IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アリババ グループ ホウルディング リミテッドの特許一覧

特許7448726デカップリングされたハミルトニアンを使用した量子回路のシミュレーションのためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】デカップリングされたハミルトニアンを使用した量子回路のシミュレーションのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20240305BHJP
【FI】
G06N10/20
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023526197
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2020130302
(87)【国際公開番号】W WO2022104671
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511050697
【氏名又は名称】アリババ グループ ホウルディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ディング,ダウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,フイハイ
(72)【発明者】
【氏名】シ,ヤオユン
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-521235(JP,A)
【文献】特表2019-531008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0283857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/20
G06N 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするための方法であって、
量子回路の表現を取得することと、
前記量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、前記変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことと、
前記変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、
前記変換された結合ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することであって、前記変換された結合ハミルトニアンは前記変換された局所ハミルトニアンのモードで表されることと、
前記変換された局所ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することと、
前記変換された結合ハミルトニアンの前記射影と前記変換された局所ハミルトニアンの前記射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、
前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して前記量子回路の挙動を前記コンピュータによってシミュレートすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記変換されたハミルトニアンを生成することは、
少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンおよび対応する結合値を繰り返し生成することであって、繰り返しは、
前記量子回路のスパニングツリーを選択すること、
前記スパニングツリーを使用して前記量子回路の元のハミルトニアンを決定することであって、前記元のハミルトニアンは電荷結合行列および磁束結合行列を含むこと、
前記元のハミルトニアンの前記モードの線形変換を決定すること、
前記線形変換を使用して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成すること、および
前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの対応する結合値を決定すること、
を含むことと、
前記対応する結合値に基づいて前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを前記変換されたハミルトニアンとして選択することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線形変換はブロック対角シンプレクティック行列に依存し、前記ブロック対角シンプレクティック行列は第1の部分行列および第2の部分行列を含み、前記第2の部分行列は前記第1の部分行列の関数である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記線形変換を使用して前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することは、前記ブロック対角シンプレクティック行列を使用して前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を対角化することを含み、
前記対応する結合値は、前記元のハミルトニアンの接合モードに対応する前記第1の部分行列の行に依存する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記線形変換を使用して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することは、
前記ブロック対角シンプレクティック行列を使用して第1の変換行列を生成することと、
前記第1の変換行列を使用して前記電荷結合行列の部分行列を対角化することによって前記電荷結合行列を変換することであって、前記電荷結合行列の前記部分行列は前記元のハミルトニアンのインダクタモードに対応することと、
前記ブロック対角シンプレクティック行列を使用して第2の変換行列を生成することと、
前記磁束結合行列の部分行列を対角化することによって前記磁束結合行列を変換することであって、前記磁束結合行列の前記部分行列は前記インダクタモードに対応することと、
を含み、
前記対応する結合値は、前記変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列の非対角要素に依存する、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記線形変換を決定することは、
回転行列の軸の周りの回転を反復的に決定することによって前記回転行列を生成することであって、前記軸は前記元のハミルトニアン内のインダクタモードに対応すること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記ブロック対角シンプレクティック行列を生成することをさらに含み、生成は、
前記磁束結合行列および前記電荷結合行列を含む初期ブロック対角行列を決定することと、
前記初期ブロック対角行列に基づいてエルミート行列を決定することと、
前記エルミート行列の固有基底と、前記固有基底に対応する固有値の行列とを決定することと、
前記初期ブロック対角行列と、前記エルミート行列の前記固有基底と、前記対応する固有値の行列とを使用して、前記ブロック対角シンプレクティック行列を決定することと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記変換されたハミルトニアンを生成することは、前記量子回路に対応する元のハミルトニアンを少なくとも部分的にデカップリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記元のハミルトニアンを少なくとも部分的にデカップリングすることは、前記元のハミルトニアンの二次部分の少なくとも1つのインダクタモードを対角化することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするためのシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、前記システムに動作を実行させる命令を含む少なくとも1つのコンピュータ可読媒体と、
を備え、前記動作は、
量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、前記変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含み、生成は、
前記量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得すること、および
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化すること、
を含むことと、
前記変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、
前記変換された局所ハミルトニアンのモードで表される前記変換された結合ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することと、
前記変換された局所ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することと、
前記変換された結合ハミルトニアンの前記射影と前記変換された局所ハミルトニアンの前記射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、
前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して前記量子回路の挙動をシミュレートすることと、
を含む、システム。
【請求項11】
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を前記少なくとも部分的に対角化することは、
回転行列の軸について反復することによって前記回転行列を生成することを含み、
前記軸は前記元のハミルトニアンのインダクタモードに対応し、前記軸のうちの1つの周りの反復は、
前記軸のうちの前記1つの周りの回転を実装するように前記回転行列を更新すること
を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列の非対角項の関数の値が終了条件を満たすまで、前記回転行列の前記軸について反復される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を前記少なくとも部分的に対角化することは、
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を使用してブロック対角行列を生成することと、
前記ブロック対角行列を対角化するブロック対角シンプレクティック行列を生成することと、
前記ブロック対角シンプレクティック行列を使用して変換行列を生成することと、
前記変換行列を使用して前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を変換することと、
を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記ブロック対角シンプレクティック行列を生成することは、
前記ブロック対角行列に基づいてエルミート行列を決定することと、
前記エルミート行列の固有基底と、前記固有基底に対応する固有値の行列とを決定することと、
前記ブロック対角行列と、前記エルミート行列の前記固有基底と、前記対応する固有値の行列とを使用して、前記ブロック対角シンプレクティック行列を決定することと、
を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記量子回路内の各ジョセフソン接合はインダクタによってシャントされる、
請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記変換行列は、前記磁束結合行列が正定値であるという判定に応答して生成される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記変換行列は、
単位部分行列と、
前記ブロック対角シンプレクティック行列の部分行列の逆行列と、
の2つの部分行列を含むブロック対角行列を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記ブロック対角行列は、前記元のハミルトニアンのインダクタモードに対応する前記電荷結合行列および前記磁束結合行列の部分行列のみを含む、
請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記変換された局所ハミルトニアンは変換されたジョセフソン接合項を含み、または、
前記変換されたハミルトニアンの前記磁束結合行列および電荷結合行列は同一である、
請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能であり、前記システムに動作を実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記動作は、
量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、前記変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含み、生成は、
前記量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得すること、
前記電荷結合行列および前記磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化すること、
を含むことと、
前記変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、
前記変換された局所ハミルトニアンのモードで表される前記変換された結合ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することと、
前記変換された局所ハミルトニアンを前記限定された固有基底に射影することと、
前記変換された結合ハミルトニアンの前記射影と前記変換された局所ハミルトニアンの前記射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、
前記少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して前記量子回路の挙動を、ビットを処理するコンピュータによって、シミュレートすることと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本開示は一般に量子コンピューティングに関し、より詳細には、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用した古典コンピュータによる量子回路のシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
[002] 量子コンピュータの設計および検証は古典コンピュータを使用して実行しなければならないが、量子コンピュータは、古典コンピュータでは実行不可能な特定のタスクを実行するように構築されるので、問題が発生する。たとえば、量子コンピュータの設計がより高度になり、より大規模な量子回路を含むようになるにつれて、単純なシミュレーション技術は計算的に実行不可能になる。たとえば、0-π量子ビットなどの量子ビット設計には3つの自由度、すなわちモードが含まれるので、複数のそのような量子ビットのシミュレーションには6つ以上のモードが含まれることになる。さらに、量子ビットを超える量子コンピュータ設計のコンポーネントもシミュレーションを必要とし得る。したがって、そのような量子回路をシミュレートする単純な方法ではハミルトニアンが高次元になり、量子コンピュータ設計の挙動をシミュレートするために対角化またはべき乗することが困難になる。
【発明の概要】
【0003】
[003] 開示したシステムおよび方法は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用した量子回路のシミュレーションに関する。この少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンは、量子回路に関連する元のハミルトニアン(original Hamiltonian)の線形変換を使用して生成することができる。
【0004】
[004] 開示した実施形態は、ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするための方法を含む。この方法は、量子回路の表現を取得することを含むことができる。この方法は、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することをさらに含むことができる。変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことができる。この方法は、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することをさらに含むことができる。この方法は、変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することであって、変換された結合ハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンのモードで表されることをさらに含むことができる。この方法は、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することをさらに含むことができる。この方法は、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することをさらに含むことができる。この方法は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をコンピュータによってシミュレートすることをさらに含むことができる。
【0005】
[005] 開示した実施形態は、ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするためのシステムを含む。このシステムは、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体と、を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、システムに動作を実行させる命令を含むことができる。動作は、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することを含むことができる。変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことができる。変換されたハミルトニアンの生成は、量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得することと、電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することと、を含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することをさらに含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンのモードで表される変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することをさらに含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することをさらに含むことができる。動作は、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することをさらに含むことができる。動作は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をシミュレートすることをさらに含むことができる。
【0006】
