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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】血液ポンプアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/237 20210101AFI20240305BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20240305BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20240305BHJP
   A61M 60/865 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
A61M60/237
A61M60/174
A61M60/414
A61M60/865
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022175250
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2021000019の分割
【原出願日】2014-10-31
(65)【公開番号】P2022189985
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】13191307.1
(32)【優先日】2013-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェケル マリオ
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ ヨルグ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0178986(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0093628(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0264523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/237
A61M 60/174
A61M 60/414
A61M 60/865
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプアセンブリであって、
患者の左心室の内部に配置されるよう構成されたポンプケーシングであって、ドライブシャフトに連結された1つ以上のブレードの周囲に少なくとも一部が設けられるポンプケーシングと、
前記ドライブシャフトおよび前記1つ以上のブレードを回転駆動させて血液を前記患者の前記左心室から大動脈に送るように構成されたモータと、
を備え、
前記ドライブシャフトが、回転中に前記ポンプケーシングに対して軸方向に移動するように構成されており、
前記1つ以上のブレードに近位である第1のベアリングエレメントと、
前記1つ以上のブレードに近位である第2のベアリングエレメントであって、この第2のベアリングエレメントに対して前記ドライブシャフトを移動可能にする、第2のベアリングエレメントと、
前記1つ以上のブレードに遠位である第3のベアリングエレメントであって、この第3のベアリングエレメントに対して前記ドライブシャフトを移動可能にする、第3のベアリングエレメントと、
を備え、
前記ドライブシャフトが、前記第1のベアリングエレメント、前記第2のベアリングエレメント、および前記第3のベアリングエレメントを通過し、
前記第1のベアリングエレメントが前記ドライブシャフトに対して軸方向に固定された位置に保持されるが、前記第1のベアリングエレメントが前記第2のベアリングエレメントに対しては軸方向に固定された位置に保持されないように、前記ドライブシャフトが前記第1のベアリングエレメントに連結されている、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項2】
血液ポンプアセンブリであって、
患者の左心室の内部に配置されるよう構成されたポンプケーシングであって、ドライブシャフトに連結された1つ以上のブレードの周囲に少なくとも一部が設けられるポンプケーシングと、
前記ドライブシャフトおよび前記1つ以上のブレードを回転駆動させて血液を前記患者の前記左心室から大動脈に送るように構成されたモータと、
を備え、
前記ドライブシャフトが、回転中に前記ポンプケーシングに対して軸方向に移動するように構成されており、
前記1つ以上のブレードに近位である第1のベアリングエレメントと、
前記1つ以上のブレードに近位である第2のベアリングエレメントであって、この第2のベアリングエレメントに対して前記ドライブシャフトを移動可能にする、第2のベアリングエレメントと、
前記1つ以上のブレードに遠位である第3のベアリングエレメントであって、この第3のベアリングエレメントに対して前記ドライブシャフトを移動可能にする、第3のベアリングエレメントと、
を備え、
前記ドライブシャフトが、前記第1のベアリングエレメント、前記第2のベアリングエレメント、および前記第3のベアリングエレメントを通過し、
前記1つ以上のブレードの回転により前記ドライブシャフトが前記第2のベアリングエレメントおよび前記第3のベアリングエレメントに対して軸方向にずれるように、前記1つ以上のブレードが前記ドライブシャフトに連結されている、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記モータが所与の回転方向に前記ドライブシャフトを駆動するように構成され、
前記ドライブシャフトが、前記ドライブシャフトの長手方向軸の周囲に第1の方向において巻かれた複数のワイヤを有し、前記ドライブシャフトの前記所与の回転方向の回転に応じて、前記ドライブシャフトの少なくとも一部が軸方向に収縮する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項4】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記ドライブシャフトが、前記ドライブシャフトの長手方向軸の周囲に第2の方向において巻かれた複数のワイヤを有し、前記ドライブシャフトの前記所与の回転方向の回転に応じて、前記ドライブシャフトの少なくとも一部が軸方向に延伸する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の血液ポンプアセンブリであって、さらに、
可撓性のカテーテルを備え、前記可撓性のカテーテルが、
前記ドライブシャフトを取り囲むスリーブと、
前記ドライブシャフトおよび前記スリーブを取り囲むシースと、
を含み、
前記ドライブシャフト、前記スリーブ、および前記シースが柔軟であるように構成され、
前記ドライブシャフトが、前記ドライブシャフトの近位端部において、前記ドライブシャフトを前記モータに接続するためのカップリングエレメントを有し、
前記ドライブシャフトが、少なくとも10重量%のクロムと、少なくとも10重量%のニッケルと、少なくとも10重量%のコバルトと、を含有する合金から少なくとも部分的に構成されている、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項6】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記合金が、
(i)30重量%~40重量%のニッケル、
(ii)30重量%~40重量%のコバルト、または、
(iii)15重量%~25重量%のクロム
の少なくともいずれかを含有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項7】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記合金が、1800N/mmから2400N/mmの間の引張強度を有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項8】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記スリーブが少なくとも部分的に前記ドライブシャフトと同じ材料で構成される、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項9】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記スリーブが1つ以上の巻線を有するベアリングコイルとして構成され、
各巻線が前記ドライブシャフトの長手方向軸の周囲を螺旋状に巻かれている、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項10】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記スリーブが少なくとも部分的に、1800N/mmから2400N/mmの間の引張強度を有する前記合金から構成される、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項11】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記ベアリングコイルが、前記ドライブシャフトの長手方向軸の周囲を螺旋状に巻かれたフラットテープを含む、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記フラットテープの軸方向に測定した幅が0.36mmから0.84mmの範囲にあり、前記フラットテープの径方向に測定した厚さが0.06mmから0.14mmの範囲にある、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項13】
請求項11に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記ドライブシャフトが湾曲のない真っ直ぐな状態で保持された場合、前記フラットテープが前記ドライブシャフトの長手方向軸に対して5°未満の軸方向の傾きを有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項14】
請求項11に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記フラットテープの側端部が丸みを有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記フラットテープの側端部が0.04mm以上の曲率半径を有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項16】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記ベアリングコイルの前記1つ以上の巻線の少なくとも1つが0.43から0.98の範囲のピッチを有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項17】
