(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電気加熱式コンバータ及び電気加熱式担体
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20240305BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240305BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240305BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240305BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20240305BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240305BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/24 L
F01N3/28 311N
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01J35/50 311
B01J35/57 F
B01J35/57 P
(21)【出願番号】P 2022505050
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003787
(87)【国際公開番号】W WO2021176926
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020038179
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博紀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172258(JP,A)
【文献】特開2019-209245(JP,A)
【文献】特開2016-153622(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008664(WO,A1)
【文献】特開2019-171345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/24
F01N 3/28
B01D 53/94
B01J 35/50
B01J 35/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
金属電極と、
前記柱状ハニカム構造体の表面に設けられている導電性接続部と、
前記金属電極を前記導電性接続部へ押圧することで、前記金属電極と前記柱状ハニカム構造体とを電気的に接続するように構成された押圧部材と、
を備え、
前記導電性接続部の電気抵抗率が前記柱状ハニカム構造体の電気抵抗率より小さい電気加熱式コンバータ。
【請求項2】
前記導電性接続部の材質が、Ni、Cr、Al及びSiからなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項3】
前記導電性接続部の材質が、CrB-Si、LaB
6-Si、TaSi
2、NiCr、NiCrAlY、または、NiCrFeで構成されている請求項2に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項4】
前記導電性接続部の材質が、1.5×10
0~1.5×10
4μΩcmの電気抵抗率を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項5】
前記導電性接続部の材質として、半導体特性を示す材料の含有量が80体積%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項6】
前記半導体特性を示す材料が、Si、Ge、ZnS、ZnSe、CdS、ZnO、CdTe、GaAs、InP、GaN、GaP、SiC、SiGe、及びCuInSe
2からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項7】
前記導電性セラミックスが、珪素及び炭化珪素から選択される少なくとも一種以上を含有する請求項1~6のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項8】
前記柱状ハニカム構造体が、
前記外周壁と前記隔壁とを有する導電性セラミックス製の柱状ハニカム部と、
前記外周壁上に設けられた導電性セラミックス製の電極層と、
を備え、
前記導電性接続部が電極層上に設けられている請求項1~7のいずれか1項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項9】
前記電極層が、前記柱状ハニカム部の外周壁の表面に、前記柱状ハニカム部の中心軸を挟んで対向するように配設されている一対の電極層である請求項8に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項10】
前記導電性接続部の厚みが、0.1~500μmである請求項1~9のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項11】
前記導電性接続部が、少なくとも2つ以上に分割されている請求項1~10のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項12】
前記金属電極が、可撓性金属で構成されている請求項1~11のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項13】
前記導電性接続部と前記金属電極との間に、可撓性導電部材が設けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項14】
前記可撓性導電部材の厚みが、10~5000μmである請求項13に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項15】
前記可撓性導電部材が、メッシュ状金属、金網、金属平編み線、または、膨張化黒鉛製シートで構成されている請求項13または14に記載の電気加熱式コンバータ。
【請求項16】
前記押圧部材が、
前記金属電極が設けられた柱状ハニカム構造体を嵌合するように構成された缶体と、
前記缶体と前記金属電極が設けられた柱状ハニカム構造体との隙間に設けられた保持材と、
