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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】追随ロボットおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022524432
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2021018348
(87)【国際公開番号】W WO2021235331
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020087367
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健太郎
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136808(JP,A)
【文献】特開2001-252886(JP,A)
【文献】特開2018-083284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動のアームと、
前記アームに設けられた少なくとも1つの視覚センサと、
前記アームに設けられた前記視覚センサを追随対象に追随させるための目標データとして前記追随対象の少なくとも位置および姿勢に関する第1の特徴量を記憶している特徴量記憶部と、
前記視覚センサによって得られる画像を用いて前記追随対象の現在の少なくとも位置および姿勢に関する第2の特徴量を検出する特徴量検出手段と、
前記第2の特徴量と前記第1の特徴量との差異に基づきフィードバック制御を用いて前記アームの移動指令を算出し、少なくともフィードフォワード制御を用いて前記移動指令を調整する移動量計算手段と、
前記移動指令に基づいて前記アームを移動させる移動指令手段と、
前記追随対象の特定動作の開始時に取得される信号と、該特定動作における前記追随対象の軌跡に前記アームを追随させるための前記フィードフォワード制御の入力値とを対応付けて記憶する入力値記憶部と、を備え、
前記移動量計算手段および前記移動指令手段が、前記視覚センサを前記追随対象に追随させる間、前記移動指令の算出および前記移動指令に基づく前記アームの移動を繰り返し、
前記移動指令が、前記第2の特徴量としての前記追随対象の少なくとも位置および姿勢と前記第1の特徴量としての前記追随対象の少なくとも位置および姿勢との差異を減ずるまたは無くすものであり、
前記移動量計算手段が、前記特定動作が開始されたときに取得された前記信号に対応付けて前記入力値記憶部に記憶されている前記入力値に基づいた前記フィードフォワード制御を用いる、追随ロボット。
【請求項2】
前記入力値が、前記アームを静止させた状態で前記視覚センサにより検出された前記追随対象の軌跡に前記アームの軌跡を近似させるよう算出されたものである請求項1に記載の追随ロボット。
【請求項3】
前記入力値が、固定設置された他の視覚センサにより検出された前記追随対象の軌跡に前記アームの軌跡を近似させるよう算出されたものである請求項1に記載の追随ロボット。
【請求項4】
アームを追随対象に追従させる制御を実行可能な制御装置であって、
追随対象の少なくとも位置および姿勢に関する第1の特徴量と、フィードフォワード制御のための入力値とを記憶可能な少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
視覚センサにより撮像された画像に基づいて、追随対象の少なくとも位置および姿勢に関する第2の特徴量を取得し、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量に基づいて、フィードバック制御を用いて前記アームの移動指令を生成し、
追随対象に関する特定信号が取得された際に、前記入力値に基づいて少なくともフィードフォワード制御を用いて前記移動指令を調整する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、追随ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットと、物品を搬送する搬送装置と、搬送装置に沿って設けられたレールと、レールに沿ってロボットを移動させる移動装置とを備えた生産ラインが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この生産ラインでは、搬送装置によって物品が搬送されている時に、ロボットが物品の欠陥検査および研磨を行う。また、欠陥検査および研磨が行われる時に、搬送装置による物品の搬送速度と同じ速度で、移動装置がロボットをレールに沿って移動させる。
【0003】
また、ロボットの先端部の位置および姿勢を動かない目標位置に正確に合わせる技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-72764号公報
【文献】特開2017-170599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記生産ラインでは、欠陥検査および研磨を行っているだけである。これに対し、例えば、ロボットと物品とが干渉し得る作業が行われる場合には、ロボット、搬送装置、物品等の破損防止の対策が必要になる。しかし、搬送装置によって移動している物品は振動等の予測できない挙動を行う可能性があるので、前記の破損防止を実現することは難しい。
したがって、ロボットのツールを物品に正確に追随させることができることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、可動のアームと、前記アームに設けられた少なくとも1つの視覚センサと、前記アームに設けられた前記視覚センサを追随対象に追随させるための目標データとして前記追随対象の少なくとも位置および姿勢に関する第1の特徴量を記憶している特徴量記憶部と、前記視覚センサによって得られる画像を用いて前記追随対象の現在の少なくとも位置および姿勢に関する第2の特徴量を検出する特徴量検出手段と、前記第2の特徴量と前記第1の特徴量との差異に基づきフィードバック制御を用いて前記アームの移動指令を算出し、少なくともフィードフォワード制御を用いて前記移動指令を調整する移動量計算手段と、前記移動指令に基づいて前記アームを移動させる移動指令手段と、前記追随対象の特定動作の開始時に取得される信号と、該特定動作における前記追随対象の軌跡に前記アームを追随させるための前記フィードフォワード制御の入力値とを対応付けて記憶する入力値記憶部と、を備え、前記移動量計算手段および前記移動指令手段が、前記視覚センサを前記追随対象に追随させる間、前記移動指令の算出および前記移動指令に基づく前記アームの移動を繰り返し、前記移動指令が、前記第2の特徴量としての前記追随対象の少なくとも位置および姿勢と前記第1の特徴量としての前記追随対象の少なくとも位置および姿勢との差異を減ずるまたは無くすものであり、前記移動量計算手段が、前記特定動作が開始されたときに取得された前記信号に対応付けて前記入力値記憶部に記憶されている前記入力値に基づいた前記フィードフォワード制御を用いる、追随ロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る追随ロボットを備える作業ロボットシステムの概略構成図である。
