI20240305BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240305BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240305BHJP
C07D 495/04 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C07D295/088
A61K31/519
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
C07D495/04 105Z
(21)【出願番号】P 2021520367
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019077729
(87)【国際公開番号】W WO2020078875
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
【氏名又は名称原語表記】Les Laboratoires Servier
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ボーリガード,ルイ-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン,マルシャル
(72)【発明者】
【氏名】ジグエール,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】アルドゥアン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シアヴィ,ブリュノ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0118239(KR,A)
【文献】特表2016-528267(JP,A)
【文献】特表2012-530728(JP,A)
【文献】国際公開第2017/180571(WO,A1)
【文献】特表2008-531723(JP,A)
【文献】特開昭58-164585(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0010165(KR,A)
【文献】特表2014-523879(JP,A)
【文献】特表2008-526821(JP,A)
【文献】特開2015-129120(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107573360(CN,A)
【文献】特表2017-516826(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059021(WO,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2014年05月01日,[検索日 2023.07.07], CAS登録番号 1595042-96-8
【文献】ORGANIC & BIOMOLECULAR CHEMISTRY ,2012年,Vol. 10, No. 6,pp. 1300-1310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化31】
[式中、
R
1
は直鎖若しくは分岐(C
1
-C
6
)アルキル基であり、そしてR
2は
ハロゲン原子であり、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表す]で示される化合物を調製するための方法であって、
式(IV):
【化32】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物を式(V):
【化33】
[式中、R
3は、前記と同義であり、そしてX
-は、一価のアニオン性対イオンを表す]で示される化合物と、
アニソール中で、
炭酸セシウムの存在下で高温で反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
温度が、135℃より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が、一ハロゲン化水素酸塩又は二ハロゲン化水素酸塩として単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(V)の化合物が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを使用することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(IV):
【化34】
[式中、R
1
は直鎖若しくは分岐(C
1
-C
6
)アルキル基であり、そしてR
2は
ハロゲン原子である]で示される化合物が、式(VI):
【化35】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物の、溶媒中での、臭素、臭化ナトリウム/トリクロロイソシアヌル酸、又は臭素/酢酸ナトリウムから選択される臭素化剤の存在下での位置選択的一臭素化反応により得られる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応が、1当量の臭素化剤の存在下で行われる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
臭素化剤が、臭素である、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、酢酸、ジクロロメタン、メタノールと硫酸との混合物、酢酸とジクロロメタンとの混合物から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
反応が、式(VI)の化合物を約10~約20容量の有機溶媒又は有機溶媒の混合物で希釈することによって実施される、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
式(VI):
【化36】
[式中、R
1
は直鎖若しくは分岐(C
1
-C
6
)アルキル基であり、そしてR
2は
ハロゲン原子である]で示される化合物が、式(VII):
【化37】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物の、溶媒中での遷移金属錯体及び塩基の存在下でのヒドロキシル化反応により得られる、請求項
6~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
遷移金属錯体が、パラジウム触媒及び配位子を含むパラジウム錯体である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
反応が、少なくとも0.01当量のパラジウム触媒の存在下で実施される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
反応が、少なくとも0.03当量の配位子の存在下で実施される、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
塩基が、水酸化物塩である、請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が、1,4-ジオキサン又は水と1,4-ジオキサンとの混合物である、請求項
11に記載の方法。
【請求項17】
式(IV)の化合物への式(VII)の化合物の変換が、式(VI)の化合物を単離することなく直接実施される、請求項
6~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
式(II):
【化38】
[式中、
R
1
は直鎖若しくは分岐(C
1
-C
6
)アルキル基であり、そしてR
2は
ハロゲン原子であり、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表し、
R
4及びR
5は、水素、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基を表すか、又はR
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示される化合物を調製するための方法であって、
請求項1に記載の方法により得られる式(I):
【化39】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である]で示される化合物を、式(VIII):
【化40】
[式中、R
4及びR
5は、前記と同義であり、そしてRは、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、又は(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す]で示されるボロン酸エステルと反応させる工程を含む方法。
【請求項19】
反応が、Rが、水素原子、ヒドロキシ基、又は直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基を表す、式(VIII)の化合物の、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中での塩基の存在下での作用からなる、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
反応が、Rが、(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す、式(VIII)の化合物の、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中での塩基及びパラジウム錯体の存在下での作用からなる、請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
式(II):
【化41】
[式中、
R
1
は直鎖若しくは分岐(C
1
-C
6
)アルキル基であり、そしてR
2は
ハロゲン原子であり、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表し、