請求項に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記スリーブの内径が0.6mmから1.4mmの範囲にあり、前記スリーブの外径が0.72mmから1.68mmの範囲にある、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の血液ポンプアセンブリであって、
前記ドライブシャフトの表面が、0.01ミクロンから1ミクロンの間の粗さRZを有する、
血液ポンプアセンブリ。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の血液ポンプアセンブリであって、さらに、
前記ドライブシャフトの近位端部と前記モータとの間にカップリングを備え、
前記カップリングが、前記ドライブシャフトの近位端部と前記モータとのあいだで軸方向に移動可能でありつつも、前記モータによる前記ドライブシャフトの回転駆動を可能にするように構成されている、
血液ポンプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項のプリアンブルによる柔軟なドライブシャフトを備える可撓性のカテーテルに関し、また、そのようなカテーテルを備える血液ポンプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなカテーテルは、典型的には、人間または動物の身体の中で使用され、トルクまたは回転移動を作り出しまたは伝達する。ドライブシャフトは、カテーテルの近位端部とカテーテルの遠位端部との間で、カテーテルの長手方向の延在範囲に沿って軸線方向に走っている。典型的に、ドライブシャフトの近位端部は、身体の外側において、ドライブモーターに接続されており、トルクまたは回転移動を生み出すように、および、それをドライブシャフトの上に伝達するようになっている。それぞれの用途にしたがって設計された回転エレメントまたは機能的なエレメントが、ドライブシャフトの遠位端部において、回転可能に固定された様式で、ドライブシャフトに接続されている。機能的なエレメントに関して、それは、たとえば、ミリングカッター、ローターアブレーター、または、血液を送達するためのポンプローターのケースであることが可能である。
【0003】
多くの用途に関して、それぞれの用途の持続期間にわたり、カテーテルの遠位端部を、身体の中の所望の場所に、たとえば心臓の心室の中に位置決めするために、身体を通して所望の経路に沿って、たとえば、血管に沿って、または、血管の中で、カテーテルを導くことが必要である。このために必要な柔軟性および可撓性は別として、概して、一層さらなる基準が満たされなければならない。たとえば、いくつかの用途では、回転移動が生み出されること、または、非常に高い回転速度でドライブシャフトによって伝達されることが必要であり、たとえば、必要な回転速度は、たとえば、血液を送達するケースですでに述べられているものなどのように、毎分10,000回転を超えるか、毎分20,000回転を超えるか、または、毎分30,000回転も超えることが可能である。そのうえ、血液を送達(ポンピング)するときと同様であり得るように、回転移動が、より長い時間の期間にわたって、したがって、数時間、数日、または数週間にもわたって、作り出されなければならないケースでは、ドライブシャフトにおいて、とりわけ高い要求が、機械的なおよび化学的なカテーテルの耐荷重性に向けられている。カテーテルのドライブシャフトおよび他のコンポーネントに対する材料疲労および損傷プロセスは、単に、可能な限りゆっくりと進行すべきであり、そのうえ、可能な限り予想可能におよび制御可能に進行すべきである。動作時のドライブシャフトの破裂および破損は、たとえば血液を送達するときなどの重要な用途において、可能な限り大きな確実性で、除外され得るべきである。これにより、可撓性のドライブシャフトが、硬すぎ、シャフトを摩耗させるシースの中で動作させられる場合には、それは好ましくない。
【0004】
他方では、これにかかわらずシャフトの故障が起こったとすれば、最大限可能な確実性で、それによって典型的に広げられて開くシャフトの端部が、通常プラスチックから構成されるカテーテルのシースを通って高速では動かないということが確実にされなければならない。シャフトの端部は、そのような場合では、血管の中で自由に回転することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2399639号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】The Sternotomy Hemopump. A second generation intraarterial ventricular assist device」ワンプラー(Wampler) RKら、ASAIO J.1993 Jul-sep;39(3):M218-23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、柔軟なドライブシャフトを備える可撓性のカテーテルであって、可撓性のカテーテルは、可能な限り信頼性が高く、また、高速での恒久的な動作に可能な限り適している可撓性のカテーテルを提案することである。そのうえ、血液ポンプ構成体が提案され、血液ポンプ構成体は、同様に、可能な限り信頼性が高く、高速での恒久的な動作に可能な限り適している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、主請求項によるカテーテルによって、ならびに、補助請求項によるカテーテルおよび血液ポンプ構成体によって実現される。好適な実施形態およびさらなる発展例は、従属請求項から推定されることとなる。
【0009】
詳細な様式で以降に説明されているように、本特許出願は、いくつかの態様を開示しており、これらの態様のそれぞれが、首尾一貫した発明の一部である。他方では、態様のそれぞれも、それ自体が自律的な発明をすでに表している。したがって、態様は、互いに独立して実現され得る(そして、それ自身によって取られるそれぞれのケースにおいて、主請求項のプリアンブルによるジェネリックなカテーテルの特別なさらなる発展を表している)。そのうえ、無限に互いに組み合わせ可能で、ジェネリックなカテーテル、または、ジェネリックなカテーテルを備える血液ポンプ構成体を相乗的に改善するようになっている。したがって、たとえば、ジェネリックなカテーテルは、これらの態様のうちの1つにしたがって設計可能で、同時に、1つ(以上)のさらなる態様にしたがって設計されることができる。次いで、このカテーテルは、最初に述べられた態様によるカテーテルのとりわけ有利な実施形態である。したがって、態様のそれぞれも、それぞれの他の態様のさらなる発展を可能にする。
【0010】
これらの態様のうちの第1の態様は、ドライブシャフトの材料または材料特性に関し、第2の態様は、ドライブシャフトの幾何学的設計に関し、第3の態様は、スリーブの設計に関し、第4の態様は、ドライブシャフトとドライブモーターとの間の接続に関し、第5の態様は、ドライブシャフトの装着に関し、第6の態様は、ドライブシャフトのための潤滑剤に関する。これらの態様のそれぞれは、カテーテルまたは血液ポンプ構成体の耐荷重性および信頼性の改善に貢献する。
【0011】
したがって、ジェネリックな可撓性のカテーテルは、ドライブシャフトと、ドライブシャフトを取り囲むスリーブと、ドライブシャフトおよびスリーブを取り囲むシースとを備え、ドライブシャフト、スリーブ、およびシースは柔軟である。ドライブシャフトは、ドライブシャフトの近位端部において、ドライブモーターへのドライブシャフトの接続のために、カップリングエレメントまたはカップリングヘッドを含む。
【0012】
典型的に、カテーテルの(軸線方向の)全長は、50cmから200cmの間にあり、概して、全長は、80cmから150cmの間の領域にある。典型的に、ドライブシャフト、スリーブ、およびシースの(軸線方向の)全長も、同様に、それぞれのケースにおいて、1つのこれらの領域の中にある。したがって、カテーテルの可撓性または柔軟性、とりわけ、ドライブシャフト、スリーブ、およびシースの可撓性または柔軟性は、20mmから40mmの間の領域にある曲率半径、好ましくは、25mmから35mmの間の領域にある曲率半径、とりわけ、約30mmの曲率半径によってカテーテルを弾性的に曲げることができるように十分であるべきである。そのような曲率によって、とりわけ、動作速度で回転するドライブシャフト、およびスリーブは、可能であれば、単に弾性的に変形するべきであり、したがって、可能であるならば、ドライブシャフトまたはスリーブの恒久的な(塑性)変形または変化は起こらないべきである。とりわけ、述べられている曲率半径を有するそのような弾性的な湾曲は、約180°のカテーテルのおおよそU字形状の湾曲によっても可能となるはずであり、したがって、それによって、カテーテルは、たとえば、(曲率半径に応じて、)約80mmから150mmの長さ、典型的に、100mmから120mmの長さを有するカテーテルの軸線方向のセクションに沿って、連続的に湾曲させられる。カテーテルのそのような湾曲は、たとえば、カテーテルが大動脈弓を通って左心室の中へ走る場合に起こる。そのうえ、説明されている曲率半径の規則正しい変化は、典型的に、規則正しい心臓作用に起因して起こり、カテーテルに対する湾曲の位置も、規則正しく変化することが可能である。
【0013】
多くのケースでは、カテーテルが、その軸線方向の長手方向の延在範囲全体に沿って、そのような可撓性を有することは、必要でない。それは、特定の軸線方向のセクション(または、いくつかの軸線方向のセクション)においてこれが与えられるために、すでに十分である可能性がある。多くの場合、たとえば、カテーテルの遠位端部が心室の中に設置されなければならない場合には、少なくともカテーテルの遠位端部ピースまたは遠位部分的ピースが、血液を送達するケースのように、そのような可撓性を有している。この遠位端部ピースまたは部分的ピースは、たとえば、上述の長さ領域のうちの1つにある軸線方向の長さを有することが可能である。
【0014】
