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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】バンド装置
(51)【国際特許分類】
   A44B 11/12 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A44B11/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022550599
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034071
(87)【国際公開番号】W WO2022059731
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020156927
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】田原 宏俊
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-208017(JP,A)
【文献】特開2000-104708(JP,A)
【文献】特開平11-171236(JP,A)
【文献】実開平01-069938(JP,U)
【文献】実開平04-086034(JP,U)
【文献】実開昭50-004981(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 99/00
A41B 11/00-11/14
F16B 2/08
B65D 63/10-63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの掛け回し要素と、
前記掛け回し要素に掛け回されて、前記掛け回し要素から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなり、
しかも、前記保持要素は、ベースと、ベースに起伏動可能に支持されるレバーとを、前記ベースの一面と前記レバーの前記支持を受ける部分との間に前記バンドの延び出し部を通過可能な隙間を開けて組み合わせてなり、
前記隙間が、前記レバーが伏倒位置にあるときに狭くなるように、前記支持を受ける部分を構成させてなる、バンド装置。
【請求項2】
少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの掛け回し要素と、
前記掛け回し要素に掛け回されて、前記掛け回し要素から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなると共に、
前記保持要素は、前記バンドの前記延び出し部を重ね合わせ状に保持する前記延び出し部の通過箇所と、前記通過箇所に前記延び出し部を前記バンドの長さ方向に直交する側から導入可能とする導入箇所とを備えており、
しかも、前記保持要素は、板状の基部と、この基部の一面に向き合う挟持片部と、前記基部の一辺と前記挟持片部の一辺とを連接する側片部とを備え、前記挟持片部と前記基部との間を前記通過箇所として機能させると共に、前記側片部と反対の側を前記導入箇所としてなる、バンド装置。
【請求項3】
少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの取り付け対象の一部に掛け回されて、この掛け回し箇所から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなり、
しかも、前記保持要素は、ベースと、ベースに起伏動可能に支持されるレバーとを、前記ベースの一面と前記レバーの前記支持を受ける部分との間に前記バンドの延び出し部を通過可能な隙間を開けて組み合わせてなり、
前記隙間が、前記レバーが伏倒位置にあるときに狭くなるように、前記支持を受ける部分を構成させてなる、バンド装置。
【請求項4】
少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの取り付け対象の一部に掛け回されて、この掛け回し箇所から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなると共に、
前記保持要素は、前記バンドの前記延び出し部を重ね合わせ状に保持する前記延び出し部の通過箇所と、前記通過箇所に前記延び出し部を前記バンドの長さ方向に直交する側から導入可能とする導入箇所とを備えており、
しかも、前記保持要素は、板状の基部と、この基部の一面に向き合う挟持片部と、前記基部の一辺と前記挟持片部の一辺とを連接する側片部とを備え、前記挟持片部と前記基部との間を前記通過箇所として機能させると共に、前記側片部と反対の側を前記導入箇所としてなる、バンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯状体や紐状体の代用となるバンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の物品に付設されるテープなどの帯状体は、典型的には、バックルと組み合わされて物品に備えられる。かかるテープとバックルとの留め付け位置が予期せずズレてしまうと、かかるテープによって絞ったり、引き締めていた状態が損なわれることとなる。
【0003】
このような事態をできる限り防ぐことを目的としたものとして、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1のものでは、バックルに形成されたバンドの掛け回し要素に掛け回されたバンドの外面に形成させた突起に、バックル側に形成させた突起を係合させることで、バックルにバンドを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-36639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、帯状体や紐状体の代用となるバンド装置において、一度設定したバンドの長さを、簡素な構造をもって効果的に維持できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、バンド装置を、少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの掛け回し要素と、
前記掛け回し要素に掛け回されて前記掛け回し要素から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなる、ものとした。