R
4及びR
5は、水素、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基を表すか、又はR
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示される化合物を調製するための方法であって、式(VII):
【化42】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物を、溶媒中で遷移金属錯体及び塩基の存在下でのヒドロキシル化反応に付すと、式(VI):
【化43】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(VI)の化合物を、溶媒中で臭素化剤の存在下での位置選択的一臭素化反応に付すと、式(IV):
【化44】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(IV)の化合物を、
アニソール中で高温で
炭酸セシウム及び式(V):
【化45】
[式中、R
3は、前記と同義であり、そしてX
-は、一価のアニオン性対イオンを表す]で示される化合物の存在下で反応させると、式(I):
【化46】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(I)の化合物を、式(VIII):
【化47】
[式中、R
4及びR
5は、式(II)と同義であり、そしてRは、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、又は(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す]で示されるボロン酸エステルの存在下でのホウ素化反応に付すと、式(II)の化合物が生成することを特徴とする方法。
【請求項22】
R
3が、メチル基を表す、請求項1~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
R
1及びR
3が、メチル基を表し、そしてR
2が、塩素原子を表す、請求項
1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(I)の化合物又は式(II)の化合物の合成
のための、請求項
11に記載の式(VII)の化合物
の使用。
【請求項25】
2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又は2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の合成
のための、R
1が、メチル基を表し、そしてR
2が、塩素原子を表す、請求項
11に記載の式(VII)の化合物
の使用。
【請求項26】
式(I)の化合物又は式(II)の化合物の合成
のための、請求項1に記載の式(V)の化合物
の使用。
【請求項27】
2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又は2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の合成
のための、R
3が、メチル基を表す、請求項1に記載の式(V)の化合物
の使用。
【請求項28】
式(II)の化合物を使用することによる、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又は2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の合成のための方法であって、式(II)の化合物が、請求項
23に記載の方法によって得られることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項
23に記載の式(II)の化合物の調製の過程で1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを使用することによる、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又は2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の合成のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペラジニル-エトキシブロモフェニル及びピペラジニル-エトキシフェニルボロン酸誘導体を調製するための新しい方法、及びそれらを含有する化合物の製造におけるその応用に関する。
【0002】
更に具体的には、本発明は、1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン及び1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンを調製するための新しい方法、及びそれらを含有する化合物の製造におけるその応用に関する。
【0003】
更になお具体的には、本発明は、1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンを調製するための新しい方法、並びに2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(本明細書では「化合物1」と呼ばれる)、及び2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(本明細書では「化合物2」と呼ばれる)の製造におけるその応用に関する。
【0004】
詳細には、本発明は、式(I):
【0005】
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表し、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表す]で示されるピペラジニル-エトキシブロモフェニル化合物を調製するための方法に関する。
【0006】
詳細には、本発明は、式(I):
[式中、
R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン原子又は直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基を表し、
R3は、直鎖又は分岐(C1-C6)アルキル基を表す]で示される化合物を調製するための方法に関する。
【0007】
本発明はまた、式(II):
【0008】
【化2】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表し、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表し、
R
4及びR
5は、水素、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基を表すか、又はR
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示されるピペラジニル-エトキシフェニルボロン酸化合物を調製するための方法に関する。
【0009】
詳細には、本発明は、式(II):
[式中、
R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン原子又は直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基を表し、
R3は、直鎖又は分岐(C1-C6)アルキル基を表し、
R4及びR5は、水素、直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基を表すか、又はR4及びR5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示される化合物を調製するための方法に関する。
【0010】
更に詳細には、本発明は、式(III):
【0011】
【化3】
で示される1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンを調製するための方法に関する。
【0012】
本発明の方法により得られた式(I)、(II)及び(III)の化合物は、それらの構造的に近い類似体と同様に、化合物1の合成において又は化合物2の合成において有用である。
【0013】
具体的には、化合物1及び化合物2は、アポトーシス促進特性を有し、特に、種々のタイプの癌で過剰発現される抗アポトーシスBcl-2ファミリーメンバーであるMcl-1タンパク質を阻害することができ、このため、例えば、癌の処置、並びに免疫及び自己免疫疾患の処置におけるような、アポトーシスの欠陥を伴う病態において化合物1及び化合物2を使用することが可能になる。
【0014】
これらの化合物の医薬的価値を考慮すると、工業規模に容易に移行可能であり、経済的で容易に入手可能な出発物質から出発して、良好な収率及び優れた純度の化合物1又は化合物2をもたらす効果的な合成方法によって、これらを得られることが重要である。
【0015】
化合物1の調製及び多様な癌モデルに対するその薬理学的効果は、文献に記載されている(Kotschy et al. Nature 2016, 538, 477-482 及び対応する補足情報(引用例として本明細書に取り込まれる))。更に、化合物1、化合物2及びそれらの構造的に近い類似体、それらの調製法、癌の処置のためのMcl-1阻害剤としてのそれらの使用、並びにそれらの医薬製剤は、WO 2015/097123に記載されている。詳細には、式(III)の化合物を合成するための方法は、式(III)の化合物が4-ブロモ-2-クロロ-フェノールから出発して5工程で得られる、WO 2015/097123の調製法5bに具体的に開示されている。最近、CN 107573360もまた、5工程での4-ブロモ-2-クロロ-フェノールからの式(III)の化合物の代替調製法を開示している。更に、式(III)の化合物及びその調製法はまた、WO 2016/207226、WO 2016/207217、WO 2016/207216及びWO 2017/125224にも具体的に開示されている。しかし、工業規模に移行すると、その方法を実施することの難しさが急速に明らかになった:詳細には、保護工程中に非常に可燃性で爆発可能性のある試薬を使用するリスク、メチル化反応中の選択性の欠如、並びにホウ素化及び光延反応中の低い収率及び多数の副産物。