より詳細にさらに下記に説明されているように、また、カテーテルまたはドライブシャフトの柔軟性および可撓性は、いくつかのケースでは、とりわけ、ドライブシャフトのそれらの軸線方向のセクションにおいて、大きすぎないことが可能であり、ドライブシャフトは、スリーブの外側に遠位にもしくは近位に走り、または、スリーブから外へ出ており、特定の程度までのドライブシャフトの局部的な補強が、これらのセクションのうちの少なくとも1つにおいて有利であるようになっており、または、それぞれの適用の要求に応じて、必要になる可能性もある。振動の最小化は、有利には、そのような補強によって実現可能であり、そのような手段によって、溶血のリスクも低減される可能性がある。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、カテーテルのドライブシャフトは、完全にまたは少なくとも局部的に、それぞれのケースにおいて少なくとも10重量%のクロム、ニッケル、およびコバルトを含有する合金から構成され得る。合金は、好ましくは、少なくとも30重量%のニッケル、しかし、好ましくは、40重量%以下のニッケルを含有する。合金は、好ましくは、少なくとも30重量%のコバルト、しかし、好ましくは、40重量%以下のコバルトを含有する。合金は、好ましくは、少なくとも15重量%のクロム、しかし、好ましくは、25重量%以下のクロムを含有する。また、合金は、好ましくは、モリブデンも含有し、好ましくは、少なくとも5重量%、しかし、好ましくは15重量%以下のモリブデンを含有する。
【0016】
合金は、たとえば合金組成として、約35重量%のニッケル、約35重量%のコバルト、約20重量%のクロム、および、約10重量%のモリブデンを含むことが可能である。合金のこれらの合金組成は、それぞれのケースにおいて、最大3重量%まで、より大きいもしくは小さいことが可能であり、または、それぞれのケースにおいて、最大2重量%まで、より大きいもしくは小さいことが可能である。これらのエレメントの合金組成は、合金MP35N(登録商標)の中のこれらのエレメントの合金組成に対応することが可能であり、または、合金35NLT(登録商標)の中のこれらのエレメントの合金組成に対応することが可能であり、または、それぞれのケースにおいて、最大2重量%まで、より高くもしくはより低く、これとは異なり、または、それぞれのケースにおいて、最大1重量%まで、より高くもしくはより低く、これとは異なる。そのうえ、合金は、さらなる合金元素を含有することが可能である。これらは、合金MP35N(登録商標)の合金元素または合金35NLT(登録商標)の合金元素にしたがって、選択および重み付けされ得る。
【0017】
好ましくは、合金に関して、それは、MP35N(登録商標)もしくは35NLT(登録商標)のケースであり、または、対応する(もしくは、同じ)様式で、すなわち、対応する(もしくは、同じ)方法ステップによって、および、MP35N(登録商標)もしくは35NLT(登録商標)に対応する(もしくは、同じ)方法パラメーターによって、製造される。たとえば、ドライブシャフトまたはドライブシャフト全体の合金が、(高い)冷間成形または加工硬化を適用することによって、加工硬化され、または製造され、または形成されるということを予想することが可能である。ドライブシャフトおよび/またはスリーブの材料の加工硬化度は、たとえば、35%から70%の間、および/または、40%から60%の間にある。1900MPaから2200MPaの間の領域にある材料の引張強度は、結果としてこれから生じることが可能である。
【0018】
材料35NLTの例を用いた降伏点、引張強度、破断点伸び、および加工硬化度の間の関係が、(製造業者Fort Wayne Metalsの詳細に基づいて)図16および図17に例として表されている。この例によって、材料の異なる熱処理条件および加工硬化度が、一般的に、非常に異なる材料特性につながり得るということが示されている。多くの場合には、これらは、後知恵の利益を伴う可撓性のドライブシャフトにとって不適切であるということが単に見出された。
【0019】
たとえば、高い加工硬化は、重要でないことはない。その理由は、これが、材料の最大破断点伸びおよび靭性の低減につながる可能性があるからである。ドライブシャフトの繰り返し(reverse)曲げ強度、および、シャフトの達成可能な曲げ半径は、これによって悪い影響を与えられる可能性がある。他方では、低い加工硬化は、比較的に低い材料の硬度および引張強度を伴う。低すぎる硬度は、シャフトの摩耗挙動に対する直接的な影響、および、したがって、その疲労強度に対する直接的な影響を有し、たとえば、動作時の摩耗および摩滅の増加を結果として生じさせる可能性がある。これは、可撓性のシャフトに関して典型的であるように、摺動/摩擦ペアリング(pairing)のケースにおいて、とりわけ重要である。低減された引張強度は、低い繰り返し曲げ強度を結果として生じさせる。
【0020】
安定したおよび耐久性のある可撓性のドライブシャフトの最適化は、高度に複雑である。その理由は、ドライブシャフトの異なる最適化目標は、発散する材料特性を伴い、標準化された有意義に適用可能な最適化方法または明白なパラメーターウィンドウが、これに関して結果として生じないようになっているからである。
【0021】
しかし、驚くことには、完全にまたは少なくとも局部的に、1800N/mmから2400N/mmの間の領域にある引張強度、好ましくは、2034N/mmから2241N/mm(したがって、295KSIから325KSI)の引張強度を有する材料から構成されたドライブシャフトが、良好な結果につながるということが見出された。とりわけ、材料に関して、それは、ここで説明されている合金のうちの1つのケース、したがって、それぞれのケースにおいて少なくとも10重量%のクロム、ニッケル、およびコバルトを含むものであり得る。しかし、たとえば金属材料および非金属材料、とりわけ、プラスチックおよび複合材料などのような、これらの合金は別として、他の材料も、ドライブシャフトに関して考慮される。
【0022】
完全にまたは少なくとも局部的に、そのような合金またはそのような材料から構成されるドライブシャフトは、また、非常に高い速度および長い恒久的な動作における適用に適切であり、そのようなドライブシャフトによって、より長い時間期間にわたって、初期に述べられている速度領域を維持することも可能であるようになっている。トルクは、そのような高い回転速度をドライブシャフトによって伝達するが、しかし、とりわけ血液を送達するときに、典型的に比較的に低くなり、膨張されたポンプローターの駆動のためのトルクは、より大きい直径に起因して、典型的により大きい。しかし、合金MP35N(登録商標)または合金35NLT(登録商標)の適用が、たとえば、それらの耐荷重性およびそれらの耐腐食性に起因して、スタイレットなどのような異なる医療機器に関して知られている可能性がある場合にも、柔軟なドライブシャフトに関するそれらの適合性は、驚くべきものである。それは、とりわけ、実際に、500 000 000を超える完全な繰り返し荷重、および、極端なケースでは、1 000 000 000を超える繰り返し荷重が、血液ポンプとしての適用によって起こり得るという事実に照らして、とりわけ、高い速度、長い動作持続期間、および大きい曲率において、説明されている特別な要求に起因している。
【0023】
比較的に高い鉄含有量またはチタン含有量を有する合金は、高い耐荷重性を実現するために、これまで、ドライブシャフトに関して、とりわけ、血液ポンプに関して適用されてきた。しかし、本発明の枠組みの中で見出されたように、高い含有量の鉄およびチタンを可能な限りなしで済ますことが可能であり、または、実際には、それらを可能な限りなしで済ますべきであり、高い回転速度における恒久的な動作を可能にするようになっている。鉄およびチタンの重量組成は、さらに好ましくは、比較的に低く選択され、たとえば、それぞれのケースにおいて、2重量%未満、または、さらには1重量%未満で選択される。基本的に、合金組成として鉄およびチタンを完全になしで済ますことが可能であり、それは、それぞれのケースにおいて0.1%未満の重量組成に対応する。
【0024】
第1の態様によれば、ドライブシャフトは、完全にまたは少なくとも局部的に、2%未満、または、好ましくは1%未満、または、とりわけ好ましくは0.1%未満の鉄の重量組成を有する合金から構成され得る。第1の態様によれば、ドライブシャフトは、完全にまたは少なくとも局部的に、2%未満、または、好ましくは1%未満、または、とりわけ好ましくは、0.1%未満のチタンの重量組成を有する合金から構成され得る。
【0025】
ドライブシャフト、スリーブ、シース、および/または、場合によっては存在するベアリングエレメントは、可能な限り生体適合性材料から構成されており、または、それぞれのコンポーネントの少なくとも外側表面は、生体適合性材料から構成されている。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、ドライブシャフトは、ドライブシャフトの中を軸線方向に延在するキャビティーを含むことが可能である。したがって、ドライブシャフトに関して、それは、中空のシャフトのケースであることが可能である。キャビティーは、ドライブシャフトの完全な長手方向の延在範囲に沿って、ドライブシャフトの中に延在することが可能である。同時に比較的に高いねじり剛性を備えるドライブシャフトの高い柔軟性は、そのようなキャビティーによって実現され得る。ドライブシャフトが、ドライブシャフトのキャビティーの周りにらせん状に走る複数のまたは多数の同軸の巻線を含む場合には、柔軟性がさらに増加される可能性がある。そのうえ、ねじり応力および曲げ応力は、巻線によって、軸線方向の引張応力または圧縮応力へと変換可能で、そのような手段によって、ドライブシャフトの荷重が低減され得る。そのうえ、ドライブシャフトの巻線がドライブシャフトの2つ以上の同軸の層の中に配置されることも可能である。次いで、異なる同軸の層の中の巻線は、好ましくは、反対の巻線方向を有している。次いで、層同士の間の引張応力および圧縮応力、および、ねじり応力によって引き起こされるものは、完全にまたは部分的に、このように相互に相殺され得る。また、全体として、ドライブシャフトの中の曲げ応力は、したがって、低減され得る。
【0027】
ドライブシャフトの巻線に関して、それは、典型的に、巻かれたワイヤー、または、いくつかの対応する巻かれたワイヤーの巻線のケースである。ドライブシャフトは、それぞれの層の中に正確に1つまたはいくつかのそのようなワイヤー、たとえば1本から8本のワイヤー、好ましくは4本から6本のワイヤー、とりわけ好ましくは5本ワイヤーを含むことが可能である。1つまたは複数のワイヤーは、好ましくは、上記に説明されている合金から構成されている。1つまたは複数のワイヤーは、典型的には、それぞれのケースにおいて、約0.09mmから約0.21mmの範囲、好ましくは、約0.135mmから約0.165mmの範囲にある直径を有している。ドライブシャフトの外径は、典型的には、約0.53mmから約1.32mmの範囲、好ましくは、約0.79mmから約0.97mmの範囲にある。1mmを下回るドライブシャフトの外径が、とりわけ好適である。ドライブシャフトの内径は、典型的には、約0.17mmから約0.39mmの範囲、好ましくは、0.25mmから約0.31mmの範囲にある。2つの同心円状の層のケースでは、内側層の軸線方向に隣接する巻線は、相互に接触しているが、一方、外側層の軸線方向に隣接する巻線は、好ましくは、相互に接触していないが、(それぞれのケースにおいて、湾曲がないドライブシャフトのアライメントを前提として、)約0.018mmから約0.042mmの範囲、好ましくは、約0.027mmから約0.033mmの範囲にある軸線方向の距離を有している。
