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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240305BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240305BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 D
G03B17/02
G03B30/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023004945
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2018247022の分割
【原出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2023033459
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 章
(72)【発明者】
【氏名】杉目 孝行
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀樹
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104660889(CN,A)
【文献】特開2012-098429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0247064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されたレンズと、前記鏡筒の軸方向における一端部に装着されたフィルタとを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒は、前記一端部に接着剤を介して前記フィルタを接着するための接着面を有し、
前記接着面は、前記鏡筒の軸方向と同方向を向いており、
前記接着面に、当該接着面より突出する第2凸条が前記鏡筒の内周面の前記一端部側の周縁に沿って設けられ
前記第2凸条は、粘度5000mPa・s以上の高粘度接着剤によって形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されたレンズと、前記鏡筒の軸方向における一端部に装着されたフィルタとを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒は、前記一端部に接着剤を介して前記フィルタを接着するための接着面を有し、
前記接着面は、前記鏡筒の軸方向と同方向を向いており、
前記接着面に、当該接着面より突出する第2凸条が前記鏡筒の内周面の前記一端部側の周縁に沿って設けられ、
前記接着面は、当該接着面より突出する第1凸条によって複数に区画されており、前記第1凸条と前記第2凸条との前記接着面からの高さは等しくなっていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
前記第1凸条および/または前記第2凸条は、前記鏡筒と一体成形されていることを徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記接着剤は、低粘度接着剤と高粘度接着とを備え、
前記第1凸条および/または前記第2凸条は、前記高粘度接着剤によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズユニットと、当該レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラ(車載カメラ)が車外の風景等を撮像し、その撮像画像が車内に搭載されたモニタ等に表示される技術が知られている。車載カメラのレンズユニットは、撮像対象に向けられる側(物体側)が車外に露出した状態となるので、強度、防水性、耐薬品性、高温耐久性等が要求される。また、温度変化によるレンズの曇りを防止する必要などがある。
【0003】
特許文献1には、レンズの曇りを防止するために、鏡筒内部の気密状態を確保したレンズユニットが開示されている。このレンズユニットでは、4つのレンズが鏡筒内に光軸方向に沿って並べて配置されている。物体側では、最も物体側のレンズと鏡筒の内周面との間に0リングを配置することで、シール性が実現されている。また、像側(撮像素子側)では、接着剤を介して光学フィルタを鏡筒に取り付けることで、シール性が実現されている。このように、物体側のシールと結像側のシールとにより鏡筒内部の気密性が確保され、レンズの曇りが防止されるようになっている。