【0016】
更には、式(II)の化合物を合成するための代替法が、WO 2015/097123に具体的に開示されているが、ここで式(II)の化合物は、2,3-二置換フェノールから出発して3工程で得られる。しかし、工業規模に移行するとまた、その方法を実施することの難しさが急速に明らかになった:詳細には、臭素化工程中の低い収率、光延反応中の低い収率及び多数の副産物、並びにホウ素化工程中の低い収率。
【0017】
その結果、新しい効率的な合成経路の探索はなお進行中であり、出願人は、式(I)、(II)又は(III)の化合物を、再現可能な方法で、優れた収率で、面倒な精製の必要なく、薬学的に許容し得る中間体としての使用に適合する純度で得られる、新しい合成法を開発するために研究を続けてきた。
【0018】
特に、出願人は今や、1,2-二置換-3-ブロモフェニル誘導体を出発物質として使用して、面倒な精製を必要とせずに再現可能な方法で式(I)及び(II)の化合物を得ることができる新しい合成方法を開発した。この新しい出発物質は、単純であり、より低コストで大量に容易に入手できるという利点を有する。詳細には、出願人は、出発物質として3-ブロモ-2-クロロトルエンを使用して、面倒な精製を必要とせずに再現可能な方法で式(III)の化合物を得ることができる新しい工業的合成方法を開発した。3-ブロモ-2-クロロトルエンはまた、その構造中にメチル基を有するという利点があり、これにより、工業規模に移行するときに問題となった工程である、非選択的なメチル化工程を合成に組み込む必要がなくなる。
【0019】
本発明の新しい方法は、効率的な位置選択的一臭素化反応、1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン化合物の優れた開環反応、及び効果的なホウ素化反応を使用するという利点を有する。試薬としてN-ブロモスクシンイミド(NBS)を使用する、式(VI)の化合物、詳細には2-フルオロ-3-メチル-フェノールの臭素化反応は、WO 2015/162515に既に開示されている。しかし、NBS試薬を使用すると、望ましくない二臭素化副産物が生成し、収率が低下することが見い出された。1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン化合物の開環反応は、既に文献に記載されている(Maras et al. Organic and Biomolecular Chemistry 2012, 10, 1300-1310(引用例として本明細書に取り込まれる))。しかし、出願人は、Marasの発表では遠ざけようと教示される予期せぬ実験条件を発見した。
【0020】
本発明の方法の要約は、以下のスキーム1に示される。
【0021】
【0022】
1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン誘導体の開環反応:(IV)+(V)→(I)
本発明の特定の実施態様は、式(I):
【0023】
【化5】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表し、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表す]で示される化合物を調製するための方法であって、
式(IV):
【0024】
【化6】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物を式(V):
【0025】
【化7】
[式中、R
3は、前記と同義であり、そしてX
-は、一価のアニオン性対イオンを表す]で示される化合物と、溶媒中で、塩基の存在下で高温で反応させる工程を含む方法に関する。
【0026】
1つの実施態様において、式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために使用できる溶媒は、好ましくは極性非プロトン性溶媒である。式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために使用できる極性非プロトン性溶媒の中で、アニソール、ピリジン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジグリム、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、スルホラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために使用される溶媒はまた、前述の溶媒のうちの2つ以上の溶媒の混合物から構成されてもよい。
【0028】
式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される溶媒はアニソールである。
【0029】
好ましくは、式(IV)の化合物を式(I)の化合物に変換する反応は、135℃より高温で、更に好ましくは140℃~150℃で実施される。式(IV)の化合物を式(I)の化合物に変換するための1つの有利な実施態様は、135℃~145℃で反応を実施することである。式(IV)の化合物を式(I)の化合物に変換するための1つの他の有利な実施態様は、140℃で反応を実施することである。
【0030】
式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために使用できる塩基の中で、カリウムtert-ブトキシド、リチウムtert-ブトキシド、酢酸カリウム、リチウムエトキシド、炭酸塩(炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなど)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
式(I)の化合物を形成する式(IV)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される塩基は、炭酸塩、更に好ましくは炭酸セシウムである。
【0032】
式(I)の化合物は、遊離塩基、一ハロゲン化水素酸塩、又は二ハロゲン化水素酸塩として単離することができる。好ましくは、式(I)の化合物は、一ハロゲン化水素酸塩又は二ハロゲン化水素酸塩として単離することができる。更に好ましくは、式(I)の化合物は、二ハロゲン化水素酸塩として、更により好ましくは、二塩酸塩として単離される。
式(I)の化合物の一ハロゲン化水素酸塩としての単離は、好ましくは、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサン、シクロペンチルメチルエーテル又は酢酸エチル中で、更に好ましくは、tert-ブチルメチルエーテル中で行われる。
式(I)の化合物の二ハロゲン化水素酸塩としての単離は、好ましくは水中で行われる。
【0033】
式(V)の化合物は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCOとしても知られる;CAS番号:280-57-9)から得られる。式(V)の化合物は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを、ハロゲン化アルキル、トシル酸アルキル、硫酸アルキル又はメシル酸アルキルから選択されるアルキル化剤と反応させることによって合成することができる。詳細には、式(V)の化合物は以下のとおり定義される:
【0034】
【化8】
[式中、R
3は、前記と同義であり、そしてX
-は、ハロゲン化物、トシラート、スルファート又はメシラートから選択される一価のアニオン性対イオンを表す]。
【0035】
有利には、式(V)の化合物は以下のとおり定義される:
【0036】
【化9】
[式中、R
3は、メチル基を表し、そしてX
-は、トシラート対イオンを表す]。
【0037】
好ましくは、式(V)の化合物は、ハロゲン化メチル、トシル酸メチル(4-メチルベンゼン-1-スルホナートとしても知られる)、硫酸メチル又はメシル酸メチル、更に好ましくはトシル酸メチルから選択されるメチル化剤を用いて合成することができる。
【0038】
式(V)の化合物は、別々に又はin situで、好ましくはin situで合成することができる。
【0039】
特定の実施態様において、式(I)の化合物は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを使用することによって得られる。
【0040】
位置選択的一臭素化反応:(VI)→(IV)
本発明の特定の実施態様は、式(IV):
【0041】
【化10】
[式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表す]で示される化合物が、式(VI):
【0042】
【化11】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物の、溶媒中での臭素化剤の存在下での位置選択的一臭素化反応により得られる方法に関する。
【0043】
本発明の方法において、式(VI)の化合物を式(IV)の化合物に変換する反応は、1当量の臭素化剤の存在下で実施される。
【0044】
