(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240305BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240305BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240305BHJP
F16M 1/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
F02F7/00 F
F16M1/02 A
(21)【出願番号】P 2023044533
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021170205の分割
【原出願日】2017-08-25
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-008246(JP,A)
【文献】特開2003-001770(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093060(WO,A1)
【文献】特開昭61-076540(JP,A)
【文献】特開昭59-122545(JP,A)
【文献】特開昭59-131642(JP,A)
【文献】特開平07-118521(JP,A)
【文献】特開平04-198264(JP,A)
【文献】特開2002-275313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
F02F 7/00
F16M 1/02
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数4~12の有機ジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸は除く)と炭素原子数2~13の有機ジアミンとの重縮合物、ω-アミノ酸の重縮合物及びラクタムの開環重合物からなる群より選ばれる1種以上のポリアミド(A)100質量部、及び、
密度が0.950~0.975g/cm
3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.01~0.4g/10minであり、酸変性度が0.6~5質量%である酸変性ポリエチレン(E)3~20質量部を含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形体。
【請求項3】
自動車用部品である請求項
2に記載の成形体。
【請求項4】
エンジンカバーである請求項
2に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱老化性に優れるポリアミド樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の軽量化や生産性向上のため、樹脂組成物を射出成形してなる自動車用部品が多用されている。そのような自動車用部品のうち、特に高温部用カバー部品(例えばエンジンカバー)は高温環境下に長期間曝されるので、熱老化により機械物性(例えば衝撃強度)が低下する場合がある。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレンとポリメチルペンテンを主成分とし、耐熱変形性(形状保持性)や耐熱変色性等に優れたエンジンカバーが開示されている。しかし、上述のような熱老化による機械物性低下の課題については十分検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で使用されているポリプロピレンの代わりに、より耐衝撃性に優れるポリアミドを使用することも考えられる。ただし本発明者らは、自動車用部品、特に高温部用カバー部品の材料として使用するためには、ポリアミドの耐熱老化性をさらに向上させるこ
とが必要であると考えた。即ち本発明の目的は、耐熱老化性に優れたポリアミド樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアミドに対して特定の酸変性ポリエチレンを特定量配合することが非常に効果的であり、これが特にエンジンカバー等の高温部用カバー部品の材料として非常に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、以下の事項により特定される。
【0007】
[1]炭素原子数4~12の有機ジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸は除く)と炭素原子数2~13の有機ジアミンとの重縮合物、ω-アミノ酸の重縮合物及びラクタムの開環重合物からなる群より選ばれる1種以上のポリアミド(A)100質量部、及び、
密度が0.950~0.975g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.01~0.4g/10minであり、酸変性度が0.6~5質量%である酸変性ポリエチレン(E)3~20質量部を含むポリアミド樹脂組成物。
【0008】
[2][1]に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形体。
[3]高温部用耐熱老化性部品である[2]に記載の成形体。
[4]自動車用部品である[3]に記載の成形体。
[5]高温部用カバー部品である[3]に記載の成形体。
[6]エンジンカバーである[5]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長時間高温環境下に曝されても耐衝撃性等の機械的物性が低下しにくい耐熱老化性に優れた樹脂組成物を提供できる。したがって、本発明のポリアミド樹脂組成物から得られる成形体は、自動車用部品、特にエンジンカバー等の高温部用カバー部品として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリアミド(A)>
