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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/263 20060101AFI20240305BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E06B3/263 G
E06B7/22 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022157538
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2019115261の分割
【原出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2022181216
(43)【公開日】2022-12-07
【審査請求日】2022-09-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】若代 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 康生
(72)【発明者】
【氏名】高見 綾一
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162587(JP,A)
【文献】特開2014-201876(JP,A)
【文献】特開2015-007343(JP,A)
【文献】特開2017-110407(JP,A)
【文献】特開2019-78164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/263
E06B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密材が装着された枠体と、前記枠体内に配置される障子とを備え、
前記枠体には、枠アタッチメントが設置され、
前記障子は、見込み方向において前記枠アタッチメントに対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、前記障子框内に配置された面材とを備え、
前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、
前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成され且つ前記枠アタッチメント側に向かって突出した突片部を有し、
前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成し、
前記枠アタッチメントは、網戸枠で構成される
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
気密材が装着された枠体と、前記枠体内に配置される障子とを備え、
前記枠体には、枠アタッチメントが設置され、
前記障子は、見込み方向において前記枠アタッチメントに対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、前記障子框内に配置された面材とを備え、
前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、
前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成され且つ前記枠アタッチメント側に向かって突出した突片部を有し、
前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成し、
前記突片部は、前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つの見付け片部から突出すると共に、前記建具の見込み方向において前記枠アタッチメントと対向する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
気密材が装着された枠体と、前記枠体内に配置される障子とを備え、
前記枠体には、枠アタッチメントが設置され、
前記障子は、見込み方向において前記枠アタッチメントに対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、前記障子框内に配置された面材とを備え、
前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、
前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成され且つ前記枠アタッチメント側に向かって突出した突片部を有し、