【0028】
また、カテーテルの小さい外径は、ドライブシャフトの小さい外径によって実現可能であり、そのような手段によって、穿刺の場所における組織の外傷化の低減が実現され得る。ドライブシャフトの低い外径によって実現され得るさらなる利点は、ドライブシャフトの周囲速度の低減に起因する、より低い摩擦および摩耗問題、ドライブシャフトの質量の低減に起因する、より低い振動問題、ならびに、これから結果として生じる振動に起因する、モーター電流信号の外乱/干渉の低減、および、たとえば、血管の中に存在する可能性のある石灰化物が血管壁から切り離され、場合により循環するようになり、患者にとって致命的結果を伴う可能性があるという危険の低減である。
【0029】
したがって、驚くことには、たとえば、膨張された条件になっている膨張可能なポンプローターを駆動するために、十分に高いトルクの伝達は、より長い期間にわたって、ここで述べられている1mm未満のドライブシャフトの低い外径によっても可能であるということが見出された。これにより、とりわけ、ワイヤーの直径の特別な範囲、および、上記に特定されているものは、そのようなワイヤーから構築されたシャフトのケースでは、とりわけ有利であるということが見出され、そのうえ、個々のワイヤーの直径に関する最適な領域は、非自明な様式で、ドライブシャフトの外径に関連するということが見出された。
【0030】
そのうえ、ドライブシャフトの巻線が、(高い)冷間成形または加工硬化によって製造または形成されており、ドライブシャフトの弾性および耐久性を改善するようになっているということを予想することが可能である。
【0031】
キャビティーが、完全に、または、ドライブシャフトの軸線方向のセクションの中において、強化材料で充填され、それぞれの軸線方向のセクションの中のドライブシャフトの剛性および安定性を設定し、(場合によっては局部的に)それを増加させるようになっているということが可能である。本発明の第1の態様の文脈においてすでに説明されているように、ドライブシャフトの十分な柔軟性は別として、ドライブシャフトの十分な剛性も、とりわけ、高い速度およびより長い動作持続期間において、カテーテルの信頼性が高い動作に必要であり、たとえば、とりわけ、スリーブの外側に遠位にまたは近位に走るドライブシャフトの軸線方向のセクション(それぞれ、ドライブシャフトの遠位端部ピースおよび近位端部ピース)の中で、ドライブシャフトの安定した回転を可能にするようになっている。本発明の第1および第2の態様は、このように相乗的に互いに補足し合う。したがって、好適な実施形態では、ドライブシャフトの遠位端部ピースおよび/またはドライブシャフトの近位の端部もしくは端部ピースが補強されているということを予想する。補強された遠位または近位の端部または端部ピースは、好ましくは、10mmから60mmの間の長さ、とりわけ好ましくは、20mmから50mmの間の長さを有している。ドライブシャフトは、好ましくは、これらの領域において補強されており、(スリーブに追加的に、または、それの代わりに、つまり、スリーブの代わりに)ベアリングエレメントが、ドライブシャフトの軸線方向のおよび/または半径方向の装着のために配置されている。また、そのうえ、その領域においてドライブシャフトを補強することが有利である可能性があり、ドライブシャフトは、スリーブに近位に進入または退出し、結果として、スリーブの中でガイドされない。また、そのうえ、その領域においてドライブシャフトを補強することが有利である可能性があり、ドライブシャフトは、スリーブに遠位に進入または退出する。実際に、これらの移行領域では、たとえば、ドライブシャフトの曲げ荷重、または、振動荷重などのような他の荷重が、ドライブシャフトの補強によって低減され得る。
【0032】
一方では高い剛性によって、および、同時に、他方では比較的に高い弾性変形可能性によって特徴付けされる材料が、ドライブシャフトを補強するための強化材料として適切である。とりわけ、強化材料または補強材料は、カテーテル、または、カテーテルのポンプヘッドが埋め込みおよび動作の間に受けるすべての曲げに耐えるべきである。たとえば、錆びないオーステナイト鋼が、強化材料として考慮され、それは、たとえば、材料番号DIN 1.4310によるスチールである。
【0033】
また、説明されている強化材料の代替的にまたは追加的に、適切な補強は、(らせん)ドライブシャフトの巻線の(軸線方向にまたは半径方向に)隣接するものの(軸線方向のおよび/または半径方向の)溶接またははんだ付けによって実現され得る。また、そのうえ、ドライブシャフトの特定の(および、特定の状況下では十分な)補強が遠位の機能的なモジュールによって実現され得ることが可能であり、遠位の機能的なモジュールは、典型的には、回転可能に固定された様式で、ドライブシャフトの外周部の上に締結されており、それは、たとえばポンプローターなどである。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、スリーブは、複数の巻線を備えるベアリングコイルとして設計され得る。ベアリングコイルの巻線は、ドライブシャフトの周りを軸線方向にらせんの様式で走っている。ベアリングコイルは、たとえば、巻かれたフラットテープであることが可能である。フラットテープは、好ましくは、幅(軸線方向に測定される)を有しており、幅は、少なくとも3倍だけ、好ましくは、6倍だけ、厚さ(半径方向に測定される)よりも大きい。典型的に、巻線の幅は、約0.36mmから約0.84mmの範囲、好ましくは、約0.54mmから約0.66mmの範囲にある。巻線の厚さは、典型的には、約0.06から約0.14mmの範囲、好ましくは、約0.09mmから約0.11mmの範囲にある。スリーブの内径は、典型的には、約0.6mmから約1.4mmの間の領域、好ましくは、約0.9mmから約1.1mmの範囲にある。スリーブの外径は、典型的には、約0.72mmから約1.68mmの範囲、好ましくは、約1.08mmから約1.32mmの範囲にある。ベアリングコイルのピッチは、好ましくは、約0.43から約0.98の範囲、好ましくは、約0.63から0.77の範囲にあり、スリーブの内径は、可撓性のドライブシャフトの外径に対応しており、とりわけ、ドライブシャフトの外径よりも大きい。
【0035】
ベアリングコイルは、それが巻かれたフラットテープとして設計されているケースでは、(ベアリングコイルの湾曲なく真っ直ぐな条件の)ベアリングコイルの長手方向軸線に対する巻線の(軸線方向の)傾きに関して、可能な限り低い製造公差を有している。傾きは、好ましくは、10°未満であり、とりわけ好ましくは、5°未満である。したがって、スリーブの内側表面、または、ベアリングコイルの巻線の内側表面は、好ましくは、円錐形状の部分的表面(傾き)の代わりに、シリンダー形状の部分的表面を形成している。長手方向軸線に対する巻線の傾きは、利用可能なベアリング表面の低減、および、ドライブシャフトのより大きい圧力荷重につながる。フラットテープの外縁部は、好ましくは、可能な限り丸くされており、ドライブシャフトの上の圧力ピークを可能な限り回避するようになっている。縁部の曲率半径は、好ましくは、0.04mm以上である。
【0036】
スリーブは、完全にまたは少なくとも局部的に、合金から構成され得る。また、したがって、ドライブシャフトの合金の説明は、スリーブの合金に与えられ得る。とりわけ、スリーブは、完全にまたは少なくとも局部的に、同じ材料、たとえば、ドライブシャフトと同じ合金から構成され得る。
【0037】
臨床検査において、異なる脈動的荷重の下で、および、50mmを著しく下回る曲げ半径によって、ドライブシャフトおよびスリーブに関して同じ材料を使用することによる疲労テストにおいて、非常に良好な結果が実現されることができた。これは、多くの態様において驚くべきものである。たとえば、具体的には、患者安全の理由のために、ドライブシャフトと比較して相対的に硬い耐摩耗性の材料の可撓性のシャフトを設計することが推奨され、たとえば、通常は破損領域におけるシャフトのスプライシング(splicing)につながるシャフト破損のケースでは、ドライブシャフトが、その後の動作において、スリーブおよびさらにカテーテルのより軟質のシースを通って擦れることを防止し、また、血管の中でオープンに回転することを防止するようになっている。そのうえ、古典的なエンジニアリングでは、摺動パートナーまたは摩擦パートナーに等しい材料の使用は、通常は抑制される。その理由は、このケースでは、いわゆるワークピースの「侵食(eating)」または腐食が起こる可能性があるからであり、それは、2つの摺動/摩擦パートナーの個々の分子が互いに接続し、次いで、他のパーツの分子の相互接続から引きはがされ得るという事実から生じている。2つのパーツのうちのどちらが摩耗するかということを予測することは非常に困難であるかまたは不可能であるという事実は、それによって、とりわけ重要であるように見られる。したがって、急速に回転する可撓性のシャフト、および、これの周りに位置付けされているベアリングコイルに関して同じ材料を使用することが、ここで提案されており、それは、当業者にとって驚くべきものである。
【0038】
本発明の第4の態様は、ドライブシャフトの近位カップリングエレメントまたはカップリングヘッドの設計に関し、それは、驚くことに、とりわけ、この態様が他の態様のうちの1つと組み合わされる場合には、カテーテルの信頼性、および、恒久的な適用に関するその適合性を同様に著しく改善することが可能である。第4の態様の基本的な思想は、ドライブシャフトのカップリングエレメント(ドライブシャフトのカップリングエレメント自身は、可能な限り剛性が高く、回転可能に、牽引可能に、および圧縮可能に固定された様式で、ドライブシャフトに接続されている)とドライブモーターのカップリングエレメント(ドライブモーターのカップリングエレメントは、これに対応しているが、回転可能に固定されている)との間の接続、しかし、ドライブシャフトのカップリングエレメントとドライブモーターのカップリングエレメントとの間の補償移動が、軸線方向に可能になっている場合には、多くの場合に、ドライブシャフトの中の軸線方向の圧縮応力および引張応力を著しく低減させることができるということにある。このために、ドライブシャフトおよびドライブモーターのカップリングエレメントが、軸線方向の摺動表面を含むことが可能であり、軸線方向の摺動表面は、互いに対応しており、典型的には、それぞれのカップリングエレメントの(局所的な)回転軸線または長手方向軸線に対して平行に走っている。したがって、これらの軸線方向の摺動表面の形状、または、それらの外側輪郭もしくは内側輪郭は、軸線方向に(したがって、回転軸線または長手方向軸線に沿って)変化しない。たとえば、ドライブシャフトのカップリングエレメントは、正方形[端部]の形状または別のプロファイルピースの形状を有することが可能であり、それは、断面積(回転軸線または長手方向軸線に対して垂直方向に定義される)または外側輪郭を有しており、それは、軸線方向に、したがって、長手方向の延在範囲または回転軸線に沿って、一定になっている。したがって、ドライブモーターのカップリングエレメントは、正方形端部またはプロファイルピースに関して対応して設計されたレシーバーとして設計され得る。
