(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスク及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240305BHJP
G03F 1/26 20120101ALI20240305BHJP
G03F 1/54 20120101ALI20240305BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20240305BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/26
G03F1/54
G03F1/84
(21)【出願番号】P 2022180829
(22)【出願日】2022-11-11
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0131243
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-デ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チョル-ギュ
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-130293(JP,A)
【文献】特開2022-115074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板上に形成された反射膜、前記反射膜上に形成されたキャッピング膜、
及び前記キャッピング膜上に形成された位相反転膜を含み、
前記位相反転膜は、
ルテニウム(Ru)を含まず、
前記キャッピング膜上に形成され
た第1層
であって、
20~50at%のニオビウム(Nb)と、10~40at%のクロム(Cr)と、10~60at%の窒素(N)と、酸素(O)及び炭素(C)の少なくとも一つと、を含み、
前記第1層は、30~60nmの厚さを有し、前記第1層は、前記位相反転膜の全厚さの80%以上の厚さであり、
前記第1層は、13.5nmの波長を有する露光光に対して、0.925~0.935の屈折率(n)を有し、0.015~0.025の消滅係数(k)を有する、第1層、ならびに
前記第1層上に形成され
た第2層
であって、
タンタル(Ta)及びシリコン(Si)のうち一つ以上を含み、前記第2層におけるタンタル(Ta)の量は50at%以上である、第2層、
を含
み、
前記位相反転膜は、前記キャッピング膜の直上に形成される、極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項2】
前記第1層は、タンタル(Ta)及びシリコン(Si)のうち一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項3】
前記第2層は、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)のうち一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項4】
前記第2層は、ボロン(B)をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項5】
前記第2層のボロン(B)含有量は、5~20at%であることを特徴とする、請求項
4に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項6】
前記第2層は、2~10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項7】
前記第2層は、193nm波長の検査光に対する表面反射率が40%以下であることを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項8】
前記第2層は、13.5nm波長の露光光に対して0.940~0.960の屈折率(n)及び0.025~0.035の消滅係数(k)を有することを特徴とする、請求項
1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項9】
前記位相反転膜は13.5nm波長の露光光に対して前記反射膜に対する相対反射率が6~15%であることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項10】
請求項1の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクを用いて製作されたフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクマスク(Phase shift Blankmask)及びフォトマスク(Photomask)に関し、ウエハープリンティング(Wafer Printing)時に、優れた解像度(Resolution)の具現のためにEUV露光光に対して位相を反転させる位相反転膜を備えた極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスク及びこれを用いて製造されるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造のためのリソグラフィ技術は、ArF、ArFi MP(Multiple)リソグラフィからEUVリソグラフィ技術へと発展している。EUVリソグラフィに用いられるブランクマスクは、一般に、基板上にEUV光を反射する反射膜、及びEUV光を吸収する吸収膜の2種の薄膜を含んでなる。
【0003】