また、前記レンズユニットは、鏡筒の像側の一端部に、外光の特定の周波数成分を除去するための赤外線カットフィルタ(IRCF)等のフィルタを備えている。
【0004】
図5は従来のレンズユニットの要部を示す断面図である。この図示すように、フィルタ200は、鏡筒201の像側の一端部に設けられた平面視円環状のザグリ部202の底面である接着面202aに粘度5000mPa・s未満の低粘度接着剤203によって接着されている。
この低粘度接着剤203によってフィルタ200を接着面202aに接着する場合、例えば、接着剤203が塗布されていない状態の接着面202aにフィルタ200を載置した後、当該フィルタ200の外周縁と、ザグリ部202の内壁面202bとの間の隙間Sから接着剤203を流し込む。すると、毛細管現象によって接着剤203が接着面202aとフィルタ200の物体側の面(図5において下面)との間で面方向に拡がることによって、フィルタ200が接着剤203を介して接着面202aに接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4999508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにして鏡筒201の接着面202aに接着されたフィルタ200を備えたレンズユニットを高温、高温高湿、熱衝撃などの環境下に長時間放置すると、樹脂製の鏡筒201の膨張収縮に起因してフィルタ200が剥離してしまうという虞がある。剥離には、フィルタ200が接着面202aから完全に剥がれてしまう場合の他、フィルタ200の一部が接着面202aから剥がれ、この剥がれた部位が白色に変色してしまう場合が含まれる。フィルタ200の剥離が生じた場合、レンズユニットの光学性能が劣化してしまう。
また、フィルタ200を鏡筒201の接着面202aに接着剤203によって接着する場合に、例えば接着剤203の流し込み量が多くなると、接着剤203の一部が接着面202aから鏡筒201の内周側にはみ出して、鏡筒201の内周面の周縁(接着面202aと内周面201aとの境界)から当該内周側に垂れてしまう虞がある。接着剤203が鏡筒201の内周側に垂れると、当該接着剤203が鏡筒201の内周側に配置されたレンズ204に付着してレンズユニットの光学性能が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、鏡筒の接着面からのフィルタの剥離を軽減でき、また、フィルタを接着するための接着剤が鏡筒の内周側へ垂れるのを防止できるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のレンズユニットは、鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されたレンズと、前記鏡筒の軸方向における一端部に装着されたフィルタとを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒の前記一端部に接着剤を介して前記フィルタを接着するための接着面を有し、
前記接着面は、当該接着面より突出する第1凸条によって複数に区画されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、第1凸条は接着面を複数に区画できるものであれば、接着面にどのように配置してもよいが、通常フィルタは円板状に形成され、接着面は円環状に形成されているため、接着面の径方向に放射状に延在する第1凸条を周方向に所定間隔で複数配置するのが好ましいが、径の異なる円形状の複数の第1凸条を同心円状に配置してもよいし、直線状の複数の第1凸条を接着面に縦横に配置してもよい。
【0010】
本発明においては、鏡筒の接着面は、第1凸条によって複数に区画(分断)されているので、接着面に接着されているフィルタの一部が接着面から剥離した場合、この剥離の伝播を第1凸条によって制限して、他の区画への剥離の伝播を抑制できる。このため、鏡筒の接着面からのフィルタの剥離を軽減できる。
【0011】
また、本発明の前記構成において、前記接着面に、当該接着面より突出する第2凸条が前記鏡筒の内周面の前記一端部側の周縁に沿って連続的に設けられていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、接着面とフィルタとの間で接着剤が面方向に拡がって、鏡筒の内周面の周縁に近付いた場合、当該接着剤は第2凸条によって堰き止められる。このため、接着剤が鏡筒の内周側へ垂れるのを防止できる。
【0013】
また、本発明の前記構成において、前記第1凸条および/または前記第2凸条は、前記鏡筒と一体成形されていてもよい。
【0014】
