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  • 特許-光学構成要素の積層造形 図1
  • 特許-光学構成要素の積層造形 図2
  • 特許-光学構成要素の積層造形 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光学構成要素の積層造形
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240305BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240305BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240305BHJP
   C03B 19/01 20060101ALI20240305BHJP
   C03B 19/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 301E
B05D3/02 Z
C03B19/01
C03B19/00 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109592
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2017216174の分割
【原出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2022171650
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】15/348,136
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501348092
【氏名又は名称】グッドリッチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】バリ,エム,サウサード
(72)【発明者】
【氏名】マシュー,ジェイ,イースト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル,イー,ダン
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,ハリソン
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0056415(US,A1)
【文献】特開2015-105229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0199494(US,A1)
【文献】特開2008-037743(JP,A)
【文献】特表2013-523598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0179879(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0121451(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0226375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C03B 19/01
C03C 15/00-23/00
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学構成要素を形成する方法であって、
プリフォームガラス表面板と一致する輪郭にされたマンドレル上に取り付けられた、前記プリフォームガラス表面板を備えたビルドプレートを形成し、
前記プリフォームガラス表面板上にコア材料構造の連続層を形成することであって、前記コア材料構造にガラス粉末材料を備えたスラリーを堆積させて、前記ガラス粉末材料を前記コア材料構造に融合させることにより、前記コア材料構造の連続層を形成する、
ことを備え、
前記ビルドプレートは、前記光学構成要素の一部となり、
前記コア材料構造の各層は、均一の厚さを有し、かつ、
前記コア材料構造の一部のみの上に第1のガラス粉末材料を備えた第1のスラリーを堆積させて、前記コア材料構造に前記第1のガラス粉末材料を融合させ、
前記コア材料構造の残りの部分上に、前記第1のガラス粉末材料とは異なる第2のガラス粉末材料を備えた第2のスラリーを堆積させ、前記コア材料構造に前記第2のガラス粉末材料を融合させて、前記層を完成させる、
ことによって形成され
前記第1および第2のスラリーは、それらのスラリーをレーザ照射することによって融合される、光学構成要素を形成する方法。
【請求項2】
前記第1および第2のスラリーは、押出機から前記第1および第2のスラリーを押し出すことによって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームガラス表面板は、光学特性に合わせた輪郭にされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コア材料構造の形成に続いて、前記コア材料構造が三次元幾何学的トポロジを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のスラリーは、液体ゲル中に懸濁された前記第1のガラス粉末材料を備え、前記第2のスラリーは、液体ゲル中に懸濁された前記第2のガラス粉末材料を備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コア材料構造に前記第1および第2のガラス粉末材料を融合させる前に、前記第1および第2のスラリーを乾燥させることをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コア材料構造の追加の層を形成する前に、前記コア材料構造の層を均一な厚さに機械的に研磨することをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のガラス粉末材料の少なくとも1つの光学特性は、前記第2のガラス粉末材料とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プリフォームガラス表面板であって、そのプリフォームガラス表面板と一致する輪郭にされたマンドレル上に取り付けられたプリフォームガラス表面板と、
