(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】オレフィンの気相重合プロセスのための助剤
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20240305BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240305BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08F2/00 F
C08F10/00 510
C09K3/00 112D
(21)【出願番号】P 2021537864
(86)(22)【出願日】2019-12-28
(86)【国際出願番号】 IB2019039763
(87)【国際公開番号】W WO2020136444
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オラーヴォ・マーティンズ・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ディホゲネス・アドリアーノ・ポッツァー
(72)【発明者】
【氏名】エリタ・カヴァッリ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/066640(WO,A1)
【文献】特表2016-523295(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114069(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208026(US,A1)
【文献】特開昭59-064604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合プロセスのための重合助剤を形成させる方法であって、
ポリグリセリンエステルを含むファウリング防止剤をキラー剤と組み合わせて
、均質な単一の相の溶液である助剤組成物を形成させる工程、及び
前記助剤組成物をアルキルアルミニウムと接触させる工程
を含
み、
前記接触が、重合プロセスの脱気工程の前又は脱気工程の間に起こる、方法。
【請求項2】
前記接触が、重合プロセスへの導入の前に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が、重合プロセスへの助剤組成物の導入中に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記助剤組成物が、キラー剤と、ファウリング防止剤とを、90:10~55:45の範囲の質量比で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させる工程の際に、アルキルアルミニウムとファウリング防止剤とが、200:1~4:1の範囲のモル比を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キラー剤が、1から4個の炭素原子を有するアルコールを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
キラー剤が、エタノールを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
アルキルアルミニウムが、トリエチルアルミニウムである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記助剤組成物を、20~25℃の範囲の温度で形成させる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記助剤組成物が、5℃~40℃の範囲の温度で少なくとも1週間安定である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記助剤組成物を、脱気中の系に注入する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記助剤組成物を、ポリマー生成速度に基づいて、約5~150質量ppmの範囲の量の速度で重合プロセスに注入する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ファウリング防止剤とアルキルアルミニウムとが反応してファウリング防止複合剤を形成する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ファウリング防止複合剤が、ポリグリセリンエステル、アルミニウムアルキル、及びステアリン酸アルミニウムを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記助剤組成物が、担体をさらに含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体が、鉱油、モノグリセリド、又は炭化水素溶媒から選択される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記重合プロセスが、バルク重合プロセス、溶液重合プロセス、又はスラリー相重合プロセスから選択される、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記助剤組成物が、実質的に水を含まない、請求項1~
