(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ラセミベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20240305BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/131 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240305BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240305BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240305BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240305BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240305BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240305BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240305BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240305BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K31/19
A61K31/215
A61K31/353
A61K31/201
A61K31/12
A61K31/165
A61K31/131
A61K31/198
A61K31/405
A61K31/685
A61K31/7072
A61K31/137
A61K31/455
A61K31/47
A61K31/475
A61K31/4745
A61K31/138
A61K31/522
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/22
A61P25/08
A61P35/00
A61P29/00
A61P21/00
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/52
A23G3/42
(21)【出願番号】P 2021546768
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020017552
(87)【国際公開番号】W WO2020167690
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520178065
【氏名又は名称】アクセス・グローバル・サイエンシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AXCESS GLOBAL SCIENCES, LLC
【住所又は居所原語表記】2157 LINCOLN STREET, SALT LAKE CITY, UTAH 84106, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ミレット,ゲーリー
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0021274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0021281(US,A1)
【文献】特表2016-514725(JP,A)
【文献】特開2004-035417(JP,A)
【文献】特開2016-121128(JP,A)
【文献】国際公開第2018/114309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61K 45/00
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 25/22
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 21/00
A61P 25/08
A23L 33/00-33/29
A23L 2/00-2/84
A23G 3/00-3/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてケトンレベルを上昇させるためのラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物であって、
エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシ酪酸と、エナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシ酪酸とを含むベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物、および、
エナンチオマー当量で50%の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩と、エナンチオマー当量で50%の1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩とを含むベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物であって、前記ベータ-ヒドロキシブチレート塩が、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、および、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、から選択される、ラセミ混合物、を含み、
前記組成物が、モル当量で99.6%~100%未満のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0%超~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含み、
前記組成物が、固体および/または粉末の形態であ
り、
ここで、前記組成物が、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートの組み合わせを0.5g~25g提供する剤形である、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項2】
前記組成物が、
R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウムのラセミ混合物、
R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウムのラセミ混合物、
R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウムのラセミ混合物、または
R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウムのラセミ混合物、のうちの少なくとも2つの含む、請求項1に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項3】
前記組成物が、モル当量で99.6%~99.9%のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0.1%~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項1または2に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項4】
前記組成物が、モル当量で99.7%~100%未満のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0%超~0.3%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項1または2に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項5】
前記組成物が、モル当量で99.8%~100%未満のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0%超~0.2%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項1または2に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項6】
前記組成物が、モル当量で99.7%~99.9%のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0.1%~0.3%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項1または2に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項7】
6個未満の炭素を有する少なくとも1つの短鎖脂肪酸、または前記少なくとも1つの短鎖脂肪酸のモノ-、ジ-、もしくはトリグリセリドをさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項8】
6~12個の炭素、例えば8~10個の炭素を有する少なくとも1つの中鎖脂肪酸、または前記少なくとも1つの中鎖脂肪酸のモノ-、ジ-、もしくはトリグリセリドをさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項9】
脂肪分解および/または脂肪酸化を増加させるためのファットバーナーサプリメント、または、
認知能力、注意力、および/または気分を高めるための向知性サプリメント、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項10】
1つ以上の前記ファットバーナーサプリメントが、緑茶、緑茶抽出物、単離緑茶カテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、グリーンコーヒー抽出物、共役リノール酸(CLA)、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、Coleus forskohlii、ヨヒンビン、ラウウォルスシン、カプサイシン、ラズベリーケトン、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、p-ヒドロキシベンジルアセトン、エフェドリン、シネフリン、オクトパミン、1,3-ジメチルアミルアミン、ヒゲナミン、フコキサンチン、アセチルコリンモジュレーターおよび/またはアデノシン受容体アンタゴニスト、カフェイン、ニコチン、コカ葉抽出物、ウルソール酸、クレンブテロール、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、ホルデニン、アトモキセチン、7-オキソデヒドロエピアンドロステロン、トリヨードチロニン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの前記向知性化合物が、チロシン、L-DOPA、トリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン、ラセタム、ピラセタム、オキシラセタム、アニラセタム、L-テアニン、D-セリン、ホスファチジルセリン、トルカポン、ウリジン、ビンポセチン、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ホルデニン、アトモキセチン、オタネニンジン(Panax ginseng)、イチョウ(Ginkgo biloba)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、イトヒメハギ(Polygala tenuifo lia)、ムイラプアマ(Muira puama)、ハナビシソウ(Eschscholzia californica)、Convolvulus pluricaulis、ツボクサ(Centella asiatica)、アサガオカラクサ(Evolvulus alsinoides)、オトメアゼナ(Bacopa monnieri)、イカリソウ ハーブ(Epimedium herb)、アシュワガンダ ハーブ(Ashwagandha herb)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)モジュレーター、フォルスコリン、ニコチン、カフェイン、アンフェタミン、コカ葉抽出物、コリン作動性化合物、アセチルコリンモジュレーター、フペルジンA、ジメチルアミノエタノール、コリン、アルファ-グリセロホスホコリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9または10に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項12】
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルと1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルとのラセミ混合物をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項13】
対象においてケトンレベルを上昇させるためのラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物であって、
エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシ酪酸と、エナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシ酪酸とを含むベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物、および
エナンチオマー当量で50%の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩と、エナンチオマー当量で50%の1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩とを含むベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物であって、
前記ベータ-ヒドロキシブチレート塩が、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、および、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、から選択される、ラセミ混合物、を含み、
