(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】清掃状況検知システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240305BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240305BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240305BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20240305BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240305BHJP
【FI】
H04N7/18 K
H04N7/18 D
G06Q50/10
G06T7/00 350C
G06T7/20 300Z
G06V10/82
(21)【出願番号】P 2023506405
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010396
(87)【国際公開番号】W WO2022195681
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打越 秀昭
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-149024(JP,A)
【文献】特表2012-519343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06Q 50/10
G06T 7/00
G06T 7/20
G06V 10/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮影した画像に基づき、清掃者を特定して、前記清掃者の行動から清掃済み範囲を特定していくことで前記画像内での清掃状況を判定する画像判定部を備え、
前記清掃状況の判定は、ニューラルネットワークとディープラーニングを用いたAI(Artificial Intelligence)による推論処理により行い、少なくとも前記清掃者の行動を特徴量として扱うことを特徴とする清掃状況検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃状況検知システムにおいて、
前記清掃状況の判定は、前記画像内で設定された検知領域に対して、清掃されていない箇所がある場合、未清掃と判定することを特徴とする清掃状況検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の清掃状況検知システムにおいて、
前記清掃状況の判定は、清掃道具を特定して、前記清掃道具があらかじめ定めた所定の方向に移動していない場合、その範囲は未清掃であると判定することを特徴とする清掃状況検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の清掃状況検知システムにおいて、
表示装置を備え、
前記表示装置は、前記画像処理装置における前記清掃状況の判定結果を前記撮影した画像を用いて表示することを特徴とする清掃状況検知システム。
【請求項5】
請求項4に記載の清掃状況検知システムにおいて、
前記画像処理装置は、前記表示装置から清掃終了又はレポート作成に関する信号を取得した場合、前記画像処理装置における前記清掃状況の判定結果に基づき自動でレポート作成を行うレポート作成部を備えることを特徴とする清掃状況検知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の清掃状況検知システムにおいて、
前記撮像装置は、赤外線カメラの機能を有し、
前記画像処理装置は、前記清掃状況の判定に、前記撮像装置から取得した温度の情報を用いることを特徴とする清掃状況検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃状況検知システムに関し、特に、自動で清掃状況を判定可能な清掃状況検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃状況の把握は、清掃者又は管理者がその清掃内容を目視で確認する方法が主な方法だった。一方、近年、深層学習技術等を用いた行動分析技術が開発されてきた。監視カメラの映像から自動で人物の行動を分析することで異常行動検知による監視業務支援や高齢者見守り業務に活用されている。
【0003】