【0039】
すでに述べられているように、カテーテルは、ドライブシャフトの遠位端部において、たとえば血液を送達するためのポンプローターを含むことが可能であり、それは、ドライブシャフトに固定して接続されている。ポンプローターのブレーディングの構成、設計、およびピッチ角度に応じて、ポンプローターは、たとえば、血液の近位送達(近位送達方向、すなわち、カテーテルの近位端部の方向)または遠位送達(遠位送達方向、すなわち、カテーテルの遠位端部の方向)のために構成され得る。本発明の第5の態様は、ポンプローターの軸線方向の装着に関し、それを用いて、カテーテルのスラストベアリングは、ポンプローターの送達方向にマッチさせられており、軸線方向のベアリング力が、軸線方向の引張(引く)力として(および、より少ない程度に、または、まったく軸線方向の圧縮力としてではなく)、主にまたは独占的にドライブシャフトに作用するようになっている。とりわけ高速でのドライブシャフトの荷重は、これによって驚くほど著しく低減され得る。そのうえ、驚くことには、ポンプ動作に起因する血液に対する損傷は、血液ポンプのそのような設計によって低くなるということが見出された。これにより、近位送達方向のケースでは、ポンプローターの近位にスラストベアリングを配置すること、および、(ポンプローターの近位送達効果によって引き起こされる)遠位に方向付けられたドライブシャフトの軸線方向の変位に対抗するように設計されることを予想する。スラストベアリングは、遠位送達方向のケースでは、ポンプローターの遠位に配置されており、近位に方向付けられたドライブシャフトの軸線方向の変位に対抗するように設計されている。
【0040】
スラストベアリングは、たとえば、第1のスラストベアリングエレメントおよび第2のスラストベアリングエレメントを含むことが可能であり、第1のスラストベアリングエレメントは、回転可能に固定された様式で、ドライブシャフトに接続されており、第2のスラストベアリングエレメントは、スリーブまたはシースに固定して接続されている。第1のスラストベアリングエレメントおよび第2のスラストベアリングエレメントは、摺動表面(それは、また、当接表面または端部面として示され得る)を含み、摺動表面は、互いに面しており、好ましくは、環状になっており、摺動表面は、相互接触しているケースでは、少なくとも1つの方向へのドライブシャフトの軸線方向の変位を阻止する。したがって、述べられている摺動表面は、半径方向に互いに重なり合っている。第1のスラストベアリングエレメントは、ドライブシャフトの半径方向への拡大として設計され得るが、たとえばクリンピングによってドライブシャフトの上に締結されるリングとしても設計され得る。第2のスラストベアリングエレメントに関して、それは、同時に、半径方向のベアリングエレメントのケースであることが可能であり、たとえば、ドライブシャフトに面する摺動表面は、好ましくは、円筒形状の様式で設計されており、ドライブシャフトの回転軸線に対して同軸に配置されている。
【0041】
好ましくは、述べられている摺動表面または当接表面のうちの少なくとも1つ、好ましくは、少なくともスラストベアリングの第1のベアリングエレメントの摺動表面は、プロファイリングを有しており、(流体)潤滑剤との相互作用を伴う2つの摺動表面が、流体力学的なプレーンベアリングを形成するようになっている。さらに下記に説明される潤滑剤が、好ましくは、潤滑剤として適用される。プロファイリングは、2つの摺動表面の間に潤滑剤の船首波または圧力波を作り出す機能を有しており、これらの波は、回転動作のときにドライブシャフトの周りに走る。驚くことには、摺動表面のこの設計は、この領域における摩耗の上昇を、50%以上も低減させることができた。
【0042】
たとえば、それぞれの摺動表面のプロファイリングは、好ましくは、6個から24個の突起部および/または凹部を含むことが可能であり、突起部および/または凹部は、好ましくは、それぞれのケースにおいて、約0.03mmから約0.1mmの高さまたは深さを有することが可能である。典型的に、突起部および/または凹部は、それぞれの摺動表面の周囲方向または円周方向に沿って均一に分配される様式で、この摺動表面にわたって配置され得る。突起部同士は、同じであることが可能であり、同様に、凹部同士は、同じであることが可能である。突起部は、凹部に横方向に隣接することが可能であり、その逆もまた同様である。とりわけ、プロファイリングは、(周囲方向に沿って)交互に入れ替わる一連の突起部および/または凹部として設計され得る。たとえば、突起部および/または凹部は、リブ部および溝部としてそれぞれ設計可能で、リブ部および溝部は、典型的に、ドライブシャフトに面する摺動表面の内側縁部から出発して、ドライブシャフトから離れる摺動表面の外側縁部の方向に延在している。典型的に、溝部またはリブ部は、厳密に内側縁部から正確に外側縁部まで走っており、したがって、それぞれの摺動表面の半径方向に測定される幅に対応する長さを有している。
【0043】
リブ部または溝部は、典型的には、約0.08mmから約0.5mmの範囲にある幅(周囲方向に測定される)を有している。リブ部または溝部の幅は、一定であることが可能であり、または、半径方向に変化することが可能である。典型的に、プロファイリングは、摺動表面の周囲方向に沿って、交互に入れ替わる凹部または溝部、および突起部またはリブ部を含む。次いで、溝部が一定の幅を有する場合には、リブ部が、典型的に、半径方向に外向きに幅を広げられている。そのような実施形態は、多くの場合、とりわけ、フライス加工によって簡単に製造され得る。他方では、リブ部が一定の幅を有する場合には、溝部が、典型的に、半径方向の外向きに幅を広げられている。しかし、リブ部および溝部が半径方向に外向きに幅を広げられることも可能である。最後の実施形態は、レーザー切断によって、とりわけ簡単に製造され得る。また、溝部またはリブ部は、局部的にらせん状に設計可能で、したがって、摺動表面の内側縁部から外側縁部へアーチ形の経路(たとえば、円形経路)の上を延在する。
【0044】
カテーテルは、ドライブシャフトの半径方向のおよび/または軸線方向の装着のために、上述のベアリングエレメント、および、さらなるベアリングエレメントを含むことが可能である。酸化ジルコニウム(ZrO;二酸化ジルコニウム、ジルコニアとも呼ばれる)、とりわけ、イットリウムによって安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(AlO、典型的にAl)、セラミック、および、第1の態様の文脈において説明されている合金が、それぞれのケースにおいて、たとえば、ベアリングエレメントのための材料として考慮されている。
【0045】
本発明の第6の態様によれば、キャビティー、またはドライブシャフトとスリーブとの間の中間ギャップは、潤滑剤で充填されており、潤滑剤は、生体適合性であり、好ましくは、生理学的でもある。この潤滑剤に関して、それは、たとえば、蒸留水、または、水溶液、たとえば食塩溶液および/もしくはグルコース溶液のケースであることが可能である。溶液は、生理学的である共通の塩の濃度を有することが可能であり、つまり、それは、0.9%である。しかし、等張食塩溶液、または、いわゆるリンガー溶液を予想することも可能である。一方では、身体の中へ潤滑剤が出ていくことは是が非でも回避されるという必要はないので、潤滑剤は生体適合性であるという事実に起因して、カテーテルの構造は簡単化され得る。ここで提案されている材料は、ドライブシャフト、スリーブ、およびベアリングエレメントに関して使用されるのではあるが、これらのコンポーネントは、これらの(比較的に腐食性の)潤滑剤によって、腐食に関して比較的に化学的に安定しており、これらの潤滑剤の適用は、恒久的な動作に関するカテーテルの信頼性および適合性を実用的に損なわないようになっている。食塩溶液の使用は、とりわけ有利である。その理由は、そのような溶液は、概して、患者によって十分に耐えられ、また、とりわけ患者の糖尿病の存在を伴っても、副作用を有さないからである。
【0046】
ここで提案されている血液ポンプ構成体は、ここで提案されているタイプのカテーテル、および、回転移動またはトルクを作り出すためのドライブモーターを含む。回転可能に固定されており好ましくは軸線方向に変位可能な接続が、ドライブモーター、または、すでに説明されているドライブモーターのカップリングエレメントと、ドライブシャフトのカップリングエレメントまたはカップリングヘッドとの間に存在している。後者に関して、これに関する説明および第4の態様の文脈における説明が、参照される。ドライブモーターは、高い回転速度、たとえば、毎分10,000回転から毎分40,000回転の間の領域にある回転速度を作り出すように設計され得る。回転可能に固定された様式でドライブシャフトの遠位端部ピースに接続されている機能的なエレメントは、ポンプローターとして設計されている。カテーテルは、その遠位端部において、ポンプケーシングを含み、ポンプケーシングの中に、ポンプローターが配置されている。たとえば、ポンプケーシングが、(たとえば、カテーテルの近位(または、遠位)端部に向かって作用する(引張)力を受けながら、)膨張された(または、圧縮された)条件から圧縮された(または、膨張された)条件へ持っていかれ得るように、ポンプケーシングは設計され得る。特許文献1は、詳細に関して参照される。ポンプ構成体の使用によって、たとえば、その遠位端部が前方にあるカテーテルが、大腿動脈を通して、大動脈弓を介して、心臓の左心室の中へ押し込まれ、ポンプケーシングが左心室の中に残っているということを予想することが可能である。下流チュービングは、ポンプケーシングの近位に接続されており、次いで典型的に大動脈弁を通って走っており、下流チュービングは、たとえば、血液を導くことが可能であり、血液は、ポンプローターによって駆動され、ポンプケーシングから大動脈の中へ流れる。カテーテルの近位端部、および、とりわけドライブシャフトの近位端部、ならびに、ドライブモーターは、身体の外側に配置されている。
【0047】
これらの用途および同様の用途によって、様々な外力効果および繰り返し曲げ荷重が、ドライブシャフトに、および、場合によっては、カテーテルのベアリングエレメントまたは血液ポンプ構成体のベアリングエレメントに作用する。心室または血管、たとえば、左心室もしくは右心室または大動脈に伴う血液の脈動的圧力変化または流量変化によって、身体の位置変化または姿勢変化によって、とりわけ、穿刺場所の近位にある腹部の移動または(脚の)移動によって、外力効果および繰り返し曲げ荷重は、たとえば心臓の内側壁部によって、カテーテルの中へ伝達され可能で、心臓の内側壁部の上に、カテーテルが支えられ、または、場合によっては支持されている(たとえば、いわゆるピッグテール先端部を介して)。この荷重にかかわらず、より長い時間期間にわたって、たとえば、数時間、数日、または数週間にもわたって、たとえば、上記に説明されている血液ポンプ構成体の適用におけるものなどのような、述べられている速度範囲にあるポンプローターの高い回転速度で、提案されたカテーテルおよび提案された血液ポンプ構成体を用いて、血液が送達され得る。