前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成し、
前記突片部は、前記枠アタッチメントよりも内周側の位置から当該枠アタッチメント側に向かって斜めに突出する
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体との間における熱の流出入を抑制する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠と障子とを備えた縦すべり出し窓が知られている(特許文献1参照)。枠(枠体)は、上枠、下枠および左右の竪枠を枠組みして構成されている。上枠、下枠および左右の竪枠は、それぞれの室外面から室外側に延出した突出片と障子に当接するタイト材とを有している。各枠および障子間であって突出片およびタイト材の間には空間が形成されており、この空間を形成することで断熱性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-166223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の縦すべり出し窓では、例えば既設の枠に新たな障子を取り付ける場合には、上枠、下枠および左右の竪枠に形成された突出片の位置は変更できないので、障子の框寸法などの如何によっては前述した空間を適切に形成できずに十分な断熱性を得られないおそれがある。
また、既設の枠に新たな障子を取り付けて縦すべり出し窓などの建具を構成する場合、既設の枠が突出片のないものだと前述した空間を形成することができずに断熱性を向上させることが困難となる。
【0005】
本発明の目的は、枠体に取り付けられることで断熱性を向上できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の障子は、枠体内に配置される障子であって、前記枠体に装着された気密材に当接する障子框と、前記障子框内に配置された面材とを備え、前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成された突出した突片部を有し、前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成することを特徴とする。
本発明の建具は、気密材が装着された枠体と、前記枠体内に配置される前述した本発明の障子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体に取り付けられることで断熱性を向上できる建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る縦すべり出し窓を示す縦断面図。
図2】第1実施形態に係る縦すべり出し窓を示す横断面図。
図3】第1実施形態に係る縦すべり出し窓の要部を示す横断面図。
図4】本発明の第2実施形態に係る縦すべり出し窓の要部を示す横断面図。
図5】本発明の第3実施形態に係る縦すべり出し窓の要部を示す横断面図。
図6】本発明の第4実施形態に係る縦すべり出し窓の要部を示す横断面図。
図7】本発明の第5実施形態に係る縦すべり出し窓の要部を示す横断面図。
図8】本発明の第6実施形態に係る固定窓の要部を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3において、第1実施形態に係る建具としての縦すべり出し窓1は、建物躯体の開口部に取り付けられるものであり、上枠20、下枠30および左右の縦枠40を枠組みしてなる窓枠2(枠体)と、上框50、下框60、左右の縦框70および面材80を框組みしてなる障子3と、障子3よりも室内側で窓枠2に取り付けられた網戸4とを備えている。面材80は、本実施形態では複層ガラスパネルによって構成されており、上框50、下框60、左右の縦框70によって構成された障子框5内に設置されている。網戸4は、枠アタッチメントとしての網戸上枠12、網戸下枠13および左右の網戸縦枠14によって構成される網戸枠に網材(図示省略)を張設して構成されている。この網戸4は窓枠2に嵌め込まれる固定式のものである。網戸上枠12、網戸下枠13および左右の網戸縦枠14は、金属製枠材15と樹脂製枠材16とが組み合わされてそれぞれ構成されており、金属製枠材15の内周側の見込み面は樹脂製枠材16によって覆われている。
以下の説明において、縦すべり出し窓1の左右方向をX軸方向とし、縦すべり出し窓1の上下方向をY軸方向とし、縦すべり出し窓1の見込み方向(奥行方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0010】