図2図1の作業ロボットシステムの制御装置のブロック図である。
図3図1の作業ロボットシステムの視覚センサによって撮像される画像データの例である。
図4図1の作業ロボットシステムの制御部の作動を示すフローチャートである。
図5図1の作業ロボットシステムの追随対象の特定動作におけるフィードフォワード制御の入力値生成の一例を示す模式的な斜視図である。
図6図5の入力値生成処理を説明するフローチャートである。
図7図6の入力値生成処理により生成された入力値を用いてフィードフォワード制御されたロボットの動作の一例を示す模式的な斜視図である。
図8図6の入力値生成処理により生成された入力値の微調整方法を説明するフローチャートである。
図9】本実施形態の変形例の作業ロボットシステムの概略構成図である。
図10】本実施形態の変形例における時定数生成処理を説明するフローチャートである。
図11図10の時定数生成処理により算出された時定数の微調整方法を説明するフローチャートである。
図12】本実施形態の制御装置を有する管理システムのブロック図である。
図13】本実施形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る作業ロボットシステム1について、図面を用いながら以下説明する。
本実施形態の作業ロボットシステム1は、図1に示されるように、作業対象である物品100を搬送する搬送装置2と、搬送装置2によって搬送される物品100の作業対象部101に対して所定の作業を行うロボット(追随ロボット)10とを備えている。また、作業ロボットシステム1は、ロボット10を制御する制御装置20と、検出部としての検出装置40と、ロボット10に取り付けられた視覚センサ50とを備えている。
【0009】
検出装置40は、物品100が所定位置まで搬送されてきたことを検出する。検出装置40として、このような機能を有する装置は全て利用することができる。本実施形態では検出装置40は光電センサであるが、視覚センサ50によって物品100が所定位置まで搬送されてきたことを検出してもよい。
【0010】
物品100は特定の種類の物に限定されない。本実施形態では、一例として、物品100は車のボディである。搬送装置2はモータ2aによって複数のローラ3のうち数本を駆動することによって物品100を搬送するものである。本実施形態では搬送装置2は図1における右側に向かって物品100を搬送する。
【0011】
作業対象部101は、物品100において、ロボット10が所定の作業を行う部分である。本実施形態では、所定の作業として、ロボット10のハンド(ツール)30が部品110を持上げ、ロボット10は部品110の取付部111を作業対象部101に取り付ける。これにより、例えば、部品110の取付部111から下方に延びるシャフト111aが、物品100の作業対象部101に設けられた孔101aに嵌合する。
ロボット10は、物品100が搬送装置2によって移動している状態において、部品110の取付部111を作業対象部101に取り付ける。
【0012】
ロボット10は特定の種類に限定されないが、本実施形態のロボット10は、複数の可動のアーム10aをそれぞれ駆動する複数のサーボモータ11を備えている(図2参照)。各サーボモータ11はその作動位置を検出するための作動位置検出装置を有し、作動位置検出装置は一例としてエンコーダである。作動位置検出装置の検出値は制御装置20に送信される。
【0013】
アーム10aの先端部にはハンド30が取り付けられている。本実施形態のハンド30は複数の爪による把持によって部品110を支持するが、磁力、空気の吸引等を用いて部品110を支持するハンドを用いることも可能である。
【0014】
ハンド30は爪を駆動するサーボモータ31を備えている(図2参照)。サーボモータ31はその作動位置を検出するための作動位置検出装置を有し、作動位置検出装置は一例としてエンコーダである。作動位置検出装置の検出値は制御装置20に送信される。
各サーボモータ11,31としては、回転モータ、直動モータ等の各種のサーボモータが用いられ得る。
【0015】
ロボット10の先端部には力センサ32が取り付けられている。力センサ32は、例えば、図3に示すX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向と、X軸回り、Y軸回り、およびZ軸回りの力またはモーメントを計測する。
【0016】
力センサ32は、ハンド30またはハンド30によって把持された部品110に加わる力の方向および力の程度を検出できるものであればよい。このため、本実施形態では力センサ32がロボット10とハンド30との間に設けられているが、力センサ32はハンド30内に設けられていてもよい。
【0017】
アーム10aの先端部には視覚センサ50が取り付けられている。一例では、視覚センサ50は、ロボット10の手首フランジにフレーム50aを用いて取り付けられている。本実施形態では視覚センサ50は2次元カメラである。本実施形態の視覚センサ50は、作業対象部101に対して相対的に位置および姿勢が変化しない追随対象102が画角の所定の範囲に入るように、図3に示されるような画像データを逐次取得する。
【0018】
本実施形態では追随対象102は図3に斜線で示された上面部であるが、作業対象部101と相対的に位置および姿勢が変化しない他の部分を用いることも可能である。
視覚センサ50は、ハンド30等のツールに取り付けられてもよい。また、視覚センサ50は、ハンド30等のツールと相対位置および姿勢が変化しないロボット10の他の場所に取り付けられてもよい。
【0019】
視覚センサ50は画像データを制御装置20に逐次送信する。画像データは追随対象102の位置および姿勢を特定できるデータである。画像データが制御装置20以外の検出器によって処理され、当該処理後データに基づき追随対象102の位置および姿勢が特定されてもよい。
【0020】
追随対象102は、物品100において所定の形状を有する部分、所定のマークが設けられた部分等である。これらの場合、画像データは、画像上で上記部分の位置および姿勢を判別できるデータである。
【0021】
