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特許7448734予備充電スイッチの故障判定を行うモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】予備充電スイッチの故障判定を行うモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240305BHJP
【FI】
H02P29/024
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023571769
(86)(22)【出願日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2023030323
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒典
(72)【発明者】
【氏名】於保 勇作
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/219823(WO,A1)
【文献】特開2016-005317(JP,A)
【文献】国際公開第2022/208885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータの直流出力側であるDCリンクに設けられたコンデンサの予備充電期間中における突入電流を抑制する予備充電抵抗と、
前記予備充電抵抗に対して並列接続された予備充電スイッチであって、前記予備充電期間中は開動作が指令され、前記予備充電期間以外の期間であるモータ駆動期間中は閉動作が指令される予備充電スイッチと、
入力された電圧の値を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部に入力される電圧を、前記予備充電抵抗の電圧である第1の電圧と前記予備充電抵抗の電圧以外の電圧である第2の電圧との間で選択的に切り替える入力切替え部と、
前記電圧検出部により検出された電圧の値に基づいて、前記予備充電スイッチの故障の有無を判定する故障判定部と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記故障判定部は、前記モータ駆動期間中において、前記入力切替え部により第1の電圧が前記電圧検出部に入力されているときに前記電圧検出部により検出された電圧の値が、所定の閾値より高い場合、前記予備充電スイッチに故障が発生したと判定する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記第2の電圧は、前記DCリンクの正側電位と負側電位との電位差であるDCリンク電圧である、請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記予備充電抵抗に並列接続された第1の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗を有する第1の分圧回路と、
前記DCリンクの前記正側電位と前記負側電位との間に接続された第2の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗を有する第2の分圧回路と、
を備え、
前記入力切替え部は、前記電圧検出部の入力端子の接続先を、前記第1の分圧抵抗同士の接続点のうちの1つと前記第2の分圧抵抗同士の接続点のうちの1つとの間で選択的に切り替える、請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記第2の電圧は、前記DCリンクの正側電位及び負側電位のうちの1つと接地電位との電位差である対地間電圧である、請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
駆動するモータの絶縁状態を検出する絶縁状態検出部と、
前記交流電源と前記コンバータとの間の電路を開閉する開閉部と、
を備え、
前記絶縁状態検出部により前記モータの絶縁状態を検出する処理を実行している期間中は、前記開閉部は前記交流電源と前記コンバータとの間の電路を開状態に設定し、前記入力切替え部は前記電圧検出部に入力される電圧を前記第2の電圧に設定し、
前記モータ駆動期間中及び前記予備充電期間中は、前記開閉部は前記交流電源と前記コンバータとの間の電路を閉状態に設定し、前記入力切替え部は前記電圧検出部に入力される電圧を前記第1の電圧に設定する、請求項5に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記故障判定部は、前記予備充電期間中は、前記予備充電スイッチの故障の有無を判定する処理を停止する、請求項6に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記予備充電抵抗に並列接続された第1の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗を有する第1の分圧回路と、
前記DCリンクの前記正側電位及び前記負側電位のうちの1つと前記接地電位との間に接続された第2の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗を有する第2の分圧回路と、
を備え、
前記入力切替え部は、前記電圧検出部の入力端子の接続先を、前記第1の分圧抵抗同士の接続点のうちの1つと前記第2の分圧抵抗同士の接続点のうちの1つとの間で選択的に切り替える、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記予備充電抵抗に並列接続された第1の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗を有する第1の分圧回路と、
前記DCリンクの前記正側電位及び前記負側電位のうちの1つと前記接地電位との間に接続された第2の分圧回路であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗を有する第2の分圧回路と、
を備え、
前記入力切替え部は、前記第2の分圧抵抗同士を結ぶ電路を開閉する対地間電圧検出用スイッチを有する、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
前記故障判定部が前記予備充電スイッチに故障が発生したと判定した場合にアラームを出力するアラーム出力部を備える、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予備充電スイッチの故障判定を行うモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流モータを駆動するモータ駆動装置には、コンバータ及びインバータが設けられる。コンバータは交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して出力する。インバータはこの直流電力をモータの駆動ための交流電力に変換して出力する。
【0003】
コンバータの直流出力側とインバータの直流入力側との間には、コンバータの直流出力の脈動分を抑える機能及び直流電力を蓄積する機能を有するコンデンサが設けられる。コンデンサは、モータ駆動装置の電源投入後からモータの駆動開始前(すなわちインバータによる電力変換動作開始前)までの間に所定の大きさの電圧に充電しておく必要がある。この充電は、「予備充電」または「初期充電」とも称される。
【0004】
予備充電はコンデンサにエネルギーが十分に蓄積されていない状態から開始されるので、モータ駆動装置の電源投入直後に交流電源からコンバータを介してコンデンサへ向けて大きな突入電流が流れる。このため、モータ駆動装置には、予備充電期間中の突入電流を抑制するための予備充電回路が設けられる。予備充電回路は、「初期充電回路」または「突入電流抑制回路」とも称される。
【0005】
一般に、予備充電回路は、突入電流を抑制する予備充電抵抗と、予備充電抵抗と並列接続された予備充電スイッチとを有する。予備充電中は、スイッチを開状態にして予備充電抵抗によって突入電流を抑制し、予備充電完了後のモータ駆動期間中は、予備充電スイッチを閉状態にして予備充電抵抗をバイパスさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-116432号公報
【文献】特開平03-239163号公報
【文献】再公表WO2013/018411号公報
【文献】特開2005-201669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モータ駆動期間中は、予備充電スイッチが正常に閉動作しているのであれば、コンバータからインバータへ流れる電流は、予備充電スイッチを介して流れる。しかしながら、予備充電スイッチ自体やその制御回路に異常が発生して予備充電スイッチがオープン故障すると、モータ駆動期間中であってもコンバータからインバータへ流れる電流は予備充電抵抗を介して流れ、予備充電抵抗が過熱して発火や破損が発生するおそれがある。したがって、予備充電回路に対する過熱保護を確実に実行できるようにする技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータの直流出力側であるDCリンクに設けられたコンデンサの予備充電期間中における突入電流を抑制する予備充電抵抗と、予備充電抵抗に対して並列接続された予備充電スイッチであって、予備充電期間中は開動作が指令され、予備充電期間以外の期間であるモータ駆動期間中は閉動作が指令される予備充電スイッチと、入力された電圧の値を検出する電圧検出部と、電圧検出部に入力される電圧を、予備充電抵抗の電圧である第1の電圧と予備充電抵抗の電圧以外の電圧である第2の電圧との間で選択的に切り替える入力切替え部と、電圧検出部により検出された電圧の値に基づいて、予備充電スイッチの故障の有無を判定する故障判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
図2】本開示の第1の実施形態においてモータ駆動期間中に電圧検出部により検出された電圧の波形を例示する図である。
図3】本開示の第1の実施形態及びその変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
図4】本開示の第1の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
図5】本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
図6】本開示の第2及び第3の実施形態においてモータ駆動期間中及び非常停止期間中に電圧検出部により検出された電圧の波形を例示する図である。
図7】本開示の第2及び第3の実施形態並びにこれらの変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
図8】本開示の第2の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
図9】本開示の第3の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
図10】本開示の第3の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の予備充電スイッチの故障判定を行うモータ駆動装置を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は、省略する場合がある。理解を容易にするために、図面は縮尺を適宜変更している。
【0011】
以下の説明では、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータは、「整流装置」、「整流回路」、「整流器」、「順変換器」とも称される。直流電力を交流電力に変換して出力するインバータは、「逆変換器」とも称される。「DCリンク」とは、コンバータの直流出力側とインバータの直流入力側とを電気的に接続する回路部分のことを指し、「DCリンク部」、「直流リンク」、「直流リンク部」、「直流母線」または「直流中間回路」とも称される。予備充電回路は、「初期充電回路」または「突入電流抑制回路」とも称される。予備充電スイッチの「オープン故障」とは、予備充電スイッチに対して閉動作を指令したにもかかわらずスイッチが閉動作せずに開状態のままにある異常をいう。「予備充電期間」とは、コンデンサに対する予備充電を実行している期間をいう。「モータ駆動期間」とは、モータ駆動装置によりモータを駆動している期間をいう。「非常停止期間」とは、非常停止指令によりモータ駆動装置が非常停止している期間をいう。「予備充電抵抗の電圧」とは、予備充電抵抗の両端の電位差、または予備充電抵抗の両端の電位差を分圧抵抗により分圧して得られた電圧をいう。「DCリンク電圧」とは、DCリンクの正側電力線における正側電位と負側電力線における負側電位との電位差、またはDCリンクの正側電力線における正側電位と負側電力線における負側電位との電位差を分圧抵抗により分圧して得られた電圧をいう。
