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特許7448731タイヤ圧及び/又は温度測定値からトレッド深さを推定するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】タイヤ圧及び/又は温度測定値からトレッド深さを推定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G01M17/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023552999
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021053870
(87)【国際公開番号】W WO2022191875
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】63/160,059
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドルフィー,ハンス アール.
(72)【発明者】
【氏名】サムス,トーマス エー.
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530955(JP,A)
【文献】特表2019-518209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0061022(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0270347(US,A1)
【文献】特開2005-047295(JP,A)
【文献】米国特許第06313742(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 11/24
B60C 19/00
G01B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤに残っているトレッド深さを推定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法が、
前記車両及び/又は前記タイヤに関連付けられた動作データを検出することと、
少なくとも周囲温度及び含有空気温度に対応するタイヤ状態データを検出することと、
前記検出された動作データ及び前記タイヤ状態データの経時的な検出された変化に少なくとも部分的に基づいて前記タイヤの熱質量を推定することと、
前記それぞれの推定熱質量に少なくとも部分的に基づいて前記タイヤの現在のトレッド深さを推定することと、
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記含有空気温度が直接測定されたタイヤ膨張圧力に関連して導出され、
前記タイヤ状態データが、前記少なくとも第1のタイヤの外部に装着された1つ以上のセンサを介して検出される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記車両が停止した状態で、
冷却期間中に、前記タイヤに関連付けられた時定数の経時的な変化を判定することと、
前記時定数の前記判定された経時的な変化に少なくとも部分的に基づいて、前記タイヤの熱質量の変化を推定することと、
を更に含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記方法が、前記車両が停止した状態で、
冷却期間中にタイヤ圧及び/又は前記含有空気温度を監視することと、
前記冷却期間中に前記監視されたタイヤ圧及び/又は含有空気温度の冷却速度を判定することと、
前記監視されたタイヤ圧及び/又は含有空気温度の前記判定された冷却速度に少なくとも部分的に基づいて、前記タイヤの前記熱質量を推定することと、
を更に含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記車両が動いている状態で、前記車両に関連付けられた前記検出された動作データが、車両速度及び荷重を更に含み、
前記方法が、前記タイヤの前記熱質量に依存する時定数を判定することを更に含む、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記車両が動いている状態で、前記車両に関連付けられた前記検出された動作データが、車両速度を更に含み、
前記タイヤの前記推定熱質量が、タイヤ圧及び/又は含有空気温度の履歴データに対する熱質量の集約モデルに基づいて較正される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記推定トレッド深さをタイヤ摩耗予測モデルへの入力として実装することと、
前記タイヤに関連付けられた1つ以上のタイヤ摩耗閾値と比較して、予測されたタイヤ摩耗状態に基づいて、前記少なくとも第1のタイヤの交換時期を予測することと、
を更に含み、
前記1つ以上のタイヤ摩耗閾値が、前記車両-タイヤ組み合わせの所与の車輪位置に対応するタイヤトレッド閾値を含む、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
車両に装着された少なくとも第1のタイヤに残っているトレッド深さを推定するためのシステムであって、前記システムが、
前記車両に関連付けられた動作データと、少なくとも周囲温度及び含有空気温度に対応するタイヤ状態データとを検出するように構成された1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のセンサ及び選択可能なアルゴリズム熱モデルに機能的にリンクされるように構成され、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法のステップの実行を指示するように構成されたコンピューティングデバイスと、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、車輪付き車両のタイヤのトレッド深さ推定に関する。
【0002】
より具体的には、本明細書に開示されるようなシステム、方法、及び関連するアルゴリズムは、例えば、自動二輪車、家庭用車両(例えば、乗用車及び軽トラック)、商用車及びオフロード(OTR)車両を含むがこれらに限定されない車輪付き車両のタイヤのトレッド深さの改善された推定のために、タイヤ圧及び/又は周囲温度測定値を使用することができる。
【背景技術】
【0003】
現在のタイヤトレッド深さの推定及びタイヤ摩耗の関連する予測は、特に車両のフリート管理の文脈において、車両を所有又は操作する者にとって重要なツールである。タイヤが使用されるとき、トレッドが徐々に浅くなり、タイヤ全体の性能が変化することが通常である。タイヤトレッドが不十分であると危険な運転状態が生じる可能性があるので、ある時点でタイヤ状態を認識することが重要になる。例えば、道路状況が最適でない場合、タイヤは道路をグリップすることができない可能性があり、ドライバは自分の車両の制御を失う可能性がある。一般的に言えば、タイヤトレッドが浅ければ浅いほど、ドライバは、雨、雪などの中で運転するときにトラクションを失いやすくなり得る。