を有する請求項1~15のいずれか一項に記載の電気加熱式コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式コンバータ及び電気加熱式担体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排気ガス浄化性能の低下を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、例えば、導電性セラミックスからなる柱状のハニカム構造体に金属電極を接続し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、エンジン始動前に触媒の活性温度まで昇温できるようにしたものである。EHCにおいては、触媒効果を十分に得られるようにするために、ハニカム構造体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布にすることが望まれている。
【0003】
EHCに電流を流すためには、外部配線に接続された金属電極をEHCのハニカム構造体に電気的に接続させる必要がある。金属電極をEHCのハニカム構造体に接合させる方法としては、金属電極をEHCのハニカム構造体の表面に加熱等によって化学接合させる方法(特許文献1)、または、金属電極をEHCのハニカム構造体の表面に押圧等によって物理接合させる方法(特許文献2)がある。特許文献2には、表面に金属電極を設けたEHCを、マット材(保持材)を介して缶体等にキャニングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-107452号公報
【文献】特開2014-208994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の金属電極をEHCのハニカム構造体に化学接合させる方法では、EHCのハニカム構造体に触媒コートをする際、または、EHCを缶体等にキャニングする際に、金属電極が邪魔になり、作業効率が低下する。また、金属電極が化学接合されたEHCのハニカム構造体に触媒コートをするときに加わる熱、または、使用時の熱の影響により、金属電極などに熱応力が発生し、EHCのハニカム構造体への金属電極の接続安定性が低下する課題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の金属電極をEHCのハニカム構造体に物理接合させる方法は、EHCのハニカム構造体がセラミックス製である場合、EHCのハニカム構造体と金属電極との接触電気抵抗が大きいことが課題となる。EHCのハニカム構造体と金属電極との接触電気抵抗が大きいと、発熱が生じて酸化膜が生成する。当該酸化膜は、多くの場合が絶縁物である。EHCのハニカム構造体と金属電極との間にこのような絶縁物が生じると、電気的な接続性が低下し、EHCとしての機能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、EHCのハニカム構造体と金属電極との接触電気抵抗を低減し、酸化膜の生成を良好に抑制することが可能な電気加熱式コンバータ及び電気加熱式担体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって解決されるものであり、本発明は以下のように特定される。
(1)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
金属電極と、
前記柱状ハニカム構造体の表面に設けられている導電性接続部と、
前記金属電極を前記導電性接続部へ押圧することで、前記金属電極と前記柱状ハニカム構造体とを電気的に接続するように構成された押圧部材と、
を備え、
前記導電性接続部の電気抵抗率が前記柱状ハニカム構造体の電気抵抗率より小さい電気加熱式コンバータ。
(2)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するセラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の表面に設けられた導電性接続部と、
を備え、
前記導電性接続部の材質が、
1.5×100~1.5×104μΩcmの電気抵抗率を有し、かつ、
Ni、Cr、Al及びSiからなる群から選択される1種以上を含む材質である、
電気加熱式担体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、EHCのハニカム構造体と金属電極との接触電気抵抗を低減し、酸化膜の生成を良好に抑制することが可能な電気加熱式コンバータ及び電気加熱式担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における電気加熱式コンバータに関する、柱状ハニカム構造体のセルの延伸方向に垂直な断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態における電気加熱式コンバータに関する、柱状ハニカム構造体のセルの延伸方向に平行な断面模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における柱状ハニカム構造体に関する、外観模式図である。
【
図4】本発明の実施形態における柱状ハニカム構造体、導電性接続部及び金属電極に関する、外観模式図である。
【
図5】本発明の実施形態における柱状ハニカム構造体に関する、外観模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0012】
(1.電気加熱式コンバータ)
図1は、本発明の実施形態における電気加熱式コンバータ10に関する、柱状ハニカム構造体11のセル18の延伸方向に垂直な断面模式図である。
図2は、本発明の実施形態における電気加熱式コンバータ10に関する、柱状ハニカム構造体11のセル18の延伸方向に平行な断面模式図である。電気加熱式コンバータ10は、導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体11と、金属電極14a、14bと、柱状ハニカム構造体11の表面に設けられている導電性接続部15a、15bと、押圧部材23とを備えている。
【0013】
(1-1.柱状ハニカム構造体)
図3は、本発明の実施形態における柱状ハニカム構造体11に関する、外観模式図である。柱状ハニカム構造体11は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセル18を区画形成する隔壁19とを有する柱状ハニカム部17を備えている。柱状ハニカム構造体11は、
図3に示すように、柱状ハニカム部17の外周壁12上に設けられた導電性セラミックス製の電極層13a、13bを備えてもよい。
【0014】
柱状ハニカム構造体11の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、柱状ハニカム構造体11の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0015】
柱状ハニカム構造体11は、セラミックス製であり、導電性を有する。導電性の柱状ハニカム構造体11が通電してジュール熱により発熱可能である限り、当該セラミックスの電気抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmであることがより好ましく、10~100Ωcmであることが更に好ましい。本発明において、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0016】
