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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】流体撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 33/301 20220101AFI20240305BHJP
   B01F 25/432 20220101ALI20240305BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240305BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240305BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20240305BHJP
【FI】
B01F33/301
B01F25/432
G01N1/38
G01N35/10 K
B81B1/00
B01F23/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021534534
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011770
(87)【国際公開番号】W WO2021014683
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2019134082
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳子
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-066400(JP,A)
【文献】特開2003-001077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0070572(US,A1)
【文献】特開2008-080330(JP,A)
【文献】特開2012-139621(JP,A)
【文献】特開2001-120971(JP,A)
【文献】特開2007-268489(JP,A)
【文献】特表2000-503894(JP,A)
【文献】米国特許第05904424(US,A)
【文献】米国特許第06296020(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/40-47、25/00-90、33/30-3039
B01J 19/00
B81B 1/00
C12M 1/00-02
G01N 1/38、35/00、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路を内部に有するプレート本体を備え、前記プレート本体に設けた開口を通して前記流路に前記流体を供給して撹拌させる流体撹拌装置であって、
前記流路は、
前記流体が流れる上流側主流路及び下流側主流路と、
上流が前記上流側主流路の上流側に連結され下流が前記下流側主流路の上流側に連結された上流側分岐流路と
上流端が前記上流側主流路の下流側に連結され下流端が前記下流側主流路の下流側に連結された下流側分岐流路
を備え、
前記下流側分岐流路の少なくとも一部の断面積は、前記上流側分岐流路の断面積よりも小さく、かつ前記下流側主流路の断面積よりも小さくした流体撹拌装置。
【請求項2】
前記流路は、
複数の異なる前記流体がそれぞれ流入する複数の前記開口と、
複数の前記開口からそれぞれ延設される複数の供給流路と、
複数の前記供給流路が合流して、複数の異なる前記流体が混合される混合部と、
を備えた請求項1に記載の流体撹拌装置。
【請求項3】
前記流路は、前記上流側主流路、前記下流側主流路、前記上流側分岐流路及び前記下流側分岐流路とを一組として、前記流体の流れ方向に直列に複数組み備える請求項1又は2に記載の流体撹拌装置。
【請求項4】
前記上流側分岐流路及び前記下流側分岐流路を含む、複数の分岐流路に含まれる、前記下流側分岐流路の少なくとも一部の高さが、前記複数の分岐流路に含まれる、前記下流側分岐流路以外の他の前記分岐流路の高さよりも小さい請求項1~3の何れか一項に記載の流体撹拌装置。
【請求項5】
前記複数の分岐流路は、前記上流側分岐流路から前下流側分岐流路にかけて、それぞれの前記分岐流路の少なくとも一部の高さが小さくなるように形成される請求項4に記載の流体撹拌装置。
【請求項6】
前記下流側分岐流路の高さは、前下流側分岐流路を流れる分岐液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成される請求項1~5の何れか一項に記載の流体撹拌装置。
【請求項7】
前記上流側分岐流路及び前記下流側分岐流路を含む、複数の分岐流路の高さは、前記流体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成され、
前記複数の分岐流路の高さは、それぞれ前記分岐流路内を流れる前記分岐液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成される請求項6に記載の流体撹拌装置。
【請求項8】
前記上流側分岐流路及び前記下流側分岐流路を含む、複数の分岐流路は、前記上流側主流路及び前記下流側主流路の軸方向視において、前記上流側主流路及び前記下流側主流路の側部、上部、下部の何れかの位置に連結される請求項1~7の何れか一項に記載の流体撹拌装置。
【請求項9】
前記プレート本体が少なくとも2つの板状プレートで構成され、
少なくとも一方の前記板状プレートは溝部を有し、
2つの前記板状プレートを貼り合わせることで、前記溝部により前記流路が形成される請求項1~8の何れか一項に記載の流体撹拌装置。
【請求項10】
前記流路は、前記流体の流れ方向視における断面形状が、D字状、オーバル形、半円形又は矩形に形成されている請求項9に記載の流体撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、生物、医療等の分野において、分析用のデバイスとして、検査対象である液体(流体)同士の混合や反応に、マイクロミキサ又はマイクロリアクタ等の流体撹拌装置(マイクロ流体チップともいう)の利用が進められている。
【0003】
流体撹拌装置は、複数の板状プレートを積層して構成されており、積層した複数の板状プレートによって内部にミクロンオーダーの微小流路(マイクロ流路)を形成している。流体撹拌装置は、複数の流体をマイクロ流路内で合流させることで、複数の流体を混合、又は混合と共に反応を生じさせる。
【0004】
流体撹拌装置は、マイクロ流路の空間体積が非常に小さいため、分析に必要な試料や試薬等の液体の量が少量で済み、高精度かつ短時間で試料等を分析するのに有効である。そのため、流体撹拌装置を用いれば、マイクロ流路に供給する流体の供給量及び廃棄量の低減、並びに分析時間の短縮等、化学的な実験及び生物学的な実験の効率化等が図れると期待されている。
【0005】