【0012】
<本開示の第1の実施形態>
図1は、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
【0013】
本開示の第1の実施形態並びに後述する第2及び第3の実施形態では、一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、交流のモータ3を駆動する場合について示す。交流電源2及びモータ3の相数は各実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。ここでは、一例として、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。また、モータ3の個数は実施形態を特に限定するものではなく、複数個であってもよいが、ここでは、一例として、モータ3を1個としている。モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、及びロボットなどが含まれる。
【0014】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ101と、インバータ102と、コンデンサ103と、モータ制御部104と、予備充電回路10と、電圧検出部13と、入力切替え部14と、故障判定部15と、開閉部17と、第1の分圧回路18と、第2の分圧回路19と、アラーム出力部20と、開閉制御部24と、スイッチ制御部31と、入力切替え制御部32と、コンバータ制御部33とを備える。
【0015】
開閉部17は、コンバータ101の交流入力側に設けられ、交流電源2とコンバータ101との間の電路を開閉する。開閉部17の開閉動作は、開閉制御部24により制御される。交流電源2とコンバータ101との間の電路を形成する閉動作は、開閉部17の接点が閉成することにより実現される。交流電源2とコンバータ101との間の電路を遮断する開動作は、開閉部17の接点が開離することにより実現される。開閉部17は、例えば、電磁接触器、リレー、半導体スイッチング素子などで構成される。開閉制御部24による開閉指令に関する情報は、故障判定部15にも送られる。
【0016】
コンバータ101は、交流電源2から閉状態にある開閉部17を介して供給された交流電力を直流電力に変換し、この直流電力をコンバータ101の直流出力側であるDCリンクへ出力する。図1に示す例では、交流電源2は三相交流電源であるので、コンバータ101は三相ブリッジ回路で構成される。交流電源2が単相交流電源である場合は、コンバータ101は単相ブリッジ回路で構成される。コンバータ101の例としては、PWMスイッチング制御方式整流器、ダイオード整流器、及び120度通電方式整流器などがある。図1に示す例では、コンバータ101は、PWMスイッチング制御方式整流器で構成されている。例えば、コンバータ101がPWMスイッチング制御方式整流器または120度通電方式整流器で構成される場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、コンバータ制御部33から受信した駆動指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ制御されて交直双方向に電力変換を行う。スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、その他のスイッチング素子であってもよい。
【0017】
コンデンサ103は、コンバータ101の直流出力側とインバータ102の直流入力側との間のDCリンクに設けられる。コンデンサ103の一端はDCリンクの正側電力線41Pに接続され、コンデンサ103の他の一端はDCリンクの負側電力線41Nに接続される。コンデンサ103は、「DCリンクコンデンサ」、「直流リンクコンデンサ」または「平滑コンデンサ」と称されることがある。コンデンサ103は、コンバータ101の直流出力の脈動分を抑える機能と、インバータ102が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能とを有する。コンデンサ103の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
【0018】
インバータ102は、コンバータ101の直流出力側にコンデンサ103を介して接続される。インバータ102は、DCリンクにおける直流電力をモータ3を駆動するための交流電力に変換してインバータ102の交流出力側へ出力する。インバータ102は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。インバータ102は、モータ3が三相交流モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、モータ3が単相交流モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。図1に示す例では、モータ3を三相交流モータとしたので、インバータ102は三相ブリッジ回路で構成される。スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがあるが、その他のスイッチング素子であってもよい。インバータ102は、例えばPWMスイッチング制御方式によりその電力変換動作が制御される。すなわち、インバータ102は、モータ制御部104からの駆動指令(PWMスイッチング指令)を受けてDCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してこれをモータ3へ出力する。また、インバータ102は、モータ回生時にはモータ制御部104からの駆動指令(PWMスイッチング指令)を受けてモータ3で回生された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する。
【0019】
モータ制御部104は、モータ3の速度(速度フィードバック)、モータ3の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、速度指令、トルク指令、位置指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、モータ3の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するための駆動指令を生成する。モータ制御部104で生成された駆動指令は、インバータ102内のスイッチング素子に送られる。なお、ここで定義したモータ制御部104の構成はあくまでも一例であって、例えば、位置指令作成部、速度指令生成部、トルク指令作成部、及びスイッチング指令作成部などの用語を含めてモータ制御部104の構成を規定してもよい。
【0020】
予備充電回路10は、DCリンク上に設けられる。図1に示す例では、予備充電回路10はDCリンクの正側電力線41P上に設けられる。後述するように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられてもよい。
【0021】
予備充電回路10は、予備充電抵抗11と予備充電スイッチ12とを備える。
【0022】
予備充電抵抗11は、コンデンサ103に対する予備充電の期間中における突入電流を抑制する。予備充電スイッチ12は、予備充電抵抗11に並列接続される。予備充電スイッチ12の例としては、リレー、半導体スイッチング素子などがあるが、その他のスイッチ部品であってもよい。半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがあるが、その他のスイッチング素子であってもよい。
【0023】
予備充電スイッチ12は、スイッチ制御部31による制御によりコンバータ101とコンデンサ103との間の電路を開閉する。スイッチ制御部31は、予備充電期間中は予備充電スイッチ12に対して開動作を指令し、予備充電期間以外の期間であるモータ駆動期間中は予備充電スイッチ12に対して閉動作を指令する。スイッチ制御部31による開閉指令に関する情報は、故障判定部15にも送られる。
【0024】
予備充電スイッチ12が正常に開閉動作する場合、予備充電抵抗11を介した電路が形成される開状態と、予備充電抵抗11を介さない短絡回路が形成される閉状態とが選択的に切り替えられる。より詳細には次の通りである。開閉制御部24の制御により開閉部17が閉成されてモータ駆動装置1に電源が投入されると、交流電源2からモータ駆動装置1へ電力が供給され始め、コンデンサ103に対する予備充電が開始される。モータ駆動装置1の電源投入後からモータ3の駆動開始前までの予備充電期間中は、スイッチ制御部31は予備充電スイッチ12に対して開動作を指令し、これを受けて予備充電スイッチ12は開状態を維持する。これにより、予備充電期間中は、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ流れ込み、コンデンサ103が充電(予備充電)される。このように、予備充電期間中は、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。予備充電の開始後、コンデンサ103が所定の充電電圧まで充電されると、スイッチ制御部31は予備充電スイッチ12に対して閉動作を指令し、これを受けて予備充電スイッチ12は閉状態を維持する。これにより、コンデンサ103に対する予備充電を完了する。予備充電の完了後、モータ制御部104によるモータ3の駆動が開始される。モータ駆動期間中は、コンバータ101から出力される電流は、閉状態の予備充電スイッチ12を通じて、コンデンサ103及びインバータ102へ向けて流れる。インバータ102は、モータ制御部104の駆動指令を受けて、DCリンクにおける直流電力をモータ3を駆動するための交流電力に変換してインバータ102の交流出力側へ出力する。
【0025】
電圧検出部13は、入力された電圧の値を検出する。より詳細には、電圧検出部13は、入力された電圧に関するアナログ波形に基づき、当該電圧の値に関するディジタルデータを出力する。後述するように、電圧検出部13に入力される電圧には、第1の電圧と第2の電圧の2種類がある。
【0026】
入力切替え部14は、電圧検出部13に入力される電圧を、予備充電抵抗11の電圧である第1の電圧と予備充電抵抗11の電圧以外の電圧である第2の電圧との間で選択的に切り替える。入力切替え部14の切替え動作は、入力切替え制御部32によって制御される。入力切替え部14は、2つの入力から1つを選択して出力するマルチプレクサである。入力切替え部14は、例えばアナログスイッチ、またはリレーなどによって構成される。入力切替え部14は、第1の電圧が入力される第1の入力端子と、第2の電圧が入力される第2の入力端子と、切替え状態に応じて第1の電圧及び第2の電圧のうちの一方を出力する出力端子とを有する。入力切替え制御部32により設定された入力切替え部14の切替え状態に関する情報は、故障判定部15にも送られる。
【0027】
本開示の第1の実施形態では、第2の電圧は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位とDCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位との電位差であるDCリンク電圧である。よって、電圧検出部13には、入力切替え部14を介して、第1の電圧である予備充電抵抗11の電圧と第2の電圧であるDCリンク電圧とが選択的に入力される。
【0028】
電圧検出部13の入力レンジに収まる電圧が入力されるように、予備充電抵抗11の電圧を検出するための第1の分圧回路18と、DCリンク電圧を検出するための第2の分圧回路19とが設けられる。
【0029】
第1の分圧回路18は、予備充電抵抗11に並列接続される。第1の分圧回路18は、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗21を有する。第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第1の入力端子に接続される。
【0030】