17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファウリング防止剤をキラー剤(killer agent)と組み合わせて助剤組成物を形成させる工程、及びその助剤組成物をアルキルアルミニウムと接触させる工程を含む、重合プロセスのための重合助剤を形成させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などを使用して、フィルム、成形品、発泡体などを含む様々な範囲の物品を製造することができる。ポリオレフィンは、高い加工性、低い製造コスト、柔軟性、低密度、及びリサイクルの可能性などの特性を有し得る。しかし、ポリオレフィン組成物の物理的及び化学的特性は、多くの要因、例えば、分子量、分子量の分布、コモノマー(又は複数のコモノマー)の含有量及び分布、加工方法などに応じて、様々な応答を示し得る。
【0003】
オレフィンの重合又は共重合に使用される反応器(例えば、ループ反応器、液体沸騰プール反応器、気相反応器など)は、ポリオレフィンポリマー製品が反応器の内壁に付着し、内壁から取り除かれず、外れなかったりする場合に運転の困難に直面し得る。この状態は、反応器の「ファウリング(fouling)(汚染)」として知られている。ファウリングは、帯電したポリマー粒子が壁に付着したり、活性触媒を含む非常に小さな粒子が存在したりすることによって引き起こされる静電気が原因で発生することが多い。静電荷は、配管や機器の内壁へのポリマー粒子の付着を促進するため、その系(system)の動作の継続性を妨げる。ファウリングは、ポリマー粒子が移動する際、例えば第1と第2の重合段階の間の移動の際、又は脱気システムへの移動の際に発生することが多い。
【0004】
ファウリングからの回復は、一般に、付着しているポリマー層を、反応器を高温の希釈剤で洗浄すること、物理的な剥離、又は高圧洗浄などによって除去する工程を含む。しかし、ファウリングを修復するための反応器のメンテナンスは、多くの場合、費用の支出及び反応器の停止時間をもたらす。
【0005】
食品接触用途のためのポリマーの製造のためのファウリング防止剤の使用は、欧州委員会及び米国食品医薬品局などの政府規制機関によって行われている制限によってさらに限定されている。制限されている化合物には、エトキシル化アミン、アルキルベンゼンスルホン酸、ランダムエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーなどが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この要約は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念の選択を紹介するために提供する。この要約は、請求項に記載した発明特定事項の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、請求項に記載した発明特定事項を制限する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0007】
1つの側面では、本明細書に開示する実施態様は、重合プロセスのための重合補助剤を形成させる方法であって、ファウリング防止剤をキラー剤と組み合わせて助剤組成物を形成させる工程と、その助剤組成物をアルキルアルミニウムと接触させる工程とを含む、方法に関する。
【0008】
別の側面では、本明細書に開示する実施態様は、ファウリング防止剤をキラー剤と組み合わせて助剤組成物を形成する工程と、その助剤組成物をアルキルアルミニウムと接触させる工程とによって製造される、ファウリング防止複合剤に関する。
【0009】
請求項に記載した発明特定事項の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施態様による、重合プロセスにおいて助剤を添加する工程を示す流れ図である。
【
図2】様々な帯電防止剤及び帯電防止複合剤の導電率を示す。
【
図3】オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルのシミュレートされた
1H NMRスペクトルを示す。
【
図4】オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルを含む様々な帯電防止複合剤の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図5】オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルとトリエチルアルミニウムとの反応から生じる2つの相の写真を示す。