最近では、上記のような吸収膜を備えたバイナリ形態のブランクマスクに比べてより高い解像度(Resolution)を具現できる位相反転ブランクマスクの開発が試みられている。位相反転ブランクマスクはバイナリブランクマスクに比べて高いNILS(Normalized Image Log Slop)を有し、これにより、ウエハープリンティング時にショット雑音効果(Shot Noise Effect)による確率的欠陥(Stochastic Defect)を減らすことができる。また、位相反転ブランクマスクは、低いDtC(Dose to Clear)具現が可能であり、半導体生産性を高めることができる。
【0004】
図1は、極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクの基本構造を示す図である。極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクは、基板102、基板102上に形成された反射膜104、反射膜104上に形成されたキャッピング膜105、キャッピング膜105上に形成された位相反転膜108、及び位相反転膜108上に形成されたレジスト膜110を含む。
【0005】
上記のようなEUVリソグラフィ用位相反転ブランクマスクにおいて、位相反転膜108は、フォトマスク製作が容易であるとともにウエハープリンティング時に性能(Performance)に優れた材料を用いて製作されることが好ましい。このような点を考慮した位相反転膜108の材質としてルテニウム(Ru)が研究されているが、下記のような問題点のため、生産段階に至っておらずにいる。
【0006】
第一に、ルテニウム(Ru)は、エッチング速度が遅いため、位相反転膜108のエッチング時に垂直パターンプロファイル(Vertical Pattern Profile)が具現し難い。
【0007】
第二に、位相反転膜108の下部のキャッピング膜105はルテニウム(Ru)で形成されるのが一般であり、これと同一に位相反転膜108がルテニウム(Ru)を含む場合に、キャッピング膜105に対するエッチング選択比を確保し難い。このため、位相反転膜108とキャッピング膜105との間にはエッチング阻止膜がさらに必要であり、これは、薄膜設計の複雑性の増加、エッチング阻止膜形成工程の追加、及び追加薄膜に対する洗浄と欠陥制御の必要といった問題につながる。ブランクマスクを用いて製作されたフォトマスクに対しても洗浄などのような追加工程が要求される。このような問題は、結局として収率(Yield)を低下させる要因となる。
【0008】
第三に、ルテニウム(Ru)は、193nm波長のDUV検査光に対して表面反射率が高いため、DUV検査光を用いた検査時に検査感度が低いという問題点がある。このような問題点を解決するために、ルテニウム(Ru)に酸素(O)を追加する方案を考慮することができる。ところが、ルテニウム(Ru)に酸素(O)が追加されると、屈折率(n)が高くなる問題点が発生する。しかも、酸素(O)は、ルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング膜105を酸化させ、反射膜104とキャッピング膜105の積層構造の反射率を減少させる。
【0009】
第四に、ルテニウム(Ru)は、電子ビームリペア(e-beam Repair)時にXeF2に対する耐性によってリペア速度が遅く、このため、リペア直後にパターンプロファイルが悪いという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、位相反転膜に対して要求される特性を満たしながらも、既存に位相反転膜として用いられた物質、特に、ルテニウム(Ru)によって発生する問題点を解決できるEUV用ブランクマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るEUVリソグラフィ用ブランクマスクは、基板、前記基板上に形成された反射膜、前記反射膜上に形成されたキャッピング膜、前記キャッピング膜上に形成された位相反転膜を含む。前記位相反転膜は、前記キャッピング膜上に形成され、ニオビウム(Nb)を含む第1層、及び前記第1層上に形成され、タンタル(Ta)及びシリコン(Si)のうち一つ以上を含む第2層を含む。
【0012】
前記第1層のニオビウム(Nb)含有量は、20~50at%である。
【0013】
前記第1層は、タンタル(Ta)及びシリコン(Si)のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0014】
前記第1層は、クロム(Cr)をさらに含むことができる。
【0015】
前記第1層のクロム(Cr)含有量は、10~40at%である。
【0016】
前記第1層は、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0017】
前記第1層の窒素(N)含有量は、10~60at%である。
【0018】
前記第1層は、30~60nmの厚さを有する。
【0019】
前記第1層は、前記位相反転膜の全厚さの80%以上の厚さを有する。
【0020】
前記第1層は、13.5nm波長の露光光に対して0.925~0.935の屈折率(n)及び0.015~0.025の消滅係数(k)を有する。
【0021】
前記第2層のタンタル(Ta)含有量は50at%以上であることが好ましい。
【0022】
前記第2層は、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0023】
前記第2層は、ボロン(B)をさらに含むことができる。
【0024】
