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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】熱交換部材及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20240305BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240305BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F28F1/40 J
F28D7/16 A
F28D7/10 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023006158
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2018246274の分割
【原出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2023041735
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018000260
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】木村 大輔
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/064812(WO,A1)
【文献】特表2009-532605(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012561(WO,A1)
【文献】米国特許第05558069(US,A)
【文献】特開2012-189229(JP,A)
【文献】特開2000-146465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28D 7/16
F28D 7/10
B01J 35/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面から第2端面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画形成する隔壁及び外周壁を有する柱状ハニカム構造体と、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材とを備える熱交換部材であって、
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、
前記隔壁が、前記断面の中心部側から放射方向に延びる第1隔壁と周方向に延びる第2隔壁とを有し、
前記中心部側の前記第1隔壁の数が、前記外周壁側の前記第1隔壁の数よりも少なく、
全ての前記セルは、1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長く、
前記柱状ハニカム構造体のセル密度が4~320セル/cm2であり、
前記外周壁から前記中心部に並んだセルの2/3までの外周領域において、周方向領域のセルの総数が下記の関係:
1≧N A /N B >1/2
(式中、N A は、N B のセルと隣り合う中心部側の周方向領域のセルの総数を表し、N B は、N A のセルと隣り合う前記外周壁側の周方向領域のセルの総数を表す)を満たす、熱交換部材。
【請求項2】
第1端面から第2端面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画形成する隔壁及び外周壁を有する柱状ハニカム構造体と、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材とを備える熱交換部材であって、
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、
前記隔壁が、前記断面の中心部側から放射方向に延びる第1隔壁と周方向に延びる第2隔壁とを有し、
前記中心部側の前記第1隔壁の数が、前記外周壁側の前記第1隔壁の数よりも少なく、
全ての前記セルは、1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長く、且つ
前記柱状ハニカム構造体の直径が20~200mmであり、
前記外周壁から前記中心部に並んだセルの2/3までの外周領域において、周方向領域のセルの総数が下記の関係:
1≧N A /N B >1/2
(式中、N A は、N B のセルと隣り合う中心部側の周方向領域のセルの総数を表し、N B は、N A のセルと隣り合う前記外周壁側の周方向領域のセルの総数を表す)を満たす、熱交換部材。
【請求項3】
前記柱状ハニカム構造体のセル密度が4~320セル/cm2である、請求項2に記載の熱交換部材。
【請求項4】
前記柱状ハニカム構造体のセル内を前記第1流体が流通し、前記被覆部材の外側を第2流体が流通する際、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁及び前記被覆部材を介して前記第1流体と前記第2流体との間の熱交換を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項5】
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記第1隔壁の数が、前記外周壁側から前記中心部側に向かうにつれて減少している、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項6】
前記外周壁の厚みが前記隔壁の厚みよりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項7】
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記中心部は前記第2隔壁のみから区画形成されたセルを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項8】
前記第1隔壁の厚みが前記第2隔壁の厚みよりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱交換部材を有する熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換部材及び熱交換器に関する。詳細には、本発明は、第1流体(高温側)の熱を第2流体(低温側)へ伝達する熱交換部材、及び該熱交換部材を有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐために、冷却水、エンジンオイル、ATF(オートマチックトランスミッションフルード;Automatic transmission fluid)などを早期に暖めてフリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
このようなシステムにおいて、例えば、熱交換器を用いることが検討されている。熱交換器は、内部に第1流体を流通させると共に外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換部材を含む装置である。このような熱交換器では、例えば、高温の第1流体(例えば、排ガス)から低温の第2流体(例えば、冷却水)へ熱交換することによって熱を有効利用することができる。
【0004】