また、特許文献1には、複数台の可視カメラで森林の火災監視を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、清掃内容を目視で確認する場合は、清掃の有無が見た目では判断しづらく、確認漏れが生じる場合や、詳細な清掃内容まで確認できない場合が存在する。一方、従来の深層学習技術では、人物の行動の検知は、異常行動を検知することが主であり、清掃状況を把握するような検知システムの事例はなかった。また、特許文献1では、森林の火災監視のための技術であり、この技術を清掃状況の検知にそのまま適用することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、清掃状況を自動で判定することが可能な清掃状況検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の清掃状況検知システムの一つは、撮像装置と、画像処理装置とを備え、前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮影した画像に基づき、清掃者を特定して、前記清掃者の行動から清掃済み範囲を特定していくことで前記画像内での清掃状況を判定する画像判定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、清掃状況検知システムにおいて、清掃状況を画像を用いて自動で判定することができるため、目視による清掃有無の確認漏れや清掃状況をうまく確認できないといった問題を解決することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の清掃状況検知システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の画像処理装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の清掃状況検知システムにおける表示装置での表示画面の第1の例を示す。
【
図4】
図4は、本発明の清掃状況検知システムにおける表示装置での表示画面の第2の例を示す。
【
図5】
図5は、本発明の清掃状況検知システムにおける処理全体の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の清掃状況検知システムにおける清掃状況判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の清掃状況検知システムにおける検知の一例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、本発明の清掃状況検知システムにおける判定処理の検知の場合の一例を示す概念図である。
【
図9】
図9は、本発明の清掃状況検知システムにおける判定処理の非検知の場合の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の清掃状況検知システムの一実施形態を示すブロック図である。
図1で示す清掃状況検知システムは、撮像装置1、画像処理装置10、画像記録装置21、表示装置22、印刷装置23を備えている。これらは、それぞれ、ネットワーク30に接続されている。
【0012】
撮像装置1は、カメラの構成を備えており、様々な場所に配置可能である。例えば、監視カメラとして監視箇所に配置する等である。撮像装置1は、レンズや絞りを介して撮像素子に入射光を結像して情報を得るカメラの構成を適用できる。ここでの撮像素子の例としては、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等があげられる。撮像装置1は、映像として、例えば、1秒間に3フレーム(3fps)以上等で撮影して、その情報は、画像処理装置10や画像記録装置21へ送られる。撮像装置1は、状況に応じて複数設置可能である。
【0013】
画像処理装置10は、制御部11、ユーザインターフェース部12、レポート作成部13、画像判定部14、画像判定記録部15の機能を備えている。
【0014】
制御部11は、ネットワーク30との情報のやり取りが可能で、ユーザインターフェース部12、レポート作成部13、画像判定部14、画像判定記録部15の制御を行う。ユーザインターフェース部12は、表示装置22等、ユーザが入力や操作した情報を受け入れる等の処理を行う。レポート作成部13は、日報等のレポートを作成する処理を行う。画像判定部14は、撮像装置1で撮影した情報を用いて後述する画像判定の処理を行う。画像判定記録部15は、画像判定部14の判定処理の結果に基づき、その内容の記録を行う。例えば、表示装置22から清掃終了又はレポート作成に関する信号をユーザインターフェース部12が取得した場合、レポート作成部13は、画像判定部14の判定結果に基づき自動でレポート作成を行い画像判定記録部15に記録する。
【0015】
画像記録装置21は、撮像装置1で撮影した画像を記録する装置である。また、画像処理装置10での処理後の画像や結果を記録してもよい。画像記録装置21としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、DDS(Digital Data Storage)等、必要に応じて適した方式を適用できる。
【0016】
表示装置22は、画像処理装置10で処理した内容を表示できる装置である。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL(OEL)ディスプレイ、タッチパネル等の構成により表示させる。表示装置22は必要に応じた台数を適用できる。また、表示装置22は、操作ボタンを付属していてもよい。
【0017】
印刷装置23は、表示装置22での表示内容や画像処理装置10での情報を印刷可能な装置であり、必要に応じて設けられる。
【0018】
ネットワーク30は、各装置を結ぶデータ通信可能な回線である。専用線、イントラネット、インターネット等のIPネットワーク等、回線の種類は問わず適用可能である。
【0019】
図2は、