【0048】
たとえば、非特許文献1から推定されることとなるように、研究室でのシャフト破損は、概して、単に、脈動的圧縮荷重および2インチより下の(50.8mm未満の)曲げ半径の下で、現実的にシミュレートされ得る。シャフトの複数の荷重の重要性は、これによって明らかにされている。ここで提案されているポンプ構成体は別として、可撓性のシャフトを備えるポンプ、および、より長い時間にわたって大動脈弓の中の脈動的荷重の下で上手く適用されてきたものを、出願人は知らない。これは、可撓性のシャフトの問題の処理に起因しており、それは、今日に至るまで、成功してはいない。そのうえ、これまで、とりわけ非特許文献1において、2層のシャフトの代わりに3層のシャフトの使用が、可撓性のシャフトの耐用年数を改善するために必須であるとして見られていた。ここで提案されているドライブシャフトは、それとは対照的に、小さい曲げ半径(50mmよりも小さい)および脈動的荷重において、2層の設計を備える従来のドライブシャフトと同等に長いかまたは従来のドライブシャフトよりもさらにかなり長い耐久性および耐荷重性を有しており、したがって、実施形態では、従来のドライブシャフトよりも著しく小さい直径を備えている。
【0049】
ドライブシャフトの外側表面は、驚くことには、比較的に高い粗度RZを有することが可能である。粗度RZは、たとえば、0.01μmから1μmの範囲、好ましくは、0.1μmから0.8μmの範囲にあることが可能である。粗度RZは、たとえば、約0.6μmであることが可能である。非常に良好な結果が、ドライブシャフトの表面の比較的に高い粗度を有する耐久性テストにおいて実現されたという事実は、静かに驚くべきものである。その理由は、とりわけ、生理学的な食塩溶液またはグルコース溶液などのような、比較的に腐食性の物質が、ここで提案されているように、潤滑剤として使用される場合には、理論的な考慮事項に起因して、通常は、摩擦に起因する摩耗を最小化するために、可能な限り滑らかな表面が好適であることとなり、それは、その潤滑性の効果に関して、産業界において一般的な潤滑剤にも近づかず、通常は古典的なエンジニアリングに適用可能である設計原理が、明らかに、これに関して直接的に与えられることができないようになっているからである。
【0050】
すでに説明されているように、ここで提案されているタイプの可撓性のカテーテルは、ドライブシャフトと、ドライブシャフトを取り囲むスリーブと、ドライブシャフトおよびスリーブを取り囲むシースとを含み、ドライブシャフト、スリーブ、およびシースは、柔軟であり、ドライブシャフトは、ドライブシャフトの近位端部において、ドライブシャフトをドライブモーターに接続するためのカップリングエレメントを含む。
【0051】
そのうえ、ドライブシャフトは、1mm未満の外径を含むことが可能である。ドライブシャフトおよび/またはスリーブは、少なくとも局部的に、好ましくは、1800N/mmから2400N/mmの間の引張強度、好ましくは、2034N/mmから2241N/mmの間の引張強度を有する材料から構成されている。ドライブシャフトおよび/またはスリーブは、少なくとも局部的に、非金属材料または金属材料から構成され得る。金属材料のケースでは、それは、これにより、好ましくは、上記においてすでにさらに説明されているような合金のケースであり、それは、したがって、それぞれのケースにおいて少なくとも10重量%のクロム、ニッケル、およびコバルトを含有する。この合金は、すでに上記に説明されている特徴を有することが可能である。ドライブシャフトおよびスリーブは、完全にまたは少なくとも局部的に、同じ材料から構成され得る。そのうえ、上記においてすでにさらに説明されてきたように、ドライブシャフトの表面は、0.01μmから1μmの間の粗度、好ましくは、0.1μmから0.8μmの間の粗度を有することが可能である。当然のことながら、カテーテルは、特徴および特徴組み合わせのすべてを有することが可能であり、それは、以前に説明されてきており、また、以降に説明されている。
【0052】
本発明の述べられている態様は、ここで提案されているタイプのカテーテルおよびここで提案されているタイプの血液ポンプ構成体の特別な実施形態の例によって、より詳細に以降で説明されており、それは、図1から図16に概略的に表されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ここで提案されているタイプのカテーテルを側面図で示す図である。
図2】埋め込まれた条件における、図1に示されているカテーテルを備える血液ポンプ構成体を示す図である。
図3図1のカテーテルのドライブシャフトのパーツの軸線方向のセクションを側面図で示す図である。
図4図3に表されているドライブシャフトを通る断面を示す図であり、AAにおいて特徴付けされた場所における図である。
図5】強化材料で補強されたドライブシャフトの遠位端部ピースを側面図で示す図である。
図6図5に示されている端部ピースを通る縦断面であり、図5のAAにおいて特徴付けされた場所における図である。
図7図1に示されているカテーテルのスリーブを側面図で示す図である。
図8図7に示されているスリーブの部分的領域を通る断面であり、前記部分的領域は、図7においてAで特徴付けされている図である。
図9図1に示されているカテーテルを通る縦断面であり、図1においてYで特徴付けされている軸線方向の部分的セクションの中の図である。
図10図5および図6に表されている遠位端部ピースの図であり、ポンプローターがこれの上に回転可能に固定された様式で締結されていることを示す図である。
図11図1に示されているカテーテルを通る縦断面であり、図1においてZで特徴付けされている軸線方向の部分的セクションの中の図である。
図12図1に示されているカテーテルのカップリングモジュールを通る縦断面である。
図13図9に示されているスラストベアリングのベアリングエレメントの実施形態の例を斜視図で示す図である。
図14図13に示されているベアリングエレメントのさらなる実施形態の例を同様に斜視図で示す図である。
図15】材料35NLT(登録商標)に関する加工硬化度の異なる値に関して、降伏点、引張強度、および破断点伸びの測定値を示す図である。
図16】材料35NLT(登録商標)に関する加工硬化度の関数として、図15において特定されている引張強度および破断点伸びの測定値の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
互いに対応する反復する1つまたは複数の特徴は、図において同じ参照番号によって特徴付けされている。
【0055】
ここで提案されるタイプの可撓性のカテーテル1の特別な実施形態が、図1に概略的に表されている。カテーテル1は、柔軟なドライブシャフト2を含み、この図では、柔軟なドライブシャフト2の近位端部ピース3が見られることとなり、前記端部ピースは、近位カップリングモジュール4から突き出ており(片持ち梁)、その近位端部において、ドライブシャフト2が、ドライブモーターへのドライブシャフト2の接続のためのカップリングエレメント5を含む(図2を参照)。そのうえ、カテーテル1は、柔軟なスリーブ6(ここでは図示されていないが、図7から図9を参照)を含み、柔軟なスリーブ6は、ドライブシャフト2を取り囲み、それに半径方向に装着しており、柔軟なシース7が、ドライブシャフト1およびスリーブ6を取り囲んでいる。したがって、カップリングモジュール4およびドライブシャフト2の近位端部ピース3が、カテーテル1の近位端部8に配置されている一方で、カテーテル1の遠位端部9において、カテーテル1は、ポンプヘッド10を含み、ポンプヘッド10は、ポンプケーシング11と、終端ハウジング13と、下流チュービング12とを備え、終端ハウジング13は、ポンプケーシング11の遠位に配置されており、ドライブシャフト2のためのものであり、下流チュービング12は、ポンプケーシング11に近位に隣接している(下流チュービング12の中を走るエレメントが、図1において点線で表されている)。いわゆるピッグテール先端部の形態のサポートエレメント14が、終端ハウジング13の上に遠位に配置されている。そのうえ、カテーテル1は、ロック15を含む。ロックの機能は、ポンプヘッド10がロック15の中へ引き込まれるときに、ポンプヘッド10を半径方向に圧縮することである。この圧縮された条件のポンプヘッド10は、たとえば、その後に、導入ロック(図には表されていない)を通して導かれ、これを通して埋め込まれ得る。導入ロックは、たとえば、患者の身体の上または中の穿刺場所に固定され得る。このように、この場所において同様にカテーテル1を支持するようになっている。特許文献1が、この文脈において参照される。
【0056】
血液ポンプ構成体16の一部としてのこのカテーテルは、埋め込まれた条件で、非常に概略的な様式で、図2に表されている。示されているのは、カテーテル1および血液ポンプ構成体16の使用または適用であり、それを用いて、カテーテル1のドライブシャフト2は、カップリングエレメント5を介して、血液ポンプ構成体1のドライブモーター18の対応するカップリングエレメント17に、回転可能に固定された様式で(しかし、軸線方向に変位可能な様式で;図12に関する説明を参照されたい)接続されている。ドライブモーター18は、毎分10,000回転から毎分40,000回転の間の領域にある高い回転速度を作り出すように設計されている。
【0057】
図10に示されているように、ポンプローター20として設計されている機能的なエレメントが、回転可能に固定された様式で、ドライブシャフト2の遠位端部ピース19に接続されている。ポンプローター20は、ポンプケーシング11の中に配置されており、ポンプケーシング11は、この実施形態の例では、それが半径方向に膨張された条件から半径方向に圧縮された条件へと変えられ得るように設計されている。たとえば、これは、ロック15または上述の導入ロックの助けによって実現可能で、それは、好ましくは、ポンプケーシング11が、カテーテルの近位端部8に向けて作用する(引張)力を受けながら、それぞれのロックの中へ少なくとも部分的に引き込まれ、それによって、長手方向に対して横断方向に走る半径方向に沿って圧縮されることによって実現され得る。したがって、ポンプケーシング11は、逆の力によって、圧縮された条件から膨張された条件へと変えられ得る。また、特許文献1が、ここで参照される。
【0058】
