IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン パフォーマンス プラスティクス フランスの特許一覧

<>
  • 特許-異なる機能性領域を含む複合材料の調製 図1
  • 特許-異なる機能性領域を含む複合材料の調製 図2
  • 特許-異なる機能性領域を含む複合材料の調製 図3
  • 特許-異なる機能性領域を含む複合材料の調製 図4
  • 特許-異なる機能性領域を含む複合材料の調製 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】異なる機能性領域を含む複合材料の調製
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20240305BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20240305BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20240305BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20240305BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20240305BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240305BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
B29B11/16
D04B1/14
D04B1/16
D04B21/00 B
D04B21/16
B29C70/10
B29C70/48
B29K105:08
B29K101:12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021554658
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020056530
(87)【国際公開番号】W WO2020182898
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】1902453
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516100067
【氏名又は名称】サン-ゴバン パフォーマンス プラスティクス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュモン、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マオ、ガエタン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03093667(FR,A1)
【文献】国際公開第2018/189497(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075061(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200714(US,A1)
【文献】特開平10-121371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C41/00-41/36
41/46-41/52
70/00-70/88
C08J5/04-5/10
5/24
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
B29K105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料で作製された最終製品を製造するための方法であって、前記製品が、強化繊維で強化された高分子材料のマトリックスを含み、前記高分子材料が、前記強化繊維を構成する材料の融点よりも低い融点を有し、前記製品が、異なる機能性を有する少なくとも2つの領域をさらに含み、少なくとも1つの領域が、前記最終製品の重量に対して、高分子材料を少なくとも50%含み、プロセスが、
-線形の緯糸を編むことによって三次元でかつ連続した部分で編物を作製する工程であって、前記編物が、得られる前記製品の形状に対応した乾燥プリフォームを構成し、前記乾燥プリフォームが、異なる組成を有する少なくとも2つの領域を含む、作製する工程と、
-前記強化繊維の融点の温度に到達することなく、少なくとも前記高分子材料の融点温度に到達するように、圧力下で加熱することによって成形する工程と、
-こうして得られた前記製品を冷却する工程と、を含み、
前記プリフォームの前記2つの領域が、前記最終製品において異なる熱伝導性を有する領域を形成することができる、方法。
【請求項2】