図2において、右側に示す縦框70が戸先側縦框であり、左側に示す縦框70が吊元側縦框であり、縦框70は上枠20および下枠30に連結されている。縦すべり出し窓1では、下枠30に操作ハンドル6が設置されており、操作ハンドル6の回転操作によって障子3を室外側へ開放移動する一方、操作ハンドル6の逆方向の回転操作によって障子3を室内側に閉鎖移動する構成とされている。
【0011】
上枠20、下枠30および左右の縦枠40は、アルミ押出形材によって形成された金属製枠材21,31,41と、樹脂押出形材によって形成された樹脂製枠材22,32,42とが組み合わされた複合枠材によってそれぞれ構成されている。
【0012】
上枠20の金属製枠材21は、図1に示すように、アルミ製の室外形材23およびアルミ製の室内形材24をウレタン等の断熱材25によって連結して構成されている。室外形材23には、上框50が当接する気密材7が装着されていると共に、建物躯体にビス固定される取付片部231が形成されている。室外形材23および室内形材24には、樹脂製枠材22が係合する係合部232,242がそれぞれ形成されている。
上枠20の樹脂製枠材22は、図1に示すように、外周側および内周側の見込み片部221,222と、見込み片部221,222に連続した見付け片部223,224と、内周側の見込み片部222から見付け方向に延出した一対の延出片部225,226と、延出片部225,226に連続した開口区画片部227とを有している。見込み片部221はその室内端側で建物躯体側にビス固定されている。外周側の見込み片部221および室外側の見付け片部223の連続部分と見込み片部221とには、金属製枠材21の係合部232,242に係合する係合部228,229が形成されている。見付け片部223には、上框50に当接する気密材8が装着されている。開口区画片部227には、室外側から室内側に向かうに連れて外周側に拡がるテーパー面227Aが形成されている。見込み片部221,222間の空間はこれらに連続した仕切り片部261によって二つの中空部26,27に仕切られている。この樹脂製枠材22には、前述した中空部26,27と、見込み片部222、延出片部225,226および開口区画片部227によって形成される中空部28とが形成されており、このように三つの中空部26,27,28を形成することで断熱性を向上させている。また、樹脂製枠材22は、見込み片部222および室外側の延出片部225によって枠アタッチメント設置部29が形成されており、この枠アタッチメント設置部29には網戸上枠12が配置されている。枠アタッチメント設置部29自体は見付け片部223に装着された気密材8よりも内周側の位置にある。
【0013】
下枠30の金属製枠材31は、図1に示すように、アルミ製の室外形材33およびアルミ製の室内形材34をウレタン等の断熱材35によって連結して構成されている。室外形材33には、下框60が当接する気密材7が装着されていると共に、建物躯体にビス固定される取付片部331が形成されている。室内形材34には、下框60に当接する気密材8が装着されている。
下枠30の樹脂製枠材32は、図1に示すように、見込み片部321と、見込み片部321に連続した見付け片部322と、見付け片部322に連続した取付片部323と、見込み片部321から上方に延出した一対の延出片部324,325と、延出片部324,325に連続した開口区画片部326とを有している。取付片部323は建物躯体側にビス固定されている。見込み片部321および取付片部323には、室内形材34に係合する係合部327,328がそれぞれ形成されている。見込み片部321には上方に突出した突部329が形成されており、突部329は網戸下枠13に当接している。開口区画片部326には、室外側から室内側に向かうに連れて外周側に拡がるテーパー面326Aが形成されている。樹脂製枠材32には、見込み片部321、延出片部324,325および開口区画片部326によって中空部36が形成されており、中空部36を形成することで断熱性を向上させている。また、樹脂製枠材32は、見込み片部321および延出片部324によって枠アタッチメント設置部37が形成されており、この枠アタッチメント設置部37に網戸下枠13が配置されている。枠アタッチメント設置部37自体は金属製枠材31に装着された気密材8よりも内周側の位置にある。
【0014】
左右の縦枠40の金属製枠材41は、図2および図3に示すように、見込み片部411と、見込み片部411から内周側に延出して気密材7が装着された障子受け片部412と、見込み片部411から見付け方向に延主して樹脂製枠材42が取り付けられる樹脂枠取付片部413とを有しており、見込み片部411の室内端部には樹脂製枠材42が係合する係合部414が形成されている。
