(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ロボット走行装置及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/02 20060101AFI20240305BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240305BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240305BHJP
B23Q 41/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B25J5/02 A
B25J19/00 F
B23Q7/04 M
B23Q41/02 A
(21)【出願番号】P 2022506004
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008468
(87)【国際公開番号】W WO2021182300
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020041363
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮二
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063930(JP,A)
【文献】特開2019-005890(JP,A)
【文献】特開2012-000681(JP,A)
【文献】特開2005-096018(JP,A)
【文献】特開平05-317762(JP,A)
【文献】特開2018-167376(JP,A)
【文献】特開2004-114258(JP,A)
【文献】特開2020-192656(JP,A)
【文献】特開平08-276385(JP,A)
【文献】特開2005-046966(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103304(WO,A1)
【文献】特開2009-184024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23Q 7/00 - 7/18
B23Q 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に配置されるロボット走行装置において、
前記床面に離散的に設置される複数の土台と、
前記複数の土台上に設置されるレールベースと、
前記レールベースに支持されるレール部と、
前記レール部に移動自在に支持され、ロボットが載置されるスタンド部と、
前記ロボットのケーブルを保護する柔軟性を有するケーブルキャリアとを具備し、
前記土台の高さは、前記レールベース及び前記ケーブルキャリアと前記床面との間に50乃至100mmの間隙が設けられるように決定されている、ロボット走行装置。
【請求項2】
前記レール部は、一対のレールを有し、
前記一対のレールは前記床面に対して垂直な方向に沿って並設される、請求項1に記載のロボット走行装置。
【請求項3】
前記床面から前記レール部の上縁までの高さは500mm以下である、請求項2記載のロボット走行装置。
【請求項4】
前記ケーブルキャリアは、前記レールベースを挟んで前記一対のレールと同側に配置される、請求項2記載のロボット走行装置。
【請求項5】
前記ケーブルキャリアは、前記レールベースを挟んで前記一対のレールと反対側に配置される、請求項2記載のロボット走行装置。
【請求項6】
前記レール部は、一対のレールを有し、
前記一対のレールは前記床面に対して水平な方向に沿って並設される、請求項1に記載のロボット走行装置。
【請求項7】
前記ケーブルキャリアは、前記レールベースの上方に配置される、請求項6記載のロボット走行装置。
【請求項8】
前記スタンド部は、縦断面L字外形を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のロボット走行装置。
【請求項9】
工作機械と、
前記工作機械に対してワークを着脱するロボットを、前記工作機械の前面側において移動自在に支持するロボット走行装置と、を具備し、
前記工作機械は、
床面に設置される基台と、
前記基台上に載置される工作機械本体とを有し、
前記ロボット走行装置は、
前記床面に離散的に設置される複数の土台と、
前記複数の土台上に設置されるレールベースと、
前記レールベースに支持されるレール部と、
前記レール部に移動自在に支持され、前記ロボットが載置されるスタンド部と、
前記ロボットのケーブルを保護する柔軟性を有するケーブルキャリアとを有し、
前記工作機械の前面側であって、前記工作機械本体と前記床面との間のスペースに、前記土台とともに前記レールベース、前記レール部及び前記ケーブルキャリアが集約的に配置され、