柱状ハニカム構造体11の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ケイ酸塩ガラス、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、珪素、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材、ホウ珪酸ガラス-金属珪素複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、柱状ハニカム構造体11の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。柱状ハニカム構造体11の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、柱状ハニカム構造体11が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。
【0017】
柱状ハニカム構造体11が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、柱状ハニカム構造体11に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、柱状ハニカム構造体11に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、柱状ハニカム構造体11に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。10質量%以上であると、柱状ハニカム構造体11の強度が十分に維持される。40質量%以下であると、焼成時に形状を保持しやすくなる。
【0018】
セル18の延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカム構造体11に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、四角形が特に好ましい。
【0019】
セル18を区画形成する隔壁19の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.15~0.25mmであることがより好ましい。隔壁19の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁19の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁19の厚みは、セル18の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル18の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁19を通過する部分の長さとして定義される。
【0020】
柱状ハニカム構造体11は、セル18の流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であると柱状ハニカム構造体11を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁12部分を除く柱状ハニカム構造体11の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0021】
柱状ハニカム構造体11の外周壁12を設けることは、柱状ハニカム構造体11の構造強度を確保し、また、セル18を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁19との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁12の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁12の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0022】
隔壁19は多孔質とすることができる。隔壁19の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率が35%以上であると、焼成時の変形をより抑制しやすくなる。気孔率が60%以下であるとハニカム構造体の強度が十分に維持される。また、隔壁19は、Si含浸SiCの形態等のように緻密質であってもよい。なお、緻密質というのは気孔率が5%以下のことを指す。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0023】
柱状ハニカム構造体11の隔壁19の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μm以上であると、電気抵抗率が大きくなりすぎることが抑制される。平均細孔径が15μm以下であると、電気抵抗率が小さくなりすぎることが抑制される。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0024】
(1-2.電極層)
図1に示すように、柱状ハニカム構造体11の外周壁12の表面に、電極層13a、13bが配設されてもよい。電極層13a、13bは、柱状ハニカム構造体11の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層13a、13bであってもよい。また、電極層13a、13bは設けなくてもよい。
【0025】
電極層13a、13bの形成領域に特段の制約はないが、柱状ハニカム構造体11の均一発熱性を高めるという観点からは、各電極層13a、13bは外周壁12の外面上で外周壁12の周方向及びセルの延伸方向に帯状に延設することが好ましい。具体的には、各電極層13a、13bは、柱状ハニカム構造体11の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層13a、13bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。
【0026】
各電極層13a、13bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。各電極層13a、13bの厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。5mm以下であると、キャニング時に電極層が破損する恐れが低減される。各電極層13a、13bの厚みは、厚みを測定しようとする電極層の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、各電極層13a、13bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0027】