左右の縦枠40の樹脂製枠材42は、図2および図3に示すように、見込み片部421と、見込み片部421に連続した見付け片部422,423と、見込み片部421から内周側に延出した一対の延出片部424,425と、延出片部424,425に連続した開口区画片部426と、延出片部424,425および開口区画片部426の連続部分から室内側に延出した取付片部427とを有しており、取付片部427は建物躯体にビス固定されている。見込み片部421の室外端部およびこの室外端部よりも室内側には、内周側(網戸縦枠14側)に突出した枠突片部421A,421Bが形成されている。室外側の見付け片部422には気密材8が装着された装着溝422Aが形成されている。見付け片部422はネジ9によって樹脂枠取付片部413に取り付けられている。室内側の見付け片部423の外周側における端部には、金属製枠材41の係合部414に係合した係合部423Aが形成されている。樹脂製枠材42には、見込み片部421、延出片部424,425および開口区画片部426によって中空部43が形成されている。また、樹脂製枠材42には、見込み片部421および延出片部424によって枠アタッチメント設置部44が形成されており、この枠アタッチメント設置部44には網戸縦枠14が配置されている。枠アタッチメント設置部44自体は見付け片部422に装着された気密材8よりも内周側の位置にある。
【0015】
上框50、下框60および左右の縦框70は、アルミ押出形材によって形成された金属製框材51,61,71と、樹脂押出形材によって形成された樹脂製框材52,62,72とが組み合わされた複合框材によってそれぞれ構成されている。
【0016】
上框50の金属製框材51は、図1に示すように、見付け片部511と、見付け片部511に連続した見込み片部512,513と、見込み片部512,513の室内端部に連続して形成された係合部514とを有している。見付け片部511の室内面(見付け面)は、障子3の閉鎖状態で樹脂製枠材22に装着された気密材7に当接する。
上框50の樹脂製框材52は、図1に示すように、見付け片部521と、見付け片部521から室外側に延出した係合片部522と、見付け片部521の上端に形成された係合部523とを有している。見付け片部521の室内面(見付け面)は、障子3の閉鎖状態で樹脂製枠材22の見付け片部223および網戸上枠12の室外面(見付け面)にZ軸方向の間隔を隔てて対向し、且つ、樹脂製枠材22に装着された気密材8に当接する。
上框50では、金属製框材51の見付け片部511および内周側の見込み片部513と、樹脂製框材52の係合片部522および見付け片部521とによって面材80を保持する保持溝が構成されている。この保持溝には断面略コ字形状の金属製保持材11が配置されており、この金属製保持材11によって面材80の上縁部が保持されている。また、見付け片部511,521の下縁部には、面材80を押える面材押え材としてのビード10がそれぞれ装着されている。
【0017】
下框60の金属製框材61は、図1に示すように、見付け片部611と、見付け片部611に連続した見込み片部612,613と、見込み片部612,613の室内端部に連続した見付け片部614と、外周側の見込み片部612および見付け片部614の連続部分に形成された係合部615と、内周側の見込み片部613に形成された係合部616とを有している。見付け片部611の室内面(見付け面)は、障子3の閉鎖状態で下枠30に装着された気密材7に当接する。
下框60の樹脂製框材62は、図1に示すように、見付け片部621,622と、見付け片部621,622に連続した見込み片部623,624と、外周側の見込み片部623の室外端部に形成された係合部625と、内周側の見込み片部624の室外端部に形成された係合部626とを有している。係合部625,626は係合部615,616にそれぞれ係合している。見付け片部621の室内面(見付け面)は、障子3の閉鎖状態で金属製枠材31の室外面(見付け面)にZ軸方向の間隔を隔てて対向し、且つ、金属製枠材31に装着された気密材8に当接する。
下框60では、金属製框材61の見付け片部611および内周側の見込み片部613と、樹脂製框材62の内周側の見込み片部624および室内側の見付け片部621とによって面材80を保持する保持溝が構成されている。この保持溝には断面略コ字形状の金属製保持材11が配置されており、この金属製保持材11によって面材80の下縁部が保持されている。また、見付け片部611,621の上縁部には、面材80を押えるビード10がそれぞれ装着されている。
【0018】
左右の縦框70の金属製框材71は、図2および図3に示すように、見付け片部711と、見付け片部711に連続した見込み片部712と、見込み片部712の室内端側に形成された係合部713とを有している。見付け片部711は、障子3の閉鎖状態で縦枠40に装着された気密材7に当接する。