画像をベースとする例では、視覚センサ50に対して追随対象102が画像データ(検出範囲)の目標位置や姿勢、サイズに配置されると、アーム10aに取り付けられたハンド30の位置および姿勢が物品100に対する所定の作業に必要な位置および姿勢となる。位置をベースとする例では、アーム10aに取り付けられたハンド30の位置および姿勢と視覚センサ50の位置および姿勢とがキャリブレーションによって対応付けられている。この場合は、画像データに基づき制御装置20がロボット10の座標系における追随対象102の位置および姿勢を認識し、制御装置20がアーム10aに設けられたハンド30を所定の作業に必要な位置および姿勢に移動させることができる。
【0022】
本実施形態では、部品110の取付部111のシャフト111aを物品100の作業対象部101に設けられた孔101aに嵌合できる状態となる。
物品100は搬送装置2上で揺動する場合がある。例えば、搬送装置2の複数のローラ3が完全な平面上に配置されていない場合、物品100は揺動する。物品100が大きい場合、物品100の下端側の僅かな揺れが作業対象部101の大きな揺れに繋がる場合もある。このため、アーム10aに設けられたハンド30の姿勢調整は重要である。
【0023】
画像をベースとする例では、視覚センサ50の画像データ上での追随対象102の位置や姿勢、サイズの変化と、ロボット10の座標系の位置および姿勢の変化とは、制御装置20内において予め関係付けられている。
【0024】
制御装置20は、図2に示されるように、CPU、RAM等を有する制御部21と、表示装置22と、不揮発性ストレージ、ROM等を有する記憶部(特徴量記憶部、入力値記憶部)23とを備えている。また、制御装置20は、ロボット10のサーボモータ11にそれぞれ対応している複数のサーボ制御器24と、ハンド30のサーボモータ31に対応しているサーボ制御器25と、制御装置20に接続された入力部26とを備えている。一例では、入力部26はオペレータが持ち運べる操作盤等の入力装置である。入力部26が制御装置20と無線通信を行う場合もある。
【0025】
記憶部23にはシステムプログラム23aが格納されており、システムプログラム23aは制御装置20の基本機能を担っている。また、記憶部23には動作プログラム23bが格納されている。また、記憶部23には、追随制御プログラム(移動指令手段)23cと、力制御プログラム23dと、特徴量検出プログラム(特徴量検出手段)23eと、移動量計算プログラム(移動量計算手段)23fとが格納されている。
【0026】
また、記憶部(入力値記憶部)23には、追随対象102の特定動作が開始するときに取得される信号と、フィードフォワード制御の入力値とが対応付けて記憶されている。
ここで、追随対象102の特定動作とは、物品100を搬送する搬送装置2の稼働中に想定される非定常動作であって、他の作業工程に起因する停止、停止からの再開あるいは非常停止等を意味する。これらの特定動作が開始されるときには各特定動作を特定し得る信号が制御装置20において取得される。
【0027】
制御部21は、これらのプログラムに基づいて、物品100に対する所定の作業を行うための移動指令を各サーボ制御器24,25に送信する。これによって、ロボット10およびハンド30が物品100に対して所定の作業を行う。この際の制御部21の動作を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0028】
先ず、検出装置40によって物品100が検出されると(ステップS1-1)、制御部21は、動作プログラム23bに基づいたロボット10およびハンド30への作業前移動指令の送信を開始する(ステップS1-2)。これにより、ロボット10は、ハンド30によって把持された部品110のシャフト111aを作業対象部101の孔101aに近付ける。このとき、制御部21は、搬送装置2の搬送速度、物品100内における作業対象部101の位置のデータ等を用いてもよい。また、後述のステップS1-4の後で、動作プログラム23bに基づいて、部品110のシャフト111aが物品100の孔101aに嵌合される。なお、ステップS1-1において、検出装置40の代わりに視覚センサ50によって物品100が検出されてもよい。
【0029】
ステップS1-2のロボット10の制御により、部品110が所定の作業(嵌合)の準備位置および姿勢に到達する。これにより、視覚センサ50の画角(検出範囲)内、または、画角の所定範囲内に追随対象102が存在するようになると(ステップS1-3)、制御部21は、追随制御プログラム23c、特徴量検出プログラム23e、および移動量計算プログラム23fに基づいた制御を開始する(ステップS1-4)。ステップS1-4では、例えば以下の制御が行われる。なお、以下の制御では、視覚センサ50の画像データに基づき追随対象102の少なくとも位置および姿勢が検出され、検出された位置および姿勢に基づいて制御部21がアーム10aに取り付けられた視覚センサ50の位置および姿勢を追随対象102に追随させる。ここで、視覚センサ50はハンド30に対する位置および姿勢が固定されているので、視覚センサ50の画像データの目標位置および姿勢に追随対象102が常に配置される態様で、ロボット10のハンド30が物品100に追随する。
このような制御は、例えば以下の制御によって実現される。
【0030】
当該制御では、記憶部23には、画像データ内において追随対象102が配置されるべき目標位置および目標姿勢、目標サイズが、第1の特徴量として格納されている。目標サイズは例えば、特徴を輪郭とした場合の輪郭の大きさである。
制御部21は、特徴量検出プログラム23eに基づき、第2の特徴量の検出として、視覚センサ50によって逐次得られる画像データ上で追随対象102の位置、姿勢、およびサイズを検出する。
【0031】
例えば、制御部21は、記憶部23に格納されている追随対象102のモデルを射影変換しながら、射影変換されたモデルと画像データ上の追随対象102とのマッチング検索を行うことにより、追随対象102の位置および姿勢を検出する。当該モデルはCADデータ等を用いて作成されてもよいし、実際の対象から作成されてもよい。作業対象部101と追随対象102との相対位置および相対姿勢は固定されているので、追随対象102の位置および姿勢に基づき、制御部21はアーム10aの先端部と追随対象102との相対位置および相対姿勢を得ることができる。
【0032】
制御部21は、移動量計算プログラム23fに基づき、画像データ内における追随対象102の位置、姿勢、およびサイズを第1の特徴量に一致させるための移動指令を算出する。
算出された移動指令は、画像データ内における追随対象102の位置、姿勢、およびサイズと第1の特徴量との差異を無くすまたは低減するためのものである。算出された移動指令は、例えば、アーム10aに取り付けられたハンド30の位置をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に変化させ、ハンド30の姿勢をX軸回り、Y軸回り、およびZ軸回りに変化させるものである。
【0033】