式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために使用できる臭素化剤の中で、N-ブロモスクシンイミド、臭素、臭化ナトリウム/トリクロロイソシアヌル酸、臭素/酢酸ナトリウム、ブロモトリクロロメタン、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラブロモメタン、四臭化炭素、三臭化テトラブチルアンモニウム、三臭化トリメチルフェニルアンモニウム、三臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、過臭化臭化ピリジニウム、過臭化臭化4-ジメチルアミノピリジニウム、三臭化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン三臭化水素酸塩、N-ブロモフタルイミド、N-ブロモサッカリン、N-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-2-シアノ-N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸、ブロモイソシアヌル酸一ナトリウム水和物、三臭化ホウ素(ジクロロメタン中17%、約1mol/L)、三臭化ホウ素(ヘプタン中29%、約1mol/L)、三臭化リン、臭化ブロモジメチルスルホニウム、5,5-ジブロモメルドラム酸、2,4,4,6-テトラブロモ-2,5-シクロヘキサジエノン、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)-ヘキサフルオロリン酸ブロモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される臭素化剤は、N-ブロモスクシンイミド、臭素、臭化ナトリウム/トリクロロイソシアヌル酸又は臭素/酢酸ナトリウム、更に好ましくは臭素、臭化ナトリウム/トリクロロイソシアヌル酸又は臭素/酢酸ナトリウム、更により好ましくは、臭素である。
【0046】
式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために使用できる溶媒の中で、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、水、メタノール、酢酸、硫酸、臭化水素酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために使用される溶媒はまた、前述の有機溶媒のうちの2つ以上の溶媒の混合物から構成されてもよい。
【0048】
式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される溶媒は、酢酸、ジクロロメタン、メタノールと硫酸との混合物、又は酢酸とジクロロメタンとの混合物である。好ましい実施態様において、式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために使用される溶媒は、酢酸とジクロロメタンとの混合物、更に好ましくは、ジクロロメタン中の10%v/v~100%v/v酢酸の混合物、更により好ましくは、ジクロロメタン中の15%v/v~30%v/v酢酸の混合物である。有利には、式(IV)の化合物を形成する式(VI)の化合物の変換を実施するために使用される溶媒は、25%v/v酢酸とジクロロメタンとの混合物である。
【0049】
好ましくは、式(VI)の化合物を式(IV)の化合物に変換する反応は、-20℃~30℃の間、更に好ましくは-15℃~5℃の間、更により好ましくは-15℃~5℃の間で行われる。他の好ましい実施態様において、式(VI)の化合物を式(IV)の化合物に変換する反応は、-5℃~5℃の間で実施される。
【0050】
好ましくは、臭素化反応は、式(VI)の化合物を約10~約20、更に好ましくは約10~約15、更により好ましくは約10容量の有機溶媒又は有機溶媒の混合物で希釈することによって実施することができる。
【0051】
ヒドロキシル化反応:(VII)→(VI)
本発明の特定の実施態様は、式(VI):
【0052】
【化12】
[式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表す]で示される化合物が、式(VII):
【0053】
【化13】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物の、溶媒中での遷移金属錯体及び塩基の存在下でのヒドロキシル化反応により得られる方法に関する。
【0054】
本発明の方法において、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、種々の金属触媒を用いたヒドロキシル化反応(Maleczka et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 7792-7793; Willis, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 3402-3404; Alonso et al., Chem. Eur. J. 2010, 16, 5274-5284; Enthaler et al., Chem. Soc. Rev. 2011, 40, 4912-4924; Xia et al., J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 13493-13496(引用例として本明細書に取り込まれる))によって実施することができる。有利には、本発明の方法において、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、パラジウム触媒及び配位子を含むパラジウム錯体である遷移金属錯体の存在下で実施することができる。
【0055】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために使用できるパラジウム触媒の中で、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム Pd2(dba)3、酢酸パラジウム(II) Pd(OAc)2、パラジウム担持炭素 Pd/C、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム Pd(PPh3)4等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために好ましく使用されるパラジウム触媒は、Pd2(dba)3である。
【0057】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために使用できる配位子の中で、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル XPhos、2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル t-BuXPhos等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される配位子は、t-BuXPhosである。
【0059】
本発明の方法において、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、少なくとも0.01当量、更に好ましくは少なくとも0.0075当量のパラジウム触媒の存在下で実施される。式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、少なくとも0.03当量、更に好ましくは少なくとも0.02当量の配位子の存在下で実施される。有利には、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、少なくとも0.01当量のパラジウム触媒及び少なくとも0.03当量の配位子の存在下で実施される。更に有利には、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する反応は、0.01当量のパラジウム触媒及び0.04当量の配位子の存在下で実施される。
【0060】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために使用できる塩基の中で、酢酸カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化物塩(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウムなど)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される塩基は、水酸化物塩、更に好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、更により好ましくは水酸化カリウムである。
【0062】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために使用できる溶媒の中で、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、ヘプタン、水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために使用される溶媒はまた、前述の有機溶媒のうちの2つ以上の溶媒の混合物、又は水と前述の有機溶媒の中からの溶媒との混合物から構成されてもよい。
【0064】
式(VI)の化合物を形成する式(VII)の化合物の変換を実施するために好ましく使用される溶媒は、1,4-ジオキサン又は水と1,4-ジオキサンとの混合物、更に好ましくは水と1,4-ジオキサンとの混合物である。有利には、水中の1,4-ジオキサンの割合は、少なくとも5%、更に好ましくは少なくとも15%、更により好ましくは少なくとも25%である。
【0065】
有利な実施態様は、式(VI)の化合物を単離することなく、式(VII)の化合物を式(IV)の化合物に変換する、ヒドロキシル化及び位置選択的一臭素化反応の一連の反応に関する。そのような有利な実施態様の間、式(VI)の非単離化合物の式(IV)の化合物への変換を実施するために使用される有機溶媒は、溶媒の混合物、好ましくは1,4-ジオキサン、酢酸及びジクロロメタンの混合物から構成されるが、ここで、1,4-ジオキサンは、前記ヒドロキシル化工程(即ち、式(VII)の化合物の式(VI)の化合物への変換工程)に由来する残留溶媒である。
【0066】
ホウ素化反応:(I)→(II)
本発明の特定の実施態様は、式(II):
【0067】
【化14】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表し、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表し、
R
4及びR
