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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アクリル繊維用処理剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/352 20060101AFI20240305BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240305BHJP
   D06M 13/248 20060101ALI20240305BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20240305BHJP
   D06M 101/28 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
D06M13/352
D06M13/17
D06M13/248
D06M15/647
D06M101:28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023573102
(86)(22)【出願日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2023027680
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022145018
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 一功
(72)【発明者】
【氏名】菊田 俊彦
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099167(JP,A)
【文献】特表2021-527765(JP,A)
【文献】特開平04-091276(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F9/08-9/32
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、
前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、アクリル繊維用処理剤。
【化3】
(式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)
【請求項2】
前記化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であり、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、Rは、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子である。)
【請求項3】
ブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有する、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ブレンステッド酸化合物(C)が、カルボン酸化合物、無機酸、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、硫酸エステル化合物及びホスホン酸化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項5】
前記アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比が、0.01~5.0である、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項6】
前記ブレンステッド酸化合物(C)100重量部に対する、前記化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体の合計の重量が0.01~50重量部である、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項7】
処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が20~90重量%である、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤(E)をさらに含有する、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。
【請求項9】
炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、請求項1~のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤を付着させてなる、炭素繊維製造用アクリル繊維。
【請求項10】
請求項に記載の炭素繊維製造用アクリル繊維を、200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル繊維用処理剤及びその用途に関する。より詳しくは、アクリル繊維を製造する際に使用する処理剤と、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維(以下、プレカーサーと称することがある)と、該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維はその優れた機械的特性を利用して、マトリックス樹脂と称されるプラスチックとの複合材料用の補強繊維として、航空宇宙用途、スポーツ用途、一般産業用途等に幅広く利用されている。
炭素繊維を製造する方法としては、まず炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサーということがある)を製造する(このプレカーサーの製造工程を製糸工程と称することがある)。このプレカーサーを200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換し(この工程を以下、耐炎化処理工程と称することがある)、続いて300~2000℃の不活性雰囲気中で炭素化する(この工程を以下、炭素化処理工程と称することがある)方法が一般的である(以下、耐炎化処理工程と炭素化処理工程をあわせて、焼成工程と称することがある)。このプレカーサーの製造には通常のアクリル繊維と比較しても高倍率に延伸される延伸工程を経る。その際、繊維同士の膠着が起こり易く、均一に高倍率延伸が行われない為に、不均一なプレカーサーとなる。この様なプレカーサーを焼成して得られる炭素繊維は十分な強度が得られないという問題がある。また、プレカーサーの焼成時には、単繊維同士の融着が発生し、得られた炭素繊維の品質、品位を低下させるという問題がある。
【0003】
プレカーサーの膠着防止、炭素繊維の融着防止のために、プレカーサーに付与する処理剤として、湿潤時および高温環境下で繊維-繊維間摩擦が低いシリコーン系処理剤、及び融着防止性を向上できるアミノ変性シリコーン系処理剤をプレカーサーに付与する技術が多数提案されている(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2001-172879号公報
【文献】日本国特開2002-129481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような処理剤を付与したプレカーサーを用いて耐炎化処理を行うと、シリコーンによる剥離作用や繊維間摩擦低下作用によりプレカーサーの集束性が低下する問題があった。そのため、耐炎化処理工程や炭素化処理工程において集束性不足に伴う繊維束の乱れや延伸ムラが発生し、作業性や工程通過性、炭素繊維の品質低下を引き起こす場合があった。
そこで、本発明の目的は、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程における炭素繊維製造用アクリル繊維の集束性を向上できるアクリル繊維用処理剤、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維及び該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含有する、アクリル繊維用処理剤であれば、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程におけるプレカーサーの集束性を向上できることを見出し、本願発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明のアクリル繊維用処理剤は以下の実施態様が含まれる。
<1>アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含有する、アクリル繊維用処理剤。
<2>前記化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>に記載のアクリル繊維用処理剤。
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であり、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、Rは、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子である。)
<3>ブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有する、<1>又は<2>に記載のアクリル繊維用処理剤。
<4>前記ブレンステッド酸化合物(C)が、カルボン酸化合物、無機酸、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、硫酸エステル化合物及びホスホン酸化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、<3>に記載のアクリル繊維用処理剤。
