(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】大きな細孔を有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20240305BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240305BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08J9/30
C11D3/37
C11D17/06
(21)【出願番号】P 2022530256
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2019122048
(87)【国際公開番号】W WO2021102935
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ロバート・ウェイン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、シャオ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特許第5805847(JP,B2)
【文献】特表2018-535743(JP,A)
【文献】特開2015-096533(JP,A)
【文献】特許第5203959(JP,B2)
【文献】国際公開第2007/062347(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/138820(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/077627(WO,A1)
【文献】特開2001-089797(JP,A)
【文献】特開平10-237213(JP,A)
【文献】特表2017-514973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/30
C11D 3/37
C11D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート物品を作製するためのプロセスであって、
a)水溶性ポリマー及び界面活性剤を含み、40℃及び1s
-1で測定した1,000cps~25,000cpsの粘度を有する、湿潤プレミックスを調製する工程と、
b)前記湿潤プレミックスに通気して、0.05~0.5g/mLの密度を有する通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、
c)前記通気された湿潤プレミックスを少なくとも5分間エージングする工程と、
d)前記エージングされた、通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、
e)前記形成されたシートを1分~60分の乾燥時間にわたって乾燥させて、前記シート物品を作製する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記工程c)が、5分~300
分の期間にわたって実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記エージングされた、通気された湿潤プレミックスのシートが、70℃~170
℃の制御された表面温度を有する加熱表面上で乾燥さ
れる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記加熱表面が回転ドラム乾燥機の外面で
ある、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記加熱表面が加熱された移動ベルトの外面である、請求項
3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記工程d)において、前記シートが、5~80rp
mの速度で回転する回転バーを使用することによって形成される、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記回転バーは、前記回転バーと前記回転ドラムの外面又は前記加熱された移動ベルトとの間の距離が、3mm~15m
mになるように配置されている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記工程d)において、前記シートが、0.1m/分~50m/
分の供給速度を有する供給ダイによって形成される、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記供給ダイが、0.5mm~10m
mの供給厚さを有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記湿潤プレミックスが、(1)前記湿潤プレミックスの15重量%~70重量
%の範囲の固形分含有量、並びに(2)40℃及び1s
-1で測定したときに、3,000cps~24,000cp
sの範囲の粘度によって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記湿潤プレミックスが、通気前に40℃~100
℃の温度に予熱され、及び/又は前記湿潤プレミックスが、通気中に40℃~100
℃の温度で維持され、及び/又は前記通気された湿潤プレミックスが、エージング中に10℃~100
℃の温度で維持される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記工程b)における通気が、ローターステーターミキサー、プラネタリーミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スパージャー、又はこれらの任意の組み合わせ
から選択される機械的処理手段を使用することによって前記湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記工程e)における乾燥が、前記形成されたシートの第1の面から対向する前記第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、70℃~200℃の温度で実施され、前記加熱方向が、前記乾燥時間の半分超にわたって、重力方向と実質的に反対である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記乾燥時間が、2~40
分であり、及び/又は前記乾燥温度が、80℃~170
℃であり;前記加熱方向が、前記乾燥時間の55%
超にわたって前記重力方向と実質的に反対である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
水溶性ポリマー及び界面活性剤を含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、前記固体シート物品は、(i)0.5mm~4mmの範囲の厚さ、及び(ii)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(iii)100μm~2000μmの全体平均孔径、によって特徴付けられ、前記固体シート物品は、対向する上面及び底面を有し、前記上面が、300μm超である表面平均細孔直径を有する、可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項16】
前記上面が、300μm~2m
mの表面平均細孔直径を有する、請求項15に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項17】
前記固体シート物品が、前記上面に隣接する上部領域と、前記底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域と、を含み、前記上部領域、前記中間領域、及び前記底部領域が、同じ厚さを有し、前記上部領域、前記中間領域、及び前記底部領域の各々が、平均孔径によって特徴付けられ、前記上部領域における平均孔径に対する前記底部領域における平均孔径の比が、0.6~1.
5である、請求項15又は16に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項18】
前記中間領域における平均孔径に対する前記底部領域における平均孔径の比が、0.5~1.
5であり、及び/又は前記上部領域における平均孔径に対する前記中間領域における平均孔径の比が、1~1.
5である、請求項15~17のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項19】
前記固体シート物品が、前記固体シート物品の総重量に対して5%~40%の前記水溶性ポリマーを
含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート。
【請求項20】
前記水溶性ポリマーが、第1の重量平均分子量を有する第1の水溶性ポリマーと、第2の重量平均分子量を有する第2の水溶性ポリマーと
を含む、請求項19に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項21】
前記固体シート物品が、前記固体シート物品の総重量に対して5%~80
%の前記界面活性剤を含
む、請求項15~20のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項22】
前記固体シート物品が、前記固体シート物品の総重量に対して0.1%~25
%の可塑剤を更に含
む、請求項15~21のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項23】
前記固体シート物品が、
・85%~100
%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μ
mの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μ
mの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・前記固体シート物品の0.5重量%~25重量
%の最終水分含有量、及び/又は
・0.6mm~3.5m
mの厚さ、及び/又は
・50グラム/m
2~250グラム/m
2
の坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm
3~0.5グラム/cm
3
の密度、及び/又は
・0.03m
2/g~0.25m
2/
gの比表面積、によって特徴付けられる、請求項15~22のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に大きな細孔を有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品、並びにそれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマーキャリア又はマトリックス中に界面活性剤及び/又は他の活性成分を含む可撓性溶解性シートは周知である。このようなシートは、水中での溶解時に界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリ内の従来の顆粒又は液体形態と比較して、そのようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、そのようなシートは、より可撓性であり、脆性がより低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
所望の製品機能を達成するのに十分な量の界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するために、そのような可撓性及び溶解性シートの複数の層を使用することが望ましく、そのような複数の層を一体型溶解性固体物品に組み立てることが更に望ましく、これはその後、一体型の最終製品として販売され得る。しかしながら、これらの可撓性かつ溶解性シートの複数の層を単一一体型の物品に組み立てようと試みる場合、単層構造と比較して水への溶解速度が著しく遅いことを含む、様々な課題に遭遇し得る。
【0004】
溶解性を改善するために、いくつかの研究によって、約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を有する多孔質シートが開発されている。特に、国際公開第2010077627号は、原材料のプレミックスに激しく通気し、次いで、通気されたプレミックスをバッチで(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内で)熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成することを含む、OCF構造を有するそのような多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。国際公開第2012138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突式オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010077627号のものと同様のプロセスを開示している。これらの研究において、このようなOCF構造は、得られた多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、そのようなシート内には、より厚い気泡壁を有する、視覚的により高密度でありかつより多孔性の低い領域が(すなわち、上面に)依然として存在する。このような高密度領域は、シートを通る水の流れに悪影響を及ぼし、それによって、シートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010077627号
【文献】国際公開第2012138820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、可撓性多孔質溶解性シート内の細孔構造を改善し、その溶解特性を向上させることが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に上面に、更に改善された細孔構造を有する可撓性多孔質溶解性シート、並びにそのようなシートを作製するための方法を提供する。具体的には、本発明以前には、通気されたプレミックス中の気泡は経時的に徐々に崩壊するので、通気されたプレミックスの長期保存は、シートの細孔構造、及びシートの溶解プロファイルに悪影響を及ぼす恐れがあると考えられていた。したがって、通気工程後に、通気されたプレミックスを直ちに乾燥させることが提案されていた。驚くべきことに、本発明の発明者らは、乾燥工程の前にエージング工程(すなわち、通気を停止した後にしばらくの間、通気されたプレミックスを維持する)を導入すると、細孔構造が著しく改善され得、それによって、溶解プロファイルが著しく改善されることを、予想外に見出した。したがって、本発明者らは、本発明以前には得られたことのない、更に改善された細孔構造を有する可撓性多孔質溶解性シートの調製に成功した。
【0008】
一態様では、本発明は、シート物品を作製するためのプロセスであって、a)水溶性ポリマー及び界面活性剤を含み、40℃及び1s-1で測定した約1,000cps~約25,000cpsの粘度を有する、湿潤プレミックスを調製する工程と、b)当該湿潤プレミックスを通気して、約0.05~約0.5g/mLの密度を有する通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、c)当該通気された湿潤プレミックスを少なくとも約5分間エージングする工程と、d)当該通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、e)当該形成されたシートを約1分~約60分の乾燥時間にわたって乾燥させて、シート物品を作製する工程と、を含む、プロセスに関する。好ましくは、工程c)は、約5分~約300分、好ましくは約5分~約200分、より好ましくは約10分~約150分、例えば、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、70分、80分、90分、100分、110分、120分、130分、140分、又はそれらの間の任意の範囲の持続時間にわたって実施され得る。好ましくは、工程e)における乾燥は、形成されたシートの第1の面から第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、約70℃~200℃の温度で実施されてよく、当該加熱方向は、当該乾燥時間の半分超にわたって、重力方向と実質的に反対である。
【0009】
通気された湿潤プレミックスによって形成されたシートは、好ましくは、約70℃~約170℃、好ましくは約75℃~約150℃、より好ましくは約80℃~約120℃の制御された表面温度を有する加熱表面上で乾燥させてよい。好ましくは、加熱表面は、乾燥中のシートのための一次熱源であってよい。より好ましくは、加熱表面は、乾燥中のシートのための唯一の熱源であってよい。
【0010】
具体的には、加熱表面は回転ドラム乾燥機の外面であってよく、好ましくは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有し、乾燥工程中に約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転する、回転ドラム乾燥機の外面であってよい。あるいは、加熱表面は加熱された移動ベルト(例えば、コンベヤベルト)の外面であってもよく、好ましくは、乾燥工程中に、約0.1m/分~約50m/分、好ましくは約0.15m/分~約20m/分、より好ましくは約0.2m/分~約10m/分、例えば、0.1m/分、0.2m/分、0.3m/分、0.4m/分、0.5m/分、0.7m/分、1m/分、2m/分、3m/分、5m/分、10m/分、15m/分、20m/分、又はそれらの間の任意の範囲の速度で移動する加熱された移動ベルト(例えば、コンベヤベルト)の外面であってもよい。
【0011】
更に、工程d)において、シートは、約5~約80rpm、好ましくは約6~約60rpm、より好ましくは約8~約50rpm、最も好ましくは約10~約40rpmの速度で回転する回転バーを使用することによって形成してもよい。好ましくは、回転バーは、回転バーと、回転ドラムの外面又は加熱された移動ベルトとの間の距離が、約3mm~約15mm、好ましくは約4mm~約12mm、より好ましくは約5mm~約10mm、最も好ましくは約6mm~約10mmになるように配置され得る。あるいは、工程d)において、シートは、約0.1m/分~約50m/分、好ましくは約0.15m/分~約20m/分、より好ましくは約0.2m/分~約10m/分、例えば、0.1m/分、0.2m/分、0.3m/分、0.4m/分、0.5m/分、0.7m/分、1m/分、2m/分、3m/分、5m/分、10m/分、15m/分、20m/分、又はそれらの間の任意の範囲の供給速度を有する供給ダイによって形成されてもよい。好ましくは、供給ダイは、0.5mm~10mm、好ましくは1mm~6mm、より好ましくは1.5mm~4mmの供給厚を有し得る。好ましくは、供給ダイは、供給ダイと回転ドラムの外面又は加熱された移動ベルトとの間の距離が約0.1mm~約15mm、好ましくは約0.2mm~約12mm、より好ましくは約0.3mm~約10mm、最も好ましくは約0.5mm~約5mmになるように配置され得る。
【0012】
また更に、湿潤プレミックスは、(1)湿潤プレミックスの約15重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約50重量%、より好ましくは約25重量%~約45重量%の範囲の固形分含有量、並びに(2)40℃及び1s-1で測定したときに、約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲の粘度によって特徴付けられ得る。
【0013】
また更に、湿潤プレミックスは、通気前に約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の温度に予熱され得;及び/又は湿潤プレミックスは、通気中に約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の温度で維持され得;及び/又は通気された湿潤プレミックスは、工程c)において、約10℃~約100℃、好ましくは約15℃~約70℃、より好ましくは約20℃~約50℃、最も好ましくは約20℃~約40℃の温度で維持され得る。
【0014】
また更に、乾燥時間は、約2~約30分、好ましくは約2~約25分、より好ましくは約2~約20分、最も好ましくは約2~約15分であり得;及び/又は乾燥温度は、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃であり;加熱方向は、乾燥時間の約55%超、好ましくは約60%超、より好ましくは約75%超にわたって重力方向と実質的に反対であり得る。
【0015】
また更に、工程b)における通気は、ローターステーターミキサー、プラネタリーミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スパージャー、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、機械的処理手段を使用することによって湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成され得る。
【0016】