第2の分圧回路19は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位とDCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位との間に接続される。第2の分圧回路19は、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する。第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第2の入力端子に接続される。
【0031】
なお、予備充電抵抗の電圧を検出するための分圧回路及びDCリンク電圧を検出するための分圧回路はモータ駆動装置に既に設けられていることがあるので、これら既存の回路を第1の分圧回路18及び第2の分圧回路19として流用してもよい。これにより、モータ駆動装置1のコストアップを抑制することができる。
【0032】
入力切替え部14においては、入力切替え制御部32の制御により、電圧検出部13の入力端子の接続先が、第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが接続された第1の入力端子と第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが接続された第2の入力端子との間で選択的に切り替えられる。予備充電抵抗11の電圧は、第1の分圧抵抗21によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。DCリンク電圧は、第2の分圧抵抗22によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。
【0033】
入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧が切り替えられることにより、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値及びDCリンク電圧の値のうちのいずれかを検出する。入力切替え部14は、モータ駆動期間中の大半は、電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定する。また、入力切替え部14は、モータ駆動期間中において所定の頻度(例えば数秒に1回の頻度)で、電圧検出部13に入力される電圧を、所定の時間(例えば数ミリ秒~数十ミリ秒)だけ予備充電抵抗11の電圧に設定する。なお、ここで挙げた数値は、あくまでも一例であって、これ以外の数値であってもよい。
【0034】
電圧検出部13によって検出されたDCリンク電圧の値に関するデータは、モータ制御部104によるインバータ102の制御、コンバータ制御部33によるコンバータ101の制御、予備充電期間中におけるスイッチ制御部31による予備充電スイッチ12の制御などに用いられる。また、電圧検出部13によって検出された予備充電抵抗11の電圧の値に関するデータは、モータ駆動期間中における故障判定部15による故障判定処理に用いられる。
【0035】
故障判定部15は、電圧検出部13により検出された電圧の値に基づいて、予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する。図2は、本開示の第1の実施形態においてモータ駆動期間中に電圧検出部により検出された電圧の波形を例示する図である。図2では、一例として、時刻t5以降で予備充電スイッチ12のオープン故障が継続的に発生している。なお、図2に関する説明で挙げた数値は、あくまでも一例であって、これ以外の数値であってもよい。
【0036】
図2に示すように、時刻0~時刻t1、時刻t2~時刻t3、及び時刻t4~時刻t6において、入力切替え部14は電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定している。したがってこの間は、電圧検出部13はDCリンク電圧(図中、太い点線で示す)の値を検出する。
【0037】
また、時刻t1~時刻t2、時刻t3~時刻t4、及び時刻t6~時刻t7において、入力切替え部14は電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定している。したがってこの間は、電圧検出部13は予備充電抵抗11の電圧(図中、太い実線で示す)の値を検出する。
【0038】
時刻t5以前は予備充電スイッチ12は正常に閉動作しているので、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を介して流れ、予備充電抵抗11には流れない。よって、時刻t1~時刻t2、及び時刻t3~時刻t4において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値はほぼ0ボルトである。
【0039】
時刻t5以降で予備充電スイッチ12のオープン故障が継続的に発生すると、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を流れず、予備充電抵抗11を介して流れる。よって、時刻t6~時刻t7において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値(例えば数ボルト~数十ボルト)となる。なお、ここで挙げた数値は、あくまでも一例であって、これ以外の数値であってもよい。
【0040】
このように、モータ駆動期間中に予備充電スイッチ12にオープン故障が発生すると、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値となる。そこで、本開示の第1の実施形態では、故障判定部15は、モータ駆動期間中において、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値が、所定の閾値より高い場合、予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定する。
【0041】
上述したように、入力切替え制御部32により設定された入力切替え部14の切替え状態に関する情報は、故障判定部15にも送られている。したがって、故障判定部15は、入力切替え部14の切替え状態を把握することができる。故障判定部15は、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されていることを確認したうえで、上述の故障判定処理を実行する。
【0042】
故障判定部15による故障判定処理に用いられる閾値は、「予備充電抵抗11に電圧が発生したこと」を検出することができる程度に設定すればよく、例えば0ボルトよりもある程度高い電圧(例えば数ボルトから数十ボルト)に設定する。閾値については、例えば実験もしくは実際の運用によりモータ駆動装置1を動作させたり、またはコンピュータによるシミュレーションにより、モータ駆動装置1の適用環境や予備充電抵抗11の抵抗値と予備充電回路10に流れ得る電流との関係性などを適宜考慮して、設定すればよい。例えば抵抗値が10オームの予備充電抵抗11に1アンペアの電流が流れると、予備充電抵抗11の電圧は10ボルトとなるので、電圧閾値を例えば4ボルト程度に設定しておく。なお、ここで挙げた数値は一例であって、これ以外の数値であってもよい。なお、閾値については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、これによれば、閾値を一旦設定した後であっても必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0043】
なお、予備充電期間中は、予備充電スイッチ12は開状態に維持されるので、コンバータ101から予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ電流が流れる。よって、予備充電期間中も予備充電抵抗11に電圧が発生するが、この電圧は予備充電スイッチ12の故障の有無に関係なく発生するので、故障判定部15による故障判定処理に用いることはできない。このことから、故障判定部15は、予備充電期間中においては予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する処理を停止する。
【0044】
故障判定部15による判定結果は、アラーム出力部20に送られる。アラーム出力部20は、故障判定部15が予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定した場合にアラームを出力する。
【0045】
アラーム出力部20から出力されたアラームは、例えばモータ制御部104に送られる。モータ制御部104は、アラーム出力部20からアラームを受信したとき、インバータ102による電力変換動作を停止する処理を実行してもよい。
【0046】
また、アラーム出力部20から出力されたアラームや故障判定部15による判定結果は、例えば表示部(図示せず)に送られてもよい。表示部は、故障判定部15の判定結果を表示する。表示部は、例えば「予備充電スイッチが故障」、「予備充電スイッチが正常」といった表示を行う。表示部は、単体のディスプレイ装置、コンバータ101に付属のディスプレイ装置、インバータ102に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置1に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置1を制御する上位制御装置(図示せず)に付属のディスプレイ装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属のディスプレイ装置などがある。
【0047】
また、アラーム出力部20から出力されたアラームや故障判定部15による判定結果は、例えば音響装置に送られてもよい。音響装置は、例えば音声、ブザー、チャイムなどのような音を発する。音響装置は、故障判定部15の判定結果を音により作業者に報知する。音響装置は、例えば予備充電スイッチ12が故障した場合は音を発し、予備充電スイッチ12が正常である場合は音を発しない。
【0048】
また、アラーム出力部20から出力されたアラームや故障判定部15による判定結果は、例えばプリンタに送られてもよい。プリンタは、故障判定部15による判定結果をプリントアウトする。
【0049】
以上、故障判定部15による判定結果の作業者に対する報知の例について述べたが、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。また、故障判定部15による判定結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0050】
作業者は、報知された故障判定部15による判定結果に基づき、予備充電スイッチ12の故障を迅速かつ確実に把握することができる。作業者は、故障判定部15による判定結果により予備充電スイッチ12が故障していることが確認できた場合は、例えば予備充電スイッチ12またはこれを含む予備充電回路10の交換または修理をするといった対応をとることができる。
【0051】
図3は、本開示の第1の実施形態及びその変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0052】
上述のように、本開示の第1の実施形態では、入力切替え部14は、モータ駆動期間中の大半は、電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定するが、モータ駆動期間中において所定の頻度(例えば数秒に1回の頻度)で、電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧から予備充電抵抗11の電圧に切り替えるタイミングを決定するために、入力切替え制御部32は、例えばタイマ(図示せず)を有する。入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定した時点でタイマによるカウントを開始し、タイマのカウント値が規定値(例えば数秒)に達した時点で入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧から予備充電抵抗11の電圧に切り替える。入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定し、故障判定部15により予備充電スイッチ12が正常と判定された時点で、タイマのカウント値をリセットする。
【0053】
コンデンサ103に対する予備充電完了後のモータ駆動期間中において、まずステップS101では、入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第1の分圧回路18(第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つ)から第2の分圧回路19(第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つ)に切り替えることで、電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定する。この時点で、入力切替え制御部32は、タイマのカウント値を0に設定する。