左右の縦框70の樹脂製框材72は、図2および図3に示すように、見付け片部721と、見付け片部721の内周側の端部から室外側に延出した延出片部722と、見付け片部721の外周側の端部に形成された係合部723と、見付け片部721の内周側の端部から室内側に突出したY軸方向に沿った突片部724とを有している。係合部723は係合部713に係合している。本実施形態では、樹脂製框材72は突片部724を除いて硬質樹脂によって形成され、突片部724は軟質樹脂によって形成されている。見付け片部721の室内面(見付け面)は、障子3の閉鎖状態で樹脂製枠材42の見付け片部422および網戸縦枠14の室外面(見付け面)にZ軸方向の間隔を隔てて対向し、且つ、樹脂製枠材42の見付け片部422に装着された気密材8に当接する。本実施形態では、突片部724は、網戸縦枠14の樹脂製枠材16に対向して配置されており、金属製枠材15に対向して配置される場合よりも断熱性を向上させている。突片部724は、見付け片部721の気密材8に対する当接位置よりも内周側に離れて配置されている。突片部724は、障子3の閉鎖状態で網戸縦枠14の室外面に隙間Cを隔てて対向する。突片部724の突出寸法は、本実施形態では、見付け片部721の室内面と網戸縦枠14の室外面との間隔の寸法に対して略半分の寸法とされており、このため、隙間Cの寸法は、前記間隔の寸法から突片部724の突出寸法を差し引いた寸法となる。隙間Cは、断熱効果を得るうえで2mm以下に設定されるのが望ましい。また、障子3の閉鎖移動における突片部724の網戸縦枠14に対する干渉が問題とならない構成の場合、突片部724を網戸縦枠14に当接させて隙間Cを0mm(隙間なし)に設定してもよい。
縦框70では、金属製框材71の見付け片部711および見込み片部712と、樹脂製框材72の見付け片部721とによって面材80を保持する保持溝が構成されている。この保持溝には断面略コ字形状の金属製保持材11が配置されており、この金属製保持材11によって面材80の縦縁部が保持されている。また、見付け片部711の内周側の端部および延出片部722の室外端部には、面材80を押えるビード10がそれぞれ装着されている。
【0019】
前述した縦すべり出し窓1は次の通り断熱構造が採用されている。
縦すべり出し窓1の上縁部は、上枠20がアルミ樹脂複合枠材によって構成され、上框50がアルミ樹脂複合框材によって構成され、且つ、上枠20に装着された気密材7,8が上框50に当接することで上枠20および上框50間に断熱空間53を形成し、このように断熱構造を構成している。加えて、室外形材23および室内形材24を断熱材25によって連結することで上枠20が構成され、且つ、樹脂製枠材22が断熱材25を覆って配置されていると共に、中空部26,27,28が形成されていることで、断熱性が更に高められている。
縦すべり出し窓1の下縁部は、下枠30がアルミ樹脂複合枠材によって構成され、下框60がアルミ樹脂複合框材によって構成され、且つ、下枠30に装着された気密材7,8が下框60に当接することで下枠30および下框60間に断熱空間63を形成し、このように断熱構造を構成している。加えて、室外形材33および室内形材34を断熱材35によって連結することで下枠30が構成され、且つ、樹脂製枠材32が断熱材35を覆って配置されていると共に、中空部36が形成されていることで、断熱性が更に高められている。
縦すべり出し窓1の左右縦縁部は、縦枠40がアルミ樹脂複合枠材によって構成され、縦框70がアルミ樹脂複合框材によって構成され、且つ、縦枠40に装着された気密材7,8が縦框70に当接することで縦枠40および縦框70間に断熱空間73を形成し、このように断熱構造を構成している。加えて、樹脂製枠材42に中空部43が形成され、且つ、樹脂製枠材42および金属製枠材41間に中空部45(図3参照)が構成されることで、断熱性が更に高められている。
ここで、樹脂製框材72はその見付け片部721から室内側に延出した突片部724を有しているので、この突片部724と見付け片部721に当接する気密材8との間に断熱空間74が形成される。また、枠アタッチメント設置部44においては、見込み片部421および網戸縦枠14の見込み面との間に断熱空間75が形成され、この断熱空間75は、枠突片部421A,421Bによって区画される。このように断熱空間74,75を形成することで、断熱性がより高められている。
なお、断熱空間74,75は、その体積が小さすぎると断熱性が低いので大きくするのが望ましいが、逆に大きすぎると対流が生じて断熱性が低下する。このことを考慮し、縦枠40の構成に応じて、縦框70の突片部724の突出寸法や見付け位置が設定される。
【0020】