【0007】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、バンド装置を、少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記係合面部を向き合わせるように二つ折りにして重ね合わされた、前記バンドにおける重ね合わせ部分を通過可能とすると共に、折った箇所を通過不能に構成された通過部を備えた前記バンドに対する付設要素とを備えており、
前記付設要素によって、前記通過部内に位置される前記バンドの重ね合わせ部分における一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれ他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれ他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持されるようにしてなる、ものとした。
【0008】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第三の観点から、バンド装置を、少なくとも片面に幅方向に沿った凸部を、隣り合う前記凸部間にそれぞれ幅方向に沿った凹部を形成させるようにして長さ方向に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部としてなるバンドと、
前記バンドの取り付け対象の一部に掛け回されてこの掛け回し箇所から延び出す前記バンドの一方及び他方の延び出し部の少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凸部が、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凹部に収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部を構成する各前記凹部に、それぞれこれらの他方の前記係合面部を構成する前記凸部が収まるように重ね合わせ状に保持する保持要素とを備えてなる、ものとした。
【0009】
前記保持要素を、ベースと、ベースに起伏動可能に支持されるレバーとを、前記ベースの一面と前記レバーの前記支持を受ける部分との間に前記バンドの延び出し部を通過可能な隙間を開けて組み合わせてなり、
前記隙間が前記レバーが伏倒位置にあるときに狭くなるように、前記支持を受ける部分を構成させてなるものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記保持要素を、前記バンドの前記延び出し部を重ね合わせ状に保持する前記延び出し部の通過箇所と、前記通過箇所に前記延び出し部を前記バンドの長さ方向に直交する側から導入可能とする導入箇所とを備えてなるものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
かかる構成によれば、前記のようにバンドにおける係合面部の一方の凸部が、他方の凹部に収まり、且つ、係合面部の一方の凹部に他方の凸部を収めた二つの係合面部の係合状態を、前記保持要素、あるいは、付設要素によって、保持することができる。これにより、前記掛け回し要素や取り付け対象の一部に対して掛け回されて湾曲されたバンドの湾曲中心、あるいは、二つ折りにより湾曲されたバンドの湾曲中心が、バンドの長さ方向においてズレてしまう事態を確実に防止することができ、バンド装置による各種の物品の所定の箇所をバンド装置の長さに絞ったり、引き締めたり、維持させたりした状態を、安定的に維持させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、帯状体や紐状体の代用となるバンド装置において、一度設定したバンドの長さを、簡素な構造をもって効果的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかるバンド装置(第一例乃至第十例)を構成するバンドの要部斜視図である。
図2図2は、前記第一例の要部斜視図である。
図3図3は、前記第一例の要部断面図であり、レバーは伏倒位置にある。
図4図4は、前記第一例の要部断面図であり、レバーは起立位置にある。
図5図5は、前記第二例の正面図である。
図6図6は、前記第二例の側面図である。
図7図7は、図5におけるA-A線断面図である。
図8図8は、図5におけるB-B線断面図である。
図9図9は、前記第二例を構成する保持要素の分解斜視図である。
図10図10は、図5におけるC-C線断面図である。
図11図11は、図5におけるC-C線位置での断面図であり、レバーは起立位置にある。
図12図12は、前記第三例の正面図である。
図13図13は、前記第三例の側面図である。
図14図14は、図12におけるD-D線断面図である。
図15図15は、図12におけるE-E線断面図である。
図16図16は、前記第三例を構成する保持要素の斜視図である。
図17図17は、前記第四例の要部正面図である。
図18図18は、前記第四例の要部側面図である。
図19図19は、図17におけるF-F線断面図である。
図20図20は、前記第五例の正面図である。
図21図21は、図20におけるG-G線断面図である。
図22図22は、図20におけるH-H線断面図である。
図23図23は、図20におけるI-I線断面図である。
図24図24は、前記第五例の要部破断斜視図である。
図25図25は、前記第五例を構成する保持要素の要部斜視図である。
図26図26は、前記第五例を構成する保持要素の要部斜視図である。
図27図27は、前記第五例の保持要素を構成するスライド板部の斜視図である。
図28図28は、前記第五例の保持要素を構成するスライド板部の斜視図である。
図29図29は、前記第一例を靴紐の代用として用いた例の斜視構成図である。
図30図30は、前記第六例の斜視構成図である。
図31図31は、前記第七例の斜視構成図である。
図32図32は、前記第七例の要部断面斜視図である。
図33図33は、前記第八例の斜視構成図である。
図34図34は、前記第八例の斜視構成図であり、保持要素によりベルトの重ね合わせ部分を保持させた様子を示している。
図35図35は、前記第八例の保持要素の平面図である。
図36図36は、前記第八例の保持要素の側面図である。
図37図37は、図35におけるJ-J線断面図である。
図38図38は、前記第九例の正面図である。
図39図39は、図38におけるK-K線断面図である。
図40図40は、前記第九例を構成する保持要素の斜視図である。
図41図41は、前記第九例の使用状態を示した構成図である。
図42図42は、前記第十例の正面図である。
図43図43は、図42におけるL-L線断面図である。
図44図44は、前記第十例の使用状態を示した構成図である。
図45図45A乃至45Dは、バンドの変形例を示した要部斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図45Dに基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるバンド装置は、典型的には、各種の物品に所期の機能を付与するために付設されるテープなどの帯状体やコードなどの紐状体の代用となるものである。