本発明に用いるポリアミド(A)は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内で公知の各種ポリアミド樹脂を制限なく使用できる。例えば、アミノ酸ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸との重縮合反応により得られる溶融成形可能なポリアミド樹脂を使用できる。ポリアミド(A)の具体例としては、以下の樹脂が挙げられる。
【0011】
(1)炭素原子数4~12の有機ジカルボン酸と炭素原子数2~13の有機ジアミンとの重縮合物、例えばヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンアジパミド[6,6ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸との重
縮合物であるポリヘキサメチレンアゼラミド[6,9ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンセバカミド[6,10ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンドデカノアミド[6,12ナイロン]、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合物である半芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T、PA10T、PA11T)、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタンとドデカンジオン酸との重縮合物であるポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカン。上記有機ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フェニレンジオキシジ酢酸、オキシジ安息香酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。上記有機ジアミンとしては、例えばヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ウンデカジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン等が挙げられる。
【0012】
(2)ω-アミノ酸の重縮合物、例えばω-アミノウンデカン酸の重縮合物であるポリウンデカンアミド[11ナイロン]。
【0013】
(3)ラクタムの開環重合物、例えばε-アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド[6ナイロン]、ε-アミノラウロラクタムの開環重合物ポリラウリックラクタム[12ナイロン]。
【0014】
中でも、ポリヘキサメチレンアジパミド[6,6ナイロン]、ポリヘキサメチレンアゼラミド[6,9ナイロン]、ポリカプラミド[6ナイロン]が好ましい。
【0015】
本発明においては、例えばアジピン酸とイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから製造されるポリアミド樹脂等も使用できるし、さらに6ナイロンと6,6ナイロンとの混合物のように2種以上のポリアミド樹脂を配合したブレンド物も使用できる。
【0016】
<酸変性ポリエチレン(E)>
本発明に用いる酸変性ポリエチレン(E)は、ポリエチレンを酸変性することにより得られる。酸変性する前のポリエチレンは、代表的にはエチレン単独重合体であるが、本発明の効果を損なわない範囲内において、エチレンと少量のα-オレフィンとの共重合体であっても良い。
【0017】
α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、エチル-1-ペンテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、ジメチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、プロピル-1-ペンテン、1-デセン、メチル-1-ノネン、ジメチル-1-オクテン、トリメチル-1-ヘプテン、エチル-1-オクテン、メチルエチル-1-ヘプテン、ジエチル-1-ヘキセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセン等の炭素原子数3~20のα-オレフィンが挙げられる。これらα-オレフィンは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
酸変性エチレン系重合体(E)は、例えば、ポリエチレンにラジカル開始剤の存在下で酸成分(例えばマレイン酸又はその無水物)をグラフト重合させて得られる。その際に、必要に応じて後述する添加剤を加えても良い。ポリエチレンは溶融混練法により予め造粒されていてもよい。また押出機を用いて、無溶媒で、ポリエチレンにラジカル開始剤の存
在下で酸成分をグラフト重合させても良い。グラフト重合反応は、ポリエチレンの融点以上の温度で0.5~10分間行うことが好ましい。
【0019】
酸成分の仕込み量は、酸変性前のポリエチレン100質量部に対して、通常0.01~15質量部、好ましくは0.01~5質量部である。ラジカル開始剤の使用量は、酸変性前のポリエチレン100質量部に対して、通常0.001~1質量部、好ましくは0.001~0.3質量部である。
【0020】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、金属水素化物を使用できる。ラジカル開始剤は、酸成分及び酸変性前のポリエチレンとそのまま混合して使用しても良いし、少量の有機溶媒に溶解して使用しても良い。
【0021】
酸変性前のポリエチレンとしては、密度が0.940g/cm3以上、0.975g/cm3以下の高密度ポリエチレン、密度が0.915g/cm3以上、0.940g/cm3未満の低密度ポリエチレンの何れも使用できる。そして、酸変性ポリエチレン(E)の密度は、0.915~0.975g/cm3であり、好ましくは0.915~0.970g/cm3、より好ましくは0.915~0.960g/cm3である。