<5>前記アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比が、0.01~5.0である、<3>又は<4>に記載のアクリル繊維用処理剤。
<6>前記ブレンステッド酸化合物(C)100重量部に対する、前記化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体の合計の重量が0.01~50重量部である、<3>~<5>のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤。
<7>親水性溶媒(D)をさらに含有し、前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<6>のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤。
【化3】
(式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)
<8>処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が20~90重量%である、<1>~<7>のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤。
<9>非イオン性界面活性剤(E)をさらに含有する、<1>~<8>のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤。
<10>炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、<1>~<9>のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤を付着させてなる、炭素繊維製造用アクリル繊維。
<11><10>に記載の炭素繊維製造用アクリル繊維を、200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクリル繊維用処理剤は、処理剤を付与し製造された炭素繊維製造用アクリル繊維を用いると、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程における集束性を向上でき、集束性不足に伴う繊維束の乱れや延伸ムラを改善できる。本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維を用いれば、耐炎化処理工程における集束性向上により繊維束の乱れや延伸ムラを改善し、作業性や工程通過性を向上できる。本発明の炭素繊維の製造方法によれば、集束性向上により繊維束の乱れや延伸ムラを改善し、作業性や工程通過性が向上し、高品質な炭素繊維を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアクリル繊維用処理剤の各成分について説明する。
〔アミノ変性シリコーン(A)〕
本発明の処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)を含有する。アミノ変性シリコーンの変性基であるアミノ基(アミノ基を有する有機基を含む)は、主鎖であるシリコーンの側鎖と結合していてもよいし、末端と結合していてもよいし、また両方と結合していてもよいが、耐炎化処理工程での繊維保護の観点から、側鎖と結合している(側鎖にアミノ基を有する)方が好ましい。また、そのアミノ基は、モノアミン型、ジアミン型、ポリアミン型のいずれであってもよく、1分子中に両者が併存していてもよいが、耐炎化処理工程で繊維束内部にまで処理剤を均一に付与し、かつ、処理剤を皮膜化させて繊維を保護する点から、モノアミン型又はジアミン型が好ましい。また、アミノ変性シリコーンは、アミノポリエーテル変性シリコーンを含んでいてもよい。アミノポリエーテル変性シリコーンとは、少なくとも1つのアミノ基とポリエーテル基とを構造内に有するシリコーンである。
【0010】
アミノ変性シリコーン(A)の25℃での動粘度は、繊維への均一付着性、処理剤の飛散抑制性及び繊維への集束性付与の点で、50~20000mm/sが好ましい。該動粘度の上限は、より好ましくは15000mm/s、さらに好ましくは10000mm/s、特に好ましくは8000mm/sである。一方、該動粘度の下限は、より好ましくは100mm/s、さらに好ましくは150mm/s、特に好ましくは200mm/sである。また、例えば200~10000mm/sがより好ましく、200~8000mm/sがさらに好ましい。
【0011】
アミノ変性シリコーン(A)のアミノ当量は、繊維間の膠着や融着の防止の点から、300~10000g/molが好ましい。該アミノ当量の上限は、より好ましくは9500g/mol、さらに好ましくは9000g/mol、特に好ましくは8000g/molである。一方、該アミノ当量の下限は、より好ましくは500g/mol、さらに好ましくは1000g/mol、特に好ましくは1500g/molである。また、例えば500~9000g/molがより好ましく、1000~8000g/molがさらに好ましい。
ここで、アミノ当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味している。表記単位のg/molはアミノ基又はアンモニウム基1mol当たりに換算した値である。従って、アミノ当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
【0012】
アミノ変性シリコーン(A)は、アミノ当量や動粘度(25℃)の異なる複数のアミノ変性シリコーンを併用してもよい。2種以上のアミノ変性シリコーンを用いる場合、上記アミノ当量はアミノ変性シリコーン全体(混合物)のアミノ当量を意味し、上記の25℃における動粘度はアミノ変性シリコーン全体(混合物)の動粘度を意味する。
【0013】
上記アミノ変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(4)で示す化合物を挙げることができる。
【0014】
【化4】
(式(4)中、Rは炭素数が1~20のアルキル基又はアリール基を示す。Rは下記一般式(5)で示される基である。Rは、R、R又は-OR11(R11は水素原子又は炭素数が1~6のアルキル基)である。pは5≦p≦10000、qは0≦q≦1000である。ただし、q=0の場合、Rのうち少なくとも1つは下記一般式(5)で示される基である。)
【0015】
式(4)中、Rは炭素数が1~20のアルキル基又はアリール基を示す。Rは、好ましくは炭素数が1~10のアルキル基又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。なお、式(4)における複数のRは、同一であってもよく異なっていてもよい。Rは下記一般式(5)で示される基である。Rは、R、R又は-OR11で示される基であり、好ましくはRである。なお、式(4)における複数のR11は、同一であってもよく異なっていてもよい。
11は、水素原子又は炭素数が1~6のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。pは、5~10000の数であり、好ましくは30~5000であり、さらに好ましくは50~2000である。qは、0~1000の数であり、好ましくは0.1~500であり、さらに好ましくは0.2~100である。
【0016】
【化5】
【0017】
式(5)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1~6のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。rは0~6の数であり、好ましくは0~3であり、さらに好ましくは0~1である。
【0018】
〔硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)、化合物(B)の誘導体〕
本発明の処理剤は、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)(以下、化合物(B)ということがある。)及び化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種を含有する。
化合物(B)は硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物であれば特に限定はないが、耐炎化工程での処理剤による繊維束の集束性向上の観点から、5員環内にヘテロ原子間の結合を有するとアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応をより促進し、繊維束の集束性を高めるため好ましく、5員環内に窒素-硫黄結合を有するとさらに架橋反応を促進して、繊維束の集束性を高めるため好ましく、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むと架橋反応をさらに促進して、繊維束の集束性を高めるため特に好ましい。
化合物(B)の誘導体としては、前記化合物(B)の誘導体であれば特に限定はないが、化合物(B)が塩形成した生成物や化合物(B)と求核性を有する化合物との反応生成物等が挙げられる。
繊維束の集束性がより向上する要因は、5員環構造内にヘテロ原子間の結合を有するとヘテロ原子間の結合が熱により開裂し、開裂によって生じたラジカルがアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応をより促進するためであると考えている。そして、ヘテロ原子間結合が窒素-硫黄結合を有するとヘテロ原子間の結合の開裂がより促進され、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物であるとヘテロ原子間の結合の開裂が特に促進されると考えている。化合物(B)の誘導体が繊維束の集束性をより向上する要因は、熱により分解し、分解によって生じたラジカルがアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応を促進するためであると考えている。