【0015】
例えば、かかるバンド装置は、(1)バックルと組み合わされてバンド装置となる当該バンド、(2)被服の開口部を絞ったり、被服の一部を引き締めるために被服に備えられる絞り紐や引き締め紐、(3)靴紐、(4)リュックサックなどのかばん類を構成する背負いバンドや、各種のストラップなどを構成するテープ、(5)靴の履き口、袋の袋口、人体の一部などを絞るために用いられるバンドなどの代用となるものである。
【0016】
かかるバンド装置は、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3とを備えて構成される(例えば、図2乃至4参照)。あるいは、かかるバンド1装置は、バンド1と、付設要素4とを備えて構成される(例えば、図17乃至19参照)。あるいは、かかるバンド1装置は、バンド1と、保持要素3とを備えて構成される(例えば、図38乃至41参照)。あるいは、かかるバンド装置は、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えて構成される(例えば、図5乃至11参照)。一つのバンド1に、二以上の掛け回し要素2、保持要素3あるいは付設要素4が組み合わされてバンド装置が構成される場合もある。
【0017】
バンド1は、少なくとも片面にその幅方向x(図1参照)に沿った凸部1aを、隣り合う前記凸部1a間にそれぞれ幅方向xに沿った凹部1bを形成させるようにして、長さ方向y(図1参照)に亘って複数備えさせて前記片面の少なくとも一部を係合面部1cとしてなる。
【0018】
図示の例では、バンド1は、その片面に、その全長に亘って、複数の前記凸部1aと複数の前記凹部1bとを備えており、前記片面の全体を前記係合面部1cとしている。なお、係合面部1cは、前記片面の全体に形成しなくても良い場合がある。また、バンド1の両面にそれぞれ係合面部1cを形成させておいても良い場合がある。
【0019】
図示の例では、バンド1の長さ方向yに亘るいずれの位置においても、隣り合う凸部1a間には等しい間隔が形成され、バンド1の長さ方向yに亘るいずれの位置においても、隣り合う凹部1b間には等しい間隔が形成されるようになっている。隣り合う凸部1a間に一つの凹部1bが形成され、隣り合う凹部1b間に一つの凸部1aが形成されている。図示の例では、凸部1aは、バンド1の幅方向xに沿った畝状を呈している。凹部1bは、バンド1の幅方向xに沿った溝状を呈している。バンド1の長さ方向yに沿った断面において、係合面部1cは、凸部1aの頂部側と凹部1bの底側を共に弧状にした波形を呈している。
【0020】
後述のように、バンド1を後述の掛け回し要素2やバンド装置の取り付け対象の一部に掛け回して、この掛け回し要素2や取り付け対象の掛け回し箇所から引き出されるバンド1の一方の延び出し部1dと他方の延び出し部1dとを係合面部1cを向き合わせて重ね合わせると、両延び出し部1dの重ね合わせ部分1eにおいて、一方の延び出し部1dの係合面部1cを構成する各凸部1aがそれぞれ他方の延び出し部1dの係合面部1cを構成する凹部1bに相補的に収まり、かつ、一方の延び出し部1dの係合面部1cを構成する各凹部1bにそれぞれ他方の延び出し部1dの係合面部1cを構成する凸部1aが相補的に収まるようにすることができる。
【0021】
あるいはまた、係合面部1cを向き合わせるようにバンド1を二つ折りにして重ね合わせると、重ね合わせ部分1e(例えば、図3参照)における一方の前記係合面部1cを構成する各前記凸部1aがそれぞれ他方の前記係合面部1cを構成する前記凹部1bに相補的に収まり、かつ、一方の前記係合面部1cを構成する各前記凹部1bにそれぞれ他方の前記係合面部1cを構成する前記凸部1aが相補的に収まるようにすることができる。
【0022】
この実施の形態にあっては、このように二つ折りにして重ね合わせられた係合面部1cの一方の凸部1aが、他方の凹部1bに収まり、且つ、係合面部1cの一方の凹部1bに他方の凸部1aを収めた二つの係合面部1cの係合状態を、後述の保持要素3、あるいは、付設要素4によって、保持できるようになっている。これにより、前記掛け回し要素2に対して掛け回されて湾曲されたバンド1の湾曲中心z、あるいは、二つ折りにより湾曲されたバンド1の湾曲中心zとなっていた箇所が、バンド1の長さ方向yにおいてズレて別の箇所が湾曲中心zとなってしまう事態を確実に防止することができ、バンド1装置による各種の物品の所定の箇所をバンド1装置の長さに絞ったり、引き締めたり、維持させたりした状態を、安定的に維持させることが可能となる。
【0023】
バンド1は、前記のように湾曲可能な可撓性を備えている。バンド1は、典型的には、合成樹脂から構成される。バンド1は、前記のように二つ折りしたときは、折った箇所1f(例えば、図8参照)、すなわち、前記湾曲中心z側をバンド1の厚さの二倍の寸法よりもやや大きくするようになっている。
図45A乃至45Dに、バンド1の変形例の幾つかを示す。図45A乃至45Dに示す変形例においても、凸部1aはバンド1の幅方向xに沿って形成され、凹部1bはバンド1の幅方向xに沿った溝状を呈している。図45A乃至45Dにおいても、凸部1aと凹部1bとは相補状をなす形態となっている。バンド1の長さ方向yに沿った断面において、図45Aに示す変形例では、凸部1aは矩形状であり、図45Bに示す変形例では、凸部1aは三角形状であり、図45Cに示す変形例では、頸部上に円形状の頭部を一体に形成させた形態であり、図45Dに示す変形例では、逆台形状である。図45AおよびBに示す形態の変形例では、係合面部1c同士の係合を解きやすい。一方、図45CおよびDに示すようにすると、凸部1aが顎部を持つので係合面部1c同士の係合を強固にできる。
【0024】
保持要素3及び付設要素4は、前記バンド1の前記重ね合わせ部分1eを通過させると共に、この通過箇所5(例えば、図4参照)に、重ね合わせ部分1eを構成するバンド1の一方側(延び出し部1dの一方、または、二つ折りされたバンド1の折った箇所1fを挟んだ一方側)の外面1g(バンド1の他方側と接し合う側と反対の面)に接する接触部分6と、重ね合わせ部分1eを構成するバンド1の他方側(延び出し部1dの他方、または、二つ折りされたバンド1の折った箇所1fを挟んだ他方側)の外面1g(バンド1の他方側と接し合う側と反対の面)に接する接触部分6とを備えている。そして、保持要素3及び付設要素4は、この二つの接触部分6間によって前記重ね合わせ部分1eの離れ出しを防いで重ね合わせ部分1eの前記係合状態を維持するようにしている。
【0025】