[006] 開示した実施形態は、システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能であり、システムに動作を実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体を含む。動作は、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することを含むことができる。変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことができる。変換されたハミルトニアンの生成は、量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得することと、電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することと、を含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することをさらに含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンのモードで表される変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することをさらに含むことができる。動作は、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することをさらに含むことができる。動作は、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することをさらに含むことができる。動作は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動を、ビットを処理するコンピュータによって、シミュレートすることをさらに含むことができる。
【0007】
[007] 前述の概要説明および以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求する開示した実施形態を限定するものではないことを理解されたい。
【0008】
[008] 本明細書の一部を構成する添付図面は、いくつかの実施形態を示し、本説明と共に、開示した実施形態の原理および特徴を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】[009]開示した実施形態による、量子回路を表す例示的な図である。
図1B】[010]開示した実施形態による、図1Aの量子回路のコンポーネントの値を示す図である。
図1C】[010]開示した実施形態による、図1Aの量子回路のコンポーネントの値を示す図である。
図1D】[011]開示した実施形態による、図1Aの量子回路の例示的な電荷結合行列を示す図である。
図1E】[011]開示した実施形態による、図1Aの量子回路の例示的な磁束結合行列を示す図である。
図2A】[012]開示した実施形態による、図1Aの量子回路のモードごとのエネルギー準位に応じた状態エネルギーのプロットである。
図2B】[012]開示した実施形態による、図1Aの量子回路のモードごとのエネルギー準位に応じた遷移エネルギーのプロットである。
図3A】[013]開示した実施形態による、古典コンピュータを使用して量子回路をシミュレートするための例示的なプロセスのフローチャートである。
図3B】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3C】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3D】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3E】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3F】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3G】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3H】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3I】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図3J】[014]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの構築に関与する例示的な式を示す図である。
図4】[015]開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための変換されたハミルトニアンを選択するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図5A】[016]開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的な同時近似対角化プロセスのフローチャートである。
図5B】[017]開示した実施形態による、図5Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換行列を示す図である。
図5C】[017]開示した実施形態による、図5Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換された電荷結合行列を示す図である。
図5D】[017]開示した実施形態による、図5Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換された磁束結合行列を示す図である。
図5E】[018]開示した実施形態による、図5B図5Dの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた状態エネルギーのプロットである。
図5F】[018]開示した実施形態による、図5B図5Dの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた遷移エネルギーのプロットである。
図6A】[019]開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的なインダクタのみのシンプレクティック対角化プロセスのフローチャートである。
図6B】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6C】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6D】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6E】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6F】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6G】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6H】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6I】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6J】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6K】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6L】[020]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図6M】[021]開示した実施形態による、図6Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換行列を示す図である。
図6N】[021]開示した実施形態による、図6Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換された電荷結合行列を示す図である。
図6O】[021]開示した実施形態による、図6Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換された磁束結合行列を示す図である。
図6P】[022]開示した実施形態による、図6M図6Oの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた状態エネルギーのプロットである。
図6Q】[022]開示した実施形態による、図6M図6Oの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた遷移エネルギーのプロットである。
図7A】[023]開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的な完全なシンプレクティック対角化プロセスのフローチャートである。
図7B】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7C】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7D】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7E】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7F】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7G】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7H】[024]開示した実施形態による、インダクタのみのシンプレクティック対角化に関与する例示的な式を示す図である。
図7I】[025]開示した実施形態による、図7Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換行列を示す図である。
図7J】[025]開示した実施形態による、図7Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換された電荷結合行列および磁束結合行列を示す図である。
図7K】[025]開示した実施形態による、図7Aのプロセスを図1Aの量子回路に適用することによって生成された変換行列ならびに変換された電荷結合行列および磁束結合行列を示す図である。
図7L】[026]開示した実施形態による、図7I図7Kの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた状態エネルギーのプロットである。
図7M】[026]開示した実施形態による、図7I図7Kの変換されたハミルトニアンを使用して生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモードごとのエネルギー準位に応じた遷移エネルギーのプロットである。
図8】[027]開示した実施形態による、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路をシミュレートするのに適した古典コンピュータを示す図である。
図9】[028]本開示のいくつかの実施形態と一致する、例示的な量子回路シミュレータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[029] ここで、添付の図面に関連して論じる例示的な実施形態を詳細に参照する。場合によっては、図面および以下の説明全体を通じて、同じまたは類似の部分を指すために同じ参照番号を使用する。他に定義していない限り、技術用語または科学用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。開示した実施形態は、当業者が開示した実施形態を実践できるように十分に詳細に説明している。他の実施形態が利用され得、開示した実施形態の範囲から逸脱することなく変更が加えられ得ることを理解されたい。したがって、材料、方法、および例は例示的なものにすぎず、必ずしも限定することを意図したものではない。
【0011】
[030] 量子コンピュータは、将来的に可能性のあるあらゆる古典コンピュータを含めて、古典コンピュータでは困難であると考えられている特定のタスクを実行する(言い換えれば、特定の問題を解決する)能力を提供する。量子コンピュータの利点を理解するには、古典コンピュータとの違いを理解することが有用である。古典コンピュータはデジタル論理に従って動作する。デジタル論理とは、ビットと呼ばれる情報の単位で動作するタイプの論理システムを指す。ビットは、通常0および1で表される2つの値のうちの1つを有し得、デジタル論理における情報の最小単位である。演算は論理ゲートを使用してビットに対して実行され、論理ゲートは1つまたは複数のビットを入力として受け取り、1つまたは複数のビットを出力として与える。典型的には、論理ゲートは出力として1ビットのみを有し(ただし、この単一のビットは他の複数の論理ゲートに入力として送られ得る)、このビットの値は通常、入力ビットのうちの少なくとも一部の値に依存する。現代のコンピュータでは、論理ゲートは通常トランジスタで構成され、ビットは通常、トランジスタに接続されたワイヤの電圧レベルとして表される。論理ゲートのシンプルな例はANDゲートであり、これは(最もシンプルな形態では)2ビットを入力として受け取り、1ビットを出力として与える。両方の入力の値が1の場合、ANDゲートの出力は1であり、それ以外の場合は0である。様々な論理ゲートの入力および出力を相互に特定の方法で接続することにより、古典コンピュータは任意の複雑なアルゴリズムを実装して様々なタスクを実現することができる。
【0012】
[031] 表面的なレベルでは、量子コンピュータは古典コンピュータと同じように動作する。量子コンピュータは、量子ビット(「量子」および「ビット」の混成語)と呼ばれる情報の単位で動作する論理のシステムに従って動作する。量子ビットは量子コンピュータにおける情報の最小単位であり、量子ビットは、通常|0>および|1>で表される2つの値の任意の線形結合を有し得る。換言すれば、|ψ>で表される量子ビットの値は、αおよびβの任意の組み合わせに対してα|0>+β|1>に等しくなり得、ここで、αおよびβは複素数であり、|α|+|β|=1である。演算は量子論理ゲートを使用して量子ビットに対して実行され、量子論理ゲートは1つまたは複数の量子ビットを入力として受け取り、1つまたは複数の量子ビットを出力として与える。現在のほとんどの量子系の低レベルでの性質を考慮して、量子アルゴリズムは、典型的にはその基礎となる量子回路で表現される。転じて、量子回路は、量子ビットを直接操作する基本コンポーネントである量子ゲートで構成される。
【0013】
[032] 超伝導量子回路は、量子コンピューティングを実現するための主要なプラットフォームの1つである。多くの既存の設計が存在するが、量子情報を記憶および処理するための新しい回路の設計は依然として活発な研究分野である。設計プロセスにおける重要な工程の1つは、古典コンピュータ上で量子回路のダイナミクスをシミュレートできるようにすることであり得る。しかしながら、大規模な量子回路のシミュレーションは非常に困難であり得る。実際、だからこそ、量子コンピュータは古典コンピュータでは困難な計算タスクを完了することができる。この障害にもかかわらず、量子ビットがどのように挙動し、相互に作用するかを理解するために、小規模な量子回路をシミュレートすることが望ましいことに変わりはない。
【0014】
[033] 現在、多くの既存の設計では、1つまたは少数の量子ビットの回路は十分にシンプルであるので、直接的な数値シミュレーション技術を使用することができる。具体的には、回路のハミルトニアンは容易に対角化することができる。しかしながら、量子ビット設計がより高度になり、より大規模な回路が含まれるようになるにつれて、これらの単純なシミュレーション技術はもはや適切ではなくなる。たとえば、0-π量子ビットなどのより高度な量子ビット設計には3つの自由度、すなわちモードが含まれるので、複数のそのような量子ビットのシミュレーションには6つ以上のモードが含まれることになる。さらに、多くの場合、共振器空洞もシミュレーションに含める必要がある。この回路のヒルベルト空間を離散化する単純な方法ではハミルトニアンが非常に高次元になり、時間発展のために対角化またはべき乗することが困難になり得る。問題は、どのようにして量子回路を計算効率の高い方法で解析するか、ということになる。
【0015】
[034] 摂動論は、弱結合した量子回路の計算効率の高い解析のアプローチを提供する。一般に、ハミルトニアンHは、図3Bに示すように、Hlocal(全ての局所項からなる)とHcouple(全ての結合項からなる)との和として表すことができる。結合項の大きさが局所項と比較して小さい場合(たとえば、HlocalのノルムがHcoupleのノルムよりはるかに大きい場合)、Hcoupleは摂動として扱うことができる。
【0016】
[035] このアプローチによれば、Hlocalを対角化することができる。いくつかの場合では、1自由度の量子系のための標準的な数値的技術を使用して、各局所ハミルトニアンを対角化することができる。そして、Hの低エネルギー固有状態は近似的にHlocalの低エネルギー固有状態のみを含み、HをHlocalの低エネルギー固有空間に射影すると、Hの低エネルギースペクトルおよび固有状態が近似的に保存される。Hcoupleは局所演算子のテンソル積の和として表すことができ、これは対応する局所ハミルトニアンの固有基底で表すことができる。高エネルギー固有状態を含むHcoupleの成分を破棄することができる。最後に、Hlocalの最初のいくつかの固有状態への射影を切り捨て後のHcoupleに加算することができる。結果として得られたハミルトニアンは、低エネルギー固有空間でのHを近似することができる。
【0017】
[036] ハミルトニアンがHをどれほど良好に近似するかは、ハミルトニアンのモード間の結合と、固有基底に含まれる固有状態の数とに依存し得る。一般に、所望の精度を達成するには、結合度が高くなるほど、より多くの固有状態を含める必要がある。しかしながら、近似ハミルトニアンに含まれる固有状態が多くなるほど、量子回路のシミュレーションに必要な計算リソースが多くなる。
【0018】
[037] 開示した実施形態は、モード間結合を低減するように回路モードを線形変換する方法に関する。変換されたモードのハミルトニアンに摂動論を適用することにより、この変換されたハミルトニアンは、変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンとして表すことができる。上述のように、変換された結合ハミルトニアンは、変換された局所ハミルトニアンの固有基底上に射影することができる。その場合、数値的方法(たとえば、Lanczosアルゴリズムまたは他の適切な方法)を使用して低エネルギー状態を発見または計算することができ、量子回路の低エネルギー特性を良好な近似値で得ることが可能になる。
【0019】
[038] 量子回路モードの開示した線形変換は、量子回路のハミルトニアン(これは標準的な回路量子化技術を通じて得ることができる)から計算することができる。ハミルトニアンは、容量項、誘導項、および(ジョセフソン)接合項からの寄与を含むことができる。モード間結合項は全て容量項および誘導項内にあり、これらは、自己結合(たとえば、局所項)を含むモード間の電荷結合および磁束結合を記述する結合行列によってまとめることができる。このアルゴリズムは回路モードに対する様々な線形変換を計算し、これにより結合行列を効果的に変換して、結合項の係数である非対角項を低減する。
【0020】
[039] 開示した線形変換は、モードの磁束演算子および電荷演算子に影響を及ぼす。変換された演算子は依然として正準交換関係に従う。開示した1つの変換は、結合を低減するための最適化ループを使用してインダクタモードの磁束演算子および電荷演算子の両方に対して同じ直交変換を実行する。開示した他の変換は、インダクタモードに対応する結合行列の部分行列を対角化する。これはウィリアムソンの定理によって可能である。開示した第3の変換は、接合項を介して変換されたモード間に磁束結合が導入されることを犠牲にして、両方の結合行列を完全に対角化する。
【0021】
[040] 図1Aは、開示した実施形態による、シミュレーションに適した量子回路を表す例示的な図を示している。この量子回路は、2つの強く誘導結合した量子ビットを含む。わかりやすくするために、エッジ[1,3]、[1,4]、[2,3]、[2,4]、[1,5]、[4,6]のキャパシタは含めていない。この量子回路のコンポーネントのキャパシタンスおよびインダクタンスの値をそれぞれ図1Bおよび図1Cに示す。これらのパラメータを使用し、また、以下の段落0022~0088に開示するようにフリーモードを除去した後、図3Cで与えられるハミルトニアンを得ることができる。
【0022】
[041] 当業者には理解されるように、量子回路の元のハミルトニアンは様々な方法で導出することができる。非限定的な例として、一般的な超伝導量子回路のハミルトニアンは、「Circuit theory for decoherence in superconducting charge qubits」、G.Burkard、Physical Review B、2005年4月に開示された方法を使用して導出することができ、これによりその全体が引用により本明細書に組み込まれ、本開示ではBurkardと呼ぶことにする。Burkardでは、一般的な超伝導量子回路(たとえば、量子回路201)の導出された散逸なしのハミルトニアンは以下の形をとる。
【0023】
【数1】
【0024】
[042] ここで、
【0025】
【数2】