前記プリフォームガラス表面板に融合されたコア材料構造と、
を備えた、光学構成要素であって、
前記コア材料構造が、レーザ照射によって融合された複数のガラス層を備え、
前記複数のガラス層の各層は、均一の厚さを有するとともに、第1のガラス材料から形成された第1の部分と、前記第1のガラス材料とは異なる第2のガラス材料から形成された第2の部分と、を備え、それにより前記各層の材料特性が、その層内の位置に基づいて変化する、光学構成要素。
【請求項10】
前記複数のガラス層のうちの1つまたは複数が、単一の種類のガラス材料から形成される、請求項に記載の光学構成要素。
【請求項11】
前記コア材料構造が、異なる種類のガラス材料から形成された交互の層を備えた、請求項10に記載の光学構成要素。
【請求項12】
前記コア材料構造が、三次元幾何学的トポロジを有する、請求項に記載の光学構成要素。
【請求項13】
前記複数のガラス層のうちの2つ以上が、均一の厚さを有するとともに、異なるガラス材料から形成された異なる部分を備えた、請求項に記載の光学構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子及び積層造形に関し、より詳細には、例えば、低膨張ガラスから光学素子を積層造形することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軽量ガラスミラー基板は、除去製造、フライス加工、研削、研磨、または、大きいガラスブールから材料をエッチングで取り除いて生成される。これらの工程は、正確な形状の光学表面を有する堅い軽量ガラス構造を作成でき、熱負荷及び機械的負荷の下でも安定している。しかし、ガラスは壊れやすいので、これらの従来の工程を用いて、多くの小さい複雑な特徴を製造するのは困難である、また、このような複雑な特徴は、軽量な光学素子の製造にとって重要であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術は、本来の目的には十分であると考えられてきた。しかしながら、ミラー基板等のガラス光学素子の製造を改良するニーズが依然、存在する。本開示は、この問題に解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
光学構成要素を形成する方法は、ガラス粉末材料を含むスラリーを表面板上に堆積する段階と、ガラス粉末材料を表面板に融合して、表面板上に第1のコア材料層を形成する段階を含む。方法は、ガラス粉末材料を連続で融合して複数の追加のコア材料層にし、表面板上にコア材料構造を作る段階も含む。
【0005】
方法は、ガラス粉末材料を表面板に融合する前に、マンドレルに表面板を配置する段階
を含み得る。ガラス粉末材料の表面板への融合は、表面板の研磨可能な表面にガラス粉末材料を融合する段階も含み得る。ガラス粉末材料を含むスラリーを堆積する段階と、ガラス粉末材料を連続で融合して複数の追加のコア材料層にする段階との少なくとも1つは、表面板、第1のコア材料層、及び/または、追加のコア材料層の1つ、のうちの少なくとも1つの一部のみの上にガラス粉末材料を含むスラリーを選択的に配置する段階を含み得る。スラリーを堆積する段階は、スラリーを押出機から押し出す段階を含み得る。ガラス粉末材料の融合は、例えば、レーザを用いて、低膨張ガラス粉末を融合して低膨張ガラスにする段階を含み得る。ガラス粉末材料の融合は、低膨張チタニアシリカガラス粉末を融合して低膨張チタニアシリカガラスにする段階を含み得る。ガラス粉末材料の表面板への融合は、光学特性に合わせた輪郭の表面板にガラス粉末材料を融合する段階を含み得る。
【0006】
ガラス粉末材料を連続して融合する段階は、ミラー基板を形成する段階を含み得る。ミラー基板の形成は、所定の最低要件を超える剛性と安定性のレベルを提供しながら、ミラー基板の質量を最小にする最適な三次元ミラートポロジを形成する段階を含み得る。連続してガラス粉末材料を融合する段階は、連続層の形で様々な材料特性を変化させる段階、及び/または、連続層内の位置に基づいて材料特性を変化させる段階を含み得る。
【0007】
光学構成要素は、ガラス表面板を含む。低膨張ガラスの第1層は、ガラス表面板に融合される。複数の連続して融合された層は、表面板と第1層を含む組立体上にコア材料構造を形成する。
【0008】
表面板は、二次元または三次元の少なくとも1つで、光学特性に合わせた輪郭にされてよい。表面板は、研磨可能な表面を含み得る。第1層は、表面板の研磨可能な表面に融合される。第1層と、複数の連続して融合された層とは、融合された低膨張ガラス粉末材料、例えば、低膨張チタニアシリカガラス粉末を含み得る。表面板、第1層、及び、連続して融合された層は、ミラー基板を形成できる。ミラー基板は、所定の最低要件を超える剛性及び安定性のレベルを提供しながら、ミラー基板の質量を最小にする最適な三次元ミラートポロジを含み得る。複数の連続して融合された層は、ガラス材料を含んでよく、ガラス材料は、連続層の形で変化する、及び/または、コア材料構造内の位置に基づいて変化する材料特性を有する。
【0009】
開示の主題のシステム及び方法のこれらの及び他の特徴は、好ましい実施形態の以下の詳細な記載を図面と共に読むと、当業者には容易に明らかになろう。
【0010】
開示の主題が属する分野の当業者が、開示の主題の装置及び方法の製造法及び使用法を、過度な実験を行うことなしに、容易に理解するように、装置及び方法の好ましい実施形態を、図面を参照して以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】マンドレルと、表面板と、積層造形された連続層のコア材料構造が表面板上に堆積されているのを示す、本開示に従って構築されたミラー基板の例示の実施形態の概略側面立面図である。
図2】ガラス粉末材料のスラリーを押出機が選択的に堆積するのを示す、図1のミラー基板の概略斜視図である。
図3】レーザビームが粉末材料を融合するのを示す、図1のミラー基板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照する。図面において、類似の参照番号は、開示の主題の類似の構造的特徴または態様を特定する。制限ではなく、説明及び図示のために、本開示による光学構成要素