複数の流体を混合する方法として、例えば、第1及び第2注入路と、第1及び第2注入路につながる流路とを備え、前記流路は、第1流路と、第1流路に複数に枝分かれして形成された第1支流と、第1支流に交わるように形成された第2流路と、第2流路に複数に枝分かれして形成された第2支流と、第2支流に交わるように形成された第3流路とを有する流体混合器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
前記流体混合器では、第1及び第2注入路から第1流体と第2の流体とを注入して第1流路で混合させる。第1流体と第2の流体とを互いに混ぜ合わせた第1混合流体は、第1支流で分流して第2流路に流れ込み、分流された第1混合流体同士が更に均一に混ぜ合わされて第2混合流体となる。第2混合流体は、第2支流を経由して第3流路に流れ込んで、第2混合流体同士が更に混ぜ合わされて第3混合流体となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2005-319419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の流体混合器では、流路として、流路断面積がミクロンオーダーであるマイクロ流路を用いることについては記載されておらず、マイクロ流路内での液体の流れを考慮していない。流路の断面積がマイクロ流路のようにミクロンオーダーである場合、分岐した流路同士の間で液体の流量に不均衡が生じ易く、いずれかの流路内で液体の滞留が生じ易い可能性がある。そのため、液体混合器に複数の液体を供給した際、複数の液体同士が十分混合されず、液体の分析を正確に行えない可能性がある。
【0009】
流体撹拌装置を用いる際には、液体の分析精度を高めるため、複数の液体をマイクロ流路で混合した場合でも、分岐した流路中で複数の液体の何れかに滞留が生じないようにして、複数の液体をマイクロ流路内で安定して混合できる必要がある。
【0010】
本発明の一態様は、液体を流路内で安定して撹拌させながら混合することができる流体撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流体撹拌装置の一態様は、流体が流れる流路を内部に有するプレート本体を備え、前記プレート本体に設けた開口を通して前記流路に前記流体を供給して撹拌させる流体撹拌装置であって、前記流路は、前記流体が流れる主流路と、前記主流路に連結され、前記流体の流れ方向に沿って上流側と下流側に設けられた複数の分岐流路を有する分流部とを備え、前記分流部に含まれる下流側の前記分岐流路の少なくとも一部の断面積は、上流側の前記分岐流路よりも断面積を小さくした。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る流体撹拌装置は、液体を流路内で安定して撹拌させながら混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る流体撹拌装置の構成を示す斜視図である。
図2】流体撹拌装置の分解斜視図である。
図3】流体撹拌装置の平面図である。
図4図1のI-I方向から見た図である。
図5図1のII-II方向から見た部分図である。
図6】マイクロ流路の一部の流路形状を示す斜視図である。
図7】混合部の一部の流路形状を示す斜視図である。
図8】流体撹拌装置の使用方法の一例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、流体撹拌装置の幅方向をX軸方向とし、長さ方向をY軸方向とし、高さ(厚さ)方向をZ軸方向とする。流体撹拌装置の下から上に向かう方向を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、流体撹拌装置の高さ方向の一方の主面側を上又は上方といい、他方の主面側を下又は下方という場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0015】
<流体撹拌装置>
本実施形態に係る流体撹拌装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係る流体撹拌装置の構成を示す斜視図であり、図2は、流体撹拌装置の分解斜視図であり、図3は、流体撹拌装置の平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る流体撹拌装置1は、略矩形状に形成され、複数の測定対象液体、キャリア液体、洗浄液体等の液体を混合するものである。本実施形態では、流体撹拌装置1で複数の測定対象液体を混合するものとする。
【0016】
測定対象液体としては、例えば、生体由来の物質(血液、汗、唾液、又は尿等)、医薬品、食品添加物、合成された化学物質(農料等)、又は環境負荷物質(工場等から排出される排水、廃液又は地下水等)が挙げられる。なお、以下の説明では、測定対象液体を、単に、試料(被検体)という場合がある。
【0017】
図1及び図2に示すように、流体撹拌装置1は、板状に形成されたプレート本体10を有する。
【0018】
(プレート本体)
プレート本体10は、図1及び図2に示すように、板状に形成されている。プレート本体10は、図3に示すように、プレート本体10の平面視において、矩形状に形成されている。また、プレート本体10は、光透過性を有する。なお、光透過性を有するとは、測定光がプレート本体10の外側から照射された際に、プレート本体10の内部を透過する透過性を有していることをいう。測定光として、例えば、可視光(波長380~780nmの光)や紫外光や赤外光等が挙げられる。
【0019】
プレート本体10は、図1及び図2に示すように、2つの板状プレート(第1板状プレート101及び第2板状プレート102)を有し、第1板状プレート101と第2板状プレート102とを板厚方向に積層して構成されている。
【0020】
第1板状プレート101及び第2板状プレート102は、光透過性を有する材料を用いて形成できる。前記材料としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂(PC)及びシリコーン樹脂等の合成樹脂;ガラス等が用いられる。シクロオレフィン系樹としては、シクロオレフィンポリマー(COC)、シクロオレフィンコポリマー(COP)等のシクロオレフィン含有ポリオレフィン(ポリオレフィン系材料)等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のシクロオレフィン系ポリオレフィン以外のポリオレフィン等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。中でも、製造のし易さ、光が透過可能な波長の範囲の広さ及び耐薬品性等の点から、シクロオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。また、第1板状プレート101及び第2板状プレート102は、シリカ等のフィラー材を含んでいてもよい。
【0021】