以下の第一例乃至第四例、第六例及び第七例、ならびに第九例及び第十例では、保持要素3及び付設要素4の前記通過箇所5に対し、バンド1は、その端末側から通されるようになっている。一方、第五例及び第八例では、かかる通過箇所5に、バンド1の重ね合わせ部分1eはバンド1の長さ方向yに直交する側から、つまり、バンド1の長さ方向yに沿った一方の側縁1h側から導入されるようになっている。
【0026】
(第一例)
図2乃至図4は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3とを備えた構成とした例を示している。この第一例では、掛け回し要素2と、保持要素3とは、一つの部材に集約されている。
【0027】
この第一例では、基板部8の一面側に、一対の側壁部9を形成させてなるベース7に、側壁部9の連続方向に間隔を開けて二つの軸部10を備えさせている。図示の例では、この二つの軸部10における図2乃至図4における左側に位置される軸部10が掛け回し要素2として機能するようになっている。基板部8には、ベース7をバンド装置が備えられる物品に縫着などするために利用される小孔8aが形成されている。
【0028】
掛け回し要素2を構成する軸部10は、一対の側壁部9間に架設されている。バンド1は、図2乃至図4における右側から一対の側壁9間に導入され、掛け回し要素2に掛け回された後、再び図2乃至図4における右側から引き出されるようになっている。
【0029】
保持要素3は、前記ベース7に起伏動可能に支持されるレバー11によって構成されている。レバー11は、図2乃至図4における右側において、一対の側壁部9に架設された軸部10によって一端側をベース7に対して回動可能に支持されている。レバー11のかかる支持を受ける部分12は、掛け回し要素2の隣に位置し、図示の例では、レバー11を伏倒すると、支持を受ける部分12と自由端との間が掛け回し要素2の上側に位置するようになっている(図3参照)。
【0030】
レバー11は、前記一端側、すなわち、前記軸部10による前記ベース7に対する支持を受ける部分12の外面のうち、レバー11の回動中心となる前記軸部10を巡る向きの外面の一部を、軸部10との距離を異ならせる第一面13と第二面14とから構成している。第一面13は、前記軸部10を中心にした仮想の円(図示は省略する。)の円弧に沿うように形成されている。第二面14は、前記仮想の円の円弧よりもこの円の中心側に位置している。そして、レバー11は、その他端、すなわち、自由端と前記軸部10とを結ぶ仮想の直線L1が前記ベース7の基板部8と実質的に平行をなす伏倒位置と(図3参照)、前記直線L1が前記ベース7の基板部8に所定の角度をもって交叉する起立位置(図4参照)との間に亘る回動可能に前記ベース7に組み合わされている。そしてまた、レバー11が伏倒位置にあるとき、前記第一面13がベースの基板部8の一面15に隙間を空けて向き合い、レバー11が起立位置にあるとき、前記第二面14がベース7の基板部8の一面15に隙間を開けて向き合うようになっている。
【0031】
レバー11が伏倒位置にあるときの前記第一面13とベース7の基板部8の一面15との間の距離は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。
【0032】
これにより、この第一例では、レバー11は、前記ベース7の基板部8の一面15と前記レバー11の前記支持を受ける部分12との間に前記バンド1の延び出し部1dを通過可能な隙間を開けて組み合わされると共に、前記隙間が前記レバー11が伏倒位置にあるときに狭くなるようになっている。
【0033】
したがって、この第一例では、レバー11を起立させた状態において、レバー11の支持を受ける部分12とベース7との間を前記通過箇所5として掛け回し要素2にバンド1を掛け回すことができる。また、このように掛け回し要素2に掛け回されて延び出されるバンド1の一方の延び出し部1dの係合面部1cと他方の延び出し部1dの係合面部1cとの係合状態を、レバー11を伏倒することで、安定的に維持させることができる。
【0034】
図29は、靴紐の代用としてバンド装置を用いた例を示している。靴Sの一方の側面に第一例の保持要素3が備え付けられ、靴の他方側に一方の端末側を止着されたバンド1が靴Sの上部を通って前記保持要素3と一体となった掛け回し要素2に掛け回され、前記レバー11下を通って再び靴Sの上部側に引き出されている。図中符号50で示すのはバンド1の一端に形成された持ち手であり、符号51で示すのはこの持ち手50側においてバンド1を重ね合わせた状態で通過させるループ体である。
【0035】
(第二例)
図5乃至図11は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えた構成とした例を示している。この第二例では、掛け回し要素2と、保持要素3とは、付設要素4とは別体となっており、これら三者はバンド1を介して連繋されている。
【0036】
図5及び図6における左側に掛け回し要素2が位置され、右側に付設要素4が位置され、中間に保持要素3が位置されている。掛け回し要素2に掛け回されて掛け回し要素2から図5及び図6における右側に引き出されるバンド1の一方の延び出し部1d(図6の上側の延び出し部1d)の長さを変えることで、掛け回し要素2と付設要素4との間の距離を変えることができ、これにより、掛け回し要素2と付設要素4とをそれぞれ固定させた物品のかかる二箇所の固定位置間にある部分を絞り、あるいは、緩めることが可能となる。
【0037】
この第二例では、掛け回し要素2は、バンド1の幅方向xの寸法と等しいか、これより大きい間隔を開けて配される一対の側板部16間に架設された軸部17と、この軸部17との間に前記バンド1の厚さ寸法分の間隔を開けて一対の側板部16間に架設された固定用部分18とを備えた構成となっている(図5及び7参照)。図5に示すように、固定用部分18には、この固定用部分18をバンド装置が備えられる物品に縫着などするために利用される小孔19が形成されている。図示の例では、前記軸部17と固定用部分18との間に図7の下側からバンド1を通すことで、バンド1の一方の端末側を一方の延び出し部1dとして、図7の下側に位置されるバンド1の他方の延び出し部1d上に位置させるようにして、前記軸部17にバンド1を掛け回すことができるようになっている。
【0038】