前記組成物が、モル当量で99.6%~100%未満のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0%超~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含み、
前記組成物が、錠剤、カプセル、粉末、食品、食品添加物、フレーバー付き飲料、ビタミン強化飲料、ノンアルコール飲料、フレーバー付き飲料添加物、ビタミン強化飲料添加物、ノンアルコール飲料添加物、キャンディー、棒付きキャンディー、トローチ、栄養補助食品、フレーバー付きマウススプレー、および、座薬
から選択される剤形として、またはそれらの中に入れられて提供さ
れ、
ここで、前記剤形は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートの組み合わせで0.5g~25gの単位用量を提供する、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項14】
前記組成物が、モル当量で99.6%~99.9%のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0.1%~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項13に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項15】
対象においてケトンレベルを上昇させるためのラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物であって、
錠剤、カプセル、粉末、食品、食品添加物、フレーバー付き飲料、ビタミン強化飲料、ノンアルコール飲料、フレーバー付き飲料添加物、ビタミン強化飲料添加物、ノンアルコール飲料添加物、キャンディー、棒付きキャンディー、トローチ、栄養補助食品、フレーバー付きマウススプレー、および座薬からなる群から選択される食物的にまたは薬学的に許容される担体、
エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシ酪酸と、エナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシ酪酸とを含むベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物、および、
エナンチオマー当量で50%の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩と、エナンチオマー当量で50%の1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩とを含むベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物であって、
前記ベータ-ヒドロキシブチレート塩が、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートナトリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカリウム、
S-ベータ-ヒドロキシブチレートカルシウム、および
S-ベータ-ヒドロキシブチレートマグネシウム、から選択される、ラセミ混合物、を含み、
前記組成物が、モル当量で99.6%~100%未満のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0%超~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含
み、
前記食物的にまたは薬学的に許容される担体が、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートの組み合わせで0.5g~25gの単位用量を提供する、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項16】
前記組成物が、モル当量で99.6%~99.9%のベータ-ヒドロキシブチレート塩のラセミ混合物、およびモル当量で0.1%~0.4%のベータ-ヒドロキシ酪酸のラセミ混合物を含む、請求項15に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物。
【請求項17】
対象にケトン体を投与するためのキットであって、
請求項1~16のいずれか1項に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物、
前記組成物が置かれている容器、および、
前記組成物の単位用量またはその画分を中に保持するように構成されている測定装置であって、前記組成物の単位用量が、R-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物
の0.5g~
25gを含む、測定装置を備える、キット。
【請求項18】
前記容器が、カートン、箱、缶、ジャー、バッグ、ポーチ、ボトル、水差し、および小樽からなる群から選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記測定装置が、カップ、スクープ、シリンジ、スポイト、スパチュラ、スプーン、および結腸灌水装置からなる群から選択される、請求項17または18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ラセミベータ-ヒドロキシブチレート化合物、特に、ラセミベータ-ヒドロキシブチレートの塩および酸、ならびに対象におけるケトン体の血中レベルの上昇をもたらすためのラセミベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸化合物組成物の使用が、開示される。
【背景技術】
【0002】
絶食、激しい運動、および/または低炭水化物消費の期間には、体内のグルコースおよびグリコーゲンの貯蔵が急激に消費され、急速に枯渇する可能性がある。それらの枯渇に伴うグルコース貯蔵の補給に失敗すると、身体はエネルギーのためにケトン体を生成して使用することに代謝的に移行するようになる(「ケトーシス」)。ケトン体は、脳や心臓の需要を含む身体のエネルギー需要を満たすための燃料として、身体の細胞で使用され得る。例えば、長期間の絶食中に、血中ケトンレベルが2~3mmol/L以上に増加する可能性がある。血中ケトンが0.5mmol/Lを超えて上昇すると、心臓、脳、および末梢組織が、主要燃料源としてケトン体(例えば、ベータ-ヒドロキシブチレート、およびアセトアセテート)を使用していることが従来から理解されている。この状態をケトーシスと称する。血中レベルが1.0mmol/Lから3.0mmol/Lの間の状態は、「栄養学的ケトーシス」と呼ばれる。
【0003】
ケトーシスに移行すると、言い換えれば、肝臓でのケトジェニック代謝の間、身体は食事の脂肪および身体の脂肪を主要なエネルギー源として使用する。その結果、ケトーシスに移行すると、食事による脂肪摂取を制御して、ケトーシスを維持させるための低炭水化物の摂取および血中レベルを維持することにより、身体の脂肪の減少を誘導することができる。
【0004】
ケトーシス中は、身体はケトン生成状態になり、基本的に脂肪を主要燃料源として燃焼させている。体内では脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解され、脂肪酸はアセチルCoA分子へと変換され、このアセチルCoA分子は、ケトン生成を経て肝臓中で水溶性ケトン体ベータ-ヒドロキシブチレート(すなわち「β-ヒドロキシブチレート」または「BHB」)、アセトアセテート(アセチルアセトネートとしても公知)、およびアセトンへと最終的に変換される。ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートは、体内でエネルギーとして使われる主要なケトン体であり、アセトンはケトン生成の副産物として除去され排出される。
【0005】
ケトン体の代謝は、抗痙攣効果、脳代謝の促進、神経保護、筋肉温存特性、ならびに認知能力および身体能力の改善を含むいくつかの有益な効果と関連がある。ケトン補給により管理される、細胞代謝の効率性における科学に基づく改善は、身体的、認知的健康、および心理的健康に有益な影響を及ぼし、肥満、循環器系疾患、神経変性疾患、糖尿病、および癌などの一般的な回避できる疾患に関する健康に対して長期的な影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
ケトジェニックダイエットやライフスタイルを追求し、栄養学的ケトーシスの状態を維持することは、健康に多数の利点があるが、ケトジェニック状態を追求し維持することには大きな障壁が残っている。その障壁の1つは、ケトジェニック状態への移行の難しさである。ケトーシスに移行する最速の内因的方法は、運動を組み合わせた絶食を経ての体内におけるグルコースの貯蔵の枯渇によるものである。これは、身体的および精神的要求が厳しく、最も意欲的で規律正しい人であっても非常に困難である。
【0007】
さらに、ケトーシスへの移行にはしばしば低血糖を伴い、これにより多くの場合で無気力および立ち眩みが起こる可能性があり、結果として、一般的に「低糖質風邪」と呼ばれる不快な身体的および精神的状態に陥ることがある。また、身体が自然に「省エネ」モードになるので、多くの人々は、代謝におけるダウンレギュレーションを経験する。これらの一過性の症状は、2~3週間もの期間続く可能性があるという意見もある。この移行期間中に、もし対象が制限量を超える炭水化物を含有する食事または軽食を摂取すると、直ちにケトン生成が終了し、身体がケトーシスの状態から脱却する。次いで、身体が主要燃料としてグルコースを利用する状態へと戻り、ケトーシスへの移行は改めて開始しないといけなくなる。
【0008】
もし対象がケトーシスの確立に成功すると、食事の際、脂肪に対する炭水化物およびタンパク質の比率を厳格に維持する必要があるため、ケトーシスを維持することは、それほど困難でないにしても、同様に困難である。それは、さらに、ケトジェニック状態へ移行しその状態を維持する時によく起こる正常な電解質平衡の崩壊により複雑化される。肝臓および筋肉におけるグリコーゲンの貯蔵の枯渇および低下により、身体が水分を保持する能力が低下し、排尿回数が増え、それにより電解質がより多量に消失する。また、ケトーシスによるインスリンレベルの低下は、一定の電解質が腎臓により排出される速度に影響を及ぼし、さらに体内の電解質レベルを低下させる可能性がある。電解質不均衡のマイナス効果は、筋肉痛、痙攣、ひきつりおよび脱力、不穏状態、不安、頻繁な頭痛、非常にのどが渇くこと、不眠症、発熱、心臓の動悸または不整脈、消化器症状(急激な腹痛、便秘、または下痢など)、混乱および集中することの困難、骨障害、関節痛、血圧の変化、食欲または体重の変化、疲労(慢性疲労症候群を含む)、関節のしびれ、および眩暈(特に急に起立したとき)を含む。
【0009】
哺乳類においてケトーシスを促進するのに使用されるいくつかの組成物は、米国特許出願公開第2017/0296501号で開示されたLoweryらによるものを含み、これは内因性の形態のベータ-ヒドロキシブチレート、すなわちR-ベータ-ヒドロキシブチレートを含み、一方でLoweryらは、非内因性のエナンチオマーまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレート、ならびにR-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレートのラセミ混合物の使用を薦めていない。また、Clarkeらの米国特許第8,642,654号に開示されているような他の組成物は、大部分または全部を単一のベータ-ヒドロキシブチレートエステル(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートから構成されている。ベータ-ヒドロキシブチレートの内因性形態ではないエナンチオマーが除外されているのは、S-ベータ-ヒドロキシブチレート(別名(3S)-ヒドロキシブチレート)は効果がない、あるいは有害であるという見解に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2017/0296501号
【文献】米国特許第8,642,654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(概要)
本明細書では、長期間に渡って対象におけるケトーシスを促進することおよび/または持続させることを含む、対象におけるケトン体レベルを上昇させることにおけるラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物および使用方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に開示されるラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレート塩とS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩とのラセミ混合物(「R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩」)と、R-ベータ-ヒドロキシ酪酸とS-ベータ-ヒドロキシ酪酸とのラセミ混合物(「R,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸」)とを含む。R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩の「ラセミ混合物」は、R-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩のエナンチオマー的に等価な量(50:50)を含む。R,S-ヒドロキシ酪酸の「ラセミ混合物」には、R-およびS-ベータ-ヒドロキシ酪酸のエナンチオマー的に等価な量(50:50)が含まれる。
【0013】
R-ベータ-ヒドロキシブチレートは、哺乳類が産生する内因性の形態であり、S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、ラセミRS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物の投与による外因性の補給を通じて体内に入る。このように、前記ラセミRS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、体内で異なる機能を有する別々の成分を含んでいるが、R-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物のみを投与した場合と比較して、より持続的な血中ケトンレベルを含む強化されたケトジェニック効果が得られる。R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート化合物の少なくとも「二重ラセミ積重(stack)」を提供する。
【0014】