前記スタンド部は、前記ロボットを前記工作機械本体の前面側に配置するために前記レール部から前記工作機械本体の前面側にわたって屈曲した縦断面L字外形を有する、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット走行装置及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボットにより工作機械へワークの着脱を行うロボットシステムにおいて、ワークを搬送する目的で、ロボットを走行させるロボット走行軸が使われている。工作機械で使われるロボット走行軸は、作業者が工作機械へアプローチしやすいよう、天井走行型のロボット走行軸が従来から用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボット走行軸を工作機械の正面や側面に配置した場合、作業者が工作機械へアプローチする際に足やつま先がロボット走行軸に当たって邪魔になり、作業性が悪かった(
図8参照)。アプローチのしやすさや省スペースの面で有利な天井走行型のロボット走行軸(引用文献1)が用いられてきたが、組立やメンテナンスが高所作業になるため、手間やコストがかかっていた。そこで、作業員による工作機械へのアプローチ性を低下させることなく、且つ、メンテナンス性の高いロボット走行軸が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るロボット走行装置は床面に配置される。ロボット走行装置は、床面に離散的に設置される複数の土台と、複数の土台上に設置されるレールベースと、レールベースに支持されるレール部とレール部に移動自在に支持され、ロボットが載置されるスタンド部と、ロボットのケーブルを保護する柔軟性を有するケーブルキャリアとを具備する。土台の高さは、レールベース及びケーブルキャリアと床面との間に50乃至100mmの間隙が設けられるように決定されている。
【発明の効果】
【0006】
本態様によれば、作業員による工作機械への接近性が低下されることなく、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るロボット走行装置を備えるロボットシステムを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のロボット走行装置の床面に設置する部分の拡大図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るロボット走行装置を示す前方斜視図である。
【
図8】
図8は、
図4のロボット走行装置による効果の説明を補足する図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るロボット走行装置を示す側面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るロボット走行装置を示す側面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係るロボット走行装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るロボット走行装置を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
(ロボットシステムの構成)
図1、
図2及び
図3は、第1実施形態に係るロボット走行装置20を備えるロボットシステム10を示している。
図1は斜視図、
図2は側面図、
図3は、
図2のロボット走行装置20の床面に設置する部分の拡大図である。ロボットシステム10は、工作機械100と、工作機械100へのワークの着脱を行うロボット200と、ワーク置き場と工作機械100との間でロボット200を走行させるためのロボット走行装置20と、を有する。
【0010】
図1、
図2及び
図3に示すように、工作機械100は、成形機やマシニングセンタなどの、成形部品であるワークの作製、または、供給されるワークに対する成形部品の結合や機械加工などの所定の処理を行う装置である。典型的には、工作機械100は、床面に設置される基台101と、基台101に載置される工作機械本体103とを有する。工作機械本体103の内部にはワークが設置されるテーブル105と、加工工具を保持する冶具が備えられた主軸107とが配置される。工作機械本体103の前面には、工作機械本体103の内部にアクセスするためのスライド扉109が設けられる。なお、このスライド扉109は、作業員が、メンテナンス作業などの際に、工作機械100内にアクセスするためにも使用される。
【0011】
工作機械本体103と床面との間にはスペースが形成される。ここでは、工作機械本体103のスライド扉109が設けられた前面が基台101の前面に対して外側に張り出している。つまり、工作機械100の前面下部に、左右方向に延びる線条のスペース(窪み)が形成される。
【0012】
第1実施形態に係るロボット走行装置20は、工作機械100の前面下部の窪みに設置した上で、ロボット2000を工作機械100の前面のスライド扉109に近接した位置で走行させることができるように構成される。
【0013】
(第1実施形態)
図4、
図5、
図6及び
図7は、第1実施形態に係るロボット走行装置20を示している。
図4は斜視図、
図5は側面図、
図6は正面図、
図7は平面図である。
【0014】