各電極層13a、13bの材質は、金属、導電性セラミックス、若しくは金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属、又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金、が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極層13a、13bの材質としては、上記の各種金属及び導電性セラミックスの中でも、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材との組合せとすることが、柱状ハニカム構造部と同時に焼成できるので製造工程の簡素化に資するという理由により好ましい。
【0028】
(1-3.導電性接続部)
図4は、本発明の実施形態における電気加熱式コンバータ10の柱状ハニカム構造体11、導電性接続部15a、15b及び金属電極14aの外観模式図である。導電性接続部15a、15bは、柱状ハニカム構造体11の電極層13a、13b上に設けられている。柱状ハニカム構造体11が電極層13a、13bを有さない場合、導電性接続部15a、15bは、柱状ハニカム構造体11の外周壁12の表面に設けることができる。
【0029】
導電性接続部15a、15bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率より小さい。本発明の実施形態における電気加熱式コンバータ10は、詳細は後述するが、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとが押圧部材23によって物理接合されている。すなわち、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとが、溶接、ろう付け、拡散接合などの化学的な結合によって接着されておらず、非結合状態で接触している。このような物理接合の場合、ショットキー障壁によって、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗が大きくなり、発熱が生じて酸化膜(絶縁物)が生成する問題となっていた。これに対し、本発明の実施形態によれば、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間に導電性接続部15a、15bが設けられ、導電性接続部15a、15bの電気抵抗率を、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率より小さくしている。このため、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとを物理接合した場合であっても、ショットキー障壁を抑制し、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗を低減させ、発熱を抑制させることができていると考えている。その結果、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間に酸化膜(絶縁物)が生成することを抑制し、EHCとしての機能の低下を良好に抑制することができる。なお、柱状ハニカム構造体11が電極層13a、13bを有する場合は、導電性接続部15a、15bとの接触抵抗は電極層13a、13bとの関係となるため、導電性接続部15a、15bの電気抵抗率を電極層13a、13bの電気抵抗率よりも小さくする。一方、柱状ハニカム構造体11が電極層13a、13bを有さない場合は、導電性接続部15a、15bとの接触抵抗は柱状ハニカム部17との関係となるため、導電性接続部15a、15bの電気抵抗率を柱状ハニカム部17よりも小さくする。
【0030】
導電性接続部15a、15bの材質は、Ni、Cr、Al及びSiからなる群から選択される1種以上を含むのが好ましい。このような材質で構成されていると、導電性接続部15a、15bの耐熱性が良好となり、また、導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体11に対して電気抵抗率がより小さい導電性接続部15a、15bを形成しやすくなる。導電性接続部15a、15bの材質は、更に好ましくは、CrB-Si、LaB6-Si、TaSi2、AlSi、NiCr、NiAl、NiCrAl、NiCrMo、NiCrAlY、CoCr、CoCrAl、CoNiCr、CoNiCrAlY、CuAlFe、FeCr、FeCrAl、FeCrAlY、CoCrNiW、CoCrWSi、または、NiCrFeである。更により好ましくは、CrB-Si、LaB6-Si、TaSi2、NiCr、NiCrAlY、または、NiCrFeである。また、導電性接続部15a、15bが金属製であると、柱状ハニカム構造体11及び金属電極14a、14bとの接触面積が大きくなり、より良好に柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗を低減させることができる。
【0031】
上述のショットキー障壁を抑制する観点から鑑みると、導電性接続部15a、15bの材質について、半導体特性を示す材料の含有量は、ある一定量以下に留めておくことが好ましい。導電性接続部15a、15bの材質について、半導体特性を示す材料の含有量が80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更により好ましい。
【0032】
上記半導体特性を示す材料として、特に限定されないが、例えば、Si、Ge、ZnS、ZnSe、CdS、ZnO、CdTe、GaAs、InP、GaN、GaP、SiC、SiGe、及びCuInSe2からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0033】
導電性接続部15a、15bの材質は、1.5×100~1.5×104μΩcmの電気抵抗率を有するのが好ましい。導電性接続部15a、15bの材質が1.5×104μΩcm以下の電気抵抗率を有すると、接触電気抵抗を低減させ、発熱を抑制させることが可能となる。導電性接続部15a、15bの材質は、1.5×100~5.0×103μΩcmの電気抵抗率を有するのがより好ましい。
【0034】
導電性接続部15a、15bの厚みは、0.1~500μmであるのが好ましい。導電性接続部15a、15bの厚みが0.1μm以上であると、より良好に柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗を低減させることができる。なお、電気加熱式コンバータ10を、振動が激しい環境で用いる場合には、押圧される金属電極14a、14bや可撓性導電部材16a、16bとの摩擦により消耗するため、このような観点においては、導電性接続部15a、15bの厚みは、より大きい方が好ましい。導電性接続部15a、15bの厚みが500μm以下であると、柱状ハニカム構造体11及び金属電極14a、14bとの熱膨張係数差による割れまたは剥がれを抑制することができる。また、導電性接続部15a、15bを厚くするには、導電性接続部15a、15bを、セラミックスと耐熱金属との複合材料とすることが好ましい。導電性接続部15a、15bの厚みは、1~500μmであるのがより好ましく、5~100μmであるのが更により好ましい。