R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーは、ケトーシス時に哺乳動物によって内因性に産生され、従って、外因性に投与されたR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分は、エネルギー産生(例えば、グルコースに代わるエネルギー源として)など、身体によって直ちに利用され得るR-ベータ-ヒドロキシブチレートの追加量および/または増加した血中血漿レベルを提供する。哺乳類によって内因的に産生されないS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分は、R-ベータ-ヒドロキシブチレート成分を補完し、R-ベータ-ヒドロキシブチレート成分によっては生み出されない1つ以上の所望の効果を哺乳類にもたらす。
【0015】
例えば、S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分をR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分と一緒にエナンチオマー的に等価な比率で投与することにより、(1)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの内因性産生の増加、(2)S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分からR-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートのうちの一つまたは両方への内因性変換、(3)S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分から脂肪酸およびステロールへの内因性変換、(4)ケトーシスの延長、(5)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートへの変換とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分の代謝、(6)胎児の発育の増大、(7)成長年数の増加、(8)ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、(9)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分によるシグナル伝達、(10)抗酸化活性、および(11)アセチル-CoAの産生のうちの少なくとも1つが得られる。
【0016】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物の外因性送達は、主にS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分によって血中ケトン体レベルを相対的により持続させることに加えて、主にR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分、特にR-ベータ-ヒドロキシ酪酸によって血中ケトン体レベルを相対的に迅速に高めることを有益に提供することができる。このようなラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、対象のケトーシス誘導を効果的かつ相対的に迅速に行うことができ、同時にS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分の調節効果により、ケトン体を持続的かつ長期的に血流に送り込み、身体が必要とするケトジェニックな効果を提供することができる。
【0017】
R,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸と1つ以上のR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩を組み合わせることは、電解質負荷を軽減し、吸収率を高め、味を改善し、製剤化を容易にし、中性または酸性のpHを有する組成物を得るためにクエン酸または他の食用酸を加える必要性を減らすので、非常に有益である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、組み合わせサプリメントを形成するために、1つ以上の他の食物的および/または薬学的に許容されるサプリメント/薬剤と(例えば、直接混和して、または併用投与して)組み合わせてもよい。ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物の独特の特性は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートのいずれかで構成されるか、またはいずれかで富化されたベータ-ヒドロキシブチレート組成物を使用する他の同様の組み合わせサプリメントと比較して、組み合わせサプリメントを有益に強化することができる。例えば、脂肪分解および/または脂肪酸化を高めることを意図した組成物(本明細書では「ファットバーナー(fat burner)」成分と呼ぶ)が、相乗的な脂肪分解および/または脂肪燃焼効果を有する組み合わせサプリメントを形成するために、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物と組み合わされ得る。別の例では、精神的な覚醒、認知、および/または気分を高めることを意図した組成物(本明細書では「向知性」成分と呼ばれる)が、相乗的な認知効果、覚醒効果、および/または気分効果を有する組み合わせサプリメントを形成するために、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物と組み合わされ得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、栄養学的または薬学的に有効な量の本明細書に開示される1つ以上の組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む、対象におけるケトン体レベルを上昇させる方法(対象においてケトーシスを促進するおよび/または維持することを含む)において使用されてもよい。対象におけるケトン体レベルが上昇することの有益な効果の例としては、食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコースレベルの低下、精神的敏しょう性の改善、不安緩解作用(抗不安)、応答時間の短縮、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の軽減、糖尿病の影響の軽減、神経障害の改善、癌の軽減、炎症の軽減、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の軽減、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、または身体組成の改善のうちの1つ以上が含まれる。
【0020】
前記組成物は、栄養学的にまたは薬学的に許容される担体を含んでもよい。
【0021】
実施形態は、少なくとも4つの異なるベータ-ヒドロキシブチレート化合物の「ラセミ積重」を含む。R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびS-ベータ-ヒドロキシブチレートは、遊離酸(すなわち、R-ベータ-ヒドロキシ酪酸およびS-ベータ-ヒドロキシ酪酸)、その塩(すなわち、R-ベータ-ヒドロキシブチレート塩およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩)、および任意にそのエステル(すなわち、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルおよびS-ベータ-ヒドロキシブチレートエステル)を提供する。ベータ-ヒドロキシブチレートを、少なくとも4つの別々の形態のベータ-ヒドロキシブチレートを組み合わせた二重ラセミ積重(または6つの別々の形態を組み合わせた三重ラセミ積重)として提供することは、有益なことに、所定の投与量に対してより多くの量のベータ-ヒドロキシブチレートを使用することを可能にし、および/または1日あたりの投与量をより多くすることを可能し得る。ベータ-ヒドロキシブチレートの各形態は、典型的には、それ自身の特定の正の特性および負の副作用と関連している。異なる形態のベータ-ヒドロキシブチレートを積重することで、それぞれを単独で使用した場合と比較して、より多くの正の特性を提供することができる。同様に、異なる形態のベータ-ヒドロキシブチレートを積重することで、それぞれの特定の形態のベータ-ヒドロキシブチレートの負の副作用を軽減または緩和し、そのような負の作用を「分散」して制限することができる。いずれの場合も、積重することで、効果的に送達できるベータ-ヒドロキシブチレートの全体的な用量が増加または最大化される。
【0022】
さらなる特徴および利点を以下の記載における一部で説明し、一部は記載により明らかになるか、または本明細書に開示された実施形態の実行により習得できるであろう。前述の短い概要と以下の詳細な説明の両方は、例示および説明のみを目的としており、本明細書に記載されている実施形態または特許請求の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】
図1Aは、少なくとも2種類の異なる形態のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートの「積重された(stacked)」用量を使用する場合に、単一形態のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、投与されるベータ-ヒドロキシブチレートのより高いレベルを示している。
【
図1B】
図1Bは、ベータ-ヒドロキシブチレートの様々な製剤による治療の結果、予想される望ましくない副作用の相対比率を示しており、ここでは、(1)遊離のR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸および(2)R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩を含む「二重積重」(すなわち、二重ラセミ積重)製剤、ならびに二重積重に加えてR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルをさらに含む「三重積重」(すなわち、三重ラセミ積重)製剤は、ベータ-ヒドロキシブチレートを単独で投与する場合と比較して、より多量のベータ-ヒドロキシブチレートを投与することが可能となり、および/または副作用の発生や強度を軽減することが期待される。
【
図2】
図2は、R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート積重組成物の予想される放出プロファイルを、遊離酸の、塩の、およびエステルの単一形態ならびにR-ベータ-ヒドロキシブチレート積重と比較しており、積重されたR,S組成物は、全体的に放出プロファイルが延長され、曲線下面積(AUC)が大きくなることを示している。
【
図3】
図3は、ベータ-ヒドロキシブチレート成分を含む組み合わせ体重減少サプリメントと他の体重減少サプリメントとを組み合わせて治療した結果としての脂肪分解および/または脂肪酸化の予想される相対比率を示し、脂肪分解および/または脂肪酸化の総量(曲線下面積)は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されたベータ-ヒドロキシブチレート成分を使用する他の同様の組み合わせサプリメント/薬剤と比較して、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分を使用する組み合わせサプリメントでより大きいことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
1.定義
化合物「ベータ-ヒドロキシブチレート」は、β-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、βHB、またはBHBとしても知られており、一般式CH
3CH
2OHCH
2COOHを有するヒドロキシカルボン酸であるベータ-ヒドロキシ酪酸の脱プロトン化した形態である。典型的な生物学的pHレベルで存在する脱プロトン化形態は、CH
3CH
2OHCH
2COO
-である。以下に示す一般的な化学構造は、開示された組成物で利用され得るベータ-ヒドロキシブチレート化合物を表す。
【化1】
(式中、
Xは、水素、金属イオン、アミノ酸からなどのアミノカチオン、アルキル、アルケニル、アリール、またはアシルであってもよい。)
【0025】
Xが水素の場合、前記化合物はベータ-ヒドロキシ酪酸である。Xが金属イオンまたはアミノカチオンの場合、前記化合物はベータ-ヒドロキシブチレート塩である。Xがアルキル、アルケニル、アリール、またはアシルの場合、前記化合物はベータ-ヒドロキシブチレートエステルである。前述の化合物は、結晶、粉末、固体、液体、溶液、懸濁液、またはゲルなどの任意の所望の物理的形態であり得る。
【0026】
「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート」という用語は、組成物中にエナンチオマー的に等価な量(50:50)の総R-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレートが存在することを意味する。「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩」および「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩」という用語は、前記組成物中にエナンチオマー的に等価な量(50:50)の総R-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩が存在することを意味する。「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸」という用語は、前記組成物中にエナンチオマー的に等価な量(50:50)のR-およびS-ベータ-ヒドロキシ酪酸が存在することを意味する。「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートエステル」および「ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートエステル」という用語は、前記組成物中にエナンチオマー的に等価な量(50:50)の総R-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルが存在することを意味する。
【0027】