ロボット走行装置20は、複数の土台21を有する。土台21は、ベース板211と、ベース板211を床面に対して昇降自在に支持する複数の脚部213とからなる。脚部213の高さを調整することで、土台21の高さ(脚部213の底面(床面)からベース板211の上面までの距離)を調整することができる。複数の土台21はロボット200の移動軸と平行な向きに沿って離散的に配置される。複数の土台21上には矩形の長い板状のレールベース23が設置される。
【0015】
第1実施形態に係るロボット走行装置20の1つの特徴は、レールベース23及び後述のケーブルキャリア31と床面との間に作業員のつま先(作業員が履く安全靴のつま先)を挿入できるようにした点にある。これを実現するために、レールベース23を床面に直置きするのではなく、レールベース23を離散的に配置された複数の土台21で支持する構成とした。土台21の高さは、レールベース23及びケーブルキャリア31と床面との間に安全靴のつま先が入る高さに決定されている。例えば、土台21の高さは、好ましくは50乃至100mm、典型的には安全靴のつま先だけが挿入可能な高さである70mmに設定される。なお、ロボット走行装置20が設置されるような工場内では、安全性の観点から安全靴を履くことが推奨されている。安全靴は日本作業規格(JIS規格)等で素材等が決められており、同じサイズの安全靴であれば、ほぼ同様の外形に構成されている。また、作業者が子供であることはなく、作業者の安全靴のサイズは大きく異ならない。そのため、土台21の高さを上記のように決定することで、安全靴を履いた作業者のつま先をほぼ確実に挿入することができる。
【0016】
床面とレールベース23との間に安全靴のつま先を挿入できることで、工作機械100にロボット走行装置20を隣接して配置しても、作業員は工作機械100に対して接近することができる。それにより、工作機械100に隣接してロボット走行装置20を設置することによる作業員のメンテナンス作業の作業性の低下を抑えられる。
【0017】
なお、敢えて、床面とレールベース23との間に安全靴のつま先だけが挿入できて、安全靴の足首までは挿入できない高さにすることで、ロボット走行装置20を構成する他の部品、例えばケーブルキャリア31やレール部27に作業員が過度に接近するできないようにし、これら部品に作業員が接触することによる作業員のケガや汚れ、部品の損傷を抑制することができる。また、工作機械100に対しても、作業員が過度に接近できなくすることで、作業員の安全性を担保することができる。さらに、つま先だけが挿入できることで、足首まで挿入できる場合に比べて、作業員の転倒リスクを低減し、作業員の咄嗟な動きの動作性の低下を抑えられるため、安全性が向上する。
【0018】
図5に示すように、レールベース23は直角三角形状の取付具25によって、土台21のベース板211に直角に取り付けられる。レールベース23にはレール部27が支持される。典型的には、レール部27は一対のレール271からなる。一対のレール271は、レールベース23に対して床面に垂直な方向に沿って互いに平行に配置される。
【0019】
このようにレールベース23を床面に対して縦置きすることによって、工作機械100の正面からレールベース23に対して垂直にドライバなどの工具を挿入することができる。それにより、工作機械100の前面下部のような高さが制限されている場所にロボット走行装置20を設置しても、工作機械100を前面下部から前方に引き出すことなく、レール部27の交換作業などを行うことができる。これは、作業員のメンテナンス作業の作業性を向上させる。また、レールベース23を縦置きすることによって、レールベース23を横置きした場合に比べて切り屑、切粉などのゴミがレール部27に入り込みにくくなるため、走行エラーなどのロボット走行装置20の不具合が発生する可能性を低減できる。さらに、レールベース23を縦置きすることによって、設置高は高くなるかもしれないが、設置幅を狭くすることができるため、高さはあるが奥行が狭いような場所にロボット走行装置20を設置することができる。
【0020】
レール部27にはスタンド29が移動自在に支持される。スタンド29にはロボット200が載置される。ここで使用されるロボット200の種類については特に限定されない。垂直多関節ロボット、スカラロボットなどの種類のロボット200を使用することができる。
【0021】
スタンド29は、スライダ部291とスタンド本体293とを有する。スライダ部291は、四角形の平板部材であって、レール部27に対して摺動可能に取り付けられる。スタンド本体293は縦断面略L字形状の外形を有する。具体的には、スタンド本体293は外側面が開放された略L字形状の溝状体に構成される。スタンド本体293は、その一端にスライダ部291との接続面を有し、他端にロボット200が載置される載置面を有する。スタンド本体293は、基端側の部分が床面に対して平行になり、先端側の部分が床面に対して垂直になる向きであって、ロボット載置面が上方を向くようにスライダ部291に取り付けられる。
【0022】
スタンド29の外形を略L字形状とすることによって以下の効果が発揮される。
すなわち、L字形のスタンド29は、ロボット走行装置20を設置したい位置とロボット200を走行させたい位置とを結ぶ中継部品として機能する。例えば、