第1板状プレート101と第2板状プレート102とは、例えば、第1板状プレート101と第2板状プレート102が合成樹脂又はガラスで形成されている場合は、熱圧着を用いて接合してもよいし、紫外線硬化樹脂等の接着剤を用いて接合してもよい。第1板状プレート101と第2板状プレート102がガラスで形成されている場合は、接着剤を用いて接合することができる。
【0022】
(流路)
プレート本体10は、測定対象液体が通る流路(流体流路)を内部に有する。
【0023】
前記流路は、図1に示すように、誘導流路20及びマイクロ流路30を有する。
【0024】
図2に示すように、流路を構成する第1板状プレート101及び第2板状プレート102には、前記流路に対応した形状の、孔部又は溝部が形成されている。
【0025】
第1板状プレート101の孔部は、図2に示すように、第1板状プレート101に形成され、図3に示すように、孔部の中心線から見て、円形に形成されている。
【0026】
第1板状プレート101及び第2板状プレート102の溝部は、図4及び図5に示すように、第1板状プレート101と第2板状プレート102との接合面から見て、上下方向に非対称に形成され、左右方向に対称に形成されている。すなわち、前記流路は、第1板状プレート101と第2板状プレート102との接合面を挟んで上下方向に非対称に形成され、左右方向に対称に形成されている。
【0027】
第1板状プレート101と第2板状プレート102とを接合することによって、前記流路が形成される。このように、前記流路は、図1に示すように、プレート本体10の内部に設けられ、プレート本体10内を測定対象液体が通るための通路として機能する。
【0028】
誘導流路20及びマイクロ流路30は、その口径が、例えば、数nm~数百μmに設計されている。誘導流路20及びマイクロ流路30の口径(内径)は、誘導流路20及びマイクロ流路30の中心を通り、長さ方向に垂直な断面で誘導流路20及びマイクロ流路30を仮想的に切断したときの断面の孔を仮想円とした時の直径とする。本実施形態では、誘導流路20及びマイクロ流路30が円形の場合には、誘導流路20及びマイクロ流路30の口径の大きさは、これらの口径の直径の長さとする。誘導流路20及びマイクロ流路30が略D字状又は略矩形の場合には、誘導流路20及びマイクロ流路30の口径の大きさは、これらを略D字状又は略矩形と等しい面積を有する円と仮定した時の直径とする。
【0029】
誘導流路20は、図1及び図2に示すように、第1板状プレート101に形成される。誘導流路20は、流体撹拌装置1のY軸方向の両短辺寄りに設けられる。誘導流路20は、-Y軸方向側の短辺寄りに設けられる誘導流路20A-1、20A-2と、+Y軸方向側の短辺寄りに設けられる誘導流路20Bとを有する。
【0030】
誘導流路20A-1及び20A-2は、それぞれ、第1板状プレート101の+Z軸方向の主面に開口21Aを有し、誘導流路20A-1は開口21A-1を有し、誘導流路20A-2は開口21A-2を有する。
【0031】
誘導流路20A-1及び20A-2は、図1に示すように、開口21Aとマイクロ流路30とを連結する。誘導流路20A-1及び20A-2は、流体撹拌装置1のY軸方向の辺(X軸方向の辺に直交する辺)に平行な中心線に対して略対称となるように設けられている。誘導流路20A-1及び20A-2は、開口21Aから流体撹拌装置1の厚さ方向(-Z軸方向)に略垂直に形成される。誘導流路20A-1及び20A-2は、開口21Aから-Z軸方向に沿って、第1板状プレート101と第2板状プレート102との境界部分まで伸び、マイクロ流路30に連結される。
【0032】
誘導流路20Bは、図1に示すように、流体撹拌装置1のX軸方向の辺の略中間を通り、かつ流体撹拌装置1の+Y軸方向の辺側に設けられる。誘導流路20Bは、第1板状プレート101の+Z軸方向の主面に開口21Bを有する。
【0033】
誘導流路20Bは、開口21Bとマイクロ流路30とを連結する。誘導流路20Bは、開口21Bから-Z軸方向に略垂直に形成されている。誘導流路20Bは、開口21Bから-Z軸方向に沿って、第1板状プレート101と第2板状プレート102との境界部分まで伸び、マイクロ流路30に連結されている。
【0034】
開口21A-1及び21A-2は、測定対象液体が供給される流入口とし、開口21Bは、測定対象液体が排出される流出口とする。
【0035】
誘導流路20と、開口21A及び21Bとは、図3に示すように、流体撹拌装置1の平面視において、それぞれ、略円形に形成されている。
【0036】
誘導流路20の断面は、マイクロ流路30の断面よりも大きめに形成されることが好ましい。測定対象液体の供給時において、誘導流路20の開口21A-1及び21A-2と、21Bには液体を供給する供給管、又は液体を排出する排出管の何れかが挿入される。そのため、誘導流路20の断面が大きめに形成されていれば、供給管及び排出管が誘導流路20に挿入されやすくなる。
【0037】
マイクロ流路30は、図1及び図2に示すように、第1板状プレート101又は第2板状プレート102に形成され、第1板状プレート101と第2板状プレート102とを貼り合わせることにより形成される。
【0038】
マイクロ流路30は、誘導流路20A、20Bに連結され、誘導流路20A、20Bから流れる測定対象液体を混合して、撹拌させる流路である。マイクロ流路30は、供給流路40A及び40Bと、混合部50と、撹拌部60とを有する。
【0039】
供給流路40A及び40Bは、図1に示すように、誘導流路20A又は20Bと撹拌部60との間を連結する。供給流路40A及び40Bは、流体撹拌装置1のY軸方向の辺(X軸方向の辺に直交する辺)に平行な中心線に対して略対称となるように設けられている。供給流路40A、40Bは、流体撹拌装置1の平面視において(図3参照)、誘導流路20A、20Bから+Y軸方向に途中まで伸びた後、Y軸方向の辺に平行な中心線側に屈曲して、供給流路40A、40Bの端部が撹拌部60で合流するように形成されている。
【0040】
図2に示すように、供給流路40Aを形成する溝部は、第1板状プレート101の溝部側に形成され、供給流路40Bを形成する溝部は、第2板状プレート102の溝部側に形成されている。そして、図6に示すように、供給流路40Aは、撹拌部60の混合部50の上側(+Z軸方向)で連結し、供給流路40Bは撹拌部60との混合部50の下側(-Z軸方向)で連結する。
【0041】
供給流路40A及び40Bの断面は、測定対象液体の流れに直交する方向に対して、いずれも略D字状に形成されている。本実施形態では、供給流路40Aの断面は、下面を直線とし、上面を略D字状とし、供給流路40Bの断面は、下面を略D字状とし、上面を直線とする。
【0042】
混合部50は、図1及び図6に示すように、供給流路40A及び40Bと、撹拌部60との間を連結する。混合部50は、第1板状プレート101の溝部と、第2板状プレート102の溝部とにより形成される。混合部50は、測定対象液体S1及びS2の流れ方向(Y軸方向)に対して略オーバル形状に形成されている。なお、オーバル形とは、角に丸みを有する矩形、長円形、楕円形、卵型等の形状をいい、本実施形態では、混合部50の断面は、角に丸みを有する矩形に形成されている。第1板状プレート101の溝部は、図5に示すように、測定対象液体S1及びS2の流れ方向に沿って徐々に浅くなるように形成されている。混合部50の下流端に対応する位置では、第1板状プレート101の溝部は形成されていない。そのため、混合部50の下流端は、第1板状プレート101の下面(-Z軸方向の面)と第2板状プレート102の溝部とにより形成され、測定対象液体S1及びS2の流れ方向(Y軸方向)に対して略D字状になっている。