【0054】
ステップS102において、入力切替え制御部32は、タイマのカウント値をインクリメントする(カウント値を進める)。
【0055】
ステップS103において、電圧検出部13は、DCリンク電圧の値を検出する。電圧検出部13によって検出されたDCリンク電圧の値に関するデータは、モータ制御部104によるインバータ102の制御、及びコンバータ制御部33によるコンバータ101の制御などに用いられる。
【0056】
ステップS104において、入力切替え制御部32は、タイマのカウント値が規定値に達したか否かを判定する。
【0057】
ステップS104においてタイマのカウント値が規定値に達していないと判定された場合は、ステップS102へ戻る。
【0058】
ステップS104においてタイマのカウント値が規定値に達したと判定された場合は、ステップS105において、入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第2の分圧回路19から第1の分圧回路18に切り替えることで、電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。
【0059】
ステップS106において、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値を検出する。電圧検出部13によって検出された予備充電抵抗11の電圧の値に関するデータは、故障判定部15に送られる。
【0060】
ステップS107において、故障判定部15は、電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧が所定の閾値よりも高いか否かを判定する。
【0061】
ステップS107において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定されなかった場合は、ステップS108において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12は正常であると判定する。ステップS109において、入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第1の分圧回路18から第2の分圧回路19に切り替えることで、電圧検出部13に入力される電圧をDCリンク電圧に設定する。ステップS110において、入力切替え制御部32はタイマのカウント値を0にリセットし、その後、ステップS102へ戻る。
【0062】
ステップS107において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定された場合は、ステップS111において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12にオープン故障が発生したと判定する。ステップS112において、アラーム出力部20はアラームを出力し、その後、処理を終了する。
【0063】
図4は、本開示の第1の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【0064】
図1に示した例では、予備充電回路10をDCリンクの正側電力線41P上に設けたが、本変形例では、図4に示すように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられる。
【0065】
本開示の第1の実施形態の変形例によるモータ駆動装置1の構成要素のうち、コンバータ101、インバータ102、コンデンサ103、モータ制御部104、電圧検出部13、モータ制御部104、故障判定部15、開閉部17、第1の分圧回路18、第2の分圧回路19、アラーム出力部20、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、及びコンバータ制御部33については、図1図3に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。
【0066】
図4に示すように、予備充電回路10は、予備充電抵抗11と予備充電スイッチ12とを備える。予備充電スイッチ12は、予備充電抵抗11に並列接続される。モータ駆動装置1の電源投入後からモータ3の駆動開始前までの予備充電期間中は、スイッチ制御部31は予備充電スイッチ12に対して開動作を指令し、これを受けて予備充電スイッチ12は開状態を維持する。これにより、予備充電期間中は、コンバータ101の正側直流端子、DCリンクの正側電力線41P、コンデンサ103、DCリンクの負側電力線41N上の予備充電抵抗11、及びコンバータ101の負側直流端子からなる電流経路を構成する。予備充電期間中は、コンデンサ103の負極端子から流れ出る電流は予備充電抵抗11を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。予備充電の開始後、コンデンサ103が所定の充電電圧まで充電されると、スイッチ制御部31は予備充電スイッチ12に対して閉動作を指令し、これを受けて予備充電スイッチ12は閉状態を維持する。これにより、コンデンサ103に対する予備充電を完了する。予備充電の完了後、モータ制御部104によるモータ3の駆動が開始される。モータ駆動期間中は、予備充電スイッチ12が正常に動作すれば閉状態に維持されるので、予備充電抵抗11には電流が流れない。
【0067】
<本開示の第2の実施形態>
図5は、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
【0068】
図1図4を参照して説明した第1の実施形態及びその変形例では、電圧検出部13に入力される第2の電圧をDCリンク電圧とした。本開示の第2の実施形態及びその変形例では、電圧検出部13に入力される第2の電圧を、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位及び負側電力線41Nにおける負側電位のうちの1つと接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧としている。
【0069】
図5に示すように、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ101と、インバータ102と、コンデンサ103と、モータ制御部104と、予備充電回路10と、電圧検出部13と、入力切替え部14と、故障判定部15と、絶縁状態検出部16と、開閉部17と、第1の分圧回路18と、第2の分圧回路19と、アラーム出力部20と、開閉制御部24と、スイッチ制御部31と、入力切替え制御部32と、コンバータ制御部33とを備える。
【0070】
本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置1の構成要素のうち、コンバータ101、インバータ102、コンデンサ103、モータ制御部104、第1の分圧回路18、アラーム出力部20、スイッチ制御部31、及びコンバータ制御部33については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。
【0071】
図5に示す例では、予備充電回路10はDCリンクの正側電力線41P上に設けられる。予備充電回路10の動作については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。後述するように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられてもよい。
【0072】
予備充電回路10がDCリンクの正側電力線41P上に設けられる本開示の第2の実施形態では、第2の電圧は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位と接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧である。よって、電圧検出部13には、入力切替え部14を介して第1の電圧である予備充電抵抗11の電圧と、第2の電圧である対地間電圧とが選択的に入力される。
【0073】
電圧検出部13の入力レンジに収まる電圧が入力されるように、予備充電抵抗11の電圧を検出するための第1の分圧回路18と、対地間電圧を検出するための第2の分圧回路19とが設けられる。
【0074】
第1の分圧回路18については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第1の入力端子に接続される。
【0075】
予備充電回路10がDCリンクの正側電力線41P上に設けられるので、第2の分圧回路19は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位と接地電位との間に接続される。第2の分圧回路19は、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する。第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第2の入力端子に接続される。
【0076】
なお、予備充電抵抗の電圧を検出するための分圧回路及び対地間電圧を検出するための分圧回路はモータ駆動装置に既に設けられていることがあるので、これら既存の回路を第1の分圧回路18及び第2の分圧回路19として流用してもよい。これにより、モータ駆動装置1のコストアップを抑制することができる。
【0077】
入力切替え部14においては、入力切替え制御部32の制御により、電圧検出部13の入力端子の接続先が、第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが接続された第1の入力端子と第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが接続された第2の入力端子との間で選択的に切り替えられる。予備充電抵抗11の電圧は、第1の分圧抵抗21によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。対地間電圧は、第2の分圧抵抗22によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。
【0078】
入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧が切り替えられることにより、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値と対地間電圧(DCリンクの正側電位と接地電位との電位差)の値とのうちのいずれかを検出する。入力切替え部14は、モータ駆動期間中は、電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。また、入力切替え部14は、モータ駆動期間中に非常停止が指令された場合は、電圧検出部13に入力される電圧を、対地間電圧に設定する。モータ3に対する非常停止の指令は、例えば、モータ駆動装置1またはこれに付随する装置に何らかの異常が発生したときや、作業者が非常停止ボタンを操作したときなどに発生する。
【0079】
電圧検出部13によって検出された対地間電圧の値に関するデータは、非常停止が指令された際に実行されるモータ3の絶縁状態検出処理などに用いられる。また、電圧検出部13によって検出された予備充電抵抗11の電圧の値に関するデータは、モータ駆動期間中における故障判定部15による故障判定処理に用いられる。
【0080】
絶縁状態検出部16は、モータ3の絶縁状態を検出する。絶縁状態検出部16による絶縁状態検出処理は、モータ3に対して非常停止が指令された際に実行される。モータ3に対して非常停止が指令されると、モータ制御部104は、インバータ102に対してモータ3を停止させる処理を実行し、開閉制御部24は、開閉部17に対して開動作を指令する。モータ3の巻線とインバータ102の接地電位との間には抵抗(図示せず)が設けられており、この抵抗と、コンデンサ103と、第2の分圧回路19と、接地電位との間で閉回路が形成される。開状態にある開閉部17により交流電源2からの電力が遮断され、かつモータ3が停止している状態において、コンデンサ103の残留電荷は、上述の閉回路を流れる。絶縁状態検出部16による絶縁状態検出処理では、このときのDCリンク電圧と、モータ3の巻線とDCリンクの負側電力線41Nとの間の電位差と、対地間電圧を検出する。対地間電圧は、電圧検出部13によって検出される。DCリンク電圧と、モータ3の巻線とDCリンクの負側電力線41Nとの間の電位差とは、それぞれ別の電圧検出部(図示せず)によって検出される。絶縁状態検出部16は、DCリンク電圧と、モータ3の巻線とDCリンクの負側電力線41Nとの間の電位差と、電圧検出部13によって検出された対地間電圧とに基づいて、公知の計算式に基づいて、モータ3の絶縁抵抗値を検出する。