化合物(B)は1種又は2種以上を含んでいても良く、耐擦過性が優れる点で、2種以上を含むとより好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子であると本願効果を奏する点で好ましい。
は、炭素数1~10のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であるとより好ましく、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子であると特に好ましい。
の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基及び水素原子が挙げられ、アミノ変性シリコーンとの相溶性の点でメチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基又は水素原子がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基又は水素原子が特に好ましい。
式(1)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子、塩素原子又は臭素原子であるとより好ましく、水素原子又は塩素原子であると更に好ましい。
X及びYの少なくとも1つが水素原子である場合、アミノ変性シリコーンとの相溶性の点でRはメチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基又は水素原子であるとより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基又は水素原子であるとさらに好ましい。
【0021】
【化2】
【0022】
式(2)中、Rは炭素数1~8のアルキル基又は水素原子であると本願効果を奏する点で好ましく、炭素数1~6のアルキル基又は水素原子であるとより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であると特に好ましい。
の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び水素原子が挙げられ、アミノ変性シリコーンとの相溶性の点で、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又は水素原子がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基又は水素原子が特に好ましい。
【0023】
化合物(B)としては、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物のほか、チアゾール類、チアジアゾール類等が挙げられる。
チアゾール類としては、4-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、2,4-ジクロロチアゾール、2-メチル-4-メチルチアゾール、2-イソプロピル-4-メチルチアゾール、2-メチル-4-メチルチアゾール、2-メルカプトチアゾール、2-アミノチアゾール、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-プロピオニルチアゾール、2-アセチルチアゾール、5-メチルチアゾール、2,5-ジブロモチアゾール及び5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾールが挙げられる。
チアジアゾール類としては、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジアミン、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-チオールが挙げられる。
【0024】
化合物(B)の誘導体である化合物(B)の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びアミン塩が挙げられる。化合物(B)の誘導体を生成する求核性を有する化合物としては、例えばチオール基、アミノ基及びアルコキシル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物が挙げられ、具体的には、有機チオール化合物、有機アミン化合物、有機アルコール化合物及びアミノ酸化合物等が挙げられ、これらの有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。
【0025】
〔ブレンステッド酸化合物(C)〕
本発明の繊維用処理剤は、ブレンステッド酸化合物(C)を含有すると化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の経時分解を抑制する点や炭素繊維強度が向上する点で好ましい。ブレンステッド酸化合物(C)とはプロトン供与体をいい、カルボン酸化合物、無機酸、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、硫酸エステル化合物及びホスホン酸化合物等が挙げられる。
【0026】
カルボン酸化合物とは、分子構造中にカルボキシル基を有する化合物をいう。カルボン酸化合物としては、特に限定されないが、脂肪族モノカルボン酸、アルキルエーテルカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、アミノ酸等が挙げられる。
【0027】
脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、乳酸、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0028】
アルキルエーテルカルボン酸としては、アルキル基の炭素数が8~18であり、ポリオキシアルキレン付加モル数は1~50モルであるものが挙げられる。該アルキル基としては例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。該ポリオキシエルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシポリプロピレン基が挙げられる。
【0029】
脂肪族ポリカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデンカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0030】
芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0031】
芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0032】
アミノ酸とは、分子構造中にアミノ基とカルボキシル基の両方を有する化合物であり、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、グリシン、チロシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0033】
無機酸とは非金属原子を成分とする酸をいう。無機酸としては、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸等が挙げられる。
【0034】
スルホン酸化合物としては、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸、高級脂肪酸アミドスルホン酸、アルキル硫酸モノエステル、ポリオキシアルキレン硫酸モノエステル等が挙げられる。
【0035】
リン酸エステル化合物としては、アルキルリン酸モノエステル、アルキルリン酸ジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸モノエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸ジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸モノエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸ジエステル等が挙げられる。
【0036】
硫酸エステル化合物としては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル、アルキルフェニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニル硫酸エステル等が挙げられる。
【0037】
ホスホン酸化合物としては、アルキルホスホン酸、芳香族ホスホン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスホン酸等が挙げられる。
【0038】
ブレンステッド化合物(C)のpKaは、設備の腐食や安全の点及びアミノ変性シリコーンのアミノ基に起因する経時的な架橋の抑制の点から、0~7が好ましく、1~6.5がより好ましく、2~6がさらに好ましい。
【0039】
