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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20240305BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23Q11/12 E
G05B19/4063 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022526570
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019749
(87)【国際公開番号】W WO2021241556
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020094120
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓真
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-040184(JP,A)
【文献】特開2019-136780(JP,A)
【文献】特開2009-101449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/12
G05B 19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の送り軸へ潤滑油を供給する潤滑油供給部と、
加工プログラムを解析し、前記送り軸において特定の往復動作が行われるか否かを判定するコード解析部と、
前記特定の往復動作が行われると判定された場合、前記工作機械が前記特定の往復動作を行う際に、前記潤滑油供給部による前記潤滑油の供給を専用パターンに変更する制御部と、
を備え
前記送り軸は、ボールねじを含み、前記コード解析部は、前記加工プログラムにおいて、前記ボールねじの第1反転位置から第2反転位置への第1移動距離と、前記第2反転位置から指令位置への第2移動距離との両方が特定距離以内である場合、前記送り軸において前記特定の往復動作が行われると判定する、
工作機械システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記特定の往復動作が行われないと判定された場合、前記工作機械が通常動作を行う際に、前記潤滑油供給部による前記潤滑油の供給を通常パターンに変更する、請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記通常パターン及び前記専用パターンは、それぞれ前記潤滑油の吐出間隔及び吐出期間を含み、
前記専用パターンにおける前記吐出間隔及び前記吐出期間は、それぞれ、前記通常パターンにおける前記吐出間隔及び前記吐出期間よりも短い、請求項2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
記特定の往復動作は、前記ボールねじのリード幅以内の距離において行われる往復動作を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【請求項5】
前記工作機械が前記特定の往復軸動作を行う際に、前記特定の往復動作が実行されたことを示す報知情報を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送り軸に対してボールねじ及びリニアガイドを使用する工作機械は、ボールねじ及びリニアガイドに潤滑油を供給する潤滑装置を有する。潤滑装置は、工作機械の動作中に、一定の時間間隔で動作する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法は、工作機械の運転時に、テ-ブルが支持体の案内面を往復移動している時間を積算し、積算時間が時間T0になったときに、案内面へ潤滑油を一定時間t0内に一定量V0供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-334442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような工作機械において、潤滑油の吐出間隔が長すぎると、潤滑油が不足し、ボールねじを摩耗させてしまう。一方、潤滑油の吐出間隔が短すぎると、潤滑油の消費量が増大してしまう。特に、ボールねじにおいて揺動動作が行われる場合、ボールの接触点が集中的に接触する。そのため、潤滑油による油膜が形成されにくく、フレッチングが生じ、ボールねじが摩耗しやすい。ボールねじが摩耗すると、工作機械の加工精度が低下する等の問題を生じる。しかし、単純に潤滑油の吐出間隔を長くすると、潤滑油の消費量が増大するという問題を生じる。そこで、工作機械に動作に応じて適切な量の潤滑油を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る工作機械システムは、工作機械の送り軸へ潤滑油を供給する潤滑油供給部と、加工プログラムを解析し、前記送り軸において特定の往復動作が行われるか否かを判定するコード解析部と、前記特定の往復動作が行われると判定された場合、前記工作機械が前記特定の往復動作を行う際に、前記潤滑油供給部による前記潤滑油の供給を専用パターンに変更する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、工作機械に動作に応じて適切な量の潤滑油を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る工作機械システムの概要を示す図である。
図2】潤滑油供給部の動作について説明する図である。
図3】ボールねじの特定の往復動作について説明する図である。
図4】工作機械システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る工作機械システム1の概要を示す図である。