また、この第二例では、図8に示すように、付設要素4は、係合面部1cを向き合わせるように二つ折りにして重ね合わされたバンド1における重ね合わせ部分1eを通過可能とすると共に、折った箇所1fを通過不能に構成された前記通過箇所5としての通過部20を備えた構成となっている。図示の例では、付設要素4は、固定用部分21の一面上に、前記重ね合わせ部分1eを通過可能で、折った箇所1fを通過不能とする間隔を開けて通過部構成部分22を配させた構成となっている。図5に示すように、固定用部分21と通過部構成部分22とは一対の側板部23によって連接されている。一対の側板部23間にはバンド1の幅方向xの寸法と等しいか、これよりも大きい間隔が開けられている。固定用部分21には、この固定用部分21をバンド装置が備えられる物品に縫着などするために利用される小孔24が形成されている。図示の例では、図8の左側から通過部20にバンド1を通した後に、バンド1を二つ折りにして前記重ね合わせ部分1eを形成し、この重ね合わせ部分1eを図8の右側から通過部20に、前記折った箇所1fが通過部20の右側の入り口25に引っかかる位置まで導入させることができる。これにより、バンド1に付設要素4を取り付けることができると共に、重ね合わせ部分1eにおける一方の係合面部1cと他方の係合面部1cとの係合状態を、通過部20によって、安定的に維持させることができる。
【0039】
すなわち、前記通過部20を構成する固定用部分21の一面と通過部構成部分22との間の前記間隔は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。
【0040】
また、この第二例では、図9に示すように、保持要素3は、ベース26に起伏動可能に支持されるレバー27によって構成されている。レバー27は、ベース26の一面側に形成された一対の側壁28部に架設された軸部29によって一端側をベース26に対して回動可能に支持されている。
【0041】
図11に示すように、レバー27は、前記一端側、すなわち、前記軸部29による前記ベース26に対する支持を受ける部分27aの外面のうち、レバー27の回動中心となる前記軸部29を巡る向きの外面の一部を、軸部29との距離を異ならせる第一面30と第二面31とから構成している。第一面30は、前記軸部29を中心にした仮想の円(図示は省略する。)の円弧に沿うように形成されている。第二面31は、前記仮想の円の円弧よりもこの円の中心側に位置している。そして、レバー27は、その他端、すなわち、自由端と前記軸部とを結ぶ仮想の直線L1が前記ベース26の一面と実質的に平行をなす伏倒位置と、前記直線L1が前記ベース26の一面に所定の角度をもって交叉する起立位置との間に亘る回動可能に前記ベース26に組み合わされている。そしてまた、図10に示すように、レバー27が伏倒位置にあるとき、前記第一面30がベース26の一面に隙間を空けて向き合い、図11に示すように、レバー27が起立位置にあるとき、前記第二面31がベース26の一面に隙間を開けて向き合うようになっている。
【0042】
レバー27が伏倒位置にあるときの前記第一面30とベース26の一面との間の距離は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。
【0043】
これにより、この第二例では、レバー27は、前記ベース26の一面と前記レバー27の前記支持を受ける部分27aとの間に前記バンド1の延び出し部1dを通過可能な隙間を開けて組み合わされると共に、前記隙間が前記レバー27が伏倒位置にあるときに狭くなるようになっている。
【0044】
したがって、この第二例では、ベース26の一面とレバー27の支持を受ける部分27aとの間を前記通過箇所5として通過するバンド1の他方の延び出し部1d上に、レバー27を起立させた状態において、バンド1の一方の延び出し部1dを通過させることができる。また、このように上下に重ね合わされたバンド1の一方の延び出し部1dの係合面部1cと他方の延び出し部1dの係合面部1cとの係合面部1cとの係合状態を、レバー27を伏倒することで、安定的に維持させることができる。
【0045】
なお、この第二例では、前記保持要素3におけるレバー27の支持を受ける部分27aよりも図10における右側となる位置に、一方の延び出し部1dの端末を通過させる通過部32が形成されており、この通過部32は二つ折りにして重ね合わされたバンド1における重ね合わせ部分1eを通過可能とすると共に、折った箇所1fを通過不能に構成されている。これにより、この第二例では、保持要素3のレバー27とベース26との間を通過したバンド1の端末側を図10における左側から通過部32に通した後、この端末側を二つ折りにして前記重ね合わせ部分1eを形成し、この重ね合わせ部分1eを図10の右側から前記折った箇所1fが通過部32の右側の入り口に引っかかる位置まで通過部32に導入できるようになっている。
【0046】
(第三例)
図12乃至図16は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えた構成とした例を示している。この第三例では、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とは別体となっており、三者はバンド1を介して連繋されている。
【0047】
この第三例における掛け回し要素2及び付設要素4は、第二例にかかる掛け回し要素2及び付設要素4と実質的に同一であるので、第三例を示す図面に第二例を示す図面において掛け回し要素2及び付設要素4に付した符号と同一の符号を付して、掛け回し要素2及び付設要素4の説明は省略する。
【0048】
第三例における保持要素3は、図16に示すように、筒両端を共に開放させた扁平な筒状を呈している。すなわち、保持要素3は、一対の幅広の面部33と、一対の幅狭の面部34とを備えた形態となっている。
【0049】
保持要素3における一対の幅広の面部33の内面間の距離は、図14に示すように、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。また、保持要素3における一対の幅狭の面部34の内面間の距離は、バンド1の幅方向xの寸法と同じか、これより大きくなっている。
【0050】
これにより、この第三例では、第一に、バンド1の掛け回し要素2に掛け回されてこの掛け回し要素2から延び出す前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dからなる重ね合わせ部分1eよりもバンド1の中央側において、他方の延び出し部1d(図14における下側の延び出し部1d)のみを内部に通過させた状態でバンド1の長さ方向yに沿って移動可能にバンド1に対し保持要素3を備えさせておくことができる。また、第二に、このように備えられた保持要素3をバンド1の長さ方向yに沿って移動させることで、保持要素3内に前記重ね合わせ部分1eを導入させることができる。これにより、前記重ね合わせ部分1eの前記係合状態を保持要素3によって安定的に維持させることができる。
【0051】