【0035】
導電性接続部15a、15bの形状は適宜設計することができる。例えば、導電性接続部15a、15bは層状に形成することができる。また、導電性接続部15a、15bは、平面視で円形状、楕円形状、多角形状など、任意の形状に形成することができる。なお、導電性接続部15a、15bの形状は、生産性及び実用性の観点から、円形又は矩形であることが好ましい。導電性接続部15a、15bの面積についても特に限定されず、柱状ハニカム構造体11に流したい電流値によって、適宜設計することができる。また、導電性接続部15a、15bの面積を、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの接触面積より大きくすることで、金属電極14a、14bから流れる電流を導電性接続部15a、15bで拡散することができるため、柱状ハニカム構造体11全体を均一に加熱しやすくなる。
図5(A)に示す導電性接続部15a、15bの面積が、大きくなる場合には、それぞれ、例えば、
図5(B)~(D)に示すように、少なくとも2つ以上に分割してもよい。
図5(B)に示す実施形態では、導電性接続部15a、15bは、それぞれ、柱状ハニカム構造体11の外周方向に2つに分割されている。
図5(C)に示す実施形態では、導電性接続部15a、15bは、それぞれ、柱状ハニカム構造体11のセル18の延伸方向に3つに分割されている。
図5(D)に示す実施形態では、導電性接続部15a、15bは、それぞれ、柱状ハニカム構造体11の外周方向に2つに分割され、且つ、セル18の延伸方向に3つに分割されており、合計6つの導電性接続部に分割されている。
図5(B)~(D)に示すように、2つ以上に分割する場合、個々の導電性接続部15a、15bの外径もしくは対角線の長さは、5~50mmであることが好ましく、10~30mmであることが更に好ましい。個々の導電性接続部15a、15bの外径もしくは対角線の長さが、50mm以下であると、導電性接続部15a、15bと柱状ハニカム構造体11との熱膨張係数差による、割れまたは剥がれが抑制されるため好ましい。個々の導電性接続部15a、15bの外径もしくは対角線の長さが、10mm以上であると、製造上のコストを抑えられるため、好ましい。
【0036】
(1-4.金属電極)
金属電極14a、14bは、導電性接続部15a、15bの上に設けられている。金属電極14a、14bは、一方の金属電極14aが、他方の金属電極14bに対して、柱状ハニカム構造体11の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の金属電極であってもよい。金属電極14a、14bは、電極層13a、13bを介して電圧を印加すると通電してジュール熱により柱状ハニカム構造体11を発熱させることが可能である。このため、電気加熱式コンバータ10はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0037】
金属電極14a、14bの材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。金属電極14a、14bの形状及び大きさは、特に限定されず、柱状ハニカム構造体11の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。
【0038】
金属電極14a、14bの、導電性接続部15a、15bに接触する面以外の表面には耐熱コート層が設けられていることが好ましい。金属電極14a、14bの表面に耐熱コート層が設けられていると、排気ガスなどの熱に長期間曝されても、金属電極14a、14bが劣化し難くなる。金属電極14a、14bの耐熱コート層は、金属電極14a、14bの表面に、アルミナ、シリカ、ジルコニアまたは、炭化珪素などを含むコーティングを施すことで形成することができる。アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物のコーティングであれば、絶縁性も付与することができるため、凝縮水、ススなどによる電気的な短絡を低減することが可能となる。
【0039】
図1に示すように、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間には、可撓性導電部材16a、16bを設けてもよい。金属電極14a、14bの形状によっては、柱状ハニカム構造体11の外周面の形状と一致せず、導電性接続部15a、15bとの接触面積が小さくなる場合があるが、そのような場合には、良好な電気的接続を得るために、金属電極14a、14bをより大きな力で導電性接続部15a、15bへ押圧する必要がある。これに対し、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間に、可撓性導電部材16a、16bを設けることで、金属電極14a、14bの導電性接続部15a、15bへの押圧力を大きくすることなく、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの接触面積を大きくすることができる。その結果、金属電極14a、14bの形状によらず、より良好に柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗を低減させることができる。なお、可撓性導電部材16a、16bを設けなくてもよく、導電性接続部15a、15bの上に、直接、金属電極14a、14bが設けられていてもよい。
【0040】
可撓性導電部材16a、16bの厚みは、10~5000μmであるのが好ましい。可撓性導電部材16a、16bの厚みが10μm以上であると、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間の形状の違いによる隙間を埋めるように緩和し、より大きな接触面積を確保することができ、接触電気抵抗をより低減することができる。可撓性導電部材16a、16bの厚みが5000μm以下であると、可撓性導電部材16a、16b自身の抵抗が大きくなり過ぎることが抑制され、また押圧による可撓性導電部材16a、16bの変形が適度となるため、導電性接続部15a、15bとの接触面圧がより向上する。可撓性導電部材16a、16bの厚みは、50~3000μmであるのがより好ましく、100~2000μmであるのが更により好ましい。
【0041】
可撓性導電部材16a、16bは、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間の形状の違いを埋めることができる程度の可撓性を有する導電部材であれば、どのような材料で構成されていてもよい。可撓性導電部材16a、16bは、例えば、メッシュ状金属、金網、金属平編み線、または、膨張化黒鉛製シートで構成することができる。