「R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物」という用語は、前記組成物中にエナンチオマー的に等価な量の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩および1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩が存在し、前記組成物中にエナンチオマー的に等価な量(50:50)の遊離R-ベータ-ヒドロキシ酪酸および遊離S-ベータ-ヒドロキシ酪酸が存在することを意味する。
【0028】
「R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩」という用語は、水に溶解して溶液を形成し、液体に分散して懸濁液またはゲルを形成する、結晶、粉末、その他の固体形態などのいずれかの特定の物理的状態を意味または暗示するものではない。塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩、塩基性アミノ酸などの強塩基または弱塩基でベータ-ヒドロキシ酪酸を少なくとも部分的に中和することなどにより、溶液中で形成され得る。
【0029】
「遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸」という用語は、非脱プロトン化ベータ-ヒドロキシ酪酸分子と脱プロトン化ベータ-ヒドロキシ酪酸分子との合計を意味する。脱プロトン化されたベータ-ヒドロキシ酪酸分子とは、一般に、プロトンを放出してヒドロニウムイオン(H3O+)およびベータ-ヒドロキシブチレートアニオンを形成した(例えば、水に溶解した)分子を意味する。
【0030】
遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸分子は、乾燥粉末または他の固体形態のベータ-ヒドロキシブチレート混合塩酸組成物に含まれる場合、典型的には有意な程度に脱プロトン化されていない。このような場合、重量ベースでのベータ-ヒドロキシブチレート混合塩酸組成物中の遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸の分数量(fractional amount)は、遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸の重量を、遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸とベータ-ヒドロキシブチレート塩との合計重量で割ったものである。モルベースでは、ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩酸組成物中の遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸の分数量は、遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸のモル当量を、遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸と、ベータ-ヒドロキシブチレート塩によって提供されるベータ-ヒドロキシブチレートアニオンとのモル当量の合計で割ったものである。
【0031】
水に溶解した場合、ベータ-ヒドロキシ酪酸の一部は、典型的にはベータ-ヒドロキシブチレートアニオンとヒドロニウムイオン(H3O+)に解離する。その結果、ベータ-ヒドロキシ酪酸分子は、溶解したベータ-ヒドロキシブチレート塩とプロトンとカチオンを交換し得る。ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物中のベータ-ヒドロキシ酪酸およびベータ-ヒドロキシブチレート塩の相対量を規定する目的で、ベータ-ヒドロキシ酪酸分子の解離およびプロトンとカチオンとの交換は、ベータ-ヒドロキシブチレート塩からのベータ-ヒドロキシブチレートアニオンに対する遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸のモル比を変化させるものとは理解されない。溶液中の遊離ベータ-ヒドロキシ酪酸分子の総量は、脱プロトン化されていない溶解したベータ-ヒドロキシ酪酸分子と、ベータ-ヒドロキシ酪酸分子の脱プロトン化によって形成されたベータ-ヒドロキシブチレートアニオンとの合計である。
【0032】
別の言い方をすると、溶液中のベータ-ヒドロキシ酪酸の総モル当量は、脱プロトン化されているか否かにかかわらず、(i)溶液中の非脱プロトン化ベータ-ヒドロキシ酪酸分子のモル当量とベータ-ヒドロキシブチレートアニオンの総モル当量(すべての供給源から)の合計と、(ii)ベータ-ヒドロキシブチレート塩化合物からのカチオンによって提供されるカチオン電荷の総モル当量(これはベータ-ヒドロキシブチレート塩によって提供されるベータ-ヒドロキシブチレートアニオンの総モル当量に等しい)との間の差であると理解される。ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属カチオンは、金属カチオン1モルあたり1モルのカチオン電荷を提供する。一方、マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属のカチオンは、金属カチオン1モルあたり2モルのカチオン電荷を提供する。脱プロトン化されたベータ-ヒドロキシ酪酸分子1モルは、1モルのアニオン電荷および1モルのカチオン電荷を提供する。
【0033】
以上のことから、溶液中のベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物からのベータ-ヒドロキシブチレート分子の総モル数に対する溶液中のベータ-ヒドロキシ酪酸のモル分率は、[(i)-(ii)÷(i)]であり、溶液中のベータ-ヒドロキシブチレート塩からのベータ-ヒドロキシブチレート分子のモル分率は、[(ii)÷(i)]である。それぞれのモル分率に100をかけると、溶液中のそれぞれのパーセンテージがわかる。
【0034】
例として、乾燥粉末状態における100モル当量のベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物が、モルベースで5%の遊離非脱プロトン化ベータ-ヒドロキシ酪酸および95%のベータ-ヒドロキシブチレート塩を含んでいた場合、実質的に5モル当量のベータ-ヒドロキシ酪酸分子および95モル当量のベータ-ヒドロキシブチレートアニオンが存在することになる。ベータ-ヒドロキシブチレート塩を溶解するのに十分な水があり、ベータ-ヒドロキシ酪酸分子の一部が脱プロトン化されている場合、非脱プロトン化ベータ-ヒドロキシ酪酸のモル当量は5未満であり、ベータ-ヒドロキシブチレートアニオンのモル当量は95よりも大きいであろう。溶液中のベータ-ヒドロキシ酪酸の脱プロトン化の程度は、pHに関連している。
【0035】
ベータ-ヒドロキシブチレートがR-エナンチオマーであるかS-エナンチオマーであるかは、平面カルボキシル基との関係における3-炭素(ベータ-炭素)上のヒドロキシの四面体の配向に依存する。
【0036】
ベータ-ヒドロキシブチレート、典型的には、哺乳類によって生成される内因性形態であるR-ベータ-ヒドロキシブチレートは、対象におけるグルコースレベルが低い場合に、または患者の身体が、使用可能な形態のベータ-ヒドロキシブチレートの補給を受ける場合、燃料源として患者の身体によって利用され得る。ベータ-ヒドロキシブチレートは、一般的に「ケトン体」と呼ばれている。
【0037】
本明細書で使用される「ケトジェニック組成物」は、それが投与される対象において、ケトーシスなどの所望のレベルでケトン体が上昇した状態を誘発および/または持続させることを含め、対象においてケトン体レベルを上昇させるために処方される。
【0038】
本明細書で使用される「対象」または「患者」は、動物界のメンバーを指し、哺乳類を含み、これらに限定されないが、ヒトおよび他の霊長類、げっ歯類、魚類、爬虫類、および鳥類などを含む。前記対象は、治療、処置、もしくは、予防が必要な任意の動物、または治療、処置、もしくは予防が必要と疑われる任意の動物であってもよい。予防は、高グルコースまたは糖尿病が認められる場合などに起こるもしれない事象を防ぐために行われることを意味する。「患者」および「対象」は、本明細書では互いに互換可能に使用される。
【0039】
本明細書で使用される「ケトーシス」は、β-ヒドロキシブチレートの両エナンチオマー、アセトアセテートおよびアセトンを含む血中ケトンレベルが、対象において約0.5mmol/L~約16mmol/Lの範囲内にある対象を指す。ケトーシスは、ミトコンドリア機能を改善し、活性酸素種の産生を減少させ、炎症を軽減し、神経栄養因子の活性を増加させ得る。本明細書で使用される「ケト適応」は、維持された非病理性の「穏やかなケトーシス」または「治療的ケトーシス」を得るための長期の栄養学的ケトーシス(>1週間)のことを指す。
【0040】
いくつかの場合、「上昇したケトン体レベル」は、対象が「臨床的ケトーシス」の状態にあることを意味しないかもしれないが、それにもかかわらずエネルギーの生成するおよび/またはケトン体代謝およびシグナル伝達の他の有益な作用を及ぼすためのケトンの供給の上昇を意味する。例えば、「ケト適応(ketone adapted)」された対象は、必ずしもケトン体血清レベルが上昇していないかもしれないが、むしろ「ケト適応(ketone adapted)」されていない対象と比較して、より迅速に、利用可能なケトン体を利用できる。このような場合、「上昇したケトン体レベル」は、血漿レベルそのものよりむしろ、対象によって利用されているケトン体の総量および/または比率を指し得る。
【0041】
本明細書で使用される用語「投与」または「投与する」は、開示された組成物を対象に送達する過程を説明するために使用される。前記組成物は、数ある中で経口、胃内、および非経口(静脈内および動脈内、ならびに他の適切な非経口経路を指す)を含む様々な方法で投与され得る。
【0042】
用語「組み合わせサプリメント」は、本明細書において、ベータ-ヒドロキシブチレート成分と1つ以上の他のサプリメントおよび/または薬剤との組み合わせを説明するために使用される。ベータ-ヒドロキシブチレート成分と1つ以上の他のサプリメントおよび/または薬剤は、同じ錠剤、カプセル、混合粉末、または他の剤形で一緒に混合することによって、または、直接混合しなくても別々の成分を同じ包装に入れることによってなど、直接組み合わせてもよい。しかし、他の実施形態では、本開示の範囲に入るためには、別々の成分を投与前に必ずしも直接組み合わせる必要はない。例えば、別々の成分は、別々に対象に投与されるが、時間的には十分に近く(例えば、互いに約8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または0.5時間以内)、併用投与されたとみなされ、したがって、「組み合わせサプリメント」の一部とみなされる場合がある。
【0043】
II.ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物
ケトーシスを促進および/または持続させることを含む、対象におけるケトン体レベルを上昇させるための組成物は、(1)エナンチオマー当量で50%の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩およびエナンチオマー当量で50%の複数のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩、ならびに(2)エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシ酪酸およびエナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシ酪酸を含む、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を含有する。前記組成物は、任意に、エナンチオマー当量で50%の1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、およびエナンチオマー当量で50%の1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシ酪酸エステルを含んでもよい。R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分のラセミ混合物は、他の成分と組み合わせて使用した場合などに、相乗効果をもたらす可能性がある。そのような場合、R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートの塩と酸の組み合わせた形態は、許容できるpHおよび味を有する。R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩およびエステルに比べて、吸収率の向上、バイオアベイラビリティの向上、電解質負荷の軽減、製造の容易さ、味の大幅な改善、および中性または酸性のpHを有する組成物を得るためのクエン酸または他の食用酸の必要性の軽減などの実質的な利点を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、100%未満のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩を含み、0%を超える遊離ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸を含む。ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、モルベースで最大99.9%、99.8%、99.7%、99.6%、99.5%、99.4%、99.3%、99.2%、99.1%、99%、98.8%、98.65%、98.5%、98.35%、98.2%、98%、97.75%、97.5%、97.25%、または97%、および少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、または97%の総ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩と、少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.2%、1.35%、1.5%、1.65%、1.8%、2%、2.25%、2.5%、2.75%、または3%、および25%、20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、または3%未満の総遊離ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸を含有し得る。前述のパーセンテージは、モルベース(例えば、塩および酸の両方の形態におけるR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物の総モルに対する遊離R,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸のモル)で表される。
【0045】
R-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分のラセミ混合物は、哺乳類が産生するR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーと、自然には産生されないまたは発見されないS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを、それぞれ単独または富化形態で送達することによりケトジェニック効果を高めるために、哺乳類によって産生される内因性形態であるR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーと、哺乳類において自然には産生されないまたは発見されないS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーと、を同等量含有する。
【0046】
例えば、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーは、ケトーシス時に哺乳動物によって内因性に産生されるため、R-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩酸成分を対象に投与すると、エネルギーを生成するためなどに(例えば、グルコースに代わるエネルギー源として)、体内で比較的即座に利用できる追加の量が提供され、および/または血漿レベルが増加する。S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分の存在は、例えば、R-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分で富化された組成物と比較して、より制御された、緩やかな、および/または延長されたケトジェニック効果を提供するために、この効果を調節することができる。
【0047】
さらなる例として、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、主にS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー成分による血中ケトン体レベルの上昇を相対的に延長、持続させることに加えて、主にR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー成分を通して血中ケトン体レベルに対する相対的に迅速なブーストを有益に提供することができる。このような組成物は、対象のケトーシス誘導を効果的かつ比較的迅速に行うことができ、同時にケトン体の血流への持続的かつ長期的な送達を行うことができ、ここでR-ベータ-ヒドロキシブチレート成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分とが一緒になって、対象に相乗的なケトジェニックな利益をもたらす。
【0048】
S-ベータ-ヒドロキシブチレートを意図的に最小化または排除する組成物とは対照的に、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、哺乳動物において1つ以上の所望の効果をもたらすために、哺乳動物によって内因的に産生されないS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを同等量含む。例えば、S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分をR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分と一緒に投与することで、(1)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの内因性産生の増加、(2)S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分からR-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの一方または両方への内因性変換、(3)S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分から脂肪酸およびステロールへの内因性変換、(4)ケトーシスの延長、(5)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートへの変換とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分の代謝、(6)胎児の発育の増大、(7)成長年数の増加、(8)ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、(9)R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、(10)抗酸化活性、および(11)アセチル-CoAの産生、のうちの少なくとも1つが提供される可能性がある。
【0049】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、これらに限定されないが、例えば、食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコースレベルの低下、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の軽減、糖尿病の影響の軽減、神経障害の改善、癌の軽減、炎症の軽減、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の軽減、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、または身体組成の改善を含む、対象における1つ以上の所望の効果を生み出すために使用され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、食物的または薬学的に許容される担体などの担体を含むか、またはそれと組み合わせられ得る。前記組成物の担体または形態の例としては、粉末、液体、錠剤、カプセル、食品、食品添加物、飲料、ビタミン強化飲料、飲料添加物、キャンディー、棒付きキャンディー、トローチ、栄養補助食品、スプレー、注射剤、および坐薬が挙げられる。
【0051】
R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アミノ酸、またはアミノ酸の代謝産物の塩が挙げられる。例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、鉄塩(鉄(II)および/または鉄(III)として)、クロム塩、マンガン塩、コバルト塩、銅塩、モリブデン塩、セレニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ロイシン塩、イソロイシン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩、シトルリン塩、グルタミン塩、およびクレアチン塩が挙げられる。
【0052】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-、およびポリエステルなどのラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルを任意に含み得る。例えば、エタノールのモノエステル、1-プロパノールのモノエステル、1,2-プロパンジオールのモノエステル、1,2-プロパンジオールのジエステル、1,3-プロパンジオールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのジエステル、S-、R-、またはS-R-1,3-ブタンジオールのモノエステル、S-、R-、またはS-R-1,3-ブタンジオールのジエステル、グリセリンのモノエステル、(3S)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートのモノエステル、(3R)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートのモノエステル、グリセリンのジエステル、グリセリンのトリエステル、アセトアセテートのエステル、BHBの繰り返し単位を有する二量体、三量体、オリゴマー、および、ポリエステル、ならびにベータ-ヒドロキシブチレートと1つ以上の乳酸、クエン酸、アセト酢酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、酒石酸、およびリンゴ酸などの他のヒドロキシカルボン酸との、および/または、ベータ-ヒドロキシブチレートと1,3-プロパンジオールおよび1,3-ブタンジオールなどの1つ以上のジオール、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、およびフマル酸などの1つ以上のポリ酸、および酪酸、吉草酸、もしくはカプロン酸などの短鎖脂肪酸との、複雑なオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの短鎖脂肪酸、または少なくとも1つの短鎖脂肪酸のモノ-、ジ-もしくはトリグリセリドをさらに含むか、またはこれらと組み合わされ得、ここで前記短鎖脂肪酸は6個未満の炭素を有する。短鎖脂肪酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸などが挙げられる。短鎖トリグリセリドの例としては、トリブチリンが挙げられる。このような分子は、腸を保護し、マイクロバイオームの健康状態を改善することができる。
【0054】
前記組成物は、少なくとも1つの中鎖脂肪酸、または前記少なくとも1つの中鎖脂肪酸のモノ-、ジ-もしくはトリグリセリドを含むか、またはそれらと組み合わされ得、ここで前記中鎖脂肪酸は、6~12個の炭素、好ましくは8~10個の炭素を有する。中鎖脂肪酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。中鎖トリグリセリド(MCT)、中鎖脂肪酸、ならびにモノ-およびジ-グリセリドは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとは独立したケトン体の生産のための追加の供給源を提供することができるケトン体前駆体である。
【0055】
前記組成物は、12個を超える炭素を有する少なくとも1つの長鎖脂肪酸、または前記少なくとも1つの長鎖脂肪酸のモノ-、ジ-、またはトリグリセリドを含むか、またはそれらと組み合わされ得る。長鎖脂肪酸の例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、オメガ7脂肪酸、オメガ9脂肪酸が挙げられる。
【0056】
中鎖脂肪酸、または中鎖トリグリセリドなどのそのエステルの例および供給源としては、ココナッツ油、ココナッツミルクパウダー、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カプリル酸、カプリン酸、単離中鎖脂肪酸(単離ヘキサン酸、単離オクタン酸、単離デカン酸など)、精製されたまたは天然の形態(ココナッツ油など)におけるいずれかの中鎖トリグリセリド、および中鎖脂肪酸エトキシル化トリグリセリドのエステル誘導体、エノントリグリセリド誘導体、アルデヒドトリグリセリド誘導体、モノグリセリド誘導体、ジグリセリド誘導体、およびトリグリセリド誘導体、ならびに中鎖トリグリセリドの塩を含む。エステル誘導体は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのアルキルエステル誘導体を任意に含む。
【0057】
R-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分のラセミ混合物を投与することにより、以下の両方を提供する二重の効果がもたらされる。(1)初期におよび相対的に即時のケトン体の血中レベルが上昇する、および(2)その後にケトン体の血中レベルが相対的に長く上昇し、(1)迅速にケトーシスが誘発され、(2)時間的にケトーシスが持続するという代謝的および生理的な利点を利用することができる。
【0058】
外因性補給を通して血中のケトン体レベルを上昇させることにより、食事のみに基づきケトーシスを誘導および維持することを目標とする方法(例えば、絶食および/または炭水化物の摂取制限)と比較して、対象がより柔軟に食事を選択できるようになる。例えば、適切な量のR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分とのラセミ混合物が投与された対象は、ケトジェニック状態を危険にさらすことなくおよびグルコースに基づく代謝状態に戻ることなく、炭水化物または糖に基づく食物を時々摂取することができようになる。さらに、このような投与は、ケトーシス状態への移行を容易にすると共に、ケトーシス状態への移行に伴う典型的な有害な影響を軽減または排除する。
【0059】
いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物は、治療有効量のビタミンD3をさらに含有する。ビタミンD3は、マグネシウムおよびカルシウムと共に作用して良好な骨の健康を促進し、軟部組織の望ましくない石灰化を防止すると考えられている。好ましい実施形態において、前記ケトジェニック組成物の平均一日量が、ビタミンD3を例えば約200IU(「国際単位」)~約8000IU、または約400IU~約4000IU、または約600IU~約3000IU含むような量で、ビタミンD3は含有される。いくつかの実施形態において、前記ケトジェニック組成物の平均一日量がビタミンD3を例えば約5μg~約200μg、または約10μg~約100μg、または約15μg~約75μg含むような量で、ビタミンD3は含有される。
【0060】
いくつかの実施形態はまた、1つ以上の追加のケトン前駆体またはサプリメントを含む。これらの追加のケトン前駆体またはサプリメントは、アセトアセテート、ケトンエステル、および/または、より多くの電解質を血流中に加えることなく血中ケトンレベルの上昇を引き起こす他の化合物を含んでもよい。アセトアセテートは、塩の形態、エステルの形態、酸の形態、およびそれらの組み合わせで提供され得る。その他の添加物は、効果を高めるかまたはミトコンドリアへのケトン体の輸送を促進する代謝産物、カフェイン、テオブロミン、およびL-アルファグリセリルホスホリルコリン(「アルファGPC」)などの向知性薬を含む。
【0061】