【0043】
混合部50は、供給流路40A内を流れる測定対象液体S1と、供給流路40B内を流れる測定対象液体S2とを層流の状態で合流させ、混合液体S11とする。
【0044】
撹拌部60は、図1及び図7に示すように、主流路61及び分流部62を一組として、測定対象液体の流れ方向に沿って直列に複数組み合わせて備える。本実施形態では、撹拌部60は、主流路61及び分流部62を八組備える。主流路61は、測定対象液体の流れ方向の上流側から、主流路61A、61B、61C、61D、61E、61F、61G、61H及び61Iの順に配置される。分流部62は、測定対象液体の流れ方向の上流側から、分流部62A、62B、62C、62D、62E、62F、62G及び62Hの順に配置される。なお、主流路61Iは、分流部62Hと誘導流路20Bとを連結する。
【0045】
撹拌部60を構成する、一組の主流路61A及び分流部62Aについて説明する。
【0046】
図6に示すように、主流路61Aは、誘導流路20から供給される2つの測定対象液体S1及びS2が混合部50で合流した混合液体S11が一つの流れとなって流れる流路である。主流路61Aは、供給流路40A及び40Bと分流部62とを連結している。
【0047】
主流路61Aは、流体撹拌装置1の平面視において(図3参照)、Y軸方向に直線になっている。主流路61Aは、流体撹拌装置1の平面視において(図3参照)、他の主流路61B~61IとY軸方向に並行、又は同じ直線上となるように配置されている。
【0048】
主流路61Aの断面は、混合液体S11の流れに直交する方向に対して、略D字状に形成されている。本実施形態では、主流路61Aの断面は、下面を半球状とし、上面を直線とする。
【0049】
本実施形態では、主流路61Aは、図1に示すように、供給流路40A及び40Bから、第1板状プレート101の一部の溝部と第2板状プレート102の溝部とに沿って流体撹拌装置1の+Y軸方向に伸び、分流部62Aに連結されている。
【0050】
分流部62Aは、図6に示すように、主流路61Aの側面(-X軸方向の面)に連結されている。分流部62Aは、混合液体S11の流れ方向(Y軸方向)に沿って、3つの分岐流路621A、622A及び623Aを有する。
【0051】
分岐流路621A、622A及び623Aは、流体撹拌装置1の平面視において(図3参照)、X軸方向に直線に形成された流路であり、Y軸方向に並列に設けられている。分岐流路621A~623Aは、いずれも同じ長さを有する。分流部62Aは、混合液体S11の流れ方向の上流側から下流側にかけて、分岐流路621A、622A及び623Aを、この順に有し、分岐流路623Aは分岐流路621A及び622Aよりも混合液体S11の流れ方向の最も下流側に位置する。分岐流路621A、622A及び623Aには、それぞれ、混合液体S11が分流した、分岐液体S11-1、S11-2及びS11-3が流れる。
【0052】
分岐流路621A~623Aの断面は、いずれも、分岐液体S11-1~S11-3の流れに直交する方向に対して、略D字状に形成されている。本実施形態では、分岐流路621A~623Aの断面は、下面を略D字状とし、上面を直線とする。
【0053】
図6に示すように、分岐流路621Aは、その高さを、分岐液体S11-1の流れ方向の上流側から下流側にかけて同じにして、断面積が同じになるように形成されている。
【0054】
分岐流路622A及び623Aは、これらの下流端側(-X軸方向)の端面の高さを小さくして断面積が小さくなるように形成されている。そして、分岐流路622A及び623Aの下流端側(-X軸方向)の端面の高さは、混合液体S11の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さい。すなわち、分岐流路623Aの下流端側の端面の高さは、分岐流路622Aの下流端側の端面の高さよりも小さく、分岐流路622Aの下流端側の端面の高さは、分岐流路621Aの下流端側の端面の高さよりも小さい。
【0055】
なお、高さとは、分岐流路621A~623Aの内径の上下方向(Z軸方向)の長さを意味する。
【0056】
分岐流路622A及び623Aの高さは、それぞれの分岐流路622A及び623A内を流れる分岐液体S11-2及びS11-3の流れ方向の上流側(+X軸方向)から下流側(-X軸方向)にかけて徐々に小さくなるように形成されている。
【0057】
本実施形態では、分岐流路622A及び623Aの高さは、分岐流路622A及び623Aの下面が+Z軸方向に徐々に上がって、分岐流路622A及び623Aの上面と下面との差が連続して小さくなることで、分岐流路622A及び623Aの高さは小さくなっている。
【0058】
すなわち、分岐流路621A~623Aは、分岐流路621A~623Aの下流側(-X軸方向)端面の高さを混合液体S11の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくし、分岐流路621A~623Aの高さを分岐液体S11-1~S11-3の流れ方向に沿って小さくする。これにより、分岐流路621A~623Aの体積は、混合液体S11の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなる。
【0059】
分流部62Aは、その下端部が分岐液体S11-1~S11-3の流れ方向の下流側で連結される主流路61Bの下面(-Z軸方向)に位置し、主流路61Bの下面で連結されている。
【0060】
主流路61Aの内径は、分岐流路621A~623Aの内径と略同じ大きさでもよいが、分岐流路621A~623Aの内径よりも大きく形成されることが好ましい。主流路61Aの内径が分岐流路621A~623Aの内径と略同じ大きさか小さいと、主流路61Aから分岐流路621A~623Aに混合液体S11が安定して流れ難くなる。主流路61Aの内径は分岐流路621A~623Aの内径よりも大きめに形成することで、主流路61Aから分岐流路621A~623Aに分岐液体S11-1~S11-3が流れ易くなり、主流路61A内での混合液体S11の詰まり等が生じるのを軽減できる。
【0061】
供給流路40A及び40Bと主流路61Aの内径は、50μm~300μmであることが好ましく、70μm~250μmであることがより好ましく、80μm~200μmであることがさらに好ましい。供給流路40A及び40Bと主流路61Aの内径が、50μm~300μmの範囲内であれば、供給流路40A及び40Bと主流路61A内に測定対象液体が流れ易くすることができる。
【0062】
分岐流路621A~623Aの内径のうち、分岐流路621A~623Aの最大内径は、供給流路40A及び40Bと主流路61Aの内径と同じ範囲とすることが好ましい。すなわち、主流路61Aと連結する部分の分岐流路621A~623Aの内径は、主流路61Aの内径と同じとすることが好ましい。