ここで、第1凸条と第2凸条とのうちの一方を鏡筒と一体的に形成する場合、他方は鏡筒と別体に形成しておき、当該他方を接着面に固定してもよいし、後述するように高粘度接着剤によって形成してもよい。
【0015】
このような構成によれば、前記第1凸条および/または前記第2凸条は、前記鏡筒と一体成形されているので、鏡筒を樹脂による射出成形で形成する際に、当該射出成形と同時に第1凸条および/または第2凸条を形成でき、別工程で、第1凸条および/または第2凸条を形成する必要がない。このため、接着面への第1凸条および/または第2凸条の形成が容易となる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、前記接着剤は、低粘度接着剤と高粘度接着とを備え、前記第1凸条および/または前記第2凸条は、前記高粘度接着剤によって形成されていてもよい。
【0017】
ここで、第1凸条と第2凸条とのうちの一方を高粘度接着剤によって形成する場合、他方は低粘度接着剤ではなく、上述したように鏡筒と一体的に形成してもよいし、他方は鏡筒と別体に形成しておき、当該他方を接着面に固定すればよい。
【0018】
このような構成によれば、第1凸条および/または第2凸条が高粘度接着剤によって形成されているので、接着面に高粘度接着剤を塗布することによって、第1凸条および/または第2凸条を容易に形成できる。
【0019】
本発明のカメラモジュールは、前記構成のレンズユニットと、前記レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、カメラモジュールが、上述の本発明のレンズユニットと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鏡筒の接着面からのフィルタの剥離を軽減でき、また、フィルタを接着するための接着剤が鏡筒の内周側へ垂れるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係るレンズユニットを示すもので、軸方向断面図である。
図2】同、図1におけるA-A線断面図である。
図3】同、図2におけるB-B線に沿う要部の断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るレンズユニットを示す要部の断面図である。
図5】従来のレンズユニットの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係るレンズユニット100の軸方向断面図である。図1では、断面であることを示すハッチングを省略している。レンズユニット100は、例えば、車載カメラ等に用いられている。
【0024】
図1に示すように、レンズユニット100は、レンズ1,2,3,4、鏡筒10、フィルタ20、中間環31,32、およびOリング40等を備えている。
【0025】
鏡筒10内には、鏡筒10の軸方向に沿って1つのレンズ群を構成するレンズ1~4が並べて配置されている。レンズ1~4は、それぞれの光軸を一致させた状態で、かつ光軸に沿って並べられた状態で配置されている。このとき、鏡筒10の軸とレンズ群の光軸(光軸OAとする)とは、略一致するようになっている。以下、光軸OAという場合に、各レンズ1~4の光軸を指すとともにレンズ群の光軸を指すものとする。
【0026】
鏡筒10は、軸方向における一端部が、像側として撮像素子(不図示)を向くようにして配置され、軸方向における他端部が、物体側として撮像対象を向くようにして配置されている。本実施形態では、レンズ4側が像側であり、レンズ1側が物体側である。なお、撮像素子は、レンズユニット100で結像された画像を撮像するために、レンズユニット100の取付相手となるカメラケース(不図示)に配置されている。
【0027】
レンズ1~4は、鏡筒10の内部に、物体側から像側に向かって、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4の順で配置されている。また、フィルタ20は、レンズ1~4が像を結ぶ側(像側)の端部に配置されている。フィルタ20は、外光の特定の周波数成分を除去する目的で配置されている。フィルタ20は、例えば、多層膜をガラスに蒸着させて形成されている。本実施形態では、フィルタ20を円形板状の赤外線カットフィルタ(IRCF)とする。
【0028】
円筒状の鏡筒10は樹脂製である。鏡筒10は、その内径が物体側から像側に向かって段階的に小さくなっている。鏡筒10の最も像側に位置する内周面における像側の部分には、内径が小さくなるように径方向内側に向かって突出した部位である支持部11が形成されている。支持部11は、レンズ4におけるフランジ部の像側の面と当接するようになっている。フランジ部とは、レンズ有効径の外周側に形成された平坦面を備える部位である。