図7に示すように、L字形のスタンド29は、レール部27の中心軸Caに対してロボット200が実際に走行する走行軸Maを水平方向と鉛直方向とにオフセットさせることができる。それにより、
図1、
図2に示すように、ロボット走行装置20を設置したい場所が工作機械100の前面下部であって、ロボット200を走行させたい位置が工作機械100の前面のスライド扉109の前方であるような設置要求があっても、L字形のスタンド29を用いることによって、対応することができる。L字形のスタンド29を使用することで、
図7に示すように、レール中心軸Caに対してロボット200の走行軸を水平方向にオフセットすることができるため、レール部27の直上をロボット200が移動しないため、ロボット200が把持するワークから落下した切り屑や垂れた水などの液体がレール部27に付着する可能性を低減することができ、例えば、レール部27に堆積したゴミがスライダ部291に絡んでしまって、ロボット200の走行を停止させてしまうなどの不具合が発生するリスクを抑えられる。
【0023】
また、ロボット走行装置20は、土台21の上方に全ての構成部品が積み上げられているのではなく、スタンド29は土台21の少し上方から側方に延出されている。そのため、ロボット走行装置20の高さを抑えられる。例えば、第1実施形態において、床面からレールベース23の上縁までの高さは500mm以下に抑えられる。それにより、工作機械100の前面下部のような高さの狭い場所にも設置することができる。ロボット走行装置20を構成するスタンド29以外の、土台21、レールベース23、レール部27及びケーブルキャリア31は工作機械100の前面下部のスペースに集約されているため、これらの構成部品に工作機械100から出た切り屑などのゴミや、液体が付着する可能性も抑えられる。
【0024】
なお、スタンド29は、ロボット走行装置20を設置したい位置とロボット200を走行させたい位置とを結ぶ中継部品であることから、その外形の形状はL字形に限定されない。例えば、スタンド29部の外形は、円弧状に湾曲した形状であってもよいし、階段状に複数回折り曲げた形状であってもよい。ロボット走行装置20を設置したい位置とロボット200を走行させたい位置との間に障害物があるのであれば、スタンド29は、その障害物を回避する様々な形状とすることができる。
【0025】
スタンド本体293の内部には、スライダ部291の移動を駆動する駆動力を発生するモータとモータの回転を減速する減速機とを有するモータユニット35、モータを制御する制御装置(図示しない)等が組み付けられている。スタンド本体293の外側面が開放しているため、作業員は、これらの装置に簡単にアクセスすることができる。これは、作業員によるメンテナンス作業の作業性の向上に寄与する。
【0026】
スタンド29の内部に取り付けられた制御装置に対して接続されるケーブル類は、ケーブルキャリア31によって配線される。ケーブルキャリア31は、互いに枢動可能に連結された複数の中空フレームからなる。この中空部分にケーブルは通され、保護される。ケーブルキャリア31は、全長がレール部27の全長よりも長く、途中部分をU字状に折り返してスタンド本体293の床面に平行な基端部分を上下に跨ぐように配置される。ケーブルキャリア31の一方側の端部31aは、スタンド本体293に対してブラケット37を介して固定される。ケーブルキャリア31の端部31aが固定される位置は、スタンド本体293の床面に平行な基端部分の上面のレール部27に近接した位置である。ケーブルキャリア31の他方側の端部31cは複数の土台21の上面に横架されたサポート板33に固定される。ケーブルキャリア31の他方側の端部31cが固定される位置は、ロボット走行装置20(レール部)の長さ中央付近である。サポート板33は、ケーブルキャリア31の端部31cから屈曲部31bまでのケーブルキャリア部分が下方に垂れ下がるのを抑える。もちろん、ケーブルキャリア31の端部31cは、複数の土台21のうち中央付近の土台21の上面に直接的に又はブラケットを介して間接的に固定されてもよい。
【0027】
外部のシステム制御装置や外部の電源装置から延出されるケーブルは、ロボット走行装置20の長さ中央付近に固定されたケーブルキャリア31の端部31cからケーブルキャリア31内に挿入され、ケーブルキャリア31内を通過して、スタンド29に固定されたケーブルキャリア31の端部31aから外部に引き出される。ケーブルキャリア31によってスタンド29まで配線されたケーブルは、スタンド29に載置されたロボット200とスタンド29の内部に組みつけられた制御装置とに接続される。
【0028】
ケーブルキャリア31によって保護しながらケーブルを配線することができるため、スタンド29が移動した場合においても、他部材と干渉して損傷することや、ケーブル同士が互いに絡まってしまうことを回避することができ、ロボット走行装置20やロボット200を安定的に稼働させることができる。
【0029】