および
【0026】
【数3】

は、量子回路201の回路モードの磁束演算子および電荷演算子のベクトルである。
【0027】
【数4】

は外部から印加される磁束を示し、Φは磁束量子であり、Φは磁束変数である。
【0028】
【数5】

は量子回路201における電圧バイアスのベクトルであり、C-1、M、N、およびCはそれぞれ、電荷結合行列、磁束結合行列、外部磁束結合行列、および電圧結合行列である。nはジョセフソン接合の数であり、EJ,iは各ジョセフソン接合の特徴的エネルギースケール(characteristic energy scale)である。
【0029】
[043] いくつかの実施形態では、量子回路201のフリーモードの数Fは、次のように与えることができる。
F≡dim(ker(M)∩ker(N)∩V) (式2)
【0030】
[044] ここで、Vはインダクタ磁束によって張られる部分空間である。式2に示すように、フリーモードの数Fは、磁束結合行列Mのカーネルと、転置された外部磁束結合行列Nのカーネルと、量子回路201のインダクタ磁束によって張られる部分空間Vとに共通する部分空間の次元として定義することができる。いくつかの実施形態では、量子回路201のモードは、無視できるほど小さいポテンシャル項を有し得る。そのような場合、どのモードもフリーではない場合があるが、閾値基準を満たすモードはフリーモードであると見なすことができる。たとえば、閾値未満のポテンシャル値を有するハミルトニアン内のモードは、モードのポテンシャル値がゼロではない場合があるが、フリーモードとして扱うことができる。
【0031】
[045] 本開示のいくつかの実施形態によれば、磁束演算子
【0032】
【数6】

および電荷演算子
【0033】
【数7】

は、導出されたハミルトニアンにおいてフリーモードを明示的にすることができるような形にすることができる(たとえば、式1として表される)。いくつかの実施形態では(たとえば、式2の部分空間の共通部分を対角化する適切な変換を介して)、磁束演算子
【0034】
【数8】

【0035】
【数9】

として表すことができ、ここで、Φ,...,Φはフリーモードの磁束演算子であり、ΦF+1,...,Φは非フリーモードの磁束演算子であり、nはハミルトニアン内のモードの総数である。同様に、電荷演算子
【0036】
【数10】

【0037】
【数11】

として表すことができ、ここで、Q,...,Qはフリーモードの電荷演算子であり、QF+1,...,Qは非フリーモードの電荷演算子である。磁束演算子
【0038】
【数12】

および電荷演算子
【0039】
【数13】

のこの表現と一致して、外部磁束結合行列Nの最初のF行ならびに磁束結合行列Mの最初のF行および最初のF列の要素は全てゼロであり得る。
【0040】
[046] いくつかの実施形態では、たとえば、量子回路201の回路モードを線形変換して電荷結合行列C-1の逆行列(たとえば、C)に対してガウス消去法を効果的に実行することによって、フリーモードを非フリーモードからデカップリングした変換されたハミルトニアンを得ることができる。次いで、正準変換の要件に従って、同じガウス消去法を磁束結合行列Mに対して実行することができる。したがって、変換されたハミルトニアンは、元のハミルトニアンと同じ数のフリーモードを有することになる。次いで、変換されたハミルトニアンからフリーモードを除去することによって、抽出されたハミルトニアンを得ることができる。
【0041】
[047] 開示した実施形態と一致して、電荷結合行列C-1においてフリーモード成分を非フリーモード成分からデカップリングすることができるような変換行列Wを定義することができる。電荷結合行列C-1は、量子回路201の実効キャパシタンス行列Cの逆行列とすることができ、Cは正定値とすることができる。f∈{1,2,...,F}について、行列WおよびCを反復的に定義することができる。行列Wは、以下のエントリを有する列fを除いて、n×nの単位行列として定義することができ、
【0042】
【数14】

ここで、行列C
【0043】
【数15】

として定義される。行列Cは、量子回路201の実効キャパシタンス行列Cとして定義することができる。行列Cf-1は正定値であるので、行列Wがwell-definedであることを帰納法で証明することができる(したがって、要素(Cf-1ffはゼロではない)。まず、Burkardによって求められるとおり、行列C≡Cを正定値とすることができる。第2に、行列Cf-1が正定値であると仮定すると、要素(Wff=-1であるので、行列Wはwell-definedである。したがって、行列Wの第f列は、行列Wの他の列とは線形独立である(Wの他の列は定義により単位行列を構成するため)。したがって、Wはフルランクを有し、これは行列
【0044】
【数16】

も正定値であることを意味する。
【0045】
[048] 最終的な行列は次のようになる。
C’≡WCW (式3)
ここで、
【0046】
【数17】

は、最初のF行および列に消滅する非対角要素を有し、これは以下のように検証することができる。行列Cの第f列の非対角エントリは次のように計算することができる。
【0047】
【数18】
【0048】
[049] 行列Cの対称性により、行列Cの第f行の非対角エントリも消滅し、すなわち、ゼロになる。第1行~第f-1行および第1列~第f-1列の行列Cの非対角項も消滅することも示すことができ、これは帰納法によって立証することができる。まず、これは行列Cに当てはまる。第2に、同じことが行列Cにも当てはまると仮定し、これは要素(Cif+1=0(i<f+1について)を意味し、これは同じことが行列Wf+1にも当てはまる、すなわち、(Wf+1if+1=0(i<f+1について)であることを意味する。対称性により、同じことが行列Cの第f+1行にも当てはまり、同じことが行列Wf+1にも当てはまる。したがって、行列CおよびWf+1の両方、ひいては行列
【0049】
【数19】

は、ブロック次元1,...,1,n-fのブロック対角行列になり、これは同じことが行列Cf+1にも当てはまることを意味する。
【0050】
[050] 上記で立証したように、全ての行列Wはフルランクであるため可逆であり、これは変換行列Wが可逆であることを意味する。したがって、変換された電荷結合行列
C’-1=(W-1-1-1 (式4)
はwell-definedである。変換された電荷行列C’はブロック次元1,...,1,n-Fのブロック対角行列であるので、変換された電荷結合行列C’-1もブロック次元1,...,1,n-Fのブロック対角である。
【0051】
[051] さらに、F(フリーモードの数)より大きいインデックスに対応する電荷結合行列C-1および変換された電荷結合行列C’-1の部分行列は同じである。これは次のように証明することができる。
【0052】
【数20】

が成立し、その理由は、i=jの場合、
【0053】
【数21】

であり、i≠jの場合、
【0054】
【数22】

であるためであり、ここで、δjf((Wif-(Wif)が続くのは、i≠jかつi≠fであるためである。ここで、j=fの場合はδjf=1であり、j≠fの場合はδjf=0である。
【0055】
[052] i,j>Fについて、以下の関係が成立する。
【0056】
【数23】
【0057】
[053] そのため、Fより大きいインデックスに対応する電荷結合行列C-1および変換された電荷結合行列C’-1の部分行列は同じである。したがって、この線形変換は、元のハミルトニアンの非フリーモードの電荷結合に影響を与えない。
【0058】
[054] 電荷演算子
【0059】
【数24】

の線形変換は次のように定義することができる。
【0060】
【数25】
【0061】
[055] ハミルトニアン内の正準共役量間の以下の正準交換関係
【0062】
【数26】

を維持するために、磁束演算子
【0063】
【数27】

も次のように変換することができる。
【0064】
【数28】
【0065】
[056] これにより、正準交換関係が維持される。i>Fについて、Φ=ΣjiΦ’=Φ’であり、ここで、
【0066】
【数29】