【0022】
酸変性ポリエチレン(E)のASTM D1238に準拠し190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~50g/10min、より好ましくは0.05~40g/10minである。
【0023】
酸変性ポリエチレン(E)の酸変性度(酸成分グラフト量)は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%である。
【0024】
<その他の成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分(ポリアミド(A)及び酸変性エチレン系重合体(E)以外の成分)を含んでいても良い。その他の成分の具体例としては、合成樹脂、ゴム、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、顔料、塩酸吸収剤、銅害防止剤が挙げられる。その他の成分の添加量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部中、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部である。その他の成分は、ポリアミド樹脂組成物の調製段階で添加しても良いし、酸変性ポリエチレン(E)の調製前、調製中又は調製後に添加しても良い。
【0025】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)100質量部に対して、先に説明した酸変性ポリエチレン(E)3~30質量部、好ましくは5~25質量部、より好ましくは5~20質量部を配合した組成物である。この割合で酸変性エチレン系重合体(E)を配合することよって、長時間高温環境下に曝されても耐衝撃性等の機械的物性が低下しにくい耐熱老化性ポリアミド樹脂組成物になる。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、ポリアミド(A)と酸変性ポリエチレン(E)と、必要に応じてその他の成分を溶融混合することにより得られる。具体的には、上記各成分を同時に又は逐次的に、例えばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等の混合装置に装入して混合し、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練することによって得られる。特に、多軸押出機、ニーダー、バンンバリーミキサー等の混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散された高品質のポリアミド樹脂組成物が得られる。また、これらの任意の段階で必要に応じてその他の添加剤、例えば酸化防止剤等を添加することもできる。
【0027】
<成形体>
本発明の成形体は、以上説明したポリアミド樹脂組成物を成形することにより得られる。その成形法は特に限定されず、公知の様々な成形法を用いることができる。中でも、射出成形法が好ましい。
【0028】
本発明の成形体は耐熱老化性に優れているので、高温部用耐熱老化性部品として有用であり、特に、高温部に使用され且つ耐熱老化性が必要とされる車両用部品(自動車用部品等)として非常に有用である。車両用部品の具体例としては、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、インタークーラー用ハウジング、サーモスタットハウジング、エアダクト等の高温部用カバー部品;燃料チューブ等のチューブ;ケーブルタイ等の結束帯が挙げられる。中でも、エンジンカバーとして非常に有用である。また、車両用部品に限定されず、例えば電気/電子機器部品、メカトロニクス部品、家電機器部品としての高温部用カバー部品としても有用である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
【0030】
<ポリアミド(A)>
「ポリアミド6(PA6)」:東レ(株)製、アミラン(登録商標)CM1026
【0031】
<酸変性前のエチレン系重合体>
酸変性前のエチレン系重合体として、(株)プライムポリマー製の高密度ポリエチレン「Hizex(登録商標)」の2種類(HDPE-1)及び(HDPE-2)、直鎖低密度ポリエチレン「Evolue(登録商標)」(LLDPE)、三井化学(株)製のエチレン・1-ブテン共重合体(EBR)を用いた。酸変性前の各エチレン系重合体の性状は以下の通りである。
【0032】
「高密度ポリエチレン(HDPE-1)」:密度964kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)5.0g/10min
「高密度ポリエチレン(HDPE-2)」:密度950kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)0.8g/10min
「直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)」:密度925kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.0g/10min
「エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)」:エチレン含量85モル%、密度870kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.2g/10min
【0033】
<酸変性ポリエチレン(E-1)の調製>