図1の画像処理装置の一例を示すブロック図である。画像処理装置10のハードウェアの具体的な構成例として
図2のコンピュータシステム300により説明する。
【0020】
コンピュータシステム300の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ302、メモリ304、端末インターフェース312、ストレージインターフェース314、I/O(入出力)デバイスインターフェース316、及びネットワークインターフェース318を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス306、I/Oバス308、バスインターフェース309、及びI/Oバスインターフェース310を介して、相互的に接続されてもよい。
【0021】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302と総称される1つ又は複数の処理装置302A及び302Bを含んでもよい。各プロセッサ302は、メモリ304に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。処理装置としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processong Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を適用できる。
【0022】
メモリ304は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。また、メモリ304は、コンピュータシステム300の仮想メモリ全体を表しており、ネットワークを介してコンピュータシステム300に接続された他のコンピュータシステムの仮想メモリを含んでもよい。メモリ304は、概念的には単一のものとみなされてもよいが、キャッシュおよび他のメモリデバイスの階層など、より複雑な構成となる場合もある。
【0023】
メモリ304は、本実施形態で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ304は、アプリケーション350を格納していてもよい。アプリケーション350は、後述する機能をプロセッサ302上で実行する命令又は記述を含んでもよく、あるいは別の命令又は記述によって解釈される命令又は記述を含んでもよい。アプリケーション350は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。アプリケーション350は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。また、カメラやセンサ等の他のデータ入力デバイスが、バスインターフェース309、プロセッサ302、またはコンピュータシステム300の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0024】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、表示システム324、及びI/Oバスインターフェース310間の通信を行うバスインターフェース309を含んでもよい。I/Oバスインターフェース310は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス308と連結していてもよい。I/Oバスインターフェース310は、I/Oバス308を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインターフェース312、314、316、及び318と通信してもよい。表示システム324は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置326に提供することができる。また、コンピュータシステム300は、データを収集し、プロセッサ302に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。表示システム324は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置326に接続されてもよい。表示装置326は、オーディオをレンダリングするためスピーカを含んでもよい。あるいは、オーディオをレンダリングするためのスピーカは、I/Oインターフェースと接続されてもよい。これ以外に、表示システム324が提供する機能は、プロセッサ302を含む集積回路によって実現されてもよい。同様に、バスインターフェース309が提供する機能は、プロセッサ302を含む集積回路によって実現されてもよい。
【0025】
I/Oインターフェースは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インターフェース312は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス320の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス320及びコンピュータシステム300に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム300からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス320を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたりしてもよい。