前記最終製品の少なくとも1つの領域が、前記最終製品の重量に対して、高分子材料を55%~85%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームが、高分子材料および強化繊維を含む混紡糸を編むことによって製作される、請求項1および2いずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記プリフォームが、強化糸を編むことによって製作され、前記高分子材料が、液体状態で型に導入される、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プリフォームが、異なる強化繊維を含む少なくとも2つの領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プリフォームの前記2つの領域が、前記最終製品において異なる可撓性を有する領域を形成することができる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プリフォームの前記2つの領域が、前記最終製品において異なる耐摩耗性を有する領域を形成することができる、請求項1、2、3、4、5、および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プリフォームの前記2つの領域が、異なる透明性を有する領域を形成することができる、請求項1、2、3、4、5、6、および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子材料が、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMA、リエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記強化繊維の材料が、パラ-アラミド、メタ-アラミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、リネン、麻、ガラス、石英、炭素、玄武岩から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異なる機能領域を含む複合材料の調製方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
実施形態は、例として示されており、添付の図面に限定されない。
【0003】
図1】異なる可撓性領域を含む製品の図を含む。
図2】異なる耐摩耗性の領域を含む製品の図を含む。
図3】異なる熱伝導性の領域を含む製品の図を含む。
図4】異なる透明性の領域を含むプリフォームの図を含む。
図5】異なる透明性の領域を含む、図4のプリフォームから得られる製品の図を含む。
【0004】
当業者は、図中の要素が単純化および明瞭化のために示されており、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを理解している。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の考察は、本教示の具体的な実装および実施形態に焦点を合わせるであろう。詳細な説明は、ある特定の実施形態を説明するのを助けるために提供されており、本開示および本教示の範囲または適用性に対する限定として解釈されるべきではない。他の実施形態を、本明細書に提供された本開示および本教示に基づいて使用することができることが理解されるであろう。
【0006】
用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはその任意の他の変形は、非排他的包含を含むことを意図する。例えば、特徴のリストを備える方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、そのような方法、物品、または装置に明示的にリスト化されないかまたは固有ではない他の特徴を含んでもよい。さらに、明示的にそうではないことが述べられていない限り、「または(or)」は、包含的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aは真(または存在する)かつBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)かつBは真(または存在する)、およびAとBの両方が真(または存在する)である。
【0007】
また、「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、本明細書に記載の要素および構成要素を説明するために用いられる。これは単に便宜上および本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、他を意味することが明確でない限り、1つ、少なくとも1つ、または複数も含む単数形、またはその逆を含むように読む必要がある。例えば、本明細書で単一の物品が説明される場合、単一の物品の代わりに複数の物品を使用することができる。同様に、本明細書で複数の物品が説明される場合、それらの複数の物品に代えて単一の物品が使用され得る。
【0008】
本発明は、複合材料で作製された製品の分野に関する。複合材料とは、高分子材料、特に、熱可塑性材料または熱硬化性材料から構成されたマトリックスを含む製品であって、このマトリックスが、高分子材料の融点よりも高い融点を有する材料によって強化される、製品を意味すると理解されている。FRPは、通常「繊維強化プラスチック」を指す。
【0009】
複合材料は、以前より周知されている。それらは、材料の重量に対して、良好な機械的耐性を有する。それらはまた、耐腐食性も非常に良好である。それらは、別々に取った構成部品の特性よりも優れた特性を有する。
【0010】
それらは、特に、自動車または航空機の分野において、従来の鉄で作製された部分の軽量化を可能にする。それらはまた、良好な耐疲労性も有する。
【0011】
強化材は、異なる方法:マトリックス中に分散した鉱物繊維を加えることによって、鉄骨または合成材料を使用することによって、強化繊維の布地を使用することによって、不織布もしくはマット、または織物プロセスによって得られる他の製品を使用することによって、得ることができる。
【0012】
布地強化材は、平坦な構造を有し、垂直になるように配置された緯糸および経糸から構成される。その製造には、各経糸用の別個の糸巻きの使用が必要である。