【0081】
絶縁状態検出部16によって算出されたモータ3の絶縁抵抗値に関するデータは、表示部(図示せず)に送られる。表示部は、モータ3の絶縁抵抗値を表示する。表示部は、単体のディスプレイ装置、コンバータ101に付属のディスプレイ装置、インバータ102に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置1に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置1を制御する上位制御装置(図示せず)に付属のディスプレイ装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属のディスプレイ装置などがある。
【0082】
一般に、モータ3の巻線とモータ3の筐体は互いに絶縁されているが、経年劣化や切削液浸入により絶縁性能が劣化し、モータ駆動電流が筐体を通じて接地線に流れ出て地絡状態に陥ることがある。その結果、モータ3が設置された工場の漏電遮断器が動作してモータ3が設けられた機械が停止したり、作業者が感電したりするリスクが生じる。作業者は、絶縁状態検出部16により検出されたモータ3の絶縁抵抗値に基づいてモータ3の絶縁性能の劣化状況を監視することができる。作業者は、モータ3の絶縁抵抗値に基づき絶縁劣化の兆候を把握した時点でモータ交換等の事前に対策をとることで、上記リスクを抑えることができる。
【0083】
絶縁状態検出部16によりモータ3の絶縁状態を検出する処理を実行している期間中は、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を対地間電圧に設定する。これにより、モータ駆動装置1が交流電源2から電気的に切り離されるので、予備充電抵抗11には電流が流れない。したがって、予備充電抵抗11の電圧はほぼ0ボルトであり、電圧検出部13による対地間電圧の値の検出には影響しない。
【0084】
また、モータ駆動期間中及び予備充電期間中は、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。
【0085】
図6は、本開示の第2及び第3の実施形態においてモータ駆動期間中及び非常停止期間中に電圧検出部により検出された電圧の波形を例示する図である。図6に示す波形は、本開示の第2の実施形態及び第3の実施形態の両方に適用可能である。図6では、一例として、時刻0でモータ駆動期間が開始され、時刻t1でモータ3が非常停止し、時刻t2でモータ3の非常停止が解除され、時刻t2~時刻t3の間でコンデンサ103に対する予備充電が実行され、時刻t3で再びモータ駆動期間が開始され、時刻t4以降で予備充電スイッチ12のオープン故障が継続的に発生した例を示している。なお、図6に関する説明で挙げた数値は、あくまでも一例であって、これ以外の数値であってもよい。
【0086】
図6に示すように、時刻0~時刻t1において、入力切替え部14は電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定している。したがってこの間は、電圧検出部13は予備充電抵抗11の電圧(図中、太い実線で示す)の値を検出する。予備充電スイッチ12は正常に閉動作しているので、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を介して流れ、予備充電抵抗11には流れない。よって、時刻0~時刻t1において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値はほぼ0ボルトである。
【0087】
時刻t1でモータ3が非常停止すると、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を対地間電圧に設定する。時刻t1~時刻t2の非常期間中は、電圧検出部13は対地間電圧(図中、太い点線で示す)の値を検出する。非常停止期間中、絶縁状態検出部16は、モータ3の絶縁状態を検出する。
【0088】
時刻t2でモータ3の非常停止が解除されると、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、スイッチ制御部31は、予備充電期間中は予備充電スイッチ12に対して開動作を指令する。この時点では予備充電スイッチ12は正常に開動作するので、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ流れ込み、コンデンサ103は充電(予備充電)される。また、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。予備充電期間中は、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を流れるので、予備充電抵抗11に電圧が発生する。したがって、時刻t2~時刻t3の予備充電期間中は、電圧検出部13は予備充電抵抗11の電圧(図中、太い実線で示す)の値を検出する。予備充電期間中は、予備充電抵抗11の電圧は予備充電スイッチ12の故障の有無に関係なく発生するので、故障判定部15による故障判定処理に用いることはできない。このことから、故障判定部15は、予備充電期間中においては予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する処理を停止する。
【0089】
時刻t3でコンデンサ103に対する予備充電が完了すると、モータ制御部104によるモータ3の駆動が開始される。この間も、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。時刻t3~時刻t4においては、予備充電スイッチ12は正常に閉動作しているので、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を介して流れ、予備充電抵抗11には流れない。よって、時刻t3~時刻t4において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値はほぼ0ボルトである。
【0090】
時刻t4以降で予備充電スイッチ12のオープン故障が継続的に発生すると、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を流れず、予備充電抵抗11を介して流れる。よって、時刻t4以降において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値(例えば数ボルト~数十ボルト)となる。
【0091】
このように、モータ駆動期間中に予備充電スイッチ12にオープン故障が発生すると、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値となる。そこで、本開示の第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、故障判定部15は、モータ駆動期間中において、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値が、所定の閾値より高い場合、予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定する。故障判定部15による故障判定処理に用いられる閾値については、図2を参照して第1の実施形態において説明した通りである。
【0092】
また、第2の実施形態においても、入力切替え制御部32により設定された入力切替え部14の切替え状態に関する情報は、故障判定部15にも送られている。したがって、故障判定部15は、入力切替え部14の切替え状態を把握することができる。故障判定部15は、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されていることを確認したうえで、上述の故障判定処理を実行する。
【0093】
図7は、本開示の第2及び第3の実施形態並びにこれらの変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、本開示の第2の実施形態及び第3の実施形態並びにこれらの変形例のいずれにも適用可能である。
【0094】
ステップS201において、入力切替え制御部32は、モータ駆動期間であるか否かを判定する。
【0095】
ステップS201においてモータ駆動期間であると判定された場合は、ステップS202において、入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第2の分圧回路19(第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つ)から第1の分圧回路18(第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つ)に切り替えることで、電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。
【0096】
ステップS203において、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値を検出する。
【0097】
ステップS204において、モータ制御部104は、モータ3に対する非常停止が指令されたか否かを判定する。
【0098】
ステップS204においてモータ3に対する非常停止が指令されたと判定された場合は、モータ制御部104は、インバータ102に対してモータ3を停止させる処理を実行し、ステップS205において、開閉部17は、開閉制御部24の制御により開動作を実行し、交流電源2からコンバータ101への電力の供給を遮断する。
【0099】
ステップS206において、入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第1の分圧回路18から第2の分圧回路19に切り替えることで、電圧検出部13に入力される電圧を対地間電圧に設定する。
【0100】
ステップS207において、電圧検出部13は、対地間電圧の値を検出する。
【0101】
ステップS208において、絶縁状態検出部16は、DCリンク電圧と、モータ3の巻線とDCリンクの負側電力線41Nとの間の電位差と、電圧検出部13によって検出された対地間電圧とに基づいて、モータ3の絶縁抵抗値を検出する。
【0102】
ステップS209において、モータ制御部104は、モータ3に対する非常停止が解除されたか否かを判定する。
【0103】
ステップS209においてモータ3の非常停止が解除されたと判定された場合は、ステップS210において、開閉部17は開閉制御部24の制御により閉動作を実行し、コンバータ101に対して交流電源2から電力を供給する(電源投入)。
【0104】
ステップS211において、スイッチ制御部31は、予備充電スイッチ12に対して開動作を指令する。この時点では予備充電スイッチ12は正常に開動作するので、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ流れ込み、コンデンサ103は充電(予備充電)される。コンデンサ103に対する予備充電が完了した後は、ステップS201へ戻る。
【0105】
一方、ステップS204においてモータ3に対する非常停止が指令されたと判定されなかった場合は、ステップS212において、故障判定部15は、電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧が所定の閾値よりも高いか否かを判定する。
【0106】
ステップS212において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定されなかった場合は、ステップS213において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12は正常であると判定する。その後、ステップS201へ戻る。
【0107】
ステップS212において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定された場合は、ステップS214において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12にオープン故障が発生したと判定する。ステップS215において、アラーム出力部20はアラームを出力し、その後、処理を終了する。