なお、上述した制御において、制御部21がさらに、アーム10aの機械的特性により定められるパラメータに基づいて、算出された移動指令を調整してもよい。例えば、アーム10aの全体または一部の剛性、各可動部の剛性、ハンド30の重量、部品110の重量、ハンド30および部品110の重量等によってアーム10aが受けるモーメント等が、機械的性質に含まれる。また、アーム10aの可動部である関節の角度に応じてアーム10aの撓み量、方向等が変化するので、アーム10aの各可動部の状態も機械的性質に含まれる。
【0034】
つまり、移動指令によってアーム10aの姿勢が変化する場合、当該姿勢変化に応じて、ハンド30および部品110の重量等によってアーム10aが受けるモーメント、アーム10aの各可動部の状態等が変化する。このため、移動指令がこれらの機械的特性を考慮して調整されると、ハンド30を物品100にさらに正確に追随させることができる。
【0035】
制御部21は、連続する複数の画像データを用いて、第2の特徴量の変化の傾向を得ることができる。例えば、視覚センサ50の画像データ上における追随対象102の位置、姿勢、およびサイズが目標データである第1の特徴量に徐々に近付いている時に、連続する複数の画像データから、追随対象102に対する視覚センサ50の相対位置および相対姿勢の変化の傾向が捉えられる。
【0036】
相対位置および相対姿勢の変化の傾向がある場合、制御部21が、移動量計算プログラム23fに基づき、その傾向に基づくフィードフォワード制御を用いて移動指令を調整してもよい。例えば、移動量の変化から平均速度を求めて、その基本速度をフィードフォワード制御として与えてもよい。
【0037】
フィードフォワード制御を用いることにより対象との相対速度をある程度一定に保った状態で、ずれ分をフィードバック制御することが可能となる。もしフィードフォワードを用いないと画像の特徴同士が一致した際にロボットの移動速度が0になってしまう瞬間が発生し得る。この場合、減速、加速が頻発してしまう可能性があるが、フィードフォワード制御を用いることでそのような減速、加速を防ぐことができる。
【0038】
フィードフォワードをかける補正データには、移動平均等の周知のフィルタリング処理、スムージング処理等が施されていることが好ましい。これにより、外乱による物品100の位置および姿勢の変化、搬送装置2の精度に由来する物品100の揺れ、オーバーシュートの可能性、電気的ノイズ等が捉えられると、制御部21は外乱による変化または搬送装置2の精度に由来する揺れへの適切な対応、オーバーシュートの低減、電気的ノイズの除去等が可能となる。
【0039】
フィードフォワード制御に与える基本速度等の入力値は、外部の計測器で計測したものをもとにユーザが任意に入力してもよい。
また、減速機のたわみ(ねじれ)を考慮したロボットモデルを作成して、アームの振動を推定してフィードバックすることによりアームの振動を軽減してもよい。
【0040】
本実施形態においては、相対位置および相対姿勢の変化の傾向がある場合として、追随対象102が特定動作を実施した場合を想定し、フィードフォワード制御を行う。すなわち、追随対象102が特定動作を開始したときの信号が取得された場合には、その信号に対応付けて記憶部23に記憶されている入力値を読み出し、その入力値に基づいてフィードフォワード制御を行う。
【0041】
フィードフォワード制御の入力値は、以下の方法により予め取得しておく。
まず、図5に示されるように、搬送装置2が固定された床面に対して固定された視覚センサ50を用意する。
【0042】
この状態で、図6に示されるように、視覚センサ50の画角内に追随対象102を配置して、視覚センサ50を作動させる(ステップS10)。次いで、上述した特定動作を実行する(ステップS11)。例えば、搬送装置2の非常停止が実行されると、非常停止を特定し得る非常停止信号(特定信号)が制御装置20に取得される(ステップS12)。
【0043】
これにより、追随対象102は、図5に示される軌跡で振動する。この軌跡を記録するために、視覚センサ50により追随対象102を含む画像データが微小時間間隔で逐次取得され、取得された画像データを処理することにより、追随対象102の位置が逐次検出される(ステップS13)。
【0044】
そして、検出された追随対象102の位置の変化が判定され(ステップS14)、位置の変化が所定の閾値を超える場合には、ステップS13からの工程が繰り返される。ステップS14において位置の変化が所定の閾値以下となった場合には、時系列に取得された追随対象102の位置の情報から、追随対象102のロボット座標系での軌跡が算出される(ステップS15)。
【0045】
この追随対象102の軌跡に基づいて、フィードフォワード制御の入力値が算出される(ステップS16)。具体的には、フィードフォワード制御の入力値は、図7に示されるように、追随対象102の軌跡にロボット10の動作軌跡を一致させる指令信号として算出される。
算出された入力値は、有限の時間間隔にわたって変化する指令信号であり、取得された特定動作を特定し得る信号と対応付けて記憶される(ステップS17)。非常停止以外の他の特定動作についても同様にしてフィードフォワード制御の入力値を算出し、各特定動作を特定し得る信号と対応付けて記憶部23に記憶される。
【0046】
次に、このようにしてフィードフォワード制御の入力値が記憶された状態で行われる入力値の微調整方法について説明する。
ロボット10を作動させた状態において、図8に示されるように、追随対象102の特定動作を発生させる(ステップS20)。特定動作が開始されると、制御装置20において、特定動作を特定し得る特定信号が取得される(ステップS21)。
【0047】
制御装置20は、取得された特定信号に対応付けて記憶部23に記憶されている入力値を読み出し(ステップS22)、この入力値を所定の微小時間間隔で逐次指令信号に加えるフィードフォワード制御を開始する(ステップS23)。このとき、ロボット10に備えられた視覚センサ50により追随対象102を含む画像を取得し(ステップS24)、取得された画像を処理して画像上における追随対象102の位置を検出する(ステップS25)。
【0048】
この状態で、検出された追随対象102の位置が所定の範囲内に位置するか否かを逐次判定し(ステップS26)、所定の範囲を超えてずれている場合には、追随対象102の位置ずれの方向および位置ずれ量を入力値の時刻に対応付けて記憶する(ステップS27)。追随対象102の位置ずれが所定の範囲以下である場合および位置ずれが記憶された後には、入力値が終了したか否かを判定し(ステップS28)、入力値が終了するまでステップS25からの工程が繰り返される。
【0049】
読み出された入力値が終了した後には、記憶された追随対象102の位置ずれに基づいて、記憶部23に記憶されているフィードフォワード制御の入力値が修正される(ステップS29)。全期間にわたる入力値に対して追随対象102の位置ずれが所定の範囲以下となるまで、ステップS20からステップS29の工程を繰り返し行うことにより、入力値を微調整してもよい。