【0004】
加えて、不規則なトレッド摩耗は、そうでなければ必要となるよりも早く、ユーザがタイヤ交換することになる様々な理由に対して生じることがある。車両、ドライバ、及び個々のタイヤは、全て互いに異なるものであり、タイヤを非常に異なる速度で摩耗させる可能性がある。例えば、スポーツカー用の高性能タイヤは、ファミリーセダン用のツーリングタイヤよりも急速に摩耗する。しかしながら、多種多様な要因により、タイヤは予想されるよりも早く摩耗する、及び/又は不規則に摩耗し、ノイズ又は振動を生じさせる可能性がある。早期及び/又は不規則なタイヤ摩耗の2つの一般的な原因は、不適切な膨張圧及び面外位置合わせ条件である。
【0005】
トレッド深さ推定を、好ましくはリアルタイムに近いもので提供することが望ましく、そうでなければトレッド深さ推定の欠如は、例えば保守警告の生成、残りの摩耗寿命の量の予測、どのタイヤが(及びいつ)交換される必要があるかの予測、コスト予測など、いくつかの重要なフリート管理タスクに対して困難をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に追加のハードウェアを追加する必要なく、このようなトレッド深さ推定を提供することができれば、更に望ましいだろう。
【0007】
タイヤのトレッド深さを推定するための例示的なシステム、方法、及び関連するモデルが本明細書に開示される。様々な実施形態においてこのようなモデルは、タイヤが摩耗して質量を失うにつれて熱時定数が減少するように、熱時定数がタイヤの質量に直接関係しているという点で、理論的に確立され得る。特定の実施形態では、このようなモデルは、タイヤが静止して冷却している期間に焦点を当ててもよく、これにより、熱時定数とタイヤ質量との間の関係を単純化する。
【0008】
車両に装着された少なくとも第1のタイヤに残っているトレッド深さを推定するための、本明細書に開示されるようなコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、車両及び/又はタイヤに関連付けられた動作データを検出することと、少なくとも周囲温度及び含有空気温度に関連付けられたタイヤ状態データを更に検出することとを含み得る。イヤの熱質量は、検出された動作データ及びタイヤ状態データの経時的な検出された変化に少なくとも部分的に基づいて推定され得る。タイヤの現在のトレッド深さは、それぞれの推定熱質量に少なくとも部分的に基づいて更に推定され得る。
【0009】
上記で参照した実施形態による例示的な一態様では、含有空気温度は、タイヤ装着センサを介して直接測定され得る。あるいは、含有空気温度は、直接測定されたタイヤ膨張圧力に関連して導出されてもよい。
【0010】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、タイヤ状態データは、少なくとも第1のタイヤの外部に装着された1つ以上のセンサを介して検出され得る。
【0011】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、方法は、車両が停止した状態で、冷却期間中に、タイヤに関連付けられた時定数の経時的な変化を判定することと、時定数の判定された経時的な変化に少なくとも部分的に基づいて、タイヤの熱質量の変化を推定することとを更に含み得る。
【0012】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、方法は、車両が停止した状態で、冷却期間中にタイヤ圧及び/又は含有空気温度を監視することと、冷却期間中に監視されたタイヤ圧及び/又は含有空気温度の冷却速度を判定することと、監視されたタイヤ圧及び/又は含有空気温度の判定された冷却速度に少なくとも部分的に基づいて、タイヤの熱質量を推定することとを更に含み得る。
【0013】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、車両が動いている状態で、車両に関連付けられた検出された動作データは、車両速度及び荷重を更に含み、方法は、タイヤの熱質量に依存する時定数を判定することを更に含む。
【0014】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、車両が動いている状態で、車両に関連付けられた検出された動作データは車両速度を更に含み、タイヤの推定熱質量は、タイヤ圧及び/又は含有空気温度の履歴データに対する熱質量の集約モデルに基づいて較正される。
【0015】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、方法は、推定トレッド深さをタイヤ摩耗予測モデルへの入力として実装することを更に含み得る。
【0016】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、方法は、タイヤに関連付けられた1つ以上のタイヤ摩耗閾値と比較して、予測されたタイヤ摩耗状態に基づいて、少なくとも第1のタイヤの交換時期を予測することを更に含み得る。
【0017】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、1つ以上のタイヤ摩耗閾値は、車両-タイヤ組み合わせの所与の車輪位置に対応するタイヤトレッド閾値を含み得る。
【0018】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様では、方法は、予測された交換時期及び車両-タイヤ組み合わせに関連付けられた識別子を含む車両保守警告を生成することと、車両保守警告を含むメッセージをフリート管理デバイスに送信することとを更に含み得る。
【0019】
別の実施形態では、車両に装着された少なくとも第1のタイヤに残っているトレッド深さを推定するためのシステムであって、1つ以上のセンサと、1つ以上のセンサ及び選択可能なアルゴリズム熱モデルに機能的にリンクされ、上記で参照した実施形態及び任意選択的に関連する例示的な態様のいずれか1つ以上による方法のステップの実行を指示するように構成されたコンピューティングデバイスとを備えるシステムが、本明細書に開示される。
【0020】
上記で参照したシステム実施形態による例示的な一態様では、1つ以上のセンサは、少なくとも第1のタイヤの外部に装着される。
【0021】
上記で参照したシステム実施形態による別の例示的な態様では、1つ以上のセンサは、タイヤ圧力監視システム(TPMS)センサを備える。
【0022】