前記組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート化合物(特に非塩の形で提供される場合)の時折悪い食味を隠すのに役立つ香味料を含んでもよい。これらには、ペパーミントなどの精油、天然および人工の甘味料、ならびに当該技術で公知の他の香味料が含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物はさらに、組成物の吸湿性を低下させるように構成された1つ以上の追加の成分を含有してもよい。例えば、種々の固化防止剤、流動剤、および/または吸湿剤が、摂取するのに安全なタイプおよび量で含有されてもよい。このような追加の成分には、アルミノケイ酸塩、フェロシアン化物、炭酸塩または重炭酸塩、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カルシウム)、シリカ、リン酸塩(例えば、リン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウム)、タルク、粉末セルロース、炭酸カルシウムなどのうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0063】
III.ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物の積重
上述したように、本明細書に記載のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、3つの一般的な形態(1)ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩、(2)ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸、および任意に(3)ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルで提供され得る。本明細書に記載の組成物は、少なくとも塩と酸の形態、および任意にエステルの形態を組み合わせた「積重された」混合物で提供され得る。
【0064】
異なる形態のそれぞれは、それ自身の特性と、それ自身の潜在的な利点と制限を有する。例えば、ベータ-ヒドロキシブチレートのエステル形態は、典型的には、ベータ-ヒドロキシブチレートの他の形態と比較して劣った感覚受容的な特性を有する。すなわち、ベータ-ヒドロキシブチレートのエステル形態は、しばしば、刺激的な味および/または匂いを有すると説明される。
【0065】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートの塩形態は、一般にエステル形態よりも味が良いと考えられている。しかし、臨床的または食物的に有効な量のラセミ体R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートを塩形態で投与するには、本質的に比較的高レベルの対応するカチオンの投与が必要である。例えば、ナトリウムはベータ-ヒドロキシブチレート塩のカチオンとして使用されることが多く、高レベルのナトリウムは健康に悪影響を及ぼすことが知られている。異なるカチオンを有する異なるベータ-ヒドロキシブチレート塩を混合して、単一のカチオンの影響を弱めることができるが、対象/患者の電解質バランスを崩すことなく、有効量のベータ-ヒドロキシブチレートを提供することは依然として困難である。
【0066】
したがって、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸形態(すなわち、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸)は、混合塩-酸組成物を形成するために利用される。ベータ-ヒドロキシ酪酸のpKaは4.70であるため、生理的なpHでは脱プロトンしてH+を生成する。その結果、過剰な酸性度が生じ、潰瘍や逆流などの胃腸の問題を引き起こしたり、悪化させたりするなど、望ましくない副作用が引き起こされる可能性がある。
【0067】
選択された量の異なる形態のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートを組み合わせることで、これらの望ましくない副作用の発生および/または重症度を有益に制限することができ、および/またはより高用量のベータ-ヒドロキシブチレート化合物の投与を可能にすることができる。例えば、ベータ-ヒドロキシブチレート積重は、単一の形態と同じ量のベータ-ヒドロキシブチレートを、同じ副作用の発生および/または重症度を引き起こすことなく提供することができる。同様に、組み合わせた形態は、副作用の同様の発生および/または重症度に達する前に、単一の形態よりも多量のベータ-ヒドロキシブチレートを提供することができる。
【0068】
これは、
図1Aおよび1Bに概略的に示されている。
図1Aは、単一形態(製剤1~3)、二重積重(製剤4~6)、および三重積重(製剤7)を使用する場合の様々なベータ-ヒドロキシブチレートの用量を示す。個々の許容範囲は異なる可能性があり、したがって、図示された用量は、例示的なものに過ぎないが、典型的な対象は、対応する副作用を回避するために、ベータ-ヒドロキシブチレートの任意の単一の形態の過剰量を回避したいと思うであろう。したがって、異なる形態のベータ-ヒドロキシブチレートを積重することで、単一の形態の使用と比較して、ある用量でのベータ-ヒドロキシブチレートのより多くの送達が可能になり、および/またはより高い投薬頻度が可能になる。例えば、異なる形態のベータ-ヒドロキシブチレートを単一の用量で積重することで、その用量でのベータ-ヒドロキシブチレートの量を多くすることができ、および/または異なる形態のベータ-ヒドロキシブチレートを、一日を通して異なる用量で摂取することで、投与頻度を多くし、その結果、ベータ-ヒドロキシブチレートの全体的な1日の送達を多くすることができる。
【0069】
図1Bは、積重製剤を含むベータ-ヒドロキシブチレートの様々な製剤による治療の結果として生じる望ましくない副作用の予想される相対的な重症度を示している。1)ベータ-ヒドロキシブチレートの塩形態、2)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸形態(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸)、および3)ベータ-ヒドロキシブチレートのエステル形態のそれぞれからなる三重積重製剤は、ベータ-ヒドロキシブチレートの2つのそのような形態のみからなる二重積重と比較して、より多量のベータ-ヒドロキシブチレートの投与を可能にし、および/または副作用が軽減されることが期待される。三重積重(すなわち、三重ラセミ積重)および二重積重(すなわち、二重ラセミ積重)の両方は、同様に、1つの形態のベータ-ヒドロキシブチレートのみからなる単一の形態と比較して、より多くの量のベータ-ヒドロキシブチレートの投与を可能にし、および/または副作用を軽減することが期待される。
【0070】
言い換えれば、所定の用量のベータ-ヒドロキシブチレートに対して、二重および三重ラセミ積重は、単一形態と比較して、1)感覚受容性副作用、2)電解質不均衡副作用、および/または3)酸性度の副作用が少なくなるように処方され得る。例えば、単一形態のベータ-ヒドロキシブチレートエステルは、典型的なユーザが負の感覚受容性副作用のために超えないであろう閾値投与量を有する可能性があり、単一形態のベータ-ヒドロキシブチレート塩は、塩と共に投与される電解質の推奨される食事制限によって制限される閾値投与量を有する可能性があり、単一形態のベータ-ヒドロキシ酪酸は、典型的なユーザが酸性度の悪影響のために超えないであろう閾値投与量を有する可能性がある。積重された形態のベータ-ヒドロキシブチレートは、感覚受容性の、電解質の、または酸性度の副作用に関連する別個の閾値のいずれも超えることなく、より多量のベータ-ヒドロキシブチレートの補給を可能にする。
【0071】
いくつかの実施形態では、ベータ-ヒドロキシブチレート積重は、以下、(i)1つ以上のR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩、(ii)R,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸、および(iii)1つ以上のベータ-ヒドロキシブチレートエステルのうちの少なくとも2つを含む。例えば、ベータ-ヒドロキシブチレート二重積重は、それぞれベータ-ヒドロキシブチレートのモルベースで約2%~約98%、または約5%~約95%、または約10%~約90%、または約20%~約80%、または約30%~約70%、または約40%~約60%で提供される、成分(i)、(ii)、および(iii)のうち少なくとも2つを含んでもよい。
【0072】
例示的なベータ-ヒドロキシブチレート三重積重は、ベータ-ヒドロキシブチレートのモルベースで約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%のβ-ヒドロキシブチレートエステルを含み、ベータ-ヒドロキシブチレートのモルベースで約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%のベータ-ヒドロキシブチレート塩を含み、ベータ-ヒドロキシ酪酸のモルベースで約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%のベータ-ヒドロキシ酪酸を含む。いくつかの実施形態では、ベータ-ヒドロキシブチレート三重積重は、ベータ-ヒドロキシブチレートのモルベースで実質的に等しい量のベータ-ヒドロキシブチレートの3つの形態のそれぞれを含む。
【0073】
積重されたベータ-ヒドロキシブチレート組成物はまた、より有益な消化放出プロファイルを提供し得る。ベータ-ヒドロキシブチレートの異なる形態の各々は、摂取時にいくらか異なって相互作用する可能性がある。例えば、遊離酸形態は、使用可能なケトン体として血流に容易に送達される可能性があり、塩形態からのベータ-ヒドロキシブチレートは、一般に、利用される特定の塩または塩混合物の溶解性特性に応じて、血流に到達するのにわずかに長くかかる可能性があり、エステル形態からのベータ-ヒドロキシブチレートは、一般に、エステル結合が加水分解を受ける速度に応じて、血流に到達するのに最も長い時間がかかる可能性がある。したがって、積重されたベータ-ヒドロキシブチレート製剤は、より迅速な開始の利点とより長時間の放出の利点を組み合わせたもの、および/または全体的により大きな薬物動態学的曲線下面積(AUC)を提供するものなど、より好ましい放出プロファイルを提供するように調整され得る。積重された組成物は、ケトン体の時限送達または利用可能性を提供することができ、これにより、ケトン体の血中濃度がより均一になり、外因性ケトン体の送達「テール(tail)」が著しく長くなる(積重された組成物を消費してから1~8時間後など)。
【0074】
このことは、ケト積重組成物(例えば、遊離酸と塩とからなる)の予想される放出プロファイルが、遊離酸、塩、およびエステルの各単一形態と比較される
図2に示されている。ケト積重組成物は、より多くの全体的な外因性ケトン体を提供することができ、また、異なる放出特性を有する複数の異なる形態で提供されるため、全体的な放出プロファイルが拡張され、より大きなAUCを提供する。
【0075】
また、
図2は、S-ベータ-ヒドロキシブチレートとR-ベータ-ヒドロキシブチレートの相対的な量を変えることで、放出プロファイルを調整する方法を示している。図示されているように、「R積重」におけるベータ-ヒドロキシブチレートは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートで構成されているが、「R/S積重」はR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物を含んでおり、これにより放出プロファイルが平坦化され、延長される。
【0076】
IV.組み合わせサプリメント
本明細書に記載のケトジェニック組成物は、組み合わせサプリメントを形成するために、1つ以上の他の食物的および/または薬学的に許容されるサプリメント/薬剤と有益に組み合わされ得る。ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物のユニークな特性は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートのいずれかで富化されたベータ-ヒドロキシブチレート組成物を使用する他の同様の組み合わせサプリメントと比較して、前記組み合わせサプリメントを有益に強化することができる。
【0077】
例えば、脂肪分解および/または脂肪酸化を増加させることを意図した組成物(本明細書では「ファットバーナー」成分と称する)は、相乗的な脂肪分解および/または脂肪燃焼効果を有する組み合わせサプリメントを形成するために、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分と組み合わされ得る。特定の理論に拘束されることなく、ファットバーナー組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート成分なしで利用される場合と比較して、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分と組み合わされる場合に、より容易に利用されると考えられる。すなわち、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分は、エネルギー源としての脂質を代謝的に効率よく利用するために、対象者を効果的に「プライム(prime)」するように機能する可能性がある。例えば、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を外因性に補給することで、対象は、そのようなケトン体(したがって、蓄積された体脂肪)をエネルギー源として利用するために必要な酵素および他の代謝機構を増強すると考えられる。そのため、ファットバーナーにより、薬物動態および/または薬力学が強化され、ベータ-ヒドロキシブチレート成分またはファットバーナーを単独で投与した場合よりも高いレベルで脂肪分解および/または脂肪酸化が促進される可能性がある。
【0078】
組み合わせサプリメントのこれらの相乗効果は、ベータ-ヒドロキシブチレート成分が、R-ベータ-ヒドロキシブチレートまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートのいずれかで富化されているのではなく、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分である場合に、より顕著になると考えられる。これを
図3に模式的に示す。示されているように、ベータ-ヒドロキシブチレート成分がR-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されている、所定のベータ-ヒドロキシブチレート用量を有する組み合わせサプリメントの場合、脂肪酸化/脂肪分解のレベルは、最初は比較的高いが、その後、比較的迅速に先細りする。ベータ-ヒドロキシブチレート成分がS-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されている場合、脂肪酸化/脂肪分解のレベルは、富化されたR-ベータ-ヒドロキシブチレート組成物よりも持続時間が長くなるが、全体的な脂肪酸化/脂肪分解のレベルは全体的に比較的低いままである。