【0050】
このように、本実施形態に係るロボット10を用いた実際の作業時に、搬送装置2の非定常動作が発生しても、ロボット10のツール30を物品100に精度よく追随させることができるという利点がある。また、フィードフォワード制御の入力値を設定する際に、ロボット10に備えられている視覚センサ50を用いる場合には、設定を容易に行うことができるという利点もある。
【0051】
また、視覚センサ50としては、ロボット10に取り付けられた視覚センサ50とは別に用意してもよい。この場合には、床面に固定設置した視覚センサ50をロボット10の座標系に対してキャリブレーションしておく。ロボット10に取り付けられた視覚センサ50を用いる場合には、ロボット10を静止させた状態に維持する。この場合には、視覚センサ50はロボット10の座標系に対してキャリブレーションされている。
【0052】
また、制御部21は、相対位置および相対姿勢の変化の傾向等を用いて、第2の特徴量の検出結果を補間してもよい。このため、第2の特徴量の取得周期が視覚センサ50の撮像周期と同様に長くなる場合でも、検出結果の補間を行うことにより、取得周期の間の第2の特徴量の推定、将来の第2の特徴量の推定等が可能となる。
【0053】
上記制御によって、制御部21は、アーム10aのハンド30を作業対象部101に追随させる。これにより、部品110の取付部111のシャフト111aの位置および姿勢と作業対象部101の孔101aの位置および姿勢とが一致する。
【0054】
ここで、前述のように、視覚センサ50の画像データ上での追随対象102の位置、姿勢、およびサイズの変化とロボット10の座標系の位置および姿勢の変化とは、制御装置20内において関係付けられている。このため、視覚センサ50が追随対象102に追随している時にロボット10の座標系が搬送装置2の搬送方向に移動し、座標系の位置および姿勢が搬送装置2による物品100の移動と一致させることができる。この状況では、搬送装置2によって物品100の作業対象部101は移動しているが、制御部21から見ると座標系内において作業対象部101がほぼ停止して見えることになる。
【0055】
このように制御されている状態において、制御部21は、力制御プログラム23dに基づいた力制御を開始する(ステップS1-5)。力制御として、周知の力制御を用いることが可能である。本実施形態では、力センサ32によって検出される力から逃げる方向にロボット10が部品110を移動させる。その移動量は力センサ32の検出値に応じて制御部21が決定する。
【0056】
例えば、ハンド30によって把持された部品110のシャフト111aと物品100の孔101aとが嵌合し始めた状況で、搬送装置2による搬送方向と反対方向の力が力センサ32によって検出されると、制御部21は部品110を搬送方向と反対方向に僅かに移動させて検出される力から逃げる。
【0057】
続いて、制御部21は、視覚センサ50の画像データに基づき逐次検出される第2の特徴量が所定の基準を超えて変動する時に(ステップS1-6)、第1の異常対応作動を行う(ステップS1-7)。所定の基準を超えた変動は、画像データ内における追随対象102の大きな移動、画像データ内における追随対象102の所定速度よりも早い移動等である。電力供給が安定していない場合、モータ2aの回転速度が急激に低下する場合等があり、モータ2aの回転速度が大きく変動する場合もある。これらの場合に、アーム10aの先端部に対する追随対象102の位置が所定の基準を超えて変動することになる。
【0058】
第1の異常対応作動として、制御部21は、力制御の制御周期を短くする作動または感度を高める作動、嵌合の進行を停止する作動、嵌合作業を中止する作動、嵌合方向とは逆方向に退避する作動、搬送を停止させる作動、またはそれらを組み合わせた作動等を行う。力制御の制御周期を短くし、または、感度を高めると、部品110に加わる力に対してロボット10をより敏感に移動させることが可能となる。本実施形態では、制御部21は、嵌合作業を中止する作動、嵌合方向とは逆方向に退避する作動、搬送装置2を停止させる、またはそれらを組み合わせた作動等を行う。
【0059】
また、制御部21は、ステップS1-6において第2の特徴量が所定の基準以下であり、力センサ32の検出値が所定の基準値を超える時に(ステップS1-8)、第2の異常対応作動を行う(ステップS1-9)。力センサ32の検出値が所定の基準値を超える時は、部品110、物品100等に異常な力が加わっている可能性が高い。このため、制御部21は、第2の異常対応作動として、以下の作動を行う。すなわち、ロボット10を停止させる作動、力センサ32によって検出された力の方向から逃げる方向にロボット10を移動させる作動、搬送装置2を停止させる作動、嵌合方向とは逆方向に退避する作動、搬送を停止させる作動、またはそれらを組み合わせた作動等を行う。本実施形態では、制御部21は、ロボット10を停止させる作動を行う。
【0060】
一方、制御部21は、ステップS1-8において力センサ32の検出値が所定の基準値以下の場合に、嵌合作業が完了したか否かを判断(例えば、Z方向の進行距離が所定値を超えたかどうかを判断)し(ステップS1-10)、嵌合作業が完了している場合は、アーム10aおよびハンド30に所定の移動指令や作動指令を送る(ステップS1-11)。これにより、ハンド30が部品110を放して部品110から遠ざかり、ハンド30がアーム10aによって待機位置または次の部品110がストックされている場所に移動する。また、ステップS1-10において嵌合作業が完了していないと判断された場合には、ステップS1-6からの工程を繰り返す。
【0061】
なお、上記実施形態において、制御部21が特徴量検出プログラム23eに基づき、画像データ内の第1の範囲において第2の特徴量を検出する広範囲検出処理を行い、その後に得られる画像データ内の第2の範囲において狭範囲検出処理を行ってもよい。狭範囲検出処理は、第1の範囲よりも狭い第2の範囲において第2の特徴量を検出する処理である。
【0062】
例えば、第1の特徴量と第2の特徴量との差異が大きい時は広範囲検出処理が行われ、第1の特徴量と第2の特徴量との差異が所定値以下になると狭範囲検出処理が行われる。これにより、第1の特徴量と第2の特徴量との差異が小さくなった時に、処理速度の向上、処理精度の向上等を図ることが可能になる。
【0063】
当該処理とは別に、または、当該処理と共に、制御部21が特徴量検出プログラム23eに基づき、画像データ内において検出された追随対象102を含むエリアを第2の特徴量の検出範囲として設定してもよい。例えば、検出された追随対象102の輪郭に接する外接長方形を設定すると共に外接長方形を所定の倍率で拡大することによって、検出範囲を設定できる。