【0026】
ストレージインターフェース314は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置322の取り付けが可能である。ストレージ装置322は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ304の内容は、ストレージ装置322に記憶され、必要に応じてストレージ装置322から読み出されてもよい。I/Oデバイスインターフェース316は、他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース318は、コンピュータシステム300と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク330であってもよい。
【0027】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、バスインターフェース309、表示システム324、及びI/Oバスインターフェース310の間の直接通信経路を提供するバス構造を備えているが、コンピュータシステム300は、階層構成、スター構成、又はウェブ構成のポイントツーポイントリンク、複数の階層バス、平行又は冗長の通信経路を含んでもよい。さらに、I/Oバスインターフェース310及びI/Oバス308が単一のユニットとして示されているが、実際には、コンピュータシステム300は複数のI/Oバスインターフェース310又は複数のI/Oバス308を備えてもよい。また、I/Oバス308を様々なI/Oデバイスに繋がる各種通信経路から分離するための複数のI/Oインターフェースが示されているが、I/Oデバイスの一部または全部が、1つのシステムI/Oバスに直接接続されてもよい。
【0028】
コンピュータシステム300は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。
【0029】
図2のコンピュータシステム300を
図1の画像処理装置10に適用する場合は、表示システム324や表示装置326は任意の構成であり、備えていてもいなくてもよい。また、表示装置326は、表示装置22に加えて表示装置22と同様の表示装置として設けてもよい。また、表示装置22の代りに表示装置326を設けてもよい。また、ストレージ装置322は、画像判定記録部15に適用できる。また、ストレージ装置322を画像記録装置21の代りに設けてもよい。また、ネットワーク330は、ネットワーク30として適用できる。
【0030】
図3は、本発明の清掃状況検知システムにおける表示装置での表示画面の第1の例を示す。
図4は、本発明の清掃状況検知システムにおける表示装置での表示画面の第2の例を示す。
【0031】
表示画面100は、
図1の表示装置22における表示画面を示している。
図3、4の例では、表示画面100にタッチパネルの構成を適用した場合の表示例を示している。
【0032】
表示画面100は、清掃状況画面120が表示されている。さらに、表示画面100は、ボタン表示として、清掃開始ボタン101、清掃終了ボタン102、撮像装置エリアボタン103、清掃状況更新ボタン104、レポート作成ボタン105が表示されている。これらのボタンに触れるとその情報は、
図1に記載したネットワーク30を介して画像処理装置10のユーザインターフェース部12へ送られる。そして、画像処理装置10では送られた情報に応じた処理が行われる。表示画面100は情報の表示として、清掃開始日時111、清掃終了日時112、カメラ識別情報113、レポート作成日時114を表示可能に構成されている。
【0033】
清掃者が、清掃を開始した場合、清掃開始ボタン101に触れると、その時間が記録され、清掃開始日時111にその日時が表示される。さらに、清掃者は、清掃を終了した場合、清掃終了ボタン102に触れると、その時間が記録され、清掃終了日時112にその日時が表示される。その情報は画像処理装置10にも送られる。
【0034】
カメラ識別情報113は、清掃状況画面120で表示されている画像を撮影している撮像装置1の識別情報が表示される。識別情報は、数字等の符号等で表すことができ、どのカメラで撮影した画像であるかを特定できる。さらに、撮像装置エリアボタン103に触れると、他の撮像装置1に変更可能である。他の撮像装置1に変更した場合は、カメラ識別情報113の符号表示が変更され、清掃状況画面120は、切り替えた他の撮像装置1の画像に基づき清掃状況画面120に表示される。
【0035】
清掃状況更新ボタン104は、清掃者が、このボタンに触れると、その状況が清掃状況画面120に反映される。レポート作成ボタン105は、レポートを作成するためのボタンであり、清掃者(又は管理者)は、このボタンに触れると、その時間が記録され、レポート作成日時114にその日時が表示される。その情報は画像処理装置10にも送られる。レポートは、このときの表示画面100内の情報を含んだレポートとして作成される。
【0036】
清掃状況画面120では、撮像装置1で撮影された画像が表示されると共に、清掃済み範囲121と未清掃範囲122が、分かるように画像を一部加工して表示させる。例えば、清掃済み範囲121は、この範囲に薄い色をつける、薄い網掛をする、特定の色の枠で囲うなど、確認する人が分かる表示とし、未清掃範囲122には何も加工をしない等である。もちろん、未清掃範囲122に清掃済み範囲121と区別するための表示を行ってもよい。これらの画像処理は、後述する画像処理装置10の判定結果に基づく情報により行うことができる。
【0037】
図3は、清掃開始ボタン101に触れて、清掃者が清掃作業をしている状態を示している。このため、清掃終了日時112とレポート作成日時114には、情報は表示されていない。
図4は、清掃者が清掃作業を終了して、清掃終了ボタン102に触れて清掃が終了した状態を示す。さらに、清掃者(又は管理者)がレポート作成ボタン105に触れてレポートが作成される。このため、清掃終了日時112とレポート作成日時114には、その日時の情報が表示されている。
【0038】
図5は、本発明の清掃状況検知システムにおける処理全体の一例を示すフローチャートである。ここでの処理は、
図1の画像処理装置10で行われる。
【0039】
処理が開始されると(S101)、まず清掃状況判定処理を行う(S102)。処理の開始は、例えば、
図3、4の清掃開始ボタン101に触れられた情報が、表示装置22から画像処理装置10へ送られユーザインターフェース部12がそのことを認知することにより行われる。清掃状況判定処理は、
図6で説明する。
【0040】
次に、清掃状況判定処理が終了すると清掃状況更新処理(S103)を行う。これは、清掃状況判定処理の結果に応じて、清掃状況の情報を更新する処理を行うものである。
【0041】
次に、清掃が終了したか否かを判定する(S104)。清掃が終了したと判定した場合はS105へ進み、清掃が終了していないと判定した場合はS102の清掃状況判定処理へ戻る。ここでの判定は、例えば、
図3、4の清掃終了ボタン102に触れられた情報が、表示装置22から画像処理装置10へ送られユーザインターフェース部12がそのことを認知するか否かにより行われる。すなわち、清掃終了ボタン102に触れられた場合は、清掃が終了したと判定し、触れられていない場合は、清掃が終了していないと判定できる。
【0042】
S105では、レポート作成が未完了か否かを判定する(S105)。レポート作成が未完了であると判定した場合はS106へ進み、レポート作成が未完了でないと判定した場合はS107へ進む。ここでの判定は、これより前にレポートの作成がなされているか否かで判定することができる。例えば、清掃者が、清掃が終了して、
図3、4のレポート作成ボタン105を押した後に、もう一度、清掃開始ボタン101に触れて、追加の清掃作業を再開した場合が想定される。清掃者が、追加の清掃が終了して清掃終了ボタン102に触れた場合、すでにレポートが作成されているためS107へ進むことになる。この判定は、ある所定の時間内にレポートが作成されていたか等で判断できる。
【0043】
S106では、レポート作成処理を行い、その後処理が終了する(S109)。この処理は、画像処理装置10のレポート作成部13で行う。このレポートは、例えば、
図4で示したレポートを作成することができる。
【0044】
S107では、レポートを更新するか否かを判定する(S107)。レポートを更新すると判定した場合はS108へ進み、レポートを更新しないと判定した場合はS109へ進み処理が終了する。ここでの判定は、例えば、すでに作成されたレポートがあれば、それを表示して、更新するか否かを確認する。清掃者が、該当するボタンに触れた場合は、その情報が表示装置22から画像処理装置10へ送られる。そしてユーザインターフェース部12がそのことを認知すると、更新すると判定される。
【0045】
S108では、レポート作成処理を行い、その後処理が終了する(S109)。ここでの処理はS106と同様であるが、更新したレポートが作成される。
【0046】
図6は、本発明の清掃状況検知システムにおける清掃状況判定処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、
図5で示したS102の清掃状況判定処理の具体的な処理を示している。これらの処理は、特に記載のない限り、
図1の画像処理装置10の画像判定部14で行う。
【0047】
清掃状況判定処理を開始すると(S201)、まず、人物検知処理を行う(S202)。これは、撮像装置1で撮影された映像に基づき、清掃者である人物を特定するための処理である。該当する人物であるかどうかは、既知の人物検知の仕組みを使うこともできるし、その人物の特徴や動きなどから、AI(Artificial Intelligence)による推論処理を行ってもよい。ここでの推論処理は、例えば、ニューラルネットワークやディープラーニング等を用いて特徴量を抽出する処理等である。例えば、映像内の動きから清掃者を特定できる。また、これ以外に、清掃者を特定しやすくするため、清掃者が着ている制服を特定する処理を行ってもよい。これは、制服の全体のデザインや、腕章、マーク等の制服の特徴となるものから、清掃者であることを識別する。また、動きと制服等の特徴を組み合わせて判断してもよい。そして、識別した清掃者は、例えば、