前記第2層のボロン(B)含有量は、5~20at%である。
【0025】
前記第2層は、2~10nmの厚さを有する。
【0026】
前記第2層は、193nm波長の検査光に対する表面反射率が40%以下であることが好ましい。
【0027】
前記第2層は、13.5nm波長の露光光に対して0.940~0.960の屈折率(n)及び0.025~0.035の消滅係数(k)を有する。
【0028】
前記位相反転膜は、13.5nm波長の露光光に対して前記反射膜に対する相対反射率が6~15%である。
【0029】
本発明の他の側面によれば、上記のような構成の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクを用いて製作されたフォトマスクが提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、EUV用位相反転ブランクマスクに対して要求される特性、すなわち、ウエハープリンティング時に、優れた解像度(Resolution)及びNILS(Normalized Image Log Slop)具現が可能であり、低いDtC(Dose to Clear)の具現が可能である。
【0031】
また、本発明では、位相反転膜がルテニウム(Ru)を含まない物質で構成されるので、ルテニウム(Ru)を使用する場合に発生する上述のような問題点がない。これにより、フォトマスク製造工程が相対的に簡単であり、位相反転膜の下部にエッチング阻止膜がない構造により、ブランクマスクの他、フォトマスクの製造時にも収率(Yield)が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】従来の極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクの基本構造を示す図である。
【
図2】本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【
図3】
図2の位相反転膜の具体的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、図面を参照して本発明をより具体的に記述する。
【0034】
図2は、本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクを示す図であり、
図3は、
図2の位相反転膜の具体的な構成を示す図である。
【0035】
本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクは、基板202、基板202上に形成された反射膜204、反射膜204上に形成されたキャッピング膜205、キャッピング膜205上に形成された位相反転膜208、位相反転膜208上に形成されたレジスト膜210、及び基板202の後面に形成された導電膜201を備える。
【0036】
基板202は、EUV露光光を用いる反射型ブランクマスク用ガラス基板として適合するように、露光時の熱によるパターンの変形及びストレスを防止するために0±1.0×10-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有し、好ましくは、0±0.3×10-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するLTEM(Low Thermal Expansion Material)基板で構成される。基板202の素材としてはSiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックなどを用いることができる。
【0037】
反射膜204は、EUV露光光を反射する機能を有し、各層の屈折率が互いに異なる多層膜構造を有する。具体的には、反射膜204は、Mo材質の層とSi材質の層を交互に40~60層積層して形成される。
【0038】
キャッピング膜205は、反射膜204の酸化膜の形成を防止することにより、反射膜204のEUV露光光に対する反射率を維持させ、位相反転膜208のパターニング進行時に反射膜204がエッチングされることを防ぐ役割を担う。一般に、キャッピング膜205は、ルテニウム(Ru)を含む材質で形成される。キャッピング膜205は、2~5nmの厚さで形成される。キャッピング膜205の厚さが2nm以下であれば、キャッピング膜205としての機能を発揮し難く、5nm以上であれば、EUV露光光に対する反射率が低下する問題がある。
【0039】
位相反転膜208は露光光の位相を反転させて反射させることにより、反射膜204によって反射される露光光を相殺干渉させる。位相反転膜208は、キャッピング膜205上に形成される第1層208a、及び第1層208a上に形成される第2層208bを備える。
【0040】
第1層208aは、ニオビウム(Nb)を含む物質で形成される。このとき、第1層208aのニオビウム(Nb)含有量は20~50at%であることが好ましい。ニオビウム(Nb)が20at%未満であれば、エッチング速度が顕著に減少して垂直パターンプロファイル(Vertical Pattern Profile)を具現し難い。しかも、屈折率(n)及び消滅係数(k)が相対的に高くなり、最終的にNILSとDtCの改善に限界があるだけでなく、反射率減少及び厚さ増加の問題点が発生する。ニオビウム(Nb)が50at%以上であれば、洗浄に用いられる化学物質(Chemical)、例えば硫酸に対する耐化学性が減少する。
【0041】