【0063】
主流路61B~61H及び分流部62B~62Hについて説明する。主流路61B~61Hは、図7に示すように、主流路61Aと同様の構成を有する。分流部62B~62Hは、分流部62Aと同様の構成を有し、分岐流路621A~621H、622A~622H、及び623A~623Hを有する。そのため、主流路61B~61H及び分流部62B~62Hの詳細は省略する。
【0064】
なお、主流路61B、61D、61F及び61Hと、分流部62B、62D、62F及び62Hとは、第1板状プレート101の溝部側に形成される。そのため、分流部62Bは、分流部62Bよりも下流側で連結される主流路61Cの上側(+Z軸方向)に位置し、主流路61Cの上側に連結される。分流部62D及び62Fも、分流部62Bと同様、それぞれ、分流部62D及び62Fよりも下流側で連結される主流路61E及び61Gの上側(+Z軸方向)に位置し、主流路61E及び61Gの上側に連結される。分流部62Hは、主流路61Hの側面(+X軸方向)に連結される。
【0065】
次に、本実施形態に係る流体撹拌装置1の製造方法の一例について説明する。まず、二つの矩形状に形成されたプレートのそれぞれの接合面側に、流体撹拌装置1の流路と、開口21A及び21Bを構成する、溝部又は孔部を形成する。これにより、第1板状プレート101及び第2板状プレート102が得られる。第1板状プレート101及び第2板状プレート102の溝部及び孔部は、射出成形及びプレス加工等で形成してもよいし、レーザー等で加工して形成してもよい。
【0066】
次に、第1板状プレート101と第2板状プレート102との位置がずれないように、第1板状プレート101と第2板状プレート102とを重ねる。その後、第1板状プレート101と第2板状プレート102とを、例えば、熱圧着等して接合する。これにより、図1に示す、第1の実施形態に係る流体撹拌装置1が得られる。
【0067】
本実施形態に係る流体撹拌装置1の使用方法の一例について説明する。流体撹拌装置1が不図示の分析装置内に挿入されると、前記分析装置内で流体撹拌装置1の位置が固定される。その後、図8に示すように、開口21Aには種類が異なる測定対象液体(試料)S1及びS2を供給する供給管71A、71Bが自動挿入され、開口21Bには試料を排出する排出管72が自動挿入される。その後、供給管71A及び71Bから開口21A-1及び21A-2に測定対象液体S1及びS2が注入される。
【0068】
開口21A-1に注入された測定対象液体S1は、誘導流路20Aを通って流体撹拌装置1の厚さ方向(-Z軸方向)に流れた後、誘導流路20Aから第1板状プレート101内に形成された供給流路40Aを通って、混合部50に供給される。開口21A-2に注入された測定対象液体S2も、誘導流路20Bを通って流体撹拌装置1の厚さ方向(-Z軸方向)に流れた後、誘導流路20Bから第2板状プレート102内に形成された供給流路40Bを通って、混合部50に供給される。
【0069】
供給流路40Aを流れる測定対象液体S1と、供給流路40Bを流れる測定対象液体S2とは、図7に示すように、混合部50で上下方向に層流の状態で合流して混合される。層流状態で混合された混合液体S11は、一つの流れとなって主流路61A内を流れる。
【0070】
層流状態で混合された混合液体S11は、図7に示すように、第2板状プレート102内に形成された主流路61Aを通って、主流路61Aの下流側(+Y軸方向)の側面(-X軸方向)に連結されている分流部62Aの3つの分岐流路621A~623Aに分かれる。そして、混合液体S11は、分岐液体S11-1、S11-2及びS11-3として、分岐流路621A~623A内をそれぞれ流れる。
【0071】
3つの分岐流路621A~623Aは、これらの下流側端面の高さを、分岐流路621A、分岐流路622A及び分岐流路623Aの順に小さくして断面積が小さくなるように形成されている。そして、分岐流路621A~623Aの高さは、分岐流路621A、分岐流路622A及び分岐流路623Aの順に、分岐液体S11-1~S11-3の上流側から下流側にかけて小さくして断面積が小さくなるように形成されている。これにより、それぞれの分岐流路621A~623A内を流れる分岐液体S11-1~S11-3の流速のばらつきが抑えられる。そのため、分岐流路621A~623Aのいずれにも分岐液体S11-1~S11-3は、流量のばらつきを小さくした状態で流れる。
【0072】
分岐流路621A~623A内を流れる分岐液体S11-1~S11-3は、図7に示すように、分岐流路621A~623A内の下流側(-X軸方向)の上面(+Z軸方向)に連結されている主流路61Bに流れる。主流路61Bは、第1板状プレート101内に形成されているため、分岐流路621A~623A内を流れる分岐液体S11-1~S11-3は、第2板状プレート102から第1板状プレート101側に移動することになる。
【0073】
分岐流路621A~623Aから主流路61Bに流出した分岐液体S11-1~S11-3は、それぞれの分岐液体S11-1~S11-3の流速や流れの向きの変更等により撹拌しながら混合され、混合液体S12となる。
【0074】
なお、分岐流路621A~623Aの下流側端面の高さは、上述の通り、分岐流路621A、622A及び623Aの順に小さくしている。そのため、分岐流路623Aから流出した分岐液体S11-3の流速は、分岐流路621A及び622Aから流出した分岐液体S11-2及び11-3の流速に比べて、分岐液体S11-3が分岐液体S11-2及び11-3を押し返すほど大きくはならない。よって、分岐液体S11-3によって、分岐流路621Aや分岐流路622Aに分岐液体S11-1及びS11-2が滞留したり、分岐流路623A内の分岐液体S11-3が分岐流路621Aや分岐流路622Aに逆流することはない。
【0075】
混合液体S12は、図7に示すように、第1板状プレート101内に形成された主流路61Bを通って、主流路61Bの下流側(+Y軸方向)の側面(+X軸方向)に連結されている分流部62Bの3つの分岐流路621B、622B及び623Bに分かれる。混合液体S12は、分岐液体S12-1、S12-2及びS12-3として、分岐流路621B~623B内をそれぞれ流れる。
【0076】
3つの分岐流路621B~623Bも、図7に示すように、分岐流路621A~623Aと同様、これらの下流側端面の高さを、分岐流路621B、分岐流路622B及び分岐流路623Bの順に小さくして断面積を小さくしている。そして、分岐流路621B~623Bの高さは、分岐流路621B、分岐流路622B及び分岐流路623Bの順に、分岐液体S12-1~S12-3の上流側から下流側にかけて小さくして断面積が小さくなるように形成されている。そのため、それぞれの分岐流路621B~623B内を流れる分岐液体S12-1~S12-3の流速のばらつきが抑えられ、分岐流路621B~623Bのいずれにも分岐液体S12-1~S12-3は、流量のばらつきを少なくして流れる。
【0077】