は変換された磁束演算子である。したがって、開示した実施形態と一致して、変換された磁束は元の非フリーモードの磁束を含む。したがって、変換されたモードでのハミルトニアンにおいてフリーモードを除去することによって、元の非フリーモードのハミルトニアンを明示的に得ることができる。さらに、ハミルトニアン内の接合項は保存され、局所項(たとえば、局所演算子のテンソル積の和として表すことができる、複数のモードに関与する一般的な項とは対照的な、単一モードに関与する項)のままになる。
【0067】
[057] 開示した実施形態と一致して、磁束モードの線形変換は、次のような磁束結合行列の対応する変換を意味する。
→WM (式7)
【0068】
[058] しかしながら、この変換は、以下に示すように、磁束結合行列の要素値に影響を与えない。
【0069】
【数30】
【0070】
[059] その理由は、Mの第f行および第f列が両方とも0であるためである。したがって、
=WM
である。
【0071】
[060] したがって、変換された磁束結合行列は元の磁束結合行列と同じである。
【0072】
[061] 同様の結果が外部磁束結合行列Nにも当てはまる。磁束モードの線形変換は、次のような外部磁束結合行列の対応する線形変換を意味する。
N→WN (式8)
【0073】
[062] しかしながら、
【0074】
【数31】

である。
【0075】
[063] したがって、N=WNであり、外部磁束結合行列は磁束モードの線形変換の影響を受けない。変換された外部磁束結合行列Nの最初のF個のモードはフリーモードであり、モードのうちの残りのモード(すなわち、非フリーモード)の磁束結合および外部磁束結合は同じままである。
【0076】
[064] この線形変換は、次のような電圧結合行列Cの対応する線形変換を意味する。
→WC (式9)
【0077】
[065] 本開示のいくつかの実施形態によれば、式3~式9に基づいて、式1のハミルトニアンは、次のように変換されたモードで表すことができる。
【0078】
【数32】
【0079】
[066] ここで、式10で表される変換されたハミルトニアンは、他の全てのモードから独立したF個のフリーモードを有するn個のモードの系を記述する。したがって、本開示のいくつかの実施形態によれば、式10のハミルトニアンからフリーモードの電荷に対応する項を除去することによって、元の非フリーモードのハミルトニアンを抽出することができる。
【0080】
[067] 図9を参照すると、ハミルトニアン抽出ユニット222は、たとえば、フリーモードに対応する変換されたハミルトニアンの成分を除去することによって、量子回路201の抽出されたハミルトニアンを生成するように構成することができる。抽出されたハミルトニアンは次のように表すことができる。
【0081】
【数33】
【0082】
[068] 式11において、下付き文字\Fは、フリーモードに対応する成分が対応する演算子または行列から除去されていることを意味する。本開示のいくつかの実施形態によれば、外部磁束結合行列Nおよび変換された電圧結合行列C’について、記号\Fは変換されたハミルトニアンのフリーモードに対応する行を除去することを意味し得る。
【0083】
[069] 開示した実施形態と一致して、式11の抽出されたハミルトニアンH\Fは、Vに比例する恒等項を含まない場合がある(ここで、Vは回路内の電圧バイアスのベクトルである)。いくつかの実施形態では、この項はハミルトニアンのシフトのみに寄与し得、無視することができる。
開示した実施形態と一致して、抽出されたハミルトニアンH\FにおけるVに比例する駆動項は
【0084】
【数34】

に等しくなり得る。以下に示すように、この関係は、変換された電荷結合行列C’-1のブロック対角型の性質、および電荷結合行列C-1の部分行列と、元のハミルトニアンの非フリーモードに対応する変換された電荷結合行列C’-1の抽出された部分との間の等価性から得ることができる。この関係の裏付けとして、フリーモードを含む次の駆動項を考える。
【0085】
【数35】
【0086】
[070] この駆動項からフリーモードを除去することは、変換された電荷結合行列C’-1の最初のF列と、変換された電荷演算子
【0087】
【数36】

の最初のFエントリとを除去することと等価である。変換された電荷結合行列C’-1はブロック対角行列であるので、最初のF行は、変換された電荷結合行列C’-1の最初のF列が除去されると、全て0になる。したがって、変換された電荷結合行列C’-1の最初のF行、および変換された電圧結合行列C’の最初のF行も除去することができる。上記で説明したように、フリーモードを除去した後の変換された電荷結合行列C’-1の残りの部分行列は、電荷結合行列C-1の部分行列と同じであるので、抽出されたハミルトニアンH\Fの駆動項は式11のように表すことができる。
【0088】
[071] 開示された実施形態と一致して、また、本明細書で提供する抽出されたハミルトニアンの導出に従って、元のハミルトニアン内のフリーモード項を除去し、式9に示すように電圧結合行列Cを変換することによって、抽出されたハミルトニアンを得ることができる。電圧結合行列を変換することにより、いくつかの実施形態において、電圧源を使用する場合に、元のハミルトニアンの代わりに、抽出されたハミルトニアンを使用する解析によって正しい結果が提供されるようになり得る。
【0089】
[072] 結合行列C-1およびM図1Dおよび図1Eで与えられる。ハミルトニアン内の結合項は、これらの行列の非対角項に対応する。非対角項の二乗和は9.61e10である。この非限定的な例では、定数EJAおよびEJBは次のように定義され、すなわち、EJA=3.0GHZ・hおよびEJB=3.2GHZ・hである。ハミルトニアンは直接対角化することができ、低エネルギー状態のエネルギー(図2A)と、低エネルギー状態間の差異(図2B)とを、全体のハミルトニアンが射影された局所ハミルトニアンの低エネルギーの固有空間に応じてプロットしている。次元は個々のモードごとのものであるので、全体の次元はdである(この系には5つのモードが存在するため)。
【0090】
[073] 結合が小さい場合、エネルギーは局所次元の増加と共に迅速に収束するはずである。この非限定的な例では、デカップリング技術は適用されておらず、状態エネルギーは迅速に収束しない(たとえば、固有基底内の固有ベクトルの数が17を超えて増加するにつれて減少し続ける)。状態エネルギーが収束していないので、低エネルギー状態間の差異は信頼できない。本明細書に開示したシステムおよび方法は、この基本結果を改善する方法を提供することにより、固有基底における固有ベクトルの数の増加と共により迅速に収束する状態エネルギーおよびエネルギー遷移を有する少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを可能にする。
【0091】
[074] 図3Aは、開示した実施形態による、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をシミュレートするためのプロセス300を示している。プロセス300は、量子回路が古典コンピュータでは実際には実行できない計算を実行するように構成される場合でも、古典コンピュータが量子回路の挙動をシミュレートできるようにすることができる。したがって、プロセス300は、量子回路の設計または検証における技術的改善を提供する。いくつかの実施形態では、コンピュータは、量子回路の挙動をシミュレートすることに加えて、プロセス300の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成することができる。コンピュータは、これらの工程を自動的に実行するか、または少なくとも部分的にユーザとのやりとりを通じて実行するように構成することができる。
【0092】
[075] プロセス300の工程301において、量子回路の表現を取得することができる。いくつかの実施形態では、この表現は量子回路の設計(たとえば、回路図など)とすることができる。この表現は、量子回路のコンポーネントと、そのようなコンポーネントがどのように相互接続されるかとを指定するデータまたは命令を含むことができる。いくつかの実施形態では、この表現は、プロセス300の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成されるコンピュータによって取得することができる。この表現は、プロセス300を実行するためのプログラムへの入力として取得することができる。この入力は、入力がどのように表現されているか(たとえば、関与するデータ構造)、入力が何を表すか(たとえば、入力がどのような量子回路表現を使用しているか)の両方において、様々な形で到来し得る。他の実施形態では、量子回路は、プロセス300を実行するためのプログラム内で直接作成することができる。いくつかの実施形態では、量子回路は、他のシステムから受信することも、またはコンピュータがアクセス可能なメモリから取り出すこともできる。回路は1つまたは複数の量子ビットを含むことができる。
【0093】
[076] プロセス300の工程303において、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することができる。変換されたハミルトニアンは、元のハミルトニアンから生成することができる。いくつかの実施形態では、変換されたハミルトニアンのモードは、元のハミルトニアンのモードの線形結合とすることができる。変換されたハミルトニアンは、本明細書に記載のように、少なくとも部分的に対角型である電荷結合行列および磁束結合行列を含むことができる。変換されたハミルトニアンは、変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことができる。いくつかの実施形態では、単一の変換されたハミルトニアンを生成することができる。様々な実施形態において、(たとえば、図4に関して説明するように)複数の変換されたハミルトニアンを生成することができ、変換されたハミルトニアンのうちの1つを選択することができる。変換されたハミルトニアンは、図5A図6A、および図7Aに関して説明する方法のうちの少なくとも1つを使用して生成することができる。
【0094】
[077] 量子回路の元のハミルトニアンは様々な方法で導出できることは理解される。非限定的な例として、一般的な超伝導量子回路のハミルトニアンは、「Circuit theory for decoherence in superconducting charge qubits」、G.Burkard、Physical Review B、2005年4月に開示されている方法を使用して導出することができ、これによりその全体が引用により本明細書に組み込まれる。この論文では、導出された散逸なしのハミルトニアンは図3Cに示す形をとり、ここで、
【0095】
【数37】

および
【0096】
【数38】

は回路の異なるモードの磁束演算子および電荷演算子のベクトルであり、
【0097】
【数39】

は回路内の電圧バイアスのベクトルであり、C-1、M、N、Cはそれぞれ電荷結合、磁束結合、外部磁束結合、および電圧結合の行列であり、nはジョセフソン接合の数であり、EJ,iは各接合の特徴的エネルギースケールであり、Φは外部磁束であり、Φは磁束量子である。一般に、量子情報は駆動されていない回路にエンコードされるので、対象となるハミルトニアンは
【0098】
【数40】

がゼロに設定されたときのものである。説明の便宜上、開示した実施形態はこの表記法を使用して説明する。しかしながら、量子回路のハミルトニアンの特定の表現に限定されない。
【0099】
[078] 量子回路の元のハミルトニアンは、図3Bに示すように、局所項および結合項に分割することができる。ここで、Hlocal図3Dに示すように与えることができ、ここで、nはツリーインダクタの数とすることができる。Hcoupling図3Eに示すように与えることができ、ここで、n≡n+nはモードの総数である。結合項
【0100】
【数41】