このような第1層208aは、塩素(Cl2)系ガスでエッチングされる特性を有し、特に、酸素(O2)が含まれていない条件でエッチングが可能である。これにより、第1層208aのエッチング時に、特に、オーバーエッチング(Over Etch)時に、その下部のキャッピング膜205を構成するルテニウム(Ru)へのダメージ(Damage)を減らすことができ、反射率低下のような問題点を最小化できる。したがって、エッチング阻止膜のような追加の薄膜が不要である。
【0042】
また、このような第1層208aは、酸素(O2)を含まない塩素(Cl2)系エッチングガスに対するエッチング速度が高いので、垂直パターンプロファイル(Vertical Pattern Profile)が改善される。また、電子ビームリペア時に、XeF2に対するリペアが容易であり、且つルテニウム(Ru)を含むキャッピング膜205に対する電子ビームリペア選択比に優れる。
【0043】
第1層208aは、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、クロム(Cr)のうち一つ以上をさらに含む物質で形成されてよい。好ましくは、第1層208aは、ニオビウム(Nb)とクロム(Cr)を含む物質で形成され、このとき、第1層208aのクロム(Cr)含有量は10~40at%である。クロム(Cr)の含有量が10at%以下であれば、洗浄時に用いられる化学物質、例えば、硫酸に対する耐化学性が低くなり、40at%以上であれば、エッチング速度が顕著に減少してパターンプロファイルの具現がし難いという問題点がある。
【0044】
第1層208aは、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)のうち一つ以上をさらに含むことができる。好ましくは、第1層208aは窒素(N)をさらに含む。この場合、第1層208aの窒素(N)含有量は10~60at%であることが好ましい。窒素(N)の含有量が10at%以下であれば、相対的に屈折率(n)が高くなり、NILSが向上し難い。窒素(N)の含有量が60at%以上であれば、薄膜形成のための反応が効果的になされず、スパッタリング効率が減少する。
【0045】
第1層208aは30~60nmの厚さを有し、好ましくは45~60nmの厚さを有する。
【0046】
第1層208aは、位相反転膜208の全厚さの50%以上、好ましくは80%以上の厚さを有する。これにより、第2層208bは位相反転膜208全厚さの50%以下、好ましくは20%以下の厚さを有する。
【0047】
第1層208aは、13.5nm波長の露光光に対して0.925~0.935の屈折率(n)及び0.015~0.025の消滅係数(k)を有する。屈折率(n)が0.935以上であれば、NILS及びDtSを顕著に改善させることが困難である。したがって、屈折率(n)は低いほど好ましいが、物質の特性上、0.925以下には具現し難い。消滅係数(k)が0.015以下であれば、相対反射率が高くなり、ゴースト像パターン(Ghost Image Pattern)が形成されるなどの問題が発生する。したがって、消滅係数(k)は高いほど好ましいが、物質の特性上、0.025以上には具現し難い。
【0048】
第1層208aは、パターンプロファイルを改善するために、組成が連続して変わる連続膜又は多層膜の形態で構成できる。例えば、第1層208aの深さ方向にエッチング速度を増加させるために、第1層208aの深さ方向に窒素(N)の含有量を増加させるか、或いはキャッピング膜205に隣接した第1層208aの部分で窒素(N)の含有量を増加させるかニオビウム(Nb)の含有量を増加させることができる。これにより、パターン形成時にフッティング(Footing)のような現象を減らし、垂直パターンプロファイルが形成可能である。
【0049】
第1層208aの形成には単独スパッタリング方法又はコスパッタリング(Co-sputtering)方法を適用することができる。単独スパッタリング方法の適用時に、スパッタリングターゲット(Target)はNb:Cr=30~70at%:70~30at%の組成を有することができ、好ましくは、Nb:Cr=40~60at%:60~40at%の組成を有する。コスパッタリング方法の適用時には、NbCr、Cr、Nbターゲットをそれぞれ用いてスパッタリングでき、工程時にそれぞれの電力(Power)を制御して薄膜組成を決定することができる。
【0050】
第2層208bは、タンタル(Ta)及びシリコン(Si)のうち一つ以上を含む物質で形成される。また、第2層208bは、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)のうち一つ以上をさらに含むことができる。好ましくは、第2層208bはTaONで形成される。
【0051】
第2層208bのタンタル(Ta)含有量は25at%以上であり、50at%以上であることが好ましい。タンタル(Ta)の含有量が低いと、エッチング時に第1層208aに対するエッチング選択比が確保し難い。
【0052】
第2層208bはボロン(B)をさらに含むことができる。ボロン(B)含有量の調節によって第2層208bの屈折率(n)及び消滅係数(k)を調節することができる。第2層208bのボロン(B)含有量は、5~20at%であることが好ましい。ボロン(B)の含有量が20at%以上であれば、第2層208bの化学的耐性が減少し、5at%以下であれば、薄膜のストレスが増加し、エッチング速度が低下する。
【0053】
第2層208bは、フッ素(F)系ガスにエッチングされる特性を有する。これにより、第2層208bは、下部の第1層208aに対してエッチング選択比を有する。このとき、一般に、酸素(O2)を含んでいない条件でエッチングできるが、選択的に酸素(O2)を含んでも構わない。
【0054】