分岐流路621B~623B内を流れる分岐液体S12-1~S12-3は、分岐流路621B~623B内の下流側(+X軸方向)の下面(-Z軸方向)に連結されている主流路61Cに流れる。主流路61Cは、第2板状プレート102内に形成されているため、分岐流路621B~623B内を流れる分岐液体S12-1~S12-3は、第1板状プレート101から第2板状プレート102側に移動することになる。
【0078】
分岐流路621B~623Bから主流路61Cに流出した分岐液体S12-1~S12-3は、それぞれの分岐液体S12-1~S12-3の流速や流れの向きの変更等により撹拌しながら混合され、混合液体S13となる。
【0079】
混合液体S13は、主流路61C及び分流部62C内を、主流路61A及び分流部62Aと同様にして流れる。すなわち、図7に示すように、混合液体S13は、第2板状プレート102内に形成された分流部62C内で分岐液体S13-1、S13-2及びS13-3となる。そして、分岐液体S13-1~S13-3は、第1板状プレート101内に形成された主流路61Dに流れて、主流路61Dで撹拌しながら混合されて、混合液体S14となる。混合液体S14は、第1板状プレート101内に形成された分流部62Dに流れて、分流部62Dで分岐液体S14-1、S14-2及びS14-3となる。分岐液体S14-1~S14-3は、第2板状プレート102内に形成された主流路61Eに流れて、主流路61Eで混合されて、混合液体S15となる。
【0080】
混合液体S15は、主流路61E及び分流部62E内を、主流路61B及び分流部62Bと同様にして流れる。すなわち、図7に示すように、混合液体S15は、第1板状プレート101内に形成された分流部62E内で分岐液体S161、S15-2及びS15-3となる。そして、分岐液体S15-1~S15-3は、第1板状プレート101内に形成された主流路61Fに流れて、主流路61Fで撹拌しながら混合されて、混合液体S16となる。混合液体S16は、第1板状プレート101内に形成された分流部62Fに流れて、分流部62Fで分岐液体S16-1、S16-2及びS16-3となる。分岐液体S16-1~S16-3は、第2板状プレート102内に形成された主流路61Gに流れて、主流路61Gで混合されて、混合液体S17となる。
【0081】
混合液体S17は、主流路61G及び分流部62G内を、主流路61A及び分流部62Aと同様にして流れる。すなわち、図7に示すように、混合液体S17は、第2板状プレート102内に形成された分流部62G内で分岐液体17-1、S17-2及びS17-3となる。そして、分岐液体S17-1~S17-3は、第1板状プレート101内に形成された主流路61Hに流れて、主流路15Hで撹拌しながら混合されて、混合液体S18となる。混合液体S18は、第1板状プレート101内に形成された分流部62Hに流れて、分流部62Hで分岐液体S18-1、S18-2及びS18-3となる。分岐液体S18-1~S18-3は、第2板状プレート102内に形成された主流路61Iに流れて、主流路61Iで混合されて、混合液体S19となる。
【0082】
混合液体S19は、主流路61Iを通って、図8に示すように、誘導流路20Bに流れ、流体撹拌装置1の厚さ方向(+Z軸方向)に沿って、誘導流路20B内から開口21Bに流れ、開口21Bから排出管72に排出される。その後、開口21Bから排出管72に排出された混合液体S19は、不図示の分析装置等で分析(観察)される。
【0083】
このように、本実施形態に係る流体撹拌装置1は、流路が、主流路61(61A~61H)と、複数の分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623Hを有する分流部62(62A~62H)とを備える。それぞれの分流部62A~62Hに含まれる下流側の分岐流路623A~623Hは、上流側の分岐流路621A~621Hよりも断面積が小さくなるように形成されている。
【0084】
主流路61内を流れる混合液体は、一般に、主流路61内を主流路61の下流側に向かう直進方向(+Y軸方向)に流れ易い。そのため、混合液体は、主流路61の最も下流側に位置する分岐流路623A~623Hに、分岐流路621A~621H及び622A~622Hよりも流れ易い傾向にある。流体撹拌装置1は、上述の通り、分流部62において測定対象液体の最も下流側に位置している分岐流路623A~623Hの主流路61Bとの連結箇所の高さを他の分岐流路621A~621H及び622A~622Hの高さより小さくして断面積を小さくしている。これにより、混合液体が分岐流路623A~623Hに分岐流路621A~621H及び622A~622Hよりも優先して流入するのを抑えられる。この結果、分岐流路623A~623Hへの混合液体の流入量は抑えられ、分岐流路621A~621H、622A~622Hへの流入量の減少が抑えられる。
【0085】
よって、流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hで、分岐流路623A~623Hよりも混合液体の流れ方向の上流側に位置する分岐流路621A~621H又は622A~622Hで分岐液体が滞留するのを抑えることができる。同様に、主流路61B~61Hの上流付近で混合液体が滞留するのを抑制できる。これにより、流体撹拌装置1は、分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623Hから流出した分岐液体を主流路61B~61H内で撹拌させながら混合させることができる。したがって、流体撹拌装置1は、撹拌部60において、プレート本体10内に投入される、2種類の測定対象液体S1及びS2の混合効率を向上させることができるので、2種類の測定対象液体S1及びS2を安定して撹拌させながら混合させることができる。
【0086】
流体撹拌装置1は、撹拌部60から排出される混合液体S18を、測定対象液体S1及びS2が略均等に安定して混合された状態で排出させることができるため、測定対象液体S1及びS2中の成分の分析精度をより向上させることができる。その結果、分析装置等において出力される分析結果は、高い精度を安定して維持できる。
【0087】
また、流体撹拌装置1は、撹拌部60を構成する主流路61と分流部62との組み合わせの数を適宜設計できるため、不図示の分析装置内の仕様等を変更することなく使用することができる。
【0088】
流体撹拌装置1は、流路が、2つの開口21A-1及び21A-2と、2つの供給流路40A及び40Bと、混合部50とを備えることができる。流体撹拌装置1は、開口21A-1及び21A-2から2種類の測定対象液体S1及びS2を同時に供給して、混合部50で層流状態で混合させることができる。そして、混合部50で層流状態で混合した混合液体S11を、1つの流れとして主流路61Aに流すことができる。そのため、流体撹拌装置1は、2種類の測定対象液体S1及びS2の流量にばらつきを抑えつつ、分流部62Aで同時に撹拌しながら混合させることができる。
【0089】