また、鏡筒10は、物体側の端部においてその外周面に、径方向外側に向かって突出した板状の部位であるフランジ部13を備えている。
【0029】
鏡筒10は、物体側の端部に形成され、レンズ1における物体側の面の外周部に当接する保持部12を備えている。保持部12は、鏡筒10の内部に部品が収容された後、カシメにより形成されている部位である。保持部12の内径は、レンズ1の外径より小さくなっている。鏡筒10の内部に収容される部品は、支持部11と保持部12との間に挟まれるようにして支持されている。換言すると、鏡筒10の内部に収容される部品は、保持部12によって支持部11側に向かって押し付けられた状態で保持されている。これにより、各部品の間に隙間が形成されないようになっている。
【0030】
レンズ1~4は、鏡筒10に挿入される円形状のレンズである。レンズ1~4は、樹脂製またはガラス製である。レンズ1~4は、その外周面が鏡筒10の内周面に当接することで、光軸OAと直交する方向に対して位置決めされている。
【0031】
中間環31,32は、金属製または樹脂製の環状部品であり、レンズ間に挿入され配置されている。
【0032】
レンズ1の外周面のうち像側の部分には、他の部分より径を絞って形成された縮径部1aが形成されている。縮径部1aと鏡筒10の内周面Aとの間には、Oリング40が配置されている。Oリング40はゴム製であり、隙間を封止し、鏡筒10の内部に水や埃等が侵入するのを防いでいる。
【0033】
レンズユニット100は、撮像素子、配線基板、信号処理回路、フレキシブル配線シート、およびコネクタ等とともにカメラモジュールを構成する。なお、カメラモジュールとは、少なくともレンズユニット100と撮像素子とを備えたものをいう。撮像素子は、レンズユニット100の像側に配置され、レンズユニット100で結像される画像を撮像するようになっている。
【0034】
カメラモジュールは次のように動作する。物体側から入射する光は、レンズユニット100のレンズ群を介して撮像素子に入射する。撮像素子は、入射した像を電気信号に変換する。信号処理回路は、撮像素子からの電気信号に対して信号処理(A/D変換、画像補正処理等)を行う。信号処理回路から出力される電気信号は、フレキシブル配線シートおよびコネクタを介して外部の電子機器に接続される。
【0035】
鏡筒10の像側の端部には、鏡筒10と同軸の円形状であり、物体側に向かって窪んだ形状であるザグリ部14が形成されている。ザグリ部14には、フィルタ20が接着剤50を介して接着されている。
【0036】
接着剤50には、有機系のものと無機系のものがある。本実施形態では、有機系の接着剤が好ましい。また、有機系の接着剤には、合成系のものと天然系のものとがあるが、合成系のものが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等である。
【0037】
上記では、鏡筒10の像側の端部にザグリ部14が設けられている場合について説明したが、ザグリ部14は必ずしも設けられている必要はなく、鏡筒10における像側に平面である接着面を備え、この接着面に、フィルタ20が接着されているものであってもよい。
【0038】
図2図1におけるA-A線断面図、図3図2におけるB-B線に沿う要部の断面図である。なお、図3図1に対して上下を逆にして示している。
図3に示すように、鏡筒10の像側(図3において上端側)の一端部には、上述したように、ザグリ部14が形成され、このザグリ部14の底面が接着面14aとなっている。別の言い方をすると、鏡筒10の像側の一端部に形成された前記支持部11の像側の面(図3において上面)が接着面14aとなっている。また、接着面14aは鏡筒10と同軸の円環状に形成されている。
【0039】
この接着面14aは、当該接着面14aより鏡筒10の軸方向に突出する第1凸条51によって複数に区画されている。第1凸条51は、図2に示すように、接着面14aの径方向に放射状に延在しており、その外側の端部はザグリ部14の内壁面14bに密着している。また、第1凸条51は、接着面14aの周方向に等間隔(等角度)で3本配置されている。したがって、接着面14aは、周方向に3つに区画されている。また、3つに区画された接着面14aの形状および面積は等しくなっている。
なお、第1凸条51の数や配置形態を異ならせることによって、接着面14aは所望の数、および形状、面積に区画してもよい。
【0040】
また、接着面14aには、当該接着面14aより突出する第2凸条52が鏡筒10の内周面(円環板状の支持部11の内周面11a)の一端部側(像側)の周縁に沿って連続的に設けられている。第2凸条52はリング状に形成されており、その内周面は支持部11の内周面11aとほぼ面一となっている。この第2凸条52と第1凸条51との高さ(接着面14aからの高さ)は、等しくなっており、第1凸条51の内側の端部は第2凸条52の外周面に密着している。