以上の第1実施形態に係る縦すべり出し窓1によれば、前述したように障子3の縦框70に突片部724が形成されているので、例えば建物躯体に取り付けられた既設枠としての窓枠2に新たな障子3を取り付ける場合、窓枠2に突片部724相当の構成がなくても、窓枠2に障子3を取り付けるだけで断熱空間74を構成できる。
【0021】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。
第2実施形態に係る縦すべり出し窓1Bは、第1実施形態に係る縦すべり出し窓1と概略同様に構成されているが、樹脂製枠材42の延出片部424から室外側(網戸縦枠14側)に突出した枠突片部424Aが形成されている点が異なっている。
縦すべり出し窓1Bでは、枠突片部424Aがあるので、網戸縦枠14の室内面(見付け面)と延出片部424の室外面(見付け面)との間に断熱空間76を構成できる。図4においては、枠突片部424Aは開口区画片部426に沿って一つであるが、延出片部424に沿って複数形成されていてもよい。
【0022】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。
第3実施形態に係る縦すべり出し窓1Cは、第1実施形態に係る縦すべり出し窓1と概略同様に構成されているが、見込み片部421の枠突片部421Bの構成が省略されている点が異なっている。このように、枠突片部421Bの構成を省略した分、断熱空間75を大きく形成できる。
【0023】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を図6に基づいて説明する。
第4実施形態に係る縦すべり出し窓1Dは、第1実施形態に係る縦すべり出し窓1と概略同様に構成されているが、縦框70がアルミ樹脂複合框材ではなく、アルミ押出形材によって形成された金属製框材71Bによって構成されている。金属製框材71Bは、前述した見付け片部711および見込み片部712と、見込み片部712の室外端部に連続した見付け片部714とを有しており、面材80の縦縁部が配置される保持溝を構成している。この保持溝には金属製保持材11が配置されている。見付け片部711の内周側の端部にはビード10が装着されており、見付け片部714の内周側の端部には面材80の室内面を押える面材押え材としてのビード10Bが装着されている。このビード10Bには、見付け片部714よりも室内側に突出して位置する突片部724Bが形成されている。このように縦框70が金属製框材71Bによって構成されていても、金属製框材71B自体を加工することなく、ビード10Bを装着することで突片部724Bを容易に構成できる。
【0024】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態を図7に基づいて説明する。
第5実施形態に係る縦すべり出し窓1Eは、第1実施形態に係る縦すべり出し窓1と概略同様に構成されているが縦框70の構成が異なっている。第5実施形態では、縦框70は、金属製框材71Cと、樹脂製框材72Cとを備えている。
金属製框材71Cは、前述した見付け片部711および見込み片部712と、見込み片部712よりも内周側に位置する見込み片部715と、見込み片部715の室内端部および見込み片部712に連続した見付け片部716と、見付け片部716および見込み片部712の室外端部に形成された係合部717,718とを有している。
樹脂製框材72Cは、前述した見付け片部721および延出片部722と、見付け片部721に形成された係合部723Cと、見付け片部721の内周側の端部から室内側に突出した突片部724Cと、突片部724Cよりも外周側において見付け片部721から室内側の突出した複数の突片部724とを有している。
突片部724Cは、網戸縦枠14よりも内周側に配置されており、その突出寸法は見付け片部721および網戸縦枠14の室外面間の間隔と同じ寸法か、若干大きい寸法とされている。突片部724Cの先端と網戸縦枠14(本実施形態では樹脂製枠材16)との隙間C1は、見付け片部721および網戸縦枠14の室外面間の間隔よりも小さい寸法とされており、これにより断熱空間74を形成している。
複数の突片部724はX軸方向に間隔を隔てて配置されている。このため、縦枠40との間に断熱空間74を形成するために適切な位置にある突片部724を選択的に残して他の突片部724を切除(ここでは突片部724Cも切除)することで、室内外の熱の流出入を抑えるのに適切な体積を有した断熱空間74を形成できる。
【0025】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態を図8に基づいて説明する。