ブレンステッド酸化合物(C)は化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の経時分解を抑制する点で、カルボン酸化合物、リン酸エステル化合物及び無機酸から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、乳酸、アルキルエーテルカルボン酸、リン酸エステル化合物、リン酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種を含むとより好ましく、アルキルエーテルカルボン酸、リン酸エステル化合物、酢酸及びリン酸から選ばれる少なくとも1種を含むとさらに好ましい。ブレンステッド酸化合物(C)は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0040】
〔親水性溶媒(D)〕
本発明のアクリル繊維用処理剤は親水性溶媒(D)を含むとアミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体との相溶性を向上させる点や炭素繊維強度を向上する点で好ましい。
親水性溶媒(D)としては25℃における水への溶解度が0.05g/ml以上であれば特に限定はないが、下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含むとさらに好ましい。親水性溶媒(D)は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0041】
【化3】
【0042】
式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。
一般式(3)で表される化合物としては、アミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)又は化合物(B)の誘導体との相溶性が向上し、本願効果がより得られやすくなる点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であると好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であるとより好ましい。一般式(3)で表される化合物は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0043】
非プロトン性含窒素有機化合物としてはアミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)又は化合物(B)の誘導体との相溶性向上の点で、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド及びアセトニトリルから選ばれる少なくとも1種であると好ましく、1-メチル-2-ピロリドン及びN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1種であるとより好ましい。非プロトン性含窒素有機化合物は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0044】
〔アクリル繊維用処理剤〕
本発明のアクリル繊維用処理剤は、上記のアミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)から選ばれる少なくとも1種とを含むものであり、ブレンステッド酸化合物(C)及び親水性溶媒(D)から選ばれる少なくとも1種をさらに含有してもよい。
【0045】
本発明のアクリル繊維用処理剤がアミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含むことでアクリル繊維の集束性が向上する理由は、化合物(B)又は化合物(B)の誘導体によって耐炎化工程でのアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応が適度に促進され、アミノ変性シリコーンの分子量と粘度がバランスよく増加するためであると考えている。
【0046】
本発明の処理剤の不揮発分に占める化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の合計の重量割合は、耐炎化工程でのアミノ変性シリコーンの架橋反応を促進する点で、0.001~1重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.07重量%、最も好ましくは0.04重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.005重量%、さらに好ましくは0.008重量%、特に好ましくは0.01重量%、最も好ましくは0.02重量%である。また、例えば0.005~0.5重量%がより好ましく、0.008~0.04重量%がさらに好ましい。
【0047】
本発明の処理剤の不揮発分に占めるアミノ変性シリコーン(A)の重量割合は、繊維束に高い集束性を付与する点で、20~90重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは50重量%である。また、例えば40~90重量%がより好ましく、50~90重量%がさらに好ましい。
【0048】
アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対する、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体合計の重量は、耐炎化工程でのアミノ変性シリコーンの架橋反応を促進する点で、0.001~5重量部であると好ましい。該重量の上限は、より好ましくは1.0重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは0.25重量部である。一方、該重量の下限は、より好ましくは0.003重量部、さらに好ましくは0.005重量部、特に好ましくは0.007重量部である。また、例えば0.003~0.5重量部がより好ましく、0.003~0.25重量部がさらに好ましい。
【0049】
本発明の処理剤がブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有する場合、アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比は、処理剤の保管安定性の点で、0.01~5.0であると好ましい。該割合の上限は、より好ましくは4.5、さらに好ましくは4.0、特に好ましくは3.5、最も好ましくは2.5である。一方、該割合の下限は、より好ましくは0.05、さらに好ましくは0.1、特に好ましくは0.2、最も好ましくは0.3である。また、例えば、0.05~4.5がより好ましく、0.1~4.0がさらに好ましい。アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比とは、処理剤に含まれるアミノ変性シリコーン(A)アミノ基の総モル数に対するブレンステッド酸化合物(C)の総モル数の比をさす。
【0050】
ブレンステッド酸化合物(C)100重量部に対する、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の合計の重量は、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の経時分解を抑制する点で0.01~50重量部であると好ましい。該重量の上限は、より好ましくは30重量部、さらに好ましくは20重量部、特に好ましくは10重量部である。一方、該重量の下限は、より好ましくは0.05重量部、さらに好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.3重量部である。また、例えば0.05~30重量部がより好ましく、0.1~20重量部がさらに好ましい。
【0051】
本発明の処理剤の不揮発分に占めるブレンステッド酸化合物(C)の重量割合は、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体の経時分解を抑制する点で、0.02~30重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは26重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは15重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.3重量%である。また、例えば0.05~15重量%がより好ましく、0.1~15重量%がさらに好ましい。
【0052】
本発明の処理剤が親水性溶媒(D)をさらに含有する場合、本発明の処理剤の不揮発分に占める親水性溶媒(D)の重量割合は、アミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種との相溶性向上の点で、0.05~10重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは7重量%、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは3重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.07重量%、さらに好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.15重量%である。また、例えば0.05~7重量%がより好ましく、0.07~5重量%がさらに好ましい。
【0053】
〔非イオン性界面活性剤(E)〕