【0041】
前記接着剤50は、紫外線硬化型の低粘度接着剤50aと紫外線硬化型の高粘度接着剤50bとの2種類を備え、高粘度接着剤50bによって第1凸条51および第2凸条52が形成されている。また、低粘度接着剤50aは接着面14aとフィルタ20の物体側の面(図3において下面)との間に介在して、フィルタ20を接着面14aに接着している。また、第1凸条51および第2凸条52を形成する高粘度接着剤50bも接着面14aとフィルタ20の物体側の面との間に介在して、フィルタ20を接着面14aに接着している。ただし、高粘度接着剤50bの接着面積は、低粘度接着剤50aの接着面積より小さいので、フィルタ20を接着面14aに接着するのに主に寄与するのは低粘度接着剤50aである。
【0042】
低粘度接着剤50aは粘度5000mPa・s未満であるが、粘度100mPa・s以上、5000mPa・s未満が好ましく、さらに粘度200mPa・s以上、4000mPa・s未満がより好ましい。
低粘度接着剤50aが粘度5000mPa・sを超えると、低粘度接着剤50aが鏡筒10の接着面14aとフィルタ20の物体側の面(図3において下面)との間で拡がり難くなって、フィルタ20を均一に接着面14aに接着し難くなるからである。また、低粘度接着剤50aが粘度100mPa・s未満であると、低粘度接着剤50aが接着面14aとフィルタ20の物体側の面との間で所定厚さの接着層が形成し難くなって、接着強度が低下する虞があるからである。
低粘度接着剤50aとしては、例えば共立化学産業株式会社が販売している、WORLD ROCKの品番8838(UV硬化接着剤)、粘度2000mPa・s、を使用することができる。
【0043】
また、高粘度接着剤50bは粘度5000mPa・s以上であるが、粘度5000mPa・s以上、15000mPa・s以下が好ましく、さらに粘度9000mPa・s以上、12000mPa・s以下がより好ましい。
高粘度接着剤50bが粘度5000mPa・s未満であると、第1凸条51および第2凸条52を形成し難くなるとともに形状を維持し難くなるからである。また、高粘度接着剤50bが粘度15000mPa・sを超えても第1凸条51および第2凸条52を形成し難くなるからである。
高粘度接着剤50bとしては、例えば共立化学産業株式会社が販売している、WORLD ROCKの品番8530(UV硬化接着剤)、粘度11000mPa・s、を使用することができる。
【0044】
第1凸条51および第2凸条52は上述したような高粘度接着剤50bによって形成される。第1凸条51および第2凸条52を接着面14aに形成する場合、例えば、フィルタ20を鏡筒10に装着する前に、つまりフィルタ20を接着面14aに載置する前に、低粘度接着剤50aが塗布されていない状態の接着面14aに、接着剤塗布用のディスペンサを使用して、図2に示すように、高粘度接着剤50bを鏡筒10の内周面(円環板状の支持部11の内周面11a)の一端部側(像側)の周縁に沿って円を描くようにして連続的に塗布していくことによって第2凸条52を形成する。
【0045】
次に、同様のディスペンサを使用して、高粘度接着剤50bを接着面14aの径方向に放射状にかつ周方向に等間隔(等角度)で3本、短い直線を描くようにして塗布していくことによって第1凸条51を形成する。この場合、第1凸条51の内側の端部は第2凸条52の外周面に密着され、外側の端部はザグリ部14の内壁面14bに密着される。また、第2凸条52と第1凸条51の高さ(接着面14aからの高さ)が等しくなるようにして高粘度接着剤50bを塗布する。
なお、第1凸条51と第2凸条52を形成する工程は前記と逆にしてもよい。つまり、第1凸条51を形成した後、第2凸条52を形成してもよい。
このようにして接着面14aに高粘度接着剤50bを塗布することによって、接着面14aは周方向に3つに区画され、当該3つに区画された部分の形状および面積は等しくなる。
【0046】
なお、本実施の形態では、第1凸条51および第2凸条52は、高粘度接着剤50bをディスペンサによって直線および円を描くようにして接着面14aに塗布することで形成したが、これに代えて、第1凸条51および第2凸条52に対応するような凸条を有する型を用意しておき、この型の凸条に高粘度接着剤を付着させたうえで、当該型を接着面14aに押し当て、高粘度接着剤を接着面14aに付着させることで、形成してもよい。
【0047】