【0108】
図8は、本開示の第2の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【0109】
図5に示した例では、予備充電回路10をDCリンクの正側電力線41P上に設けたが、本変形例では、図8に示すように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられる。予備充電回路10は、予備充電抵抗11と予備充電スイッチ12とを備える。予備充電スイッチ12は、予備充電抵抗11に並列接続される。予備充電回路10の動作については、図4に示した第1の実施形態の変形例に関して説明した通りである。
【0110】
本開示の第2の実施形態の変形例によるモータ駆動装置1の構成要素のうち、コンバータ101、インバータ102、コンデンサ103、モータ制御部104、電圧検出部13、モータ制御部104、故障判定部15、開閉部17、第1の分圧回路18、アラーム出力部20、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、及びコンバータ制御部33については、図5図7に示した第2の実施形態に関して説明した通りである。
【0111】
本変形例では、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられるので、第2の電圧は、DCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位と接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧である。よって、電圧検出部13には、入力切替え部14を介して第1の電圧である予備充電抵抗11の電圧と、第2の電圧である対地間電圧とが選択的に入力される。
【0112】
電圧検出部13の入力レンジに収まる電圧が入力されるように、予備充電抵抗11の電圧を検出するための第1の分圧回路18と、対地間電圧を検出するための第2の分圧回路19とが設けられる。
【0113】
第1の分圧回路18については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第1の入力端子に接続される。
【0114】
第2の分圧回路19は、DCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位と接地電位との間に接続される。第2の分圧回路19は、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する。第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第2の入力端子に接続される。
【0115】
入力切替え部14においては、入力切替え制御部32の制御により、電圧検出部13の入力端子の接続先が、第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが接続された第1の入力端子と第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが接続された第2の入力端子との間で選択的に切り替えられる。予備充電抵抗11の電圧は、第1の分圧抵抗21によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。対地間電圧は、第2の分圧抵抗22によって電圧検出部13の入力レンジに収まるよう分圧される。
【0116】
入力切替え部14により電圧検出部13に入力される電圧が切り替えられることにより、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値と対地間電圧(DCリンクの負側電位と接地電位との電位差)の値とのうちのいずれかを検出する。入力切替え部14は、モータ駆動期間中は、電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。また、入力切替え部14は、モータ駆動期間中に非常停止が指令された場合は、電圧検出部13に入力される電圧を、対地間電圧に設定する。
【0117】
<本開示の第3の実施形態>
図9は、本開示の第3の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
【0118】
本開示の第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、電圧検出部13に入力される第2の電圧を、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位及び負側電力線41Nにおける負側電位と接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧としている。
【0119】
図9に示すように、本開示の第3の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ101と、インバータ102と、コンデンサ103と、モータ制御部104と、予備充電回路10と、電圧検出部13と、入力切替え部14と、故障判定部15と、絶縁状態検出部16と、開閉部17と、第1の分圧回路18と、第2の分圧回路19と、アラーム出力部20と、開閉制御部24と、スイッチ制御部31と、入力切替え制御部32と、コンバータ制御部33とを備える。
【0120】
本開示の第3の実施形態によるモータ駆動装置1の構成要素のうち、コンバータ101、インバータ102、コンデンサ103、モータ制御部104、予備充電回路10、アラーム出力部20、スイッチ制御部31、及びコンバータ制御部33については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、開閉部17、第2の分圧回路19、開閉制御部24、及び入力切替え制御部32については、図5に示した第2の実施形態に関して説明した通りである。
【0121】
図9に示す例では、予備充電回路10はDCリンクの正側電力線41P上に設けられる。予備充電回路10は、予備充電抵抗11と予備充電スイッチ12とを備える。予備充電スイッチ12は、予備充電抵抗11に並列接続される。予備充電回路10の動作については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。後述するように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられてもよい。
【0122】
予備充電回路10がDCリンクの正側電力線41P上に設けられる本開示の第3の実施形態では、第2の電圧は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位と接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧である。よって、電圧検出部13には、入力切替え部14を介して第1の電圧である予備充電抵抗11の電圧と、第2の電圧である対地間電圧とが選択的に入力される。
【0123】
電圧検出部13の入力レンジに収まる電圧が入力されるように、予備充電抵抗11の電圧を検出するための第1の分圧回路18と、対地間電圧を検出するための第2の分圧回路19とが設けられる。
【0124】
第1の分圧回路18については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第1の入力端子に接続される。
【0125】
第2の分圧回路19は、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位と接地電位との間に接続される。第2の分圧回路19は、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する。第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第2の入力端子に接続される。
【0126】
なお、予備充電抵抗の電圧を検出するための分圧回路及び対地間電圧を検出するための分圧回路はモータ駆動装置に既に設けられていることがあるので、これら既存の回路を第1の分圧回路18及び第2の分圧回路19として流用してもよい。これにより、モータ駆動装置1のコストアップを抑制することができる。
【0127】
入力切替え部14は、第2の分圧抵抗22同士を結ぶ電路を開閉する対地間電圧検出用スイッチ42を有する。対地間電圧検出用スイッチ42は、第2の分圧抵抗22同士を結ぶ電路を開閉する位置に設けられればよく、図9に示す例では、一例として第2の分圧抵抗22と接地電位との間に設けられている。他の例として、対地間電圧検出用スイッチ42は、第2の分圧抵抗22同士の間に設けられてもよく、あるいは、DCリンクの正側電力線41Pにおける正側電位と第2の分圧抵抗22との間に設けられてもよい。
【0128】
入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により、開閉動作を行う。
【0129】
絶縁状態検出部16によりモータ3の絶縁状態を検出する処理を実行している期間中は、開閉部17は、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により閉動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が対地間電圧(DCリンクの正側電位と接地電位との電位差)に設定される。モータ駆動装置1が交流電源2から電気的に切り離されるので、予備充電抵抗11には電流が流れない。したがって、予備充電抵抗11の電圧はほぼ0ボルトであり、電圧検出部13による対地間電圧の値の検出には影響しない。
【0130】
また、モータ駆動期間中及び予備充電期間中は、開閉部17は、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が予備充電抵抗11の電圧に設定される。
【0131】
図6に示した波形は、本開示の第3の実施形態にも適用可能である。
【0132】
図6に示すように、時刻0~時刻t1において、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧として予備充電抵抗11の電圧が設定される。したがってこの間は、電圧検出部13は予備充電抵抗11の電圧(図中、太い実線で示す)の値を検出する。予備充電スイッチ12は正常に閉動作しているので、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を介して流れ、予備充電抵抗11には流れない。よって、時刻0~時刻t1において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値はほぼ0ボルトである。
【0133】
時刻t1でモータ3が非常停止すると、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は入力切替え制御部32の制御により閉動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧として対地間電圧が設定される。モータ駆動装置1が交流電源2から電気的に切り離されるので、予備充電抵抗11には電流が流れない。したがって、予備充電抵抗11の電圧はほぼ0ボルトであり、電圧検出部13による対地間電圧の値の検出には影響しない。時刻t1~時刻t2の非常期間中は、電圧検出部13は対地間電圧(図中、太い点線で示す)の値を検出する。非常停止期間中、絶縁状態検出部16は、モータ3の絶縁状態を検出する。
【0134】
時刻t2でモータ3の非常停止が解除されると、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧として予備充電抵抗11の電圧が設定される。スイッチ制御部31は、予備充電期間中は予備充電スイッチ12に対して開動作を指令する。この時点では予備充電スイッチ12は正常に開動作するので、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ流れ込み、コンデンサ103は充電(予備充電)される。予備充電期間中は、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を流れるので、予備充電抵抗11に電圧が発生する。したがって、時刻t2~時刻t3の予備充電期間中は、電圧検出部13は予備充電抵抗11の電圧(図中、太い実線で示す)の値を検出する。予備充電期間中は、予備充電抵抗11の電圧は予備充電スイッチ12の故障の有無に関係なく発生するので、故障判定部15による故障判定処理に用いることはできない。このことから、故障判定部15は、予備充電期間中においては予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する処理を停止する。