5は、水素、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基を表すか、又はR
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示される化合物を調製するための方法であって、
式(I):
【0068】
【化15】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である]で示される化合物を、式(VIII):
【0069】
【化16】
[式中、R
4及びR
5は、前記と同義であり、そしてRは、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、又は(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す]で示されるボロン酸エステルと反応させる工程を含む方法に関する。
【0070】
本発明の方法において、式(I)の化合物の式(II)の化合物への変換は、Rが、水素原子、ヒドロキシ基、又は直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルコキシ基を表す、式(VIII)の化合物の、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中での塩基の存在下での作用からなる。有利には、式(I)の化合物を式(II)の化合物に変換する反応は、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフラン、更に好ましくは2-メチルテトラヒドロフラン中で実施される。好ましくは、式(I)の化合物を式(II)の化合物に変換する反応は、n-ブチルリチウムの存在下で実施される。
【0071】
あるいは、本発明の方法において、式(I)の化合物の式(II)の化合物への変換は、Rが(C0-C6)アルキル-B(OR4)(OR5)基を表す、式(VIII)の化合物の、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中での塩基及びパラジウム錯体の存在下での作用からなる(宮浦ホウ素化)。有利には、前記パラジウム錯体は、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド Pd(PPh3)2Cl2である。
【0072】
式(I)の化合物は、好ましくは、それを式(II)の化合物に変換するための遊離塩基として使用される。式(I)の化合物が二ハロゲン化水素酸塩であるとき、式(II)の化合物を形成する式(I)の化合物の変換を実施するために、追加2当量の前記塩基が有利には反応混合物に加えられる。
【0073】
式(II)の化合物を形成する式(I)の化合物の変換を実施するために、式(I)の化合物は、式(IV)の化合物と式(V)の化合物との反応から有利には得られる。
【0074】
有利には、本発明は、式(II):
【0075】
【化17】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルコキシ基、ヒドロキシル基又はシアノ基を表し、
R
3は、直鎖又は分岐(C
1-C
6)アルキル基を表し、
R
4及びR
5は、水素、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基を表すか、又はR
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する]で示される化合物を調製するための方法であって、式(VII):
【0076】
【化18】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物を、溶媒中で遷移金属錯体及び塩基の存在下でのヒドロキシル化反応に付すと、式(VI):
【0077】
【化19】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(VI)の化合物を、溶媒中で臭素化剤の存在下での位置選択的一臭素化反応に付すと、式(IV):
【0078】
【化20】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(IV)の化合物を、溶媒中で高温で塩基及び式(V):
【0079】
【化21】
[式中、R
3は、前記と同義であり、そしてX
-は、一価のアニオン性対イオンを表す]で示される化合物の存在下で反応させると、式(I):
【0080】
【化22】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(I)の化合物を、式(VIII):
【0081】
【化23】
[式中、R
4及びR
5は、式(II)と同義であり、そしてRは、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、又は(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す]で示されるボロン酸エステルの存在下でのホウ素化反応に付すと、式(II)の化合物が生成することを特徴とする方法に関する。
【0082】
具体的な実施態様において、R1は、好ましくはハロゲン原子又は直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基、更に好ましくはフッ素原子、塩素原子、エチル基又はメチル基、更により好ましくはメチル基を表す。R2は、有利にはハロゲン原子又は直鎖若しくは分岐(C1-C6)アルキル基、更に有利には塩素原子又はメチル基、更により有利には塩素原子を表す。詳細には、R3はメチル基を表す。更に詳細には、R1は直鎖又は分岐(C1-C6)アルキル基を表し、R2はハロゲン原子を表し、そしてR3はメチル基を表す。更により詳細には、R1及びR3はメチル基を表し、そしてR2は塩素原子を表す。好ましくは、R4及びR5は、これらを有する酸素原子と共に、ジオキサボレタン、ジオキサボロラン、ジオキサボリナン、又はジオキサボレパン、更に好ましくはジオキサボロラン環であってよい環を形成する。有利には、R4及びR5は、これらを有する酸素原子と共に、1~4個の直鎖又は分岐(C1-C6)アルキル基により置換されていてもよい環を形成する。更に有利には、R4及びR5は、これらを有する酸素原子と共に、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル環を形成する。
【0083】
有利には、本発明は、式(III):
【0084】
【化24】
で示される化合物を調製するための方法であって、式(VII):
【0085】
【化25】
[式中、R
1は、メチル基を表し、そしてR
2は、塩素原子を表す]で示される化合物を、溶媒中で遷移金属錯体及び塩基の存在下でのヒドロキシル化反応に付すと、式(VI):
【0086】
【化26】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(VI)の化合物を、溶媒中で臭素化剤の存在下での位置選択的一臭素化反応に付すと、式(IV):
【0087】
【化27】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(IV)の化合物を、溶媒中で高温で塩基及び式(V):
【0088】
【化28】
[式中、R
3は、メチル基を表し、そしてX
-は、一価のアニオン性対イオンを表す]で示される化合物の存在下で反応させると、式(I):
【0089】
【化29】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である]で示される化合物が生成し、
そしてこの式(I)の化合物を、式(VIII):
【0090】
【化30】
[式中、R
4及びR
5は、これらを有する酸素原子と共に、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル環を形成し、そしてRは、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分岐(C
1-C
6)アルコキシ基、又は(C
0-C
6)アルキル-B(OR
4)(OR
5)基を表す]で示されるボロン酸エステルの存在下でのホウ素化反応に付すと、式(III)の化合物が生成することを特徴とする方法に関する。
【0091】
式(V)、(VII)及び(VIII)の化合物は、市販されているか、又は通例であるか若しくは文献に記載されている化学反応を使用して当業者には容易に入手可能である。
【0092】
本方法は、以下の理由で特に有利である:
- 面倒な精製を必要とせずに、単純で低コストの出発物質から出発して、優れた収率で工業規模で、式(I)の化合物が得られる;
- 面倒な精製を必要とせずに、単純で低コストの出発物質から出発して、優れた収率で工業規模で、式(II)の化合物、更に詳細には式(III)の化合物が得られる;
- 揮発性の中間体、更には可燃性が高く爆発の可能性のある試薬の使用を回避できる;
- 標準的な結晶化法を使用して、高レベルの純度を達成できる。
【0093】
本発明はまた、式(I)の化合物又は式(II)の化合物の合成のための式(VII)の化合物の使用に関する。あるいは、本発明はまた、化合物1又は化合物2の合成のための式(VII)[式中、R1は、メチル基を表し、そしてR2は、塩素原子を表す]の化合物の使用に関する。
【0094】
本発明はまた、式(I)の化合物又は式(II)の化合物の合成のための式(V)の化合物の使用に関する。あるいは、本発明はまた、化合物1又は化合物2の合成のための式(V)[式中、R3は、メチル基を表す]の化合物の使用に関する。
【0095】
これにより得られる式(II)の化合物又は式(III)の化合物は、次にWO 2015/097123に記載されるような一連の通常の化学反応に付されると、化合物1又は化合物2、更にはそれらの構造的に近い類似体が生成する。有利には、本発明により得られる式(III)の化合物は、化合物1又は化合物2の調製のための、鈴木型クロスカップリング反応などのクロスカップリング反応に使用することができる。
有利には、化合物1又は化合物2は、式(II)の化合物又は式(III)の化合物の調製の過程で1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを使用することによって得られる。