工作機械システム1は、数値制御装置10と、工作機械20と、を備える。
数値制御装置10は、工作機械20を制御することにより、工作機械20に所定の機械加工等を行わせるための装置である。
【0009】
数値制御装置10は、コード解析部11と、バッファメモリ12と、制御部13と、表示制御部14と、表示部15と、を備える。
工作機械20は、数値制御装置10の制御に基づいて、切削加工等の所定の機械加工等を行う装置である。
【0010】
工作機械20は、サーボアンプ21と、サーボモータ22と、ボールねじ23と、リニアガイド24と、PLC(Programmable Logic Controller)25と、潤滑油供給部26と、を備える。
【0011】
コード解析部11は、加工プログラムPのコードを解析し、送り軸としてのボールねじ23及びリニアガイド24において特定の往復動作が行われるか否かを判定する。
バッファメモリ12は、例えば揮発性メモリ等で構成され、コード解析部11から提供されたデータを記憶し、当該データを適切なタイミングで制御部13へ送信する。
【0012】
制御部13は、加工プログラムPに基づいて潤滑油供給部26による潤滑油の供給を制御する。具体的には、制御部13は、コード解析部11により特定の往復動作が行われると判定された場合、工作機械20が特定の往復軸動作を行う際に、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を専用パターンに変更する。なお、制御部13による制御の詳細は後述する。
【0013】
表示制御部14は、制御部13の制御に従い、表示部15に所定の情報を表示させる。具体的には、表示制御部14は、工作機械20が特定の往復軸動作を行う際に、特定の往復動作が実行されたことを示す報知情報を表示部15に表示させる。
【0014】
表示部15は、液晶ディスプレイ等で構成され、表示制御部14の制御に従い、所定の情報を表示する。
サーボアンプ21は、制御部13から制御信号を受信し、サーボモータ22の駆動を制御する。
【0015】
サーボモータ22は、サーボモータ22の制御に従って駆動される。サーボモータ22の回転によって、ボールねじ23が駆動される。
ボールねじ23は、サーボモータ22の回転によって駆動される。また、ボールねじ23は、潤滑油供給部26から潤滑油の供給を受ける。
【0016】
リニアガイド24は、ボールねじ23の駆動に従って動作する。また、リニアガイド24は、潤滑油供給部26から潤滑油の供給を受ける。
【0017】
PLC25は、制御部13からバス(図示せず)を介して機能信号等を受け付ける。そして、PLC25は、これらの信号をシーケンス・プログラムによって処理し、処理された出力信号を工作機械2へ出力する。
【0018】
潤滑油供給部26は、PLC25から出力された出力信号の制御に従い、工作機械20の送り軸としてのボールねじ23及びリニアガイド24へ潤滑油を供給する。
【0019】
図2は、潤滑油供給部26の動作について説明する図である。
図2において、専用パターンは、特定の往復動作時における吐出間隔A1及び吐出期間A2を含み、通常パターンは、上述した通常動作時における吐出間隔B1及び吐出期間B2を含む。
【0020】
吐出間隔A1は、ボールねじ23による特定の往復動作時における潤滑油の吐出間隔を示し、吐出期間A2は、ボールねじ23による特定の往復動作時における潤滑油の吐出期間を示す。
また、吐出間隔B1は、ボールねじ23による通常動作時における潤滑油の吐出間隔を示し、吐出期間B2は、ボールねじ23による通常動作時における潤滑油の吐出期間を示す。
【0021】
図2に示すように、特定の往復動作時における吐出間隔A1は、通常動作時における吐出間隔B1よりも短い。また、特定の往復動作時における吐出期間A2は、通常動作時における吐出期間B2よりも短い。
【0022】
ここで、特定の往復動作とは、例えば、ボールねじ23のリード幅以内の距離において行われる往復動作をいう。なお、ボールねじ23のリード幅は、ボールねじ23のボールの一回転に伴い、ボールねじ23が軸方向に進む距離を示す。
【0023】
このような特定の往復動作が行われる場合、ボールねじ23及びリニアガイド24は、ボールの接触点が集中的に接触し、通常動作時よりも摩耗しやすくなる。そのため、通常動作と同様に潤滑油を供給すると、潤滑油による油膜が形成されにくく、フレッチングが生じ、ボールねじが摩耗しやすい。また、単純に潤滑油の吐出間隔を長くすると、潤滑油の消費量が増大するという問題を生じる。そこで、本実施形態に係る工作機械システム1は、特定の往復動作を行う際に、潤滑油の供給を専用パターンに変更することによって適切な量の潤滑油を提供する。
【0024】
図3は、ボールねじ23の特定の往復動作について説明する図である。
図3に示すように、ボールねじ23の1回目の反転位置C1から2回目の反転位置C2への移動距離を移動距離L1とし、2回目の反転位置C2から次の指令位置C3への移動距離を移動距離L2とする。また、特定距離Lは、ボールねじ23のリード幅を示す。
【0025】
そして、加工プログラムPにおいて、移動距離L1及び移動距離L2の両方が特定距離L以内である場合、コード解析部11は、ボールねじ23において特定の往復動作が行われると判定する。
【0026】
制御部13は、コード解析部11により特定の往復動作が行われると判定された場合、工作機械20が特定の往復軸動作を行う際に、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を専用パターンに変更する。
【0027】
また、制御部13は、コード解析部11により特定の往復動作が行われると判定されない場合、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を通常パターンによって行う。
【0028】
図4は、工作機械システム1の処理を示すフローチャートである。