【
図6】ポリプロピレン重合に対する帯電防止複合剤の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つの側面では、本明細書に開示する実施態様は、配管及び装置の内壁におけるポリマー堆積によって生じるファウリング生成を最小化又は排除する助剤組成物を組み入れる重合プロセスに関する。本開示による助剤組成物は、ファウリング防止剤、キラー剤、及び他の可能な添加剤の混合物を含み得る。
【0012】
ファウリングは、オレフィン重合プロセスの過程において一般的な問題である。ファウリングは、ポリマー粒子が、例えば、第1の重合段階と第2の重合段階との間を移動する際、及び/又は脱気システムへと移動する際に発生することが知られている。バルク重合及びスラリー重合の処理に使用される脱気システムには、未反応のモノマーを気化させるための熱交換器、ポリマーとモノマー(及びbuy蒸留などのさらなる処理のための任意の誘導モノマー)とを分離するフラッシュドラム又はバッグフィルター、並びに、ポリマーを乾燥させ、下流に移す(多くの場合、押出機又は他の機器へと移す)モジュールが含まれることが多い。脱気に続いて、生成したポリマーを分析して、配管及び取り扱い機器の内壁内の摩擦から生じる静電荷を定量化することができる。いくつかの場合では、静電荷の生成がポリマー粒子の付着を促進し、システム内の連続性の中断であるファウリングをもたらし得る。
【0013】
1つ以上の実施態様では、重合方法は、ポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーなどのポリオレフィンの製造中に助剤組成物の連続供給を組み入れることができる。いくつかの実施態様では、助剤組成物は、重合後の継続的な触媒活性を阻害又は失活(kill)させ、その後の処理工程でのファウリングの発生を低減し得る。例えば、本開示による助剤組成物は、製造プロセスの脱気工程中の,
配管及び機器の内壁におけるポリマー堆積によるファウリングを抑制するために使用することができる。
【0014】
助剤組成物
本開示による助剤組成物は、ファウリング防止剤及び反応キラー剤(reaction killer)を含むことができ、このファウリング防止剤及び反応キラーは、助剤複合剤を生成するために任意選択で有機アルミニウムと混合することができる。1つ以上の実施態様では、助剤組成物を、重合工程の後に注入して、重合反応器の下流の配管及び装置への材料の堆積を軽減することができる。反応キラーは、反応後の工程での重合を遅くしたり停止させたりすることができる一方、ファウリング防止剤は、静電荷を最小限に抑え、ポリマー及び無機酸化物の堆積を減らし、操作の継続性を高めることができる。
【0015】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、オレフィン重合触媒系(触媒、アルキルアルミニウムなどの助触媒、及び電子供与体を含む)を不活性化するキラー剤と、材料の堆積を低減するファウリング防止剤との混合物を含み得る。いくつかの実施態様では、助剤組成物を、重合工程の後、例えば重合工程と脱気工程との間などに導入して、触媒系を失活させ、脱気中の配管及び装置の内壁でのファウリングの発生を回避することができる。助剤組成物は、いくつかの実施態様では重合プロセスに導入する前の反応物混合物に添加することもでき、他の実施態様では重合プロセスの間に反応物混合物に添加することもできる。
【0016】
本開示による助剤組成物は、有効量で導入された場合、粉末移送ライン及び脱気システムにおける静電レベルを低下させることにより、動作の連続性を促進することができる。1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、キラー剤及びファウリング防止剤の任意の組み合わせを含むことができ、重合反応器内で生成するポリマー溶液の均一性を高めるために使用することができる。反応器内での重合後、未反応のモノマーを回収し、次の重合工程にリサイクルすることができる。
【0017】
以下の実施例では、助剤組成物の成分の機能を、有機アルミニウム助触媒の存在下でのα-オレフィンの重合反応との関連で論じる。一般に、重合反応器の下流のファウリングは、重合した混合物が下流の後続のプロセスへと移送される際の、残留反応剤の継続的な重合に少なくとも部分的に起因し得る。その結果、ファウリングの軽減は、いくつかの場合では、ポリマーの形成と鎖の伸長に関与する反応性種及び触媒の不活性化によって達成され得る。
【0018】
いくつかの場合では、重合触媒/助触媒を不活性化する水を使用することができる。以下のシナリオでは、ポリオレフィンの重合は、構造:Al(R1)3を有する有機アルミニウム助触媒の使用によって維持される。ここで、R1は、アルカン基、例えばCH3、C2H5、n-C3H7、及びisoC4H9などである。水と接触すると、有機アルミニウムは式(1):