本発明の処理剤は、乳化性を高めることができる点から、非イオン性界面活性剤(E)をさらに含有することが好ましい。なお、非イオン性界面活性剤(E)としては、ポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル;ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル;ポリオキシエチレン1-ヘキシルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1-オクチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1-ヘキシルオクチルエーテル、ポリオキシエチレン1-ペンチルへプチルエーテル、ポリオキシエチレン1-へプチルペンチルエーテル、ポリオキシエチレン1-ヘキシルヘプチルエーテル、ポリオキシエチレン1-ヘプチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1-ペンチルカプチルエーテル、ポリオキシエチレン1-カプチルペンチルエーテル等のポリオキシアルキレン第二級アルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;アセチレンアルコール又はアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加させたアセチレン系界面活性剤;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;等を挙げることができる。
【0054】
これらの中でも、乳化安定性の点で、ポリオキシアルキレン直鎖第一級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン直鎖第二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル及びアセチレン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、ポリオキシアルキレン直鎖第一級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン直鎖第二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル、及びポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
非イオン性界面活性剤(E)の重量平均分子量は、2000以下が好ましく、200~1800がより好ましく、300~1500がより好ましく、500~1000がさらに好ましい。非イオン性界面活性剤は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0055】
本発明の処理剤が非イオン性界面活性剤(E)を含有する場合、乳化安定性の点で、処理剤の不揮発分に占める非イオン性界面活性剤(E)の重量割合は、5~75重量%であることが好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは40重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。また、例えば5~50重量%がより好ましく、10~40重量%がさらに好ましい。
【0056】
〔その他界面活性剤〕
本発明のアクリル繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記非イオン性界面活性剤及びブレンステッド酸化合物(C)以外の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、乳化剤、制電剤等として使用される。その他の界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸ナトリウム塩、パルミチン酸カリウム塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等の脂肪酸(塩);ヒドリキシ酢酸、ヒドロキシ酢酸カリウム塩、乳酸、乳酸カリウム塩等のヒドロキシル基含有カルボン酸(塩);ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩);トリメリット酸カリウム、ピロメリット酸カリウム等のカルボキシル基多置換芳香族化合物の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸(ナトリウム塩)等のアルキルベンゼンスルホン酸(塩);ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテルスルホン酸(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩);ステアロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ラウロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ミリストイルメチルタウリンN(ナトリウム)、パルミトイルメチルタウリン(ナトリウム)等の高級脂肪酸アミドスルホン酸(塩);ラウロイルサルコシン酸(ナトリウム)等のN-アシルサルコシン酸(塩);オクチルホスホネート(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸(塩);フェニルホスホネート(カリウム塩)等の芳香族ホスホン酸(塩);2-エチルヘキシルホスホネートモノ2-エチルヘキシルエステル(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸アルキル燐酸エステル(塩);アミノエチルホスホン酸(ジエタノールアミン塩)等の含窒素アルキルホスホン酸(塩);2-エチルヘキシルサルフェート(ナトリウム塩)等のアルキル硫酸エステル(塩);ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテルサルフェート(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレン硫酸エステル(塩);ラウリルホスフェート(カリウム塩)、セチルホスフェート(カリウム塩)、ステアリルホスフェート(ジエタノールアミン塩)等のアルキル燐酸エステル(塩);ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート(カリウム塩)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルホスフェート(トリエタノールアミン塩)等のポリオキシアルキレンアルキル(アルケニル)エーテル燐酸エステル(塩);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェート(カリウム塩)、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルホスフェート(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル(塩);ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩;等を挙げることができる。
【0058】
これらの中でも、乳化安定性の点で、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩)、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩)、及び、アルキル燐酸エステル(塩)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩)、及び、アルキル燐酸エステル(塩)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0059】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オレイルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジエチルメチルアンモニウムサルフェート、等のアルキル第四級アンモニウム塩;(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテル乳酸塩、ステアリルアミノエーテル乳酸塩、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアミノエーテルジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)硬化牛脂アルキルエチルアミンエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアンモニウムジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ステアリルアミン乳酸塩等の(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩;N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-N-ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレート、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミドエチルメチルジエチルアンモニウムメトサルフェート等のアシルアミドアルキル第四級アンモニウム塩;ジパルミチルポリエテノキシエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルポリエテノキシメチルアンモニウムクロライド等のアルキルエテノキシ第四級アンモニウム塩;ラウリルイソキノリニウムクロライド等のアルキルイソキノリニウム塩;ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のベンザルコニウム塩;ベンジルジメチル{2-[2-(p-1,1,3,3-テトラメチルブチルフェノオキシ)エトオキシ]エチル}アンモニウムクロライド等のベンゼトニウム塩;セチルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩;オレイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート等のイミダゾリニウム塩;N-ココイルアルギニンエチルエステルピロリドンカルボン酸塩、N-ラウロイルリジンエチルエチルエステルクロライド等のアシル塩基性アミノ酸アルキルエステル塩;ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、硬化牛脂アルキルアミンクロライド、ロジンアミン酢酸塩等の第一級アミン塩;セチルメチルアミンサルフェート、ラウリルメチルアミンクロライド、ジラウリルアミン酢酸塩、ステアリルエチルアミンブロマイド、ラウリルプロピルアミン酢酸塩、ジオクチルアミンクロライド、オクタデシルエチルアミンハイドロオキサイド等の第二級アミン塩;ジラウリルメチルアミンサルフェート、ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド、ジエタノールステアリルアミドエチルアミントリヒドロキシエチルホスフェート塩、ステアリルアミドエチルエタノールアミン尿素重縮合物酢酸塩等の第三級アミン塩;脂肪酸アミドグアニジニウム塩;ラウリルトリエチレングリコールアンモニウムハイドロオキサイド等のアルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0060】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリルβ-アラニン、N-ステアリルβ-アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
〔その他成分〕
本発明のアクリル繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した成分以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としてはフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、キノン系等の酸化防止剤、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤、アミン塩型カチオン系界面活性剤等の制電剤、高級アルコールのアルキルエステル、高級アルコールエーテル、ワックス類等の平滑剤、抗菌剤、防腐剤、防錆剤、および吸湿剤等が挙げられる。
【0062】
また、本発明の処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記のアミノ変性シリコーン以外の変性シリコーンを含んでいてもよい。変性シリコーンとしては、例えば、アマイド変性シリコーン、アマイドポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン(例えば、特許4616934号参照)、カルビノール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどが挙げられ、一種類の変性シリコーンを用いてもよいし、複数の変性シリコーンを併用してもよい。
【0063】
また、本発明の処理剤は、1つまたは複数の低分子シリコーンを含んでいてもよい。低分子シリコーンの例としては、例えば2~7個のケイ素原子を有する直鎖または環状シリコーンが挙げられる。低分子シリコーンの具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等が挙げられる。これらの低分子シリコーンは前記一般式(5)で示される基等で置換されていてもよい。これらの低分子シリコーンは、アミノ変性シリコーン(A)の微量成分として含まれていてもよい。
本発明の処理剤に占める低分子シリコーンの含有量は、アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して15重量部以下であるとよい。
【0064】
本発明のアクリル繊維用処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じてブレンステッド酸化合物(C)、親水性溶媒(D)及び非イオン性界面活性剤(E)が水に溶解、可溶化、乳化又は分散された状態であることが好ましい。
アクリル繊維用処理剤全体に占める水の重量割合、不揮発分の重量割合については、特に限定はない。例えば、本発明のアクリル繊維用処理剤を輸送する際の輸送コストや、エマルジョン粘度に因るところの取扱い性等を考慮して適宜決定すればよい。アクリル繊維用処理剤全体に占める水の重量割合は、0.1~99.9重量%が好ましく、10~99.5重量%がさらに好ましく、50~99重量%が特に好ましい。アクリル繊維用処理剤全体に占める不揮発分の重量割合(濃度)は、0.01~99.9重量%が好ましく、0.5~90重量%がさらに好ましく、1~50重量%が特に好ましい。
【0065】
本発明のアクリル繊維用処理剤は、上記で説明した成分を混合することによって製造することができる。上記で説明した成分を乳化・分散させる方法については特に限定されず、公知の手法が採用できる。このような方法としては、たとえば、アクリル繊維用処理剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法や、アクリル繊維用処理剤を構成する各成分を混合し、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法等が挙げられる。また、一部成分を乳化した後に残りの成分を溶解分散させる方法を用いても良い。
【0066】
本発明のアクリル繊維用処理剤は、炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)の処理剤(プレカーサー処理剤)として好適に使用できる。また、プレカーサー以外のアクリル繊維の紡糸油剤として使用してもよい。
【0067】
[炭素繊維製造用アクリル繊維、その製造方法及び炭素繊維の製造方法]
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のアクリル繊維用処理剤を付着させて製糸したものである。本発明のプレカーサーの製造方法は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のアクリル繊維用処理剤を付着させて製糸する製糸工程を含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法は、上記のアクリル繊維用処理剤が付着したプレカーサーを、200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法によれば、本発明のアクリル繊維用処理剤を用いているので、集束性が向上し、繊維束の乱れや延伸ムラを減少させ、高品質な炭素繊維を製造できる。
【0068】
製糸工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維にアクリル繊維用処理剤を付着させてプレカーサーを製糸する工程であり、付着処理工程と延伸工程とを含むと好ましい。
付着処理工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維を紡糸した後、アクリル繊維用処理剤を付着させる工程である。つまり、付着処理工程でプレカーサーの原料アクリル繊維にアクリル繊維用処理剤を付着させる。またこのプレカーサーの原料アクリル繊維を紡糸直後から延伸する場合、付着処理工程後の高倍率延伸を特に「延伸工程」と呼ぶ。延伸工程は高温水蒸気(スチーム)をもちいた湿熱延伸法でもよいし、熱ローラーをもちいた乾熱延伸法でもよい。延伸工程における延伸倍率は紡糸直後の原料アクリル繊維に対して、総延伸倍率が2倍~20倍であることが好ましい。
【0069】
プレカーサーは、少なくとも95モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル繊維から構成されると好ましい。耐炎化促進成分としては、アクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。プレカーサーの単繊維繊度については、特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは0.1~2.0dtexである。また、プレカーサーの繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは1,000~96,000本である。
【0070】
アクリル繊維用処理剤は、炭素繊維製造工程のどの段階でプレカーサーの原料アクリル繊維に付着させてもよいが、延伸工程前に一度付着させておくことが好ましい。延伸工程前の段階であればどの段階でも、例えば紡糸直後に付着させてもよい。さらに延伸工程後のどの段階で付着させてもよく、例えば、延伸工程直後に付着させてもよいし、巻取り段階で付着させてもよいし、耐炎化処理工程の直前に付着させてもよい。その付着方法に関しては、ローラー等を使用して付着してもよいし、浸漬法、スプレー法等で付着してもよい。
【0071】
付着処理工程において、アクリル繊維用処理剤の付与率は、繊維-繊維間の膠着防止効果や融着防止効果を得ることと、炭素化処理工程において処理剤のタール化物によって炭素繊維の品質低下を防止することとのバランスからは、プレカーサーの重量に対して好ましくは0.1~5重量%であり、さらに好ましくは0.3~1.5重量%である。なお、ここでいうアクリル繊維用処理剤の付与率とは、プレカーサー重量に対するアクリル繊維用処理剤の付着した不揮発分重量の百分率で定義される。
【0072】