【0135】
時刻t3でコンデンサ103に対する予備充電が完了すると、モータ制御部104によるモータ3の駆動が開始される。この間も、開閉部17は開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14は入力切替え制御部32の制御により電圧検出部13に入力される電圧を予備充電抵抗11の電圧に設定する。時刻t3~時刻t4においては、予備充電スイッチ12は正常に閉動作しているので、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を介して流れ、予備充電抵抗11には流れない。よって、時刻t3~時刻t4において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値はほぼ0ボルトである。
【0136】
時刻t4以降で予備充電スイッチ12のオープン故障が継続的に発生すると、コンバータ101からインバータ102へ流れる電流は、予備充電スイッチ12を流れず、予備充電抵抗11を介して流れる。よって、時刻t4以降において電圧検出部13により検出される予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値(例えば数ボルト~数十ボルト)となる。
【0137】
このように、モータ駆動期間中に予備充電スイッチ12にオープン故障が発生すると、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値は、0ボルトよりある程度大きい値となる。そこで、本開示の第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態と同様に、故障判定部15は、モータ駆動期間中において、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧の値が、所定の閾値より高い場合、予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定する。故障判定部15による故障判定処理に用いられる閾値については、図2を参照して第1の実施形態において説明した通りである。
【0138】
また、第3の実施形態においても、入力切替え制御部32により設定された入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42の開閉状態に関する情報は、故障判定部15にも送られている。したがって、故障判定部15は、対地間電圧検出用スイッチ42の開閉状態を把握することができる。故障判定部15は、入力切替え部14により予備充電抵抗11の電圧が電圧検出部13に入力されていることを確認したうえで、上述の故障判定処理を実行する。
【0139】
図7に示したフローチャートは、本開示の第3の実施形態及びその変形例にも適用可能である。
【0140】
ステップS201において、入力切替え制御部32は、モータ駆動期間であるか否かを判定する。
【0141】
ステップS201においてモータ駆動期間であると判定された場合は、ステップS202において、開閉部17は、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が予備充電抵抗11の電圧に設定される。
【0142】
ステップS203において、電圧検出部13は、予備充電抵抗11の電圧の値を検出する。
【0143】
ステップS204において、モータ制御部104は、モータ3に対する非常停止が指令されたか否かを判定する。
【0144】
ステップS204においてモータ3に対する非常停止が指令されたと判定された場合は、モータ制御部104は、インバータ102に対してモータ3を停止させる処理を実行し、ステップS205において、開閉部17は、開閉制御部24の制御により開動作を実行し、交流電源2からコンバータ101への電力の供給を遮断する。
【0145】
ステップS206において、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は入力切替え制御部32の制御により閉動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧として対地間電圧が設定される。
【0146】
ステップS207において、電圧検出部13は、対地間電圧の値を検出する。
【0147】
ステップS208において、絶縁状態検出部16は、DCリンク電圧と、モータ3の巻線とDCリンクの負側電力線41Nとの間の電位差と、電圧検出部13によって検出された対地間電圧とに基づいて、モータ3の絶縁抵抗値を検出する。
【0148】
ステップS209において、モータ制御部104は、モータ3に対する非常停止が解除されたか否かを判定する。
【0149】
ステップS209においてモータ3の非常停止が解除されたと判定された場合は、ステップS210において、開閉部17は開閉制御部24の制御により閉動作を実行し、コンバータ101に対して交流電源2からの電力を供給する(電源投入)。また、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が予備充電抵抗11の電圧に設定される。
【0150】
ステップS211において、スイッチ制御部31は、予備充電スイッチ12に対して開動作を指令する。この時点では予備充電スイッチ12は正常に開動作するので、コンバータ101から出力される電流は予備充電抵抗11を介してコンデンサ103へ流れ込み、コンデンサ103は充電(予備充電)される。コンデンサ103に対する予備充電が完了した後は、ステップS201へ戻る。
【0151】
一方、ステップS204においてモータ3に対する非常停止が指令されたと判定されなかった場合は、ステップS212において、故障判定部15は、電圧検出部13により検出された予備充電抵抗11の電圧が所定の閾値よりも高いか否かを判定する。
【0152】
ステップS212において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定されなかった場合は、ステップS213において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12は正常であると判定する。その後、ステップS201へ戻る。
【0153】
ステップS212において予備充電抵抗11の電圧が閾値より高いと判定された場合は、ステップS214において、故障判定部15は、予備充電スイッチ12にオープン故障が発生したと判定する。ステップS215において、アラーム出力部20はアラームを出力し、その後、処理を終了する。
【0154】
図10は、本開示の第3の実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【0155】
図9に示した例では、予備充電回路10をDCリンクの正側電力線41P上に設けたが、本変形例では、図10に示すように、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられる。予備充電回路10は、予備充電抵抗11と予備充電スイッチ12とを備える。予備充電スイッチ12は、予備充電抵抗11に並列接続される。予備充電回路10の動作については、図4に示した第1の実施形態の変形例に関して説明した通りである。
【0156】
本開示の第3の実施形態の変形例によるモータ駆動装置1の構成要素のうち、コンバータ101、インバータ102、コンデンサ103、モータ制御部104、アラーム出力部20、スイッチ制御部31、及びコンバータ制御部33については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、開閉部17、及び開閉制御部24については、図5図7に示した第2の実施形態に関して説明した通りである。
【0157】
本変形例では、予備充電回路10はDCリンクの負側電力線41N上に設けられるので、第2の電圧は、DCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位と接地電位(グランド電位)との電位差である対地間電圧である。よって、電圧検出部13には、入力切替え部14を介して第1の電圧である予備充電抵抗11の電圧と、第2の電圧である対地間電圧とが選択的に入力される。
【0158】
電圧検出部13の入力レンジに収まる電圧が入力されるように、予備充電抵抗11の電圧を検出するための第1の分圧回路18と、対地間電圧を検出するための第2の分圧回路19とが設けられる。
【0159】
第1の分圧回路18については、図1に示した第1の実施形態に関して説明した通りである。第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第1の入力端子に接続される。
【0160】
第2の分圧回路19は、DCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位と接地電位との間に接続される。第2の分圧回路19は、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する。第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つが、入力切替え部14の第2の入力端子に接続される。
【0161】
入力切替え部14は、第2の分圧抵抗22同士を結ぶ電路を開閉する対地間電圧検出用スイッチ42を有する。対地間電圧検出用スイッチ42は、第2の分圧抵抗22同士を結ぶ電路を開閉する位置に設けられればよく、図10に示す例では、一例として第2の分圧抵抗22と接地電位との間に設けられている。他の例として、対地間電圧検出用スイッチ42は、第2の分圧抵抗22同士の間に設けられてもよく、あるいは、DCリンクの負側電力線41Nにおける負側電位と第2の分圧抵抗22との間に設けられてもよい。
【0162】
入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により、開閉動作を行う。
【0163】
絶縁状態検出部16によりモータ3の絶縁状態を検出する処理を実行している期間中は、開閉部17は、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により閉動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が対地間電圧(DCリンクの負側電位と接地電位との電位差)に設定される。モータ駆動装置1が交流電源2から電気的に切り離されるので、予備充電抵抗11には電流が流れない。したがって、予備充電抵抗11の電圧はほぼ0ボルトであり、電圧検出部13による対地間電圧の値の検出には影響しない。
【0164】
また、モータ駆動期間中及び予備充電期間中は、開閉部17は、開閉制御部24の制御により交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14内の対地間電圧検出用スイッチ42は、入力切替え制御部32の制御により開動作を行う。これにより、電圧検出部13に入力される電圧が予備充電抵抗11の電圧に設定される。
【0165】
<本開示の各実施形態及びその変形例に共通の事項>
【0166】
モータ駆動装置1内には、演算処理装置である少なくとも1つのプロセッサが設けられる。演算処理装置としては、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。演算処理装置は、モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、コンバータ制御部33、及びその他の処理部を有する。演算処理装置が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ上で実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。例えば、モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、コンバータ制御部33、及びその他の処理部をプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのプログラムに従って動作させることで、各部の機能を実現することができる。モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、コンバータ制御部33、及びその他の処理部における各処理を実行するためのプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。またあるいは、モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、コンバータ制御部33、及びその他の処理部を、各部の機能を実現するプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