【0096】
反応経路を正しく検証するために、合成中間体を体系的に単離して特性評価した。ただし、単離される中間体の数を制限することにより、手順を大幅に最適化することができる。
好ましくは、反応物は、適切な機械的撹拌機又は撹拌器を使用して、反応期間中、撹拌される。反応は、温度、希釈容量、触媒、反応混合物中の物質の濃度及び/又は性質に応じて、約2時間~約24時間以上実施することができる。本明細書に使用されるとき「約」という用語は、+/-5%、特に+/-2%、更に詳細には+/-1%を意味する。
記載される化合物の構造は、通常の分光法によって確認された。例えば、1H NMRデータは、内部標準として溶媒の残留ピーク(CDCl3では7.26ppm)を使用して、100万分の1(ppm)で与えられるデルタ値の形式になっている。分裂パターンは、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、m(マルチプレット)、br又はbrs(ブロードシングレット)として指定される。
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0097】
2-クロロ-3-メチルフェノールの調製(ヒドロキシル化反応)
ジオキサン(12.5mL)中の1-ブロモ-2-クロロ-3-メチルベンゼン(5.00g;24.33mmol)の溶液及び水(12.5mL)中の水酸化カリウム(2.25g;40.14mmol)の溶液を窒素で15分間脱気した。溶液を合わせた。t-BuXPhos(827mg;1.95mmol)及びPd2(dba3)(446mg;0.48mmol)を加え、反応混合物を密閉チューブ内で100℃で35分間加熱した。反応混合物を20℃に冷却し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。水相を1N NaOH溶液で逆抽出し、3N 塩酸溶液でpH4に酸性化し、そしてジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、標題化合物を淡黄色の固体として与えた(2.8g、収率80%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 6.97-7.11 (m, 1H); 6.73-6.90 (m, 2H); 5.88 (brs, 1H); 2.37 (s, 3H)
【実施例2】
【0098】
4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノールの調製(位置選択的一臭素化反応)
ジクロロメタン(1.94L;2容量)中の臭素(1089g;6.82mol)の溶液を、ジクロロメタン(5.35L;5.5容量)及び酢酸(2.43L;2.5容量)の混合物中の2-クロロ-3-メチルフェノール(972g;6.82mol)(上記の実施例1に記載されたとおり得ることができる)の溶液に0℃で加えた。0℃で15分間撹拌後、反応混合物を室温で温め、水及び5% KHCO3溶液で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、生成物を濃縮乾固により得て、次の工程にそのまま持ち越した(1.44kg;95%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.35 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 6.78 (d, J = 8.6 Hz, 1H); 5.64 (brs, 1H); 2.49 (s, 3H)
13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ ppm 150.7, 135.9, 131.2, 121.1, 115.3, 114.5, 20.8
LC-MS [ESI-] m/z: 219.0, 219.8 [M+H]+
【実施例3】
【0099】
4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノールの調製(位置選択的一臭素化反応-その他の条件)
溶媒中の臭素化剤(1当量)の溶液を0℃で溶媒中の2-クロロ-3-メチルフェノール(100mg)の溶液に加えた。0℃で15分間撹拌後、反応混合物を水及び5% KHCO3溶液で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、生成物を濃縮乾固により得て、次の工程にそのまま持ち越した。期待される生成物の構造は1H NMRによって確認され、デルタ値は上記の実施例2で見られたものと同じである。
【0100】
【実施例4】
【0101】
4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノールの調製(ワンポットヒドロキシル化及び位置選択的一臭素化反応)
1,4-ジオキサン(710mL;2.0容量)及び水(2150mL;6.0容量)中の1-ブロモ-2-クロロ-3-メチルベンゼン(354g;1.72mol)及び水酸化カリウム(242g;4.30mol)の溶液を撹拌下で窒素で15分間脱気した。t-BuXphos(29.2g;0.069mol)及びPd2(dba)3(15.8g;0.017mol)を加え、懸濁液を60分間加熱還流(90~95℃)した。反応の完了はHPLCにより確認された。得られた懸濁液を20~25℃に冷却した。tert-ブチルメチルエーテル(800mL)を加え、二相混合物を10~15分間撹拌した。セライトのパッドで濾過することにより触媒残渣を除去し、濾滓をtert-ブチルメチルエーテル及び1N水酸化カリウム溶液で濯いだ。水相をtert-ブチルメチルエーテルで3回洗浄し、次に12N塩酸溶液でpH1~2に酸性化した。溶液をジクロロメタンで3回抽出し、次の工程で適切な濃度ではめ込むために、次に溶液の容量をジクロロメタンで調整した(1153mL、フェノールに対して5.0容量)。溶液中の2-クロロ-3-メチルフェノールの濃度は、定量的GC-FID分析によって決定された(128.1mg/mL;230.6g;1.617mol)。
2-クロロ-3-メチルフェノールの溶液を5.0Lの反応器に仕込み、酢酸(584mL;フェノールに対して2.5容量)を加えた。次に溶液を窒素下で-10℃/-15℃に冷却して、ジクロロメタン(477mL;フェノールに対して2.1容量)中の臭素(258.5g;1.617mol)の溶液を、-13℃~-7℃の間で70分で加えた。ジクロロメタン(20mL;0.06容量)中の追加の臭素(3.5g;0.022mol)を加えた。水(1.4L)を-11℃~2℃の間で10分で加えた。溶液を20~25℃に温め、亜硫酸水素ナトリウム(50g;0.48mol)を加えた。溶液を15~20分間撹拌した。相を分離し、次に水相をジクロロメタンで抽出した。プールした有機相を水で2回、10%重炭酸カリウム溶液及び食塩水で2回洗浄した。溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させた。残滓をジクロロメタンで洗浄した。溶媒を真空下で蒸発させ、残留1,4-ジオキサンをヘプタンと共沸させて、標題の生成物を淡褐色の固体として与えた(353g、粗収率:92.6%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.35 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 6.78 (d, J = 8.6 Hz, 1H); 5.64 (brs, 1H); 2.49 (s, 3H)
13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ ppm 150.7, 135.9, 131.2, 121.1, 115.3, 114.5, 20.8
LC-MS [ESI-] m/z: 219.0, 219.8 [M+H]+
【実施例5】
【0102】
1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジンの調製(1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンの開環)
アニソール(320mL)中の4-メチルベンゼン-1-スルホン酸メチル(592g;3.18mol)の溶液をアニソール(6.4L)中の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(389g;3.47mol)の溶液に15分かけて加えた。70℃で1時間撹拌後、激しい撹拌下で、Cs2CO3(1130g;3.466mol)を5分かけて何回かに分けて加えた。アニソール(0.64L)中の4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノール(640g;2.89モル)(上記の実施例2又は3に記載されたとおり得られた)の溶液を10分かけて加えた。反応混合物を140℃で6時間撹拌した。室温に冷却後、tert-ブチルメチルエーテル及び酢酸エチルを加え、混合物を水及び食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、得られた生成物溶液を次の工程のために保持した。