上記で参照したシステム実施形態による別の例示的な態様では、コンピューティングデバイスは、車両に対して遠隔にあり、通信ネットワーク及び車両内に常駐する少なくとも第2のコンピューティングデバイスを介して1つ以上のセンサに機能的にリンクされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に例解する。
図1図1は、本明細書に開示されるようなトレッド深さ推定のためのシステムの一実施形態を表すブロック図である。
図2図2は、図1のシステムによる、タイヤ圧及び周囲温度を検出するための例示的なセンサの斜視図である。
図3図3は、本明細書に開示されるようなトレッド深さ推定のための方法の一実施形態を表すフローチャートである。
図4図4は、一定の運転条件下でのタイヤの例示的な含有空気温度プロファイルを表すグラフ図である。
図5図5は、ドラム試験に関連して、異なるトレッド深さの経時的な測定されたタイヤ冷却を表すグラフ図である。
図6図6は、トレッド深さと熱時定数との間の例示的な相関関係を表すグラフ図である。
図7図7は、試験結果ごとの質量損失を推定するためにタイヤ質量と熱時定数との間の関係を使用することの例示的な結果を表すグラフ図である。
図8図8は、タイヤの測定された実際のトレッド深さに対する、本開示の方法に従って予測されたトレッド深さの比較を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
概して図1図8を参照して、発明の様々な例示的な実施形態をここで詳細に説明してもよい。様々な図が、様々な共通の要素及び特徴を他の実施形態と共有する実施形態を説明することがある場合、同様の要素及び特徴は同じ参照番号を与えられ、その重複する説明は以下で省略されることがある。
【0025】
本明細書に開示されるようなシステムの様々な実施形態は、本明細書に開示されるような摩耗モデルを効果的に実装するために、複数の分散データコレクタ及び(例えば、個々のユーザ及び/又は車両と関連付けられた)コンピューティングノードと機能的に通信する集中型コンピューティングノード(例えば、クラウドサーバ)を含み得る。
【0026】
最初に図1を参照すると、システム100の例示的な実施形態は、車両にオンボードであり、少なくともデータを取得し、当該データをリモートサーバ130に送信し及び/又は本明細書に開示されるように関連する計算を実行するように構成されたコンピューティングデバイス102を含む。コンピューティングデバイスは、(図示されるように)分散車両データ収集及び制御システムの一部として携帯型若しくは別様にモジュール式であり得るか、又は別様に、中央車両データ収集制御システム(図示せず)に対して一体的に提供され得る。デバイスは、プロセッサ104と、プログラム論理108が常駐するメモリ106とを含み得る。様々な実施形態におけるコンピューティングデバイス102は、車両電子制御ユニット(vehicle electronic control unit、ECU)の一部であってもよく、又はそうでなければ、例えば車両装着に対して恒久的に又は取り外し可能に提供される、本質的に別個のものであってもよい。
【0027】
概して、本明細書に開示されるようなシステム100は、1つ以上の車両にわたって分散された多数の構成要素を実装し得るが、例えば必ずしもフリート管理エンティティに関連付けられておらず、更に、通信ネットワークを介して車両の各々と機能的に通信する中央サーバ130又はサーバネットワークを実装し得る。車両構成要素は、典型的には、例えば、コントローラエリアネットワーク(controller area network、CAN)バスネットワークにリンクされ、それによってローカル処理ユニットに信号を提供する、例えば、車体加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(inertial measurement unit、IMU)、全地球測位システム(global positioning system、GPS)トランスポンダ112などの位置センサ、タイヤ圧力監視システム(tire pressure monitoring system、TPMS)センサ送信機118及び関連付けられたオンボード受信機などの1つ以上のセンサを含み得る。例解される実施形態は、それによって、例解目的のために、本発明の範囲を別様に限定することなく、周囲温度センサ116と、例えば車両に関連付けられる加速データを収集するように構成された車両速度センサ114と、DC電源110と、を含む。本明細書に開示されるセンサのうちの1つ以上は、一体化され得るか、又はそうでない場合、構造内で個別かつ分散されているのではなく、所与のモジュール構造内に集合的に配置され得る。例えば、本明細書で言及されるようなタイヤ装着されたTPMSセンサは、複数のタイヤ固有の条件(例えば、加速度、圧力、温度)の各々に対応する出力信号を生成するように構成され得る。
【0028】
様々なバスインターフェース、プロトコル、及び関連ネットワークは、それぞれのデータソースとローカルコンピューティングデバイスとの間の通信に関して当技術分野で周知であり、当業者であれば、そのようなツール及びそれを実装するための手段の広範囲を認識するであろう。
【0029】
図1に表される実施形態は、本明細書に開示されるようなシステム又は方法の範囲を限定するものではなく、代替の実施形態では、モデル134のうちの1つ以上が、サーバレベルではなく、オンボードコンピューティングデバイス102においてローカルに実装され得ることに留意されたい。例えば、モデル134は、サーバレベルで経時的に生成及び訓練され、本明細書に開示されるような1つ以上のステップ又は動作のローカル実行のために搭載されたコンピューティングデバイス102にダウンロードされてもよい。
【0030】
他の代替の実施形態では、種々のセンサ112、114、116、118のうちの1つ以上は、オンボードコンピューティングデバイス102を介してではなく、リモートサーバ130と直接通信するように、又は車両のユーザによって携行されるモバイルコンピューティングデバイス(図示せず)を介して通信するように構成され得る。
【0031】
システム100は、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザのコンピューティングデバイス140上に常駐する追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための、車両に常駐するか、若しくはそのドライバに関連付けられたデバイス(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理デバイスは、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介してオンボードデバイス102に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによってオンボードで提供され得る。
【0032】