自動車排ガスのような高温の気体から熱を回収する熱交換器としては、耐熱金属で作製された熱交換部材を有する熱交換器が知られていたが、耐熱金属は、価格が高い上に、加工が難しい、密度が高くて重い、熱伝導が低いなどの問題があった。そこで、近年、柱状ハニカム構造体を有する熱交換部材をケーシング内に収容し、第1流体を柱状ハニカム構造体のセル内に流通させ、第2流体をケーシング内で熱交換部材の外周面上に流通させる熱交換器の開発が進められている。
【0005】
熱交換部材に用いられる柱状ハニカム構造体としては、第1流体の流路方向(セルの延びる方向)に垂直な断面において、中心部から外周部に向かって放射方向に延びる第1隔壁と、周方向に延びる第2隔壁とを備える柱状ハニカム構造体が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6075381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の柱状ハニカム構造体は、中心部側になるほど隣接する第1隔壁の間が狭くなるため、セルを形成することが難しい。特に、柱状ハニカム構造体の放射方向への熱伝導性(すなわち、熱回収効率)を高めるためには、放射方向に延びる第1隔壁の数が多い方が望ましいが、第1隔壁の数を増大させるほど中心部側にセルを形成することが難しくなる。そして、中心部側にセルが形成されていなかったり、中心部側に形成されたセルの断面積が小さすぎたりする場合には、熱交換部材の圧力損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱回収効率を向上させつつ、圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換部材及び熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、中心部側の第1隔壁の数を外周壁側の第1隔壁の数よりも少なくすることにより、柱状ハニカム構造体の中心部側にもセルを形成することが容易になり、熱回収効率の向上と圧力損失の増大抑制とを両立させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第1端面から第2端面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画形成する隔壁及び外周壁を有する柱状ハニカム構造体と、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材とを備える熱交換部材であって、前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記隔壁が、前記断面の中心部側から放射方向に延びる第1隔壁と周方向に延びる第2隔壁とを有し、前記中心部側の前記第1隔壁の数が、前記外周壁側の前記第1隔壁の数よりも少なく、全ての前記セルは、1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長く、前記柱状ハニカム構造体のセル密度が4~320セル/cm 2 であり、
前記外周壁から前記中心部に並んだセルの2/3までの外周領域において、周方向領域のセルの総数が下記の関係:
1≧N A /N B >1/2
(式中、N A は、N B のセルと隣り合う中心部側の周方向領域のセルの総数を表し、N B は、N A のセルと隣り合う前記外周壁側の周方向領域のセルの総数を表す)を満たす、熱交換部材である。
また、本発明は、第1端面から第2端面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画形成する隔壁及び外周壁を有する柱状ハニカム構造体と、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材とを備える熱交換部材であって、
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、
前記隔壁が、前記断面の中心部側から放射方向に延びる第1隔壁と周方向に延びる第2隔壁とを有し、
前記中心部側の前記第1隔壁の数が、前記外周壁側の前記第1隔壁の数よりも少なく、
全ての前記セルは、1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長く、且つ
前記柱状ハニカム構造体の直径が20~200mmであり、
前記外周壁から前記中心部に並んだセルの2/3までの外周領域において、周方向領域のセルの総数が下記の関係:
1≧N A /N B >1/2
(式中、N A は、N B のセルと隣り合う中心部側の周方向領域のセルの総数を表し、N B は、N A のセルと隣り合う前記外周壁側の周方向領域のセルの総数を表す)を満たす、熱交換部材である。
さらに、本発明は、前記熱交換部材を有する熱交換器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱回収効率を向上させつつ、圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換部材及び熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一の実施形態に係る熱交換部材における、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る熱交換部材における、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図(図1におけるa-a’線の断面図)である。
図3】本発明の第二の実施形態に係る熱交換部材における、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図である。
図4】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図5】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図6】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図7】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図8】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図9】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図10】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図11】本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材の具体例(正面図)である。
図12図4~11における熱交換部材の左側面図である。
図13図4~11における熱交換部材の平面図である。
図14】本発明の実施形態に係る熱交換器における、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る熱交換器における、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図(図14におけるb-b’線の断面図)である。
図16】実施例1の柱状ハニカム構造体における、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図である。
図17】比較例2の柱状ハニカム構造体における、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対して変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0013】
<熱交換部材>
実施の形態1.