別の態様では、本発明は、水溶性ポリマー及び界面活性剤を含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、当該固体シート物品は、(i)0.5mm~4mmの範囲の厚さ、及び(ii)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(iii)100μm~2000μmの全体平均孔径、によって特徴付けられ、当該固体シート物品は、対向する上面及び底面を有し、当該上面が、約300μm超である表面平均細孔直径を有する、固体シート物品を提供する。具体的には、上面は、約300μm~約2mm、好ましくは約350μm~約1.5mm、より好ましくは約400μm~約1mmの表面平均細孔直径を有し得る。
【0017】
固体シート物品は、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域と、を含み得、上部領域、中間領域、及び底部領域は同じ厚さを有し、上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は平均細孔径によって特徴付けられる。具体的には、上部領域における平均細孔径に対する底部領域における平均細孔径の比は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、より好ましくは約0.8~約1.3、最も好ましくは約1~約1.2であり得;及び/又は中間領域における平均細孔径に対する底部領域における平均細孔径の比は、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1であり得;及び/又は上部領域における平均細孔径に対する中間領域における平均細孔径の比は、約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2であり得る。
【0018】
固体シート物品は、当該固体シート物品の総重量に対して約5%~約40%、好ましくは約8%~約30%、より好ましくは約10%~約25%の水溶性ポリマーを含み得る。好ましくは、水溶性ポリマーは、約5,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約10,000~約300,000ダルトン、更により好ましくは約15,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約20,000~約150,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。より好ましくは、水溶性ポリマーは、第1の重量平均分子量を有する第1の水溶性ポリマーと、第2の重量平均分子量を有する第2の水溶性ポリマーとを含み得、当該第1の重量平均分子量は、約5,000~約50,000ダルトン、より好ましくは約10,000~約40,000ダルトン、更により好ましくは約15,000ダルトン~約35,000ダルトン、最も好ましくは約20,000~約30,000ダルトンであり得;及び/又は当該第2の重量平均分子量は、約20,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約30,000~約300,000ダルトン、更により好ましくは約40,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約50,000~約150,000ダルトンであり得る。好ましくは、水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールであってよい。
【0019】
固体シート物品は、当該固体シート物品の総重量に対して、5%~80%、好ましくは10%~70%、より好ましくは30%~65%の界面活性剤を含み得る。好ましくは、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0020】
更に、固体シート物品は、当該固体シート物品の総重量に対して、0.1%~25%、好ましくは0.5%~20%、より好ましくは1%~15%、最も好ましくは2%~12%の可塑剤を更に含んでいてもよい。好ましくは、可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。より好ましくは、可塑剤はグリセリンであり得る。
【0021】
また更に、固体シート物品は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、並びにこれらの任意の組み合わせなどの1つ以上の追加の成分を含有していてもよい。
【0022】
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、
・約85%~100%、好ましくは約90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・約150μm~約1000μm、好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径、及び/又は
・約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・固体シート物品の約0.5重量%~約25重量%、好ましくは約1重量%~約20%重量%、より好ましくは約3重量%~約10%重量%の最終水分含量、及び/又は
・約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約1.5mmの範囲の厚さ、及び/又は
・約50グラム/m2~約250グラム/m2、好ましくは約80グラム/m2~約220グラム/m2、より好ましくは約100グラム/m2~約200グラム/m2の坪量、及び/又は
・約0.05グラム/cm3~約0.5グラム/cm3、好ましくは約0.06グラム/cm3~約0.4グラム/cm3、より好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.2グラム/cm3、最も好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.15グラム/cm3の密度、及び/又は
・約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは約0.05m2/g~約0.2m2/g、最も好ましくは約0.1m2/g~約0.18m2/gの比表面積によって更に特徴付けられ得る。
【0023】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】バッチプロセスにおいて可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための、先行技術の対流型の加熱/乾燥構成を示す。
【
図2】バッチプロセスにおいて可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための、先行技術のマイクロ波型の加熱/乾燥構成を示す。
【
図3】連続プロセスにおいて可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための、先行技術の衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、バッチプロセスにおいて可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、底部伝導型の加熱/乾燥構成を示す。
【
図5】本発明の別の実施形態による、連続プロセスにおいて別の可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、回転ドラム型の加熱/乾燥構成を示す。
【
図6A】回転ドラム型の加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、布地ケア活性物質を含有する可撓性多孔質溶解性シートの上面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic、SEM)画像を示す。
【
図6B】
図6Aに示されるシートと同じ布地ケア活性物質を含有するが、衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図7A】底部伝導型の加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、ヘアケア活性物質を含有する可撓性多孔質可溶性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図7B】
図7Aに示したシートと同じヘアケア活性物質を含有するが、衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図8A】70分のエージング工程後の湿潤プレミックス中の気泡の写真を示す。
【
図8B】70分のエージング工程前(すなわち、通気工程の直後)の湿潤プレミックス中の気泡の写真を示す。
【
図9A】ドラム乾燥プロセスにおける120分のエージング工程後の湿潤プレミックス中の気泡の写真を示す。
【
図9B】ドラム乾燥プロセスにおける通気後のエージング工程を伴わない、
図9Aに示したものと同じ処方を有する湿潤プレミックス中の気泡の写真を示す。
【
図10A】実施例3の物品1(その上面に大きな細孔を有する本発明の可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図10B】実施例3の物品2(その上面に比較的小さな細孔を有する比較用可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図11】実施例3の物品1及び2の溶解試験における経時的な溶解プロファイルを示し、物品1は、物品2と比較して著しく改善された溶解プロファイルを示す。
【
図12A】実施例4の物品3(その上面に大きな細孔を有する本発明の可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図12B】実施例4の物品4(その上面に比較的小さな細孔を有する比較用可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図13A】実施例5の物品5(その上面に大きな細孔を有する本発明の可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図13B】実施例5の物品6(その上面に比較的小さな細孔を有する比較用可撓性多孔質溶解性シート物品)の上面のSEM画像を示す。
【
図14】実施例5の物品5及び6の溶解試験における経時的な溶解プロファイルを示し、物品5は、物品6と比較して著しく改善された溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90度で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0026】
本明細書で使用するとき、「溶解性」という用語は、20℃で、かつ大気圧下で、全く撹拌せずに8時間以内に、十分な量の脱イオン水中に完全に又は実質的に溶解して、不溶残留物の残留が5重量%未満である、物品の能力を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、物品が制限されずかつ外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(即ち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「シート」とは、三次元形状、即ち、厚さ、長さ、及び幅を有する非繊維状構造体を指すが、一方で、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比は、少なくとも約1:1である。好ましくは、この長さ対厚さのアスペクト比及びこの幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、またこの長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0029】
本明細書で使用するとき、「底面」という用語は、通気された湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直に接触する、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の表面を指し、一方、「上面」という用語は、底面に対向する当該シート物品の表面を指す。更に、このような固体シート物品は、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と底部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分割することができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、厚さが等しく、すなわち、各々が、シート物品の全厚の約1/3の厚さを有する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、ガス、典型的にはガス(空気など)を含有し、乾燥プロセス中に発泡構造が崩壊せずに、それにより物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有パーセントによって説明され得る。
【0031】
本明細書で使用するとき、「水溶性」という用語は、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのこのような材料を、大気圧下で、十分に撹拌しながら、20℃で脱イオン水1リットル(1L)中に入れたときに、目に見える固形分を残すことも目に見える別個の相を形成することもなく、水に完全に溶解又は分散する、サンプル材料の能力を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「通気させる」、「通気させること」、又は「通気」という用語は、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物にガスを導入するプロセスを指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、「加熱方向」という用語は、熱源が物品に熱エネルギーを印加する方向であって、その結果、そのような物品の一方の側から他方の側へと減少する、そのような物品の温度勾配をもたらす方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が物品に熱エネルギーを印加して、当該一方の側から反対側へと減少する温度勾配を発生させた場合、加熱方向は、当該一方の側から当該反対側に伸びるとみなされる。このような物品の両側又はそのような物品の異なる部分が、そのような物品にわたって観察可能な温度勾配を伴わずに同時に加熱され、その後、加熱は非方向的な方法で行われ、加熱方向は存在しない。
【0034】
本明細書で使用するとき、「実質的に反対側」又は「実質的にオフセットしている」という用語は、それらの間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「実質的に整列された」又は「実質的な整列」という用語は、それらの間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、「一次熱源」という用語は、物体によって吸収される総熱エネルギー(例えば、本発明に係る通気された湿潤プレミックスのシート)の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「制御された表面温度」という用語は、比較的安定した、すなわち、+/-20%未満の変動、好ましくは+/-10%未満の変動、より好ましくは+/-5%未満の変動を有する表面温度を指す。
【0038】
「エージ」又は「エージング」という用語は、本明細書で使用するとき、著しい量のガスを更に導入することなく、通気された湿潤混合物又はプレミックスをしばらくの間維持するプロセスを指す。好ましくは、エージングは、機械的エネルギー入力を本質的に含まない、及び/又は入熱を本質的に含まない条件下で実施され得る。より好ましくは、エージングは、全く撹拌することなく周囲温度下で実施され得る。
【0039】
「~を本質的に含まない(essentially free of)」又は「~を本質的に含まない(essentially free from)」という用語用語は、示される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは、そのような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。示される物質がかかる組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在するような組成物又は製品が含まれ得る。
【0040】
II.固体シート物品を作製するためのプロセスの概要
国際公開第2010077627号は、溶解を改善するように機能する約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に原材料のプレミックスを形成し、これを激しく通気し、次いでバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。このようなOCF構造は、結果として得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、そのようなシート内には、より厚い気泡壁を有する、視覚的により高密度で、より多孔性の低い底部領域が依然として存在する。このような高密度の底部領域は、シートを通る水の流れに悪影響を及ぼし、それによってシートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼし得る。複数のこのようなシートを一緒に積層して多層構造を形成すると、複数の高密度底部領域の「バリア」効果が特に増強される。
【0041】
国際公開第2012138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突式オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010077627号のものと同様のプロセスを開示している。このような連続乾燥プロセスによって形成されるOCFシートは、その異なる領域にわたる、改善された細孔構造内の均一性/一貫性によって特徴付けられる。残念ながら、そのようなOCFシートには、比較的小さい細孔開口を有する上面及び比較的小さい細孔を有する上部領域(すなわち、クラスト状の上部領域)などの律速因子が依然として存在し、これは、そこを通過する水の流れに悪影響を及ぼし、その溶解を減速させる可能性がある。
【0042】
上述のプロセスにおける乾燥工程中に、OCF構造は、水蒸発、気泡崩壊、薄膜気泡表面から気泡間のプラトー境界内への介在液体排出(気泡間の開口部を生成して連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化といった同時的な機構の下で形成される。様々な処理条件が、例えば、湿潤プレミックス中の固体含有量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度などのこれらの機構、並びに制御された排液を達成して所望のOCF構造を形成するように処理条件を均衡化させる必要性に影響し得る。
【0043】
上述の処理条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に顕著な影響を及ぼし得るということが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。
【0044】
例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向性物質(すなわち、はっきりとした加熱方向がない)に適用される場合、又は乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向と実質的に整列している場合(すなわち、その間のオフセット角度が90°未満である場合)、得られる可撓性多孔質溶解性固体シートは、より小さい細孔開口を有しかつその厚さにわたる方向に沿った異なる領域においてより大きな孔径変動を有する上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分にわたって、加熱方向が重力方向からオフセットしているとき(すなわち、その間に90°以上のオフセット角度で)、得られる固体シートは、より大きい細孔開口を有しかつそのようなシートの厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動を有する上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、そこを流れる水に対して受容性が高く、したがって、前者のシートよりも溶解性が高い。
【0045】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は誤整列、及びその持続時間は、気泡間の介在液体排出にかなり影響し、これに対応して、固化プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらし得ると考えられる。このような違いは、以下の
図1~
図4により明確に示される。
【0046】