【0013】
ごく最近では、編み強化材の使用が明らかになった。編み強化材とは、一般的には、糸が連続した行に配置されたインターレースメッシュを形成する、連続した糸から得られる製品を意味すると理解されている。従来の編物の製作には、糸条メッシュ用の1つの糸巻きのみが必要である。
【0014】
糸は、モノフィラメントタイプであり得るか、またはマルチフィラメントタイプであり得る。マルチフィラメントは、ロービング(すなわち、撚りをかけずに組み合わせられた、一組の平行な連続フィラメント)、繊維の糸(すなわち、撚りによって組み合わせられた、一組の短い不連続な繊維)であり得る。糸はまた、いくつかの糸または異なる材料のフィラメントの組み合わせであり得る。この組み合わせは、撚り、編み込みなどに使用され得る。したがって、高分子材料および強化材料を含む糸を製作することは可能である。例えば、アラミド型、炭素型、ガラス型などの強化糸と、熱可塑性の糸(ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(PEI)など)と、を組み合わせることが可能である。次いで、このタイプの糸は、混紡糸と称される。
【0015】
このタイプの混紡糸を編むことによって、強化材とマトリックスとの両方を含有する乾燥プリフォームを得ることが可能になる。
【0016】
織布の強化材と比較して、編み強化材は、多くの利点を有する。
【0017】
一般的に「プリプレグ」と称される、例えばゲル化した高分子材料を事前に含浸させた、織布の強化材は、優しく取り扱う必要がある。それらは、保護フィルムを取り除くと粘着性がある。それらは、常温では限られた期間のみ保存され得る。
【0018】
織布の強化材の型へのドレーピングは、長時間を要する繊細な操作である。それには、何層もの「プリプレグ」の使用が必要であり、プリプレグは、型の形状に応じて慎重に切断および配置されて、重なりすぎを防止しながら十分な厚さを確保する必要がある。
【0019】
プリプレグ布地の切断には、材料の30%を占め得る製品スクラップが含まれる。加えて、布地を作製するには、何百本もの糸巻きが必要である。
【0020】
従来の編物の製作には、糸条メッシュ用の1つの糸巻きのみが必要である。異なる編み技術によって、縫製をせずに、単一の部分を形成する3Dの編物を得ることが可能となる。既知の編み技術によって、円形編みまたは線形編みを実施することが可能となる。
【0021】
緯糸を編む方法と経糸を編む方法とは、区別される。
【0022】
緯糸を編むこと(ピックステッチとも称される)では、糸は、好ましくは、行の方向(布地に例えれば緯方向)に従う。同じ行の各糸巻きを、次々と編む。各行を、次々と編む。一本の糸が、全体の編物を作製するために使用され得る。各針は、個別に制御され、編み中に複雑な3D形状を達成することが可能となる。
【0023】
経糸を編むこと(スローステッチとしても既知である)では、糸は、好ましくは列の方向(布地に例えれば経方向)に従う。同じ行のすべての糸巻きを、同時に編む。各行を、次々と編む。1つのメッシュ列に1本の糸が必要である。針は、異なるグループにリンクされる。グループを個別に制御することは可能であるが、グループを構成する針を制御することはできない。製作された編物は、平坦である。厚みがあるにもかかわらず、複雑な3D形状はできない。
【0024】
保有者の特許出願第FR3065181号は、複合材料で作製された製品の製造のための、乾燥プリフォームを製作するためのプロセスを教示する。この文献は、少なくとも1本のメッシュ糸および少なくとも1本の一方向性強化糸の、緯糸を編むことによって製作されるプリフォームについて記載している。このプリフォームは、強化材料の糸またはフィラメントと、熱可塑性材料の糸またはフィラメントとの混合物を編むことから形成されており、熱可塑性材料は、成形時に溶融するようになっているため、樹脂の注入の必要がない。編み糸は、実際には、熱可塑性材料で作製されたフィラメントと、強化材料で作製されたフィラメントとの混合物からなる。
【0025】
文献US2012/0168012は、液体含浸によって製作された複合管を記載している。これは、ポリマーマトリックスが、型内で含浸によって塗布された、支持体として機能する円形の編み構造を含む。セットを統合する前に、連続する追加の層も追加される。
【0026】
異なる機能性を有する領域を含む複合材料から製品を製作する必要性が存在する。異なる機能性とは、例えば、穴あけ/切断に耐性のある材料の部分の中での、穴あけ/切断が可能な領域、剛直性部分の中での可撓性領域、熱絶縁性部分の中での熱伝導性領域を意味する。
【0027】
従来の複合材料の製造方法では、異なる材料の部分が別々に作製され、次いで、それらを組み立てる必要があった。
【0028】
組み立ては、繊細な工程である。組み立てられた複合体は、組み立て点においてより壊れやすい領域を有する。組み立てはまた、特定の特性、特に電気的特性の不連続性も引き起こすか、または具体的な処理の実施も必要とする。組み立てはまた、乱気流を生み出し得る、表面の不連続性を発生させ得る(航空プロファイルを参照)。組み立てはまた、他の材料の導入に起因して、超過重量も引き起こす。
【0029】
本発明の目的は、事前に製作された部分を別々に組み立てる必要性がなく、異なる相互浸透機能性を含む複合材料を提供することである。
【0030】
特定の実施形態によれば、異なる組成の領域を含み得る乾燥プリフォームを編み、次いで、それを溶融によって、異なる機能性を有する領域を含み得る固体の複合材料に変換することが可能であることが見出された。この機能は、一般的には組み合わせ後にしか利用できない。
【0031】