図1には、本発明の第一の実施形態に係る熱交換部材について、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向(セルの延びる方向)に平行な方向の断面図が示されている。また、図2は、図1におけるa-a’線の断面図であり、本発明の第一の実施形態に係る熱交換部材について、柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図が示されている。
【0014】
熱交換部材1は、第1端面2から第2端面3まで貫通して第1流体の流路を形成するセル4を区画形成する隔壁5及び外周壁6を有する柱状ハニカム構造体7と、柱状ハニカム構造体7の外周壁6を被覆する被覆部材8とを備える。熱交換部材1において、柱状ハニカム構造体7のセル4内を第1流体が流通し、被覆部材8の外側を第2流体が流通する際、柱状ハニカム構造体7の外周壁6及び被覆部材8を介して第1流体と第2流体との間の熱交換が行われる。なお、図1において、第1流体は、紙面の左右のいずれの方向にも流れることができる。第1流体としては、特に限定されず、種々の液体又は気体を用いることができる。例えば、自動車に搭載される熱交換器に熱交換部材1が用いられる場合には、第1流体は排ガスであることが好ましい。
【0015】
柱状ハニカム構造体7の形状は、第1端面2から第2端面3まで第1流体がセル4内を流通することができれば特に限定されない。柱状ハニカム構造体7の形状の例としては、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などが挙げられる。したがって、第1流体の流路方向に垂直な断面において、柱状ハニカム構造体7の外形は、円形、楕円形、四角形又はその他の多角形などとすることができる。第一の実施形態においては、柱状ハニカム構造体7は円柱状であり、その断面形状は円形である。
【0016】
柱状ハニカム構造体7を構成する隔壁5は、第1流体の流路方向に垂直な柱状ハニカム構造体7の断面(すなわち、図2に示す断面)において、この断面の中心部側から放射方向に延びる第1隔壁5aと周方向に延びる第2隔壁5bとを有する。このような構成とすることにより、第1隔壁5aを介して第1流体の熱を放射方向に伝達することができるため、柱状ハニカム構造体7の外部に効率良く伝達することができる。
【0017】
図2に示す断面において、柱状ハニカム構造体7の中心部側の第1隔壁5aの数は、柱状ハニカム構造体7の外周壁6側の第1隔壁5aの数よりも少ない。このような構成とすることにより、放射状に設けられたセル4の数が中心部側になるほど少なくなり、柱状ハニカム構造体7の中心部側にもセル4を容易に形成することができる。それ故、柱状ハニカム構造体7の中心部側にセル4が形成され難くなることに起因する熱交換部材1の圧力損失の増大を抑制することができる。
ここで、柱状ハニカム構造体7の中心部側の第1隔壁5aの数とは、図2に示す断面において、柱状ハニカム構造体7の中心部に最も近い(すなわち外周壁6から最も遠い)、周方向に並んだ複数のセル4を有する領域(以下、「周方向領域」という)中の複数のセル4を形成する第1隔壁5aの総数を意味する。また、柱状ハニカム構造体7の外周壁6側の第1隔壁5aの数とは、図2に示す断面において、柱状ハニカム構造体7の中心部から最も遠い(すなわち、外周壁6から最も近い)周方向領域中の複数のセル4を形成する第1隔壁5aの総数を意味する。
【0018】
図2に示す断面において、柱状ハニカム構造体7の中心部側の第1隔壁5aの数は、外周壁6側から中心部側に向かうにつれて減少していることが好ましい。隣接する第1隔壁5aの間は、中心部側になるほど狭くなるため、セル4を形成することが難しくなるが、このような構成とすることにより、隣接する第1隔壁5aの間の間隔を確保することができるため、セル4を容易に形成することができる。それ故、熱交換部材1の圧力損失の増大を抑制することができる。
なお、第1隔壁5aの数の減少の頻度としては、特に限定されないが、連続的であっても間欠的であってもよい。
【0019】
図2に示す断面において、1つのセル4を区画形成する第1隔壁5aは、1つのセル4を区画形成する第2隔壁5bよりも長いことが好ましい。第1隔壁5aは、放射方向への熱伝導率に寄与するため、このような構成とすることにより、柱状ハニカム構造体7の中心部側のセル4を流通する第1流体の熱を柱状ハニカム構造体7の外部に効率良く伝達することができる。
【0020】
第1隔壁5aの厚みは、第2隔壁5bの厚みよりも大きいことが好ましい。隔壁5の厚みは熱伝導率と相関するため、このような構成とすることにより、第1隔壁5aの熱伝導率を第2隔壁5bの熱伝導率よりも大きくすることができる。その結果、柱状ハニカム構造体7の中心部側のセル4を流通する第1流体の熱を柱状ハニカム構造体7の外部に効率良く伝達することができる。