図1は、対流型の加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型10(金属、セラミック、又はTeflon(登録商標)などの任意の好適な材料で作製され得る)を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面12A(すなわち、上部面)と、対向する第2の面12B(すなわち、金型10の支持面と直接接触しているので底部面)と、を有する、シート12を形成する。このような金型10を、乾燥工程中に約45~46分間130℃の対流式オーブン内に配置する。対流式オーブンは、シート12を上方から、すなわち、(斜交平行模様の矢印で示されるように)下向きの加熱方向に沿って加熱し、これは、シート12内に第1の面12Aから対向する第2の面12Bへと減少する温度勾配を形成する。下向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるような)と整列し、そのような整列位置は、乾燥時間全体にわたって維持される。乾燥中、重力は液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する一方で、下向きの加熱方向は、上部領域を最初に乾燥させ、底部領域を最後に乾燥させる。その結果、多孔質固体シートが、完全に膨張する可能性を有していなかった気泡によって形成された小さな開口部を有する多数の細孔を含む上面を有して形成される。より小さい細孔開口を有するこのような上面は、シートへの水の侵入にとって最適ではなく、これは、シートの溶解速度を制限し得る。一方、このようなシートの底部領域は、密度が高くかつ多孔性が低く、完全に膨張した気泡によって形成されるが数の非常に少ないより大きな細孔を有しており、そのような底部領域内の細孔間の気泡壁は、重力によってもたらされる下向きの液体排出を起因として厚い。より少ない細孔及び厚い気泡壁を有するこのような高密度の底部領域は、シートの全体的な溶解速度に対して更なる律速因子となる。
【0047】
図2は、マイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型30を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面32A(上部面)と、対向する第2の面32B(底部面)と、を有する、シート32を形成する。次いで、このような金型30を、Industrial Microwave System Inc.(North Carolina)によって提供される低エネルギー密度マイクロ波アプリケータ(図示せず)内に配置し、2.0kWの電力、1フィート/分のベルト速度、及び54.4℃の周囲空気温度で動作させる。金型30を、乾燥工程中、約12分間、このようなマイクロ波照射下に配置する。このようなマイクロ波アプリケータは、はっきりとした又は一貫した加熱方向を伴わずに、シート32を内部から加熱する。それに対応して、シート32には、温度勾配が形成されない。乾燥中、シート32全体を同時に加熱するか、又はほぼ同時に加熱するが、重力(白い矢印によって示されるように)は、依然として底部領域に向かって液体プレミックスを下向きに排出する。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流型の加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、マイクロ波型の乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、シート32全体の同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。更に、マイクロ波エネルギーは、シート32内の水を加熱し、そのような水を沸騰させ、不規則な大きさの気泡を発生させ、厚い気泡壁を有する意図しない高密度領域を形成し得る。
【0048】
図3は、衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型40を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面42A(上部面)と、対向する第2の面42B(底部面)と、を有する、シート42を形成する。次いで、このような金型40を、国際公開第2012138820号の実施例1、表2に記載されているものと同様の条件下で、連続衝突式オーブン(図示せず)内に配置する。このような連続衝突式オーブンは、対向する、かつオフセットする加熱方向(2つのクロスハッチングの矢印によって示されるように)で、上部及び底部の両方からシート42を加熱する。それに対応して、乾燥中にシート42内に明確な温度勾配は形成されず、シート42全体が、その上面及び底面の両方からほぼ同時に加熱される。
図3に記載のマイクロ波型の加熱/乾燥構成と同様に、重力(白い矢印によって示されるような)は、
図4のこのような衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成において、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出し続ける。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流型の加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、その両方からのシート42のほぼ同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。
【0049】
上述の加熱/乾燥構成(対流型、マイクロ波型、又は衝突式オーブン型)とは対照的に、本発明は、加熱の方向が、底部領域に向かう重力によって生じる排液を妨害/低減する(それによって、底部領域における密度が減少し、細孔構造が改善される)ように、かつ乾燥中に上面近傍の気泡がより長い時間をかけて膨張する(それによって、得られるシートの上面に著しく大きな細孔開口を形成する)ように意図的に構成された、通気された湿潤プレミックスを乾燥させるための加熱/乾燥構成を提供する。これらの両特徴は、シートの全体的な溶解速度を改善するために機能し、したがって望ましい。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態による可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、底部伝導型の加熱/乾燥構成を示す。具体的には、金型50を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面52A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面52B(すなわち、上部面)と、を有する、シート52を形成する。このような金型50を、乾燥工程中、例えば、約125~130℃の制御された表面温度を有する予熱されたペルチェプレート上に約30分間配置する。熱は、金型50の底部の加熱された表面から金型を通って伝導して、シート52を下方から、すなわち、(斜交平行模様の矢印によって示されるように)上向きの加熱方向に沿って加熱し、これによって、シート52内に第1の面52A(底部面)から対向する第2の面52B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。このような上向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるような)と反対であり、乾燥時間全体にわたってそのように維持される(すなわち、加熱方向は、乾燥時間のほぼ100%の重力方向とは反対である)。乾燥中、重力は依然として、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する。しかしながら、上向きの加熱方向は、シートを下から上に乾燥させ、底部領域での熱により発生した水蒸気が、上向きに上昇して固化マトリックスから逃れるため、底部領域に向かう下向きの液体排出は、固化マトリックス及び上昇水蒸気によって著しく制限され、「妨害」/低減される。それに対応して、得られる乾燥シートの底部領域は密度が低く、比較的薄い気泡壁を有する多数の細孔を含む。更に、上部領域は、このプロセス中に乾燥される最後の領域であるため、上部領域内の気泡は、膨張するのに十分な時間を有して、得られるシートの上面にかなり大きな開いた細孔を形成し、これは、シートへの水の侵入を促進するのに特に有効である。また、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0051】
図5は、本発明の別の実施形態による可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、回転ドラム型の加熱/乾燥構成を示す。具体的には、供給トラフ60を、通気された湿潤プレミックス61で充填する。加熱された回転可能なシリンダ70(ドラム乾燥機とも称される)を、供給トラフ60の上方に配置する。加熱されたドラム乾燥機70は、約130℃の制御された表面温度によって特徴付けられる円筒状の加熱された外面を有し、これは、(矢頭を伴う細い曲線によって示されるように)時計回り方向に沿って回転して、通気された湿潤プレミックス61を供給トラフ60から拾い出す。通気された湿潤プレミックス61は、ドラム乾燥機70の円筒状の加熱された外面上に薄いシート62を形成し、通気された湿潤プレミックスのそのようなシート62は、約10~15分間回転されて乾燥させられる。このように形成されたシート62の一貫した厚さを確保するために、通気された湿潤プレミックス61の粘度並びにドラム乾燥機70の回転速度及び表面温度を単に調節することによって、シート62の厚さを制御することが可能であるが、レベリング刃(図示せず)をスラリー拾い出し位置付近に配置してもよい。乾燥したら、ドラム回転の終わりに手で又はスクレーパ72によって、シート62を拾い出すことができる。
【0052】
図5に示すように、通気された湿潤プレミックス61によって形成されたシート62は、加熱されたドラム乾燥機70の加熱された外面に直接接触する第1の面62A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面62B(すなわち、上部面)と、を含む。それに対応して、ドラム乾燥機70からの熱は、外向きの加熱方向に沿ってシート62に伝導し、シート62の第1の面62A(底部面)を最初に加熱し、次いで、対向する第2の面62B(上部面)を加熱する。このような外向きの加熱方向は、シート62内に、第1の面62A(底部面)から対向する第2の面62B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。外向きの加熱方向は、ドラム乾燥機70が回転するにつれてゆっくりかつ一定であるが、(
図4の複数の外向きに伸びる斜交平行模様の矢印によって示されるように)非常に明確かつ予想可能な経路に沿って変化している。外向きの加熱方向及び重力方向(白い矢印によって示されるような)の相対的な位置もまた、同様の明確かつ予測可能な方法でゆっくりかつ一定に変化する。乾燥時間の半分未満(すなわち、加熱方向が水平の破線の下にあるとき)の間、外向きの加熱方向は、その間が90°未満のオフセット角度となって重力方向と実質的に整列される。乾燥時間の大部分の間(すなわち、加熱方向が水平の破線と同一であるか、又はそれを超えるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°以上のオフセット角度となって重力方向と反対又は実質的に反対になる。シート62の初期の「開始」コーティング位置に応じて、加熱方向は、乾燥時間の55%超(コーティングがドラム乾燥機70のちょうど底部で始まる場合)、好ましくは乾燥時間の60%超(コーティングが
図5に示されるようにドラム乾燥機70のより高い位置で始まる場合)にわたって、重力方向と反対又は実質的に反対であってよい。結果的に、乾燥工程の大部分の間、回転ドラム型の加熱/乾燥構成でのこのゆっくりとした回転及び加熱方向の変化は、重力によって引き起こされるシート62内の液体排出を制限及び「妨害」/低減するように依然として機能することができ、その結果、そのように形成されたシートにおけるOCF構造の改善をもたらす。加熱されたドラム乾燥機70によって乾燥されることで得られるシートはまた、多数のより均一なサイズの細孔を有する低密度の底部領域と、比較的大きい細孔開口を有する上面と、によって特徴付けられる。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0053】
上述したように所望の加熱方向(すなわち、重力方向に対して実質的にオフセットされた関係)を採用することに加えて、本発明に係る、得られるシートにおける最適なOCF構造を達成するために、湿潤プレミックスの粘度及び/又は固体含有量、通気の量及び速度(通気されたプレミックス中の気泡サイズ及び量に影響を及ぼし、それに対応して、固化シートの孔径/分布/量/特性に影響を及ぼし得る、空気供給ポンプ速度、混合ヘッド速度、空気流量、通気されたプレミックスの密度など)、乾燥温度及び乾燥時間を慎重に調整することが望ましい場合もあり、更に重要であり得る。
【0054】
更に、乾燥工程の前にエージング工程(すなわち、通気を停止した後に、通気されたプレミックスをしばらくの間維持する)を導入すると、より更に改善された細孔構造が得られ、それによって、更に改善された溶解プロファイルを得ることができることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。本発明以前は、通気されたプレミックス中の気泡は時間がたつにつれて徐々に崩壊するので、通気されたプレミックスの長期保存は、シートの細孔構造、並びにシートの溶解プロファイルに悪影響を及ぼす恐れがあると考えられていた。したがって、通気工程後に、通気されたプレミックスを直ちに乾燥させることが提案されていた。驚くべきことに、本発明の発明者らは、通気された湿潤プレミックス中の気泡が、長期保存(例えば、6~8時間)後に実際に徐々に崩壊するが、適切な期間(例えば、5時間未満)のエージング工程が、細孔構造、特に上面の細孔に利益をもたらすことを予想外に見出した。具体的には、乾燥工程前にエージング工程を導入すると、そのようなエージング工程を伴わないプロセスによって得られたシートと比較して、可撓性多孔質溶解性シートの上面により大きな細孔を提供することができる。
【0055】
本発明による可撓性多孔質溶解性シートを作製するためのプロセス、並びにそのようなシートの物理的及び化学的特徴のより詳細な説明を、確保したセクションにて提供する。
【0056】
III.本発明の固体シート物品を作製するプロセス
本発明は、(a)水又は好適な溶媒中に溶解又は分散された原材料(例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤などの活性成分、及び任意選択的に可塑剤)を含有する、約40℃及び1s
-1で測定した約1,000cps~約25,000cpsの粘度によって特徴付けられるプレミックスを形成する工程と、(b)当該プレミックスを(例えば、ガスを湿潤スラリーに導入することによって)通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、(c)当該通気された湿潤プレミックスを少なくとも5分間エージングする工程と、(d)当該通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、e)当該形成されたシートを、当該形成されたシートの第1の面から第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、70℃~200℃の温度で1分~60分の乾燥時間にわたって乾燥させる工程であって、当該加熱方向が、当該乾燥時間の半分超にわたって重力方向から実質的にオフセットしている、すなわち、ほぼ「反重力」加熱方向に沿った加熱下で実施される、乾燥工程と、を含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための新規かつ改善された方法を提供する。このようなほぼ「反重力」加熱方向は、
図4及び
図5において上にそれぞれ示したように、底部伝導型の加熱/乾燥構成及び回転ドラム型の加熱/乾燥構成を含むがこれらに限定されない、様々な手段によって達成することができる。
【0057】
工程(A):湿潤プレミックスの調製
本発明の湿潤プレミックスは、概して、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び/又は他の有益剤、任意選択的な可塑剤、及び他の任意選択的な成分を含む、対象の固体を、プレミックスタンク内の十分な量の水又は別の溶媒と混合することによって調製される。湿潤プレミックスは、メカニカルミキサーを使用して形成することができる。本明細書で有用なメカニカルミキサーには、ピッチ翼を有するタービン、又はMAXBLEND撹拌機(Sumitomo Heavy Industries)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明において、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps~約25,000cpsの所定の範囲内にあるように、湿潤プレミックスの粘度を調節することが特に重要である。湿潤プレミックスの粘度は、後続の乾燥工程中に通気されたプレミックスの細孔膨張及び細孔開口に著しい影響を及ぼし、異なる粘度を有する湿潤プレミックスは、非常に異なる発泡構造体の可撓性多孔質溶解性固体シート物品を形成し得る。一方、湿潤プレミックスが厚すぎる/粘性が高すぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定したときに約25,000cpsよりも高い粘度を有する)場合、このような湿潤プレミックスの通気はより困難になり得る。より重要なことに、後続の乾燥工程中の薄膜気泡面から三次元発泡体のプラトー境界内への介在液体排出は、悪影響を受け得るか、又は著しく制限され得る。乾燥中の介在液体排出は、その後の乾燥工程中に通気された湿潤プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口を可能にするために重要であると考えられる。その結果、そのように形成された可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、著しく小さい細孔及び細孔間のより低い相互結合性(すなわち、開いた細孔よりも「閉じた」細孔の方が多い)を有してもよく、これにより、水がそのようなシート物品の中へ進入し、そこから退出することを困難にする。一方、湿潤プレミックスが薄すぎる/延びすぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps未満の粘度を有する)場合、通気された湿潤プレミックスは十分に安定でない場合があり、すなわち、気泡は、通気後及び乾燥前に湿潤プレミックス中で迅速に破裂、崩壊、又は合体し得る。結果として、得られる固体シート物品は、所望のものに比べて、はるかに多孔性が低く、より高密度であってもよい。
【0059】
具体的には、湿潤プレミックスの粘度は、40℃及び1秒-1で測定したときに約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲である。プレミックスの粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメーター(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、ギャップ幅0.054mm、温度40℃、及び剪断速度1.0レシプロカル秒で360秒間測定する。
【0060】
好ましくは、対象の固体は、当該湿潤プレミックスの総重量に対して約15%~約70%、好ましくは約20%~約50%、より好ましくは約25%~約45%の濃度で湿潤プレミックス中に存在する。固体含有パーセントは、水及び低沸騰アルコールのような明らかに揮発性のあらゆる物質を除いた、固体成分、半固体成分、及び液体成分の全ての総加工混合物の重量による重量パーセントの合計である。一方、湿潤プレミックス中の固体含有量が高すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、介在液体排出を禁止又はその介在液体排出に悪影響を及ぼすレベルまで増加し、本明細書に記載されるような所望の主に連続気泡の多孔質固体構造の形成を防止するレベルまで増加し得る。一方、湿潤プレミックス中の固体含有量が低すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、乾燥中に気泡の破裂/崩壊/合体及び細孔構造の収縮率(%)の増加を引き起こすレベルまで低下して、これにより、多孔性及び密度が著しく小さい固体シート物品を得てもよい。
【0061】
本発明の湿潤プレミックス中の対象の固体のうちで、固体の総重量の約1重量%~約75重量%の界面活性剤、約0.1重量%~約25重量%の水溶性ポリマー、及び任意選択的に約0.1重量%~約25重量%の可塑剤が存在し得る。他の活性剤又は有益剤をプレミックスに添加することもできる。
【0062】