【0042】
金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間に、可撓性導電部材16a、16bを設ける代わりに、金属電極14a、14bを可撓性金属で構成してもよい。または、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間に、可撓性導電部材16a、16bを設けた上で、更に、金属電極14a、14bを可撓性金属で構成してもよい。金属電極14a、14bを可撓性金属で構成することにより、金属電極14a、14bと導電性接続部15a、15bとの間に生じる熱応力を低減することができる。その結果、より良好に柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの接触電気抵抗を低減させることができる。金属電極14a、14bを構成する可撓性金属としては、メッシュ状金属、金属平編み線、蛇腹状金属、または、コイル状金属などが挙げられる。
【0043】
(1-5.酸化防止材)
酸化防止材が、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間に設けられていてもよい。また、酸化防止材が、柱状ハニカム構造体11の表面から、金属電極14a、14bの外表面に亘って設けられていてもよい。環境(排気ガス)温度が高いと、EHCの柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間に酸化膜が生成することがあるが、このような構成によれば、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間、または、柱状ハニカム構造体11の表面から、金属電極14a、14bの外表面に亘って、酸化防止材が設けられているため、酸化膜の生成を抑制することができる。このため、EHCの柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間の良好な電気的接続性を得ることができる。
【0044】
酸化防止材は、Al、Si、Cr、Ti及びCからなる群から選択された1種以上を含む酸素吸収剤、または、塩化亜鉛-塩化アンモニウム系、有機ハロゲン系、ホウ砂またはホウ酸系材料を主成分とする還元剤で構成されていてもよい。
【0045】
酸化防止材の形状は適宜設計することができる。例えば、酸化防止材は層状に形成することができる。酸化防止材は、平面視で円形状、楕円形状、多角形状など、任意の形状に形成することができる。なお、酸化防止材の形状は、生産性及び実用性の観点から、円形又は矩形であることが好ましい。また、酸化防止材は、シート状を有してもよく、例えば、グラファイトシートであってもよい。
【0046】
酸化防止材の厚みは、10~1000μmであるのが好ましい。酸化防止材の厚みが10μm以上であると、柱状ハニカム構造体11と金属電極14a、14bとの間に酸化膜が生成することを良好に抑制することができる。酸化防止材の厚みが1000μm以下であると、可撓性(柔軟性)を持たせることができる。酸化防止材の厚みは、50~500μmであるのがより好ましく、100~300μmであるのが更により好ましい。
【0047】
(1-6.押圧部材)
押圧部材23は、金属電極14a、14bを導電性接続部15a、15bへ押圧することで、金属電極14a、14bと柱状ハニカム構造体11とを電気的に接続するように構成されている。押圧部材23は、
図1及び
図2に示すように、金属電極14a、14bが設けられた柱状ハニカム構造体11と嵌合した缶体22、及び、金属電極14a、14bが設けられた柱状ハニカム構造体11と缶体22との隙間に設けられたマット(保持材)21を有する。缶体22が、金属電極14a、14bが設けられた柱状ハニカム構造体11を嵌合することで、金属電極14a、14bが導電性接続部15a、15bを押し付ける圧力が作用し、これにより、金属電極14a、14bと柱状ハニカム構造体11とを電気的に接続することができる。マット21によって、缶体22内で、金属電極14a、14bが設けられた柱状ハニカム構造体11が動かないように保持することができる。マット21は、可撓性を有する断熱部材であるのが好ましい。缶体22としては、金属製の筒状部材等を用いることができる。本発明の実施形態では、缶体22及びマット21で押圧部材23を構成している。
【0048】
柱状ハニカム構造体11に触媒を担持することにより、柱状ハニカム構造体11を触媒体として使用することができる。複数のセル18の流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0049】
(2.電気加熱式担体)
本発明の実施形態における電気加熱式担体20は、柱状ハニカム構造体11と、柱状ハニカム構造体11の表面に設けられた導電性接続部15a、15bとを備える。すなわち、電気加熱式担体20において、導電性接続部15a、15b上に金属電極14a、14bを設け、さらに押圧部材23を設けたものが、電気加熱式コンバータ10となる。
【0050】
電気加熱式担体20を備えた電気加熱式コンバータ10は、
図2に示すように、排気ガス浄化装置30として用いることができる。排気ガス浄化装置30において、電気加熱式コンバータ10の電気加熱式担体20は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。排気ガス浄化装置30は、ガス流入側にテーパー状の入口側縮径部31を備え、ガス排出側にテーパー状の出口側縮径部32を備えている。金属電極14a、14bは、ガス排出側に引き伸ばされる形状を有し、テーパー状の出口側縮径部32上の絶縁部材26で、外部電源に接続した配線25と電気的に接続されている。
【0051】
(3.電気加熱式コンバータの製造方法)
次に、本発明に係る電気加熱式コンバータ10を製造する方法について例示的に説明する。本発明の電気加熱式コンバータ10の製造方法は一実施形態において、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る工程A1と、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を焼成して柱状ハニカム構造体を得る工程A2と、柱状ハニカム構造体に導電性接続部を形成する工程A3と、柱状ハニカム構造体に金属電極を設けて缶体内へキャニングする工程A4とを含む。
【0052】