特定の実施形態によれば、編む場合には、特定の領域において異なる材料の糸を使用することが可能である。これらの異なる材料は、最終複合製品の特定の領域において特定の機能性を提供し得る。
【0032】
さらに他の実施形態によれば、本発明は、繊維によって強化された高分子材料のマトリックスであって、高分子材料が強化繊維を構成する材料の融点よりも低い融点を有する、マトリックスを含み得る複合材料で作製され得る製品の製造方法に関し得る。本製品は、異なる機能性を有する少なくとも2つの領域を含み得る。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの領域において、高分子材料は、最終製品の少なくとも50重量%を占め得る。
【0033】
特定の実施形態によれば、本発明による方法は、少なくとも以下の工程:緯糸を編む方法によって、三次元でかつ連続した部分で編物を製造する工程であって、編むことが、得られる製品の形状に対応した乾燥プリフォームを構成し、異なる組成の少なくとも2つの領域を含み得る、製造する工程と、強化材料の融点温度に到達することなく、少なくとも高分子材料の融点温度に到達するように、圧力下で加熱することによって成形する工程と、こうして得られた製品を冷却する工程と、を含み得る。
【0034】
特定の実施形態によれば、三次元での編物は、非軸対称の、ならびに/または閉じた、および/もしくは完全に開いた面を有する可能性がある。編むことは、線形編み方法または円形編み方法によって行われ得る。
【0035】
さらに他の実施形態によれば、有利なことには、編むことは、円形編みの場合では得られない、複雑な3D形状を得ることが可能である線形編みによって実施される。
【0036】
特定の実施形態によれば、プリフォームは、2つの異なる領域または複数の異なる領域を有し得る。
【0037】
さらに他の実施形態によれば、高分子材料は、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性材料を意味すると理解され得る。さらに他の実施形態によれば、高分子材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMA、低密度ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)などの熱可塑性材料を意味すると理解され得る。
【0038】
さらに他の実施形態によれば、強化材料としては、アラミド(パラ、メタ)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルなどの合成材料、リネン、麻などの天然材料、ガラス、石英、炭素、玄武岩などの無機素材などを挙げることができる。
【0039】
特定の実施形態によれば、高分子材料は、最終製品の少なくとも1つの領域において、最終製品の55重量%~85重量%、好ましくは、最終製品の60重量%~80重量を占め得る。
【0040】
一実施形態によれば、プリフォームは、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって製作される。
【0041】
別の実施形態によれば、プリフォームは、強化糸を編むことによって製作され、高分子材料は、液体プロセスで型に導入される。
【0042】
さらに他の実施形態によれば、所望の用途に応じて、強化繊維の性質、密度、および/または組成を変更することによって、プリフォームとは異なる組成の領域が製作され得る。
【0043】
さらに他の実施形態によれば、これらの異なる領域は、異なる可撓性、異なる熱伝導性、異なる電気伝導性、または異なる耐摩耗性であり得る、最終製品中の異なる特性を発生させ得る。
【0044】
特定の実施形態によれば、プリフォームは、異なる強化材料を含み得る少なくとも2つの領域を含み得る。
【0045】
さらに他の実施形態によれば、本発明による方法は、完成品が、接続部を有さず(したがって、空力プロファイルの連続性)、異なる部分の任意の組み立てを必要としないため、特に有利である。材料を相互に浸透させることで、その機械的耐性が向上し、接続要素の潜在的な不良が発生しない。
【0046】
特定の実施形態によれば、
多くの異なる態様および実施形態が可能である。それらの態様および実施形態のいくつかが本明細書に記載される。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様および実施形態が例示にすぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解するであろう。実施形態は、以下にリスト化される実施形態のうちのいずれか1つ以上に従うことができる。
【0047】
実施形態1.複合材料で作製された製品を製造するための方法であって、製品が、繊維で強化された高分子材料のマトリックスを含み、高分子材料が、強化繊維を構成する材料の融点よりも低い融点を有し、製品が、異なる機能性を有する少なくとも2つの領域をさらに含み、少なくとも1つの領域が、最終製品の重量に対して、高分子材料を少なくとも50%含み、プロセスが、
-緯糸を編むことによって三次元でかつ連続した部分で編物を作製する工程であって、編物が、得られる製品の形状に対応した乾燥プリフォームを構成し、乾燥プリフォームが、異なる組成を有する少なくとも2つの領域を含む、作製する工程と、
-強化材料の融点の温度に到達することなく、少なくとも高分子材料の融点温度に到達するように、圧力下で加熱することによって成形する工程と、
-こうして得られた製品を冷却する工程と、を含む、方法。
【0048】
実施形態2.三次元での編物の製作が、線形の緯糸を編むことによって実施される、実施形態1に記載の方法。
【0049】