任意選択的に、湿潤プレミックスを、通気プロセスに先立って及び/又は通気プロセス中に、周囲温度よりも高い温度であるが、その内部で成分の分解を引き起こすいかなる温度よりも低い温度にて、迅速に予め加熱される。一実施形態では、湿潤プレミックスを、約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の範囲の高温に維持する。一実施形態では、任意選択的な連続加熱を、通気工程の前に利用する。更に、このような高温で湿潤プレミックスを試し、維持するために、通気プロセス中に追加の熱を加えることができる。これは、1つ以上の表面からの伝導性加熱、蒸気の注入、又は他のプロセス方法により達成することができる。混合物への気泡の導入及び所望の固体シート物品の形成を改善するために、通気工程前に及び/又は通気工程中に、湿潤プレミックスを予め加熱する行為により、固体をより高い含有パーセントで含む湿潤プレミックスの粘度を低下させる方法が提供され得ると考えられる。固体のより高い含有パーセントを実現することは、乾燥の全体的なエネルギー要件を低減し得るために望ましい。したがって、固体パーセントの増加は逆に、水濃度含有量の減少及び粘度の増加をもたらし得る。上述したように、粘度が高すぎる湿潤プレミックスは、本発明の実施には望ましくない。予め加熱することは、そのような粘度の増加を効果的に妨害し、これにより、高い固体含有量のプレミックスを使用した場合であっても、高速溶解性シート物品の製造を可能にする。
【0063】
工程(B):湿潤プレミックスの通気
湿潤プレミックスの通気は、引き続き乾燥時に内部にOCF構造を形成のために十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために実施される。十分に通気された後、湿潤プレミックスは、非通気された湿潤プレミックス(不注意に閉じ込められた気泡をわずかに含んでもよい)又は不十分に通気された湿潤プレミックス(気泡をいくらか含有し得るが、非常に低い体積割合で及びかなり大きい気泡サイズのものを含んでもよい)の密度より著しく低い密度によって特徴付けられる。好ましくは、通気された湿潤プレミックスは、約0.05g/mL~約0.5g/mL、好ましくは約0.08g/mL~約0.4g/mL、より好ましくは約0.1g/mL~約0.35g/mL、更により好ましくは約0.15g/mL~約0.3g/mL、最も好ましくは約0.2g/mL~約0.25g/mLの範囲の密度を有する。
【0064】
通気は、本発明における物理的又は化学的手段のいずれかによって達成することができる。一実施形態では、それは、例えば、ローターステーターミキサー、プラネタリーミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スパージャー、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な機械的処理手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成することができる。別の実施形態では、それは、化学的手段を通して、例えば、発泡系による二酸化炭素(CO2ガス)の形成を含む、1つ以上の成分の化学反応を介してin-situでガス形成を提供するために化学的発泡剤を使用して、達成され得る。
【0065】
特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレーター又はミキサーを使用することによって、コスト効果的に達成され得ることがわかっている。連続加圧ミキサーは、湿潤プレミックスを均質化する又は通気するように働き、均一な気泡サイズを有する、高度に均一かつ安定した発泡構造物を生じさせ得る。高剪断ローター/ステーターの混合ヘッドは、連続気泡発泡体の層において均一な気泡サイズをもたらすことができる。好適な連続加圧エアレーター又はミキサーとしては、Morton泡たて器(Morton Machine Co.,Motherwell,Scotland)、Oakes連続自動ミキサー(E.T.Oakes Corporation,Hauppauge,New York)、Fedco連続ミキサー(Peerless Group,Sidney,Ohio)、Mondo(Haas-Mondomix B.V.,Netherlands)、Aeros(Aeros Industrial Equipment Co.,Ltd.,Guangdong Province,China)、及びPreswhip(Hosokawa Micron Group,Osaka,Japan)が挙げられる。例えば、Aeros A20連続エアレーターは、約300~800(好ましくは約400~600)の混合ヘッド速度設定を伴った約300~800(好ましくは約500~700)の供給ポンプ速度設定で、各々約50~150(好ましくは60~130、より好ましくは80~120)の空気流量で動作させることができる。別の例では、Oakes連続自動ミキサーは、約10~30rpm(好ましくは約15~25rpm、より好ましくは約20rpm)の混合ヘッド速度設定で、約10~30リットル/時間(好ましくは約15~25L/時、より好ましくは約19~20L/時)の空気流量で動作させることができる。
【0066】
上述したように、湿潤プレミックスは、通気プロセス中に高温に維持されて、乾燥中の最適化された通気及び制御された排水のために湿潤プレミックスの粘度を調整することができる。
【0067】
通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、得られる固体シート物品のOCF構造内で均一な層を達成するのを助ける。一実施形態では、通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、約5~約200マイクロメートルであり、別の実施形態では、気泡サイズは、約20マイクロメートル~約100マイクロメートルである。気泡サイズの均一性により、得られる固体シート物品は、一貫した密度を有する。
【0068】
工程(C):エージング
十分な通気後、通気された湿潤プレミックスを、著しい量の空気を更に導入することなくしばらくの間維持する。そのようなエージング工程は、任意の好適な方法で実施されてよい。例えば、通気された湿潤プレミックスを、全く撹拌することなく、バケツ又はタンクなどの容器に貯蔵してよい。別の例では、相分離又は沈降を防ぐために回転バーを使用することによって、通気された湿潤プレミックスを撹拌してもよく、この場合、回転バーの回転速度は、好ましくは、通気された湿潤プレミックスに更に空気及び/又は高剪断力が導入されるのを防ぐのに十分な程度低い(例えば、約5~約80rpm)。いかなる理論にも束縛されるものではないが、通気された湿潤プレミックスにおける高剪断力は、気泡の更なる膨張を損なわせたり、又は更にはかえって気泡を減少させたりする恐れがあると考えられる。
【0069】
具体的には、エージングは、5分~300分、好ましくは5分~200分、より好ましくは10分~150分の期間にわたって実施され得る。上記のように、湿潤プレミックスは、エージング工程中、周囲温度又は高温、例えば、10℃~100℃、好ましくは15℃~70℃、より好ましくは20℃~50℃、最も好ましくは20℃~40℃で維持され得る。
【0070】
工程(D):シート形成
エージング後、エージングされた湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有する1枚以上のシートに形成する。シート形成工程は、例えば、押出成形、鋳造、成型、真空成形、プレス、印刷、コーティングなどによって、任意の好適な方法で実施することができる。より具体的には、通気された湿潤プレミックスは、(i)それを浅いキャビティ若しくはトレー又は特別に設計されたシート型に鋳造することと、(ii)それを乾燥機の連続ベルト又はスクリーン上に押出成形することと、又は(iii)それを回転ドラム乾燥機の外面上にコーティングすること、によってシートに形成することができる。好ましくは、シートが形成される支持面は、金属(例えば、鋼、クロムなど)、TEFLON(登録商標)、ポリカーボネート、NEOPRENE(登録商標)、HDPE、LDPE、ゴム、ガラスなどの、防食で非相互作用及び/又は非粘着性の材料によって形成されるか、又はコーティングされる。
【0071】
好ましくは、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートは、0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは0.9mm~1.5mmの範囲の厚さを有する。通気された湿潤プレミックスのそのような形成されたシートの厚さを制御することは、得られる固体シート物品が所望のOCF構造を有することを確実にするために重要となり得る。形成されたシートが薄すぎる(例えば、厚さが0.5mm未満)場合、通気された湿潤プレミックス中に閉じ込められた気泡の多くが後続の乾燥工程中に膨張して、得られる固体シート物品の厚さ全体を通って延在する貫通孔を形成する。このような貫通孔は、多すぎる場合、シート物品の全体的な構造的完全性及び美的外観の両方を著しく損なう場合がある。形成されたシートが厚すぎる場合には、乾燥のためにより長い時間がかかるだけでなく、その厚さに沿って異なる領域(例えば、上部領域、中間領域、及び底部領域)間のより大きな孔径の変動を有する固体シート物品をもたらすことになる。なぜならば、乾燥時間が長いほど、気泡の破裂/崩壊/合体、液体排出、細孔膨張、細孔開口、水蒸発などによって、より不均衡な力が生じる場合があるからである。更に、比較的薄いシートの複数の層を、所望の洗浄効果又は他の効果をもたらすために、より大きな厚さの三次元構造に組み立てることができ、一方で、迅速に溶解するために十分な細孔構造を依然として提供しながら、比較的短い乾燥時間内で効率的な乾燥を確実にすることができる。
【0072】
工程(E):反重力加熱下での乾燥
本発明の重要な特徴は、乾燥時間全体にわたって、又は少なくとも乾燥時間の半分超にわたって、乾燥工程中の反重力加熱方向の使用である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような反重力加熱方向は、乾燥工程中に形成されたシートの底部領域に向かう過度の介在液体排出を低減又は妨害することができると考えられる。更に、上面が最後に乾燥されるので、形成されたシートの上面付近の気泡を膨張させ、上面に細孔開口を形成するのにより長い時間を可能にする(湿潤マトリックスが乾燥されると、気泡はもはや膨張しないか、又は表面開口を形成することができないため)。その結果、このような反重力加熱による乾燥によって形成される固体シートは、より迅速な溶解、並びに他の驚くべきかつ予想外の利益を可能にする改善されたOCF構造によって特徴付けられる。
【0073】
特定の実施形態では、反重力加熱方向を、
図4に示すものと同じ又は類似する伝導型の加熱/乾燥構成によって提供する。例えば、通気された湿潤プレミックスは、2つの対向する面を有するシートを形成するために、金型へと鋳造されることができる。次いで、金型を、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度によって特徴付けられる平面状の加熱表面を有する、ホットプレート又は加熱された移動ベルト(例えば、加熱されたコンベヤベルト)又は任意の他の好適な加熱装置上に置いてよい。あるいは、通気された湿潤プレミックスを、コンベヤベルトなどの加熱された移動ベルトの外面上に塗布して、2つの対向する面を有するシートを形成してもよい。平面状の加熱表面から通気された湿潤プレミックスのシートの底面へと伝導によって熱エネルギーが伝達されることによって、シートの固化は底部領域から始まり、最後に上部領域に到達するように上向きに徐々に移動する。このプロセス中に加熱方向が主に反重力である(すなわち、重力方向から実質的にオフセットしている)ことを確実にするために、加熱表面は、乾燥中のシートのための一次熱源であることが好ましい。任意の他の加熱源が存在する場合、全体的な加熱方向は適宜変化してもよい。より好ましくは、加熱表面は、乾燥中のシートのための唯一の熱源である。また、加熱された移動ベルトを使用する場合、移動ベルトの外面が上向きであるか、又は下向きから上向きに変化しているときに、通気された湿潤プレミックスを移動ベルトの外面に塗布することが好ましい。乾燥したら、好ましくは、移動ベルトの外面が依然として上向きであるか、又は上向きから下向きに変化しているときに、シートを手で又はスクレーパによって拾い上げてよい。好ましくは、移動ベルトは、乾燥工程中に、約0.1m/分~約50m/分、好ましくは約0.15m/分~約20m/分、より好ましくは約0.2m/分~約10m/分の速度で移動し得る。
【0074】
別の特定の実施形態では、反重力加熱方向を、
図5に示したものと類似する、ドラム乾燥又はローラー乾燥とも称される回転ドラム型の加熱/乾燥構成によって提供する。ドラム乾燥は、加熱された回転可能なドラム(ローラー又はシリンダとも称される)の外面上の原材料の粘性プレミックスから液体を乾燥させてシート状物品を形成するために使用される接触乾燥方法の1種である。これは、大量の乾燥に特に好適な連続乾燥プロセスである。乾燥は、接触加熱/乾燥を介して比較的低温で実施されるため、通常は高いエネルギー効率を有し、原材料の組成的一体性に悪影響を及ぼさない。ドラム乾燥に使用される加熱された回転可能なシリンダは、例えば蒸気又は電気によって内部で加熱され、所定の回転速度でベースブラケットに取り付けられた電動駆動装置によって回転される。加熱された回転可能なシリンダ又はドラムは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有することが好ましい。それは、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を有してもよい。更に、このような加熱された回転可能なシリンダは、約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転する。加熱された回転可能なシリンダは、好ましくは、その外面が非粘着性のコーティングでコーティングされている。非粘着性コーティングは、加熱された回転可能なドラムの外面上に重なってもよく、又は加熱された回転可能なドラムの外面の媒体に固定されてもよい。媒体としては、耐熱不織布、耐熱性炭素繊維、耐熱金属又は非金属メッシュなどが挙げられるが、これらに限定されない。非粘着性コーティングは、シート形成プロセス中の損傷からシート様物品の構造的一体性を効果的に維持することができる。
【0075】
加熱表面(例えば、回転ドラム乾燥機の外面又は加熱された移動ベルト)上にシートを形成するために、独立して、又は乾燥装置(例えば、回転ドラム乾燥機又は加熱された移動ベルト)の一部として、供給機構を提供してもよい。そのような供給機構は、上記の原材料の通気された湿潤プレミックスを加熱表面上に塗布し、それによって、加熱表面上に粘性プレミックスの薄層を形成するために用いられる。したがって、プレミックスのこのような薄層は、加熱表面によって接触加熱/乾燥を介して乾燥される。供給機構は、供給ホッパ、供給ダイ、押出成形機、又はそれを通して通気された湿潤プレミックスが加熱表面上に塗布される回転バーを含んでいてもよい。供給機構は、通気された湿潤プレミックス、供給の動的観察のための撮像装置、並びに/又は供給ホッパ、供給ダイ、押出成形機、若しくは回転バーの位置及び/若しくは傾斜角を調整するための調整装置を収容するために用いられる供給トラフを更に含んでいてもよい。
【0076】
好ましいが必須ではない実施形態では、通気された湿潤プレミックスを塗布するために、回転バーが用いられる。好ましくは、回転バーは、5~80rpm、好ましくは6~60rpm、より好ましくは8~50rpm、最も好ましくは10~40rpmの速度で回転し得る。また好ましくは、回転バーは、回転バーと、回転ドラムの外面又は加熱された移動ベルトとの間の距離が3mm~15mm、好ましくは4mm~12mm、より好ましくは5mm~10mm、最も好ましくは6mm~10mmになるように配置され得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、適切な回転速度及び/又は回転バーと回転ドラムの外面若しくは加熱された移動ベルトとの間の適切な距離が使用される場合、回転バーは、更なる気泡を導入しない、及び/又は大きな気泡の形成を損なわせる恐れがある高剪断力を引き起こさないと考えられる。したがって、加熱表面上に供給されるプレミックスの気泡サイズが更に大きくなり、次に、形成されたシートにおいて細孔構造が改善され得る。
【0077】
別の好ましいが必須ではない実施形態では、通気された湿潤プレミックスを塗布するために、供給ダイが用いられる。好ましくは、供給ダイは、約0.1m/分~約50m/分、好ましくは約0.15m/分~約20m/分、より好ましくは約0.2m/分~約10m/分の供給速度を有し得る。また好ましくは、供給ダイは、供給ダイと回転ドラムの外面又は加熱移動ベルトとの間の距離が0.1mm~15mm、好ましくは0.2mm~12mm、より好ましくは0.3mm~10mm、最も好ましくは0.5mm~5mmになるように配置され得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、適切な供給速度及び/又は供給ダイと回転ドラムの外面若しくは加熱された移動ベルトとの間の適切な距離が使用される場合、好ましいシート形成及び/又は更に大きな気泡サイズが実現し得ると考えられる。
【0078】
また、急速な熱損失を防ぐために、好ましくはベースブラケットに取り付けられた加熱シールドが存在していてもよい。加熱シールドはまた、加熱表面により必要とされるエネルギーを有効に節約し、それによって、エネルギー消費を低減し、かつコスト削減を提供することができる。加熱シールドは、モジュール式組立構造体、又は統合型構造体であり、基部ブラケットから自由に取り外すことができる。熱蒸気を吸引するための加熱シールドには、何らかの水凝縮物が、形成されているシート様物品上に落下するのを回避するために、吸引装置も設置されている。
【0079】
加熱表面によって既に形成されているシート様物品を掻き取るか又は掬い上げるための、好ましくはベースブラケットに取り付けられた任意選択の静的掻き取り機構が存在していてもよい。静的掻き取り機構は、更なる処理のために既に形成されたシート様物品を下流に搬送するために、ベースブラケット上又はその片側に設置することができる。静的掻き取り機構は、加熱された回転可能なドラムに、自動的に又は手動で接近し及びそこから離れるように移動することができる。
【0080】
好ましくは、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートの作製プロセスは、以下のとおりであってよい。まず、ベースブラケット上の非粘着コーティングを有する加熱された回転可能なドラムを、電動駆動装置によって駆動する。次に、調整装置が、供給ホッパと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離が予め設定された値になるように供給機構を調整する。一方、供給ホッパは、可撓性多孔質溶解性固体シートを作製するための全て又はいくつかの原材料を含有する通気された湿潤プレミックスを、加熱された回転可能なドラムの外面上に加えて、その上に、前のセクションで説明したとおりの所望の厚さを有する通気された湿潤プレミックスの薄層を形成する。任意選択的に、加熱シールドの吸引装置は、加熱された回転可能なドラムによって生成された熱蒸気を吸引する。次に、静的掻き取り機構が、加熱された回転可能なドラムによって比較的低温(例えば、130℃)で乾燥された後に、通気された湿潤プレミックスの薄層によって形成された乾燥/固化したシートを掻き取る/掬い上げる。乾燥/固化したシートはまた、このような静的掻き取り機構を用いずに、手動で又は自動的に剥離され、次いでローラーバーによって巻き上げることもできる。
【0081】
本発明における総乾燥時間は、湿潤プレミックス中の配合物量及び固体含有量、乾燥温度、熱エネルギー流量、及び乾燥されるシート材料の厚さに依存する。好ましくは、乾燥時間は、約1分~約60分、好ましくは約2分~約30分、より好ましくは約2~約15分、更により好ましくは約2~約10分、最も好ましくは約2~約5分、例えば、3分、5分、7分、10分、15分、20分、25分、30分、又はその間の任意の範囲である。
【0082】
このような乾燥時間中、加熱方向は、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の55%又は60%超(例えば、上述の回転ドラム型の加熱/乾燥構成におけるもののように)、より好ましくは乾燥時間の75%超又は更には100%(例えば、上述の底部伝導型の加熱/乾燥構成におけるもののように)にわたって重力方向と実質的に反対となるように配置される。更に、通気された湿潤プレミックスのシートは、第1の加熱方向の下で第1の持続時間にわたって乾燥され、次いで第2の反対側の加熱方向の下で第2の持続時間にわたって乾燥させることができ、第1の加熱方向は、重力方向と実質的に反対であり、第1の持続時間は、全乾燥時間の51%~99%(例えば、55%、60%、65%、70%~80%、85%、90%、又は95%)のいずれかにある。このような加熱方向の変化は、例えば、長手方向中心軸に沿って回転することができる蛇行形状の細長い加熱ベルトによって、本明細書に図示されていない様々な他の構成によって容易に達成することができる。
【0083】
IV.本発明の固体シート物品の物理的特性
上述の処理工程によって形成された可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、シート物品へのより容易な水の侵入、及び水におけるシート物品のより速い溶解を可能にする改善された細孔構造によって特徴付けられる。このような改善された細孔構造は、主に上述のような様々な処理条件を調節することによって達成され、それらは、比較的独立しているか、又は化学的配合物若しくはそのようなシート物品の作製に使用される特定の成分によって影響を受けない。
