IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーベーベー・シュバイツ・アーゲーの特許一覧 ▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

特許7448749電力ネットワークのための分散型電圧制御
<>
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図1
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図2
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図3
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図4
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図5
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図6
  • 特許-電力ネットワークのための分散型電圧制御 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電力ネットワークのための分散型電圧制御
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240306BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/00 170
H02J3/38 110
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022530294
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020083097
(87)【国際公開番号】W WO2021105066
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】16/694,448
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラゼギ-ジャーロミ,モハンマド
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ストウピス,ジェイムズ
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-074675(JP,A)
【文献】特開2009-153333(JP,A)
【文献】特開2014-090651(JP,A)
【文献】特開2016-208654(JP,A)
【文献】特開2017-229110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0148977(US,A1)
【文献】国際公開第2011/129054(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/182918(WO,A1)
【文献】ALI DEHGHAN BANADAKI; ET AL,VOLTAGE CONTROL USING EIGEN VALUE DECOMPOSITION OF FAST DECOUPLED LOAD FLOW JACOBIAN,2017 NORTH AMERICAN POWER SYMPOSIUM (NAPS),米国,IEEE,2017年09月17日,PAGES:1-6,https://ieeexplore.ieee.org/document/8107331,EPO reference number: XP033256156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ネットワークであって、
複数のゾーンを備え、各前記ゾーンは、
対応するゾーンの電気的特性を測定するよう構成される複数の測定装置と、
前記複数の測定装置から測定値を受信するよう構成されるゾーンコントローラと、
分散されたエネルギ資源(DER)と、
負荷とを含み、
各ゾーンコントローラは、前記対応するゾーンの前記複数の測定装置からローカル測定値のセットを受信し、前記受信されたローカル測定値のセットを用いて感度行列を計算し、電圧違反が前記対応するゾーンで発生したかどうかを判断し、前記電圧違反が前記対応するゾーンで発生したと判断したことに応答して、前記受信されたローカル測定値のセットを用いてDER設定点を決定し、前記DER設定点は、前記感度行列を用いて決定され、前記DER設定点を前記DERに送信するよう構成され、
各ゾーンコントローラは、前記感度行列を計算するために前記ローカル測定値のセット以外の測定値を使用せず、前記計算された感度行列は、前記複数のゾーンのうちの他のゾーンの相互効果を捕捉する、電力ネットワーク。
【請求項2】
各ゾーンコントローラは、前記ローカル測定値のセットを用いて、前記電力ネットワークにおける他のゾーンの効果を近似する、請求項1に記載の電力ネットワーク。
【請求項3】
各ゾーンコントローラは、前記対応するゾーンの外部から基準値を受信し、前記基準値を前記ローカル測定値のセットと比較することによって、電圧違反が発生したかどうかを判断する、請求項1または2に記載の電力ネットワーク。
【請求項4】
前記ゾーンコントローラは、前記DER設定点を前記DERに送信した後、ローカル測定値の第2のセットを受信し、前記ローカル測定値の第2のセットを用いて、前記DERが前記DER設定点を用いて動作していることを検証するよう構成される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【請求項5】
前記ゾーンコントローラは、前記ローカル測定値の第2のセットを再帰最小二乗アルゴリズムのステップにおいて用いて前記感度行列を更新する、請求項4に記載の電力ネットワーク。
【請求項6】
前記ゾーンコントローラは、前記感度行列を、以下の式のセットを用いて計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Πは定数正則化行列であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列であり、上付きTはそれぞれの行列の転置を示す、請求項5に記載の電力ネットワーク。
【数1】
【請求項7】
前記測定行列Aおよび行列Dは、以下のように定義され、式中、tは時刻であり、iはゾーン番号であり、ΔPはゾーン有効電力における変化であり、ΔQはゾーン無効電力における変化であり、ΔVは電圧における変化であり、
【数2】


【数3】

の行列を示す、請求項6に記載の電力ネットワーク。
【数4】
【請求項8】
前記DERは力率補正モードで動作しており、前記ゾーンコントローラは、受信した無効電力基準値と以下の式のセットとを用いて前記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは電圧変化を無効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Qは無効電力であり、DERは前記設定点が計算されているDERであり、
【数5】