Al(R1)3+3H2O → Al2O3+3R1H (1)
に従って無機酸化物(Al3O2)に変換され、配管や機器の内壁に付着したポリマーとともに排出される。
【0019】
しかし、重合プロセスにおける水の存在に起因する陽極酸化アルミニウムの生成は、プラントの運転の連続性を損なう。したがって、この影響を回避するために、水の使用を最小限に抑えるか、重合プロセス内の水の存在を排除することが有益である。さらに、本開示の実施態様によれば、ファウリング防止効果を有する非水性化合物の使用により、重合プロセスの動作の連続性が改善され得る。
【0020】
本開示による助剤組成物は、キラー剤、この事例ではアルコールを含むことができ、このキラー剤は、式(2):
Al(R1)3+3R2OH → Al(OR1)3+3R2H (2)
に示される交換反応によって触媒収率を低下させる。アルコールは、式R2OHを有する化合物であり、特に、R2は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0021】
以下の節では、助剤組成物の個々の成分を順番にそしてより詳細に論じる。
【0022】
ファウリング防止剤
1つ以上の実施態様において、助剤組成物は、ファウリング防止剤を含み得る。本開示によるファウリング防止剤を使用して、重合反応後の均質な混合物の形成を促進する一方で、重合後システムの配管及び装置に蓄積及び付着する可能性のあるポリマー凝集体の形成を回避することができる。いくつかの事例では、ポリマー凝集体が装置の表面から剥離して押し出しプロセスに移行し、最終製品の官能特性が変化し得る。
【0023】
1つ以上の実施態様において、ファウリング防止剤は、極性官能基、例えば、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン、又はスルホネート基などを含み得る。いくつかの実施態様では、ファウリング防止剤は、ポリグリセロールエステル、例えば構造:R3CO2O(CH2CHOHCH2)2OH
(式中、R3は、6~26個の炭素原子、又はより具体的な実施態様では12~22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である)を有するグリセロールエステルなどを含み得る。ファウリング防止剤は、他の脂肪酸のエステル、又は構造:R4N(CH2CH2OH)2(式中、R4は、6~26個の炭素原子、又はより具体的な実施態様では12~22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である)を有するエトキシル化アミン化合物も含み得る。例えば、脂肪酸のエステルは、より具体的な実施態様では、C6~C26又はC12~C22の長さを有する飽和又は不飽和の脂肪酸から形成され得る。そのような脂肪酸を、特定の実施態様において、グリセロールなどのポリオールと反応させることができる。しかし、ポリオールは、脂肪酸を含むがこれに限定されない、ポリオールと反応する1つ以上の酸を有し得ることも理解される。例えば、形成された1つ以上のエステル基は、酢酸、クエン酸又は他のより短い有機酸などの脂肪酸ではない有機酸とのエステル基であることが理解される。脂肪酸のエステルは、任意の適切な形態で、例えば、固体状態で、あるいは液体状態の担体と混合された形態で、使用することができる。
【0024】
1つ以上の実施態様では、本開示による方法は、特定の用途、例えば1つ以上の食品及び医療産業などでの使用が政府規制機関によって承認されているファウリング防止剤を使用することができる。1つ以上の実施態様では、帯電防止剤は、食品包装材料での使用において米国食品医薬品局によって承認されるている、21 C.F.R. 178.3130に挙げられているものである。1つ以上の実施態様では、ファウリング防止剤は、食品部門及び医療用途のために承認されている脂肪酸のグリセロールエステル、例えば、デュポン(登録商標)によって販売されている市販のGrindsted PGE O 80D又はGrindsted PS432を含み得る。
【0025】
食品接触用途のポリマーについて、欧州連合プラスチック規制及び米国食品医薬品局の下で制限されている化合物のいくつかの例は、とりわけ、エトキシル化アミン、アルキルベンゼンスルホン酸、ランダムエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーである。食品接触用ポリマーの製造のための重合プロセス助剤としてのこれらの化合物の使用制限の増大により、植物由来のいくつかの化合物がファウリング防止剤として使用するために研究されている。
【0026】
キラー剤