【0084】
一般に、このような固体シート物品は、(i)以下の試験3によって測定したとき、約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定したとき、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径、によって特徴付けられてもよい。全体平均孔径は、本発明のOCF構造の多孔度を定義する。連続気泡含有パーセントは、本発明のOCF構造中の細孔間の相互結合性を定義する。OCF構造の相互結合性はまた、国際公開第2010077627号及び同第2012138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0085】
本発明のこのような固体シート物品は、対向する上面及び底面を有し、その上面は、以下の試験1に記載のSEM法によって測定したとき、約300μm超、好ましくは約310μm超、好ましくは約320μm超、より好ましくは約330μm超、最も好ましくは約350μm超の表面平均細孔直径によって特徴付けられ得る。先行技術の加熱/乾燥構成(例えば、対流型、マイクロ波型、又は衝突式オーブン型の構成)によって形成される固体シート物品と比較すると、(以下の実施例1に詳細に記載される
図6A~
図6B、
図7A~
図7B、及び
図8A~
図8Bによって実証されるように)本発明の加熱/乾燥構成によって形成される固体シート物品は、その上面に著しく大きな表面平均細孔直径を有する。
【0086】
また更に、本発明の加熱/乾燥構成によって形成される固体シート物品は、先行技術の加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、その厚さ方向に沿った異なる領域間のより均一な孔径分布によって特徴付けられる。具体的には、本発明の固体シート物品は、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シート物品の上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、好ましくは約0.8~約1.3、より好ましくは約1~約1.2である。比較すると、先行技術の衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成によって形成された固体シート物品は、1.5超、典型的には約1.7~2.2(以下の実施例1に実証されるように)の底部対上部平均孔径比を有してもよい。更に、本発明の固体シート物品は、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、並びに約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比によって特徴付けられてもよい。
【0087】
また更に、本発明の固体シート物品の上部領域、中間領域、及び底部領域における平均孔径間の相対標準偏差(relative standard deviation、RSTD)は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。対照的に、先行技術の衝突式オーブン型の加熱/乾燥構成によって形成された固体シート物品は、20%超、恐らく25%超、又は更には35%超の上部/中間/底部の平均細孔径間の相対標準偏差(RSTD)を有し得る。
【0088】
好ましくは、本発明の固体シート物品は、以下の試験2によって測定したとき、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さによって更に特徴付けられる。
【0089】
本発明の固体シート物品は、少量の水を含んでもよい。好ましくは、それは、以下の試験4によって測定したとき、当該固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含量によって特徴付けられる。得られる固体シート物品における適切な最終水分含量は、シート物品の所望の可撓性/変形性を確保し、並びに消費者に柔らかな/滑らかな感触を提供することができる。最終水分含量が低すぎる場合、シート物品は、脆すぎたり剛性が高すぎたりする場合がある。最終水分含量が高すぎる場合、シート物品はべたつきが多すぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0090】
本発明の固体シート物品は、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約1.5mmの範囲の厚さを有し得る。固体シート物品の厚さは、以下に説明される試験6を使用して測定することができる。乾燥後の固体シート物品は、ひいては全体的な体積膨張を招く細孔膨張に起因して、通気された湿潤プレミックスのシートよりもわずかに厚くてもよい。
【0091】
本発明の固体シート物品は、以下に記載する試験6によって測定したとき、約50グラム/m2~約250グラム/m2、好ましくは約80グラム/m2~約220グラム/m2、より好ましくは約100グラム/m2~約200グラム/m2の坪量によって更に特徴付けられ得る。
【0092】
また更に、本発明の固体シート物品は、以下の試験7によって測定したとき、約0.05グラム/cm3~約0.5グラム/cm3、好ましくは約0.06グラム/cm3~約0.4グラム/cm3、より好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.2グラム/cm3、最も好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.15グラム/cm3の範囲の密度を有していてよい。本発明の固体シート物品の密度は、全体的な体積膨張を招く細孔膨張にも起因して、通気された湿潤プレミックスのシートの密度よりも低い。
【0093】
更に、本発明の固体シート物品は、以下に記載する試験8によって測定したとき、約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積によって特徴付けられ得る。本発明の固体シート物品の比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シート物品がより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0094】
V.本発明の固体シート物品の配合物
1.水溶性ポリマー
上述したように、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、水溶性ポリマー及び界面活性剤を含む湿潤プレミックスによって形成され得る。このような水溶性ポリマーは、結果として得られる固体シート物品において、フィルム形成剤、構造剤、並びに他の活性成分(例えば、界面活性剤、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)のためのキャリアとして機能し得る。
【0095】
好ましくは、湿潤プレミックスは、プレミックスの約3重量%~約20重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約5重量%~約15重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約7重量%~約10重量%の水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0096】
乾燥後、水溶性ポリマーは、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品中に、固体シート物品の総重量に対して約5%~約40%、好ましくは約8%~約30%、より好ましくは約10%~約25%の範囲の量で存在することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品中に存在する水溶性ポリマーの総量は、そのような物品の総重量の25重量%以下である。
【0097】
本発明の実施に好適な水溶性ポリマーは、約5,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約10,000~約300,000ダルトン、更により好ましくは約15,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約20,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものを選択してよい。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量を加算し、多孔質固体物内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じて計算する。本明細書で使用される水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を与える場合があり、これはひいては、通気工程中の気泡の数及びサイズ、並びに乾燥工程中の細孔膨張/開口結果に影響を与え得る。更に、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及びある界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。
【0098】
本発明の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸とメチルアクリレートとのコポリマー、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン及びカプロラクタムのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーと、カチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む合成ポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の水溶性ポリマーはまた、カラヤガム、トラガカントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの、グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物、カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物、果物抽出物(ペクチン)、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0100】
改質された天然ポリマーはまた、本発明において水溶性ポリマーとして使用されてもよい。好適な改質された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明の水溶性ポリマーは、デンプンを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「デンプン」という用語は、天然に存在するデンプン又は改質されたデンプンの両方を含む。デンプンの典型的な供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果及び果実を挙げることができる。より具体的な天然の供給源としては、トウモロコシ、豆、ポテト、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、サトウモロコシ、及びそれらのろう質又は高級アミラーゼ種を挙げることができる。天然デンプンは、剪断されたデンプン又は熱抑制されたデンプンなどの物理的に改質されたデンプン、架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、及びヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのコハク酸塩及び置換サクシネート誘導体などの化学的に改質されたデンプン、酸化、酵素変換、酸加水分解、熱若しくは酸デキストリン化、熱的及び/又は剪断された生成物によって調製される流動性又は薄煮沸デンプンを含む任意のデンプンに由来する変換生成物も本明細書において有用であり得、並びに、当該技術分野において既知のアルファ化デンプン、を含んだ改質デンプンを形成するために当該技術分野において既知の任意の改質方法によって改質することができる。
【0102】
本発明の好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。本発明のより好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0103】
本発明の最も好ましい水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)からの商品名Mowiol(登録商標)のもの及びPOVAL(商標)、Lubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも称される)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、このような物品の総重量の約10重量%~約25重量%、より好ましくは約15重量%~約23重量%の、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量、及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0104】
上述したようなポリビニルアルコールに加えて、本明細書に記載されたような必須の構造と物理的/化学的特性を備える固体シート物品を提供するのに役立つ限り、単一のデンプン又はデンプンの組み合わせを、必要とされる水溶性ポリマーの全体の濃度を低減させるような量の充填材料として使用してもよい。しかしながら、デンプンが多すぎると、シート物品の溶解度及び構造的一体性を含む場合がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、当該固体シート物品の20%重量%以下、好ましくは0重量%~10%重量%、より好ましくは0重量%~5%重量%、最も好ましくは0重量%~1%重量%のデンプンを含むことが望ましい。
【0105】
2.界面活性剤
上述の水溶性ポリマーに加えて、本発明の固体シート物品は、1種以上の界面活性剤を含む。界面活性剤は、本発明の所望のOCF構造を形成するのに十分な量の安定した気泡を生成するために、通気プロセス中に乳化剤として機能し得る。更に、界面活性剤は、所望の洗浄効果を実現するための活性成分として機能し得る。
【0106】
本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の界面活性剤を含む。このような固体シート物品の所望の用途及び達成すべき所望の消費者利益に応じて、異なる界面活性剤を選択することができる。本発明の1つの利点は、固体シート物品のOCF構造が、高速溶解を依然として提供しながら、高い界面活性剤含有量を組み込むことを可能にすることである。結果的に、高濃度の洗浄組成物を本発明の固体シート物品に配合して、消費者に新たなかつ優れた洗浄体験を提供することができる。
【0107】
本明細書で使用する界面活性剤は、慣例的な観念(すなわち、消費者の目を引く泡立ち効果を提供する界面活性剤)及び乳化剤(すなわち、任意の泡立ち性能を提供しないが、主に安定した発泡構造体を作製する際のプロセス助剤として意図されるもの)の両方の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で界面活性剤成分として使用される乳化剤の例としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、及び既知の又は別の方法で空気界面を安定化するのに一般的に使用される他の乳化剤が挙げられる。
【0108】
本発明の固体シート物品中に存在する界面活性剤の総量は、当該固体シート物品の総重量の約5重量%~約80重量%、好ましくは約10重量%~約70重量%、より好ましくは約30重量%~約65重量%の広い範囲であってもよい。結果的に、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約1重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約2重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約5重量%~約30重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0109】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の固体シート物品は、当該固体シート物品の総重量の約30重量%~約80重量%、好ましくは約40重量%~約70重量%、より好ましくは約50重量%~約65重量%の1種以上の界面活性剤を含有する洗浄製品である。このようなケースでは、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約10重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約12重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約15重量%~約30重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0110】
本明細書に用いるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテル硫酸塩、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホン酸塩、一級又は二級アルカンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホアセテート、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
本発明の実施に特に好適なアニオン性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、C6~C20直鎖状アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulphonate、LAS)界面活性剤が挙げられる。LAS界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、市販の直鎖状アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に入手することができる。本発明で使用することができる例示的なC10~C20直鎖状アルキルベンゼンスルホネートとしては、C10~C20直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、好ましくは、C11~C18若しくはC11~C14直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及び/又はアンモニウム塩が挙げられる。より好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩又はカリウム塩であり、最も好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、すなわち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0112】