【0064】
そして、画像データ内における追随対象102の大きさ(サイズ)、視覚センサ50と追随対象102との距離等に応じて、倍率を変更してもよい。例えば、視覚センサ50と追随対象102が近付くと、画像データ内における追随対象102の画像上の移動量が大きくなるので、倍率を大きくする。これにより、追随対象102の位置および姿勢の検出が効率的且つ正確になる。
【0065】
また、図9に示されるように、ツールであるハンド30が別のロボットである作業ロボット60に取り付けられていてもよい。この場合、作業ロボット60のアーム60aおよびハンド30は制御装置70によって制御される。一例では、制御装置70は制御装置20と同様の構成を有し、アーム60aもアーム10aと同様の構成を有する。
【0066】
視覚センサ50の座標系の位置および方向とロボット60の座標系の位置および方向とは、制御装置70内において関係付けられている。制御部21が視覚センサ50を追随対象102に追随させている状態で、制御装置70はロボット60の座標系においてロボット60を動作させる。視覚センサ50の座標系の位置および姿勢に応じてロボット60の座標系の位置および姿勢が変化するので、制御装置70はロボット60の座標系に基づき設定された動作プログラム23bを用いて作業を行うことができる。
【0067】
この場合でも、前述のように制御装置20が視覚センサ50の位置および姿勢を追随対象102に追随させている時に、当該移動指令の情報、第2の検出量と第1の検出量との差異の情報等に基づいて、ロボット60の座標系の位置および姿勢を作業対象部101に追随させることができる。このため、ロボット60が動作プログラム23bに基づいて部品110のシャフト111aを物品100の孔101aに嵌合する作業を行う時に、ロボット60のハンド30が物品100に追随する。
【0068】
制御装置20および制御装置70が生産管理システム等の上位制御システムに接続されており、制御装置20と制御装置70との間での情報の受け渡しが上位制御システムを介して行われてもよい。
【0069】
ロボット60の代わりに、搬送装置2の上方に搬送装置2に沿って設けられたレールと、レールに移動可能に取り付けられた可動アームとを有するロボットを用いることも可能である。この場合、可動アームの先端部に視覚センサ50が取り付けられ、可動アームはその先端部および視覚センサ50の姿勢を例えばX軸回りおよびY軸回りに変更可能である。
【0070】
可動アームがその先端部および視覚センサ50の位置をY軸方向に移動可能であることが好ましいが、可動アームがその先端部および視覚センサ50の位置をY軸方向に自由に移動できなくてもよい。
この場合でも、可動アームに取り付けられた視覚センサ50の位置および姿勢を追随対象102に追随させることが可能である。
【0071】
可動アームの先端部がY軸方向に自由に移動しない場合でも、第2の特徴量と第1の特徴量との差異に基づき、可動アームに取り付けられた視覚センサ50のX軸方向の位置と、X軸およびY軸回りの姿勢とを、追随対象102に追随させることができる。当該追随ができれば、画像データ中において追随対象102がY軸方向に移動する場合があっても、その移動量を検出して前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
また、第2の特徴量として、追随対象102の形状等が追加で検出されてもよい。この場合、記憶部23に追随対象102の形状等に関する第1の特徴量が格納される。追随対象102の形状は、アーム10aと追随対象102との距離や角度に対応して変化するので、追随制御がより正確に行われるようになる。
【0073】
また、複数の視覚センサ50が用いられ、複数の視覚センサ50を複数の追随対象102にそれぞれ追随させることも可能である。この場合、複数の視覚センサ50によって得られる複数の画像データ中の各々の所定位置に追随対象102が配置された時に、アーム10aに取り付けられたハンド30が物品100の作業対象部101に対して所定の位置および姿勢に配置されたと判断することも可能である。
【0074】
このように、本実施形態のロボット10は、アーム10aに設けられた少なくとも1つの視覚センサ50と、アーム10aに設けられた視覚センサ50を追随対象102に追随させるための目標データとして第1の特徴量を記憶している記憶部23と、を備える。そして、本実施形態では、視覚センサ50よって得られる画像を用いて追随対象102の現在の少なくとも位置および姿勢に関する第2の特徴量が検出される。
【0075】
そして、第2の特徴量と第1の特徴量との差異に基づきアーム10aの移動指令が算出される。また、視覚センサ50を追随対象102に追随させる間、移動指令の算出および移動指令に基づくアームの移動が繰り返される。このため、搬送装置2によって搬送される物品100に対するハンド30の相対位置および相対姿勢を徐々に目標データに近付けることができる。これは、搬送装置2によって搬送されている物品100にロボット10のアーム10aの動作を正確に沿わせるために有用である。
【0076】
また、本実施形態では、第1の特徴量として、追随対象102のモデルを有する。物品100の特徴部が追随対象102である場合、制御部21は、視覚センサ50によって得られる画像データ中の特徴部と射影変換されたモデルとのマッチング検索を行うことによって、画像データ中の特徴部の位置および姿勢(第2の特徴量)を得ることができる。
【0077】
当該構成は、搬送装置2によって搬送される物品100の追随対象102に対する視覚センサ50の相対位置および相対姿勢を目標データに正確に近付けるために有用である。特徴部は物品100の表面に設けられた図形であってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、少なくともフィードフォワード制御を用いて移動指令が調整される。当該構成では、フィードフォワード制御によって、搬送装置2による物品100の移動傾向等を考慮した制御が行われ、これは物品100の追随対象102に対する視覚センサ50の相対位置および相対姿勢を目標データに素早く正確に近付けるために有用である。
【0079】
また、本実施形態では、第2の特徴量の検出が行われる前に、制御部21が、視覚センサ50または他のセンサ40により得られたデータを用いて、追随対象102を視覚センサ50の検出範囲内に入れるための作業前移動指令を算出する。このため、アーム10aの追随制御が行われる前に、視覚センサ50が短時間で追随に必要な位置に配置される。
【0080】
また、本実施形態の作業ロボットシステムは、搬送装置2と、ロボット10と、を備え、ロボット10に設けられた視覚センサ50が追随対象102に追随している状態でロボット10が物品100に所定の作業を行う。または、本実施形態の作業ロボットシステムは、ロボット10に設けられた視覚センサ50を追随対象102に追随させる移動指令の情報または移動指令の算出に用いられた情報を用いながら、作業ロボット60が物品100に所定の作業を行う。