ケーブルキャリア31をロボット200とレール部27との間に配置することによって、ロボット200により把持されたワークから出る切り屑などのゴミがレール部に付着する可能性を低減することができる。また、工作機械100の張り出し部の下方の床面にロボット走行装置20を設置した場合では、レール部27をより奥側に配置することができるため、上記の可能性をさらに低減するとともに、工作機械100で使用された水などの液体がレール部27、ケーブルキャリア31などに付着する可能性を低減することができる。さらに、ケーブルキャリア31はレールベース23の表面側に配置されているため、ロボット走行装置20を工作機械の前面下部に設置した状態で、作業員は簡単にケーブルキャリア31にアクセスすることができる。ケーブルは頻繁にメンテナンスが必要な部品の1つであるため、上記のようにケーブルキャリア31を配置することで、メンテナンスの作業性を向上させる。
【0030】
以上説明した第1実施形態に係るロボット走行装置20によれば、床面とレールベース23との間には安全靴のつま先が入る間隙を形成した。それにより、間隙が形成されていない場合に比べて、作業者は、工作機械100のスライド扉109に接近することができる。また、L字形のスタンド29を用いることで、ロボット走行装置20の設置高を抑えることができ、ロボット200を走行させる位置に対して、レール部27を設置する位置を水平方向と鉛直方向とにオフセットすることができる。これらにより、工作機械100の前面下部の狭いスペースにロボット走行装置20を設置し、工作機械100の前面に張り出したスライド扉109に接近した位置でロボット200を走行させることができる。工作機械100の前面下部にロボット走行装置20の主要な構成部品が集約され、工作機械100の前面にはスタンド29だけが突出しているため、工作機械100の正面からスタンド29を退避させておくことで、作業者は工作機械100のスライド扉109に接近することができる。
【0031】
上記のように「床面とレールベース23との間に間隙をつま先が入る間隙を設けた」、「L字形のスタンド29を設けた」の2つの構造的特徴により、
図8に示すように、第1実施形態に係るロボット走行装置20を工作機械100の前面下部の狭いスペースに設置することができ、ロボット走行装置20が設置されていない場合と同じように、工作機械100に作業者Wは接近することができる(
図8(a)、(b)参照)。これは、従来型のロボット走行装置が設置されている場合(
図8(c)参照)に比べて、従来型のロボット走行装置の幅と等価な距離L分、工作機械100に接近することを可能とし、ロボット走行装置20が設置されていない場合とほぼ同様の立ち位置で工作機械100のメンテナンス作業を行うことができ、ロボット走行装置20を設置することによる作業性の低下を抑えられる。
【0032】
(第2実施形態)
第1実施形態に係るロボット走行装置20は、ケーブルキャリア31をレールベース23の表面側に設置していたが、ケーブルキャリア31が設置される位置はこれに限定されない。第2実施形態に係るロボット走行装置40は、第1実施形態に係るロボット走行装置20においてレールベース23の表面側に配置されていたケーブルキャリア31を、レールベース23の裏面側に配置したものである。以下、
図9、
図10及び
図11を参照して第2実施形態に係るロボット走行装置40を説明する。
【0033】
図9、
図10及び
図11に示すように、ロボット走行装置40は、土台41と、レールベース43と、レール部47と、スタンド49と、ケーブルキャリア51と、サポート板53と、を有する。第2実施形態に係るロボット走行装置40の土台41、レールベース43、レール部47及びスタンド49は、第1実施形態に係るロボット走行装置20の土台21、レールベース23、レール部27及びスタンド29と同様に構成されるため、説明を省略する。
【0034】
ケーブルキャリア51は、レールベース23の裏面側に配置される。ケーブルキャリア51の一方側の端部51aは、スタンド本体493に対してブラケットを介して固定される。ケーブルキャリア51の端部51aが固定される位置は、床面からケーブルキャリア51の端部51aの上面までの高さが床面からレールベース43の上端までの高さと等価又はそれよりも若干低い。ケーブルキャリア51の他方側の端部51cは複数の土台41の上面に横架されたサポート板53に固定される。ケーブルキャリア51の他方側の端部51cが固定される位置は、ロボット走行装置40(レール部47)の長さ中央付近である。
【0035】
第2実施形態に係るロボット走行装置40は、レールベース43の裏面側にケーブルキャリア51が配置されているため、レールベース23の表面側にケーブルキャリア31が配置された第1実施形態に係るロボット走行装置20に比べて、ケーブルのメンテナンス作業の作業性は低いものの、他の効果については第1実施形態に係るロボット走行装置20と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態に係るロボット走行装置20、40は、レールベース23,43を縦置きしていたが、レールベース23,43は横置きしてもよい。第3実施形態に係るロボット走行装置60は、レールベース63を横置きにして構成したものである。以下、
図12、
図13、
図14及び
図15を参照して第3実施形態に係るロボット走行装置60を説明する。
【0037】
図12、
図13、