は無効電力設定点であり、ΔQはゾーン無効電力における変化であり、上付き文字は前記無効電力が前記負荷または定格DER電力を指すかどうかを示し、上付きTはそれぞれの行列の転置を示す、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【数6】
【請求項9】
前記DERはDERユニティモードで動作しており、前記ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて前記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Pは有効電力であり、DERは前記設定点が計算されているDERであり、P DERは前記有効電力設定点であり、ΔPは有効電力における変化であり、上付き文字は前記有効電力が前記負荷または定格DER電力を指すかどうかを示し、上付きTはそれぞれの行列の転置を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【数7】
【請求項10】
前記DER設定点を決定することは、前記ゾーンコントローラが、前記ゾーンコントローラで前記DER設定点を決定するための時間が閾値を超えると判断することを含み、前記DER設定点は、前記ゾーンコントローラで前記DER設定点を決定するための前記時間が前記閾値を超えると判断することに応答して、クラウドホスト仮想マシンを用いて決定される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【請求項11】
複数のゾーンに分割された電力ネットワークを動作させるための方法であって、
ゾーンコントローラが、前記複数のゾーンのうちの第1のゾーンを動作させることを含み、前記第1のゾーンは、前記第1のゾーンの電気的特性を測定するよう構成される複数の測定装置と、分散されたエネルギ資源(DER)と、負荷とを含み、前記方法はさらに、
前記ゾーンコントローラが、対応するゾーンの前記複数の測定装置からローカル測定値のセットを受信することと、
前記ゾーンコントローラが、前記受信したローカル測定値のセットを用いて感度行列を計算することと、
前記ゾーンコントローラが、前記対応するゾーンにおいて電圧違反が発生したかどうかを判断することと、
前記ゾーンコントローラが、前記電圧違反が前記対応するゾーンで発生したと判断したことに応答して、前記受信されたローカル測定値のセットを用いてDER設定点を決定することと、
前記ゾーンコントローラが、前記DER設定点を前記DERに送信することとを含み、 各ゾーンコントローラは、前記感度行列を計算するために前記ローカル測定値のセット以外の測定値を使用せず、前記計算された感度行列は、前記複数のゾーンのうちの他のゾーンの相互効果を捕捉する、方法。
【請求項12】
各ゾーンコントローラは、前記ローカル測定値のセットを用いて、前記電力ネットワークにおける他のゾーンの効果を近似する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゾーンコントローラは、前記対応するゾーンの外部から基準値を受信し、前記基準値を前記ローカル測定値のセットと比較することによって、電圧違反が発生したかどうかを判断する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゾーンコントローラは、前記DER設定点を前記DERに送信した後、ローカル測定値の第2のセットを受信し、前記ローカル測定値の第2のセットを用いて、前記DERが前記DER設定点を用いて動作していることを検証するよう構成される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ゾーンコントローラは、前記ローカル測定値の前記第2のセットを再帰最小二乗アルゴリズムのステップにおいて用いて、前記感度行列を更新する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゾーンコントローラは、前記感度行列を、以下の式のセットを用いて計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Πは定数正則化行列であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列であり、上付きTはそれぞれの行列の転置を示す、請求項15に記載の方法。
【数8】
【請求項17】
前記測定行列Aおよび行列Dは、以下のように定義され、式中、tは時刻であり、iはゾーン番号であり、ΔPはゾーン有効電力における変化であり、ΔQはゾーン無効電力における変化であり、ΔVは電圧における変化であり、
【数9】


【数10】

の行列を示す、請求項16に記載の方法。
【数11】
【請求項18】
前記DERは力率補正モードで動作しており、前記ゾーンコントローラは、受信した無効電力基準値と以下の式のセットとを用いて前記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは電圧変化を無効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Qは無効電力であり、DERは前記設定点が計算されているDERであり、
【数12】