、(Mijが局所項と比較して小さい場合、Hは弱結合した量子多体系を記述する。
【0101】
[079] Hcoupleが純粋に二次であるとすると、モードへの線形変換を使用して、C-1およびM内の非対角エントリを低減することができる。より具体的には、図3Fに示す変換を実装することができ、ここで、
【0102】
【数42】

である。この線形変換は、図3Gに示す正準交換関係を維持することができる。最初の2つのタイプが維持されていることは容易に確認することができる。3つ目については、図3Hに示すように等価性を証明することができる。
【0103】
[080] そのような変換は、図3Iに示す写像を使用して二次結合行列を変換することができる。元のハミルトニアンのその他の結合行列は、図3Jに示す写像に従って変換することができる。駆動されていないハミルトニアンを考慮しているが、変換されたモードでの駆動されたハミルトニアンを得るには、Cの変換が依然として必要であり得ることに留意されたい。接合項も同様に変換され、本明細書で論じるように、いくつかの実施形態では、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの決定に影響を与え得る。
【0104】
[081] 工程305において、変換された局所ハミルトニアンに対して限定された固有基底を決定することができる。変換された局所ハミルトニアンの複数の低エネルギーのまたは別の重要な固有ベクトルを限定された固有基底として選択することができる。たとえば、その数は2~20個の間またはそれ以上とすることができる。非限定的な例として、変換された局所ハミルトニアンの5個、10個、または20個の最低エネルギーの固有ベクトルを限定された固有基底として選択することができる。いくつかの実施形態では、その数は事前に決定することができる。他の実施形態では、その数は、収束基準(たとえば、変換された局所ハミルトニアンのエネルギーレベルの収束率など)に依存することができる。
【0105】
[082] 工程307において、変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することができる。変換された結合ハミルトニアンは、局所演算子のテンソル積の和として表すことができる。その場合、局所演算子を限定された固有基底で表すことができる(たとえば、限定された固有基底に含まれない固有状態に関与する式の項を切り捨てることができる)。
【0106】
[083] 工程309において、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することができる。少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンは、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることができる。いくつかの場合では、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンは、これらの射影の和とすることができる。
【0107】
[084] 工程311において、古典コンピュータは、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をシミュレートすることができる。いくつかの場合では、古典コンピュータは、量子回路の状態の時間発展(たとえば、量子回路のモードの状態の時間発展)をシミュレートすることができる。様々な場合において、古典コンピュータは、入力または他の摂動に対する量子回路の応答をシミュレートすることができる。開示した実施形態は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して実現されるいかなる特定のシミュレーションにも限定されない。
【0108】
[085] 図4は、開示した実施形態による、量子回路をシミュレートする際に使用するための変換されたハミルトニアンを選択するための例示的なプロセス400のフローチャートを示している。いくつかの実施形態では、プロセス400は、図3Aに関して上述したプロセス300の工程303の一部として実行することができる。プロセス400は、複数の変換されたハミルトニアンを生成することができる。これらの変換されたハミルトニアンのうちの1つを選択基準に従って選択することができる。選択基準は、変換されたハミルトニアンのモード間の結合度に関するものとすることができる。選択されたハミルトニアンを使用して、量子回路をシミュレートするための少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することができる。上述のように、モード間の結合が低減されたハミルトニアンは、摂動論を使用した近似により適している。したがって、プロセス400は、量子回路のより正確なシミュレーションをサポートする、改善され少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの生成をサポートすることができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス(たとえば、図8に示す)は、プロセス400の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成することができる。コンピュータはこれらの工程を自動的に実行することも、または少なくとも部分的にユーザとのやりとりを通じて実行することもできる。
【0109】
[086] プロセス400の工程401において、量子回路に対してスパニングツリーを選択することができる。スパニングツリーは、量子回路内のコンポーネントのサブセットとすることができる。いくつかの実施形態では、スパニングツリーは、量子回路内の全ての接合部、全ての電圧源、および少なくとも一部のインダクタを含むことができる。これらのコンポーネントのオブザーバブル(observables)により、量子回路全体の状態を完全に決定することができる。量子回路は複数のスパニングツリーを含み得、それぞれが異なるハミルトニアンに関連付けられることは理解される。異なるスパニングツリーを使用すると、変換されたハミルトニアンの結合項の大きさが異なり得る。
【0110】
[087] いくつかの実施形態では、量子回路に対してスパニングツリーのセットを決定することができる。次いで、このセットから、これまで選択されていないスパニングツリーを選択することができる。このセットは、量子回路の全ての可能なスパニングツリー、または量子回路の可能なスパニングツリーのサブセットを含み得る。いくつかの実施形態では、この選択はコンピューティングデバイスによって自動的に実行することができる。様々な実施形態において、この選択は、ユーザによって(たとえば、コンピューティングデバイスとユーザとの間のやりとりを通じて)手動で実行することができる。開示した実施形態は、スパニングツリーを選択するいかなる特定の方法にも限定されない。プロセス400は、セット内の全てのスパニングツリーが選択されるまで繰り返すことができる。
【0111】
[088] プロセス400の工程403において、選択されたスパニングツリーに基づいて、量子回路403の元のハミルトニアンを決定することができる。元のハミルトニアンは、プロセス300の工程303に関して上述した方法に従って決定することができる。元のハミルトニアンは、電荷結合行列および磁束結合行列を含むことができる。
【0112】
[089] プロセス400の工程405において、元のハミルトニアンのモードの1つまたは複数の線形変換を決定することができる。1つまたは複数の線形変換のうちのそれぞれは、本明細書に記載の線形変換のうちの1つとすることができる。いくつかの場合では、そのような線形変換は、(図5Aに関して説明する)同時近似対角化を実装することができる。いくつかの実施形態では、線形変換はブロック対角シンプレクティック(symplectic)行列に依存することができる。ブロック対角シンプレクティック行列は第1の部分行列および第2の部分行列を含むことができ、第2の部分行列は第1の部分行列の関数である。たとえば、様々な場合において、線形変換は、(たとえば、図6Aに関して説明する)インダクタのみのシンプレクティック対角化を実装することができる。そのような場合、ブロック対角シンプレクティック行列は、磁束結合行列の部分行列を対角化するように構成することができ、この部分行列はハミルトニアンのインダクタモードに対応する。追加の例として、いくつかの場合では、線形変換は、(たとえば、図7Aに関して説明する)完全なシンプレクティック対角化を実装することができる。そのような場合、ブロック対角シンプレクティック行列は、電荷結合行列および磁束結合行列を対角化するように構成することができる。
【0113】
[090] プロセス400の工程407において、元のハミルトニアンのモードの1つまたは複数の線形変換を使用して、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することができる。いくつかの実施形態では、各線形変換候補を実行し、その結果得られた変換されたハミルトニアンを比較することができる。様々な実施形態において、線形変換候補のサブセットを実行することができる。
【0114】
[091] プロセス400の工程409において、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンに対して結合値を決定することができる。結合値は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンのモード間の結合度を示すことができる。線形変換が同時近似対角化またはインダクタのみのシンプレクティック対角化を実装する場合、結合値は、変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列の非対角要素の関数(たとえば、変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列の非対角要素の二乗和など)とすることができる。線形変換が完全なシンプレクティック対角化を実装する場合、結合値は、ブロック対角シンプレクティック行列の第1の部分行列の特定の行(たとえば、元のハミルトニアンの接合モードに対応する行)の関数とすることができる。そのような関数は、これらの行の要素の二乗和などを含むことができる。
【0115】
[092] プロセス400の工程411において、工程407で生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを、プロセス300で使用するための変換されたハミルトニアンとして選択することができる。この選択は、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンに関連する結合値に基づくことができる。いくつかの実施形態では、変換されたハミルトニアンを選択する前に、セット内の全てのスパニングツリーに対して、1つまたは複数の少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することができる。そのような実施形態では、この選択は、これらの少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの全てに関連する結合値に依存することができる。たとえば、最小の大きさの結合値を有する少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを変換されたハミルトニアンとして選択することができる。
【0116】
[093] いくつかの実施形態では、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンは、1つの少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンに関連する結合値に基づいて選択することができる。たとえば、選択基準は、閾値結合値(たとえば、所定の値など)、または(たとえば、元のハミルトニアンに対して計算された同じ結合値と比較した)結合値の閾値低減量に関するものとすることができる。この例を続けると、そのような閾値低減量は、2桁以上であり得る(たとえば、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの結合値は、元のハミルトニアンの結合値より2桁以上小さい)。基準(たとえば、閾値より低い結合値、結合値低減閾値より大きい結合値低減量など)を満たす少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンが生成された場合、プロセス400は終了し得、この少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを変換されたハミルトニアンとして選択することができる。
【0117】
[094] 図5Aは、開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的な同時近似対角化プロセス500のフローチャートを示している。プロセス500は、直交変換を使用して変換されたハミルトニアンを生成する。そのような変換の場合、変換行列W=(W-1である。そのような直交変換を使用して元のハミルトニアンを変換することは、C-1およびMを同時に対角化することに相当し得る。しかしながら、一般に、2つの行列は可換ではないので、厳密な対角化は不可能であり得る。代わりに、変換された行列の非対角項の二乗和が最小になるような直交行列Wを見つけるという最適化タスクを定義することができる。しかしながら、ハミルトニアン内のコサイン接合項が、それらを結合項にする磁束の線形結合を有さないように、直交変換はn個のツリーインダクタモードに制限される。この技術を本明細書では同時近似対角化と呼ぶことにする。プロセス500は、「Jacobi Angles for Simultaneous Diagonalization」J.F.CardosoおよびA.Souloumiac、SIAM Journal on Matrix Analysis and Applications、1996年1月に概説されたアプローチに基づいて同時近似対角化を実行することができ、これによりその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0118】
[095] 工程501において、プロセス500を開始することができる。プロセス500は、プロセス400または300の一部として開始することができる。たとえば、プロセス500を使用して、プロセス400の工程405において変換を決定することができる。プロセス400は、元のハミルトニアンの磁束結合行列および電荷結合行列と同じ次元を有する回転行列と共に開始することができる。プロセス400は、この回転行列を逐次的に更新して、元のハミルトニアンを変換するために使用される変換行列を生成することを含むことができる。回転行列の選択された軸の周りの回転を反復的に決定することによって、回転行列を更新することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス(たとえば、図8に示す)は、プロセス500の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成することができる。コンピュータはこれらの工程を自動的に実行することも、または少なくとも部分的にユーザとのやりとりを通じて実行することもできる。
【0119】
[096] プロセス500の工程503において、軸を選択することができる。軸は、軸のリストもしくは順序付けにおける次の軸とすることができ、または軸のセットから(たとえば、ランダムにまたは確定的に)選択することができる。選択された軸は、元のハミルトニアン内のインダクタモードに対応することができる。
【0120】
[097] プロセス500の工程505において、回転値を決定することができる。回転値は、選択された軸の周りの回転角とすることができる。開示した実施形態は、回転角を決定するいかなる特定の方法にも限定されない。様々な実施形態において、回転角は、「Jacobi Angles for Simultaneous Diagonalization」に開示された閉形式(close form)の式または他の適切な方法を使用して得ることができる。
【0121】
[098] 選択された回転軸の周りの回転角の回転を反映するように回転行列を更新することができる。更新された回転行列を使用して、変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列を決定することができる。変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列の非対角要素に基づいて終了値を決定することができる。たとえば、終了値は、これらの行列の非対角要素の二乗和とすることができる。いくつかの実施形態では、インダクタモードに対応する回転軸のみが反復されるが、終了値は接合モードを含む全てのモードにわたって計算することができる。
【0122】
[099] プロセス500の工程507において、停止条件が満たされているか否かに関する判定を行うことができる。いくつかの実施形態では、停止条件は、回転値に関連付けられた終了値(たとえば、終了値が絶対閾値または相対閾値未満であること)、または決定された回転値に関連付けられた終了値の傾向(たとえば、終了値のシーケンスの差分または微分係数が収束基準を満たすこと、たとえば、収束閾値未満であることなど)に依存することができる。様々な実施形態において、停止条件は、経過時間、反復回数、計算使用量などに依存することができる。停止条件が満たされている場合、プロセス500は工程509に進むことができる。停止条件が満たされていない場合、プロセス500は工程503に進むことができ、他の軸を選択することができる。
【0123】
[0100] プロセス500の工程509において、プロセス500は停止することができる。いくつかの実施形態では、変換されたハミルトニアンが利用可能であり得る(たとえば、変換されたハミルトニアンは、最後の終了値を生成するために使用済みであり得る)。そのような実施形態では、プロセス500は、プロセス400の工程405および407の両方を含むことができる。いくつかの実施形態では、変換されたハミルトニアンを生成する際に使用するために回転行列を提供することができる。
【0124】
[0101] 図5Bは、図5Aに関して説明した同時対角化技術を図1Aの量子回路に対して実行することによって得られた直交変換行列Wを示している。最初の2つのモードは接合モードであるので変換されないことに留意されたい。図5Cおよび図5Dは、変換行列Wと、図1Dおよび図1Eに示す元の電荷結合行列および磁束結合行列とを使用して(たとえば、図3Iに示す写像に従って)生成された、変換された電荷結合行列および磁束結合行列を示している。この変換により、非対角項の二乗和は3.15e3に低減され、7桁の低減である。
【0125】
[0102] 図5Eは、局所基底次元に応じた複数のエネルギー準位の状態エネルギーのプロットを示している。図5Eは、局所基底次元に応じた異なる遷移の遷移エネルギーのプロットを示している。状態エネルギーおよびプロットは、図5B図5Dの変換されたハミルトニアンから本明細書の記載のように生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して推定されている。図2Aおよび図5Eを比較すると、状態エネルギーはデカップリング技術が適用されていない場合よりも迅速に収束する。さらに、エネルギー自体も低くなり、これはプロセス500によって提供される技術的向上を実証している。
【0126】
[0103] 図6Aは、開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的なインダクタのみのシンプレクティック対角化プロセス600のフローチャートを示している。プロセス600は、プロセス500よりも一般的な線形変換を使用する。いくつかの実施形態では、モードに適用される線形変換は、シンプレクティック変換とすることができる(たとえば、図6Bに示す行列Sが与えられ、ここで0はn×n次元ゼロ行列であり、また、図6Dに示すブロック行列Ωが与えられた場合、SΩS=Ωである)。シンプレクティック変換は、ハミルトニアンの電荷および磁束のベクトル(たとえば、図6C)に対するものとすることができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス(たとえば、図8に示す)は、プロセス600の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成することができる。コンピュータはこれらの工程を自動的に実行することも、または少なくとも部分的にユーザとのやりとりを通じて実行することもできる。
【0127】
[0104] プロセス600の工程601において、ブロック対角シンプレクティック行列を決定することができる。ブロック対角シンプレクティック行列は、量子回路の元のハミルトニアンのインダクタモードに対応する結合部分行列を対角化する。たとえば、いくつかの実施形態では、磁束結合行列Mは正定値とすることができる。非限定的な例として、量子回路内の各ジョセフソン接合がインダクタによってシャントされている場合、磁束結合行列Mは正定値となる。この場合、図6Eに示すブロック行列Q(これはハミルトニアンの二次部分をエンコードする)は正定値である。Qは正定値であるので、ハミルトニアン内のL個のインダクタモードに対応する部分行列のみを含む、図6Fに示すブロック行列Qも同様である。したがって、ウィリアムソンの定理を適用することができ、任意の正定値行列
【0128】
【数43】