【0081】
作業ロボット60を用いる場合、視覚センサ50から離れた場所で物品100に所定の作業を行うことが可能である。複数の作業ロボット60が上述した情報を用いて物品100に所定の作業を行ってもよい。
【0082】
また、本実施形態の作業ロボットシステムは、力センサ32をさらに備える。力センサ32は、ロボット10によって支持されている部品110またはハンド30が物品100と接触することによって生ずる力、または、作業ロボット60によって支持されている部品110またはハンド30が物品100と接触することによって生ずる力を検出する。
【0083】
また、ロボット10または作業ロボット60の制御装置20,70が、所定の作業が行われる時に、力センサ32の検出値も用いながら、ロボット10または作業ロボット60に設けられたハンド30を物品100に追随させる。
【0084】
力センサ32の検出値も追随制御に用いられるので、追随制御の精度をより向上することができる。ここで、物品100に対するハンド30の相対姿勢と力センサ32の検出値との対応付けが難しい場合があるが、本実施形態では当該相対姿勢が修正されるので、追随制御の精度が効果的に向上する。
【0085】
また、本実施形態の作業ロボットシステムは、第2の特徴量が所定の基準を超えて変動する時に、所定の作業を行うロボット10または作業ロボット60の制御装置20,70および搬送装置2の少なくとも一方が異常対応作動を行う。これにより、追随制御が行われている時のロボット10,60、物品100、および部品110の損傷を効果的に防止することができる。
【0086】
また、本実施形態の作業ロボットシステムでは、追随対象102が物品100の一部である。当該構成では、物品100における追随対象102の位置が固定されており、これは追随制御の精度をより向上するために有用である。
【0087】
また、ロボット10または作業ロボット60の先端部に加工ツールが支持され、搬送装置2によって搬送される物品100にロボット10または作業ロボット60が所定の作業として加工を行ってもよい。この場合、加工ツールは、ドリル、フライス、ドリルタップ、バリ取り工具、その他の工具等である。
【0088】
この場合でも、ステップS1-2において加工ツールが作業対象部101に近付けられ、前述の追随制御が行われ、加工ツールと作業対象部101との接触に応じて力制御が行われること等により、前述と同様の効果が達成される。また、加工ツールは、溶接ガン、溶接トーチ等でもよい。
【0089】
また、搬送装置2として、物品100を曲線的なルートに沿って搬送する搬送装置を用いることも可能であり、物品100を曲がりくねったルートに沿って搬送する搬送装置を用いることも可能である。これらの場合でも、制御部21は、視覚センサ50の検出結果を用いて、ロボット10または作業ロボット60の先端部を作業対象部101に追随させることができる。
【0090】
また、ステップS1-6においてロボット10に対する作業対象部101の位置が所定の基準を超えて変動する時に、ステップS1-7において制御部21が第1の異常対応作動を行うことができる。このため、搬送装置を用いた場合でも、前述と同様の効果が達成される。
【0091】
また、搬送装置2の代わりに、他のロボット、AGV(Automated Guided Vehicle)が物品100を移動させてもよい。この場合でも前述と同様の作用効果が達成され得る。さらに、物品100が自動車、自動車のフレーム等の場合は、所定の作業が行われる物品100がそのエンジン、車輪等によって移動してもよい。これらの場合、他のロボット、エンジン、車輪等が搬送装置として機能する。
【0092】
また、搬送装置2の代わりに、物品100が重力によって滑り落ちる、転がり落ちる、または落下するシューターによって、物品100を搬送してもよい。この場合、傾斜しているシューターを加振装置によって振動させ、これによりシューター上の物品100の移動を円滑にすることも可能である。これらの場合、シューター、加振装置等が搬送装置として機能し、シューターによって移動している物品100がロボット10に取り付けられたツールによって取出される。
【0093】
本実施形態では、ロボット10または作業ロボット60の先端部に力センサ32が取り付けられている。一方、搬送装置2と物品100との間、物品100の内部等に、力センサ32を配置することも可能である。この場合でも、力センサ32の検出値に基づく力制御を行うことが可能であり、前述と同様の効果が達成される。
また、視覚センサ50がロボット10または作業ロボット60における手首フランジ以外の部分に取り付けられてもよい。
【0094】
なお、視覚センサ50がステレオカメラであってもよい。この場合、一対のカメラによって追随対象102の距離画像データを得ることが可能で、当該画像データと対応する立体的なモデルとを用いて追随対象102の位置および姿勢が特定される。
【0095】
本実施形態では視覚センサ50が追随する対象とロボット10の作業対象とが異なるが、視覚センサ50が追随する対象とロボット10の作業対象が同じであってもよい。例えば、ロボット10のツールであるハンド30と作業対象との若干の位置ずれが許容される場合、ツールであるハンド30による作業時に追随する対象が視覚センサ50から常に見えている場合等は、追随する対象と作業対象とを同一とすることができる。
【0096】
なお、上述した実施形態では、視覚センサ50の画像データ上で追随対象102の位置、姿勢、およびサイズを目標位置に配置し、これによりツールであるハンド30の位置および姿勢を、物品100に対する所定の作業に必要な位置および姿勢に配置する。これに対し、視覚センサ50の画像データ上で追随対象102の位置および姿勢を目標位置に配置し、これによりロボット10に取り付けられたツールの位置および姿勢を所定の作業に必要な位置および姿勢に配置してもよい。
【0097】
例えば、レーザ溶接、レーザ加工、シール剤塗布等のツールと物品100との距離が殆ど変化しない作業の場合、ツールと物品100との距離が変化しても行える作業の場合等は、第1の特徴量としてのサイズの情報および第2の特徴量としてのサイズの情報は使わなくてもよい。
【0098】
また、本実施形態においては、追随対象102のロボット座標系での軌跡を算出するものを例示したが、追随対象102のロボット座標系での特定動作(例えば、停止動作、あるいは停止状態からの再開動作)の経過時間のみを算出して特定動作の時定数としてもよい。
【0099】
この場合、図10に示されるように、ステップS12において非常停止信号が制御装置20に取得された後、非常停止信号を取得した時刻を特定動作開始時刻として記憶部23に記憶する。(ステップS31)そして、ステップS14において位置の変化が所定の閾値以下となった場合には、追随対象102が停止した時刻を特定動作停止時刻として記憶部23に記憶する(ステップS32。)