LASは優れた洗浄効果をもたらし、洗濯洗剤用途での使用に特に好適である。より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及びキャリアとして使用されるとき、LASは主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート物品中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在するものとして使用することができることが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、LASは、固体シート物品中の主界面活性剤として使用される。LASが本発明の固体シート物品中に存在する場合、その量は、その固体シート物品の総重量の約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0113】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、約0.5~約5、好ましくは約0.8~約4、より好ましくは約1~約3、最も好ましくは約1.5~約2.5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfates、STS)が挙げられる。トリデセスは、一実施形態では、1分子当たり平均して少なくとも1つのメチル分岐を含む炭素13個の分岐鎖アルコキシル化炭化水素である。本発明で使用されるSTSとしては、ST(EOxPOy)Sを挙げることができ、一方、EOxは、0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の範囲の繰り返し数xを有する繰り返しエチレンオキシド単位を表し、POyは、0~5、好ましくは0~4、より好ましくは0~2の範囲の繰り返し数yを有する繰り返しプロピレンオキシド単位を表す。例えば、約2の重量平均エトキシル化度を有するST2Sなどの材料は、エトキシレートなし、1モルのエトキシレート、3モルのエトキシレートなどを有する有意な量の分子を含んでもよく、一方、エトキシル化の分布は、広い、狭い、又は切断されたものとなり得、それでもなお約2の総重量平均エトキシル化度をもたらすことができることが理解される。STSは、パーソナルクレンジング用途に特に好適であり、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及びキャリアとして使用されるとき、STSは主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート物品中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在するものとして使用することができることが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、STSは、固体シート物品中の主界面活性剤として使用される。STSが本発明の固体シート物品中に存在する場合、その量は、その固体シート物品の総重量の約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0114】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、アルキルサルフェートが挙げられる。これら物質は、対応する式:ROSO3M(式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである)を有する。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。以前に、非アルコキシル化直鎖又は分枝鎖状C6~C20アルキル(AS)は、低分子量ポリビニルアルコール(例えば、50,000ダルトン以下の重量平均分子量を有するもの)とのフィルム形成性能及び貯蔵安定性の適合性に起因して、溶解性固体シート物品中の好ましい界面活性剤、特にその中の主界面活性剤として考えられてきた。しかしながら、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及びキャリアとして使用されるとき、LAS及び/又はSTSなどの他の界面活性剤が、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート物品中の主界面活性剤として使用することができることが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、当該固体シート物品の約20%重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1%重量のASを有する固体シート物品を提供することが望ましい。
【0115】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、直鎖又は分枝鎖状C6~C20アルキルアルコキシサルフェート(alkylalkoxy sulfates、AAS)が挙げられる。このカテゴリの中でも、対応する式:RO(C2H4O)xSO3Mを有する直鎖又は分岐鎖状アルキルエトキシサルフェート(alkylethoxy sulfates、AES)が特に好ましく、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。AES界面活性剤は、典型的には、エチレンオキシドと約6~約20個の炭素原子を有する一価アルコールとの縮合生成物として作製される。有用なアルコールは、脂肪、例えば、ココナッツ油若しくは獣脂から誘導され得るか、又は合成であり得る。本明細書では、ココナッツ油から誘導されるラウリルアルコール及び直鎖アルコールが好ましい。このようなアルコールは、約1~約10、好ましくは約3~約5、特に約3の、モル割合のエチレンオキシドと反応され、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する得られた分子種の混合物は、スルフェート化され、中和される。非常に好ましいAESは、個々の化合物の混合物を含むものであり、当該混合物は、約10個~約16個の炭素原子の平均アルキル鎖長、及び約1~約4モルのエチレンオキシドの平均エトキシル化度を有する。AASが本発明の固体シート物品中に存在する場合、その量は、その固体シート物品の総重量の約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約8重量%~約12重量%の範囲であってもよい。
【0116】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、一般式[R1-SO3-M]の有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられ、式中、R1は、約6~約20個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素ラジカルからなる群から選択され、Mはカチオンである。アルカリ金属及びアンモニウムスルホン化C10~18n-パラフィンが好ましい。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約12~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。オレフィンスルホネートが誘導されるα-オレフィンは、約12~約24個の炭素原子、好ましくは約14~約16個の炭素原子を有するモノ-オレフィンである。好ましくは、それらは直鎖オレフィンである。
【0117】
布地及びホームケア組成物に用いるのに好適なアニオン性界面活性剤の別の部類は、β-アルキルオキシアルカン酸塩である。これらの化合物は、以下の式を有し、
【0118】
【化1】
式中、R
1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基であり、R
2は、約1(好ましい)~約3個の炭素原子を有する低アルキル基であり、Mは、上述の水溶性カチオンである。
【0119】
好適なアニオン性界面活性剤の更なる例は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された脂肪酸の反応生成物(例えば、脂肪酸はココナツ油に由来する)、例えば、脂肪酸がココナツ油に由来するメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム又はカリウム塩である。更に好適な他のアニオン性界面活性剤は、スクシネートであり、その例としては、二ナトリウムN-オクタデシルスルホスクシネート、ジアンモニオウムラウリルスルホスクシネート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシナメート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0120】
本発明の固体シート物品に含まれ得る非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特にアルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル、及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない、任意の従来の非イオン性界面活性剤であってもよい。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R1(OC2H4)nOH(式中、R1はC8~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは約1~約80である)のものである。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC8~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であり得るC6~C12アルキルフェノールアルコキシレート;C12~C18アルコール、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとのC6~C12アルキルフェノール縮合物、例えば、BASF製のPluronic(登録商標)、C14~C22中鎖分枝鎖状アルコール(BA);C14~C22中鎖分枝鎖状アルキルアルコキシレート、BAEx(式中、xは1~30である)、アルキル多糖類、具体的にはアルキルポリグリコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;及びエーテル末端処理ポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、商標名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものも挙げられる。
【0121】
好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)85)、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)21)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)61)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(Tween(登録商標)81)(これらは全てUniqemaから入手可能)、及びこれらの組み合わせを含むソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体から選択される。
【0122】
本発明の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有する直鎖又は分枝鎖状C6~C20アルキルアルコキシル化アルコール(alkylalkoxylated alcohols、AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有する直鎖C12~C14エトキシル化アルコールが挙げられる。AAタイプの非イオン界面活性剤が本発明の固体シート物品中に存在する場合、その量は、その固体シート物品の総重量の約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約8重量%~約12重量%の範囲であってもよい。
【0123】
本発明の固体シート物品の使用に好適な両性界面活性剤は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く記載されるものであり、脂肪族ラジカルは、直鎖又は分枝鎖であってよく、脂肪族置換基の1つは、約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有する。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることで調製されるもののようなN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0124】
パーソナルケア用途(例えば、シャンプー、顔又は身体洗浄剤など)を有する固体シート物品への組み込みに特に好適な両性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、ラウロアンホアセテート及びココアンホアセテートなどのアルキルアンホアセテートが挙げられる。アルキルアンホアセテートは、モノアセテート及びジアセテートで構成され得る。アルキルアンホアセテートのいくつかのタイプでは、ジアセテートは、不純物又は意図しない反応生成物である。アルキルアンホアセテートが本発明の固体シート物品中に存在する場合、その量は、その固体シート物品の総重量の約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の範囲であってもよい。
【0125】
好適な双極性界面活性剤としては、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものが挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であることができ、その脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有する。そのような好適な双極性界面活性剤は、次式で表すことができ、
【0126】
【化2】
式中、R
2は、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、R
3は、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるときに1であり、Yが窒素又はリン原子であるときに2であり、R
4は、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである。
【0127】
本明細書に用いるのに好適な他の双極性界面活性剤としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、オレイルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルαカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルγ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)α-カルボキシエチルベタインのような高級アルキルベタインを含むベタインが挙げられる。スルホベタインは、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタインなどで表すことができ、RCONH(CH2)3ラジカル(式中、Rは、C11~C17アルキルである)がベタインの窒素原子に付着する、アミドベタイン及びアミドスルホベタイン類本発明においてやはり有用である。
【0128】
カチオン性界面活性剤はまた、本発明において、特に布地柔軟剤及びヘアコンディショナー製品において利用することができる。カチオン性界面活性剤を主界面活性剤として含有する製品を作製する際に使用される場合、このようなカチオン性界面活性剤は、固体シート物品の総重量の約2%~約30%、好ましくは約3%~約20%、より好ましくは約5%~約15%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0129】
カチオン性界面活性剤は、ジアミド活性成分、並びにアミド結合及びエステル結合の混合を有する活性成分を包含するDEQA化合物を含み得る。好ましいDEQA化合物は、典型的には、MDEA(メチルジエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)などのアルカノールアミンを脂肪酸と反応させることによって作製される。このような反応から典型的に得られるいくつかの物質としては、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又はN,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられ、アシル基は、動物脂、不飽和及び多価不飽和脂肪酸から誘導される。
【0130】
カチオン性界面活性剤としての使用に好適な他の活性成分としては、例えば、分子比約2:1での、脂肪酸とジアルキレントリアミンとの反応生成物が挙げられ、当該反応生成物は、次式の化合物を含有する。
R1-C(O)-NH-R2-NH-R3-NH-C(O)-R1
式中、R1、R2は、上記に定義したとおりであり、各R3は、C1~6アルキレン基、好ましくはエチレン基である。これらの活性成分の例は、約2:1の分子比でのタロー酸、キャノーラ酸又はオレイン酸とジエチレントリアミンの反応生成物であり、当該反応生成物混合物は、N,N”-ジタローオイルジエチレントリアミン、N,N”-ジキャノーラ-オイルジエチレントリアミン又はN,N”-ジオレオイルジエチレントリアミンを含有し、各々次式を有する。
R1-C(O)-NH-CH2CH2-NH-CH2CH2-NH-C(O)-R1
式中、R2及びR3は二価エチレン基であり、R1は上記に定義したとおりであり、R1が植物若しくは動物供給源から誘導される市販のオレイン酸のオレオイル基である場合、この構造の許容可能な例としては、Henkel Corporationから入手可能なEMERSOL(登録商標)223LL又はEMERSOL(登録商標)7021が挙げられる。
【0131】
カチオン性界面活性剤として使用される別の活性成分は、次式を有する。
[R1-C(O)-NR-R2-N(R)2-R3-NR-C(O)-R1]+X-
式中、R、R1、R2、R3及びX-は、上記のように定義される。この活性成分の例は、次式を有するジ脂肪アミドアミン系柔軟剤である。
[R1-C(O)-NH-CH2CH2-N(CH3)(CH2CH2OH)-CH2CH2-NH-C(O)-R1]+CH3SO4
-
式中、R1-C(O)は、オレオイル基、ソフトタロー基、又は硬化タロー基であり、Degussaから各々VARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)222、及びVARISOFT(登録商標)110の商品名で市販されている。
【0132】
カチオン性界面活性剤として使用するための活性成分として好適な第2のタイプのDEQA(「DEQA(2)」)化合物は、次の一般式を有する。
[R3N+CH2CH(YR1)(CH2YR1)]X-
(式中、各Y、R、R1、及びX-は、上記と同じ意味を有する)。好ましいDEQA(2)の例は、式1,2-ジ(アシルオキシ)-3-トリメチルアンモニオプロパンクロリドを有する「プロピル」エステル四級アンモニウム布地柔軟剤活性物質である。
【0133】
本発明のパーソナルケア組成物での使用に好適な高分子界面活性剤としては、限定するものではないが、エチレンオキシドと脂肪族アルキル残基(fatty alkyl residues)とのブロックコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、疎水変性ポリアクリレート、疎水変性セルロース、シリコーンポリエーテル、シリコーンコポリオールエステル、ジ四級ポリジメチルシロキサン、及び共修飾されたアミノ/ポリエーテルシリコーンが挙げられる。
【0134】
3.可塑剤
本発明の好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、可塑剤を更に含み、好ましくは、当該固体シート物品の総重量の約0.1重量%~約25重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%、最も好ましくは2重量%~12重量%の範囲の量で更に含む。それに対応して、このような固体シート物品を形成するために使用される湿潤プレミックスは、当該湿潤プレミックスの約0.02重量%~約20重量%、一実施形態では当該湿潤プレミックスの約0.1重量%~約10重量%、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.5重量%~約5重量%の湿潤プレミックスを含み得る。
【0135】
本発明に用いるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0136】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、及び他のモノ-及び多価アルコールなど)、モノ-、ジ-及びオリゴ-糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルビン酸塩、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
他の好適な塑剤としては、アルキル及びアリルフタレート;ナフタレート;乳酸塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びカリウム塩);ソルベス-30;尿素;乳酸;ピロリドンカルボン酸ナトリウム(pyrrolidone carboxylic acid、PCA);ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸;可溶性コラーゲン;変性タンパク質;L-グルタミン酸モノナトリウム;α&βヒドロキシル酸、例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸及びサリチル酸;ポリメタクリル酸グリセリル;ポリマー可塑剤、例えば、ポリクオタニウム;タンパク質、並びに、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びリシンなどのアミノ酸;水素デンプン加水分解産物;その他低分子量エステル(例えば、C2~C10アルコールと酸とのエステル);及び、食品及びプラスチック業界の当業者に既知である任意の他の水溶性可塑剤;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。
【0142】
4.追加成分
上述の成分、例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び可塑剤に加えて、本発明の固体シート物品は、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加成分を含んでもよい。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0143】