が与えられると、SMS=diag(Λ,Λ)となるようなシンプレクティック行列
【0129】
【数44】

が存在し、ここで、Λは正の対角エントリを有する対角行列である。
【0130】
[0105] ウィリアムソンの定理の証明では、行列iM-1/2ΩM-1/2に対して固有ベクトルB={v,...,v,v ,...,v }の正規化基底を構築することができ、ここで、
【0131】
【数45】

であり、vは対応する固有値λを有するiM-1/2ΩM-1/2の固有ベクトルであり、v はvの要素ごとの複素共役であり、対応する固有値-λを有するiM-1/2ΩM-1/2の固有ベクトルである。Bの固有ベクトルを使用して直交行列
【0132】
【数46】

を構築することができ、ここで、
【0133】
【数47】

であり、
【0134】
【数48】
である。そして、
【0135】
【数49】

であり、ここで、
【0136】
【数50】

であり、D=diag(λ,...,λ)は、B内の固有ベクトルの順序に対応する順序のiM-1/2ΩM-1/2の正の固有値の対角である。Sのこの定義が与えられると、SΩS=Ωであるため、Sがシンプレクティックであることがわかる。
【0137】
[0106] この証明を拡張すると、より強力なステートメントを示すことができ、すなわち、M,M∈)m×mである、図6Gに示す任意のブロック対角正定値行列Mが与えられると、S’MS’=diag(Λ,Λ)となるような、図6Hに示すシンプレクティック行列S’が存在し、ここで、Λは正の対角エントリを有する対角行列である。ウィリアムソンの定理を適用すると、
【0138】
【数51】

のように、図6Iに示すブロック対角シンプレクティック行列Sによって行列Qを対角化することができる。行列Sは、第1の部分行列
【0139】
【数52】

(L×L行列)および第2の部分行列
【0140】
【数53】

を含むブロック対角行列とすることができる。
【0141】
[0107] 行列Sを決定する際の最初の工程として、Mが与えられると、固有ベクトルの基底Bを構築することができる。0より大きい固有値を有する実正定値行列
【0142】
【数54】

のn個の固有ベクトル{w,...,w}のセットを決定することができる。対応するn個のベクトル{w’,...,w’}のセットは、
【0143】
【数55】

である。
【0144】
【数56】

がiM-1/2ΩM-1/2の固有ベクトルであることがわかる。したがって、上述のように、行列iM-1/2ΩM-1/2に対して固有ベクトルB={v,...,v,v ,...,v }の正規化された基底を構築することができ、ここで、
【0145】
【数57】

である。行列
【0146】
【数58】

を構築することができ、ここで、D=diag(λ,...,λ)は、B内の固有ベクトルの順序に対応する順序のiM-1/2ΩM-1/2の正の固有値の対角である。次いで、Bの固有ベクトルを使用して直交行列
【0147】
【数59】

を構築することができ、ここで、
【0148】
【数60】

であり、
【0149】
【数61】

である。しかしながら、n個のベクトル
【0150】
【数62】

の構造を考えると、
【0151】
【数63】

であり、
【0152】
【数64】

である。したがって、行列Oは
【0153】
【数65】

の形であり、行列
【0154】
【数66】

【0155】
【数67】

の形である。次いで、行列
【0156】
【数68】

であり、ここで、
【0157】
【数69】

であり、
【0158】
【数70】

である。
【0159】
[0108] プロセス600の工程603において、ブロック対角シンプレクティック行列Sを使用して変換行列を生成することができる。いくつかの実施形態では、線形変換は、図6Jに示す行列Wとすることができる。図示のように、この行列は、第1の部分行列
【0160】
【数71】

と、ブロック単位行列
【0161】
【数72】

(n×n行列であり、ここで、nは接合モードの数である)と、ゼロ行列
【0162】
【数73】

および
【0163】
【数74】

とを含むブロック対角行列である。
【0164】
[0109] プロセス600の工程605において、変換行列Wを使用して、元のハミルトニアンの磁束結合行列および電荷結合行列を変換することができる。この変換を適用すると、二次結合行列を少なくとも部分的に対角化することができ、磁束結合行列M図6Kに示すように変換することができ、電荷結合行列C-1図6Lに示すように変換することができる。これらの図において、下付き文字およびJLはそれぞれ、接合モードの部分行列と、接合モードおよびインダクタモード間の結合係数とに対応する。ΛがL×L対角行列であることを思い出すと、これにより効果的にインダクタモードが相互に完全にデカップリングされる。しかしながら、インダクタモードおよび接合モードの間には依然として結合が存在し得る。接合モード間の結合はそのまま残され得る。
【0165】
[0110] 非限定的な例として、図6Aのインダクタのみのシンプレクティック対角化デカップリング技術を図1Aの量子回路の元のハミルトニアンに適用することができる。行列Qは、Mの第3~第5の行および列を含む部分行列M(3:5,3:5)を含むことができる。行列Qはまた、C-1の第3~第5の行および列を含む部分行列C-1(3:5,3:5)を含むことができる。Qを対角化するブロック対角シンプレクティック行列Sを見つけることができる。Sの第1の部分行列
【0166】
【数75】