1つ以上の実施態様において、助剤組成物は、反応性種を中和し、かつ/あるいは重合触媒を不活性化することによって、重合反応及びポリマー鎖延長を低減又は停止させるキラー剤を含み得る。本開示によるキラー剤は、一般式:R2OHを有する直鎖又は分枝鎖のアルコールを含み得る。ここで、R2は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、又はその組み合わせであり得る。キラー剤には、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが含まれ得る。
【0027】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、95:5~55:45の範囲の質量比で組み合わされたキラー剤及びファウリング防止剤の組み合わせを有し得る。いくつかの実施態様において、助剤組成物は、90:10~55:45の範囲の質量比で組み合わされたキラー剤及びファウリング防止剤の組み合わせを有し得る。
【0028】
有機アルミニウム
1つ以上の実施態様において、助剤組成物は、本開示において同等に有機アルミニウム又は助触媒と呼ばれるアルキルアルミニウムを含み得るか、又はそれらと接触され得る。アルキルアルミニウムには、構造:Al(R1)3を有する化合物が含まれることができ、ここで、R1は、アルカン基、例えばCH3、C2H5、n-C3H7、及びイソ-C4H9などである。
【0029】
1つ以上の実施態様において、助剤組成物は、アルキルアルミニウムと、例えば、アルキルアルミニウム:ファウリング防止剤の比が、200:1~4:1の範囲内であるか、4:1、10:1、又は50:1のいずれかの下限を有するか、あるいは、100:1、150:1、又は200:1のいずれかの上限を有するかのモル比で組み合わせることができる(ここで、任意の下限を任意の上限と組み合わせて使用することができる)。
【0030】
助剤複合剤の形成
1つ以上の実施態様では、ファウリング防止剤をアルキルアルミニウムと組み合わせて、助剤複合剤を生成させることができる。特定の理論に限定されないが、ある割合のファウリング防止剤がアルキルアルミニウムと反応して、ファウリング防止複合剤として機能するアルミニウム塩を形成し得る。1つ以上の実施態様において、有機アルミニウムを、重合プロセスの前又は最中に助剤組成物と組み合わせて、ファウリング防止活性を増強し得る活性表面複合剤を生成させることができる。いくつかの実施態様において、助剤組成物とアルキルアルミニウムとの接触により、重合混合物中に固相化合物が生成し得る。さらに他の実施態様では、ファウリング防止剤は、ポリグリセロールエステルであり得、ポリグリセロールエステルは、アルキルアルミニウムと反応して、ポリグリセロールエステル、アルキルアルミニウム、及びアルミニウム塩(例えばステアリン酸アルミニウムなど)の混合物を含む複合剤を生成し得る。
【0031】
さらに、1つ以上の実施態様では、ファウリング防止剤を、重合プロセスに導入する前に、アルキルアルミニウムと組み合わせる(及び複合剤を形成する)ことができる。しかし、他の実施態様では、ファウリング防止剤を、アルキルアルミニウムと事前に反応させることなしに添加して、代わりに、助触媒として重合プロセス中に存在するアルキルアルミニウムと系内で反応又は複合剤化させることができることが想定される。
【0032】
添加剤
様々な添加剤を、本開示の助剤組成物と組み合わせることもできる。1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、担体、例えば、鉱油、モノグリセリド、モノグリセリドエステル(例えば酢酸のモノグリセリドエステルなど)、炭化水素溶媒などを含み得る。1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、95:2.5:2.5~55:22.5:22.5の範囲内の比率で、反応キラー剤:ファウリング防止剤:担体の質量比を有し得る。
【0033】
用途
本開示による助剤組成物は、任意の重合プロセス、例えば、バルクプロセス、溶液プロセス、スラリー相プロセスなどに適合させることができる。重合助剤の量は、使用する触媒系及びポリマーのグレードに依存し得る。例えば、重合助剤は、ポリマー生成速度と比較して、約5から1000質量ppmの範囲の量の速度で反応器に供給することができる。
【0034】
1つ以上の実施態様では、重合助剤は、0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppm、又は50ppmのいずれか1つから選択される下限から100ppm、150ppm、及び500ppmのいずれか1つから選択される上限までの範囲の、生成されたポリマーのppmで、反応器に添加することができる(ここで、任意の下限を任意の上限と組み合わせることができる)。例えば、助剤組成物の5~150ppmの選択された範囲は、1分あたりのポリマーの生成速度を有するプロセスに対して、助剤組成物を、1分あたりに生成するポリマーの量に対して5~150ppmの範囲で添加することを意味する。