【0079】
一方、ベータ-ヒドロキシブチレート成分がラセミ体である場合、R-ベータ-ヒドロキシブチレート成分およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分は、比較的高い初期レベルの脂肪酸化/脂肪分解、ならびに比較的長い脂肪酸化/脂肪分解の持続時間を提供するように機能する。ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートバージョンは、おそらく、富化されたR-ベータ-ヒドロキシブチレートバージョンほど高い脂肪酸化/脂肪分解の初期レベルを提供しておらず、おそらく、富化されたS-ベータ-ヒドロキシブチレートバージョンほど長い脂肪酸化/脂肪分解の持続時間を提供しないが、R-ベータ-ヒドロキシブチレート成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分との組み合わせ効果は、エナンチオマー的に同等の割合で提供された場合には、全体としてより高いレベルの脂肪酸化/脂肪分解効果が得られる。言い換えれば、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート組成物が組み合わせサプリメントに利用される場合、富化されたR-ベータ-ヒドロキシブチレートまたは富化されたS-ベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、曲線下の面積がより大きい。
【0080】
ファットバーナー成分は、脂肪分解および/または脂肪酸化の増強を促進することができる1つ以上の化合物を含んでもよい。例えば、前記ファットバーナー成分としては、緑茶、緑茶抽出物(例えば、エピガロカテキンガレート(EGCG)などの1つ以上の単離された緑茶カテキンを含む組成物)、グリーンコーヒー抽出物、共役リノール酸(CLA)、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)(すなわち、フォルスコリン)、ヨヒンビン、ラウウォルスシン(rauwolscine)、カプサイシン、ラズベリーケトン(例えば、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、p-ヒドロキシベンジルアセトン)、エフェドリン、シネフリン(例えば、ビターオレンジ抽出物)、オクトパミン、1,3-ジメチルアミルアミン、ヒゲナミン、フコキサンチン、アセチルコリンモジュレーターおよび/またはアデノシン受容体アンタゴニスト(例えば、カフェイン)、ニコチン、コカの葉(例えば、茶、抽出物、分離物、塩、および遊離塩基)、ウルソール酸、クレンブテロール、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(例えば、ホルデニン、アトモキセチン)、7-オキソデヒドロエピアンドロステロン(7-ケトDHEA)、甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードチロニン)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
組み合わせサプリメントは、ベータ-ヒドロキシブチレート成分と、精神的覚醒、認知、および/または気分を高めることを意図した成分(本明細書では「向知性」成分と呼ぶ)とを含み得る。ファットバーナーの実施形態と同様に、ベータ-ヒドロキシブチレート成分が、R-ベータ-ヒドロキシブチレートまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されるよりも、ラセミ混合物である場合に、相乗的な向知性効果が大きくなることが期待される。
【0082】
向知性成分に含まれ得る例示的な化合物には、チロシン、L-DOPA(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)、トリプトファン、および5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)などのカテコールアミン前駆体、ピラセタム、オキシラセタム、アニラセタムなどのラセタム類、L-テアニン、D-セリン、ホスファチジルセリン、トルカポン、ウリジン、ビンポセチン、ホルデニン、およびアトモキセチンなどのノルエピネフリン再取り込み阻害剤、オタネニンジン(Panax ginseng)、イチョウ(Ginkgo biloba)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、イトヒメハギ(Polygala tenuifolia)、ムイラプアマ(Muira puama)、ハナビシソウ(Eschscholzia californica)、Convolvulus pluricaulis、ツボクサ(Centella asiatica)、アサガオカラクサ(Evolvulus alsinoides)、オトメアゼナ(Bacopa monnieri)、イカリソウ ハーブ(Epimedium herb)、アシュワガンダ ハーブ(Ashwagandha herb)、フォルスコリンなどの環状アデノシン一リン酸(cAMP)モジュレーター、ニコチン、カフェイン、およびアンフェタミンなどの興奮剤、フペルジンA、ジメチルアミノエタノール、コリン、アルファ-グリセロホスホコリンなどのコリン作動性化合物および/またはアセチルコリンモジュレーター、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分を利用する組み合わせサプリメントは、ファットバーナー成分に加えて、または代替として、他のサプリメント/薬剤を含んでもよい。例えば、組み合わせサプリメントは、食欲抑制、体重減少、血中グルコースレベルの低下、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の軽減、糖尿病の影響の軽減、神経障害の改善、癌の軽減、炎症の軽減、老化防止、抗糖化、てんかん発作の軽減、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、または身体組成の改善のうちの1つ以上を補助することを目的とした1つ以上の化合物を含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記ケトジェニック組成物は、ビタミンD3などの他のビタミンおよび/またはミネラルのサプリメント、ならびにベルベリンなどのグルコース制御のためのサプリメント、および他のグルコース低下物質を含むか、またはそれらと一緒に投与され得る。R-およびS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分のラセミ混合物は、他の物質と共により持続的なグルコース低下効果を提供することができると仮定される。
【0085】
V.投与
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、ケトーシスを促進するおよび/または維持することを含む、対象におけるケトン体レベルを増加させる方法において使用されてもよく、この方法は、栄養学的にまたは薬学的に有効な量の本明細書で開示される1つ以上の組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む。ケトーシスを促進するおよび/または維持することを含む、対象におけるケトン体レベルを増加させることの有益な効果の例としては、食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコースレベルの低下、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の軽減、糖尿病の影響の軽減、神経障害の改善、癌の軽減、炎症の軽減、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の軽減、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、または身体組成の改善のうちの1つ以上が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、R-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分とのラセミ混合物を投与することにより、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの内因性産生の増加、S-ベータ-ヒドロキシブチレートからR-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートのうちの1つまたは両方への内因性変換、S-ベータ-ヒドロキシブチレート成分から脂肪酸およびステロールへの内因性変換、ケトーシスの延長、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートへの変換とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分の代謝、胎児発達の増大、成長年数の増加、ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、抗酸化活性、およびアセチルCoAの産生、のうちの1以上が提供される。
【0087】
本明細書に記載されるケトジェニック組成物は、治療有効量で、および/またはケトーシスを誘導もしくは維持する頻度で、対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、単回または単位用量は、約0.5グラム~約25グラム、または約0.75グラム~約20グラム、または約1グラム~約15グラム、または約1.5グラム~約12グラムの範囲に及ぶ、R-ベータ-ヒドロキシブチレート成分とS-ベータ-ヒドロキシブチレート成分との合計量を含む。
【0088】
「単位用量」という用語は、特定の量または用量の組成物またはその成分を送達するように構成された剤形を指す。剤形の例としては、錠剤、カプセル、粉末、食品、食品添加物、飲料(フレーバー付き、ビタミン強化、またはノンアルコールなど)、飲料添加物(フレーバー付き、ビタミン強化、またはノンアルコールなど)、キャンディー、棒付きキャンディー(sucker)、トローチ(pastilles)、栄養補助食品、食物的に許容されるスプレー(フレーバー付きマウススプレーなど)、注射剤(アルコールフリーの注射剤など)、および坐薬が挙げられるが、これらに限定されない。このような剤形は、完全な単位用量またはその画分(fraction)(例えば、単位用量の1/2、1/3、または1/4)を提供するように構成され得る。
【0089】
組成物またはその成分の単位用量を提供するために使用することができる別の剤形は、カップ、スクープ、シリンジ、スポイト、スプーン、スパチュラ、または結腸灌水装置などの単位用量測定装置であり、完全な単位用量またはその画分(例えば、単位用量の1/2、1/3、または1/4)に等しい組成物の測定量をその中に保持するように構成される。例えば、いくつかの単位用量の組成物(例えば、5~250または10~150単位用量)を含むカートン、箱、缶、ジャー、バッグ、ポーチ、ボトル、水差し、または小樽などのバルク容器を、組成物またはその成分の単位用量またはその画分を提供するように構成される単位用量測定装置と一緒にユーザに提供され得る。
【0090】
本明細書に開示されている組成物をバルク形態で提供し、一方で組成物の単位用量を提供するために使用するキットは、ある量の組成物をその中に保持するバルク容器と、組成物またはその成分の単位用量もしくはその画分を提供するように構成されている単位用量測定装置とを含んでもよい。1つ以上の単位用量測定装置は、販売時に前記バルク容器内に配置されてもよいし、前記バルク容器の外側に取り付けられてもよいし、より大きなパッケージ内で前記バルク容器と一緒に事前に包装されてもよいし、1つ以上のバルク容器と一緒に使用するために販売者または製造者によって提供されてもよい。
【0091】
前記キットには、単位用量またはその画分のサイズ、ならびに投与方法および頻度に関する説明書が含まれていてもよい。前記説明書は、バルク容器に記載されていてもよいし、バルク容器と一緒に事前に包装されていてもよいし、バルク容器と一緒に販売されている包装材に置かれていてもよいし、販売者または製造者によって提供されていてもよい(例えば、ウェブサイト、メーラー、チラシ、製品資料など)。説明書は、単位用量またはその画分を適切に提供するための単位用量測定装置の使用方法に関する言及を含んでいてもよい。前記説明書は、追加的または代替的に、バルク容器に付属していないスプーン、スパチュラ、カップなどの一般的な単位用量測定装置についての言及を含んでいてもよい(例えば、提供された単位用量測定装置を紛失したり、置き忘れたりした場合に備えて)。このような場合には、バルク容器に添付された説明書、または製品、組成物の単位用量またはその画分を適切に提供する方法に関する、販売者から提供された説明書に従って、エンドユーザによりキットが構築され得る。
【0092】
前記ケトジェニック組成物は、ビタミンD3、ビタミン、ミネラル、向知性薬など、当技術分野で公知の他のサプリメントを含むか、またはそれらと一緒に投与され得る。前記ケトジェニック組成物に添加され得るビタミン、ミネラルおよびハーブサプリメントの例としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、5-MTHF、ビタミンB12、ヨウ素、亜鉛、銅、マンガン、クロム、カフェイン、テオブロミン、テアクリン、メチルリベリン、フペルジンA、エピカテキン、および酵素のうちの1つ以上が挙げられる。
【0093】
前記対象は、好ましくは、前記組成物の投与期間中に炭水化物およびタンパク質の摂取を制限するケトジェニックダイエットに従う。1つの実施形態では、前記対象は、食事の摂取を約65%の脂肪、約25%のタンパク質、および約10%の炭水化物の比率に制限してもよい。結果として得られる治療的ケトーシスは、広範囲な代謝障害に対する代謝的療法としての迅速で持続的なケト適応を提供し、治療的絶食、体重減少、およびパフォーマンス向上のための栄養サポートを提供する。これを踏まえ、前記組成物は通常、ケトーシス状態を促進および/または維持したいと望む対象に1日1回、1日2回、または1日3回投与される。
【0094】
好ましい実施形態において、ケトジェニック組成物は、固体および/または粉末混合物(例えば、粉末充填ゼラチンカプセル)などの粉末形態、強くプレスされた錠剤、または当該技術で公知の他の経口投与経路で、1日あたり1回以上の単位用量で経口投与されてもよい。
【0095】