を使用して、図6Mに示す行列Wを生成することができる。この図に示すように、Wはブロック対角型であり、接合モードに対応する行および列に部分行列I(たとえば、2行2列の単位行列)を含む。図6Nおよび図6Oからわかるように、Wを使用してMおよびC-1を変換すると、元のハミルトニアンの誘導項に対応するモードが対角化される。
【0167】
[0111] この非限定的な例では、非対角項の二乗和は1.35e3である。比較として、同時近似対角化の方法は、非対角項の二乗和が3倍(1.35e3対3.15e3)で、非対角項の最大の要素の大きさが2倍を超える(17.1対39.30)変換された行列MおよびC-1を生成した。したがって、この技術により、非対角項の大きさの低減量が増加した。非対角項の大きさの減少は、図6Pに示す低エネルギー状態の収束および図6Qに示すそれらの差異の改善と一致している。状態エネルギーおよび遷移エネルギーの両方が、図5Eおよび図5Fに示す同時近似対角化技術、ならびに図2Aおよび図2Bに示すデカップリング技術なしの場合よりも迅速に収束する。
【0168】
[0112] 図7Aは、開示した実施形態による、変換されたハミルトニアンを生成するための例示的な完全なシンプレクティック対角化プロセス700のフローチャートを示している。プロセス700は、量子回路の元のハミルトニアンの二次部分を完全に対角化するように構成することができる。前述のように、磁束結合行列Mが正定値である場合、ブロック対角行列に関するウィリアムソンの定理により、SQS=diag(Λ,Λ)となるような、第1の対角部分行列(S)および第2の対角部分行列(
【0169】
【数76】

)を含む、図7Bに示すシンプレクティック行列が存在する。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス(たとえば、図8に示す)は、プロセス700の工程のうちの少なくとも一部を実行するように構成することができる。コンピュータはこれらの工程を自動的に実行することも、または少なくとも部分的にユーザとのやりとりを通じて実行することもできる。
【0170】
[0113] プロセス700の工程701において、プロセス600の工程601に関して上述したプロセスに従って、図7Bに示すシンプレクティック行列を決定することができる。しかしながら、プロセス600とは異なり、プロセス700の行列Mは、磁束結合行列および電荷結合行列全体を含むことができる。したがって、元のハミルトニアンのモードの線形変換Wは、図7Cに示すように定義することができる。
【0171】
[0114] プロセス700の工程703において、線形変換Wを使用して、(たとえば、図3Iおよび図3Jに示す写像に従って)ハミルトニアンの二次部分を完全に対角化することによって、全ての二次結合項を除去することができる。しかしながら、変換されたモードは依然として、変換された接合項を介して結合され得る。図7Dに示すように、磁束結合行列の変換Φ→SΦ’を行うと、接合項がインダクタモードに依存することになる。さらに、コサインのべき級数展開に追加の局所項が存在し得る。
【0172】
[0115] プロセス700の工程705において、図7Eに示すように、これらの局所項を結合項から分離することができ、変換された結合ハミルトニアンを図7Fに示すように表すことができる。本明細書に記載のように、変換されたハミルトニアンは、図7Gに示すように、変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンで表すことができ、ここで、変換された局所ハミルトニアンは、図7Hに示すように接合項を含む。
【0173】
[0116] 非限定的な例として、図7Aの完全なシンプレクティック対角化技術を図1Aの量子回路の元のハミルトニアンに適用することができる。まず、第1の対角部分行列(S)を含む図7Bに示すシンプレクティック行列を生成することができる。第1の部分行列を使用して、図7Iに示すように線形変換Wを生成することができる。図6Aの部分的な対角化アプローチとは対照的に、接合モードも変換されて、結合行列が完全に対角化される。この線形変換行列を使用して、電荷結合行列および磁束結合行列を対角化することができる。そのような実施形態では、図7Jに示すように、対角化された電荷結合行列および磁束結合行列を同一にすることができる。
【0174】
[0117] しかしながら、このとき、全ての結合項が接合項に含まれ得る。図7Kに示すS=W-1の最初のn=2行を使用して、図7Fに示す式に従って、これらの結合された接合項を決定することができる。
【0175】
[0118] この非限定的な例では、図7Lおよび図7Mに示すように、状態エネルギーおよび遷移エネルギーは、図2Aおよび図2Bに示す元のハミルトニアン、または図5Aおよび図6Aに示す方法によって生成された少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンよりも迅速に収束する。これらの図に示すように、状態エネルギーおよび遷移エネルギーは5~7個の局所基底ベクトルで収束する。
【0176】
[0119] 完全なシンプレクティック対角化技術の場合、まずコサイン接合項をテイラー展開し、二次項をMに加算することによって、さらにもう一歩前進することができる。すなわち、次のように写像し、
【0177】
【数77】