なお、隔壁5(第1隔壁5a及び第2隔壁5b)の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。隔壁5の厚みは、0.1~1mmとすることが好ましく、0.2~0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁5の厚みを0.1mm以上とすることにより、柱状ハニカム構造体7の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁5の厚さを1mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりすることを防止することができる。
【0021】
隔壁5の密度は、0.5~5g/cm3であることが好ましい。隔壁5の密度を0.5g/cm3以上とすることにより、隔壁5を十分な強度とすることができる。また、隔壁5の密度を5g/cm3以下とすることにより、柱状ハニカム構造体7を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、柱状ハニカム構造体7を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。なお、隔壁5の密度は、アルキメデス法により測定した値である。
【0022】
熱交換部材1において、柱状ハニカム構造体7の外周壁6は、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などにさらされる。そのため、これらの外力に対する耐性を確保する観点から、外周壁6の厚みを隔壁5(第1隔壁5a及び第2隔壁5b)の厚みよりも大きくすることが好ましい。このような構成とすることにより、外力による外周壁6の破壊(例えば、ひび、割れなど)を抑制することができる。
なお、外周壁6の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、外周壁6の厚みは、熱交換部材1を一般的な熱交換用途に用いる場合は、0.3mm超過10mm以下とすることが好ましく、0.5mm~5mmとすることがより好ましく、1mm~3mmとすることが更に好ましい。また、熱交換部材1を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁6の厚みを10mm以上として外周壁6の熱容量を増大させることも好ましい。
【0023】
柱状ハニカム構造体7の隔壁5及び外周壁6は、セラミックスを主成分とする。「セラミックスを主成分とする」とは、隔壁5及び外周壁6の全質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0024】
隔壁5及び外周壁6の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。また、隔壁5及び外周壁6の気孔率は0%とすることもできる。隔壁5及び外周壁6の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0025】
隔壁5及び外周壁6は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。「SiC(炭化珪素)を主成分として含む」とは、隔壁5及び外周壁6の全質量に占めるSiC(炭化珪素)の質量比率が50質量%以上であることを意味する。
【0026】
さらに具体的には、柱状ハニカム構造体7の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si34、及びSiCなどを採用することができる。その中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することが好ましい。
【0027】
図2の断面におけるセル密度(即ち、単位面積当たりのセル4の数)は、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよいが、4~320セル/cm2の範囲であることが好ましい。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁5の強度、ひいては柱状ハニカム構造体7自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を防止することができる。
【0028】
柱状ハニカム構造体7のアイソスタティック強度は、5MPa超過が好ましく、10MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。柱状ハニカム構造体7のアイソスタティック強度が、5MPa超過であると、耐久性に優れた柱状ハニカム構造体7とすることができる。柱状ハニカム構造体7のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0029】
図2の断面における柱状ハニカム構造体7の直径は、20~200mmであることが好ましく、30~100mmであることがより好ましい。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。図2の断面における柱状ハニカム構造体7の形状が円形でない場合には、柱状ハニカム構造体7の断面の形状に内接する最大内接円の直径を、図2の断面における柱状ハニカム構造体7の直径とする。
【0030】