経口投与が好ましいが、他の投与経路が、追加的または代替的に利用され得る。例えば、いくつかの実施形態は、注射剤(例えば、皮下投与、非経口投与、または静脈内投与)として投与され得る。注射剤は、マンニトール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、または合成モノもしくはジグリセリドと、オレイン酸もしくはCremaphorを含む脂肪酸とを含む、他の適切な分散剤または湿潤・懸濁剤のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0096】
直腸投与用の例示的な組成物には、例えば、ココアバター、合成グリセリドエステル、ポリエチレングリコールなどの適切な非刺激性賦形剤を含み得る坐薬があり、これらは常温では固体であるが、体温での直腸腔において、液化、軟化、および/または溶解して前記サプリメントを放出する。
【0097】
鼻腔または肺への投与(例えば、加熱または噴霧によって提供されるエアロゾルまたは吸入)のための例示的な組成物には、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、および/または当技術分野で知られている他の可溶化剤もしくは分散剤を含み得る、生理食塩水における溶液が含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記組成物が複数回用量で、ある期間にわたって投与される。前記組成物の投与頻度は、以前の処置からの処置のタイミング、処置の目的などのいずれかの様々な要因によって変わる可能性がある。前記組成物の投与期間(例えば、薬物が投与される期間)は、対象の反応、処置の所望の効果などを含むいずれかの様々な要因によって変わる可能性がある。
【0099】
投与される前記組成物の量は、個体の感受性の程度、個体の年齢、性別、および体重、個体の特異体質反応などの要因によって変わる可能性がある。「治療有効量」は、生体内で治療的に有効な結果(すなわち、治療的ケトーシス)を促進するのに必要な量である。本開示に従えば、適切な単回量のサイズは、適切な期間にわたって1回以上投与される場合の患者における症状を防止するまたは緩和する(軽減または排除する)ことができる量である。
【0100】
投与される組成物の量は、未使用のケトン体の効能、吸収、分布、代謝、および排泄率、電解質、投与方法、処置されている特定の障害、ならびに当業者に公知のその他の要因によって決まる。緩和させる状態の重症度を考慮に入れ、前記用量は、特定の障害または状態に対する治療反応または予防反応などの所望の反応に影響を及ぼすのに十分であるものとする。前記化合物は、1回投与されるか、または、分割し時間をかけて投与されてもよい。前記投与は、個々の必要性、および前記組成物を投与するまたは前記組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従って調整され得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0101】
IV.実施例
以下に、例となる、対象におけるケトンレベルを上昇させるのに有用なR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物、および他のケトジェニック組成物が記載され、それらを投与される対象におけるケトジェニック状態を誘導および維持することを含む。実施例で記載されるベータ-ヒドロキシブチレート化合物は、本明細書で述べる塩、エステル、二量体、三量体、オリゴマーおよびポリマーの形態であってもよいことが認識されるべきである。実施例の観点から重要なことは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびS-ベータ-ヒドロキシブチレートのエナンチオマー割合または比率である。前記組成物は、所望の電解質平衡、味、および/または薬物動態学的反応を提供するために、R,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩および遊離R,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸の混合物を含み得る。場合によっては、所望の電解質バランスおよび/またはケトーシスの調節を提供するために、前記組成物は、塩、酸、およびエステルの混合物であってもよい。また、前記組成物は、本明細書に開示されているように、短鎖、中鎖、または長鎖の脂肪酸、エステル、グリセリド、および他のサプリメントと組み合わせて、所望のレベルの上昇したケトン体および他の効果を提供することができる。
【0102】
実施例1
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート塩化合物、1つ以上のS-ベータ-ヒドロキシブチレート塩化合物、R-ベータ-ヒドロキシ酪酸、およびS-ベータ-ヒドロキシ酪酸を組み合わせることによって、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を調製し、エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分およびエナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸成分で提供する。前記ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、モル当量で100%未満のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩、およびモル当量で0%を超える遊離ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸を含有する。
【0103】
前記ラセミ混合物は、エナンチオマー当量で50%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸化合物を含有するので、所定の投与量で、S-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物で富化した同投与量と比べて、ケトーシスの発生が早まる。一方、ラセミ混合物には、エナンチオマー当量で50%のS-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸化合物を含有するので、所定の投与量で、R-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物で富化した同投与量と比べて、ケトーシスが持続する期間が長くなる。
【0104】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、例えば、飲食物と混合した栄養補助食品としての粉末形態、1つ以上のカプセルや錠剤の形態、またはマウススプレーなどの液体形態において、ケトジェニック組成物として容易に投与される。
【0105】
実施例2
実施例1のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、モル当量で最大99.9%、99.8%、99.7%、99.6%、99.5%、99.4%、99.3%、99.2%、99.1%、99%、98.8%、98.65%、98.5%、98.35%、98.2%、98%、97.75%、97.5%、または97%、および少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、または97%のラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート塩と、モル当量で少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.2%、1.35%、1.5%、1.65%、1.8%、2%、2.25%、2.5%、2.75%、または3%、および25%、20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、または3%未満の遊離ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシ酪酸を提供するように処方される。
【0106】
ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物は、例えば、飲食物と混合した栄養補助食品としての粉末形態、1つ以上のカプセルや錠剤の形態、またはマウススプレーなどの液体形態において、ケトジェニック組成物として容易に投与される。
【0107】
実施例3
実施例1または実施例2は、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、食物的に(すなわち、栄養学的に)または薬学的に許容される担体と組み合わせることによって改変される。
【0108】
実施例4
前述の実施例のいずれかは、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、1つ以上の短鎖脂肪酸、および/または1つ以上のそのモノ-、ジ-、もしくはトリグリセリド(トリブチリンなど)と組み合わせることによって改変される。
【0109】
実施例5
前述の実施例のいずれかは、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、1つ以上の中鎖脂肪酸、および/または1つ以上のそのモノ-、ジ-、またはトリグリセリド(MCTオイルなど)と組み合わせることによって改変される。
【0110】
実施例6
前述の実施例のいずれかは、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、1つ以上の長鎖脂肪酸、および/または1つ以上のそのモノ-、ジ-、またはトリグリセリドと組み合わせることによって改変される。
【0111】
実施例7
前述の実施例のいずれかは、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、ビタミンD3、ビタミン類、ミネラルおよび当該技術で公知のその他の栄養補助食品などの1つ以上の栄養補助食品と組み合わせることによって改変される。
【0112】
実施例8
前記実施例のいずれかは、前記ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、緑茶、緑茶抽出物(例えば、エピガロカテキンガレート(EGCG)などの1つ以上の単離緑茶カテキンを含む組成物)、グリーンコーヒー抽出物、共役リノール酸(CLA)、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、Coleus forskohlii(すなわち、フォルスコリン)、ヨヒンビン、ラウウォルスシン、カプサイシン、ラズベリーケトン(例えば、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、p-ヒドロキシベンジルアセトン)、エフェドリン、シネフリン(例えば、ビターオレンジ抽出物)、オクトパミン、1,3-ジメチルアミルアミン、ヒゲナミン、フコキサンチン、アセチルコリンモジュレーターおよび/またはアデノシン受容体アンタゴニスト(例えば、カフェイン)、ニコチン、コカ葉抽出物、ウルソール酸、クレンブテロール、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(例えば、ホルデニン、アトモキセチン)、7-オキソデヒドロエピアンドロステロン(7-ケトDHEA)、甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードチロニン)、およびこれらの組み合わせなどの1つ以上のファットバーナーサプリメントと組み合わせることによって改変される。
【0113】
得られた組み合わせサプリメントは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されるかまたはS-ベータ-ヒドロキシ酪酸で付加されるベータ-ヒドロキシブチレート成分を利用した同様の用量よりも、より大きな脂肪分解および/または脂肪酸化効果を提供することが期待される。
【0114】
実施例9
前述の実施例のいずれかは、ラセミR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート混合塩-酸組成物を、1つ以上の、チロシン、L-DOPA(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)、トリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)などの向知性サプリメント、ピラセタム、オキシラセタム、およびアニラセタムなどのラセタム類、L-テアニン、D-セリン、ホスファチジルセリン、トルカポン、ウリジン、ビンポセチン、ホルデニン、およびアトモキセチンなどのノルエピネフリン再取り込み阻害剤、オタネニンジン(Panax ginseng)、イチョウ(Ginkgo biloba)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、イトヒメハギ(Polygala tenuifolia)、ムイラプアマ(Muira puama)、ハナビシソウ(Eschscholzia californica)、Convolvulus pluricaulis、ツボクサ(Centella asiatica)、アサガオカラクサ(Evolvulus alsinoides)、オトメアゼナ(Bacopa monnieri)、イカリソウ ハーブ(Epimedium herb)、アシュワガンダ ハーブ(Ashwagandha herb)、フォルスコリンなどの環状アデノシン一リン酸(cAMP)モジュレーター、ニコチン、カフェイン、およびアンフェタミンなどの興奮剤、フペルジンA、ジメチルアミノエタノール、コリン、およびアルファ-グリセロホスホコリンなどのコリン作動性化合物および/またはアセチルコリンモジュレーター、ならびにそれらの組み合わせと組み合わせることによって改変される。
【0115】
得られた組み合わせサプリメントは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されるかまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートで付加されるベータ-ヒドロキシブチレート成分を利用した同様の用量よりも、より大きな認知、覚醒、および/または気分の効果を提供することが期待される。本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく他の具体的な形態により具体化され得る。記載された実施形態は、全ての態様において例示のみ行い、限定されないとみなされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の記載よりむしろ添付の特許請求の範囲により指し示される。特許請求の範囲の均等の意味および範囲に入る全ての改変は、それらの範囲内に包含されるべきである。