車両及びタイヤセンサ112、114、116、118は、一実施形態では、一意の識別子が更に提供され得、オンボードデバイスプロセッサ104は、同じ車両上のそれぞれのセンサから提供される信号を区別することができ、更に、特定の実施形態では、中央サーバ130及び/又はフリート保守管理者クライアントデバイス140は、複数の車両にわたってタイヤ101並びに関連付けられた車両及び/又はタイヤセンサから提供される信号を区別し得る。換言すれば、センサ出力値は、種々の実施形態において、本明細書に開示されるような計算のために、オンボード又は遠隔/下流のデータストレージ及び実装を目的として、特定のタイヤ101、特定の車両、及び/又は特定のタイヤ車両システムに関連付けられ得る。オンボードデバイスプロセッサ104は、図1に示すように、ホスト型サーバ130と直接通信し得るか、又は代替的には、ドライバのモバイルデバイス若しくはトラック装着されたコンピューティングデバイスが、オンボードデバイスの出力データを受信及び処理し/ホスト型サーバ130及び/又はフリート管理サーバ/デバイス140に送信するように構成され得る。
【0033】
特定の車両及び/又はタイヤセンサ112、114、116、118から受信された信号は、本明細書に開示される方法に従って計算するために必要に応じて選択的に取り出すために、オンボードデバイスメモリ106に記憶されるか、又はオンボードデバイスプロセッサ104に機能的にリンクされた等価なデータストレージネットワークに記憶され得る。本明細書で使用されるときの「データ記憶ネットワーク」は、一般に、データを記憶し、そこからのデータの選択的取り出しを可能にするように構成された個々の、集中化された、又は分散された論理的及び/又は物理的エンティティを指し得、例えば、限定はしないが、メモリ、ルックアップテーブル、ファイル、レジスタ、データベースなどを含み得る。いくつかの実施形態では、種々のセンサ112、114、116、118からの生データ信号は、車両からサーバ130に実質的にリアルタイムで通信され得る。代替的に、特に高周波データの連続データ伝送における固有の非効率を考慮して、データは、例えば、適切な通信ネットワークを介して、車両からリモートサーバ130へのより効率的な(例えば、周期的な時間ベース又は代替的に定義されたイベントベースの)送信のために、コンパイル、エンコード、及び/又は要約され得る。
【0034】
車両データ及び/又はタイヤデータは、通信ネットワークを介してホスト型サーバ130に送信されると、例えば、それと関連付けられたデータベース132に記憶され得る。サーバ130は、適切な入力として車両データ及び/又はタイヤデータを選択的に取り出し及び処理するために、本明細書に開示されるような1つ以上のアルゴリズムモデル134を含むか又は別様に関連付けられ得る。モデル134は、少なくとも部分的に、車両データ及び/又はタイヤデータの選択的な取り出しを可能にするプロセッサの実行を介して、更に、サーバ130に関連して記憶されているデータベース、ルックアップテーブルなどからの任意の追加のデータ又はアルゴリズムの入力のための電子通信において、実装され得る。
【0035】
システム100は、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザのコンピューティングデバイス140上に常駐するような追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための、車両に常駐するか、若しくはそのドライバに関連付けられたデバイス(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理デバイス140は、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介してオンボードデバイス102に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによってオンボードで提供され得る。
【0036】
従来のタイヤ圧力監視システム(TPMS)センサ118の一例は、TPMS受信機に機能的にリンクされたセンサ送信機を含み、それ自体がデータ処理ユニットに更にリンクされている。TPMSセンサ送信機は、タイヤホイール又はタイヤ101の内面のいずれかの上で、車両の各タイヤ101の内部空気キャビティ内に設けられてもよい。送信機は、所定の時間間隔でタイヤ101の内圧及び含有空気温度168を検出することができ、タイヤ101に関連付けられた一意の識別子と共に対応する値を受信機に無線で送信する。送信機は、例えば、タイヤバルブと一体化されるようにホイールリム158上に装着されてもよい。代替的に、送信機は、タイヤの内面に取り付けられてもよい。受信機は、例えばBluetoothなどの通信手段を介して送信機からデータ処理ユニットに信号を更に中継する。
【0037】
所与のタイヤの含有空気温度は、車両速度、タイヤ圧、垂直荷重、トレッド深さ、及び空気温度などの周囲条件の関数として説明され得る。典型的には、荷重及びトレッド深さは未知であり得る。本明細書に更に記載されるような様々な実施形態では、トレッド深さは、温度測定値に基づいて推定され得る。
【0038】
動作中のタイヤの圧力及び温度履歴は、3つの要因、すなわち、タイヤ転動及びタイヤと環境との間の熱伝導によるエネルギー散逸、タイヤホイールアセンブリの熱質量の量と共に変化する、タイヤの熱容量、及びヒートシンクとして作用する環境の周囲温度によって、主に駆動される。これらの要因間の関係を解釈することにより、タイヤ摩耗によってトレッドゴムが除去されるにつれて変化する、タイヤホイールアセンブリの現在の熱質量を識別するアルゴリズムを考案することが可能である。したがって、本開示は、経時的な圧力変化を監視し、これらを熱質量に、したがってタイヤの残りのゴム体積又は摩耗レベルに関連付けることによって、タイヤの摩耗のレベルを推定するためにこれらの関係を利用する方法を含む。
【0039】
本明細書に開示され、本実施形態と一致する例示的な技術は、タイヤ膨張圧力及び/又は温度を経時的に監視し、摩耗レベルを判断するために補足情報と共にこれを使用することに焦点を当ててもよい。情報の論理フローは、車両の動作データ及び環境データで開始することができ、これらの入力は、タイヤの熱モデル134に適用され、これにより熱質量を推定する。タイヤの熱質量は、残りのトレッド深さに更に関連し得る。統計的プロセス及び反復測定は、例えば機械学習技術の使用を通じて、アルゴリズム及び対応する経時的なタイヤ摩耗予測を改善する。
【0040】
車両が停止しており、タイヤが冷たく周囲温度が既知である特定の場合には、タイヤ熱質量の推定のために冷却速度の差が実装されてもよく、更に、タイヤ熱質量は、残りのタイヤトレッド深さの正確な指標として実装されてもよい。
【0041】