【0100】
次に、記憶された特定動作開始時刻と特定動作停止時刻との差分として経過時間を算出し(ステップS33)、算出された経過時間を時定数として追随対象102の各特定動作を特定し得る信号と対応付けて記憶部23に記憶する(ステップS34)。
【0101】
また、視覚センサ50によって取得された画像データに基づき追随対象102の位置および姿勢を検出することにより特定動作終了(例えば、完全停止、あるいは停止状態からの動作再開後に一定速度になった場合)を判別しているが、これに代えて、特定動作が停止の場合には、視覚センサ50を用いずに作業者が目視によって追随対象102の停止を判別し、ストップウォッチ等の計測装置を用いて経過時間を計測してもよい。
また、搬送装置2のインバータの設定から時定数を特定できる場合には、設定から特定した時定数をそのまま用いてもよい。
【0102】
次に、このようにして算出された経過時間が時定数として記憶された状態で行われる時定数の微調整方法について説明する。ロボット10を作動させた状態において、図11に示されるように、追随対象102の特定動作を発生させる(ステップS40)。特定動作が開始されると、制御装置20において、特定動作を特定し得る特定信号が取得された後(ステップS41)、特定信号を取得した時刻を特定動作開始時刻として記憶部23に記憶し(ステップS42)、制御装置20によって設定した時定数を記憶部23から読み出し(ステップS43)、設定した時定数に従ってフィードフォワード制御を開始する(ステップS44)。
【0103】
そして、追随対象102の最大位置ずれ量の初期値を0に設定する(ステップS45)。その後、ロボット10のアーム10aに備えられた視覚センサ50により追随対象102を含む画像を取得し(ステップS46)、取得された画像を処理して画像上における追随対象102の位置を検出する(ステップS47)。
【0104】
この状態で、検出された追随対象102の位置ずれ量の絶対値が記憶されている最大位置ずれ量の絶対値よりも大きいか否かを判定し(ステップS48)、追随対象102の位置ずれ量の絶対値が最大位置ずれ量の絶対値よりも大きい場合には、最大位置ずれ量を更新して記憶部23に記憶する(ステップS49)。
【0105】
追随対象102の位置ずれ量の絶対値が最大位置ずれ量の絶対値以下である場合および最大位置ずれ量が更新された後には、設定した時定数よりも時間が経過し、かつ位置ずれの変化量(追随対象102のロボット座標系における前回の検出位置と今回の検出位置との差分)が一定になったか否かを判定する(ステップS50)。設定した時定数よりも時間が経過していないか位置ずれの変化量が一定ではない場合にはステップS47からの工程が繰り返される。
【0106】
例えば、特定動作が停止の場合には、追随対象102およびロボット10が停止するので、位置ずれの変化量は0になる。また、特定動作が停止から再開した場合には、追随対象102およびロボット10が一定速度になって、速度が同じであれば位置ずれの変化量は0になり、速度差があれば位置ずれの変化量の時間変化量は0ではない一定値になる。
【0107】
設定した時定数よりも時間が経過し、かつ位置ずれの変化量の時間変化量が一定値になった後には、最大位置ずれ量の絶対値が所定の閾値よりも大きくなったか否かを判定する(ステップS51)。
【0108】
次に、最大位置ずれ量の絶対値が所定の閾値以下の場合には、最大位置ずれ量の符号に応じて時定数を増やすか減らすかを決定し、最大位置ずれ量の絶対値に応じた量を時定数に加減して、記憶部23に記憶されているフィードフォワード制御の時定数が更新される(ステップS52)。ここで、最大位置ずれ量の絶対値に応じた増減量ΔTを例えば下式(1)により算出しても良い。
ΔT=D/V (1)
ここでは、Dは最大位置ずれ量、Vは追随対象102の一定速度である。
【0109】
そして、ステップS51において、最大位置ずれ量の絶対値が所定の閾値以下になるまでステップS40から工程を繰り返し、最大位置ずれ量の絶対値が所定の閾値以下になれば処理を終了する。
【0110】
また、特定動作を特定し得る特定信号が取得された時点からすぐに追随対象102が加速または減速して特定動作を実行するものを例示したが、これに代えて、特定信号が取得された時点から所定の時間間隔をあけて追随対象102に特定信号に対応する加速または減速をさせてもよい。この場合、所定の時間間隔としては任意の時間を設定する。
【0111】
また、本実施形態において、上記の方法により取得されたフィードフォワード制御の入力値は、物品100を搬送する搬送装置2と同じ搬送装置(物として同一の搬送装置、または、仕様および設定が同じ別の搬送装置)に対して作業する別のロボットに使用してもよい。
【0112】
また、本実施形態においては、図12に示されるように、複数の制御装置20が上位制御システム100に接続されていてもよい。上位制御システム100は、例えば、複数の制御装置20と有線で接続されたコンピュータ、複数の制御装置20と同じ敷地内に配置されたコンピュータ等である。上位制御システム100はフォグコンピュータと称される時もある。上位制御システム100は、生産管理システム、出荷管理システム、ロボット用管理システム、部門管理システム等であり得る。
【0113】
複数の上位制御システム100が他の上位制御システム200等に接続されていてもよい。他の上位制御システム200は、例えば、複数の上位制御システム100と有線または無線で接続されたクラウドサーバである。複数の制御装置20と上位制御システム100とによって例えば管理システムが形成される。
【0114】
上位制御システム100は、それぞれ、プロセッサ等を有する制御部と、表示装置と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置等を備えている。
【0115】
このようなシステムは、例えば、図13に示されるように、複数のエッジコンピュータ8、複数の上位制御システム100、および単一または複数の他の上位制御システム200を含んでいてもよい。このようなシステムにおいて、制御装置20およびロボット10は、エッジコンピュータであり得る。制御装置20およびロボット10の一部が上位制御システムであってもよい。このようなシステムは、有線または無線のネットワークを備えている。
【符号の説明】
【0116】
10 ロボット(追随ロボット)
10a アーム
23 記憶部(特徴量記憶部、入力値記憶部)
23c 追随制御プログラム(移動指令手段)
23e 特徴量検出プログラム(特徴量検出手段)
23f 移動量計算プログラム(移動量計算手段)
50 視覚センサ
102 追随対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13