図14及び
図15に示すように、ロボット走行装置60は、複数の土台61を有する。複数の土台61上には矩形の長い板状のレールベース63が床面に対して水平な向きに横置きされる。レールベース63にはレール部67が支持される。レール部67は一対のレール671を有する。一対のレール671は、床面に平行な方向に沿って並設される。レール部67にはスタンド69が移動自在に支持される。スタンド69にはロボット200が載置される。
【0038】
スタンド69は、スライダ部691とスタンド本体693とを有する。スライダ部691は、四角形の平板部材であって、レール部67に対して摺動可能に取り付けられる。スタンド本体693は略L字形状の外形を有する。スタンド本体693は、基端部分が床面に対して平行になり、先端部分が床面に対して垂直になる向きにスライダ部691に取り付けられる。スタンド本体693の基端側の側面がスライダ部691に取り付けられる。
【0039】
ケーブルキャリア71は、レールベース63の上方にスタンド本体793とスライダ部691を上下に跨ぐように配置される。ケーブルキャリア71の一方側の端部71aは、スタンド本体793に対してブラケット77を介して固定される。ケーブルキャリア71の他方側の端部71cは一対のレール671の下部に配置されたサポート板73に固定される。ケーブルキャリア71の他方側の端部71cが固定される位置は、一対のレール671の間のロボット走行装置60(レール部67)の長さ中央付近である。
【0040】
第3実施形態に係るロボット走行装置60は、レールベース63を横置きしているため、レールベース23、43を縦置きした第1、第2実施形態に係るロボット走行装置20、40に比べて、レール部67にゴミ、切り屑、ホコリなどが溜まりやすく、それにより、メンテナンス頻度が高くなってしまう可能性がある。また、レール交換などのメンテナンス時においては、工作機械100の前面下部のスペースからロボット走行装置60を引き出さなければならないため、メンテナンス作業の作業性を低下させてしまう可能性がある。しかしながら、レールベース63を横置きすることによって、設置高を低く抑えられるため、奥行きはあるけど高さが低い場所にロボット走行装置60を配置することができる。上記以外の他の効果については、第1、第2実施形態に係るロボット走行装置20,40と同様の効果を奏することができる。
【0041】
(第4実施形態)
第3実施形態に係るロボット走行装置20は、ケーブルキャリア71をレールベース63の上方に設置していたが、ケーブルキャリア71が設置される位置はこれに限定されない。第4実施形態に係るロボット走行装置80は、第3実施形態に係るロボット走行装置60においてレールベース63の上方に配置されていたケーブルキャリア71を、レールベース63に隣接して配置したものである。以下、
図16、
図17及び
図18を参照して第4実施形態に係るロボット走行装置80を説明する。
【0042】
ロボット走行装置80は、複数の土台81を有する。複数の土台81上には矩形の長い板状のレールベース83が床面に対して水平な向きに横置きされる。レールベース83にはレール部87が支持される。レール部87にはスタンド89が移動自在に支持される。スタンド89にはロボット200が載置される。
【0043】
スタンド89は、スライダ部891とスタンド本体893とを有する。スライダ部891は、四角形の平板部材であって、レール部87に対して摺動可能に取り付けられる。スタンド本体893は略L字形状の外形を有する。スタンド本体893は、基端部分が床面に対して平行になり、先端部分が床面に対して垂直になる向きにスライダ部891に取り付けられる。
【0044】
ケーブルキャリア91は、レールベース83に隣接した位置に、スタンド本体893の基端部分を上下に跨ぐように配置される。ケーブルキャリア91の一方側の端部91aは、スタンド本体893に対してブラケット97を介して固定される。ケーブルキャリア91の端部91aが固定される位置は、スタンド本体893の基端部分からわずかに上方の位置である。ケーブルキャリア91の他方側の端部91cは複数の土台81の上面に横架されたサポート板93に固定される。ケーブルキャリア91の他方側の端部91cが固定される位置は、ロボット走行装置80(レール部87)の長さ中央付近である。
【0045】
第4実施形態に係るロボット走行装置80は、レール部87とロボット200との間にケーブルキャリア91が配置されるため、レール部87の上方にケーブルキャリア91が配置された第3実施形態に係るロボット走行装置60に比べて、工作機械100から出たゴミがレール部87に溜まる量を減らすことができ、また、設置幅は増えてしまうが設置高をさらに低く抑えられる。そのため、奥行きはあるけど高さが低い場所にロボット走行装置80を配置することができる。また、上記以外の他の効果については、第3実施形態に係るロボット走行装置60と同様の効果を奏することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…ロボットシステム、20…ロボット走行装置、100…工作機械、101…基台、103…工作機械本体、105…テーブル、107…主軸、109…スライド扉。