別の例として、タイヤ膨張圧力及び/又は含有空気温度は、車両が動作している間(例えば、単一の経路に対応する期間中)、経時的に監視されてもよく、周囲温度、及び車両速度、加速度などの経路情報は、既知のエンティティである。タイヤ熱質量は、例えば、タイヤ膨張圧力及び/又は温度値に関連付けられた履歴データに更に基づいて、(以下で更に論じられるように)タイヤに関連付けられたデジタルツインモデル134の較正を通じて推定されてもよく、タイヤが以前の基準に対してより高速に加熱し始めると、これはタイヤ熱質量、したがってタイヤ摩耗の減少の指標となる。
【0042】
一般的に言えば、図3を実例として参照すると、本明細書に開示されるような方法300の例示的な実施形態は、熱モデル(320)への入力として車両動作データ及び環境データを提供すること(ステップ310)と、少なくとも第1のタイヤについて、周囲温度及び含有空気温度に対応するタイヤ状態データを検出すること(ステップ322)とを含み得る。含有空気温度は、特定の実施形態では、直接測定されてもよく、又は以下に更に記載されるように、例えば適切な熱伝達モデル又は直接測定されたタイヤ膨張圧力に関連して、推定されるか又は別の方法で間接的に判定されてもよい。方法300は、検出された動作データ及びタイヤ状態データに少なくとも部分的に基づいて少なくとも第1のタイヤの熱質量を推定すること(ステップ324)と、それぞれの推定熱質量に少なくとも部分的に基づいて少なくとも第1のタイヤの現在のトレッド深さを推定すること(ステップ326)とを更に含む。
【0043】
一実施形態では、タイヤ過渡含有空気温度は、例えば以下の形式の一次微分方程式を使用して過渡含有空気温度を推定する単純な熱伝達モデル134を使用することによって、推定することができる。
T(t)=(Rssυ/hA)+T∞+(T-(Rssυ/hA)-T∞)e-t/ τ
ここで、T∞は周囲空気温度であり、Tは初期温度であり、Rssは定常転がり抵抗であり、υは車両速度であり、hは熱伝達係数であり、Aはタイヤの表面積であり、τは時定数である。定常転がり抵抗は、タイヤ膨張圧力、周囲空気温度、車両速度、垂直荷重、及びトレッド深さに依存し、時定数はタイヤの質量に依存する。
【0044】
タイヤにかかる荷重、車両速度、タイヤ膨張圧力、及び周囲空気温度が既知である場合、トレッド深さ及び質量(トレッド深さに関連する)は、唯一の未知の変数として分離することができる。例えば、カルマンフィルタを実装することにより、測定及び予測の不確実性を考慮することによって推定を改善することができる。
【0045】
上述のように、この実施形態は、タイヤにかかる荷重が既知であることを必要とする。しかしながら、温度測定値からタイヤのトレッド深さを判定するに関する1つの実際的な問題は、荷重が典型的に未知であることである。
【0046】
別の実施形態では、この問題は、一定期間走行した後にタイヤが冷却されているときに収集されたデータのみを考慮し、タイヤの単純な熱伝達モデル134を使用することによって、回避することができる。例えば、システムの熱エネルギーバランスは、以下の式を導く。
【0047】
【数1】
ここで、Qgenはタイヤによって生成される熱伝達率であり、Qsurrは周囲への熱伝達率であり、Qstoredはタイヤに蓄えられた熱伝達率である。
【0048】
全ての転がり抵抗が熱に変換されると仮定し、周囲への熱伝達のための対流のみを考慮することによって、式1は以下のように表すことができる。
【0049】
【数2】
ここで、Rは過渡転がり抵抗力であり、Vはタイヤの速度であり、hは熱伝達係数であり、Aは表面積であり、Tは温度であり、Tは周囲温度であり、mはタイヤの質量であり、cはタイヤの熱容量である。
【0050】
過渡転がり抵抗は、瞬間温度に線形に依存すると推定することができる。
【0051】
【数3】
ここで、Rssは定常転がり抵抗であり、Tssは定常転がり抵抗である。
【0052】
式3を式2に代入すると、以下のようになる。
【0053】
【数4】
【0054】
この線形一次微分方程式は、解析的に解くことができる。例えば、T項の前の定数はaとして特徴付けられてもよく、式の右辺の定数項は、aとして特徴付けられてもよい。すると、微分方程式の解は以下のようになる。
【0055】
【数5】
ここで、cは積分定数である。
【0056】
の解は、T(0)=Tの境界条件から求めることができるので、以下のようになる。
【0057】
【数6】
【0058】
また、式5からわかるように、定常温度はa/aに等しく、これは以下のように簡略化することができる。
【0059】
【数7】
【0060】
再び式5を参照すると、時定数は1/a1に等しく、これは以下をもたらす。
【0061】
【数8】
【0062】
式8は、通常動作の熱時定数が、転がり抵抗の関数であるために複雑であることを示唆している。これは、転がり抵抗が、荷重、圧力、速度、及び温度に応じて変化するからである。
【0063】
図4は、一定の運転条件下でのタイヤの典型的な温度プロファイルを示す。タイヤの加熱ではなく冷却(すなわち、タイヤが静止しているとき)に焦点を当てることにより、熱時定数は、単なるタイヤ質量の関数となる。
【0064】
【数9】
【0065】
この関係は、動作中の熱時定数に関与する転がり抵抗値に絡み合う複雑さを取り除くので、間違いなくはるかに単純である。簡単に言えば、タイヤの質量が小さいほど、タイヤは速く冷却される。タイヤの寿命中の質量損失は、実質的にトレッド損失に起因すると仮定することができるので、式9を使用してタイヤの質量の変化を判定することにより、トレッド深さの変化も推定することができる。
【0066】
タイヤの動作後に停止した後の一定期間にわたってタイヤの含有空気温度を測定することにより、熱時定数を推定することができる。次いで、例えば式9を使用することにより、タイヤの質量、続いてタイヤのトレッド深さを推定することができる。本明細書に開示されるような実施形態では、含有空気温度及び周囲温度のみが測定に必要とされることが可能である。したがって、必要なデータの一部又は全部を収集するために、従来のタイヤ装着センサ(例えば、TPMS)を使用することができる。
【0067】
上述のような方法300の一実施形態に従って含有空気温度及び周囲温度測定値からトレッド深さを更に推定するために、追加のパラメータが更に決定されてもよい。例えば、問題のタイヤが最初に取り付けられ、新品であることがわかっているとき、関連する熱時定数を温度データから推定することができ、式9の熱伝達特性は、以下によって決定することができる。
【0068】
【数10】
ここで、タイヤは新品なので、質量は既知であるか、又はタイヤ製造業者によって提供されると仮定される。
【0069】
次いで、タイヤが摩耗するにつれて、所与の時点での質量は、式10の結果と共に式9を使用して決定され得る。一実施形態では、熱時定数は、例えば以下の形式の一次微分方程式を使用して冷却データに最もよく適合する時定数を見つけることによって推定することができる。
【0070】
【数11】
【0071】