【0035】
図1を参照すると、本開示による重合プロセスの流れ図が示されている。102で、オレフィン前駆体を、アルキルアルミニウム助触媒、触媒、及び電子ドナーを組み合わせることによって活性化させる。次に、そのポリマー混合物を、106での重合の前に、予備重合工程で反応させる。重合工程の後、助剤混合物を、生成したポリマーに添加し、108での脱気工程のための装置に移送する。ポリマー生成物は、脱気工程の後、110で取り出し、非ポリマー画分は、112で回収のために処理することができる。回収したモノマーは、いくつかの実施形態では、106での重合混合物に再循環させることができる。
【0036】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物を、室温で液体として脱気システムに供給することができ、これにより、再現可能な量で供給することが可能になる。例えば、助剤組成物は、担体、例えば、鉱油、モノグリセリド、ヘキサン、又は混合物を低粘度で液体状態にすることを可能にする他の炭化水素溶媒などを含んでいてよい。さらに、助剤組成物は、キラー剤に溶媒和したファウリング防止剤を含んでいてよく、これにより、室温での相分離、及びポリマー中のファウリング防止剤の凝集体の形成が回避され得る。したがって、この混合物を、連続撹拌槽に送るか、又は非撹拌貯蔵容器及びポンプを含む閉鎖再循環システムに含ませる。混合物を、いくつかの実施態様では10~60分、及びいくつかの実施態様では30分の間攪拌又は再循環することができる。1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、1週間を超える期間にわたって安定性を有し得る。
【0037】
1つ以上の実施態様では、助剤複合剤は、15℃、20℃、及び22℃のいずれか1つから選択される下限から、22℃、25℃、及び30℃のいずれか1つから選択される上限までの範囲の温度で形成され得る(ここで、下限は任意の上限と組み合わせることができる)。いくつかの実施態様において、助剤複合剤は、5℃~40℃の範囲の温度で少なくとも1週間安定であり得る。
【0038】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物を使用して、重合後のシステムの配管及び機器の内壁における静電荷の影響を低減することができる。重合後のシステムには、液相未反応モノマーを気化させる熱交換器、未反応モノマーをポリマー製品から分離する任意のフラッシュドラム又はバッグフィルターが含まれることが多い。分離したモノマーを、反応システムに戻す前に、いくつかの実施態様では、蒸留ユニットに移すことができる。重合後システムには、ポリマーの押出しなどの後続のプロセスに移送する前に過剰な溶媒を除去するための、乾燥システムも含まれ得る。
【0039】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物を、重合反応排出物及び/又は粉末移送ラインに注入して、ファウリングを低減し、ポリマーの回収率を高めることができる。いくつかの実施態様では、助剤組成物を添加して、静電荷を放散させ、粉末輸送を改善することによって、例えばバグフィルターによるモノマー分離などを改善することができる。脱気の前に助剤組成物を適用して、重合を停止させ、ホットスポット又は凝集物の形成を低減することができる。
【0040】
1つ以上の実施態様において、助剤組成物は、組み合わされた時に、均質な単相溶液を形成し得る。いくつかの実施態様において、重合反応に由来する生成物ストリームへの助剤組成物の添加は、単一の相の溶液としての生成物ストリームの形成及び安定性を促進し得る。
【0041】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、0.25、0.5、及び1のいずれか1つから選択される下限と、1、2、及び2.5のいずれか1つから選択される上限とを有する範囲の、キラー剤の助触媒に対するモル比を有し得る(ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせることができる)。
【0042】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物は、0.005、0.01、0.05のいずれか1つから選択される下限と、0.1、0.15、及び0.25のいずれか1つから選択される上限とを有する範囲の、ファウリング防止剤の助触媒に対するモル比を有し得る(ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせることができる)。
【0043】
1つ以上の実施態様では、助剤組成物は実質的に水を含まなくてもよい。
【0044】
1つ以上の実施態様による方法の重合プロセスは、特に限定されない。しかし、1つ以上の実施態様では、重合プロセスは、特に気相重合であり得る。特定の実施態様では、重合は、バルクプロセス、溶液プロセス、又はスラリー相プロセスであり得る。