ステップS1において、コード解析部11は、加工プログラムPのコードを解析する。
ステップS2において、コード解析部11は、ボールねじ23において特定の往復動作が行われるか否かを判定する。特定の往復動作が行われると判定された場合(YES)、処理は、ステップS3へ移る。一方、特定の往復動作が行われないと判定された場合(NO)、処理は、ステップS4へ移る。
【0029】
ステップS3において、コード解析部11は、加工プログラムPにおいて特定の往復動作が行われると判定されたブロックにフラグを設定する。
ステップS4において、コード解析部11は、加工プログラムP全体の解析が終了したか否かを判定する。加工プログラムP全体の解析が終了した場合(YES)、処理は、ステップS5へ移る。一方、加工プログラムP全体の解析が終了していない場合(NO)、処理は、ステップS1へ戻る。
【0030】
ステップS5において、制御部13は、加工プログラムPに従って、加工プログラムPを構成する各ブロックを実行する。これにより、ボールねじ23及びリニアガイド24は、制御部13の制御に従って動作する。
【0031】
ステップS6において、制御部13は、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を通常時パターンに変更する。また、制御部13は、既に通常パターンに設定されている場合、通常時パターンを維持する。これにより、潤滑油供給部26は、通常パターンによってボールねじ23及びリニアガイド24に潤滑油を供給する。
【0032】
ステップS7において、制御部13は、実行しているブロックにフラグが設定されているか否かを判定する。フラグが設定されている場合(YES)、処理は、ステップS8へ移る。一方、フラグが設定されていない場合(NO)、処理は、ステップS5へ戻る。
【0033】
ステップS8において、制御部13は、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を専用パターンに変更する。
ステップS9において、表示制御部14は、特定の往復動作が実行されたことを示す報知情報(例えば、メッセージ等)を表示部15に表示させる。
【0034】
ステップS10において、制御部13は、加工プログラムPの実行が終了したか否かを判定する。加工プログラムPの実行が終了した場合(YES)、処理はその後終了する。一方、加工プログラムPの実行が終了していない場合(NO)、処理は、ステップS7へ戻る。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、工作機械システム1は、工作機械20のボールねじ23及びリニアガイド24へ潤滑油を供給する潤滑油供給部26と、加工プログラムPを解析し、ボールねじ23及びリニアガイド24において特定の往復動作が行われるか否かを判定するコード解析部11と、特定の往復動作が行われると判定された場合、工作機械20が特定の往復動作を行う際に、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を専用パターンに変更する制御部13と、を備える。
【0036】
これにより、工作機械システム1は、ボールねじ23及びリニアガイド24の動作に先行して加工プログラムを解析し、特定の往復動作の開始と同時に潤滑油の供給を専用パターンによって行う。したがって、工作機械システム1は、特定の往復動作が行われる場合であっても、工作機械20に動作に応じて適切な量の潤滑油を提供することができる。
【0037】
また、制御部13は、特定の往復動作が行われないと判定された場合、工作機械20が通常動作を行う際に、潤滑油供給部26による潤滑油の供給を通常パターンに変更する。これにより、工作機械システム1は、特定の往復動作を行わない場合にも工作機械20に動作に応じて適切な量の潤滑油を提供することができる。
【0038】
また、通常パターン及び専用パターンは、それぞれ潤滑油の吐出間隔及び吐出時間を含み、専用パターンにおける吐出間隔及び吐出時間は、通常パターンにおける吐出間隔及び吐出時間よりも短い。これにより、工作機械システム1は、通常動作及び特定の往復動作の両方において適切な量の潤滑油を供給することができる。
【0039】
また、送り軸は、ボールねじ23を含み、特定の往復動作は、ボールねじ23のリード幅以内の距離において行われる往復動作を含む。これにより、工作機械システム1は、ボールねじ23の特定の往復動作に応じて適切な量の潤滑油を供給することができる。
【0040】
また、工作機械システム1は、工作機械20が特定の往復軸動作を行う際に、特定の往復動作が実行されたことを示す報知情報を表示部15に表示する表示制御部14を更に備える。これにより、工作機械システム1は、例えば、工作機械20を使用するオペレータに対して特定の往復動作が行われることを適切に報知することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の工作機械システム1は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の工作機械システム1により行なわれる制御方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0042】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0043】
また、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記各実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 工作機械システム
10 数値制御装置
20 工作機械
11 コード解析部
12 バッファメモリ
13 制御部
14 表示制御部
15 表示部
21 サーボアンプ
22 サーボモータ
23 ボールねじ
24 リニアガイド
25 PLC
26 潤滑油供給部
図1
図2
図3
図4