なお、この第三例にあっては、保持要素3と付設要素4の間において、他方の延び出し部1dにストッパー35が備えられている(図12乃至14参照)。図16に示すように、ストッパー35は、他方の延び出し部1dの通過穴37を備えた環状体36と、この環状体36における保持要素3側に向けられた面部から保持要素3側に向けて突き出す突片38とを備えている。突片38は、他方の延び出し部1d(図14における下側の延び出し部1d)の係合面部1cに向き合う側に、他方の延び出し部1dの係合面部1cの凸部1aを受け入れる凹部と、かかる係合面部1cの凹部1bに入り込む凸部とからなる、かかる係合面部1cに係合可能なストッパー側係合面部39を備えると共に、一方の延び出し部1d(図14における上側の延び出し部1d)と実質的に等しい厚さを備えている。この第三例では、他方の延び出し部1dの係合面部1cにストッパー35のストッパー側係合面部39を係合させた状態で、その突片を図14における右側から保持要素3内にはめ込むことが可能となっており、これにより、バンド1の中央側に向けた保持要素3の移動を阻止して、保持要素3による前記重ね合わせ部分1eの前記係合状態の維持が予期せず解かれる事態を防止するようになっている。
【0052】
(第四例)
図17乃至図19は、バンド装置を、バンド1と付設要素4とから構成した例を示している。
【0053】
付設要素4は、筒両端を共に開放させた扁平な筒状を呈している。すなわち、付設要素4は、一対の幅広の面部40と、一対の幅狭の面部41とを備えた形態となっている。
【0054】
付設要素4における一対の幅広の面部40の内面間の距離は、付設要素4の一方の筒端42側では、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。
【0055】
一方、付設要素4における一対の幅広の面部40の内面間の距離は、付設要素4の他方の筒端43側では、バンド1の厚さの二倍の寸法よりもやや大きくなっている。
【0056】
図示の例では、付設要素4における一対の幅広の面部40の内面間の距離は、付設要素4の他方の筒端側から一方の筒端側に近づくに連れて漸減するようになっている。
【0057】
また、付設要素4における一対の幅狭の面部41の内面間の距離は、バンド1の幅方向xの寸法と同じか、これより大きくなっている。
【0058】
これにより、この第四例では、付設要素4は、係合面部1cを向き合わせるように二つ折りにして重ね合わされたバンド1における重ね合わせ部分1eを通過可能とすると共に、折った箇所1fを通過不能に構成された前記通過箇所5としての通過部20を備えた構成となっている。
【0059】
図示の例では、図19の左側に折った箇所1fを位置させる一方で、右側に端末側を位置させるように二つ折りにして重ね合わせ部分1eを形成させたバンド1を図19の左側から端末側を先にして、前記折った箇所1fが付設要素4の通過部20の中間に引っかかる位置まで導入させることができる。これにより、バンド1に付設要素4を取り付けることができると共に、重ね合わせ部分1eにおける一方の係合面部1cと他方の係合面部1cとの係合状態を、通過部20によって、安定的に維持させることができる。
【0060】
(第五例)
図20乃至図28は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えた構成とした例を示している。この第五例では、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とは別体となっており、三者はバンド1を介して連繋される。
【0061】
この第五例における掛け回し要素2及び付設要素4は、第二例にかかる掛け回し要素2及び付設要素4と実質的に同一であるので、第五例を示す図面に第二例を示す図面において掛け回し要素2及び付設要素4に付した符号と同一の符号を付して、掛け回し要素2及び付設要素4の説明は省略する。
【0062】
この第五例では、保持要素3は、前記バンド1の前記延び出し部1dを重ね合わせ状に保持する前記延び出し部1dの通過箇所5と、前記通過箇所5に前記延び出し部1dを前記バンド1の長さ方向yに直交する側から導入可能とする導入箇所44とを備えている。
【0063】
そして、この第五例では、前記導入箇所44を通じて前記通過箇所5に導入された延び出し部1dを、前記通過箇所5によって、前記通過箇所5内に位置される、前記掛け回し要素2から延び出す前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dを、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凸部1aがそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凹部1bに収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凹部1bにそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凸部1aが収まるように重ね合わせ状に保持させる構成となっている。
【0064】
図示の例では、図25に示すように、保持要素3は、板状の基部45と、この基部45の一面に向き合う挟持片部46と、基部45の一辺と挟持片部46の一辺とを連接する側片部47とを備えている。図23及び24に示すように、基部45の一面上には、スライド板部48が備えられている。挟持片部46のスライド板部48に向き合う側の面と、スライド板部48の挟持片部46に向き合う側の面との間の距離は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。挟持片部46とスライド板部48との間が前記通過箇所5として機能するようになっている。
【0065】
これにより、図示の例では、保持要素3における側片部47と反対の側を前記導入箇所44として、延び出し部1d、つまり、延び出し部1dの一部によって構成される前記重ね合わせ部分1eを、バンドの長さ方向yに直交する側、つまり、バンドの長さ方向yに沿った一方の側縁1h側から、一方の延び出し部1dの外面1gが前記挟持片部46に接し、かつ、他方の延び出し部1dの外面1gが前記スライド板部48に接するようにして、通過箇所5に導入できるようになっている。
【0066】
なお、図示の例では、図25及び26に示すように、前記基部45は、図中符号49で示される固定用孔を利用して、掛け回し要素2と付設要素4との間において、バンド装置が備えられる物品に固定できるようになっている。
【0067】
また、図示の例では、前記スライド板部48は、通過箇所5の連続方向y’(図24参照)に直交する向きにスライド移動可能に前記基部45に組み合わされていると共に、この方向での挟持片部46の寸法は基部45の寸法より小さくなっており、挟持片部46下にスライド板部48が位置しないスライド位置においてスライド板部48上に前記重ね合わせ部分1eを位置づけた状態から、挟持片部46下にスライド板部48が位置される位置までスライド板部48をスライド移動させることで、かかる重ね合わせ部分1eを通過箇所5に導入できるようになっている。
【0068】