ここで、Tは周囲空気温度であり、Tは初期温度であり、τは時定数である。時定数は、タイヤの質量に比例して変化する。タイヤが摩耗するにつれて、質量が減少し、したがって時定数も減少する。別の言い方をすれば、タイヤは、大破の摩耗の増加に応じて、より速く加熱及び冷却される。タイヤが新品であるときに時定数を測定することにより、質量の変化(ひいてはトレッド深さの変化)を推定することができる。質量損失は、例えば幾何学的関係を使用して、トレッド損失に変換することができる。
【0072】
【数12】
ここで、Rはタイヤの外半径であり、wはトレッド幅であり、ρはトレッドゴム密度であり、Δhはトレッド損失である。トレッド密度は、例えば一般的な1100kg/mとして選択されてもよい。
【0073】
時定数の正確な測定値を得るために、冷却期間測定持続時間は十分でなければならない。これは、タイヤの種類及び残りのトレッドの量に基づいて変化するが、典型的には数分程度である。
【0074】
ブリヂストンTuranza EL440及びDestination A/Tの2つのタイヤから、上述の技術に従って実験データを収集した。タイヤをドラム上で試験し、バフ研磨し、次いで数回再試験した。温度測定値から計算された時定数の結果を以下に再現する。
【0075】
【表1】
【0076】
上記で参照した実施形態に従ってタイヤトレッド深さ推定値の精度を評価するために、ドラム試験を行った。ブリヂストンTuranza EL440タイヤを単一条件(5000N、230kPa、100kph)で30分間ドラム上で試験したが、これはタイヤが定常温度に達するのに十分な長さであった。次いで、ドラムを停止し、更に2時間(タイヤが試験チャンバ内で周囲温度まで冷却されるのに十分な時間)にわたってデータを収集した。次に、タイヤトレッドをより低いトレッド深さまでバフ研磨し、次いで、ドラム上に戻る前バフ研磨プロセスからタイヤが完全に冷却されるまで短い待ち時間を置いた。次に、同じ試験を行い、いくつかの異なるトレッド深さでこれを繰り返した。調査したトレッド深さは、7.5mm、6.0mm、4.5mm、及び2mmであった。これらのトレッド深さは、タイヤの主溝全体の、円周の周りの3つの異なる位置での平均であった。温度を測定したクラウン領域の中央のタイヤのインナーライナーにデバイスを取り付けた。試験チャンバの周囲温度も収集した。
【0077】
図5は、この試験の結果を示す。プロットからわかるように、トレッド深さと冷却温度プロファイルとの間の予想される関係は、これらの実験結果において明らかである。トレッド深さが減少するにつれて、タイヤはより速く冷却され、より小さい熱時定数を有するようになる。
【0078】
図6は、トレッド深さと熱時定数との間の強い相関関係を更に実証する。この強い相関関係自体は、特定の実施形態において、トレッド深さを推定するためのモデルを実質的に具現化し得るが、望ましくないことに、これは新しいタイヤ設計のたびに事前試験を必要とする可能性がある。
【0079】
図7は、各試験結果の質量損失を推定するためにタイヤ質量と熱時定数との間の関係を使用した結果を示し、事前試験を行う必要性を潜在的に排除する。これらの結果は、各トレッド深さについて測定された実際の質量損失と比較すると、ほぼ1対1の線上にある。
【0080】
図8は、図5に示されるデータに基づいてトレッド深さを推定するために、本明細書に開示されるような例示的なモデルを使用した結果を示す。図7及び図8の両方は、妥当な精度を実証しているが、図8は、最も低いトレッド深さデータ点(すなわち、図7の右上の点に対応する図8の左下の点)でわずかに低い精度を有する。この点について、予測された質量損失は、実際の質量損失に非常に近いが、予測されたトレッド深さは約0.5mmずれている。これは、トレッドパターンのより正確な幾何学的形状を使用することにより、トレッド深さ結果がはるかに正確になることを示唆している。想定されるより単純な幾何学的形状であっても、誤差は平均で5パーセント未満であり、最大で約0.5mmである。これらの結果は、大多数の用途に対して十分に許容可能であろう。
【0081】
本明細書に開示されるような一実施形態では、含有空気温度を直接測定するのではなく、タイヤ膨張圧力に基づいて含有空気温度が計算されてもよい。タイヤ膨張圧力は、理想気体の法則によって含有空気温度に関係する。
pV=NRT
ここで、pはタイヤ膨張圧力であり、Vは空気キャビティの体積であり、Nはモル数であり、Rは理想気体定数であり、Tは含有空気温度である。理想気体の法則に基づいて、体積及びモル数が一定のままであると仮定される場合、圧力と温度との間に直線関係があり、これは、無視できる空気の漏れがあり、体積の変化がないときの良好な仮定である。
【0082】
この実施形態は、キャビティの内部又は外部に装着可能な圧力センサを含有空気圧力の指標として使用することを可能にするので、含有空気温度の直接測定を必要とする実施形態に勝る価値を提供することができる。圧力及び内部温度の両方を感知する内部装着センサとは異なり、外部装着センサは、外部温度に曝され、したがって、含有空気温度を直接測定することができない。しかしながら、外部装着センサは、キャビティ圧力を測定する。外部タイヤ圧力監視システム(TPMS)デバイスは、少なくとも、例えばタイヤを取り外すことなく容易に取り付けられてアクセス可能であるため、その単純さのために好ましい場合がある。
【0083】
次に図2を参照すると、上記で論じられた一実施形態において、図1に示されるような内部装着タイヤ圧力監視システム(TPMS)センサ118は、相応に外部装着キャップ型センサ150に置き換えられてもよく、これは図示される例において、タイヤリム158から延びるバルブステム156ねじ止めされている。ホースを介して接続されるか又はバルブステムに埋め込まれた他のセンサもまた、本開示の範囲内であると考えられる。センサ150の2つの主要な構成要素は、外部周囲空気166の温度を測定するように構成された温度センサ152、及び含有空気圧力168を測定するように構成された圧力センサ154である。
【0084】
外部圧力センサ154及び温度センサ152が、例えばバルブステム156に装着された状態で、タイヤ圧に加えて、タイヤのすぐ外側の周囲温度166を測定することが可能である。これは、周囲が車両の車台上の受信機によって測定される場合よりも正確な周囲温度測定値を有益に提供し得る。加えて、受信機は今や、より単純な取付及び使用の多様性のため、車台から取り外し、任意の場所(例えば、キャビン内)に配置することができる。
【0085】
本明細書に開示されるような様々な実施形態は、無視できる空気の漏れを有する収容体積における圧力及び温度の関係に少なくとも部分的に基づいてもよい。当業者は、タイヤを通る空気の拡散に起因する数日及び数週間にわたる空気損失のみを有するタイヤホイールアセンブリに当てはまることを理解することができる。数時間程度の時間尺度にわたる空気損失は、本質的に無視できる。
【0086】