柱状ハニカム構造体7の長さ(第1流体の流路方向の長さ)は、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、柱状ハニカム構造体7の長さは、3mm~200mmとすることが好ましく、5mm~100mmとすることがより好ましく、10mm~50mmとすることが更に好ましい。
【0031】
柱状ハニカム構造体7の熱伝導率は、25℃において、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100~300W/(m・K)であることが更に好ましく、120~300W/(m・K)であることが特に好ましい。柱状ハニカム構造体7の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、柱状ハニカム構造体7内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値である。
【0032】
柱状ハニカム構造体7のセル4に、第1流体として排ガスを流す場合、柱状ハニカム構造体7の隔壁5に触媒を担持させることが好ましい。隔壁5に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になると共に、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0033】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10~400g/Lであることが好ましい。また、貴金属を含む触媒であれば、担持量が0.1~5g/Lであることが好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現し易い。一方、400g/L以下とすると、圧力損失の増大と共に製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。
【0034】
被覆部材8は、柱状ハニカム構造体7の外周壁6を被覆し得るものであれば特に限定されない。例えば、柱状ハニカム構造体7の外周壁6に嵌合して柱状ハニカム構造体7の外周壁6を周回被覆する管状部材を用いることができる。
ここで、本明細書において、「嵌合」とは、柱状ハニカム構造体7と被覆部材8とが、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、柱状ハニカム構造体7と被覆部材8との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、柱状ハニカム構造体7と被覆部材8とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0035】
被覆部材8は柱状ハニカム構造体7の外周壁6に対応した内面形状を有することができる。被覆部材8の内面が柱状ハニカム構造体7の外周壁6に直に接することで、熱伝導性が良好となり、柱状ハニカム構造体7内の熱を被覆部材8に効率良く伝達することができる。
【0036】
熱回収効率を高めるという観点からは、柱状ハニカム構造体7の外周壁6の全面積に対する、被覆部材8によって周回被覆される柱状ハニカム構造体7の外周壁6の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%(すなわち、柱状ハニカム構造体7の外周壁6の全部が被覆部材8によって周回被覆される。)であることが更により好ましい。
なお、ここでいう「外周壁6」とは、柱状ハニカム構造体7の第1流体の流路方向に平行な面を指し、柱状ハニカム構造体7の第1流体の流路方向と垂直な面(第1端面2及び第2端面3)は含まれない。
【0037】
被覆部材8は、製造性の観点から金属製であることが好ましい。また、被覆部材8が金属製であると、後述する金属製のケーシング23との溶接が容易に行える点でも優れている。被覆部材8の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0038】
被覆部材8の厚みは、耐久信頼性の理由により、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更により好ましい。被覆部材8の厚みは、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めるという理由により、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0039】
被覆部材8の長さ(第1流体の流路方向の長さ)は、特に限定されず、柱状ハニカム構造体7のサイズなどに応じて適宜調整すればよい。例えば、被覆部材8の長さは、柱状ハニカム構造体7の長さよりも大きいことが好ましい。具体的には、被覆部材8の長さは、5mm~250mmとすることが好ましく、10mm~150mmとすることがより好ましく、20mm~100mmとすることが更に好ましい。
なお、被覆部材8の長さが柱状ハニカム構造体7の長さよりも大きい場合、被覆部材8の中央部に柱状ハニカム構造体7が位置するように設けることが好ましい。
【0040】
実施の形態2.