【0045】
1つ以上の実施態様では、重合プロセスは、エチレン、プロピレン、ブテン、及びヘキセンのうちの少なくとも1つ以上を重合することができる。いくつかの実施態様では、重合プロセスはホモポリマーを生成する。1つ以上の実施態様の方法によって製造されるホモポリマーは、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちの1つであり得る。いくつかの実施態様では、重合プロセスはコポリマーを生成する。1つ以上の実施態様の方法によって製造されるコポリマーは、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレン異相コポリマー、ポリプロピレンターポリマー、及び線状低密度ポリエチレンのうちの1つであり得る。
【0046】
いくつかの実施態様において、重合プロセスは、メタロセン触媒又はチーグラー・ナッタ触媒のいずれかを使用し得る。1つ以上の実施態様のチーグラー・ナッタ触媒及びメタロセン触媒は限定されず、当業者に知られている任意のチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒であってよい。チーグラー・ナッタ触媒は遷移金属塩であり得、遷移金属は第4~12族金属から選択される。いくつかのチーグラー・ナッタ触媒は、さらにMgCl2及び/又はTiCl4と共に使用することができ、脂肪族アミン、アミド、エステル、エーテル、ケトン、ニトリル、ホスフィン、ホスホルアミド、チオエーテル、チオエステル、アルデヒド、アルコラート、又はカルボン酸の1つ以上から選択される内部電子ドナーを含んでいてよい。1つ以上の実施態様のメタロセン触媒は、タイプCp*
2MCl2の二塩化物錯体であってよく、Mは、Ti、Zr、及びHfなどの遷移金属であり、Cp*は、置換又は非置換のシクロペンタジエニルアニオンである。
【0047】
1つ以上の実施態様では、重合プロセスは、当技術分野で知られている任意の適切な機器又は装置の使用を含み得る。いくつかの実施態様では、重合プロセスは、連続的に攪拌されるタンク重合反応器、ループ重合反応器、流動床重合反応器、及びプラグフロー重合反応器のうちの1つ以上の使用を含み得る。
【0048】
1つ以上の実施態様では、重合プロセスは、1つ以上の気相反応器を使用することができる。いくつかの実施態様において、重合プロセスは、気相反応器を、スラリー反応器及びバルク反応器のうちの1つ以上と組み合わせて使用し得る。
【0049】
ポリマー
本開示の1つ以上の実施態様によるポリマーは、本明細書に詳述される方法のいずれかによって製造することができる。上記述したとおり、1つ以上の実施態様のポリマーは、エチレン、プロピレン、ブテン、及びヘキセンのうちの1つ以上に由来するモノマーを含み得る。いくつかの実施態様では、ポリマーは、いくつかの実施態様では、ホモポリマーであり得、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちの1つであり得る。1つ以上の実施態様では、ポリマーは、いくつかの実施態様では、コポリマーであり得、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレン異相コポリマー、ポリプロピレンターポリマー、及び線状低密度ポリエチレンのうちの1つであり得る。
【実施例】
【0050】
以下の例は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0051】
[実施例1]:
化合物の導電率は、化合物が重合プロセスにおいて帯電防止剤(又は帯電防止複合剤)として首尾よく使用されることができ、重合中に生じる静電荷を補償することができるかどうかを決定する上で重要な特性である。Grindsted PS 432(デュポン製)(以下、「GE」と称する)、及びトリエチルアルミニウム/Grindsted PS432(TEAL/GE)混合物の(1:1及び10:1mol/molの両方の比率での)導電率を、EMCEE Electronicsが提供するデジタル導電率計モデル1152を使用して測定した。
【0052】
GEは、2つの主要な物質を含む:オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステル(CAS No.49553-76-6)及び酢酸のモノグリセリドとのエステル(CAS No.736150-63-3)。
【0053】