図2に表されているポンプ構成体2の適用によって、その遠位端部9が前方にあるカテーテル1が、穿刺場所21を通して、患者の身体の中へ、その大腿動脈22の中に挿入されており、また、これに沿って、大動脈弓23を介して、心臓25の左心室24の中へ押し込まれている。したがって、ポンプケーシング11は、左心室24の中に位置決めされており、それがサポートエレメント14によって左心室24の内側壁部26に支持されるようになっており、下流チュービング12は、大動脈弁27を通って大動脈28の中へ走っている。したがって、ポンプローター20によって駆動され、ポンプケーシングから流出する血液が、下流チュービング12を通して大動脈28の中へ導かれる。カテーテル1の近位端部8、ドライブシャフト2の近位端部ピース3、およびドライブモーター18は、身体の外側に配置されている。
【0059】
この実施形態の例では、カテーテルの(軸線方向の)全長およびドライブシャフト2の(軸線方向の)全長は、それぞれのケースにおいて、約150cmであり(約140cmの埋め込み可能な長さに対応する)、カテーテルの遠位端部9の(軸線方向の)全長(ポンプヘッド12およびサポートエレメント14を含む)は、約13.5cmであり、この適用を可能にするようになっている。したがって、カテーテル1の可撓性または柔軟性、とりわけ、ドライブシャフト2、スリーブ6、およびシース7の可撓性または柔軟性は、かなり大きく、カテーテル1が、上記に説明されてきたように、埋め込まれおよび動作させられ得るようになっている。このために、これらのコンポーネントは、少なくともカテーテルの遠位端部9の中で、弾性的に180°湾曲させられることができなければならず、それによって、図2に示されているように、塑性変形なしに、典型的に約30mmの大動脈弓23の曲率半径R、とりわけドライブシャフト2の曲率半径Rが起こる。
【0060】
図4および図6に示されているように、ドライブシャフト2は、中空のシャフトとして設計されており、ドライブシャフト2の中を軸線方向に延在するキャビティー29を含み、このドライブシャフト2の高い柔軟性を実現するようになっている。キャビティー29は、ドライブシャフト2の全長に沿って延在している。しかし、このキャビティー29は、少なくともドライブシャフトのおおよそ4.5cm長さの遠位端部ピース19の中で、強化材料30、いわゆるコアで、完全に充填されており(図6図9、および図10、ならびに、さらに下記の関連の説明を参照)、ここで、ドライブシャフト2の、または、ドライブシャフトの遠位端部ピース19の、十分な剛性および振動安定性を実現するようになっている。
【0061】
ドライブシャフト2は、多数の同軸の巻線31、32を含み、巻線31、32は、ドライブシャフト2のキャビティー29の周りにらせん状に走っており、ねじり応力および曲げ応力を軸線方向の引張応力および圧縮応力へ変換するようになっている。巻線31、32は、ドライブシャフト2の2つの同軸の層33、34(つまり、層)の中に配置されており、巻線31は、内側層33の中で共通半径方向に(同じ巻線半径を備える)配置されており、巻線32は、外側層34の中で共通半径方向に配置されている。内側層33の巻線31は、外側層34の巻線と比較して反対の巻線方向を有しており、引張応力および圧縮応力が、層同士の間で相殺され得るようになっている。示されている例では、ドライブシャフトは、内側層33の中において、4つのワイヤー35を有しており、4つのワイヤー35は、キャビティー29の周りに、同軸におよび共通半径方向に巻かれており、また、ドライブシャフトは、外側層34の中において、5つのワイヤーを有しており、5つのワイヤーは、キャビティーの周りに、同軸におよび共通半径方向に巻かれており、内側層の軸線方向に隣接する巻線31は、相互に接触しているが、しかし、外側層の軸線方向に隣接する巻線(それぞれのケースにおいて、5つのワイヤーの巻線パケット)32は、相互に接触しておらず、(それぞれのケースにおいて、湾曲がないドライブシャフトのアライメントを前提として、)約0.03mmの軸線方向の距離を有している。本例のドライブシャフトの外径dは、約0.88mmであり、内径dは、約0.28mmである。ワイヤーは、約0.15mmの直径を有する円形に丸い断面を有している。本例では、外側層34の巻線36の周囲方向は、血液の(近位)送達のためのドライブシャフト2の指定された回転方向と反対である。
【0062】
ここで、この回転方向は、時計回りの方向(ドライブシャフトの近位端部から遠位端部を見る方向に関して定義される)に対応している。このケースでは、伝達されることとなるトルクは、外側層が収縮および短縮しようとすることにつながる。内側層33は、その反対の巻線方向に起因して反対の傾向を有しているので、これらの傾向は、有利に互いに打ち消し合うことが多い。基本的に、この相互補償は、逆のケース、具体的には、外側層の巻線方向が回転方向に対応し、内側層の巻線方向がドライブシャフトの回転方向に対して反対であるときにも、実現され得る。
【0063】
ドライブシャフト2のワイヤー35、36は、完全に合金から構成されており、その合金は、合金組成として、約35重量%のニッケル、約35重量%のコバルト、約20重量%のクロム、および約10重量%のモリブデンを含有する。また、合金のこれらの合金組成は、それぞれのケースにおいて、最大3重量%まで、より大きいもしくは小さいことが可能であり、または、それぞれのケースにおいて、最大2重量%まで、より大きいもしくは小さいことが可能である。合金に関して、この例では、それは、とりわけ35NLT(登録商標)のケースであるが、それは、MP35N(登録商標)のケースであることが同様に容易である可能性がある。したがって、ワイヤーの中の鉄の重量組成は、1重量%未満であり、チタンの重量組成は、0.1重量%未満である。合金およびドライブシャフトの巻線31、32は、高い冷間成形および加工硬化の適用の最中に、製造または形成される。この例では、材料番号DIN1.4310(X10CrNi18-8)による錆びないオーステナイト鋼が、強化材料30として、ドライブシャフト2を補強するために選択される。また、代替的に、この文脈においてさらに上記に特定されている要求を満たす任意の他の材料が、強化する材料として選択され得る。
【0064】
スリーブ6が、図7および図8に表されており、それは、示されている例では、多数の巻線37を備えるベアリングコイルとして設計されており、ベアリングコイルの巻線37は、らせん様式で軸線方向にドライブシャフト2の周りに走っている。本例では、ベアリングコイルは、巻きつけられたフラットテープ38によって与えられている。フラットテープ38は、幅B(軸線方向に測定される)を有しており、幅Bは、約6倍だけ、厚さD(半径方向に測定される)よりも大きい。本例では、巻線37の幅Bが0.6mmであり、巻線37の厚さDが0.1mmである。巻線37は、そのうえ、(ベアリングコイルの湾曲のない真っ直ぐな条件で、)ベアリングコイルの長手方向軸線Lに対して、可能であれば5°未満だけ、可能な限り小さく角度付けされ、つまり、傾けられており、巻線37によって形成されているスリーブ6の内側表面39が、可能な限り円筒形状となるように、または、可能な限り円筒形状の部分的表面を形成するようになっている。そのうえ、フラットテープの外縁部54は、好ましくは、可能な限り丸くされており、約0.04mmの曲率半径rを有している。縁部54の曲率半径rは、好ましくは、0.04mmを超えている。そのうえ、スリーブ6の内径Dは約1mmであり、スリーブの外径Dは、約1.2mmであり、約0.7の勾配/ピッチを有している。この例では、スリーブ6またはフラットテープ38は、ドライブシャフト2のワイヤー35、36と同じ合金から構成されており、したがって、ここでは、35NLT(登録商標)から構成されているが、また、これに関して述べられている材料のうちの別の1つからも製造され得る。
【0065】
また、ドライブシャフト2およびスリーブ6は、ここで述べられている合金以外の材料から構成され得る。ドライブシャフト2は、好ましくは、スリーブ6と同じ材料から製造されている。そのうえ、ドライブシャフト2の表面は、約0.6の粗度RZを有することが可能であり、そのような手段によって、驚くことには、とりわけ良好な耐摩耗性が実現される。驚くことには、良好な摩耗特性、および、したがって、高い動作信頼性が、実装するのに極めて簡単なこれらの措置によって実現され得る。
【0066】
図1においてYで示されている、カテーテル1の軸線方向のセクションを通る縦断面が、図9に概略的に表されている。このセクションにおいて、カテーテル1は、ベアリングエレメント40、41、42を含み、ベアリングエレメント40、41、42は、ドライブシャフト2の半径方向のおよび軸線方向の装着のために、ポンプローター20の近位に配置されている。
【0067】
これらのベアリングエレメント40、41、42の配置および設計は、図10に示されているカテーテル1のポンプローター20にマッチさせられている。このポンプローター20は、ブレーディング43を有しており、ブレーディング43の構成、設計、およびピッチ角度は、血液を近位に(近位送達方向、すなわち、カテーテルの近位端部の方向に)送達するために構成されている。ベアリングエレメント40および41は、スラストベアリング44を形成しており、スラストベアリング44は、ポンプローター20の近位に配置されている(ベアリングエレメント41は、スラストベアリング44の第1のスラストベアリングエレメントであり、ベアリングエレメント40は、スラストベアリング44の第2のスラストベアリングエレメントである)。これらの(スラスト)ベアリングエレメント40、41の設計および配置によって、スラストベアリング44は、(近位に送達するポンプローター20の効果によって引き起こされる)遠位に方向付けされるドライブシャフト2の軸線方向の変位に対抗するように設計されている。主に作用する軸線方向のベアリング力は、血液ポンプ構成体の動作のときの引張力として、このようにドライブシャフト2に作用する。
【0068】
(第1の)ベアリングエレメント41は、好ましくは、環状の様式で設計されており、また、たとえばクリンピングによって、回転可能に固定された様式で、ドライブシャフト2に接続されている。それとは対照的に、(第2の)ベアリングエレメント40は、ベアリングエレメント42と同様に、スリーブ6およびシース7に固定して接続されている。ベアリングエレメント40、41は、環状の摺動表面45および46をそれぞれ有しており、環状の摺動表面45および46は、互いに面しており、また、相互接触している場合に、遠位方向へのドライブシャフト2の軸線方向の変位を阻止する。(第1の)ベアリングエレメント41の摺動表面46は、プロファイリングを有しており(図13および図14、ならびに、下記の関連の説明を参照)、そのような手段によって、2つの摺動表面45、46の間の安定した潤滑剤フィルムの形成が助長され、基本的に、流体力学的なスライディングベアリングとしてのスラストベアリング44の設計が可能にされる。潤滑剤フィルム、つまり、この例では流体力学的なベアリングは、さらに下記に説明される潤滑剤を用いて形成される。そのうえ、ベアリングエレメント40は、ベアリングエレメント42も同様に、それぞれのケースにおいて、ドライブシャフト2に面する摺動表面を備える半径方向のベアリングエレメントとして設計されており、円筒形状の様式で設計されており、ドライブシャフト2の回転軸線に同軸に配置されている。