実施形態3.最終製品の少なくとも1つの領域が、最終製品の重量に対して、高分子材料を55%~85%含む、実施形態1および2のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施形態4.プリフォームが、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって製作される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態5.プリフォームが、強化糸を編むことによって製作され、高分子材料が、液体状態で型に導入される、実施形態1および3のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態6.プリフォームが、異なる強化材料を含む少なくとも2つの領域を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態7.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる可撓性を有する領域を形成することができる、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態8.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる熱伝導性を有する領域を形成することができる、実施形態1、2、3、4、5、および6のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態9.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる耐摩耗性を有する領域を形成することができる、実施形態1、2、3、4、5、および6のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態10.プリフォームの2つの領域が、異なる透明性を有する領域を形成することができる、実施形態1、2、3、4、および5のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態11.高分子材料が、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMA、低密度ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態12.強化材料が、パラ-アラミド、メタ-アラミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、リネン、麻、ガラス、石英、炭素、玄武岩から選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態13.異なる機能性を有する領域を含む、複合材料の製品の製造のための、3Dで直線の緯糸を編むことによって得られる乾燥プリフォームの使用。
【0060】
実施形態14.乾燥プリフォームが、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって得られる、実施形態13に記載の使用。
【0061】
実施形態15.乾燥プリフォームが、強化材料の糸を編むことによって得られ、高分子材料が、注入工程中に型内に添加される、実施形態13に記載の使用。
【0062】
実施形態16.複合材料で作製された製品を製造するための方法であって、製品が、繊維で強化された高分子材料のマトリックスを含み、高分子材料が、強化繊維を構成する材料の融点よりも低い融点を有し、製品が、異なる機能性を有する少なくとも2つの領域をさらに含み、少なくとも1つの領域が、最終製品の重量に対して、高分子材料を少なくとも50%含み、プロセスが、
-緯糸を編むことによって三次元でかつ連続した部分で編物を作製する工程であって、編物が、得られる製品の形状に対応した乾燥プリフォームを構成し、乾燥プリフォームが、異なる組成を有する少なくとも2つの領域を含む、作製する工程と、
-強化材料の融点の温度に到達することなく、少なくとも高分子材料の融点温度に到達するように、圧力下で加熱することによって成形する工程と、
-こうして得られた製品を冷却する工程と、を含む、方法。
【0063】
実施形態17.三次元での編物の製作が、線形の緯糸を編むことによって実施される、実施形態16に記載の方法。
【0064】
実施形態18.最終製品の少なくとも1つの領域が、最終製品の重量に対して、高分子材料を55%~85%含む、実施形態16に記載の方法。
【0065】
実施形態19.プリフォームが、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって製作される、実施形態16に記載の方法。
【0066】
実施形態20.プリフォームが、強化糸を編むことによって製作され、高分子材料が、液体状態で型に導入される、実施形態16に記載の方法。
【0067】
実施形態21.プリフォームが、異なる強化材料を含む少なくとも2つの領域を含む、実施形態16に記載の方法。
【0068】
実施形態22.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる可撓性を有する領域を形成することができる、実施形態16に記載の方法。
【0069】
実施形態23.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる熱伝導性を有する領域を形成することができる、実施形態16に記載の方法。
【0070】