様々な実施形態では、方法300は、1つ以上の将来の時点における摩耗値を予測するためのモデル134への入力としてトレッド深さ推定値を提供することを更に伴うことができ(ステップ340)、そのような予測値は、それぞれの閾値と比較され得る。例えば、予測されたタイヤ摩耗状態(例えば、所与の距離、時間などにおける予測されたトレッド深さ)に対応するフィードバック信号が、インターフェースを介して、例えば、タイヤを交換すべきであるか、若しくは間もなく交換する必要があるという警告又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースを統合している、車両自体に関連付けられたオンボードデバイス102に、若しくはユーザに関連付けられたモバイルデバイスに提供され得る。他のタイヤ関連閾値事象は、本開示の範囲内で、例えば、タイヤ回転、位置合わせ、膨張などを含む予測されたタイヤ摩耗に基づいて、警報及び/又は介入のために予測及び実装され得る。システム100は、個々の閾値、閾値のグループ、及び/又は既定されたパラメータに対する非閾値アルゴリズム比較に基づいて、そのような警告及び/又は介入推奨を生成し得る。
【0087】
様々なタイヤ摩耗値は、例えば、様々な物理的部分、プロセス、又はシステムの「デジタルツイン」仮想表現に基づいて推定されてもよく、デジタル及び物理データがペアリングされ、例えばニューラルネットワークなどの学習システムと組み合わされる。例えば、車両からの実データ及び関連する位置/経路情報を提供して、タイヤ摩耗を推定するための車両タイヤのデジタル表現を生成してもよく、推定されたタイヤ摩耗と決定された実際のタイヤ摩耗とのその後の比較は、機械学習アルゴリズムのフィードバックとして実施してもよい。摩耗モデル134は、オンボードシステムを介して処理するために車両において実装され得るか、又は、タイヤデータ及び/若しくは車両データは、遠隔摩耗推定のために代表的なデータをホスト型サーバに提供するように処理され得る。
【0088】
タイヤ摩耗状態(例えば、トレッド深さ)は、例えば、特定の車両データと共にトラクションモデルへの入力として提供され得(ステップ350)、トラクションモデルは、それぞれのタイヤについての推定トラクション状態又は1つ以上のトラクション特性を提供するように構成され得る。前述の摩耗モデルと同様に、トラクションモデルは、物理的部分、プロセス、又はシステムの「デジタルツイン」仮想表現を含んでもよく、デジタル及び物理データがペアリングされ、例えば人工ニューラルネットワークなどの学習システムと組み合わされる。特定のタイヤ、車両、又はタイヤ-車両システムからの実車両データ及び/又はタイヤデータを、それぞれの資産のライフサイクル全体にわたって提供して、タイヤトラクションの推定のための車両タイヤの仮想表現を生成し得、推定タイヤトラクションと対応する測定又は判定された実際のタイヤトラクションとのその後の比較は、好ましくは、サーバレベルで実行される機械学習アルゴリズムのフィードバックとして実施し得る。
【0089】
トラクションモデルは、様々な実施形態において、多数のタイヤ-車両システム及び入力パラメータ(例えば、タイヤトレッド、膨張圧力、路面特性、車両速度及び加速度、スリップ率及び角度、垂直力、制動圧力及び負荷)の値の関連付けられた組み合わせに関して収集された、例えば、停止距離試験結果、タイヤトラクション試験結果などを含む事前試験からの結果を利用し得、タイヤトラクション出力は、現在の車両データ及びタイヤデータ入力の所与の設定について効果的に予測され得る。
【0090】
一実施形態では、このトラクションモデルからの出力は、アクティブセーフティシステムに組み込まれ得る。本明細書で使用するとき、「アクティブセーフティシステム」という用語は、好ましくは、衝突回避システム、高度運転補助システム(advanced driver-assistance system、ADAS)、アンチロック制動システム(anti-lock braking system、ABS)などの例を含むがこれらに限定されない、当業者に一般的に既知であるようなシステムを包含し得、これらは、最適な性能を達成するために、トラクションモデル出力情報を利用するように構成され得る。例えば、衝突回避システムは、典型的には、標的車両との潜在的な衝突を回避又は軽減するために、自車のブレーキを自動的に係合することなどの、及びタイヤのトラクション能力に関する情報の強化、ひいてはタイヤ車両システムの制動能力などの回避作用をとるように構成されており、タイヤのトラクション能力、すなわちタイヤ車両システムの制動能力に関する拡張情報が極めて望ましい。
【0091】
別の実施形態では、ライドシェア自律フリートは、トラクションモデルからの出力データを使用して、悪天候の間にトレッド深さが低い車両を使用不能にするか、又は別様に選択的に除去するか、又は潜在的にそれらの最大速度を制限し得る。
【0092】
種々の実施形態では、方法は、その時点の摩耗値を閾値に対して比較して、タイヤが例えば交換などの介入を必要とするかどうか(又はいつ必要とするか)を判定することを更に伴い得る(ステップ360)。方法は、代替的に又は更に、1つ以上の将来の時点における摩耗値を予測することを含み得、そのような予測値は、それぞれの閾値と比較され得る。例えば図1に表されるように、予測されたタイヤ摩耗状態(例えば、所与の距離、時間などにおける予測されたトレッド深さ)に対応するフィードバック信号は、インターフェース120を介して、車両自体に関連付けられたオンボードデバイス102に、又はユーザに関連付けられたモバイルデバイス140に提供され得、例えば、タイヤが交換されるべきであるか又は間もなく交換される必要があるという警報又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースと統合され得る。
【0093】
別の例として、自律車両フリートは、様々な最小トレッド状態値を有する多数の車両を含んでもよく、車両フリート管理システムは、最小閾値を下回る車両の配備を無効にするように構成されてもよい。フリート管理システムは、車輪位置に対応する様々な最小トレッド状態値を更に実装し得る。このシステムは、したがって、車両と関連付けられた複数のタイヤの各々の最小タイヤトレッド値に作用するように構成され得るか、又は一実施形態では、最小閾値と比較するために、複数のタイヤの集約されたトレッド状態を計算し得る。
【0094】
様々な実施形態では、本方法は、閾値違反が検出されない場合であってもデータストリーミングを更に含んでもよく、推定及び/又は予測された摩耗値は、ローカルユーザインターフェース及び/又はリモートディスプレイ(例えば、フリート管理サーバと関連付けられる)上にリアルタイムで表示されることができ、更に表示されるデータは、例えば、含有空気温度を含んでもよい。