ここで、
【0178】
【数78】

は対角上に接合エネルギーを有するn×n対角行列である。Mが正定値である場合、EJ,i>0であるので、写像により正定値が保存され、次いで、新しい結合行列を使用して完全なシンプレクティック対角化を適用することができる。これにより実質的に図7Fの二次結合項が除去される。しかしながら、局所系の磁束はゼロの周りに局在していない場合があるので、コサイン展開の低次項を摂動的に扱うことができない場合がある。したがって、二次項を除去することは、我々が望んでいることではない場合がある。これは、その局所系で磁束が局在している任意の場所の周りでコサインを展開することによって、修正することができる。
【0179】
[0120] 図8は、開示した実施形態による、開示した方法を実行するのに適した例示的なシステム801の図である。図8ではサーバとして示しているが、システム800は、図5A図6A、および図7Aで上述した方法を使用して、量子回路に対して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成し、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路をシミュレートするように構成される、たとえば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットなどの任意のコンピュータを含み得る。図8に示すように、システム801はプロセッサ802を有し得る。プロセッサ802は、単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを含み得る。たとえば、プロセッサ802は、CPU、GPU、再構成可能アレイ(たとえば、FPGAまたは他のASIC)などを含み得る。プロセッサ802は、メモリ803、入出力モジュール807、およびネットワークインターフェースコントローラ(NIC)809と通信し得る。
【0180】
[0121] メモリ803は、単一のメモリまたは複数のメモリを含み得る。さらに、メモリ803は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせを含み得る。図8に示すように、メモリ803は、1つまたは複数のオペレーティングシステム804およびオプティマイザ805を記憶し得る。たとえば、オプティマイザ805は、(たとえば、上記で説明したように)量子回路を最適化するための命令を含み得る。したがって、オプティマイザ805は、上述の方法のいずれかに従って1つまたは複数の量子回路をシミュレートし、最適化し得る。入出力モジュール(I/O)807は、1つまたは複数のデータベース808にデータを記憶し、そこからデータを取り出し得る。たとえば、データベース808は、開示した実施形態と一致して、デカップリングされたハミルトニアンが生成され得る量子回路を記述するデータ構造を含み得る。NIC809は、システム801を1つまたは複数のコンピュータネットワークに接続し得る。図8に示すように、NIC809はシステム801をネットワーク810に接続し得る。このネットワークは、ワイドエリアネットワーク(たとえば、インターネット)、ローカルネットワークなどであるか、またはこれらを含むことができる。ネットワークは、有線、無線、セルラー、または他の通信技術を使用して実装することができる。開示した実施形態は、いかなる特定のタイプのネットワークまたはネットワーク実装にも限定されない。システム801は、NIC809を使用してネットワークを介してデータおよび命令を受信し得、かつNIC809を使用してネットワークを介してデータおよび命令を送信し得る。
【0181】
[0122] 開示した実施形態は、単一のコンピューティングデバイスを使用する実装に限定されない。たとえば、システム801と同様の複数のコンピューティングデバイスを含むシステム(たとえば、クラスタ、またはクラウドコンピューティングプラットフォーム)を、開示した方法を実行するために相互運用されるように構成することができる。
【0182】
[0123] いくつかの実施形態では、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体も提供され、命令は、上述の方法を実行するためのデバイス(たとえば、開示したエンコーダおよびデコーダ)によって実行され得る。非一時的媒体の一般的な形態には、たとえば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、または他の任意の磁気データ記憶媒体、CD-ROM、他の任意の光学データ記憶媒体、穴のパターンを有する任意の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、または他の任意のフラッシュメモリ、NVRAM、キャッシュ、レジスタ、他の任意のメモリチップまたはカートリッジ、ならびにそれらのネットワーク化されたバージョンが含まれる。デバイスは、1つもしくは複数のプロセッサ(CPU)、入出力インターフェース、ネットワークインターフェース、および/またはメモリを含み得る。
【0183】
[0124] 前述の説明は例示の目的で提示している。それらは網羅的ではなく、開示した正確な形態または実施形態に限定されない。実施形態の修正および適応は、本明細書を考慮し、開示した実施形態を実践することによって明らかになろう。たとえば、記載した実装はハードウェアを含むが、本開示と一致するシステムおよび方法は、ハードウェアおよびソフトウェアを使用して実装することができる。さらに、特定のコンポーネントは互いに結合されるものとして説明しているが、そのようなコンポーネントは、任意の適切な方法で互いに統合または分散され得る。
【0184】
[0125] さらに、例示的な実施形態を本明細書に記載しているが、本発明の範囲には、本開示に基づく等価な要素、修正、省略、(たとえば、様々な実施形態にわたる態様の)組み合わせ、適応または変更を有するありとあらゆる実施形態が含まれる。特許請求の範囲の要素は、特許請求の範囲で用いている文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書においてまたは本出願の審査中に記載する例に限定されず、それらの例は非排他的なものと解釈されるべきである。さらに、開示した方法の工程は、工程の順序変更または工程の挿入もしくは削除を含めて、任意の方法で修正することができる。
【0185】
[0126] 本明細書における「第1」および「第2」などの関係を示す用語は、あるエンティティまたは動作を他のエンティティまたは動作と区別するためにのみ使用し、これらのエンティティまたは動作の間に実際の関係または順序の存在を要求または示唆するものではないということに留意されたい。さらに、「備える」、「有する」、「包含する」、および「含む」という単語、および他の同様の形式は、意味が同等であり、これらの単語のいずれか1つに続く1つまたは複数の項目がそのような1つまたは複数の項目の網羅的なリストであることを意味しておらず、リストした1つまたは複数の項目のみに限定されることも意味していないという点でオープンエンドであるものとする。
【0186】
[0127] 本開示の特徴および利点は詳細な明細書から明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の思想および範囲内に入る全てのシステムおよび方法をカバーしているものとする。本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」および「an」は、「1つまたは複数」を意味する。同様に、複数形の用語の使用は、所与の文脈において明確である場合を除いて、必ずしも複数を意味するわけではない。さらに、本開示を検討することにより多くの修正および変形が容易に行われるので、本開示を図示および説明した厳密な構成および動作に限定することは望ましくなく、したがって、全ての適切な修正および均等物は、本発明の範囲内に入るように再分類され得る。
【0187】
[0128] 本明細書で使用する場合、特に別段の記載がない限り、「または」という用語は、実行不可能な場合を除き、全ての可能な組み合わせを包含する。たとえば、データベースがAまたはBを含み得ると記載している場合、特に別段の記載がないかまたは実行不可能でない限り、データベースはA、またはB、またはAおよびBを含み得る。第2の例として、データベースがA、B、またはCを含み得ると記載している場合、特に別段の記載がないかまたは実行不可能でない限り、データベースは、A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、AおよびBおよびCを含み得る。
【0188】
[0129] 上述の実施形態は、ハードウェア、またはソフトウェア(プログラムコード)、またはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実装できることは理解される。ソフトウェアによって実装される場合、上述のコンピュータ可読媒体に記憶され得る。ソフトウェアは、プロセッサによって実行された場合に、開示した方法を実行することができる。本開示に記載したコンピューティングユニットおよび他の機能ユニットは、ハードウェア、またはソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実装することができる。当業者であれば、上述のモジュール/ユニットのうちの複数が1つのモジュール/ユニットとして組み合わせられ得、上述のモジュール/ユニットのそれぞれが複数のサブモジュール/サブユニットにさらに分割され得ることも理解するであろう。
【0189】
[0130] 前述の明細書では、実装ごとに異なり得る多数の特定の詳細を参照して実施形態を説明している。説明した実施形態の特定の適応および修正を行うことができる。他の実施形態は、本明細書を考慮し、本明細書に開示した本発明を実践することにより、当業者に明らかとなろう。本明細書および例は単なる例示と考えられ、本発明の真の範囲および思想は以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。また、図に示した工程の順序は、例示のみを目的としており、いかなる特定の工程の順序にも限定されないものとする。したがって、当業者であれば、同じ方法を実装しながら、これらの工程を異なる順序で実行できることを理解することができる。
【0190】
[0131] 以下の条項を使用して、実施形態をさらに説明し得る。
【0191】
[0132] 1)ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするための方法であって、量子回路の表現を取得することと、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含むことと、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することであって、変換された結合ハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンのモードで表されることと、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することと、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をコンピュータによってシミュレートすることと、を含む、方法。
【0192】
[0133] 2)変換されたハミルトニアンを生成することは、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンおよび対応する結合値を繰り返し生成することであって、繰り返しは、量子回路のスパニングツリーを選択すること、スパニングツリーを使用して量子回路の元のハミルトニアンを決定することであって、元のハミルトニアンは電荷結合行列および磁束結合行列を含むこと、元のハミルトニアンのモードの線形変換を決定すること、線形変換を使用して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成すること、および、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンの対応する結合値を決定することを含むことと、対応する結合値に基づいて少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを変換されたハミルトニアンとして選択することと、を含む、条項1に記載の方法。
【0193】
[0134] 3.線形変換はブロック対角シンプレクティック行列に依存し、ブロック対角シンプレクティック行列は第1の部分行列および第2の部分行列を含み、第2の部分行列は第1の部分行列の関数である、条項2に記載の方法。
【0194】
[0135] 4.線形変換を使用して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することは、ブロック対角シンプレクティック行列を使用して電荷結合行列および磁束結合行列を対角化することを含み、対応する結合値は、元のハミルトニアンの接合モードに対応する第1の部分行列の行に依存する、条項3に記載の方法。
【0195】
[0136] 5.線形変換を使用して少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することは、ブロック対角シンプレクティック行列を使用して第1の変換行列を生成することと、第1の変換行列を使用して電荷結合行列の部分行列を対角化することによって電荷結合行列を変換することであって、電荷結合行列の部分行列は元のハミルトニアンのインダクタモードに対応することと、ブロック対角シンプレクティック行列を使用して第2の変換行列を生成することと、磁束結合行列の部分行列を対角化することによって磁束結合行列を変換することであって、磁束結合行列の部分行列はインダクタモードに対応することと、を含み、対応する結合値は、変換された電荷結合行列および変換された磁束結合行列の非対角要素に依存する、条項3に記載の方法。
【0196】
[0137] 6.線形変換を決定することは、回転行列の軸の周りの回転を反復的に決定することによって回転行列を生成することを含み、軸は元のハミルトニアン内のインダクタモードに対応する、条項2に記載の方法。
【0197】
[0138] 7.方法は、ブロック対角シンプレクティック行列を生成することをさらに含み、生成は、磁束結合行列および電荷結合行列を含む初期ブロック対角行列を決定することと、初期ブロック対角行列に基づいてエルミート行列を決定することと、エルミート行列の固有基底と、固有基底に対応する固有値の行列とを決定することと、初期ブロック対角行列と、エルミート行列の固有基底と、対応する固有値の行列とを使用して、ブロック対角シンプレクティック行列を決定することと、を含む、条項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
[0139] 8.変換されたハミルトニアンを生成することは、量子回路に対応する元のハミルトニアンを少なくとも部分的にデカップリングすることを含む、条項1に記載の方法。
【0199】
[0140] 9.元のハミルトニアンを少なくとも部分的にデカップリングすることは、元のハミルトニアンの二次部分の少なくとも1つのインダクタモードを対角化することを含む、条項8に記載の方法。
【0200】
[0141] 10.ビットを処理するコンピュータを使用して量子回路をシミュレートするためのシステムであって、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合に、システムに動作を実行させる命令を含む少なくとも1つのコンピュータ可読媒体と、を備え、動作は、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含み、生成は、量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得すること、および、電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することを含むことと、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、変換された局所ハミルトニアンのモードで表される変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することと、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することと、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動をシミュレートすることと、を含む、システム。
【0201】
[0142] 11.電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することは、回転行列の軸について反復することによって回転行列を生成することを含み、軸は元のハミルトニアンのインダクタモードに対応し、軸のうちの1つの周りの反復は、軸のうちの1つの周りの回転を実装するように回転行列を更新することを含む、条項10に記載のシステム。
【0202】
[0143] 12.電荷結合行列および磁束結合行列の非対角項の関数の値が終了条件を満たすまで、回転行列の軸について反復される、条項11に記載のシステム。
【0203】
[0144] 13.電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することは、電荷結合行列および磁束結合行列を使用してブロック対角行列を生成することと、ブロック対角行列を対角化するブロック対角シンプレクティック行列を生成することと、ブロック対角シンプレクティック行列を使用して変換行列を生成することと、変換行列を使用して電荷結合行列および磁束結合行列を変換することと、を含む、条項10に記載のシステム。
【0204】
[0145] 14.ブロック対角シンプレクティック行列を生成することは、ブロック対角行列に基づいてエルミート行列を決定することと、エルミート行列の固有基底と、固有基底に対応する固有値の行列とを決定することと、ブロック対角行列と、エルミート行列の固有基底と、対応する固有値の行列とを使用して、ブロック対角シンプレクティック行列を決定することと、を含む、条項13に記載のシステム。
【0205】
[0146] 15.量子回路内の各ジョセフソン接合はインダクタによってシャントされる、条項10から13のいずれか一項に記載のシステム。
【0206】
[0147] 16.変換行列は、磁束結合行列が正定値であるという判定に応答して生成される、条項13に記載のシステム。
【0207】
[0148] 17.変換行列は、単位部分行列と、ブロック対角シンプレクティック行列の部分行列の逆行列と、の2つの部分行列を含むブロック対角行列を含む、条項13または16に記載のシステム。
【0208】
[0149] 18.ブロック対角行列は、元のハミルトニアンのインダクタモードに対応する電荷結合行列および磁束結合行列の部分行列のみを含む、条項13から17のいずれか一項に記載のシステム。
【0209】
[0150] 19.変換された局所ハミルトニアンは変換されたジョセフソン接合項を含み、または、変換されたハミルトニアンの磁束結合行列および電荷結合行列は同一である、条項13から16のいずれか一項に記載のシステム。
【0210】
[0151] 20.システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能であり、システムに動作を実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、動作は、量子回路に対応する変換されたハミルトニアンを生成することであって、変換されたハミルトニアンは変換された局所ハミルトニアンおよび変換された結合ハミルトニアンを含み、生成は、量子回路に対応する元のハミルトニアンの電荷結合行列および磁束結合行列を取得すること、および、電荷結合行列および磁束結合行列を少なくとも部分的に対角化することを含むことと、変換された局所ハミルトニアンの複数の固有ベクトルを含む限定された固有基底を決定することと、変換された局所ハミルトニアンのモードで表される変換された結合ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することと、変換された局所ハミルトニアンを限定された固有基底に射影することと、変換された結合ハミルトニアンの射影と変換された局所ハミルトニアンの射影とを組み合わせることによって、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを生成することと、少なくとも部分的にデカップリングされたハミルトニアンを使用して量子回路の挙動を、ビットを処理するコンピュータによって、シミュレートすることと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【0211】
[0152] 図面および明細書には、例示的な実施形態を開示している。しかしながら、これらの実施形態に対して多くの変形および修正を行うことができる。したがって、特定の用語を用いているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用しており、実施形態の範囲を限定または制限するためのものではなく、その範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図6N
図6O
図6P
図6Q
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図7M
図8
図9