(第六例)
図30は、バンド1と保持要素3と付設要素4とにより、止血帯などとして利用可能なバンド装置を構成した例を示している。図中符号Amは腕である。この第六例における保持要素3は第二例にかかる保持要素3と実質的に同一であり、この第六例における付設要素4は第四例にかかる付設要素4と実質的に同一であるので、第六例を示す図面に第二例及び第四例を示す図面において保持要素3及び付設要素4に付した符号と同一の符号を付して、保持要素3及び付設要素4の説明は省略する。
【0069】
この第六例にあっては、保持要素3によって、前記バンド1の取り付け対象としての腕Amに掛け回されてこの腕Amから延び出す前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dの少なくとも一部を、これらの一方の係合面部1cを構成する各凸部1aがそれぞれこれらの他方の係合面部1cを構成する凹部1bに収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各凹部1bにそれぞれこれらの他方の係合面部1cを構成する凸部1aが収まるように重ね合わせ状に保持して、バンド1による腕Amの締め付け状態を案的的に維持することができる。
【0070】
(第七例)
図31及び図32は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3とを備えた構成とした例を示している。この第七例では、掛け回し要素2と、保持要素3とは、一つの部材52に集約されている。この第七例にかかるバンド装置は、靴Sの履き口Saを絞るなどの用途に利用可能な構成となっている。
【0071】
この第七例における掛け回し要素2及び保持要素3は、第一例にかかる掛け回し要素2及び保持要素3と実質的に同一であるので、第七例を示す図面に第一例を示す図面において掛け回し要素2及び保持要素3に付した符号と同一の符号を付して、掛け回し要素2及び保持要素3の説明は省略する。
【0072】
この第七例では、掛け回し要素2を挟んだ一方側に、前記保持要素3を構成するレバー11が支持されていると共に、前記掛け回し要素2を挟んだ他方側にバンド1の一方の端末を通過させる通過部53が形成されている。この通過部53は二つ折りにして重ね合わされたバンド1における重ね合わせ部分1eを通過可能とすると共に、折った箇所1fを通過不能に構成されている。
【0073】
これにより、この第七例では、第一に、バンド1の一方の端末を図32の下側から前記通過部53に通した後、二つ折りにしてその重ね合わせ部分1eを図32の上側から通過部53に導入させることで、折った箇所1fを図32の上側に位置される通過部53の入り口に引っかけてバンド1の一方の端末を前記部材52に固定させることできる。第二に、バンド1の他方の端末側をレバー11下を通じて掛け回し要素2に掛け回すことにより、バンド1を靴Sの履き口Saに巻回させることができる。第三に、レバー11を伏倒させて掛け回し要素2から引き出されるバンド1の重ね合わせ部分1eを押さえつけることができ、これにより、バンド1によって履き口Saを絞った状態を安定的に維持させることができる。
【0074】
(第八例)
図33乃至図37は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えた構成とした例を示している。この第八例では、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とは別体となっており、三者はバンド1を介して連繋される。
【0075】
この第八例における掛け回し要素2は第二例にかかる掛け回し要素2と実質的に同一であり、バンドの一方の端末に取り付けられた付設要素4は第四例にかかる付設要素4と実質的に同一であるので、第八例を示す図面に第二例及び第四例を示す図面において掛け回し要素2及び付設要素4に付した符号と同一の符号を付して、掛け回し要素2及び付設要素4の説明は省略する。
【0076】
図33および図34は、靴紐の代用として第八例のバンド装置を用いた例を示している。靴Sの一方の側面に掛け回し要素2が備え付けられ、靴Sの他方側に備えられた図示しない付設要素によってバンド1の他方の端末が固定されるようになっている(図33参照)。靴Sの他方側に他方の端末を固定されたバンド1は、靴の上部を通って掛け回し要素2に掛け回され、再び靴Sの上部側に引き出されるようになっている(図34参照)。靴Sの上部側には、保持要素3が備え付けられている。
【0077】
この第八例では、図37に示すように、保持要素3は、前記バンド1の前記延び出し部1dを重ね合わせ状に保持する前記延び出し部1dの通過箇所5と、前記通過箇所5に前記延び出し部1dを前記バンド1の長さ方向yに直交する側から導入可能とする導入箇所54とを備えている。
【0078】
そして、この第八例では、前記導入箇所54を通じて前記のように通過箇所5に導入される前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dを、前記通過箇所5によって、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凸部1aがそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凹部1bに収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凹部1bにそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凸部1aが収まるように重ね合わせ状に保持させる構成となっている(図34乃至図37参照)。
【0079】
図示の例では、保持要素3は、板状の基部55と、この基部55の一面に向き合う挟持片部56と、基部55の一辺と挟持片部56の一辺とを連接する側片部57とを備えている。基部55と挟持片部56との間の距離は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。
【0080】
これにより、図示の例では、保持要素3における側片部57と反対の側を前記導入箇所54として、延び出し部1d、つまり、延び出し部1dの一部によって構成される前記重ね合わせ部分1eを、バンド1の長さ方向yに直交する側、つまり、バンド1の長さ方向yに沿った一方の側縁1h側から、一方の延び出し部1dの外面1gが前記挟持片部46に接し、かつ、他方の延び出し部1dの外面1gが前記基部55に接するようにして、通過箇所5に導入できるようになっている。
【0081】
なお、図示の例では、図35及び36に示すように、前記基部55は、図中符号58で示される固定用孔58を利用して、掛け回し要素2と付設要素4との間において、靴Sの上部に固定できるようになっている。
【0082】