第2層208bは2~10nmの厚さを有し、好ましくは5nm以下の厚さを有する。
【0055】
第2層208bは、193nm波長の検査光に対する表面反射率が40%以下、好ましくは35%以下である。これにより、DUV検査光を用いた検査時に、反射膜205及びキャッピング膜205に対する感度(Contrast)を高めることができる。
【0056】
第2層208bは、13.5nm波長の露光光に対して0.940~0.960の屈折率(n)及び0.025~0.035の消滅係数(k)を有する。屈折率(n)が0.960以上になるには第2層208bの酸素(O)含有量が増加しなければならず、薄膜の再現性及び工程安定性が低下する。また、屈折率(n)が0.940以下になるには第2層208bの酸素(O)含有量が減少しなければならず、第1層208aに対するエッチング選択比が低下する。消滅係数(k)が0.025以下又は0.035以上になるには酸素(O)の含有量が過度に増加又は減少しなければならず、上述したような問題が発生する。
【0057】
位相反転膜208は、13.5nm波長の露光光に対して、反射膜204に対する相対反射率が6~15%である。ここで、相対反射率は、反射膜204とキャッピング膜205の積層構造における反射率に対する位相反転膜208における反射率の比率を意味する。また、位相反転膜208は180~220゜、好ましくは185~220゜の位相反転量を有する。
【0058】
上記のような構成において、第1層208aは、位相反転膜208全般の位相変化量及び反射率を決定する。第2層208bは、第1層208aと異なるエッチング条件を有し、これにより、第2層208bは、位相反転膜208をパターニングする時に第1層208aのエッチングのためのハードマスクの役割を担う。また、第2層208bは低い反射率を有し、最終パターン形成後にDUV検査光を用いた検査を容易に行うことができる。
【0059】
レジスト膜210は、化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)で構成される。レジスト膜210は40~100nm、好ましくは40~80nmの厚さを有する。
【0060】
導電膜201は基板202の後面に形成される。導電膜201は低い面抵抗値を有し、静電チャック(Electronic-Chuck)と極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクとの密着性を向上させ、静電チャックとの摩擦によってパーティクルが発生することを防止する機能を果たす。導電膜201は、100Ω/□以下の面抵抗を有し、好ましくは、50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下の面抵抗を有する。導電膜201は、単一膜、連続膜、又は多層膜の形態で構成されてよい。導電膜201は、例えば、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を主成分として形成されてよい。
【0061】
上記のような構成のブランクマスクを用いてフォトマスクを製作する工程は、下記の通りである。
【0062】
まず、レジスト膜210のパターンを形成した後、レジスト膜パターンを用いて第2層208bをフッ素系ガスでエッチングする。その後、レジスト膜パターンを除去した後、第2層208bのパターンをエッチングマスク(Etch Mask)として用いて第1層208aを塩素系ガスでエッチングする。この時、第2層208bは位相反転膜208の一部であるが、エッチング工程では第1層208aに対するハードマスク膜(Hardmask)としての役割を担う。
【0063】
実施例
本実施例では、本発明に係る位相反転ブランクマスク及びフォトマスク製作の具体的な例を記述する。
【0064】
まず、LTEM基板を準備した後、Mo/Siの各層を40pairsで積層して反射膜を形成し、ルテニウム(Ru)で構成されるキャッピング膜を2.5nmの厚さに形成した。反射膜とキャッピング膜との積層構造における反射率を、EUV反射率計(EUV Reflectometer)を用いて測定した結果、13.53nm波長のEUV光に対して64.57%を示したし、FWHMは0.57nm、CWLは13.52nmを示し、反射膜とキャッピング膜として使用するのに問題がなかった。
【0065】
2層で構成された位相反転膜を形成する前に、位相反転膜の第1層と第2層をそれぞれ別に形成した後、13.53nm波長の露光光での屈折率(n)及び消滅係数(k)を測定した。
【0066】
【表1】
上記の表1のような条件で形成された位相反転膜の各層の実施例のうち一部に対して、そのエッチング特性をICP-ドライエッチャー(ICP-Dry etcher)装備を用いて評価した。その結果は、下記の表2の通りである。
【0067】
【表2】
前記のように測定された位相反転膜のn、k及びエッチング特性の結果に基づいて、キャッピング膜上に位相反転膜の第1層及び第2層を順次に形成した。この時、成膜条件は実施例3及び実施例12に従い、第1層及び第2層をそれぞれ50nm及び4nmの厚さに成膜した。このように成膜された位相反転膜の反射率を193nm波長のDUV検査光で測定した結果、33%を示し、DUV検査光を用いた検査時の反射膜とキャッピング膜との積層構造における反射率63%に比べてコントラスト(Contrast)が高いことが確認された。その後、最終的に位相反転膜の上部にレジスト膜を100nmの厚さにコートすることで位相反転ブランクマスク製造を完了した。
【0068】