実施形態24.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる耐摩耗性を有する領域を形成することができる、実施形態16に記載の方法。
【0071】
実施形態25.プリフォームの2つの領域が、異なる透明性を有する領域を形成することができる、実施形態16に記載の方法。
【0072】
実施形態26.高分子材料が、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMA、低密度ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択される、実施形態16に記載の方法。
【0073】
実施形態27.強化材料が、パラ-アラミド、メタ-アラミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、リネン、麻、ガラス、石英、炭素、玄武岩から選択される、実施形態16に記載の方法。
【0074】
実施形態28.異なる機能性を有する領域を含む、複合材料の製品の製造のための、3Dで直線の緯糸を編むことによって得られる乾燥プリフォームの使用。
【0075】
実施形態29.乾燥プリフォームが、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって得られる、実施形態28に記載の使用。
【0076】
実施形態30.乾燥プリフォームが、強化材料の糸を編むことによって得られ、高分子材料が、注入工程中に型内に添加される、実施形態28に記載の使用。
【0077】
実施形態31.製品の少なくとも1つの領域が、最終製品の重量に対して、高分子材料を55%~85%含む、実施形態28に記載の使用。
【0078】
実施形態32.プリフォームが、高分子材料および強化材料を含む混紡糸を編むことによって製作される、実施形態28に記載の使用。
【0079】
実施形態33.プリフォームが、強化糸を編むことによって製作され、高分子材料が、液体状態で型に導入される、実施形態28に記載の使用。
【0080】
実施形態34.プリフォームが、異なる強化材料を含む少なくとも2つの領域を含む、実施形態28に記載の使用。
【0081】
実施形態35.プリフォームの2つの領域が、最終複合製品において異なる可撓性を有する領域を形成することができる、実施形態28に記載の使用。
【実施例
【0082】
本明細書に記載の概念は、以下の実施例においてさらに説明されるが、これは、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない。
【0083】
実施例1:剛直性領域および可撓性領域を含む複合製品
3Dプリフォームを、線形の緯糸を編む方法によって、単一の部分で編む。
【0084】
完成品の剛直性部分を形成することが意図される領域では、糸は、炭素強化繊維、および低融点のポリエチレンテレフタレート(LPET「低融点のポリエチレンテレフタレート」)の熱可塑性繊維からなる。強化繊維は、繊維の総量の20~45%を占める。
【0085】
完成品の可撓性部分を形成することが意図される別の領域では、糸は、ケブラー強化繊維、および低融点のポリエチレンテレフタレート(LPET)の熱可塑性繊維からなる。強化繊維は、繊維の総量の15%~37%を占める。
【0086】
剛直性部分を形成することが意図される領域では、密度は、4行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.8列/cmである。坪量は、800g/m~2000g/mである。
【0087】
最終製品の可撓性部分を形成することが意図される領域では、密度は、3.7行/cm~5.5行/cm、および2列/cm~2.7列/cmである。坪量は、400g/m~1200g/mである。
【0088】
3Dプリフォームを鋼製の型およびカウンターの型に入れ、190℃~230℃の温度、および1バール~4バールの圧力で加熱する。
【0089】
図1に例示される最終製品は、機械的特性が、10GPa~30GPaのヤング率、および60MPa~600MPaの破断強度である、2つの剛直性領域2と、機械的特性が、2GPa~15GPaのヤング率、および30MPa~450MPaの破断強度である、可撓性領域1を有する。
【0090】
製品のこのタイプの可撓性領域は、ヒンジ、振動ダンパとして機能し得るか、または「柔軟な」な接点を提供し得る。
【0091】
実施例2:異なる耐摩耗性領域を有する複合製品
3Dプリフォームを、線形の緯糸を編む方法によって、1つの部分で編む。
【0092】
最終製品の機械加工可能(穴あけ、トリミング)部品を形成することが意図される領域では、糸は、ガラス強化繊維からなる。強化繊維は、総量の20%~45%を占める。
【0093】
最終製品の耐摩耗性部品を形成することが意図される領域では、糸は、ケブラー強化繊維で作製される。強化繊維は、総量の20%~45%を占める。
【0094】
機械加工可能部品を形成することが意図される領域では、密度は、3行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.7列/cmである。坪量は、1200g/m~2500g/mである。
【0095】
最終製品の耐摩耗性部品を形成することが意図される領域では、密度は、3行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.8列/cmである。坪量は、800g/m~2000g/mである。
【0096】
3Dプリフォームを、可撓性の「ブラダー」カウンター型と共に鋼製の型に入れる。エポキシポリマーを注入し、その全体を、130℃~190℃の温度、および1バール~4バールの圧力で加熱する。
【0097】