図3には、本発明の第二の実施形態に係る熱交換部材10について、柱状ハニカム構造体7の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図が示されている。なお、第一の実施形態に係る熱交換部材1の説明の中で登場した符号と同一の符号を有する構成要素は第一の実施形態に係る熱交換部材1と同一であるので、その説明を省略する。
【0041】
熱交換部材10では、第1流体の流路方向に垂直な柱状ハニカム構造体7の断面(すなわち、図3の断面)において、第2隔壁5bのみから区画形成されたセル4を中心部に有する。このような構成とすることにより、第1隔壁5aの数が多い場合であっても、中心部にセル4を形成することができるため、熱交換部材1の圧力損失の増大を安定して抑制することができる。
【0042】
ここで、本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材1,10の具体例を図4~13に示す。図4~11は熱交換部材1,10の正面図、図12は該熱交換部材1,10に対応する左側面図、図13は該熱交換部材1,10に対応する平面図である。なお、背面図は正面図と、右側面図は左側面図と、底面図は平面図とそれぞれ同一に表れるため省略する。
【0043】
本発明の第一又は第二の実施形態に係る熱交換部材1,10は、図11に示すように、外周壁6から中心部に並んだセル4の2/3までの外周領域において、周方向領域のセル4の総数が下記の関係:
1≧NA/NB>1/2
(式中、NAは、NBのセル4と隣り合う中心部側の周方向領域のセル4の総数を表し、NBは、NAのセル4と隣り合う外周壁6側の周方向領域のセル4の総数を表す)を満たすことが好ましい。NA/NBは、好ましくは3/4以上である。このような構成とすることにより、各セル4の断面積を同程度に制御し易くなるため、熱交換部材1,10の圧力損失の増大を安定して抑制することができる。
なお、中心部から外周壁6に並んだセル4の1/3未満の内周領域において、NA/NBは、特に限定されないが、好ましくは1/2又は2/3である。
【0044】
<熱交換器>
本発明の熱交換器は、上記の熱交換部材1,10を有する。熱交換部材1,10以外の部材については、特に限定されず、公知の部材を用いることができる。例えば、本発明の熱交換器は、熱交換部材1,10の被覆部材8との間に第2流体の流路を形成し得るケーシングを有することができる。
図14には、本発明の実施形態に係る熱交換器について、柱状ハニカム構造体7の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。また、図15は、図14におけるb-b’線の断面図であり、本発明の実施形態に係る熱交換器について、柱状ハニカム構造体7の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図が示されている。
【0045】
熱交換器20は、熱交換部材1と、第2流体の入口21及び第2流体の出口22を有するケーシング23であって、熱交換部材1の被覆部材8との間に第2流体の流路24が形成されるように、熱交換部材1の被覆部材8を周回被覆するケーシング23とを有する。ケーシング23は、熱交換部材1全体を周回被覆していることが好ましい。
【0046】
熱交換器20では、ケーシング23の内面が、熱交換部材1の被覆部材8の外周面と嵌合している。このとき、第2流体が外部に漏れないようにするために、第1流体の流路方向の両端部における被覆部材8の外周面がケーシング23の内面と周回状に密接した構造を有することが好ましい。被覆部材8の外周面とケーシング23の内面とを密接させる方法としては、特に限定されないが、溶接、拡散接合、ろう付け、機械的な締結などが挙げられる。これらの中でも、耐久信頼性が高く、構造強度の改善も図ることができるという理由により、溶接が好ましい。
【0047】
ケーシング23は、熱伝導性及び製造性の観点から、金属製であることが好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、安価で耐久信頼性が高いという理由により、ステンレスが好ましい。
【0048】
ケーシング23の厚みは、耐久信頼性の理由により、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更により好ましい。ケーシング23の厚みは、コスト、体積、重量などの観点から、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0049】
ケーシング23は、一体成形品であってよいが、2つ以上の部材から形成される接合部材であることが好ましい。ケーシング23が、2つ以上の部材から形成される接合部材である場合、ケーシング23の設計自由度を高めることができる。
【0050】