オレイン酸のモノエステルと、オキシビス(プロパンジオール)/トリエチルアルミニウム複合剤との反応によって形成された帯電防止複合剤を、1H NMR(OneNMRプローブを備えたDD2コンソールを使用するAgilent 400Mhz)によって調べた。試料を、重水素化シクロヘキサンを使用して5mmチューブ内に調製した。オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルを、10mgに対して0.6mLの重水素化シクロヘキサンの割合で希釈した。このオレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルと、トリ-エチル-アルミニウムとの反応は、1:1のモル比で実施した。
【0054】
測定を開始する前に、導電率計の信頼性を、ゼロの導電率を提供するヘキサンの測定によって確認した。溶液を、グローブボックス内で高純度ヘキサン中に帯電防止剤を希釈して調製した。その濃度を質量ppmで表す。純粋なGrindsted PS432は、Grindsted PS432/アルキルアルミニウムの混合物よりもよりも低い導電率を示した。帯電防止複合剤の形成は、
図2に示すように導電率を高める。
【0055】
オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステル/トリエチルアルミニウムの反応剤の反応によって形成される帯電防止複合剤は、2つの相を示す:白色の固体及び液体。これらの2つの相を分離し、各フラクションの10mgを0.6mLの重水素化シクロヘキサンで希釈した。オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルのNMRスペクトルを、Universidad del Valle(Cali-Colombia)が提供するソフトウェアPredictでシミュレートし、水素ピークを特定した。
【0056】
図3に示すシミュレートしたスペクトルを使用して、
図4に示すNMRの分析を理解するための基礎とした。オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステル/トリエチルアルミニウムの反応によって得られた固相のスペクトルは、帯電防止複合剤の形成を示しており、グループB、C、D、及びEは明確に検出されなかった。その均一な液相はグループBを有さず、オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステルの分子が、この炭素で分解することを示している。グループC、D、及びEは、この液相のスペクトルで検出された。
【0057】
図5は、オレイン酸のオキシビス(プロパンジオール)とのモノエステル/トリエチルアルミニウムの反応によって形成される2つの相を示す。
【0058】
[実施例2]:
Grindsted PS432(以下、「GE」と称する)とエタノールとの混合物を、質量ベースで10:90の割合で、液相ポリプロピレン商業プラントの脱気システムに注入した。使用した触媒活性剤はトリエチルアルミニウムであった。GEは、活性化反応からの過剰のトリエチルアルミニウムと反応して、帯電防止複合剤を形成する。以下:
Al(CH2CH3)3+3CH3CH2OH → Al(OCH2CH3)3+3CH3CH3
の反応に従って、エタノールはトリエチルアルミニウムと反応してアルコキシドを形成するが、これは帯電防止剤としては機能しない。
【0059】
試験は、ポリプロピレンホモポリマーの重合中、35t/時の生産速度から開始して、44t/時の生産速度まで行った。運転中、GE:エタノール混合物を使用すると、
図6に示すように、(放射性タイプのレベル計器を使用する)レベル振動に関して、より優れた高圧バッグフィルター性能を有することが観察された。エタノールシステムの在庫を考慮して、プロセスにおけるGE:エタノール混合物の効果的な供給が、始動後約3時間で始まり、その結果、レベル振動が変化したことが推定された。HPBF(高圧バッグフィルター)の性能向上を考慮して5時間後、制限を認めるまで生産速度を上げた。帯電防止複合剤の供給の前は、レベル表示は約18%~27%で振動していた。帯電防止複合剤の供給後、レベル表示は約10%~15%で振動した。33時間後、GE:エタノール供給システムに障害が発生し、HPBFレベルが上昇し、これにより帯電防止効果が示された。
【0060】
前述の説明では、特定の手段、材料、及び実施態様を参照して記載してきたが、本明細書に開示した詳細に限定することを意図するものではない。むしろ、本明細書に開示した詳細は、添付の特許請求の範囲内の、すべての機能的に同等の構造、方法、及び使用にまで及ぶ。請求項における、手段及び機能に関する特定事項は、列挙した機能を実現するものとして本明細書に記載した構造及びその構造的同等物だけでなく同等の構造も包含することが意図されている。例えば、釘とねじは、釘が円筒面を使用して木製部品を一緒に固定する一方、ねじはらせん面を使用する点で構造的に同等ではないかもしれないが、木製部品を固定する環境では、釘とねじは同等の構造を有し得る。本明細書の請求項のいずれかの制限については、請求項が関連する機能とともに「手段」という言葉を明示的に使用している場合を除き、米国特許法第112条第6段落を引き合いに出さないことが出願人の明確な意図である。