図2に例示される最終製品は、機械的特性が、4GPa~19GPaのヤング率、および100MPa~1000MPaの破断強度である耐摩耗性領域と、機械的特性が、3GPa~15GPaのヤング率、および70MPa~850MPaの破断強度である機械加工可能領域を有する。
【0098】
図2では、機械加工可能領域部分(左)において穴が開いているが、一方では、耐摩耗性領域において穴を開けようとしても明確な穴が形成されないことがわかる。
【0099】
実施例3:熱伝導性領域および熱絶縁性領域を含む複合製品
3Dプリフォームを、線形の緯糸を編む方法によって、1つの部分で編む。
【0100】
最終製品の伝導性部品を形成することが意図される領域では、糸は、炭素強化繊維からなる。強化繊維は、総量の33%~45%を占める。
【0101】
最終製品の絶縁性部品を形成することが意図される領域では、糸は、ケブラー強化繊維で作製される。強化繊維は、総量の33%~45%を占める。
【0102】
伝導性部品を形成することが意図される領域では、密度は、3行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.8列/cmである。坪量は、800g/m~2000g/mである。
【0103】
最終製品の絶縁性部品を形成することが意図される領域では、密度は、3行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.7列/cmである。坪量は、500g/m~1500g/mである。
【0104】
3Dプリフォームを、鋼製のカウンター型と共に鋼製の型に入れる。エポキシポリマーを注入し、その全体を、130℃~190℃の温度、および1バール~4バールの圧力で加熱する。
【0105】
図3に示される最終製品は、中央に伝導性領域(その熱伝導性は、2.5Wm/K~8Wm/Kである)、およびその周囲の絶縁領域(その熱伝導性は、0.2Wm/K~1Wm/Kである)を含む。
【0106】
2つの領域はまた、それらの電気伝導性によっても区別され得る。
【0107】
本発明は、これらの例に限定されず、他の機能性も、本発明の範囲を超えない範囲で、達成され得る。例えば、手触りが柔らかい領域、および粗い領域なども設計され得る。
【0108】
実施例4:異なる透明性領域を有する製品
図4は、線形の緯糸を編む方法によって、1つの部分での編み3Dプリフォームを例示する。
【0109】
プリフォームは、ポリカーボネート繊維のみを含む領域を有する。
【0110】
密度は、4行/cm~6行/cm、および2列/cm~2.8列/cmである。この領域の坪量は、500g/m~1300g/mである。
【0111】
同じプリフォームは、20体積%~45体積%のガラス繊維、および80体積%~55体積%のポリカーボネートから構成される別の複合領域を含む。密度は、3.6行/cm~5行/cm、および2列/cm~2.7列/cmである。この領域の坪量は、550g/m~1800g/mである。
【0112】
2つの領域は、縫製または組み立てをせずに、単一の編み部分を形成する。
【0113】
3Dプリフォームを、カウンター型と共に鋼製の型に入れる。全体を、200℃~250℃の温度、および3バール~10バールの圧力で加熱する。
【0114】
最終製品は、図5に示される。好適なポリマーの使用によって、変換後の純粋なポリマー領域を透明にすることが可能となる。
【0115】
機械的特性は、純粋なポリマー領域において、1GPa~4GPaのヤング率、および40MPa~70MPaの破断強度であり、複合領域において、4GPa~19GPaのヤング率、および50MPa~600MPaの破断強度である。
【0116】
上記の一般的な説明または例で説明した機能のすべてが必要なわけではなく、特定の機能の一部は必要でない場合があり、説明した機能に加えて1つ以上の機能を実施することができることに留意されたい。さらにまた、機能が記載される順序は、必ずしも実施される順序ではない。
【0117】
利益、他の利点、および問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して上記で説明されている。しかしながら、利益、利点、問題の解決策、および任意の利益、利点、もしくは解決策が発生またはより顕著になる可能性のある任意の特徴は、いずれかまたはすべての特許請求の範囲の重要な、必須の、または本質的な特徴として解釈されるべきではない。
【0118】
本明細書に記載された実施形態の明細書および例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図する。明細書および例示は、本明細書に記載の構造または方法を使用する装置およびシステムのすべての要素および特徴の網羅的かつ包括的な説明として役立つことを意図するものではない。別個の実施形態はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴もまた、別個にまたは任意の副組み合わせで提供されてもよい。さらに、範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。本明細書を読んだだけで、多くの他の実施形態が当業者には明らかであり得る。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的置換、論理的置換、または別の変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態が使用され、かつ導出され得る。したがって、本開示は限定的ではなく、例示的とみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5