熱交換器20では、第2流体の入口21から第2流体がケーシング23内に流入する。次いで、第2流体は、第2流体の流路24を通る間に、熱交換部材1の被覆部材8を介して柱状ハニカム構造体7のセル4を流れる第1流体と熱交換された後、第2流体の出口22から流出する。なお、熱交換部材1の被覆部材8の外周面は伝熱効率を調整するための部材によって被覆されていてもよい。
第2流体としては、特に制限はないが、熱交換器20が、自動車に搭載される場合には、第2流体は、水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)であることが好ましい。第1流体及び第2流体の温度に関しては、第1流体の温度>第2流体の温度であることが好ましい。その理由としては、熱交換部材1の被覆部材8が低温で膨張せず、柱状ハニカム構造体7がより高温で膨張することで、両者の嵌合が緩み難い条件となるためである。特に、柱状ハニカム構造体7と被覆部材8との嵌合が焼き嵌めの場合、嵌合が緩み、柱状ハニカム構造体7が抜け落ちるリスクを最小限にすることができる。
【0051】
熱交換器20では、第2流体の入口21は熱交換部材1を挟んで第2流体の出口22と反対側に設けられているが、第2流体の入口21及び第2流体の出口22の位置に特に制限はなく、熱交換器20の設置場所、配管位置、熱交換効率を考慮して軸方向及び外周方向に適宜変更可能である。
【0052】
なお、上記では、熱交換部材1を用いた熱交換器20について説明したが、熱交換部材1の代わりに熱交換部材10を用い得ることは言うまでもない。
【0053】
<熱交換部材及び熱交換器の製造方法>
次に、本発明に係る熱交換部材及び熱交換器の製造方法を、第一の実施形態による熱交換部材1の場合を例にして説明する。但し、本発明の熱交換部材及び熱交換器を製造する方法は、以下に説明する製造方法に限定されることはない。
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押出成形し、ハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル4の形状及び密度、隔壁5の数、長さ及び厚さ、外周壁6の形状及び厚さなどを制御することができる。また、ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁5により区画形成されたセル4を有する柱状ハニカム構造体7を得ることができる。
【0054】
次に、柱状ハニカム構造体7を被覆部材8に挿入することにより、柱状ハニカム構造体7の外周面を被覆部材8で周回被覆する。この状態で、焼き嵌めすることで、被覆部材8の内周面が柱状ハニカム構造体7の外周面に嵌合する。なお、柱状ハニカム構造体7と被覆部材8との嵌合は、先述したように、焼き嵌め以外に、すきま嵌め、締まり嵌めといった嵌め合いによる固定方法、更にはろう付け、溶接、拡散接合などにより行うことができる。これにより、熱交換部材1が完成する。
次に、熱交換部材1の被覆部材8の両端部をケーシング23の内面と接合する。接合方法は先述した通り、嵌合を含む種々の方法がある。必要に応じて、接合箇所は溶接などにより接合可能である。これにより、被覆部材8の外周面を周回被覆するケーシング23が形成され、被覆部材8の外周面とケーシング23の内面との間に第2流体の流路24が形成される。このようにして熱交換器20が完成する。
【0055】
なお、上記では、熱交換部材1を用いた場合について説明したが、熱交換部材1の代わりに熱交換部材10を用い得ることは言うまでもない。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
<ハニカム構造体の製造>
(実施例1)
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押出成形した後、乾燥させ、所定の外形寸法に加工し、Si含浸焼成することによって、柱状ハニカム構造体30を製造した。柱状ハニカム構造体30は、円柱状であり、直径(外径)を70mm、第1流体の流路方向の長さを40mmとした。また、この柱状ハニカム構造体30の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図を図16に示す。柱状ハニカム構造体30は、第2隔壁5bのみから区画形成されたセル4を中心部に有すると共に、セル4の数が、周方向領域Aで200個、周方向領域Bで100個、周方向領域Cで50個、周方向領域Dで25個、周方向領域Eで5個となるように、中心部側の第1隔壁5aの数を外周壁6側の第1隔壁5aの数よりも少なくした。また、この柱状ハニカム構造体30では、第1隔壁5aの厚みを0.3mm、第2隔壁5bの厚みを0.25mm、外周壁6の厚みを1.5mmとした。
上記のような形状とすることにより、柱状ハニカム構造体30の中心部側にもセル4を形成することができた。
【0058】
(比較例1)
中心部側の第1隔壁5aの数を低減せずにセル4の数を全ての周方向領域で200個に設定したこと以外は実施例1と同様にして柱状ハニカム構造体を作製することを試みたが、成形することができず、柱状ハニカム構造体を作製することができなかった。