上記のように製作された位相反転ブランクマスクを使用し、下記のような工程によってフォトマスクを製作した。まず、電子ビーム書込み(e-beam Writing)及び現像(Develop)工程によってレジスト膜パターンを形成した。その後、レジスト膜パターンを用いて位相反転膜の第2層をフッ素系ガスでエッチングした。次に、位相反転膜の第1層を塩素系ガスでエッチングすることで、位相反転フォトマスクの制作を完了した。その後、位相反転膜パターンの断面傾斜を測定した結果、86゜を示し、優れたパターンプロファイルの具現が可能であることを確認した。
【0069】
上記のように製作されたフォトマスクに対するウエハーシミュレーション(Wafer Simulation)を下記のように行った。シミュレーションは、17nm千鳥状(Staggered)コンタクトホールパターンを用いて実施し、その結果、位相反転膜の相対反射率は10%、位相反転量は199゜を示した。また、NILSは1.95を、DtCは114.7mJを示した。
【0070】
比較例
本比較例では、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を備えたブランクマスク製作工程及びこれを用いたフォトマスク製作工程を説明する。
【0071】
まず、上述した実施例と同一に反射膜とキャッピング膜を形成した。その後、TaBN材質の層及びTaBO材質の層で形成される2層構造のエッチング阻止膜を形成した後、エッチング阻止膜の上部にルテニウム(Ru)単独からなる位相反転膜を形成した。その後、位相反転膜の上部にTaBOからなるハードマスク膜を形成し、最後に、ハードマスク膜の上部にレジスト膜を形成することで、最終ブランクマスクを完了した。
【0072】
上記のような工程では、位相反転膜とキャッピング膜が同種物質を含むことから、エッチング阻止膜のエッチング時におけるキャッピング膜へのダメージ(Damage)を最小化するためにエッチング阻止膜を2層構造にした。すなわち、Ta系物質は酸化度が高く、またRuで構成された位相反転膜エッチング時におけるエッチング物質が塩素系ガスと酸素を含むことから、TaBN層をまず成膜し、TaBN表面の酸化膜を制御するために、TaBOで形成された層をさらに形成した。
【0073】
その後、ルテニウム(Ru)からなる位相反転膜をエッチング阻止膜上に形成し、さらに、解像度(Resolution)及びCD線形性(Linearity)の向上のためにTaBOからなるハードマスク膜を形成した。
【0074】
このような比較例による位相反転ブランクマスク構造は、上述した実施例に比べて、エッチング阻止膜とハードマスク膜がさらに含まれるため、複雑な構造となる。
【0075】
このような位相反転ブランクマスクを用いたフォトマスク製造方法は、下記の通りである。
【0076】
前記実施例と同一に、まず電子ビーム書込み後に現像工程を経てレジスト膜パターンを形成した。その後、レジスト膜パターンをエッチングマスクとして用いてTaBOのハードマスク膜パターンを形成した。このとき、エッチングガスとしてフッ素(F)系ガスを使用した。その後、レジスト膜パターンを除去した後、ハードマスク膜パターンをエッチングマスクとして用いて位相反転膜を塩素(Cl2)系ガス及び酸素(O2)ガスでエッチングした。その後、再びフッ素(F)系ガスを用いてエッチング阻止膜のうち上部のTaBO層をエッチングした。この時、ハードマスク膜は除去される。その後、再び、酸素(O2)無し塩素(Cl2)系ガスを用いてエッチング阻止膜のうち下部のTaBN層をエッチングし、最終位相反転フォトマスク製造を完了した。
【0077】
以下、上記の比較例によるブランクマスクの特性を下記のように測定した。まず、193nm波長の検査光で位相反転膜の反射率を測定した。その結果、45.2%を示し、前記実施例に比べてコントラストが減少することが分かる。この結果は、ルテニウム(Ru)単独では位相反転膜の形成が不適切であり、ルテニウム(Ru)に酸素(O)がさらに含まれる必要があることを意味する。
【0078】
その後、前記工程による位相反転膜パターンのプロファイルを測定した。その結果、パターン断面が70゜の傾斜を示し、上記の実施例に比べてプロファイルが悪いことが分かった。
【0079】
以上では、図面を参照して、本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明したが、実施例は、単に本発明を例示及び説明するための目的で用いられただけで、意味の限定、又は特許請求の範囲上に記載の本発明の範囲の制限のために用いられたものではない。したがって、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、実施例から様々な変形及び均等な他の実施例が可能である点が理解できよう。したがって、本発明の真の技術力保護範囲は、特許請求の範囲上の技術的事項によって定められるべきであろう。
【要約】 (修正有)
【課題】位相反転膜に対して要求される特性を満たしながらも、既存に位相反転膜として用いられた物質、特に、ルテニウム(Ru)によって発生する問題点を解決できるEUV用ブランクマスクを提供すること。
【解決手段】基板上に順次に形成された反射膜、キャッピング膜、及び位相反転膜を備える。位相反転膜は、ニオビウム(Nb)とクロム(Cr)を含む第1層、及びタンタル(Ta)とシリコン(Si)を含む第2層を備える。第1層のニオビウム(Nb)含有量は20~50at%であり、クロム(Cr)含有量は10~40at%である。ブランクマスクは、ウエハープリンティング時に、優れた解像度(Resolution)及びNILS(Normalized Image Log Slop)具現が可能であり、低いDtC(Dose to Clear)の具現が可能である。
【選択図】
図3