の例示の実施形態の部分図を図1に示し、参照番号100によって一般的に指定する。本開示による光学構成要素の他の実施形態、または、その態様を図2及び図3に示し、以下に記載する。本明細書に記載のシステム及び方法を使用して、低熱膨張ガラスからミラー基板等の光学構成要素を積層造形できる。
【0013】
図1は、マンドレル102上の、光学構成要素100、例えば、ミラー基板を示す。光学構成要素100を形成する方法は、マンドレル102上にプリフォームガラス表面板104を配置することを含む。表面板104は、チタニアシリカガラス製であってよく、比較的、薄くてよく、且つ、光学特性に合わせた輪郭にされる、例えば、二次元または三次元で所望または所定のミラー輪郭を提供するような輪郭にされる。ガラス粉末材料は、表面板104の研磨可能な表面114に融合されて、表面板104上に第1のコア材料層106を形成する。ガラス粉末材料は、次に、複数の追加のコア材料層108の形に連続で融合されて、表面板104上にコア材料構造110を作る。最終層112は、第1層106から見て、コア材料構造110の表面板104の反対側の表面に融合される。表面板104は、最終的な光学構成要素100の一部になる。
【0014】
図2を参照すると、方法は、連結押出機124を用いて、ガラス粉末材料を含む液体スラリーを堆積することによって、表面板104の研磨可能な表面114上にスラリーを堆積することを含む。押出機124には、表面板104、第1のコア材料層106、及び/または、追加のコア材料層108の1つ、のうちの少なくとも1つの一部のみの上にスラリーを選択的に堆積するためにコンベヤシステム126が連結する。言い換えると、押出機124は、図1及び図2の配置のように、表面板104、第1のコア材料層106、及び/または、追加のコア材料層108の1つまたは複数を含む組立体115の最上面の上にスラリーを押し出す。スラリーは、ガラス粉末材料を含んでよく、ガラス粉末材料は、液体ゲル、水、または、組立体115上への正確で選択的な堆積または印刷のためにノズル128を通って押し出されるのに適した流体中に懸濁される。スラリーは、堆積された後、乾燥させて、組立体115に融合できる状態のガラス材料の乾燥粉末にすることができる。ガラス粉末材料は、融合されると、低膨張ガラス材料を形成するように構成できる、例えば、低膨張チタニアシリカガラス粉末は、融合されて低膨張チタニアシリカガラスにすることができる。
【0015】
図3を参照すると、このような粉末の各層は、組立体115に融合されて、所望の形状の断面を形成し、コア材料構造110となる。融合は、レーザビーム116を用いて行うことができる。図3において、レーザビーム116が、組立体115を覆う堆積した粉末の一部118を融合して、図に示す三角形のみに融合されたガラス層を形成することを概略的に示す。三角形のパターンの周囲のレーザビーム116の動きの方向は、図3の大きい矢印によって示される。レーザビーム116によって融合される粉末の部分120を図3に概略的に示す。所与の層を融合させた後で、次の層用のスラリーを堆積させる前に、例えば、融合された層が確実に均一な厚さになるように、組立体115の作成に機械的研磨研削をオプションで使用できる。
【0016】
この技術は、所定の最低要件を超える剛性と安定性のレベルを提供しながら、ミラー基板の質量を最小にする最適な三次元トポロジを有するミラー基板または他の光学構成要素を可能にする。本明細書に記載の連続して融合された層は、連続層の形で材料特性が変化するように、及び/または、所与の層内の位置に基づいて材料特性が変化するように、ガラス粉末材料を融合することを含み得る。例えば、図2の三角の部分118は、第1のセットの材料特性を有するガラスで形成でき、組立体115の表面の残りの部分122を第2のセットの材料特性を有するガラスで形成できるので、所与の層108は、層108内の位置の機能として、その層自体の中に異なるセットの材料特性を有する。
【0017】
ある部分をビルドプレート上に印刷して、その後、ビルドプレートから取り除く従来の積層造形とは異なり、表面板104は、ビルドプレートとして機能し、且つ、最終製品の一部となる。仕上げ工程として、図1に示す表面板104の最終層112及び/または反対側表面130を研磨及びコーティングできる。
【0018】
本開示の方法及びシステムは、上記のように、また、図面に示すように、非常に複雑な特徴を含み得るより優れた特性、従来の技術を用いて確実に生成できる以上に小さい複雑な特徴を有するアモルファストポロジを含む、最適な三次元幾何学的トポロジを有する光学構成要素を提供して、所与の適用及び負荷に対して必要な剛性と安定性を達成しながら、例えば、ミラー基板の質量を最小にする。従来の技術と比較して、本明細書に開示された技術を用いて、低膨張ガラスをより素早く製造することも可能であり、従来の技術においてより大きいガラスミラー基板を作ることが可能である。ビルドプレートを用いた従来の技術を用いて可能な大きさよりも大きいガラスミラー基板の作成を可能にすることに関して、これは、従来の技術の下では、高温の積層造形によって、製造中に、ある部分をゆがめる熱応力を引き起こしうる、また、その部分がビルドプレートから剥離する可能性があるという事実から生じている。この剥離プロセスは、従来の積層造形技術の下で、構成要素をどれくらい大きく製造できるかを制限するが、本明細書に開示された技術では制限とならない。高温でのチタニアシリカガラスの熱膨張挙動及び粘弾性的挙動が、より大きい積層造形構造の実現に重要である。ビルドプレートへの積層造形層の融合も、より大きい積層造形構造の実現にとって重要である。
【0019】
開示の主題の装置及び方法を好ましい実施形態を参照して示し、且つ、記載したが、開示の主題の範囲を逸脱することなく、開示の主題の装置及び方法への変更及び/または修正を行ってよいことを当業者は容易に理解するだろう。
【符号の説明】
【0020】
100 光学構成要素
102 マンドレル
104 表面板
106 コア材料層
108 コア材料層
110 コア材料構造
112 最終層
114 表面
115 組立体
116 レーザビーム
118 堆積した粉末の一部
120 融合される粉末の部分
122 残りの部分
124 連結押出機
126 コンベヤシステム
128 ノズル
130 反対側表面
図1
図2
図3