次に、前記ザグリ部14にフィルタ20を像側から挿入して、第1凸条51および第2凸条52の上面に載置する。これによって、フィルタ20は、第1凸条51および第2凸条52を形成する高粘度接着剤50bによって支持されるとともに、接着面14aに仮接着される。
次に、フィルタ20の外周縁と、ザグリ部14の内壁面14bとの間の隙間Sから低粘度接着剤50aを流し込む。すると、毛細管現象によって低粘度接着剤50aが接着面14aとフィルタ20の物体側の面(図3において下面)との間で面方向に拡がることによって、フィルタ20が低粘度接着剤50aを介して接着面14aに接着される。この際、接着面14aとフィルタ20の物体側の面との間で低粘度接着剤50aが面方向に拡がって、鏡筒10の内周面の周縁、つまり支持部11の内周面11aの像側の縁部に近付いた場合、当該低粘度接着剤50aは第2凸条52によって堰き止められ、鏡筒10の内周側へ垂れるのを防止される。
【0048】
最後に、鏡筒10の像側の開口部からフィルタ20を通して、紫外線を低粘度接着剤50aおよび高粘度接着剤50bの双方に照射することによって、低粘度接着剤50aおよび高粘度接着剤50bが完全に硬化し、これによって、フィルタ20が接着面14aに完全に接着される。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、鏡筒10の接着面14aは、第1凸条51によって複数(3つ)に区画(分断)されているので、接着面14aに接着されているフィルタ20の一部が接着面14aから剥離した場合、この剥離の伝播を第1凸条51によって制限して、他の区画への剥離の伝播を抑制できる。このため、鏡筒10の接着面14aからのフィルタ20の剥離を軽減できる。
また、接着面14aに、当該接着面14aより突出する第2凸条52が鏡筒10の内周面(支持部11の内周面11a)の像側の周縁に沿って連続的に設けられているので、接着面14aとフィルタ20の物体側の面との間で低粘度接着剤50aが面方向に拡がって、鏡筒10の内周面の周縁に近付いた場合、当該低粘度接着剤50aは第2凸条52によって堰き止められる。このため、低粘度接着剤50aが鏡筒10の内周側へ垂れるのを防止できる。
さらに、第1凸条51および第2凸条52が高粘度接着剤50bによって形成されているので、接着面14aに高粘度接着剤50bを塗布することによって、第1凸条51および第2凸条52を容易に形成できる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施形態に係るレンズユニット100の要部の断面図である。
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1凸条(図示せず)および第2凸条52が、鏡筒10と一体成形されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付して、その説明を省略ないし簡略化することもある。
【0051】
図4に示すように、本実施の形態では、第2凸条52が鏡筒10と一体的に形成されている。また、図示は省略するが第1凸条も鏡筒10と一体的に形成されている。
鏡筒10は樹脂による射出成形によって形成されており、この射出成形と同時に第1凸条および第2凸条52が鏡筒10と一体的に形成されている。
鏡筒10を成形する金型のゲートは、例えば、フランジ部13(図1参照)の径方向外側となる位置に、周方向に沿って等間隔に3箇所に設けられている。そして、第1凸条は平面視においてゲートの位置に対応させて形成されている。
【0052】
このように本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、第1凸条および第2凸条52を鏡筒10と一体的に形成したので、鏡筒を樹脂による射出成形で形成する際に、当該射出成形と同時に第1凸条および第2凸条52を形成でき、別工程で、第1凸条および第2凸条52を形成する必要がない。このため、接着面14aへの第1凸条および第2凸条52の形成が容易となる、という効果を得ることができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、第1凸条および第2凸条52の双方を鏡筒10と一体的に形成したが、これに代えて、第1凸条と第2凸条52とのうちの一方を鏡筒10と一体的に形成し、他方は鏡筒10と別体に形成しておき、当該他方を接着面14aに固定すればよい。この場合、他方は上述した高粘度接着剤50bによって形成してもよいし、他の部材によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4 レンズ
10 鏡筒
14a 接着面
20 フィルタ
50 接着剤
50a 低粘度接着剤
50b 高粘度接着剤
51 第1凸条
52 第2凸条
図1
図2
図3
図4
図5