第6実施形態に係る建具としての固定窓1Fは、第1実施形態の縦すべり出し窓1において、障子3を開閉可能に設置せずに窓枠2に固定して構成されており、操作ハンドル6(図1図2参照)は備えていない。左右の縦枠40は、金属製枠材41に代えて、アルミ押出形材によって形成された室外形材46および室内形材47をウレタン等の断熱材48によって連結して構成された金属製枠材41Bを備えている。また、固定窓1Fには、網戸4は不要のため設置されていない。その代わりに、枠アタッチメント設置部44には、枠アタッチメントとしての塞ぎ部材17が設置されている。図示しないが上枠および下枠においても概略同様に塞ぎ部材17が設置されている。塞ぎ部材17は、縦枠40の樹脂製枠材42にネジ止めされる金属製枠材18と、金属製枠材18に係合した樹脂製枠材19とによって構成されており、樹脂製枠材19は、金属製枠材18の室外面(見付け面)および内周側の見込み面を覆っている。縦框70の樹脂製框材72における突片部724は、塞ぎ部材17の樹脂製枠材19に対向して配置されている。なお、第6実施形態では、縦枠40は、金属製枠材41Bを備えているが、これではなく金属製枠材41を備えていてもよい。このように、障子3を窓枠2に固定し、網戸4の網戸枠ではなく塞ぎ部材17を設置することで、縦すべり出し窓1(1B~1E)の各部材を利用して固定窓1Fを構成でき、例えば既設の窓枠2が縦すべり出し窓1(1B~1E)のものであっても、窓枠2をそのまま利用して固定窓1Fを施工できる。
【0026】
[変形例]
第1~第6実施形態では、突片部724,724Cと網戸縦枠14(塞ぎ部材17)との間に隙間C,C1が形成されているが、これに限らず、隙間C,C1をなくして突片部724,724Cを網戸縦枠14(塞ぎ部材17)に当接させてもよい。
第1~第6実施形態では、縦枠40に枠突片部421Aが形成されているが、この構成を省略してもよい。
第1、第2実施形態では、縦枠40に一つの枠突片部421Bが形成されているが、Z軸方向に沿って複数形成されていてもよい。また、第4、第5実施形態では、縦枠40に枠突片部421Bが形成されていないが、形成してもよい。
第1~第3、第5、第6実施形態では、見付け片部721から突出した突片部724,724Cは軟質樹脂によって形成されているが、見付け片部721と同様に硬質樹脂によって形成されていてもよい。
第1~第6実施形態では、枠アタッチメント設置部29,37,44が構成されているが、網戸4や塞ぎ部材17を設置しない場合には、これらの構成を省略してもよい。
第1~第5実施形態では、網戸縦枠14と見込み片部421および延出片部424との間に断熱空間75,76が適宜構成されているが、これに限らず、断熱空間75,76を構成せずに網戸縦枠14を見込み片部421および延出片部424に当接させてもよい。また、第6実施形態では、図8に示すように、塞ぎ部材17が見込み片部421および延出片部424に当接しているが、これらの間に間隔を設けて断熱空間75,76を構成してもよい。
第1~第6実施形態では、気密材8が縦枠40に装着されているが、この気密材8がなくても、気密材7および突片部724,724B,724Cの間に断熱空間73,74を合わせた一つの断熱空間が形成され、断熱性が維持される。
第1~第6実施形態では、左右の縦框70に突片部724,724B,724Cが形成され、上框50および下框60には形成されていないが、上記と概略同様に形成してもよく、また、十分な断熱性が得られる場合には、上框50、下框60および左右の縦框70のいずれか一つに突片部724,724B,724Cが形成されるだけであってもよい。
第1~第5実施形態では縦すべり出し窓1を建具として説明し、第6実施形態では固定窓1Fを建具として説明したが、このほかの各種窓でも本発明の建具を構成し得る。
【0027】
[本発明のまとめ]
本発明の障子は、枠体内に配置される障子であって、前記枠体に装着された気密材に当接する障子框と、前記障子框内に配置された面材とを備え、前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成された突出した突片部を有し、前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成することを特徴とする。
本発明の障子によれば、前述した突片部が枠体ではなく障子框に形成されているので、例えば突片部のない既設の枠体に障子を取り付けることで、前述した断熱空間を形成でき、障子および枠体間の熱の流出入を抑制できて断熱性を向上できる。
また、既設の枠体の見付け寸法などに応じて、気密材との間に適切に断熱空間を形成可能な突片部を有した障子を選択できる。
【0028】
本発明の障子では、前記突片部の突出寸法は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされていてもよい。
このような構成によれば、障子が枠体に開閉可能に設置される場合には、障子の閉鎖操作時に突片部が枠体に干渉することをなくし得る。