耐炎化処理工程は、アクリル繊維用処理剤が付着したプレカーサーを200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する工程である。酸化性雰囲気とは、通常、空気雰囲気であればよい。酸化性雰囲気の温度は好ましくは230~280℃である。耐炎化処理工程では、付着処理後のアクリル繊維に対して、延伸比0.90~1.10(好ましくは0.95~1.05)の張力をかけながら、20~100分間(好ましくは30~60分間)にわたって熱処理が行われる。この耐炎化処理では、分子内環化および環への酸素付加を経て、耐炎化構造を持つ耐炎化繊維が製造される。
【0073】
炭素化処理工程は、耐炎化繊維をさらに300~2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる工程である。炭素化処理工程では、まず、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、300℃から800℃まで温度勾配を有する焼成炉で、耐炎化繊維に対して、延伸比0.95~1.15の張力をかけながら、数分間熱処理して、予備炭素化処理工程(第一炭素化処理工程)を行うのが好ましい。その後、より炭素化を進行させ、且つグラファイト化を進行させるために、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で、第一炭素化処理工程に対して延伸比0.95~1.05の張力をかけながら、数分間熱処理して、第二炭素化処理工程を行い、耐炎化繊維が炭素化される。第二炭素化処理工程における熱処理温度の制御については、温度勾配をかけながら、最高温度を1000℃以上(好ましくは1000~2000℃)とすることがよい。この最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性(引張強度、弾性率等)に応じて適宜選択して決定される。
【0074】
本発明の炭素繊維の製造方法では、弾性率がさらに高い炭素繊維が所望される場合は、炭素化処理工程に引き続いて、黒鉛化処理工程を行うこともできる。黒鉛化処理工程は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、炭素化処理工程で得られた繊維に対して張力をかけながら、2000~3000℃の温度で行われる。
【0075】
このようにして得られた炭素繊維には、目的に応じて、複合材料とした時のマトリックス樹脂との接着強度を高めるための表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、気相または液相処理を採用でき、生産性の観点からは、酸、アルカリなどの電解液による液相処理が好ましい。さらに、炭素繊維の加工性、取り扱い性を向上させるために、マトリックス樹脂に対して相溶性の優れる各種サイジング剤を付与することもできる。
【実施例
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
【0077】
<処理剤の付与率>
処理剤付与後のプレカーサーを水酸化カリウム/ナトリウムブチラートでアルカリ溶融した後、水に溶解して塩酸でpH1に調整した。これを亜硫酸ナトリウムとモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモリブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、ケイ素の含有量を求めた。ここで求めたケイ素含有量と予め同法で求めた処理剤中のケイ素含有量の値を用いて、アクリル繊維処理剤の付与率(重量%)を算出した。
<焼成時操業性(集束性)>
プレカーサー焼成工程において、耐炎化炉通過直後の耐炎化繊維束の通過状態を下記の評価基準で判定した。
◎:繊維束幅が拡がらず、隣の繊維束との干渉がなく、操業性が特に良好。
〇:繊維束幅がわずかに拡がるが、隣の繊維束との干渉はなく、操業性が良好。
×:繊維束幅が拡がり、隣の繊維束と干渉あり、毛羽が発生することがあり、操業性が悪い。
【0078】
<耐擦過性>
TM式摩擦抱合力試験機TM-200(大栄科学精機社製)により、ジグザクに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力でプレカーサーストランド(12K)を1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、プレカーサーストランドの毛羽立ちの状態を下記基準で目視判定した。
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られず、耐擦過性が非常に良好。
○:数本の毛羽が見られるが、耐擦過性が良好。
△:毛羽立ちがやや多く、耐擦過性がやや劣る。
×:毛羽立ちが多く、著しい単糸切れが見られ、耐擦過性が劣る。
【0079】
<炭素繊維強度>
JIS-R-7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じ測定し、測定回数10回の平均値を炭素繊維強度(GPa)とした。
【0080】
〔実施例1〕
表1に示す処理剤の不揮発分組成になるように、アミノ変性シリコーンA1、非イオン性界面活性剤E1及びE2、酸化防止剤F1及びF2並びに水を混合して水系乳化した後に、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物B2及びB3、ブレンステッド酸化合物C2、親水性溶媒D4、帯電防止剤を溶解分散させ、不揮発分濃度が30重量%のアクリル繊維用処理剤を調整した。処理剤の不揮発分に占めるアミノ変性シリコーンA1の重量割合は85重量%、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物B2及びB3の重量割合の合計は0.02重量%、ブレンステッド酸化合物C2の重量割合は2.5重量%、親水性溶媒D4の重量割合は0.18重量%、非イオン性界面活性剤E1の重量割合は3重量%、非イオン性界面活性剤E2の重量割合は5.3重量%、帯電防止剤は3重量%、酸化防止剤F1及びF2の重量割合の合計は1重量%であった。
次いで、調整した処理剤をさらに水で希釈し、不揮発分濃度が3.0重量%である希釈液を得た。
希釈液を97モル%のアクリロニトリルと3モル%のイタコン酸を共重合させて得られるプレカーサーの原料アクリル繊維に、処理剤の不揮発分の付与率が1.0重量%となるように付着し、延伸工程(スチーム延伸、延伸倍率2.1倍)を経てプレカーサーを作製した(単繊維繊度0.8dtex,24,000フィラメント)。このプレカーサーを250℃の耐炎化炉にて60分間耐炎化処理し次いで窒素雰囲気下300~1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。各特性値の評価結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例2~83、比較例1~40〕
実施例1において、表1~12に示す処理剤の不揮発分組成になるように処理液を調整した以外は実施例1と同様にして、処理剤付着後のプレカーサーおよび炭素繊維を得た。各特性値の評価結果を表1~12に示す。
【0082】
なお、表1~12の不揮発分組成の詳細は以下である。
<アミノ変性シリコーン(A)>
アミノ変性シリコーンA1:25℃動粘度:90mm/s、アミノ当量:3900g/mol、ジアミン型(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)BY 16-205)
アミノ変性シリコーンA2:25℃動粘度:60mm/s、アミノ当量:2700g/mol(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)BY 16-213)
アミノ変性シリコーンA3:25℃動粘度:1200mm/s、アミノ当量:600g/mol、ジアミン型(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)BY 16-849Fluid)
アミノ変性シリコーンA4:25℃動粘度:1500mm/s、アミノ当量:7500g/mol、ジアミン型(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)BY 16-879B)
アミノ変性シリコーンA5:25℃動粘度:220mm/s、アミノ当量:1700g/mol、ジアミン型(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)FZ-3760)
アミノ変性シリコーンA6:25℃動粘度:3500mm/s、アミノ当量:6000g/mol、ジアミン型(東レ・ダウ社製、商品名DОWSIL(登録商標)FZ-3785)
アミノ変性シリコーンA7:25℃動粘度:250mm/s、アミノ当量:7600g/mol、ジアミン型(信越化学工業株式会社製、商品名KF-860)
アミノ変性シリコーンA8:25℃動粘度:3500mm/s、アミノ当量:2000g/mol、ジアミン型(信越化学工業株式会社製、商品名KF-861)
アミノ変性シリコーンA9:25℃動粘度:1700mm/s、アミノ当量:3800g/mol、モノアミン型(信越化学工業株式会社製、商品名KF-864)
アミノ変性シリコーンA10:25℃動粘度:1300mm/s、アミノ当量:1700g/mol、ジアミン型(信越化学工業株式会社製、商品名KF-867S)
アミノ変性シリコーンA11:25℃動粘度:1500mm/s、アミノ当量:3800g/mol、ジアミン型(信越化学工業株式会社製、商品名KF-869)
アミノ変性シリコーンA12:25℃動粘度:7000mm/s、アミノ当量:4000g/mol(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名WACKER(登録商標) FINISH WT 1200)
アミノ変性シリコーンA13:25℃動粘度:200mm/s、アミノ当量:4000g/mol(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名WACKER(登録商標) FINISH WT 1270)