工程A1は、ハニカム構造部の前駆体であるハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の側面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る工程である。ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造部の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。なお、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素-炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0053】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0054】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0055】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0056】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0057】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後のハニカム成形体をハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0058】
次に、電極層を形成するための電極層形成ペーストを調合する。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉末、及び、セラミックス粉末等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。電極層を積層構造とする場合は、第一の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径に比べて、第二の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径を大きくしたり、金属粉末の添加量を増やしたりすることで、より接触抵抗を小さくすることが可能になる。金属粉末の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0059】
次に、得られた電極層形成ペーストを、ハニカム成形体(典型的にはハニカム乾燥体)の側面に塗布し、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る。電極層形成ペーストを調合する方法、及び電極層形成ペーストをハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができるが、電極層をハニカム構造部に比べて低い電気抵抗率にするために、ハニカム構造部よりも金属の含有比率を高めたり、金属粒子の粒径を小さくしたりすることができる。
【0060】
柱状ハニカム構造体の製造方法の変更例として、工程A1において、電極層形成ペーストを塗布する前に、ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変更例では、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製し、当該ハニカム焼成体に、電極層形成ペーストを塗布する。
【0061】
工程A2では、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を焼成して、柱状ハニカム構造体を得る。焼成を行う前に、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を乾燥してもよい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0062】
工程A3では、柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に、導電性接続部を形成するために、溶射によるコーティングで、導電性接続部を形成する。溶射による導電性接続部を形成する方法としては、まず始めに、柱状ハニカム構造体上の電極層の導電性接続部を形成しない領域に、金属板、ガラステープなどのマスキングを施す。その後、電極層の少なくとも表面の一部を予熱し、所定の材料を所定の溶射条件にて所定のパス数溶射を行うことで、所望の厚みの溶射コーティングを得る。また、導電性接続部は、導電性材料をコールドスプレー、メッキ、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、エアロゾルデポジション法、印刷による塗工等の従来手法によって、所定の配置、形状となるように形成してもよい。また、更に、導電性接続部の上に、メッシュ状金属、金網、金属平編み線、または、膨張化黒鉛製シート等を配置することで、可撓性導電部材を形成しておいてもよい。
【0063】
導電性接続部を柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に溶射する方法については特に制限はなく、公知の溶射方法を用いることができる。なお、導電性接続部形成原料を溶射する際には、原料の酸化を抑える目的で、アルゴン等のシールドガスを同時に流してもよい。また、導電性接続部形成原料を柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に塗工する方法としては、導電性接続部形成原料をペースト状にして、刷毛や、各種の印刷方法によって、直接塗布する方法を挙げることができる。塗工後の焼成条件としては、アルゴン等の不活性雰囲気において、1100~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。本明細書における焼成条件の温度は、焼成雰囲気の温度を示す。
【0064】
工程A4では、導電性接続部上に、金属電極を設ける。このとき、溶接、ろう付け、拡散接合等の化学接合ではなく、単に導電性接続部上に金属電極を載せる等、非結合の物理接合を行う。次に、導電性接続部上に、金属電極を設けた状態で、内側にマットを設けた缶体内へキャニングすることで、金属電極を導電性接続部へ押圧し、金属電極と柱状ハニカム構造体とを電気的に接続する。これにより、電気加熱式コンバータが得られる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
(1.円柱状の坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0067】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
得られた円柱状の坏土を碁盤目状の口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に垂直な断面における各セル形状が正方形である円柱状ハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両底面を所定量切断して、ハニカム乾燥体を作製した。
【0068】
(3.電極層形成ペーストの調製)