好適な布地ケア活性物質としては、有機溶媒(直鎖又は分枝鎖状の低級C1~C8アルコール、ジオール、グリセロール、又はグリコール;C1~C4アルカノールアミンなどのより低級のアミン溶媒及びこれらの混合物;より具体的には、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミン)、キャリア、ヒドロトロープ、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白剤(光漂白剤を含む)及び漂白活性化剤、香料(カプセル化香料又は香料マイクロカプセルを含む)、着色剤(色相染料を含む、顔料及び染料など)、増白剤、移染防止剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、構造化剤、レオロジー変性剤、抑泡剤、加工助剤、布地柔軟剤、抗菌剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
好適なヘアケア活性物質としては、縮れ低減のためのクラスIIの水分制御物質(サリチル酸及び誘導体、有機アルコール、並びにエステル)、カチオン性界面活性剤(特に、25℃の水への溶解度が、好ましくは0.5g/水100g未満、より好ましくは0.3g/水100g未満である水不溶性タイプ)、高融点脂肪族化合物(例えば、25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更により好ましくは50℃以上の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪酸、及びこれらの混合物)、シリコーン化合物、コンディショニング剤(Hormelから入手可能な商標名Peptein 2000を有する加水分解コラーゲン、Eisaiから入手可能な商標名Emix-dのビタミンE、Rocheから入手可能なパンテノール、Rocheから入手可能なパンテニルエチルエーテル、加水分解ケラチン、タンパク質、植物抽出物、及び栄養素)、防腐剤(ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素など)、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、塩(酢酸カリウム及び塩化ナトリウムなど)、着色剤、香料又は芳香剤、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)、紫外線及び赤外線スクリーニング及び吸収剤(サリチル酸オクチルなど)、毛髪脱色剤、毛髪パーマ剤、毛髪固定剤、抗ふけ剤、抗菌剤、育毛剤又は修復剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
好適な美容及び/又はスキンケア活性物質としては、化粧品での使用が認可され、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition,The Cosmetic,Toiletries,and Fragrance Association,Inc.1988,1992などの参考文献に記載されている物質が挙げられる。好適な美容及び/又はスキンケア活性物質の更なる非限定的な例としては、防腐剤、香料又は芳香剤、着色剤又は染料、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、医薬活性物質、ビタミン又は栄養素、日焼け止め剤、脱臭剤、感覚剤、植物抽出物、栄養素、収れん剤、化粧品粒子、吸収性粒子、繊維、抗炎症剤、美白剤、皮膚色調剤(皮膚色調全体を改善するように機能し、ビタミンB3化合物、糖アミン、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、ヘキシルレゾルシノール及びレチノイドなどの1,3-ジヒドロキシ-4-アルキルベンゼンを含み得る)、皮膚日焼け剤、剥離剤、保湿剤、酵素、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、抗しわ活性物質、抗にきび剤、酸、塩基、ミネラル、懸濁剤、pH調整剤、顔料粒子、抗菌剤、防虫剤、シェービングローション剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられる。
【0146】
本発明の固体シート物品は、組成物での使用が既知であるか、あるいは有用であるような他の任意選択的な成分を更に含んでもよく、かかる任意選択的な材料は本明細書に記載の選択された不可欠な材料と互換性があるか、あるいは過度に製品性能を損なわないという条件で含まれる。
【0147】
本発明の固体シート物品によって形成され得る製品タイプの実施形態の非限定的な例としては、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、手洗浄製品、毛髪シャンプー又は他の毛髪処理製品、ボディクレンジング製品、シェービング調製製品、食器洗浄製品、医薬又は他のスキンケア活性物質を含有するパーソナルケア基材、保湿製品、日焼け止め製品、美容製品又はスキンケア製品、脱臭製品、口腔ケア製品、女性用洗浄製品、ベビーケア製品、芳香剤含有製品などが挙げられる。
【0148】
VI.複数のシートの多層構造への変換
本発明の可撓性溶解性多孔質固体シート物品が形成されると、上述したように、そのようなシートの2つ以上を更に組み合わせて及び/又は処理して、球状、立方体、長方形、楕円形、円筒形、ロッド、シート、花形、扇型、星形、ディスク形状などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の望ましい三次元形状の溶解性固体物品を形成することができる。シートは、その例として化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の任意の手段によって組み合わされて及び/又は処理されてもよい。このような組み合わせ工程及び/又は処理工程は、本明細書において集合的に「変換」プロセスと称され、すなわち、これは、本発明の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートを、所望の三次元形状を有する溶解性固体物品に変換するように機能する。
【0149】
従来の溶解性固体物品は、比較的高い長さ/幅対厚さ比を有し、すなわち、このような物品の水への迅速な溶解を確実にするために、比較的薄い。したがって、典型的には、このような溶解性固体物品は、典型的には、比較的大きいが薄いシート製品の形態で提供され、これは、取り扱いが困難となる場合があり(例えば、使用時に過度に柔らかく、容易に一緒にくっついて使用時に分離が困難である)、消費者にとって審美的に心地良いものではない。しかしながら、溶解要件によって付与される制約に起因して、そのような製品形態の変化又は改善のための空間はほとんど又は全く存在しない。
【0150】
本発明の固体シート物品の複数の層を一緒に積み重ねることによって形成される三次元多層固体物品は、同一のアスペクト比を有する単層固体物品よりも溶解性が高いことが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。これにより、このような固体物品を厚さ方向に沿ってかなり延ばして、取り扱いがより容易でかつ消費者にとってより審美的に心地良い(例えば、厚いパッド又は更には立方体の形態の製品)三次元製品形状を作成することが可能になる。
【0151】
具体的には、本発明の固体シート物品の複数の層を一緒に積み重ねることによって形成される多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法に対して垂直である)によって特徴付けられ、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球状の形状を有することに留意されたい。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。
【0152】
本発明の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有してもよい。
【0153】
上述の多層溶解性固体物品は、このような可撓性溶解性多孔質シートを2つ以上含んでもよい。例えば、それは、約4~約50、好ましくは約5~約40、より好ましくは約6~約30の当該可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。本発明に従って作製された可撓性溶解性多孔質シート内の改善されたOCF構造は、多くのシート(例えば、15~40)を一緒に積み重ねることを可能にする一方で、積層体に十分な全体的溶解速度を依然として提供する。
【0154】
本発明の特に好ましい実施形態では、多層溶解性固体物品は、上述の可撓性溶解性多孔質シートの15~40層を含み、約2~約7の範囲のアスペクト比を有する。
【0155】
本発明の多層溶解性固体物品は、そのような物品の外面(例えば、1つ以上の側面)から見える、異なる色の個々のシートを含んでもよい。異なる色のこのような視認可能なシートは、消費者にとって審美的に心地良いものである。更に、個々のシートの異なる色は、個々のシートに含まれる異なる有益剤を示す視覚的手がかりを提供することができる。例えば、多層溶解性固体物品は、第1の色を有しかつ第1の有益剤を含有する第1のシートと、第2の色を有しかつ第2の有益剤を含有する第2のシートとを含んでもよく、第1の色は、第1の有益剤を示す視覚的手がかりを提供し、第2の色は、第2の有益剤を示す視覚的手がかりを提供する。
【0156】
更に、1つ以上の機能性成分は、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、又は更には蒸着によって、上述のような多層溶解性固体物品の個々のシートの間に「挟持」することができる。このような機能性成分と、個々のシートの周辺部付近の切断シール又は縁部シールとの干渉を回避するために、そのような機能性成分は、2の隣接するシート間の中央領域内に位置することが好ましい。これは、そのような隣接するシートの周辺部から、最大寸法Dの少なくとも10%の距離だけ離間している領域として定義される。
【0157】
好適な機能性成分は、洗浄活性物質(界面活性剤、遊離香料、カプセル化香料、香料マイクロカプセル、シリコーン、柔軟剤、酵素、漂白剤、着色剤、ビルダー、レオロジー改質剤、pH調整剤、及びこれらの組み合わせ)及びパーソナルケア活性物質(例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、コンディショニング剤、及びこれらの組み合わせ)からなる群から選択することができる。
【0158】
試験法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定するための走査型電子顕微鏡(SEM)方法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本発明の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで動作させる。最低5つの顕微鏡画像を、各サンプルにわたってランダムに選択された位置から収集し、平均孔直径が推定される約43.0mm2の総分析面積を得る。
【0159】
次いで、SEM顕微鏡写真を、まず、Matlab(登録商標)内の画像解析ツールボックスを使用して処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、Matlab(登録商標)の‘imhist’関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを生成する。典型的には、このようなヒストグラムから、細孔内のより明るいシート表面の画素及びより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかとなる。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を、0の強度値に設定し、それよりも強度値が高い画素を1に設定し、これによって、2値の白黒画像を生成する。次いで、その2値画像を、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を用いて分析して、細孔面積比及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、ピクセル/mmスケールファクタを提供する。分析のために、自動閾値化機能及び分析粒子機能を使用して、各細孔を分離する。分析関数からの出力は、画像全体と細孔面積とに対す面積比及び検出された細孔ごとの細孔周長を含む。
【0160】
平均孔径は、DA50として定義され、すなわち、総細孔面積の50%は、DA50平均直径以下の水力直径を有する細孔から構成される。
【0161】
水力直径=‘4*細孔面積(m2)/細孔周長(m)’
【0162】
これは、全て円形ではない細孔を考慮するために計算された等価直径である。
【0163】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚さを決定するためのMicro-Computed Tomographic(μCT)方法
多孔度は、OCFによって占有される全空間に対する空隙空間の比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、全ボクセルに対する空隙ボクセルの比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、全空間に対する固体空間の比率であり、SVFは、全ボクセルに対する占有されたボクセルの比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0164】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な機器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である。エネルギーレベル:133μAで45kVp;投影:3000;視野:15mm;積分時間:750ms;平均:5回;及びボクセルサイズ:3μm。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0165】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、試料の走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、エッジ/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0166】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合しかつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0167】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。Thermo Fisher Scientific製のAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworks製のMATLAB(登録商標)(R2017a)を使用して、計算及び測定を行った。
【0168】
試験3:シート物品の連続気泡含有パーセント
連続気泡含有パーセントを、ガス比重瓶法を通して測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0169】
ASTM標準試験方法D2856は、気体比重瓶(air comparison pycnometer)のより古いモデルを使用して連続気泡の割合を決定するための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に連続気泡パーセントを決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡パーセントを決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用して、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定されたような幾何学的体積を、Accupycによって測定されたような連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積*100
【0170】
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0171】
試験4:シート物品の最終水分含量
本発明の固体シート物品の最終水分含量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0172】
試験5:シート物品の厚さ
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の厚さを、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメーター又は厚さゲージを用いて得る。そのマイクロメーターは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm2)の印加圧力において厚さを測定する。
【0173】
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の厚さは、プラテンを引き起こし、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に置き、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、シート物品の厚さをミリメートル単位で数値表示装置上で測定することにより、測定する。平らでないより堅い基材の場合を除いて、厚さを可能な限り最下位の表面圧力において測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全てのエッジまで十分に延ばすべきである。
【0174】
試験6:シート物品の坪量
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の坪量を、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m2)として計算する。その面積はシート物品の外側エッジに直角の平坦表面上の投影面積として計算される。本発明の固体シート物品は、10cm×10cmの正方形サンプルに切断されているため、その面積は既知である。次いで、このような正方形サンプルの各々を秤量し、次に、得られた重量を100cm2の既知の面積で割って、対応する坪量を決定する。
【0175】
不規則な形状の物品に対しては、それが平らな物体である場合、その面積は、したがってそのような物体の外周内で取り囲まれている面積に基づいて計算される。したがって、球状物体に関しては、面積は、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)2として計算される。したがって、円筒状物体に対しては、面積は、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして計算される。不規則な形状の三次元物体に対しては、面積は、この側部に直角に方向付けられた平坦表面上に投影される最大外側寸法を備える側部に基づいて計算される。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影がつけられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成できる。
【0176】
試験7:シート物品の密度
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の密度は、次の等式によって決定される。計算密度=多孔質固体物の坪量/(多孔質固体物の厚さ×1,000)。可撓性多孔質固体物の坪量及び厚みを、本明細書に記載の方法に従って決定する。
【0177】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模での固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初の工程は、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定する。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0178】
試験9:溶解速度
まず、固体シートを、50±2%の周囲相対湿度及び23±1℃の周囲温度で24時間保存する(すなわち、コンディショニング工程)。上記の初期コンディショニング工程に続いて、まず、直径25mmのディスクを、25mmの中空穴穿孔器を使用して大きな固体シートから切り取る。全ての発泡体ディスクの総質量が0.1g以上になるように、必要な数の発泡体ディスクを設定する。
【0179】
次いで、必要な数の発泡体ディスクを頭からつま先へ(head to toe)の配向で積み重ね、内径25mm、長さ100m、及び調整可能で取り外し可能なエンドピースを有するOmnifix(商標)EZクロマトグラフィカラム(006EZ-25-10-AF)の内側に配置する。発泡体ディスクのスタックを、カラムを通る流れの方向が発泡体ディスクの上面に対して垂直になるようにカラムの内側に配置する。カラムの内側に配置したら、エンドピースをカラムに挿入し、2つの内側フリット間の垂直距離が発泡体ディスクのスタックの厚さと等しくなるまで調整する。