【0059】
(比較例2)
中心部側の第1隔壁5aの数を低減せずにセル4の数を全ての周方向領域で20個に設定したこと以外は実施例1と同様にして柱状ハニカム構造体40を作製した。この柱状ハニカム構造体40の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図を図17に示す。この柱状ハニカム構造体40では、第1隔壁5aの厚みを0.3mm、第2隔壁5bの厚みを0.25mm、外周壁6の厚みを1.5mmとした。
上記のような形状とすることにより、柱状ハニカム構造体40の作製はできたものの、中心部にセル4を形成することができなかった。
【0060】
<熱交換部材及び熱交換器の作製>
実施例1の柱状ハニカム構造体30及び比較例2の柱状ハニカム構造体40を用いて熱交換部材及び熱交換器を作製した。
まず、被覆部材8としてステンレス製の管状部材を用い、管状部材の内部中央まで柱状ハニカム構造体30,40を挿入した後、焼き嵌めにより、筒状部材の内周面を柱状ハニカム構造体30,40の外周面に嵌合させることで、図1の構造を有する熱交換部材を作製した。
熱交換器は、ケーシング23内に熱交換部材を配置し、熱交換部材の被覆部材8の両端部をケーシング23の内面と接合することにより、図14及び15に示す構造を有する熱交換器を作製した。
【0061】
<熱交換試験>
上記で作製した熱交換器について、以下の方法で、熱交換試験を行った。柱状ハニカム構造体30,40に、400℃の温度(Tg1)の空気(第1流体)を10g/sの流量(Mg)で流した。一方、第2流体の入口21から40℃の冷却水(第2流体)を10L/分の流量(Mw)で供給し、第2流体の出口22から熱交換後の冷却水を回収した。
上記の条件にて、熱交換器に対して空気及び冷却水の供給を開始してから5分間通過させた直後に、第2流体の入口21における冷却水の温度(Tw1)及び第2流体の出口22における冷却水の温度(Tw2)を測定し、熱回収効率を求めた。
ここで、冷却水によって回収される熱量Qは次式で表される。
Q(kW)=ΔTw×Cpw×Mw
式中、ΔTw=Tw2-Tw1、Cpw(水の比熱)=4182J/(kg・K)とした。
また、熱交換器による熱回収効率ηは次式で表される。
η(%)=Q/{(Tg1-Tw1)×Cpg×Mg}×100
式中、Cpg(空気の比熱)=1050J/(kg・K)とした。
【0062】
<圧力損失試験>
上述した熱交換試験において、熱交換部材の前後に位置する空気の流路内に、それぞれ圧力計を配置した。これらの圧力計の測定値から得られた差圧から、熱交換部材内(セル4内)を流れる空気の圧力損失を測定した。
【0063】
<アイソスタティック強度試験>
柱状ハニカム構造体30,40の外周面に、厚さ0.5mmのウレタンゴム製のシートを巻き付け、更に、柱状ハニカム構造体30,40の両端部の上に、円形のウレタンゴム製のシートを間に挟ませて、厚さ20mmのアルミニウム製の円板を配置した。アルミニウム製の円板及びウレタンゴム製のシートは、柱状ハニカム構造体30,40の端部と同一の形状及び同一の大きさのものを用いた。さらに、アルミニウム製の円板の外周に沿ってビニールテープで巻くことにより、アルミニウム製の円板の外周とウレタンゴム製のシートとの間を封止して、試験用サンプルを得た。次に、試験用サンプルを、水を満たした圧力容器内に入れた。続いて、圧力容器内の水圧を0.3~3.0MPa/分の速度で200MPaまで上昇させ、柱状ハニカム構造体30,40に破壊が生じたときの水圧を計測した。この評価結果において、水圧200MPaでも破壊が生じない場合「≧200(MPa)」と表す。
上記の各試験の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示されるように、実施例1では、圧力損失が少なく、熱回収効率が高いと共に、アイソスタティック強度も大きかった。
これに対して比較例2では、セル4が大きいため圧力損失が少なかったものの、熱回収効率が低く、アイソスタティック強度も小さかった。
【0066】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、熱回収効率を向上させつつ、圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換部材及び熱交換器を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1、10 熱交換部材
2 第1端面
3 第2端面
4 セル
5 隔壁
5a 第1隔壁
5b 第2隔壁
6 外周壁
7、30、40 柱状ハニカム構造体
8 被覆部材
20 熱交換器
21 第2流体の入口
22 第2流体の出口
23 ケーシング
24 第2流体の流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17