【0029】
本発明の障子では、前記突片部は軟質樹脂によって形成されていてもよい。
このような構成によれば、例えば障子を勢いよく閉鎖操作した際、気密材が大きく撓んで突片部が枠体に当たってしまっても、突片部自体が撓むことで破損を防止できる。
また、例えば突片部を硬質樹脂によって形成する場合と比べて、樹脂押出形材の製造上、厚さ寸法を小さくできて断熱空間を大きく形成できる。
更に、障子框に手を掛けた際にも突片部が撓むことで障子の操作感を向上できる。
【0030】
本発明の障子では、前記突片部は、前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つの見付け方向に沿って複数形成されていてもよい。
このような構成によれば、枠体の見付け寸法などに応じて適切な断熱空間を形成できる位置にある突片部を選択的に残して他の突片部を切除することができ、障子を各種の枠体に適応させることができる。
【0031】
本発明の障子では、前記障子框は、室外側の金属製框材および室内側の樹脂製框材を備えた複合框材によって構成され、前記樹脂製框材は見付け片部を有し、前記突片部は、前記見付け片部から見込み方向に突出していてもよい。
このような構成によれば、樹脂製框材の見付け片部および突片部によって枠体との間に断熱空間を形成でき、例えば金属製框材によって構成される框材と枠体との間に断熱空間を形成する場合と比べて、断熱性をより向上できる。
【0032】
本発明の障子では、前記障子框には、前記面材を押える面材押え材が装着され、前記突片部は、前記面材押え材に形成されていてもよい。
このような構成によれば、面材を押える面材押え材の装着によって突片部を容易に構成できる。
【0033】
本発明の建具は、気密材が装着された枠体と、前記枠体内に配置される前述した本発明の障子とを備えることを特徴とする。
本発明の建具によれば、前述した本発明の障子と同様の作用効果を発揮可能な建具を構成できる。
【0034】
本発明の建具では、前記枠体は、前記気密材が装着された見付け片部と、前記気密材よりも内周側に位置する見込み片部と、前記見込み片部から内周側に延出した延出片部とを有し、前記見込み片部および前記延出片部によって枠アタッチメント設置部が構成され、前記枠アタッチメント設置部には、前記見込み片部および前記延出片部のうちの少なくとも一方に対して間隔を隔てて枠アタッチメントが設置され、前記障子框は、前記枠アタッチメントに対して見込み方向の間隔を隔てた位置で前記気密材に当接していてもよい。
このような構成によれば、障子框および枠体と枠アタッチメントとの間に断熱空間を大きく形成でき、断熱性を向上できる。
なお、枠アタッチメントは、例えば枠体に開閉可能に障子が設置される場合には、枠体に取り付けられる網戸の網戸枠であってもよく、また、枠体に障子が固定して設置される場合には、アタッチメント設置部を塞ぐ部材であってもよい。
【0035】
本発明の建具では、前記枠体は、金属製枠材および樹脂製枠材を備えた複合枠材によって構成され、前記気密材は前記樹脂製枠材に装着され、前記枠アタッチメント設置部は前記樹脂製枠材に形成されていてもよい。
このような構成によれば、樹脂製枠材および枠アタッチメントの間に断熱空間を形成でき、例えば金属製枠材によって構成される枠材と枠アタッチメントとの間に断熱空間を形成する場合と比べて、断熱性をより向上できる。
【0036】
本発明の建具では、前記障子の突片部は、前記枠アタッチメントよりも内周側に配置され、前記突片部および前記枠アタッチメントの間には隙間が形成され、前記隙間は、前記障子框および前記枠アタッチメント間の間隔よりも小さい寸法とされていてもよい。
このような構成によれば、突片部を枠アタッチメントよりも内周側に配置することで気密材からより離れた位置に配置でき、これにより、断熱空間を大きく形成できる。
【0037】
本発明の建具では、前記見込み片部および前記延出片部の少なくとも一方には、前記枠アタッチメント側に突出した少なくとも一つの枠突片部が形成されていてもよい。
このような構成によれば、枠体および枠アタッチメントの間に形成される断熱空間を枠突片部によって区画でき、これにより、断熱空間における対流を抑えることができて断熱性を向上できる。
【符号の説明】
【0038】
1,1B~1E…縦すべり出し窓(建具)、1F…固定窓(建具)、17…塞ぎ部材、2…窓枠(枠体)、20…上枠、30…下枠、40…縦枠、29,37,44…枠アタッチメント設置部、3…障子、4…網戸、5…障子框、50…上框、60…下框、7,8…気密材、70…縦框、724,724B,724C…突片部、74,75,76…断熱空間、80…面材、C,C1…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8