【0180】
Masterflexシリコーンチューブ(MFLEX SILICONE #25 25’)及びMasterflex蠕動ポンプ(MFLX L/S 1CH 300R 115/230 13124)を使用して、カラムを通る水の流れを制御する。異なるポンプRPM設定でポンプ、チューブ、及び空のカラムを通して水を流し、規定の期間にわたって回収された水の体積を記録することによって、システム流量を較正する。全ての実験について、1時間当たり5リットルの流量を利用した。
【0181】
入口及び出口チューブをいずれも、周囲温度で500mLの脱イオン水を含有する1リットルのビーカーの内側に配置する。ビーカーを磁気撹拌板上に置き、長さ23mm及び厚さ10mmを有する磁気撹拌棒をビーカー内に配置し、撹拌機の回転速度を300rpmに設定する。Mettler Toledo S230導電率メータを1413μS/cmに較正し、プローブを水のビーカーに入れる。
【0182】
システムを通る水の流れを開始させる。最初の水滴がカラムの内側に目で見えるようになり、発泡体と接触したら、導電率メータのデータ記録機能を開始させる。少なくとも20分間、データを記録する。
【0183】
発泡体が90又は95%の溶解パーセントに達するのに必要な時間を推定するために、まず、発泡体ディスクの層を500mLの脱イオン水の撹拌ビーカーに1枚ずつ落とした場合の較正曲線を作成する。各個々の発泡体ディスクの質量、及び5分後の導電率の両方を記録する。このプロセスを、合計最大5枚のディスクについて繰り返す。一次関数をデータに当てはめ、次いで、カラムに配置された発泡体ディスクの総質量に基づいて、各溶解実験における最大導電率を推定するために使用する。次いで、溶解パーセントを以下のとおり計算する:
溶解%=実験的に測定された導電率/最大導電率×100
【0184】
次いで、90又は95パーセントの溶解を達成するのに必要な時間を、この計算したデータから見つける。試験した各処方について、較正手順を繰り返す。
【0185】
試験10:気泡サイズ
通気された湿潤プレミックスの気泡サイズを、以下のように測定する:
まず、幅及び長さ2cm、並びに厚さ1mmの矩形ガラスカバースライドを、厚さ1mm、長さ2cm、及び幅わずかに2cm未満のキャビティがガラススライドの中心に位置するように、幅6cm及び長さ2cmのガラススライド上に糊付けする。キャビティの幅は、追加のカバースライドをキャビティの上に配置することができるように、2cm未満に保たなければならない。
【0186】
気泡サイズ分析用の画像を捕捉するために、通気された液体発泡体をスパチュラを使用してキャビティ内に堆積させ、別のカバースライドをその上に配置し、液体の厚さを1mmに減少させるために穏やかに押し下げる。
【0187】
SMZ-T4 Chongqing Optec顕微鏡及びRZIMAGE MicroUL300デジタルカメラを使用して画像を捕捉した。ガラススライドを顕微鏡のバックライト付き領域の上に配置し、画像面積が16mm2以上になるように倍率を調整した。目盛り付きの線が見え、それを用いて画素対距離比を求めることができるように、画像領域に配置された透明な定規と共に追加の画像を撮影した。
【0188】
Matlab(登録商標) 2017bソフトウェアのImage Analysis Toolbox内の「imfindcircles」関数を使用して、気泡サイズを計算した。各画像につき、それぞれ21~40、41~50、51~100、及び101~200の画素サイズ範囲について関数を4回呼び出すが、この場合、20画素が、およそ60マイクロメートルの長さに対応する。感度パラメータを0.95に設定した。関数の各呼び出しから推定された気泡半径を組み合わせて単一の分布を作成し、透明な定規と共に作製された較正画像を使用して半径をマイクロメートルに変換した。
【実施例】
【0189】
実施例1:異なる加熱/乾燥構成によって作製された固体シート物品内の異なるOCF構造
以下の表1及び表2に記載の以下の界面活性剤/ポリマー組成物を有する湿潤プレミックスを、それぞれ洗濯ケア物品用及びヘアケア物品用に調製する。
【0190】
【0191】
表1に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約14309.8cpsである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.25g/cm3である。
【0192】
【0193】
表2に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約19254.6cpsである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.225g/cm3である。
【0194】
以下の表3に記載する以下の設定及び条件で、連続エアレーター(Aeros)、及び回転バーを使用して通気された湿潤プレミックスをドラム乾燥機に供給する回転ドラム乾燥機を使用して、表1及び表2に記載の上記湿潤プレミックスから可撓性多孔質溶解性固体シート物品A及びBを調製する。
【0195】
【0196】
また、以下の表4に記載する以下の設定及び条件で、連続エアレーター(Oakes)及びホットプレート(底部伝導型の加熱を提供する)上に配置された金型を使用して、表2に記載の上記湿潤プレミックスから可撓性多孔質溶解性固体シート物品Cを調製する。
【0197】
【0198】
更に、以下の表5に記載する以下の設定及び条件で、連続エアレーター(Oakes)及び衝突式オーブン上に配置された金型を使用して、表1及び表2に記載の上記湿潤プレミックスから可撓性多孔質溶解性固体シート物品I及びIIを調製する。
【0199】
【0200】
以下のように、上述の湿潤プレミックス及び乾燥プロセスから作製された固体シート物品A~C及び固体シート物品I~IIについて測定された様々な物理的パラメータ及び細孔構造を表6~9にまとめる。
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
上記のデータは、加熱方向が乾燥工程の大部分にわたって重力方向からオフセットしている場合、得られた固体シート物品(例えば、物品A、B、及びC)は、加熱方向が重力方向と実質的に一直線になっているときに得られた固体シート物品(例えば、物品I及びII)と比較して、より大きな細孔開口部を有し、このようなシート物品の厚さを横断する方向に沿った異なる領域における細孔径の変動が少ない上面を有し得ることを実証する。特に、上記の表は、物品A、B、及びCが100μmを超える上面平均細孔直径を有するが、物品I及びIIは、そうではないことを示す。具体的には、
図6Aは、物品Aの上面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、一方、
図6Bは、物品Iの上面のSEM画像を示す。
図7Aは、物品Cの上面のSEM画像を示し、一方、
図7Bは、物品IIの上面のSEM画像を示す。
【0206】
実施例2:エージング工程前の通気されたプレミックスと比較した、エージングされた、通気されたプレミックス中の気泡サイズの増加
以下の表10に示す固体シート物品(処方1)の成分及び追加の水を含有する湿潤プレミックス(すなわち、スラリー)を調製して、約35重量%の総固形分含有量を得る(すなわち、スラリー中の総水分量は約65重量%である)。
【0207】
【0208】
スラリー調製方法は、以下のとおりである。
1.まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌する。
2.撹拌を継続しながら、次いで、ポリビニルアルコールを、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はポリビニルアルコールの凝集が起こらないようにする。
3.次いで、ビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃に加熱する。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させる。
4.残りの成分を秤量し、別個のガラスビーカー内で一緒に添加する。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加される。
5.このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物をオーバーヘッド撹拌機を用いて500rpmで少なくとも30分間撹拌する。
6.両方のビーカーにおいて予め規定された混合時間に達したら、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて、500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃で維持する。
【0209】
次いで、そのように形成されたスラリーを以下の通り通気する:
1.ジャケット付きホッパ(モデルJCABT10)及びA20混合ヘッドからなるAeros A20連続エアレーターを、水浴及びポンプを使用して80℃に予熱する。
2.次いで、前に調製したスラリーをホッパに添加する。次いで、エアレーター装置をオンにし、混合ヘッド速度、供給ポンプ速度、及び空気流量をそれぞれ、600、500及び100に設定する。
3.エアレートされたスラリーは、エアレーター出口から回収され、その密度は、既知の体積の密度カップを充填し、通気されたスラリーの質量を計量することによって測定される。上記エアレーター設定では、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度が達成される。
【0210】
次いで、AerosA20の出口から回収された通気されたスラリーを、周囲温度で全く撹拌することなくバケツ(開放)内で70分間エージングする。0分(すなわち、通気されたスラリーで満たされたバケツがエアレーターの出口を出た直後にサンプルを採取する)から70分(すなわち、エージング工程の完了後)の異なる時点に、通気されたスラリーのサンプルをバケツから採取する。次いで、通気されたスラリーの気泡サイズを試験10に従って求め、以下の表に示す。
【0211】
【表11】
*60マイクロメートルの最小閾値を気泡検出に利用した。通気直後に分析したサンプルについては、60マイクロメートル超の気泡は検出されなかった。
【0212】
上記の表は、エージング工程中に、気泡が経時的に徐々に膨張することを示す。更に、
図8A及び8Bは、それぞれ、同じ倍率を使用して光学顕微鏡下で70分のエージング工程の70分(
図8A)及び0分(
図8B)での処方1のスラリー中の気泡の写真を示す。これらのデータは、驚くべきことに、エージング工程後の気泡が、通気直後のエージング工程の開始時よりもはるかに大きいことを示す。したがって、かなり長いエージング工程(例えば、最大70分)を導入すると、気泡は崩壊しないが、気泡サイズは有意に増加する。気泡サイズの増加によって、スラリーによって形成された固体シート物品により大きな細孔が形成され、ひいては、固体シート物品の溶解プロファイルが改善される。
【0213】
実施例3:ドラム乾燥機プロセスにおいてエージング工程を導入することによって達成される固体シート物品の細孔構造の改善及び溶解プロファイルの改善
1)固体シート物品の調製
実施例2と同様に、処方1及び追加の水の湿潤プレミックス(すなわち、スラリー)を調製し、次いで、通気して、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度を提供する。
【0214】
供給トラフ及び回転バーを備える回転ドラム乾燥機システム(例えば、
図5に示すシステム)を使用して、本発明の可撓性、多孔質、かつ固体のシート物品(物品1)及び比較用の可撓性、多孔質、かつ固体のシート物品(物品2)を生成し、物品1は、通気後にエージング工程を有するプロセスで調製し、物品2は、通気直後に乾燥を行うプロセスで調製する(エージング工程なし)。
【0215】
湿潤プレミックスから物品1及び2を調製するための方法は、以下のとおりである:
1.回転ドラム乾燥機(約1.5mのドラム直径を有する)を約130℃に予熱する。
2.Aeros A20の出口から回収された通気されたスラリーを、ドラム乾燥機の供給トラフに入れる。
3.本発明のシート物品(物品1)について、通気されたスラリーを、120分の総エージング時間にわたってバケツ内でエージングする。次いで、エージングされた、通気されたスラリーをバケツから供給トラフに取り出す。
4.加熱ドラムにおけるスラリー滞留時間が約15分になるようにドラム乾燥機の回転速度が設定された回転ドラム乾燥機に対して反対方向に回転している(例えば、時計回り対反時計回り)回転バーを用いて、回転ドラム乾燥機の表面上に通気されたスラリーを供給することによって、物品1及び2を形成する。本発明のシート物品(物品1)については、回転バーの回転速度は比較的遅く(すなわち、30rpm)、回転バーとドラム乾燥機の表面との間の距離は比較的長い(すなわち、8mm)。そのような条件下では、気泡を更に導入することなく、回転ドラム乾燥機の表面にスラリーを供給することができる。比較用のシート物品(物品2)については、回転バーの回転速度は比較的速く(すなわち、180rpm)、回転バーとドラム乾燥機の表面との間の距離は比較的短い(すなわち、4.5mm)。そのような条件下で、スラリーを空気界面で激しく撹拌し、このようにして、気泡を更にスラリーに導入する。したがって、エージング工程によって引き起こされる効果は、この追加の通気によって元に戻るか又は少なくとも損なわれ、エージング工程なしのプロセスと同等になるとみなしてよい。シートの一貫した厚さ(約0.8~1.5mm)を確保するために、スラリー拾い出し位置の近傍に配置されたレベリングブレードを使用する。
5.乾燥したら、そのように形成された可撓性多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。
【0216】
2)エージング工程の導入によって達成されるスラリー中のより大きな気泡サイズ
物品1又は2の通気されたスラリーのサンプルを、それぞれ、スラリーの供給位置の近傍の供給トラフから取り出す。次いで、スラリーの気泡サイズを試験10に従って求め、以下の表に示す。
【0217】
【0218】
上記の表は、エージング工程の後に得られたスラリー(物品1)中の気泡が、エージング工程なしで得られたスラリー(物品2)よりもはるかに大きいことを示す。更に、
図9A及び
図9Bは、それぞれ、同じ倍率を使用した光学顕微鏡下での物品1及び2のスラリー中の気泡の写真を示す。これらのデータは、ドラム乾燥プロセスにおいて、通気後にエージング工程を導入すると、ドラム乾燥機上に供給されるプレミックス中の気泡がはるかに大きくなることを示す。対照的に、通気の直後に、通気されたプレミックスをドラム乾燥機に供給した場合、気泡は比較的小さいままである。
【0219】
3)エージング工程の導入によって達成される固体シート物品の細孔構造の改善
試験1に従ってSEM試験を実行する。
図10A及び
図10Bはそれぞれ、物品1及び2の上面のSEM画像を示し、以下の表は、物品1及び2の細孔構造を示す。これらのデータは、本発明のシート物品(すなわち、物品1)が、その上面に著しく大きな細孔を有し、また、比較用シート物品(すなわち、物品2)と比較しても、著しく大きな平均細孔径を有することを示す。
【0220】
【0221】
4)エージング工程の導入によって達成される固体シート物品の溶解プロファイルの改善
試験9に従って、シート1及び2の溶解速度を求める。以下の表14及び
図11は、溶解速度試験の結果を示し、本発明のシート物品(物品1)が、比較用のシート物品(物品2)と比較して著しく改善された溶解プロファイルを有することを示す。具体的には、物品1の90%が溶解するのにかかる時間は、わずか301秒であるが、一方、物品2の90%が溶解するのにかかる時間は、物品1の3倍超である928秒である。
【0222】
【0223】
まとめると、ドラム乾燥機プロセスにエージング工程(すなわち、通気後にしばらくの間、通気されたプレミックスを維持する)を導入すると、著しく改善された細孔構造が得られ、それによって、溶解プロファイルが著しく改善される。
【0224】
実施例4:ベルト乾燥プロセスにおいてエージング工程を導入することによって達成される固体シート物品の細孔構造の改善
1)固体シート物品の調製
実施例2と同様に、以下の表15における処方2及び追加の水の湿潤プレミックス(すなわち、スラリー)を調製し、次いで、通気して、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度を提供する。
【0225】
【0226】
ドラム乾燥プロセスの代わりにベルト乾燥システムを使用して、本発明の可撓性、多孔質、かつ固体のシート物品(物品3)及び比較用の可撓性、多孔質、かつ固体のシート物品(物品4)を作製する。ベルト乾燥システムでは、乾燥表面は、熱風対流によって下から加熱される、およそ長さ4m及び幅60cmの移動ステンレス鋼ベルトである。通気されたスラリーを、連続エアレーターから50リットルのステンレス鋼製加熱容器にポンプで送り、そこで、気泡サイズを増加させるために様々な時間(すなわち、エージング時間)保存した。スラリーを移動ベルトの乾燥表面上に供給するために、容器を乾燥表面の上に置き、容器の底部に配置された出口を開いて、スラリーをベルト表面上に安定的に流した。過剰なスラリーを蓄積し、乾燥及びその後の除去のために乾燥表面に沿って規定の体積(すなわち、厚さ)のスラリーだけを運ぶために、厚さ制御ブレードをこの堆積場所の近傍に配置した。乾燥したら、そのように形成された可撓性多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。ベルト乾燥機プロセスの設定を以下の表に示す。
【0227】
【0228】
2)エージング工程の導入によって達成される固体シート物品の細孔構造の改善
シート3及び4について、試験1に従ってSEM試験を実行する。
図12A及び
図12Bは、それぞれ、シート3及び4の上面のSEM画像を示し、以下の表は、試験1に従って求めたときの物品3及び4の細孔構造を示す。これらのデータは、本発明のシート物品(すなわち、物品3)が、その上面に著しく大きな細孔を有し、また、比較用シート物品(すなわち、物品4)と比較しても、著しく大きな平均細孔径を有することを示す。
【0229】
【0230】
まとめると、ベルト乾燥機プロセスにエージング工程(すなわち、通気後にしばらくの間、通気されたプレミックスを維持する)を導入すると、著しく改善された細孔構造も得られる。
【0231】
実施例5:供給ダイを含むドラム乾燥機プロセスにおいてエージング工程を導入することによって達成される固体シート物品の細孔構造の改善及び溶解プロファイルの改善
1)固体シート物品の調製
実施例2と同様に、以下の表18における処方3及び追加の水の湿潤プレミックス(すなわち、スラリー)を調製し、次いで、通気して、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度を提供する。
【0232】
【0233】
供給ダイが、ドラム乾燥機の上部に配置され、スラリーをドラム表面上に連続的に供給するために使用される、供給ダイを備える回転ドラム乾燥機システムを使用して、本発明の可撓性、多孔質、かつ固体の物品5及び比較用の可撓性、多孔質、かつ固体の物品6を作製する。供給ダイの内部流路は、約30cmの供給幅及び約2mmの供給厚を有する。まず、スラリーを連続エアレーターから50Lの容器にポンプで送り込み、そこで、気泡サイズを増加させるために規定の量の時間(すなわち、エージング時間)維持し、次いで、この容器から供給ダイにポンプで送り出す。乾燥したら、そのように形成された可撓性多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。ドラム乾燥機-ダイプロセスの設定を以下の表に示す。
【0234】
【0235】
2)エージング工程の導入によって達成される固体シート物品の細孔構造の改善
シート5及び6について、試験1に従ってSEM試験を実行する。
図13A及び
図13Bは、それぞれ、シート5及び6の上面のSEM画像を示し、以下の表は、試験1に従って求めたときの物品5及び6の細孔構造を示す。これらのデータは、本発明のシート物品(すなわち、物品5)が、比較用シート物品(すなわち、物品6)と比較して、その上面に著しく大きな細孔を有することを示す。
【0236】
【0237】
3)エージング工程の導入によって達成される固体シート物品の溶解プロファイルの改善
試験9に従って、シート5及び6の溶解速度を求める。以下の表21及び
図14は、溶解速度試験の結果を示し、本発明のシート物品(物品5)が、比較用のシート物品(物品6)と比較して著しく改善された溶解プロファイルを有することを示す。
【0238】
【0239】
まとめると、供給ダイを備えるドラム乾燥機プロセスにエージング工程(すなわち、通気後にしばらくの間、通気されたプレミックスを維持する)を導入すると、著しく改善された細孔構造も得られ、それによって、溶解プロファイルが著しく改善される。
【0240】
本明細書において開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0241】
相互参照される又は関連する任意の特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0242】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。