【0069】
そのうえ、図9において認識されることとなるように、ドライブシャフト2は、軸線方向のセクションにおいて、強化材料30によって強化されており、軸線方向のセクションにおいて、それは、スリーブ6から遠位に出ており、つまり、ベアリングエレメント40、41、42によって装着されている。
【0070】
図1において参照番号Zによって特徴付けられている、カテーテル1の軸線方向のセクションを通る縦断面が、図11に概略的に表されており、これは、とりわけ、終端ハウジング13を含み、終端ハウジング13は、ポンプケーシング11に隣接している。終端ハウジング13は、チューブ状の様式で設計されており、ドライブシャフト2の遠位端部ピース19の半径方向の装着のために、遠位ベアリングチャネル47、および、その中に配置されているベアリングエレメント47を含む。キャビティー47は、とりわけ、十分に大きく寸法決めされており、ドライブシャフト2の軸線方向の補償移動を可能にするようになっている。
【0071】
図1に示されている近位カップリングモジュール4を通る縦断面が、図12に概略的に表されており、前記カップリングモジュール4は、ドライブシャフト2の近位端部ピース3のための近位ベアリングチャネル49を含み、ドライブシャフト2の近位端部ピース3は、ベアリングチャネル49を通って軸線方向に走っており、近位カップリングモジュール4から軸線方向に突き出ている。ドライブシャフト2の近位端部ピース3の半径方向の安定化または装着のためのベアリングエレメント50が、ベアリングチャネル49の中に配置されている。スリーブ6は、このベアリングエレメント50を通ってその近位端部まで軸線方向に延在している。この実施形態では、ベアリングエレメント50は、外側からスリーブ6を半径方向に安定化させて支持する機能を有している。代替的な実施形態では、スリーブ6は、ベアリングエレメント50を通って走っていないが、(遠位側からやってきて)ベアリングエレメント50の遠位端部において終了する。このケースでは、ベアリングエレメント50は、たとえば、スライディングベアリングまたはローラーベアリングとして設計されている。近位端部ピース3は、とりわけ、軸線方向のセクションにおいて、遠位端部ピース19と同様に、強化材料30によって補強可能で、軸線方向のセクションにおいて、ドライブシャフトは、ベアリングチャネル49から外へ出るか、または、ベアリングエレメント50によって装着される。ベアリングエレメント40、41、42、48、および50は、好ましくは、酸化ジルコニウム(好ましくはイットリウムによって安定化させた形態)、酸化アルミニウム、セラミック、または、ドライブシャフト2のワイヤー35、36と同じ材料から構成されている。
【0072】
そのうえ、カップリングハウジング4は、潤滑剤の供給および排出のためのチャネル51を含み、チャネル5は、流体リーディング(fluid-leading)様式で、ベアリングチャネル49に、および、スリーブ6とドライブシャフト2との間の中間スペースに接続されている。本発明の第6の態様によれば、ドライブシャフトとスリーブとの間の中間スペースまたは中間ギャップが、潤滑剤によって充填されており、潤滑剤は、生体適合性であり、好ましくは生理学的でもある。潤滑剤は、生体適合性であり、この例では、蒸留水のケースであるが、それは、生理学的な食塩溶液またはグルコース溶液であることも可能である。
【0073】
ドライブシャフト2のカップリングエレメント5は、可能な限り剛体に設計されており、また、回転、牽引、および圧縮に関して固定された様式で、ドライブシャフト2の近位端部ピース3に接続されている。ドライブシャフトのカップリングエレメント5、および、ドライブモーター18のカップリングエレメント17(この例では、カップリングエレメント5のためのレシーバーとして設計されている)は、軸線方向の摺動表面52および53をそれぞれ含み、摺動表面52および53は、回転可能に固定されているが軸線方向に変位可能な接続を形成するために、互いに対応している。これらの摺動表面は、それぞれのカップリングエレメント5および17の長手方向軸線に対して平行にそれぞれ走っており、それぞれのカップリングエレメント5および17の長手方向軸線に沿って、それらの形状をそれぞれ変化させていない。この例では、ドライブシャフト2のカップリングエレメント5に関して、それは、正方形端部のケースである。
【0074】
シース7は、プラスチック、たとえば、ポリウレタン、とりわけ、カルボセインまたはウレタンから、完全にまたは少なくとも局部的に構成され得る。シースは、好ましくは、金属強化を有しており、金属強化は、たとえば、ドライブシャフトに関して提案された合金、したがって、たとえば、MP35N(登録商標)から構成され得る。
【0075】
図13および図14は、それぞれのケースにおいて、図9に示されているスラストベアリング44の第1のベアリングエレメント41の実施形態の例の概略斜視図を示している。それぞれのベアリングエレメント41の摺動表面46は、プロファイリング55を含み、潤滑剤との相互作用によって、2つの摺動表面45、46が流体力学的なスライディングベアリングを形成するようになっており、そのような手段によって、摺動表面45、46の摩耗体積、または、2つのベアリングエレメント40、41の摩耗体積は、著しく低減され得る。ここで表されている実施形態では、それぞれの摺動表面46のプロファイリング55は、いくつかの突起部56および凹部57を含む。図13に表されている例では、正確に12個の突起部および12個の凹部が存在しており、図14に示されている例では、厳密に8個の突起部および8個の凹部が存在しており、突起部56および凹部57は、それぞれのケースにおいて、それぞれの摺動表面46の周囲方向または円周方向(それぞれのケースにおいて、図においてUによって特徴付けされた矢印によって示されている)に沿って、摺動表面46にわたって、均一に分配されて配置されており、リブ部および溝部の交互のシーケンスとして設計されている。
【0076】
これらのリブ部および溝部は、それぞれのケースにおいて、ドライブシャフト2に面するそれぞれの摺動表面46の内側縁部58から、ドライブシャフト2から離れているそれぞれの摺動表面46の外側縁部59まで延在している。図13に表されている例では、リブ部は、それぞれのケースにおいて、約0.06mmの高さ(これは、それぞれの横方向に隣接する溝部の深さに対応する)、および、約0.2mmの平均幅(周囲方向Uに測定される)を有している。図13に表されている例では、リブ部として設計されている突起部55は、それぞれのケースにおいて、約0.1mmの最大高さを有しており、それぞれの突起部は、リーディング表面60およびトレイリング表面61を有しており、リーディング表面60は、周囲方向Uに沿って指定された回転方向への(カテーテル1の遠位端部9から見る方向を前提として時計回りの方向への)ベアリングエレメント41の回転を前提として、トレイリング表面61に対して前進している。
【0077】
このリーディング表面60は、ベアリングエレメント41の長手方向軸線に対して傾斜または斜角を付けられており、突起部56が、上向きに(すなわち、第2のベアリングエレメント40の反対側の摺動表面45の方向に、したがって、本例では遠位方向に)低減し、またはテーパーを付けられるようになっている。したがって、基本的に、ベアリングエレメント41のプロファイリングの任意の他の実施形態の例では、より均一な潤滑剤の船首波の形成が実現可能で、これによって、より安定した潤滑剤フィルムが、そのような傾斜を付けられた、つまり、斜角を付けられたリーディング表面60によって、形成され得る。そのそれぞれの上側側部62の上において、突起部56のそれぞれは、約0.3mmの平均幅(周囲方向Uに測定される)を有しており、突起部56の幅は、半径方向に増加している。この例では、溝部57の平均幅(周囲方向Uに測定される)は、約0.1mmであり、溝部の幅も、半径方向に外向きに増加している。図13および図14に示されている実施形態は、たとえば(カッティング)レーザーによって製造され得る。
【0078】
製造業者Fort Wayne Metalsの詳細に基づく、材料特性の降伏点、引張強度、破断点伸び、および冷間加工硬化度の間の依存性は、図16および図17において、材料35NLTの例を用いて表されている。この例によって、材料の異なる熱処理条件および加工硬化度が、一般的に、非常に異なる材料特性につながり得るということが示されている。
【0079】
たとえば、図1から図15に示されている実施形態の例のドライブシャフト2および/またはスリーブ6が35NLTから構成される場合には、この材料の加工硬化度は、好ましくは、約35%から70%にあり、とりわけ好ましくは、50%から60%にあり、ここで、約2000MPaから2200MPaの、たとえば2068MPaの引張強度が実現されるようになっており、3.5%の破断点伸びが基準を下回ることにはならない。
【符号の説明】
【0080】
1 カテーテル、 2 ドライブシャフト、 3 ドライブシャフトの近位端部ピース、 4 カップリングモジュール、 5 ドライブシャフトのカップリングエレメント、 6 スリーブ、 7 シース、 8 カテーテルの近位端部、 9 カテーテルの遠位端部、 10 ポンプヘッド、 11 ポンプケーシング、 12 下流チュービング、 13 終端ハウジング、 14 サポートエレメント、 15 ロック、 16 血液ポンプ構成体、 17 ドライブモーターのカップリングエレメント、 18 ドライブモーター、 19 ドライブシャフトの遠位端部ピース、 20 ポンプローター、 21 穿刺場所、 22 大腿動脈、 23 大動脈弓、 24 左心室、 25 心臓、 26 内側壁部、 27 大動脈弁、 28 大動脈、 29 キャビティー、 30 強化材料、 31 ドライブシャフトの巻線、 32 ドライブシャフトの巻線、 33 ドライブシャフトの同軸の層、 34 ドライブシャフトの同軸の層、 35 ドライブシャフトのワイヤー、 36 ドライブシャフトのワイヤー、 37 スリーブの巻線、 38 フラットテープ、 39 スリーブの内側表面、 40 ベアリングエレメント、 41 ベアリングエレメント、 42 ベアリングエレメント、 43 ブレーディング、 44 スラストベアリング、 45 摺動表面、 46 摺動表面、 47 終端ハウジングのベアリングチャネル、 48 ベアリングエレメント、 49 カップリングモジュールのベアリングチャネル、 50 ベアリングエレメント、 51 潤滑剤のためのチャネル、 52 摺動表面、 53 摺動表面、 54 縁部、 55 プロファイリング、 56 突起部、 57 凹部、 58 内側縁部、 59 外側縁部、 60 リーディング表面、 61 トレイリング表面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16