また、図示の例では、側片部57には、側片部57の一端側と他端側とにおいてそれぞれ形成された側片部の中央側に向けて凹む凹部59によって他の部分よりもバンド1の長さ方向yに沿った方向での寸法を小さくして弾性変形しやすくなっており(図36参照)、弾性変形により前記導入箇所54から重ね合わせ部分1eを円滑に通過箇所5内に受け入れるようになっている。
【0083】
(第九例)
図38乃至図41は、バンド装置を、バンド1と、二つの保持要素3とから構成した例を示している。二つの保持要素3は別体となっており、両者はバンド1を介して連繋されている。
【0084】
そして、この第九例にあっては、前記保持要素3によって、前記バンド1の取り付け対象の一部に掛け回されてこの掛け回し箇所から延び出す前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dの少なくとも一部を、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凸部1aがそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凹部1bに収まり、かつ、これらの一方の前記係合面部1cを構成する各前記凹部1bにそれぞれこれらの他方の前記係合面部1cを構成する前記凸部1aが収まるように重ね合わせ状に保持するようになっている。
【0085】
図示の例では、図41に示すように、バンド装置は、リュックサックなどのかばん類を構成する左側の背負いバンドSb(前記取り付け対象の一部)に左側の端末側を掛け回されると共に、右側の背負いバンドSb(前記取り付け対象の一部)に右側の端末側を掛け回されて、左右の背負いバンドSb間に位置されるチェストストラップを構成している。二つの保持要素3の一方は左側の背負いバンドSbに掛け回されたバンド1の左側の掛け回し状態を維持し、二つの保持要素3の他方は右側の背負いバンドSbに掛け回されたバンド1の右側の掛け回し状態を維持するようになっている。
【0086】
バンド1における人体側に位置される他方の延び出し部1dの前方にバンド1の端末側となる一方の延び出し部1dが位置されている(図39図41参照)。
【0087】
第九例における保持要素3は、図40に示すように、筒両端を共に開放させた扁平な筒状を呈している。すなわち、保持要素3は、一対の幅広の面部60と、一対の幅狭の面部61とを備えた形態となっている。
【0088】
図39に示すように、保持要素3における一対の幅広の面部60の内面間の距離は、バンド1の厚さの二倍の寸法と実質的に等しくなっている。また、保持要素3における一対の幅狭の面部61の内面間の距離は、バンド1の幅方向xの寸法と同じか、これより大きくなっている。
【0089】
これにより、この第九例では、第一に、前記バンドの取り付け対象の一部に掛け回されてこの一部から延び出す前記バンド1の一方及び他方の延び出し部1dからなる重ね合わせ部分1eよりもバンド1の中央側において、他方の延び出し部1d(図39における下側の延び出し部1d)のみを内部に通過させた状態でバンド1の長さ方向yに沿った移動可能にバンド1に対し保持要素3を備えさせておくことができる。また、第二に、このように備えられた保持要素3をバンド1の長さ方向yに沿って移動させることで、保持要素3内に前記重ね合わせ部分1eを導入させることができる。これにより、前記重ね合わせ部分1eの前記係合状態を保持要素3によって安定的に維持させることができる。
【0090】
なお、この第九例にあっては、保持要素3の一方の筒端側にストッパー突部64が備えられている。図示の例では、保持要素3におけるバンド1の中央側に向けられた筒端側に、一方の幅広面部60に続き前記中央側に延びる前側延長部62と、他方の幅広面部60に続き前記中央側に延びる後側延長部63とが形成されていると共に、前側延長部62の延び出し端における後側延長部63に向き合う側に、他方の延び出し部1d(図39における下側の延び出し部1d)の係合面部1cを構成する凹部1bに納まるストッパー突部64が形成されている。ストッパー突部64はバンド1の幅方向xに沿って続くリブ状を呈している。前側延長部62のストッパー突部64と後側延長部63との間の距離はバンド1の凹部1bの形成箇所での厚さと実質的に等しく、保持要素3のバンド1の長さ方向yに沿った移動は前側延長部62の弾性変形により許容されるようになっている。これにより、この第九例にあっては、保持要素3内に前記重ね合わせ部分1eを導入させた状態において、前記前側延長部62のストッパー突部64によって前記弾性変形を生じさせる力以下の力が作用されたときの保持要素のバンド1の中央側に向けた移動を阻止するようになっている。
【0091】
(第十例)
図42乃至図44は、バンド装置を、バンド1と、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とを備えた構成とした例を示している。この第十例では、掛け回し要素2と、保持要素3と、付設要素4とは別体となっており、三者はバンド1を介して連繋されている。
【0092】
この第十例における掛け回し要素2及び付設要素4は第二例にかかる掛け回し要素2及び付設要素4と実質的に同一であり、保持要素3は第九例にかかる保持要素3と実質的に同一であるので、第十例を示す図面に第二例を示す図面において掛け回し要素2及び付設要素4に付した符号と同一の符号を付すると共に、第十例を示す図面に第九例を示す図面において保持要素3に付した符号と同一の符号を付して、掛け回し要素2、保持要素3及び付設要素4の説明は省略する。
【0093】
この第十例では、靴紐の代用としてバンド装置を用いた例を示している。靴のS一方の側面に付設要素4が備え付けられ、靴Sの他方の側面に掛け回し要素2が備えられ、靴の上部において、保持要素3によって掛け回し要素2に掛け回されて再び靴の上部側に引き出されたバンド1の一方の端末側とバンド1の中間部とを互いの係合面部1cを前記のように係合させた状態で重ね合わせ状に保持するようになっている。
【0094】
以上に説明した各実施の形態における弾性変形特性を備えるべき部分へのこの特性の付与は、各実施の形態を構成する各部材の全部又は一部を合成樹脂の成形品とすることで、容易に確保可能である。
【0095】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0096】
1 バンド
1a 凸部
1b 凹部
1c 係合面部
1d 延び出し部
2 掛け回し要素
3 保持要素

なお、2020年9月18日に出願された日本国特願2020-156927号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
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