【0095】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそうでない旨を指示しない限り、以下の用語は、少なくとも、本明細書に明示的に関連する意味をとる。以下で識別される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、単に用語の例解的な例を提供するものである。「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含み得、「in」の意味は、「in」及び「on」を含み得る。本明細書で使用されるとき、「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、指すこともあり得る。
【0096】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両方の組み合わせとして実装することができる。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例解するために、様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、及びステップは、概して、それらの機能性に関して上で説明されている。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例、及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。説明された機能性は、それぞれの特定の適用例ごとに様々な方式で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0097】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック及びモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)若しくは他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲート若しくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、又は本明細書に説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなど、機械によって実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替として、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、それらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0098】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、又はこれら2つの組み合わせで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD-ROM、又は当該技術分野において既知の任意の他の形態のコンピュータ可読媒体内に常駐することができる。例示的なコンピュータ可読媒体は、プロセッサがメモリ/記憶媒体から情報を読み取り、メモリ/記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合され得る。代替として、媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び媒体は、ASIC内に常駐することができる。ASICは、ユーザ端末内に常駐することができる。代替として、プロセッサ及び媒体は、ユーザ端末内の別個の構成要素として常駐することができる。
【0099】
本明細書で使用される、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「など(e.g.)」など、条件付き文言は、具体的に別途記載のない限り、又はさもなければ使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は、それらの特定の特徴、要素、及び/又は状態を含まないことを伝えることを概して意図する。したがって、そのような条件付き文言は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態のために何らかの方式で必要とされることを示唆することを概して意図せず、また、1つ以上の実施形態が、オーサー入力又はプロンプティングを用いて又は用いないで、これらの特徴、要素、及び/又は状態が、何らかの特定の実施形態に含まれるか又はそれにおいて実行されるべきかどうかを決定するための論理を、必ず含むことを示唆することを概して意図しない。
【0100】
本発明の特定の好ましい実施形態は、典型的には、フリート管理システム、より具体的には自律型車両フリート又は商業用トラック用途のためのタイヤ摩耗推定に対して明細書に説明されることがあるが、本発明は、それに全くもって明示的に限定されるものではなく、本明細書で使用されるとき「車両」という用語は、別途記載のない限り、自己推進式であるかどうかにかかわらず、1つ以上のタイヤを含み得る、自動車、トラック、又はそれらの任意の等価物を指し、したがってタイヤ摩耗及び/又はタイヤトラクションの正確な推定又は予測、並びに、例えば直接車両制御調節の形態での潜在的な無効化、交換、又は介入を必要とし得る。
【0101】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、「ユーザ」という用語は、例えば、本明細書に開示される特徴及びステップを提供するためのユーザインターフェースを有するデバイスと関連付けられ得る、ドライバ、搭乗者、メカニック、技術者、フリート管理職員、又は任意の他の人物若しくはエンティティを指し得る。
【0102】
前述の詳細な説明は、例解及び説明の目的のために提供されている。したがって、新規で有用な発明の特定の実施形態を説明してきたが、このような参照が、以下の特許請求の範囲における記載を除いて、本発明の範囲への限定として解釈されることを意図しない。

【要約】
【解決手段】 車両に装着されたタイヤに残っているトレッド深さを推定するためのシステム及び方法が開示される。車両に関連付けられた動作データ、並びに周囲温度及び含有空気温度に対応するタイヤ測定値を検出するための1つ以上のセンサが提供され、これらは、直接測定されるか又は測定されたタイヤ圧から導出され得る。タイヤの熱質量は、少なくとも検出された動作データ及びタイヤ状態に基づいて推定され、タイヤの現在のトレッド深さは、それぞれの推定熱質量に少なくとも部分的に基づいて推定される。特定の実施形態では、熱質量推定は、車両が移動していない間のタイヤの冷却段階中に取り込まれた測定値に限定された熱伝達モデルを使用して実行されてもよく、これにより、対応する時定数の計算を簡略化する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8