【0167】
また、モータ駆動装置1内には、記憶装置である少なくとも1つのメモリが設けられる。メモリは、モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、及びコンバータ制御部33内の各種記憶部も含む。メモリとしては、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどがある。また、記憶装置は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などのような構成を有してもよい。メモリには、モータ制御部104、電圧検出部13、故障判定部15、絶縁状態検出部16、アラーム出力部20、開閉制御部24、スイッチ制御部31、入力切替え制御部32、コンバータ制御部33、及びその他の処理部を動作させるためのプログラムが格納される。また、メモリには、故障判定部による故障判定処理で用いられる閾値が格納される。また、メモリには、モータ駆動装置1に関連する各種プログラム及び各種データが格納される。
【0168】
以上説明したように、本開示の各実施形態及びこれらの変形例によれば、予備充電回路に対する過熱保護を確実に実行できる。本開示の各実施形態及びこれらの変形例によれば、予備充電スイッチのオープン故障を容易に検出することができる。作業者は、故障判定結果に基づき、予備充電回路内の予備充電スイッチの状態を迅速かつ確実に把握することができる。作業者は、故障判定結果により予備充電スイッチがオープン故障していることが確認できた場合は、当該オープン故障している予備充電スイッチまたはこれを含む予備充電回路の交換または修理をするといった対応をとることができる。したがって、予備充電スイッチのオープン故障に起因する過熱を未然に防ぐことができ、予備充電スイッチの発火や破損といった異常を回避することができる。
【0169】
予備充電回路に対する過熱保護の従来技術として、予備充電スイッチが設けられた基板上に温度検出素子を設置して温度を監視する方法がある。しかしながら、温度検出素子を用いた従来技術による方法によると、温度検出素子の設置位置や温度検出素子と予備充電抵抗との距離の程度によっては、温度検出素子により検出された温度と予備充電スイッチの実際の温度とが乖離していたり、温度検出素子による温度検出に遅延が生じたりして十分な過熱保護が行えない可能性がある。これに対し、本開示の各実施形態及びこれらの変形例によれば、予備充電抵抗の電圧に基づいて故障判定を行うので、温度検出素子に依存することなく予備充電抵抗の過熱異常を迅速に検出することができ、なお、予備充電回路に対する過熱保護を確実に実行することができる。
【0170】
また、温度検出素子により検出された温度と予備充電スイッチの実際の温度との乖離を防ぐために、予備充電スイッチ内部に温度検出素子を埋め込む従来技術も存在するが、温度検出素子を埋め込んだ特注品の予備充電スイッチを用意することはモータ駆動装置のコストアップにつながるため、好ましくない。これに対し、本開示の各実施形態及びこれらの変形例は、温度検出素子をスイッチに埋め込まないので、モータ駆動装置のコストアップを抑制することができる。
【0171】
また、本開示の第1の実施形態及びその変形例によれば、電圧検出部に入力される電圧を予備充電抵抗の電圧とDCリンク電圧との間で選択的に切り替えることにより、1つの電圧検出部により予備充電抵抗の電圧の値及びDCリンク電圧の値を検出する。したがって、予備充電抵抗の電圧の値を検出するための電圧検出部とDCリンク電圧の値を検出するための電圧検出部とを別々に設ける場合に比べて、本開示の第1の実施形態及びその変形例によれば部品点数を減らせるのでモータ駆動装置のコストアップを抑制することができる。また、予備充電抵抗の電圧を検出するための分圧回路及びDCリンク電圧を検出するための分圧回路はモータ駆動装置に既に設けられていることがあるので、これら既存の回路を本開示の第1の実施形態及びその変形例における第1の分圧回路及び第2の分圧回路として流用することで、モータ駆動装置のコストアップをさらに抑制することができる。
【0172】
また、本開示の第2及び第3の実施形態並びにこれらの変形例によれば、電圧検出部に入力される電圧を予備充電抵抗の電圧と対地間電圧との間で選択的に切り替えることにより、1つの電圧検出部により予備充電抵抗の電圧の値及び対地間電圧の値を検出する。したがって、予備充電抵抗の電圧の値を検出するための電圧検出部と対地間電圧の値を検出するための電圧検出部とを別々に設ける場合に比べて、本開示の第2及び第3の実施形態並びにこれらの変形例によれば部品点数を減らせるのでモータ駆動装置のコストアップを抑制することができる。また、予備充電抵抗の電圧を検出するための分圧回路及び対地間電圧を検出するための分圧回路はモータ駆動装置に既に設けられていることがあるので、これら既存の回路を本開示の第2及び第3の実施形態並びにこれらの変形例における第1の分圧回路及び第2の分圧回路として流用することで、モータ駆動装置のコストアップをさらに抑制することができる。
【0173】
以上、本開示について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態及び個々の変形例に限定されるものではない。これらの実施形態及び変形例は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、または、特許請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。また、これらの実施形態及び変形例は、組み合わせて実施することもできる。例えば、上述した実施形態及び変形例において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態及び変形例の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。
【0174】
<付記>
上記実施形態および変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0175】
(付記1)
交流電源2から供給された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータ101の直流出力側であるDCリンクに設けられたコンデンサの予備充電期間中における突入電流を抑制する予備充電抵抗11と、
予備充電抵抗11に対して並列接続された予備充電スイッチ12であって、予備充電期間中は開動作が指令され、予備充電期間以外の期間であるモータ駆動期間中は閉動作が指令される予備充電スイッチ12と、
入力された電圧の値を検出する電圧検出部13と、
電圧検出部13に入力される電圧を、予備充電抵抗11の電圧である第1の電圧と予備充電抵抗11の電圧以外の電圧である第2の電圧との間で選択的に切り替える入力切替え部14と、
電圧検出部13により検出された電圧の値に基づいて、予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する故障判定部15と、
を備える、モータ駆動装置1。
(付記2)
故障判定部15は、モータ駆動期間中において、入力切替え部14により第1の電圧が電圧検出部13に入力されているときに電圧検出部13により検出された電圧の値が、所定の閾値より高い場合、予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定する、付記1に記載のモータ駆動装置1。
(付記3)
第2の電圧は、DCリンクの正側電位と負側電位との電位差であるDCリンク電圧である、付記1または2に記載のモータ駆動装置1。
(付記4)
予備充電抵抗11に並列接続された第1の分圧回路18であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗21を有する第1の分圧回路18と、
DCリンクの正側電位と負側電位との間に接続された第2の分圧回路19であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する第2の分圧回路19と、
を備え、
入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つと第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つとの間で選択的に切り替える、付記3に記載のモータ駆動装置1。
(付記5)
第2の電圧は、DCリンクの正側電位及び負側電位のうちの1つと接地電位との電位差である対地間電圧である、付記1または2に記載のモータ駆動装置1。
(付記6)
駆動するモータの絶縁状態を検出する絶縁状態検出部16と、
交流電源2とコンバータ101との間の電路を開閉する開閉部17と、
を備え、
絶縁状態検出部16によりモータの絶縁状態を検出する処理を実行している期間中は、開閉部17は交流電源2とコンバータ101との間の電路を開状態に設定し、入力切替え部14は電圧検出部13に入力される電圧を第2の電圧に設定し、
モータ駆動期間中及び予備充電期間中は、開閉部17は交流電源2とコンバータ101との間の電路を閉状態に設定し、入力切替え部14は電圧検出部13に入力される電圧を第1の電圧に設定する、付記5に記載のモータ駆動装置1。
(付記7)
故障判定部15は、予備充電期間中は、予備充電スイッチ12の故障の有無を判定する処理を停止する、付記6に記載のモータ駆動装置1。
(付記8)
予備充電抵抗11に並列接続された第1の分圧回路18であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗21を有する第1の分圧回路18と、
DCリンクの正側電位及び負側電位のうちの1つと接地電位との間に接続された第2の分圧回路19であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する第2の分圧回路19と、
を備え、
入力切替え部14は、電圧検出部13の入力端子の接続先を、第1の分圧抵抗21同士の接続点のうちの1つと第2の分圧抵抗22同士の接続点のうちの1つとの間で選択的に切り替える、付記7に記載のモータ駆動装置1。
(付記9)
予備充電抵抗11に並列接続された第1の分圧回路18であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第1の分圧抵抗21を有する第1の分圧回路18と、
DCリンクの正側電位及び負側電位のうちの1つと接地電位との間に接続された第2の分圧回路19であって、互いに直列接続された少なくとも2つの第2の分圧抵抗22を有する第2の分圧回路19と、
を備え、
入力切替え部14は、第2の分圧抵抗22同士を結ぶ電路を開閉する対地間電圧検出用スイッチ42を有する、付記7に記載のモータ駆動装置1。
(付記10)
故障判定部15が予備充電スイッチ12に故障が発生したと判定した場合にアラームを出力するアラーム出力部20を備える、付記2に記載のモータ駆動装置1。
【符号の説明】
【0176】
1 モータ駆動装置
2 交流電源
3 モータ
10 予備充電回路
11 予備充電抵抗
12 予備充電スイッチ
13 電圧検出部
14 入力切替え部
15 故障判定部
16 絶縁状態検出部
17 開閉部
18 第1の分圧回路
19 第2の分圧回路
20 アラーム出力部
21 第1の分圧抵抗
22 第2の分圧抵抗
24 開閉制御部
31 スイッチ制御部
32 入力切替え制御部
33 コンバータ制御部
41N 負側電力線
41P 正側電力線
42 対地間電圧検出用スイッチ
101 コンバータ
102 インバータ
103 コンデンサ
104 モータ制御部
【要約】
モータ駆動装置は、コンバータの直流出力側であるDCリンクに設けられたコンデンサの予備充電期間中における突入電流を抑制する予備充電抵抗と、予備充電抵抗に対して並列接続された予備充電スイッチと、入力された電圧の値を検出する電圧検出部と、電圧検出部に入力される電圧を、予備充電抵抗の電圧である第1の電圧と予備充電抵抗の電圧以外の電圧である第2の電圧との間で選択的に切り替える入力切替え部と、電圧検出部により検出された電圧の値に基づいて、予備充電スイッチの故障の有無を判定する故障判定部と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10