金属珪素(Si)粉末、炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成ペーストを調製した。Si粉末、及びSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、Si粉末、及び、SiC粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素粉末の平均粒子径は35μmであった。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0069】
(4.電極層形成ペーストの塗布及び焼成)
次に、この電極層形成ペーストを曲面印刷機によって、ハニカム乾燥体に対して適切な面積及び膜厚で塗布し、さらに熱風乾燥機で120℃、30分乾燥した後、ハニカム乾燥体と共にAr雰囲気にて1400℃で3時間焼成し、柱状ハニカム構造体とした。
【0070】
(5.導電性接続部形成溶射コーティングの施工)
柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に2か所、柱状ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向する位置に、プラズマ溶射にて導電性接続部形成原料を溶射して、導電性接続部を作製した。導電性接続部形成原料はNiCrAlYとして、以下のような溶射条件のプラズマ溶射とした。プラズマガスとして、60L/minのArガスと10L/minのH2ガスからなるAr-H2混合ガスを使用した。そして、プラズマ電流を600Aとし、プラズマ電圧を60Vとし、溶射距離を150mmとし、溶射用粒子供給量を30g/minとした。さらに、溶射時の金属の酸化を抑制するため、プラズマフレームをArガスによりシールドした。
【0071】
ハニカム構造体は、底面が直径118mmの円形であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が75mmであった。セル密度は93セル/cm2であり、隔壁の厚みは101.6μmであり、隔壁の気孔率は45%であり、隔壁の平均細孔径は8.6μmであった。電極層の厚みは0.3mmであり、導電性接続部の厚みは0.05mmであった。電極層及び導電性接続部と同一材質の試験片を用いて400℃における電気抵抗率を四端子法により測定したところ、それぞれ0.1Ωcm、3.0×103μΩcm(0.003Ωcm)であった。
【0072】
(6.電極の配置)
2か所のハニカム構造体の導電性接続部上に、厚み400μmでSUS製の金属電極を配置することで、サンプルを作製した。このとき、金属電極は導電性接続部上に載置するのみの物理接合とし、溶接、ろう付け、拡散接合等の化学接合を行わなかった。
【0073】
<実施例2>
導電性接続部と金属電極との間に、可撓性導電部材として、厚み1mmである、インコネル601製のメッシュ部材を設けた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0074】
<実施例3>
導電性接続部形成原料として、CrB-Siを用いることで導電性接続部を作製した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0075】
<実施例4>
導電性接続部形成原料として、CrB-Siを用いることで導電性接続部を作製した。また、導電性接続部と金属電極との間に、可撓性導電部材として、厚み2mmである、SUS304製のメッシュ部材を設けた。これら以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0076】
<実施例5>
導電性接続部形成原料として、Cuを用いることで導電性接続部を作製した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0077】
<実施例6>
導電性接続部形成原料として、Cuを用いることで導電性接続部を作製した。また、導電性接続部と金属電極との間に、可撓性導電部材として、厚み2mmである、SUS304製のメッシュ部材を設けた。これら以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0078】
<比較例1>
導電性接続部を設けずに、電極層の上に直接金属電極を設けた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0079】
<比較例2>
導電性接続部を設けない以外は、実施例2と同様にしてサンプルを作製した。
【0080】
(7.電気抵抗評価試験、ばらつき評価)
実施例1~6及び比較例1~2の各サンプルにおいて、それぞれ、ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように設けた2つの金属電極間の電気抵抗を評価した。電気抵抗の測定は、デジタルマルチメータ(GDM-8261A、株式会社テクシオ・テクノロジー製)を用い、4線抵抗測定モードにて測定されたn=5の数値を平均化して抵抗値を求めた。また、n=5にて得られた電極間抵抗の最大値と最小値の差分(Max-Min)を、ばらつきとして計算した。
評価結果を表1に示す。下記表1において、評価結果の「A」、「B」は、本発明の効果が得られているものを示し、「C」は、本発明の効果が得られていないものを示す。
【0081】
【0082】
(8.考察)
実施例1~6は、導電性接続部の効果により、2つの金属電極間の電気抵抗を2Ω以下に十分小さくすることができている。特に、実施例2、4、6において、2つの金属電極間の電気抵抗を0.96~1.1Ωとすることができており、可撓性導電部材の効果によってその金属電極-ハニカム構造体間の接触抵抗を十分に低減できているといえる。
【0083】
また、電極間抵抗のばらつきについても、実施例1~6では、低減することができている。これは、接触圧力のばらつきが低減された効果と考えられる。電極間抵抗の測定ばらつきは、金属電極を押し付ける圧力が微妙にばらつくことによって生じるものと予想されるが、実施例2、4、6では、導電性接続部および可撓性導電部材によって、より小さな圧力でも十分に接触抵抗を下げることが可能となる。その結果、電極間抵抗のばらつきについても、より小さくすることができたものと考えられる。
【0084】
一方、導電性接続部を有しない比較例1、2の場合、電極間抵抗が3Ω以上となっており、明らかにハニカム構造体の抵抗よりも金属電極-ハニカム構造体間の接触抵抗が大きくなっていることが予想できる。
【符号の説明】
【0085】
10 電気加熱式コンバータ
11 柱状ハニカム構造体
12 外周壁
13a、13b 電極層
14a、14b 金属電極
15a、15b 導電性接続部
16a、16b 可撓性導電部材
17 柱状ハニカム部
18 セル
19 隔壁
20 電気加熱式担体
21 マット(押圧部材)
22 缶体(押圧部材)
23 押圧部材
25 配線
26 絶縁部材
30 排気ガス浄化装置
31 入口側縮径部
32 出口側縮径部