図6で後述するように、画像内の骨格のイメージを取得するとよい。このことで、清掃者の動きを特定しやすくなる。制服等の識別処理も、上述したAIによる推論処理で特定してもよい。
【0048】
次に、検知領域判定処理を行う(S203)。ここでは、清掃を判定するための領域を判定する。この判定は、例えば、あらかじめ範囲を定めておいてもよい。撮像装置1が監視カメラなどの固定カメラである場合は、撮影範囲を動かすことがないため、あらかじめ範囲を定めておくことができる。また、この他、撮像装置1の画像から識別処理を行い、検知領域を定めてもよい。手すりや机の上やテーブルなどの場合は、その特徴から清掃が必要な検知領域であることを特定できる。また、壁や通路なども、同様に検知領域であることを特定できる。また、この他、過去の清掃状況から清掃範囲を定めてもよい。過去に清掃者が、清掃した範囲を記録しておき、その内容から検知領域を特定することができる。これらの識別処理は、上述したAIによる推論処理で特定してもよい。
【0049】
次に、検知特徴量抽出処理を行う(S204)。ここでの特徴量は、次の清掃判定処理に必要な特徴量を抽出する処理である。例えば、特定した人物の動きを特徴量として抽出することで、清掃判定処理に用いることができる。さらに、清掃道具を特徴量として抽出することで、清掃判定処理の精度を高くできる。清掃道具としては、例えば、雑巾、モップ、ほうき、ブラシ、スポンジ、掃除機等、清掃に用いる様々な道具が該当する。
【0050】
次に、清掃判定処理を行う(S205)。ここでの判定は、S203で特定した検知領域に対して、S204で抽出した特徴量を用いて、清掃を行った範囲を判定する。清掃を行っている状態か否かは、所定の条件を定めて行うことができる。例えば、上述したAIによる推論処理を用いて行うこともできる。この場合、S204で抽出した特徴量に基づき、S202で特定した清掃者が行っている行動が、清掃に該当するかの確信度が所定以上の場合は、清掃していると判断する等である。このとき、抽出された特徴量を予め学習させたデータセットの特徴量と比較を行うことで検知領域が清掃済みか判定する。また、特定の清掃道具を用いているかも判定の材料とでき、清掃箇所に使用する道具が規定と異なる場合は、清掃を行っていないと判定することができる。さらに、清掃道具の移動方向を加味してもよい。清掃範囲を特定する具体例については、
図8、9の説明で後述する。
【0051】
さらに、S205では、検知領域に対して清掃が完了しているか否かの判定を行う。清掃が必要とされる検知領域に対して、清掃が完了している場合は、この撮影範囲における清掃は完了したと判定される。また、清掃が必要とされる検知領域に対して、未清掃の箇所がある場合は、その箇所を特定して、未清掃であると判定される。
【0052】
次に、判定結果記録処理を行う(S206)。S205の清掃判定処理の結果は画像判定記録部15に記録される。この内容は、例えば、
図3、4で示した清掃状況画面120の内容等である。また、これらの判定結果はマップに反映することも可能である。各撮像装置1の場所があらかじめ特定されている場合、例えば、建屋内等の特定エリアのマップ情報と照合して記録として残すことができる。これにより、どこの箇所で清掃が完了して、どこの箇所に未清掃箇所があるのかを視覚的に全体を把握することができる。
【0053】
次に、判定が終了しているか否かを判定する(S207)。現在の撮像装置1からの画像において、判定処理が終了している場合は、S208へ進み清掃状況判定処理が終了する。また、判定処理が終了していない場合は、S202へ戻る。
【0054】
図7は、本発明の清掃状況検知システムにおける検知の一例を示す概念図である。
【0055】
清掃者C001の特定は、
図6のS202における人物検知処理によって行われる。
図7に示すように、人物検知処理によって、骨格のモデルを形成することにより、人物を特定するための解析を行いやすくできる。骨格のモデルは、関節を回動可能な節点として、関節同士を線で結ぶ等して単純化したモデルである。
【0056】
移動方向F001及び清掃道具K001の特定は、
図6のS204における検知特徴量の抽出処理によって行われる。
図7の例では、未清掃範囲122aにおいて、清掃者C001が保持している清掃道具K001を移動方向F001に動かしている図が示されている。画像処理装置10の画像判定部14では、この状態を検知して、未清掃範囲122aが清掃していることを判定する。なお、清掃道具K001を検知せずに、清掃者C001の手の移動方向F001の状態を検知して判定することも可能である。
【0057】
これらの判定をしていくことにより、
図7に示すように、清掃済み範囲121と未清掃範囲122の判定が可能となる。その結果は、表示装置22の清掃状況画面120で表示することが可能である。
【0058】
図8は、本発明の清掃状況検知システムにおける判定処理の検知の場合の一例を示す概念図である。
図9は、本発明の清掃状況検知システムにおける判定処理の非検知の場合の一例を示す概念図である。
【0059】
図8と
図9は、
図6のS205における清掃判定処理の一例を示す。清掃が必要な範囲となる検知領域150について、グリッド線等によるエリアの細分化を行う。これにより、分割された複数の小領域151が存在することになる。小領域151の数は、例えば、4以上、さらには10以上等と状況に応じて分割とするとよい。
【0060】
図8と