tert-ブチルメチルエーテル(1.28L)及びエタノール(219mL;3.75mol)の混合物を、混合物の温度を25℃未満に保ちながら、塩化アセチル(272g;3.46mol)の溶液に30分かけて加えた。30分間撹拌後、得られた溶液を室温で1時間かけて、上記で得られた有機相に加えた。得られた懸濁液を1時間撹拌後、生成物を濾過により収集し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。固体をジクロロメタンに溶解し、1N NaOH水溶液をアルカリ性になるまで加えた。分離後、水層をジクロロメタンで洗浄し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。2-メチルテトラヒドロフランを加え、セライトパッドで濾過した後、濾滓を2-メチルテトラヒドロフランで洗浄して、溶媒を蒸発させると、琥珀色の油(894g;89%)が生成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.33 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 6.63 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 4.09 (t, J = 5.8 Hz, 2H); 2.83 (t, J = 5.8 Hz, 3H); 2.63 (brs, 4H); 2.47 (s, 4H); 2.37-2.45 (m, 2H); 2.25 (s, 3H)
【実施例6】
【0103】
一塩酸塩としての1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジンの調製(1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンの開環)
アニソール(235mL)中の4-メチルベンゼン-1-スルホン酸メチル(435g;2.34mol)の溶液をアニソール(4.7L)中の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(286g;2.55mol)の溶液に15分かけて加えた。白色の濃厚な懸濁液を70℃に60分間加熱した。炭酸セシウム(831g;2.55mol)を一度に加え、次にアニソール(470mL)中の4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノール(470g;2.12mol)(上記の実施例2又は3に記載されたとおり得られた)の溶液を70℃で12分で加えた。褐色の懸濁液を140℃に6時間加熱し、HPLCにより反応の完了を確認した。水、tert-ブチルメチルエーテル及び酢酸エチルを加え、二相混合物を10分間撹拌した。層を分離し、次に水相をtert-ブチルメチルエーテル及び酢酸エチルの1:1混合物で抽出した。プールした有機相を食塩水で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで約30分間乾燥させた。懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、次に濾滓をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。遊離塩基の溶液を別に取っておいた。
塩化アセチル(200g;2.55mol)を、エタノール(127g;2.76mol)及びtert-ブチルメチルエーテル(940mL)の冷却(0~5℃)混合物に3℃~12℃の間で35分で加えた。溶液を30分間撹拌し、次にこれを20℃~25℃の間で60分で遊離塩基の溶液に加えた。白色の懸濁液を20~25℃で60分間撹拌し、次にブフナーフィルターで濾過することにより固体を収集し、濾滓をtert-ブチルメチルエーテルで2回洗浄した。濾滓をフラスコに戻し、tert-ブチルメチルエーテル中で60分間粉砕した。懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、濾滓をtert-ブチルメチルエーテルで2回洗浄した。固体を真空下で70~75℃で、恒量が観測されるまで乾燥させて、GC-FIDにより純度97.1%のオフホワイト色の固体(761g、収率:93.2%)として標題の生成物を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ ppm 11.10 (brs, 1H); 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 7.01 (d, J = 9.1 Hz, 1H); 4.27 (brs, 2H); 3.39 (brs, 10H); 2.72 (brs, 3H); 2.44 (s, 3H)
【実施例7】
【0104】
二塩酸塩としての1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジンの調製
蒸留モードに設定された22L丸底フラスコに、1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン、HCl塩(1490g;3.88mol)(上記の実施例6に記載されたとおり得られた)及び水(14.9L)を仕込んだ。水を部分的に蒸留して(2.98L)、50~55℃及び40~45Torrでの共沸により残留アニソールを除去した。溶液を45℃に冷却し、次に12N塩酸(646mL;7.76mol)を5分で加えた。週末にかけて溶液をゆっくりと20~25℃まで冷却した。次に懸濁液を0~5℃に冷却し、ブフナーフィルターで濾過して、フラスコを冷(0~5℃)水(250mL)で濯いだ。濾滓をアセトンで2回洗浄した。固体をフラスコに戻し、アセトン中で90分間粉砕した。懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、濾滓をアセトンで2回洗浄した。固体を真空下75~80℃で24時間乾燥させて、GC-FIDにより純度99.9%の白色固体(1471g、収率:90.2%)として標題の生成物を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ ppm 10.91-13.60 (m, 2H); 7.56 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 7.03 (d, J = 9.1 Hz, 1H); 4.45 (brs, 2H); 3.58 (brs, 10H); 2.79 (brs, 3H); 2.44 (s, 3H)
13C NMR (101 MHz, CD3OD, D2O): δ ppm 153.7, 137.9, 132.0, 124.6, 118.0, 113.7, 65.3, 56.9, 51.2, 50.8, 43.7, 20.8
【実施例8】
【0105】
1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンの調製(ホウ素化反応)
実施例5に記載されたとおり得られた(又は実施例6又は7の遊離塩基への変換から得られた)1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン(800.0g;2.30mol)、及び2-メチルテトラヒドロフラン(5.6L)を、窒素下で12Lの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。アセトン-ドライアイス浴を使用して、溶液を-72℃~-76℃の間に冷却した。温度を-62℃~-74℃の間に保ちながら、ヘキサン中の2.5M n-ブチルリチウムの溶液(1196mL;2.99mol)を1.5時間かけて加えた。得られた黄色の溶液を-72℃~-76℃の間で1時間撹拌した。次に反応混合物を-65℃~-76℃の間に保ちながら、4,4,5,5-テトラメチル-2-(プロパン-2-イルオキシ)-1,3,2-ジオキサボロラン(556g;2.99mol)を45分かけて加えた。反応混合物を-65℃~-76℃の温度で1時間撹拌した。反応の完了はHPLCによって観察された。次に反応混合物を-25℃に温めた。次にメタノール(200mL)を15分かけて加えた。この溶液を、水(4L)中の塩化アンモニウム(369g;6.90mol)の溶液に注ぎ入れた。相を分離した。有機相を水で洗浄し、次に直接蒸発乾固して無色の油状物を与えた。ヘプタン(2.80L)を加えて、35~40℃で油状物を希釈すると、直ぐに結晶化が起こった。懸濁液を35~40℃で1時間撹拌し、次に5℃に1時間冷却した。固体を濾過により収集し、次にヘプタンで洗浄した。湿った濾滓を高真空下で40~50℃で恒量になるまで乾燥させて、標題の生成物を白色固体として与えた(2.200kg、合計3バッチでの収率85%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.61 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.72 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 4.14 (t, J = 5.9 Hz, 2H); 2.85 (t, J = 5.9 Hz, 2H); 2.64 (brs, 3H); 2,58 (s, 4H); 2.38-2.50 (m, 4H); 2.25 (s, 3H); 1.30 (s, 12H)
【実施例9】
【0106】
1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンの調製(宮浦型ホウ素化反応)