アミノ変性シリコーンA14:25℃動粘度:75mm/s、アミノ当量:8300g/mol(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名WACKER(登録商標) L653)
アミノ変性シリコーンA15:25℃動粘度:25mm/s、アミノ当量:800g/mol(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名WACKER(登録商標) L656)
アミノ変性シリコーンA16:25℃動粘度:3300mm/s、アミノ当量:1800g/mol(信越化学工業株式会社製、商品名X-22-3939A)
アミノ変性シリコーンA17:25℃動粘度:15000mm/s、アミノ当量:3600g/mol、ジアミン型
アミノ変性シリコーンA18:25℃動粘度:9000mm/s、アミノ当量:9000g/mol、ジアミン型
【0083】
<化合物(B)及び化合物(B)の誘導体>
化合物B1:式(1)においてRがオクチル基、X及びYが水素原子である化合物
化合物B2:式(1)においてRがメチル基、Xが塩素原子、Yが水素原子である化合物
化合物B3:式(1)においてRがメチル基、X及びYが水素原子である化合物
化合物B4:式(2)においてRが水素原子である化合物
化合物B5:式(2)においてRがブチル基である化合物
化合物B6:4-ブロモチアゾール
化合物B7:2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール
化合物B8:B1とシステインの反応生成物(モル比1:1)
化合物B9:B4のナトリウム塩
<化合物(B)及び化合物(B)の誘導体以外の成分>
化合物B’1:1,4-チアジン
化合物B’2:3-メチルチオフェン
化合物B’3:インドール
【0084】
<ブレンステッド酸化合物(C)>
ブレンステッド酸化合物C1:酢酸
ブレンステッド酸化合物C2:リン酸
ブレンステッド酸化合物C3:安息香酸
ブレンステッド酸化合物C4:アルギニン
ブレンステッド酸化合物C5:オキシエチレン基が4.5モル付加された炭素数12のアルキルエーテル酢酸(花王株式会社製、商品名カオーアキポ(登録商標)RLM-45)
ブレンステッド酸化合物C6:オキシエチレン基が6モル付加された炭素数12のアルキルエーテル酢酸(泰光油脂化学工業株式会社製、商品名タイポールソフトECA-490)
ブレンステッド酸化合物C7:オキシエチレン基が10モル付加された炭素数12のアルキルエーテル酢酸(花王株式会社製、商品名カオーアキポ(登録商標)RLM-100)
ブレンステッド酸化合物C8:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数18のアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、商品名フォスファノール(登録商標)RL-310)
ブレンステッド酸化合物C9:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数12~15の2級のアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、商品名フォスファノール(登録商標)RS-410)
ブレンステッド酸化合物C10:オキシエチレン基が9モル付加された炭素数12~15の2級のアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、商品名フォスファノール(登録商標)RS-710)
【0085】
<親水性溶媒(D)>
親水性溶媒D1:モノエチレングリコール
親水性溶媒D2:ジエチレングリコール
親水性溶媒D3:プロピレングリコール
親水性溶媒D4:トリプロピレングリコール
親水性溶媒D5:N,N-ジメチルホルムアミド
親水性溶媒D6:1-メチル-2-ピロリドン
【0086】
<非イオン性界面活性剤(E)>
非イオン性界面活性剤E1:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数が12のアルキルエーテル(花王株式会社製、商品名エマルゲン(登録商標)103)
非イオン性界面活性剤E2:オキシエチレン基が6モル付加された炭素数が12のアルキルエーテル(花王株式会社製、商品名エマルゲン(登録商標)108)
非イオン性界面活性剤E3:オキシエチレン基が13モル付加された炭素数が18のアルキルエーテル(花王株式会社製、商品名エマルゲン(登録商標)320P)
非イオン性界面活性剤E4:ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(花王株式会社製、商品名エマルゲン(登録商標)B-66)
非イオン性界面活性剤E5:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名オルフィン(登録商標)E1010)
非イオン性界面活性剤E6:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名オルフィン(登録商標)EXP-4123)
非イオン性界面活性剤E7:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名オルフィン(登録商標)PD-001)
非イオン性界面活性剤E8:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名サーフィノール(登録商標)104E)
非イオン性界面活性剤E9:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名サーフィノール(登録商標)440)
非イオン性界面活性剤E10:アセチレン系界面活性剤(日新化学工業株式会社製、商品名サーフィノール(登録商標)485)
非イオン性界面活性剤E11:オキシエチレン基が5モル付加された炭素数が12~14の2級アルキルエーテル(株式会社日本触媒社製、商品名ソフタノール(登録商標)50)
非イオン性界面活性剤E12:オキシエチレン基が9モル付加された炭素数が12~14の2級アルキルエーテル(株式会社日本触媒社製、商品名ソフタノール(登録商標)90)
非イオン性界面活性剤E13:オキシエチレン基が12モル付加された炭素数が12~14の2級アルキルエーテル(株式会社日本触媒社製、商品名ソフタノール(登録商標)120)
非イオン性界面活性剤E14:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(三洋化成工業株式会社製、商品名ニューポール(登録商標)50-HB)
非イオン性界面活性剤E15:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、商品名ニューポール(登録商標)MAP-4000)
非イオン性界面活性剤E16:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、商品名ニューポール(登録商標)PE-64)
非イオン性界面活性剤E17:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬株式会社製、商品名ノイゲン(登録商標)XL-41)
非イオン性界面活性剤E18:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬株式会社製、商品名ノイゲン(登録商標)XL-80)
非イオン性界面活性剤E19:オキシエチレン基が3モル付加されたノニルフェニルエーテル(青木油脂工業株式会社製、商品名ブラウノン(登録商標)BNP-30A)
非イオン性界面活性剤E20:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数が16のアルキルエーテル(青木油脂工業株式会社製、商品名ブラウノン(登録商標)CH-313)
非イオン性界面活性剤E21:オキシエチレン基が5モル付加されたノニルフェニルエーテル(青木油脂工業株式会社製、商品名ブラウノン(登録商標)N-505)
【0087】
<その他成分>
酸化防止剤F1:トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート
酸化防止剤F2:チオジプロピオン酸ジオレイル
帯電防止剤:エチレンビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアンモニウムエチルサルフェート
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
表1~12から明らかなように、実施例のアクリル繊維用処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)及び/又は化合物(B)を含まない比較例の処理剤と比較して、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程及び耐炎化工程における集束性に優れ、高品質な炭素繊維を得ることができることがわかる。
【要約】
本発明の目的は、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程における炭素繊維製造用アクリル繊維の集束性を向上できるアクリル繊維用処理剤、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維及び該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明のアクリル繊維用処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含有する、アクリル繊維用処理剤である。本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、本発明のアクリル繊維用処理剤を付着させてなるものである。