流体撹拌装置1は、流路が、主流路61Aと分流部62Aとを一組として、測定対象液体の流れ方向に直列に八組備えることができる。それぞれの分流部62A~62Hに含まれる下流側の分岐流路623A~623Hは、分流部62A~62Hに含まれる上流側の分岐流路621A~621Hよりも断面積が小さくなるように形成されている。これにより、流体撹拌装置1は、主流路61A内を流れる混合液体S11を、主流路61A~61Hにかけて、混合液体S11内に含まれる測定対象液体S1と測定対象液体S2とを8回撹拌させながら混合させることができる。よって、流体撹拌装置1は、混合液体S11内に含まれる2種類の測定対象液体S1及びS2をより確実に撹拌しながら混合させることができる。
【0090】
流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hを、混合液体の流れ方向の最も下流側に位置する分岐流路623A~623Hの高さが他の分岐流路621A~621H、622A~622Hの高さよりも小さくなるように形成できる。これにより、混合液体が分岐流路623A~623Hに優先して流入するのを抑えられるので、分岐流路623A~623Hへの混合液体の流入量と、分岐流路621A~621H、622A~622Hへの流入量との差が抑えられる。よって、流体撹拌装置1は、分流部62内の分岐流路623A~623Hと、分岐流路621A~621H及び622A~622Hとに主流路61から混合液体をより均等に分散させて流すことができる。これにより、分岐流路623A~623Hから流出する分岐液体と、分岐流路621A~621H、622A~622Hから流出する分岐液体とをより均等に混合させることができる。
【0091】
流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hを、混合液体の流れ方向の上流側に位置する分岐流路621A~621Hから下流側に位置する分岐流路623A~623Hにかけて、分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623Hの高さが小さくなるように形成できる。これにより、混合液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて、それぞれの分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623Hに混合液体が流入し難くなる。そのため、流体撹拌装置1は、分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623H内を流れる分岐液体の流入割合のばらつきが抑えることができる。よって、流体撹拌装置1は、分流部62内のいずれの分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623Hにも混合液体をさらに安定して均等に分散させて流すことができる。
【0092】
流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hに含まれる、混合液体の流れ方向の最も下流側に位置する分岐流路623A~623Hの高さを、分岐流路623A~623Hを流れる分岐液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成できる。これにより、分岐流路623A~623H内の分岐液体の流速を徐々に小さくできるので、分岐流路623A~623H内を流れる分岐液体の流速や流量の急激な変動等を抑えることができる。よって、流体撹拌装置1は、主流路61B~61Hにおいて分流部62A~62Hから流出する分岐液体をより安定して混合させることができる。
【0093】
流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hに含まれる、それぞれの分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623Hの高さを、混合液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成できる。そして、流体撹拌装置1は、それぞれの分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623Hの高さを分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623H内を流れる分岐液体の流れ方向の上流側から下流側にかけて小さくなるように形成できる。これにより、それぞれの分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623H内を流れる分岐液体の流速も徐々に小さくなるように調整できる。そのため、それぞれの分岐流路621A~621H、622A~622H、623A~623H内を流れる分岐液体の流速や流量の急激な変動等を抑えることができる。よって、流体撹拌装置1は、主流路61において、分流部62から流出する分岐液体の混合効率をさらに安定して行うことができる。
【0094】
流体撹拌装置1は、それぞれの分流部62A~62Hを、主流路61の軸方向視において、主流路61の側面、上面、下面の何れかの位置で連結させることができる。これにより、マイクロ流路30をプレート本体10内に任意の流路を構成するように容易に設計できる。また、主流路61内を流れる混合液体の流れ方向をその垂直方向又は高い角度で変更させることができる。これにより、流体撹拌装置1は、分流部62からその下流側に連結される主流路61に流入する分岐液体の混合率を高め易くすることができる。
【0095】
流体撹拌装置1は、プレート本体10を2つの板状プレート(第1板状プレート101及び第2板状プレート102)で構成して、第1板状プレート101及び第2板状プレート102は流路に対応した溝部又は孔部を有するものを用いることができる。第1板状プレート101及び第2板状プレート102を貼り合わせることで、内部に流路を形成したプレート本体10を容易に得ることができる。また、第1板状プレート101及び第2板状プレート102を射出成形で作製する場合、金型も簡易に製造できる。さらに、流体撹拌装置1は、プレート本体10の第1板状プレート101及び第2板状プレート102のいずれかの溝部をマイクロ流路30とすることができる。これにより、流体撹拌装置1は、1つの共通した板状プレート(第1板状プレート101及び第2板状プレート102)を用いることで、要求に応じて、同一の外観形状を維持した状態で様々な経路を有するマイクロ流路30を形成した流体撹拌装置を早期かつ簡易に製造できる。
【0096】
流体撹拌装置1は、マイクロ流路30を、測定対象液体の流れ方向視における断面形状が略D字状又は略オーバル形状に形成できる。これにより、マイクロ流路30はプレート本体10内に容易に形成することができる。また、マイクロ流路30内に供給される測定対象液体は、マイクロ流路30内を安定して流れることができる。
【0097】
このように、本実施形態に係る流体撹拌装置1は、上述の通り、1種類以上の測定対象液体を安定して混合させることができるので、血液中に含まれるタンパク質や核酸等の血液成分、医薬品に含まれる成分、食品添加物に含まれる添加物質、工場等から排出される排水中に含まれる化学物質、及び地下水に含まれる成分等の微量な物質の分析等の精度を簡易に高めることができる。そのため、流体撹拌装置1は、臨床検査、薬品検査、食物検査、環境検査、診療現場等の医療現場において好適に用いることができる。