1,4-ジオキサン(200mL)中の、実施例5に記載されたとおり得られた(又は実施例6又は7の遊離塩基への変換から得られた)1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン(20.1g;58mmol)の溶液を20分間窒素で脱気した。酢酸カリウム(19.3g;197mmol)及び4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ-1,3,2-ジオキサボロラン(17.8g;70mmol)を加え、懸濁液を再び20分間脱気した。Pd(PPh3)2Cl2(814mg;1.16mmol)を加え、懸濁液を100℃に2時間加熱した。反応の完了はHPLCにより確認された。懸濁液を20~25℃に冷却して、トルエン(100mL)を加えた。懸濁液をセライト(15g)で濾過し、濾滓をトルエン(40mL)で濯いだ。活性炭(4.0g)を溶液に加え、1時間撹拌した。懸濁液をセライト(15g)及びシリカゲル(15g)で濾過し、次に濾滓をトルエン(40mL)で濯いだ。溶液を濃縮乾固し、ヘプタン(100mL)を加え、濃縮乾固し、この操作をもう一度繰り返した。残渣をヘプタン(150mL)に溶解し、活性炭(4.0g)で60分間処理した。懸濁液をセライト(15g)で濾過し、濾滓をヘプタン(2×20mL)で2回濯いだ。溶液を濃縮乾固し、残渣にヘプタン(40mL)を加え、生成物を20~25℃で4時間かけて結晶化させた。懸濁液を0~5℃に1時間冷却し、生成物を濾過により収集した。濾滓を冷(0~5℃)ヘプタン(20mL)で洗浄し、恒量になるまで固体を35~40℃で乾燥させて、生成物10.1gを白色固体として与えた。母液を濃縮乾固し、次にヘプタン(20mL)を残渣に加え、生成物を20~25℃で4時間かけて結晶化させた。懸濁液を1時間かけて0~5℃に冷却し、生成物を濾過により収集した。濾滓を冷(0~5℃)ヘプタン(10mL)で洗浄し、次に恒量になるまで固体を35~40℃で乾燥させて、生成物5.6gを白色固体として与えた。2つの収量を合わせて合計15.7g(収率69%)を与えた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.64 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.76 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 4.18 (t, J = 5.8 Hz, 2H); 2.88 (t, J = 5.9 Hz, 2H); 2.25-2.83 (m, 14H); 1.34 (s, 12H)
【実施例10】
【0107】
1-{2-[2-クロロ-3-メチル-4-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]エチル}-4-メチルピペラジンの調製(宮浦型ホウ素化反応)
酢酸エチル(10容量)中の1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン二塩酸塩(1000g;1当量;実施例7に記載されたとおり得られた)の溶液に、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ-1,3,2-ジオキサボロラン(784g;1.3当量)、酢酸カリウム(1284g;5.5当量)及びPd(PPh3)2Cl2(50g;0.03当量)を窒素下で加えた。撹拌下で、懸濁液を16時間加熱還流した。20℃に冷却後、反応混合物を濾過し、濾滓を酢酸エチル(1.5容量)で洗浄した。次に有機層を、AcOKでpH7に緩衝された5%のL-アセチル-システイン水溶液(10容量)で洗浄する。層分離後、有機層を2容量に濃縮し、次に真空下30℃でアセトニトリルへと溶媒の切り替えを開始した。次に温度を-10℃に下げると、結晶化が起こった。濾過後、固体を40℃で乾燥させて、標題の生成物を白色固体として与えた(収率48%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 7.64 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.76 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 4.18 (t, J = 5.8 Hz, 2H); 2.88 (t, J = 5.9 Hz, 2H); 2.25-2.83 (m, 14H); 1.34 (s, 12H)
【実施例11】
【0108】
大規模での4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノールの調製(ワンポットヒドロキシル化及び位置選択的一臭素化反応)
反応器に、水(390L、6.0容量)及び水酸化カリウム(52.2kg、790.8mol)を加えて溶解した。溶解熱が冷めたら、1,4-ジオキサン(130L、2容量)及び3-ブロモ-2-クロロトルエン(65kg、316.3mol)を仕込み、撹拌下で窒素で30分間脱気した。t-BuXphos(5.38kg、12.65mol)及びPd2(dba)3(2.90kg、3.16mol)を加え、懸濁液を90分間加熱還流した。GCにより反応の完了を確認し、次に反応混合物を20~25℃に冷却した。t-ブチルメチルエーテル(146L)を加え、二相混合物を20分間撹拌した。反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾滓をt-ブチルメチルエーテル(39L、0.6容量)及び1N水酸化カリウム溶液(78L、1.2容量)で濯ぎ、次に相を分離した。水相をt-ブチルメチルエーテル(3×110.5L、3×1.7容量)で3回洗浄し、次に25~30℃下で12N塩酸でpH1~2に酸性化した。溶液をジクロロメタンで3回(1×110.5L、1.7容量及び2×42.3L、2×0.65容量)抽出した。合わせた有機層を反応器に移した。
酢酸(107.3L、1.65容量)を2-クロロ-3-メチルフェノールの溶液に加えた。溶液を窒素下で-10~-5℃に冷却し、ジクロロメタン(88L、1.35容量)中の臭素(51.1kg、319.5mol)の溶液を-10℃~-2℃の間で1.5時間で加えた。水(260L、4.0容量)を加え、混合物を20~25℃に温めた。亜硫酸水素ナトリウム(9.9kg、94.9mol)を加え、次に溶液を20分間撹拌した。相を分け、次に水相をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を水で2回、10%重炭酸カリウム溶液及び20%塩化ナトリウム溶液で2回洗浄した。溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に濾過して、濾滓をジクロロメタンで洗浄した。溶媒を真空蒸留により除去した。残留1,4-ジオキサンをヘプタンと共沸させて、標題の生成物70.1kgを与えた。(粗収率:100.1%)
1H NMR (600MHz, CDCl3): 2.50 (s, 3H), 5.57 (s, 1H), 6.78 (d, 1H), 7.35 (d, 1H)
【実施例12】
【0109】
大規模での1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン一塩酸塩の調製(1-アルキル-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンの開環)
反応器に、アニソール(701L、10.0容量)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(42.6kg、379.6mol)を仕込み、窒素下で撹拌した。p-トルエンスルホン酸メチル(64.8kg、348.0mol)を何回かに分けて加えた。反応混合物を70℃に1時間加熱した。炭酸セシウム(123.7kg、379.6mol)を一度に加え、次にアニソール(50kg)中の4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノール(70.1kg、316.33mol;実施例11に記載されたとおり得られた)を70℃で加えた。褐色の溶液を140℃に6時間加熱し、反応の完了をGCにより確認した。反応混合物を室温に冷却後、水、t-ブチルメチルエーテル及び酢酸エチルを加え、二相溶液を10分間撹拌した。層を分離し、有機相を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、次に硫酸マグネシウムで乾燥させた。懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、次に濾滓をt-ブチルメチルエーテルで洗浄した。遊離塩基の溶液を反応器に仕込み、後の使用のために別に取っておいた。
反応器に、t-ブチルメチルエーテル(140.2L、2.0容量)及びエタノール(19.0kg、412.4mol)を仕込み、0~5℃に冷却した。塩化アセチル(29.8kg、379.6mol)を10~15℃下で加えた。溶液を30分間撹拌し、次にこれを15℃~25℃の間で遊離塩基の溶液に加えた。白色の懸濁液を20~25℃で60分間撹拌し、次にブフナーフィルターで濾過して、濾滓をt-ブチルメチルエーテルで洗浄した。濾滓及びt-ブチルメチルエーテルを反応器に戻して、60分間撹拌した。懸濁液をブフナーフィルターで濾過して、濾滓をt-ブチルメチルエーテルで洗浄した。固体を真空下で70~75℃で16時間乾燥させて、標題の生成物を白色固体として与えた(101kg、収率:83.1%)。
1H NMR (600MHz, DMSO-d6): 2.42 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 2.8-3.8 (br, 10H), 4.25 (br, 2H), 6.95 (d, 1H), 7.52 (d, 1H)
【実施例13】
【0110】
大規模での1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン二塩酸塩の調製
反応器に、水(1010L、10容量)及び1-[2-(4-ブロモ-2-クロロ-3-メチルフェノキシ)エチル]-4-メチルピペラジン一塩酸塩(101kg、262.9mol;実施例12で記載されたとおり得られた)を仕込んだ。水を部分的に蒸留して、45~50℃及び55~60Torrで共沸により残留アニソールを除去した。12N塩酸(43.8L、525.8mol)を45℃で水溶液に加えた。溶液をゆっくりと15~20℃に3時間で冷却して、更に12時間撹拌した。懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、濾滓を冷水(17L、0.17容量)及びアセトン(200L、2容量)で洗浄した。固体を反応器に戻し、次にアセトンを加え、懸濁液を60分間撹拌して、ブフナーフィルターで濾過した。濾滓をアセトンで洗浄し、75~80℃で24時間真空乾燥して、GC-FIDにより純度99.4%の白色固体として標題の生成物(99.5kg、90.0%)を与えた。
1H NMR (600MHz, DMSO-d6): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 3.2-3.9 (br, 10H), 4.47 (br, 2H), 7.02 (d, 1H), 7.56 (d, 1H)