図9の例では、清掃判定処理において、清掃方向と範囲の2つの要素で清掃を行ったか否かを判定している。すなわち、清掃道具K001の移動方向があらかじめ設定した所定の方向の範囲内であって、小領域151内をすべて清掃したと判定した場合に、当該小領域151が清掃されたと判定される。ここで、所定の方向とは、例えば、ある方向から決まった一方向に清掃道具K001を動かす方向等である。これらの条件は、あらかじめ設定しておくことも可能であるし、上述したAIによる推論処理で決めることも可能である。
【0061】
図8では、清掃道具K001の移動方向F001は所定の方向であって、検知小領域A001から左側の各小領域151はすべて清掃されている。このため、これらの領域はすべて清掃済みと判定される。これにより、画像処理装置10は清掃したことを検知する。
【0062】
図9では、清掃道具K001の移動方向F001は、一定方向でなく、蛇行しているため、移動方向F001はあらかじめ定めた条件を満たさない。このため、清掃道具K001が通過した小領域151があったとしても、検知小領域A001から左側の各小領域151はすべて未清掃と判定される。これにより、画像処理装置10は清掃したことを検知しない。
【0063】
(効果)
以上のように、本実施形態では、撮像装置1からの情報に基づき、清掃者の行動等を分析することにより、清掃状況を的確に把握できる。また、AIによる推論処理を用いることでより正確な判定が可能となる。このとき、撮像装置1として、既存の監視カメラと共用で用いることもできるため、当該システムを安価で構築しやすいものとなる。さらに、表示装置22の表示に基づきレポート作成を行えるので、清掃者の報告負担を軽減することができる。また、清掃状況は、表示画面100で共有できるため、遠隔からも清掃状況の把握が可能である。このとき、未清掃箇所を表示画面100の清掃状況画面120に分かりやすく表示して、把握しやすい構成を構築することが可能となる。
【0064】
さらに、
図7に示したように、骨格のモデルを用いることで清掃判定処理を行いやすくできる。さらに、
図8、
図9に示したように、清掃方向と範囲に基づき、的確な清掃判定処理が可能となる。この場合、例えば、ウイルスを拡散しないための清掃方向等、清掃にふさわしい規定の方法であるかといったことも的確に判定可能となる。
【0065】
(実施形態の変形例)
実施形態の変形例として撮像装置1に赤外線カメラを用いて、清掃対象の表面温度を測定してもよい。表面温度は、清掃時にアルコールや水等を使用する場合、その気化熱で低下する可能性が高い。このような表面の温度変化の情報を加味して、
図6のS204の特徴量の抽出やS205の清掃判定処理に用いる。この場合、清掃時における清掃対象の表面温度に関する情報を特徴量に加える等して清掃判定処理を行うことができる。これにより、より正確な清掃判定が可能となる。
【0066】
また、清掃対象の水分を測定できるセンサを用いて、水分量の情報を加味して、
図6のS204の特徴量の抽出やS205の清掃判定処理に用いてもよい。この場合、清掃時に清掃対象の表面の水分量が一旦、増えて、その後、気化により減少する可能性が高い。このため、そのファクターを特徴量に加える等して清掃判定処理を行うことができる。これにより、より正確な清掃判定が可能となる。
【0067】
以上の様に、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
例えば、
図1では、画像処理装置10、画像記録装置21、表示装置22、印刷装置23は、ネットワーク30を介することを説明したが、これらは、それぞれ直接接続されていてもよい。また、画像処理装置10と表示装置22は一体に構成してもよい。また、これ以外に画像処理装置10は撮像装置1内に一体に構成してもよい。
【0069】
また、
図3、
図4はタッチパネルによる構成を示したが、これに限らず、ボタン表示の代りに専用の操作スイッチやキーボード等で構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…撮像装置、10…画像処理装置、11…制御部、12…ユーザインターフェース部、13…レポート作成部、14…画像判定部、15…画像判定記録部、21…画像記録装置、22…表示装置、23…印刷装置、30…ネットワーク、100…表示画面、101…清掃開始ボタン、102…清掃終了ボタン、103…撮像装置エリアボタン、104…清掃状況更新ボタン、105…レポート作成ボタン、111…清掃開始日時、112…清掃終了日時、113…カメラ識別情報、114…レポート作成日時、120…清掃状況画面、121…清掃済み範囲、122、122a…未清掃範囲、150…検知領域、151…小領域、300…コンピュータシステム、302…プロセッサ、302A、302B…処理装置、304…メモリ、306…メモリバス、308…I/Oバス、309…バスインターフェース、310…I/Oバスインターフェース、312…端末インターフェース、314…ストレージインターフェース、316…I/Oデバイスインターフェース、318…ネットワークインターフェース、320…ユーザI/Oデバイス、322…ストレージ装置、324…表示システム、326…表示装置、330…ネットワーク、350…アプリケーション、A001…検知小領域、C001…清掃者、F001…移動方向、K001…清掃道具