【0098】
(変形例)
流体撹拌装置1の変形例について説明する。
【0099】
マイクロ流路30の構成の変形例について説明する。
【0100】
本実施形態では、マイクロ流路30を構成する、供給流路40A及び40B、混合部50、主流路61並びに分岐流路621A~623Aの断面は、略D字型及び略オーバル形以外に、略半円形、略矩形等の多角形又は略台形等に形成されていてもよい。
【0101】
本実施形態では、マイクロ流路30を構成する供給流路40Aが第2板状プレート102側に形成され、マイクロ流路30を構成する供給流路40Bが第1板状プレート101側に形成されていてもよい。
【0102】
本実施形態では、撹拌部60は、主流路61及び分流部62を一組として、一組~七組有していてもよいし、九組以上有していればよい。
【0103】
本実施形態では、分流部62は、分岐流路623A~623Hの途中の少なくとも一部の高さが、他の分岐流路621A~621H、622A~622Hの高さよりも小さく形成されていてもよい。
【0104】
本実施形態では、分岐流路621A~621Hは同じ高さとしているが、分岐流路622A~622H、623A~623Hと同様、分岐流路621A~621Hの下流端側(-X軸方向)の端面の高さを小さくなるようにしてもよい。このとき、分流部62Aは、混合液体S11の流れ方向の上流側の分岐流路621Aから下流側の分岐流路623Aにかけて、それぞれの分岐流路621A~623Aの下流端側(-X軸方向)の端面の高さを徐々に小さくして断面積が小さくなるように形成する。
【0105】
本実施形態では、分岐流路622A~622H及び623A~623Hの高さが分岐液体の流れ方向に向かって徐々に小さくなるように形成しているが、それぞれの流路の高さを段階的に小さくなるように形成してもよい。また、分岐流路622A~622H及び623A~623Hの一部の高さを小さくしてもよい。
【0106】
本実施形態では、分流部62は、分岐流路622A~622Hの一部の高さを、他の分岐流路621A~621H及び623A~623Hの高さよりも小さくしてもよい。この時、分岐流路622A~622Hの長さを、他の分岐流路621A~621H、623A~623Hよりも短くする等、適宜設計して、分岐液体の流量が、分岐流路621A~621H、622A~622H及び623A~623Hの順となるように調整する。
【0107】
また、分岐流路621A~621Hの一部の高さを、他の分岐流路622A~622H、623A~623Hの高さよりも小さくしてもよい。この場合も、分岐流路621A~621Hの長さを、他の分岐流路622A~622H、623A~623Hよりも短くする等、適宜設計して、分岐液体の流量が、分岐流路621A~621H、622A~622H、及び623A~623Hの順となるように調整する。
【0108】
本実施形態では、分流部62は、分岐流路622A~622Hの高さと、分岐流路623A~623Hの高さとを同じ高さとしてもよい。
【0109】
流体撹拌装置1の他の構成の変形例について説明する。
【0110】
本実施形態では、流体撹拌装置1は、測定対象液体の他に、ガス等の気体の混合又は反応等させるための容器として用いてもよい。
【0111】
本実施形態では、プレート本体10は、平面視において、矩形状の他に、円形等の他の形状に形成されていてもよい。
【0112】
本実施形態では、プレート本体10は、平面視において、角が面取りされていても良いし、角が切削されていてもよい。
【0113】
本実施形態では、プレート本体10は、その一部又は全部を光透過性を有しない樹脂又は金属等で形成されていてもよい。
【0114】
本実施形態では、プレート本体10は、2つの板状プレート(第1板状プレート101及び第2板状プレート102)で形成されているが、3つ以上の板状プレートで形成することもできる。
【0115】
本実施形態では、プレート本体10は、その四つの辺のうちの何れか一つの辺に面取り部を備えてもよい。これにより、流体撹拌装置1を分析装置等に挿入する際の挿入方向が確認しやすくなる。
【0116】
本実施形態では、プレート本体10は、その上側端面又は下側端面の角部に1つ以上の位置決め孔を備えてもよい。第1板状プレート101と第2板状プレート102とを貼り合わせてプレート本体10を作製する際、第1板状プレート101と第2板状プレート102との貼り合わせ位置の調整が容易になる。また、分析装置等に流体撹拌装置1を設置する際に流体撹拌装置1の位置を所定の位置に容易に固定できる。なお、位置決め孔は、プレート本体10を貫通していてもよいし、凹状に形成されていてもよい。
【0117】
本実施形態では、誘導流路20の断面は、矩形等の多角形、又は楕円形等に形成されていてもよい。
【0118】
本実施形態では、開口21A及び21Bの一方を、第2板状プレート102の-Z軸方向の主面側に設け、開口21Aと開口21Bとが異なる主面に設けられていてもよい。
【0119】
本実施形態では、開口21Aの数は3つ以上でもよいし、開口21Bの数は2つ以上でもよい。
【0120】
本実施形態では、開口21A、21Bをプレート本体10のY軸方向の辺側に設けているが、X軸方向の辺側に設けてもよい。また、開口21A-1、21A-2の少なくとも一方は、X軸方向の辺側に設けられていてもよい。さらに、開口21A、21Bの少なくとも一方を、プレート本体10の略中心部分に設けてもよい。例えば、流体撹拌装置1は、開口21A及び21Bの一方をプレート本体10の略中心部に設け、開口21A及び21Bの他方をプレート本体10の辺側に設けてもよい。
【0121】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記の各実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0122】
本出願は、2019年7月19日に日本国特許庁に出願した特願2019-134082号に基づく優先権を主張するものであり、特願2019-134082号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0123】
1 流体撹拌装置
10 プレート本体
101 第1板状プレート
102 第2板状プレート
20、20A、20A-1、20A-2、20B 誘導流路
21A、21A-1、21A-2、21B 開口
221A、221B 供給流路
30 マイクロ流路
40A、40B 供給流路
50 混合部
60 撹拌部
61、61A~61H 主流路
62、62A~62H 分流部
621A~621H、622A~622H、623A~623H 分岐流路
S1、S2 測定対象液体(試料)
S11~S18 混合液体
S11-1~S18-1、S11-2~S18-2、S11-3~S18-3 分岐液体
図1
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