高密度ポリエチレン(HDPE-1)10kgと、無水マレイン酸(MAH)120g及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン(商品名パーヘキシン25B)6gをアセトンに溶解した溶液とをブレンドした。そして得られたブレンド物を、スクリュー径30mm、L/D=42の2軸押出機((株)日本製鋼所製、商品名TEX30SS)のホッパーから投入し、樹脂温度250℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量10kg/hrでストランド状に押し出した。得られたストランドを十分冷却した後、造粒して酸変性ポリエチレン(E-1)を得た。
【0034】
<酸変性ポリエチレン系(E-2)~(E-5)の調製>
表1に示す各成分を用いたこと以外は、酸変性エチレン系重合体(E-1)と同様にして酸変性ポリエチレン(E-2)~(E-5)を調製した。
【0035】
<酸変性エラストマー(E'-1)~(E'-2)の調製>
表1に示す各成分を用いたこと以外は、酸変性エチレン系重合体(E-1)と同様にして酸変性エラストマー(E'-1)~(E'-2)を調製した。
【0036】
以上のようにして得た酸変性ポリエチレン(E-1)~(E-5)及び酸変性エラストマー(E'-1)~(E'-2)の物性を、以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(測定用プレスシートの作製)
180℃に設定した神藤金属工業(株)製油圧式熱プレス機を用い、7.5MPaで圧力シート成形した。具体的には、0.5~3mm厚のシートの場合、無負荷での余熱を5分施し、7.5MPaで2分間加圧し、その後20℃に設定した別の神藤金属工業(株)製油圧式熱プレス機を用いて7.5MPaで圧縮し、5分冷却して測定用試料を得た。熱板は5mm厚の真鍮板を用いた。このサンプルを各物性測定に供した。
【0038】
(MFR)
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件及び230℃、2.16kg荷重の条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0039】
(密度)
ASTM D1505に準拠し、MFR測定で流出するストランド樹脂を使用して、密度勾配管法により密度を測定した。
【0040】
(酸変性度)
酸変性度(無水マレイン酸グラフト量)は、FT-IRにてカルボニル基に帰属される波数1780cm-1ピーク強度に基づいて作成した検量線から求めた。
【0041】
【0042】
[実施例1]
ポリアミド6(東レ(株)社製、アミラン(登録商標)CM1026)90質量部と、酸変性エチレン系重合体(E-1)10質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、ドライブレンド物を得た。このドライブレンド物を、245℃に設定した2軸押出機(L/D=42、30mmφ)に供給し、スクリュー回転数180rpmの条件で押出し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを作製した。このペレットを80℃で12時間乾燥した後、下記条件で射出成形を行ない、物性試験用試験片を作製した。
【0043】
(射出成形条件)
型締め力50トンの射出成形機(MEIKI M50)
シリンダー温度:245℃
射出圧力:400kg/cm2
金型温度:80℃
【0044】
[実施例2,3、参考例1,2]
表2に示す各成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを作製し、そのペレットを用いて物性試験用試験片を作製した。
【0045】
[比較例1~3]
表3に示す各成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを作製し、そのペレットを用いて物性試験用試験片を作製した。
【0046】
以上のようにして得た実施例1~3、参考例1,2及び比較例1~3の試験片の耐熱老化性を、以下の方法(1)~(3)により評価した。結果を表2及び3に示す。
【0047】
(1)アイゾット衝撃試験
厚み1/8''の試験片を用い、ASTM D256に準拠して、23℃及び-40℃でノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。この試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で2日間行なった。
【0048】
(2)熱老化試験
160℃に設定したギアオーブン中に試験片を保管した。加熱開始から500時間経過後に試験片を取り出し、再度上記(1)同様に23℃及び-40℃でノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。
【0049】
(3)耐熱老化性(衝撃強度維持率)
耐熱老化性の指標として、アイゾット衝撃強度の維持率を下式で定義した。
(衝撃強度維持率)=(熱老化試験500時間後のアイゾット衝撃強度)/(熱老化試験前のアイゾット衝撃強度)×100(%)
【0050】
【0051】
【0052】
表2及び3から明らかなように、実施例1~5のポリアミド樹脂組成物は160℃の環境下に500時間曝した後の衝撃強度維持率が高く、耐熱老化性に優れていた。
【0053】
比較例1のポリアミド(PA6)単体は、実施例1~5のポリアミド樹脂組成物よりも耐熱老化性が劣っていた。
【0054】
比較例2のポリアミド樹脂組成物は、密度が低い酸変性エラストマー(E'-1)をポリアミド(PA6)に配合したものであり、実施例1~3及び参考例1,2のポリアミド樹脂組成物よりも耐熱老化性が劣っていた。
【0055】
比較例3のポリアミド樹脂組成物は、酸化防止剤を含む密度が比較的低い酸変性エラストマー(E'-2)をポリアミド(PA6)に配合したものである。これは、酸化防止剤を含む密度が比較的高いポリエチレン(E-3)及び(E-5)をポリアミド(PA6)に配合した実施例3及び参考例2のポリアミド樹脂組成物よりも耐熱老化性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物は耐熱老化性に優れるので、その成形体は車両用部品、電気/電子機器部品、メカトロニクス部品、家電機器部品等の分野における高温部用耐熱老化性部品として有用である。