は無効電力設定点である、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【数13】
【請求項19】
前記DERはDERユニティモードで動作しており、前記ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて前記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Pは有効電力であり、DERは前記設定点が計算されているDERであり、P DERは前記有効電力設定点であり、ΔPは有効電力における変化であり、上付き文字は前記有効電力が前記負荷または定格DER電力を指すかどうかを示し、上付きTはそれぞれの行列の転置を示す、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【数14】
【請求項20】
前記DER設定点を決定することは、前記ゾーンコントローラが、前記ゾーンコントローラで前記DER設定点を決定するための時間が閾値を超えると判断することを含み、前記DER設定点は、前記ゾーンコントローラで前記DER設定点を決定するための前記時間が前記閾値を超えると判断することに応答して、クラウドホスト仮想マシンを用いて決定される、請求項11~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
1つのゾーンの前記ゾーンコントローラによって受信される前記ローカル測定値のセットは、他のゾーンの他のゾーンコントローラとのコントローラ間通信チャネルを介して受信される測定値を含まない、請求項11~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対応するゾーンのゾーンコントローラが、他のゾーンの測定値を必要とせずに、前記ローカル測定値のセットを使用して前記感度行列を再帰的に更新する、請求項11~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
1つのゾーンの前記ゾーンコントローラによって受信される前記ローカル測定値のセットは、他のゾーンの他のゾーンコントローラとのコントローラ間通信チャネルを介して受信される測定値を含まない、請求項1~10のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【請求項24】
前記対応するゾーンのゾーンコントローラが、他のゾーンの測定値を必要とせずに、前記ローカル測定値のセットを使用して前記感度行列を再帰的に更新する、請求項1~10、23のいずれか1項に記載の電力ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
本開示は、概して、電力ネットワークにおける分散制御に関する。電力ネットワークにおける分散型エネルギ資源(DER)の浸透が増加するにつれて、制御システムは、ネットワーク電圧の変動を引き起こす発電の突然の変化に応答可能でなければならない。集中制御システムは、大量のデータの集約を必要とし、各コントローラと集中電力ネットワーク制御システムとの間の往復通信により応答性を低下させる。いくつかの電力ネットワークは、複数の分散型コントローラが定期的に測定値および他のデータを交換して電力ネットワークのための制御戦略を開発する分散型制御システムを用いる。既存の電力ネットワーク分散制御には、いくつかの欠点および不利な点がある。外部データおよび他の分散コントローラによって共有される他の測定値への依存を低減することを含む、満たされていないニーズが依然として存在する。例えば、分散型制御システムは、コントローラ間の通信チャネルが故障するか、または制御戦略を計算するために必要なデータを共有するために必要な帯域幅を有さない場合、故障し得る。別の例では、いくつかの電力ネットワーク制御システムは、制御戦略を計算する前に、ネットワークトポロジおよびノード感度に関する先験的情報を受信しなければならない。当技術分野におけるこれらおよび他の欠点を考慮すると、本明細書に開示される独特の装置、方法、システム、および技術に対する有意な必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【文献】米国特許出願公開第2018/0321650号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示的な実施形態の開示
本開示の非限定的な例示的実施形態、それを作製および用いる方法およびプロセスを明確に、簡潔に、かつ正確に説明する目的で、ならびにそれの実施、作製および使用を可能にするために、ここで、図示されるものを含む、ある例示的実施形態が参照され、それを説明するために特定の文言が使用される。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定はそれによってはなされず、本開示は、本開示の利益とともに当業者に思い浮かぶであろう例示的な実施形態のそのような変更、修正、およびさらなる適用を含み、保護することを理解されたい。
【0004】
開示の概要
本開示の例示的な実施形態は、配電システム制御のための独自のシステム、方法、技術、および装置を含む。本開示のさらなる実施形態、形態、目的、特徴、利点、態様、および利益は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】例示的な配電ネットワークを示す回路図である。
図2】例示的なネットワーク制御プロセスを示すフローチャートである。
図3図2に示す例示的なゾーン制御プロセス中の、図1に示す例示的な分配システムの電気的特性を示すグラフである。
図4図2に示す例示的なゾーン制御プロセス中の、図1に示す例示的な分配システムの電気的特性を示すグラフである。
図5図2に示す例示的なゾーン制御プロセス中の、図1に示す例示的な分配システムの電気的特性を示すグラフである。
図6図2に示す例示的なゾーン制御プロセス中の、図1に示す例示的な分配システムの電気的特性を示すグラフである。
図7図2に示す例示的なゾーン制御プロセス中の、図1に示す例示的な分配システムの電気的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的な実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、その動作がコントローラ130によって制御されるいくつかの負荷およびDERを含むゾーン110と、その動作がコントローラ160によって制御されるいくつかの負荷およびDERを含むゾーン140とを含む例示的な配電ネットワーク100が示されている。ゾーン110および140は、それぞれのコントローラ130および160と他のゾーン構成要素、デバイス、および要素との制御関係によって論理的に定義されてもよく、それぞれ、別個の地理的領域および共通または重複する地理的領域をカバーしてもよい。ネットワーク100は、ほんの数例を挙げると、ユーティリティグリッド、電力伝送ネットワーク、低電圧配電、中電圧配電、および高電圧配電を含む、種々の用途において実現され得ることを理解されたい。ネットワーク100のトポロジは、説明の目的で示され、本開示の限定として意図されないことを理解されたい。例えば、ネットワーク100は、1つ以上の結合点によって相互接続された3つ以上のゾーンを含んでもよい。ネットワーク100は単相分配システムとして示されているが、ネットワーク100は多相電力を伝送するよう構成されてもよい。
【0007】
ゾーン110は、負荷と、DERと、測定装置とを含み、各測定装置は、複数のバスのうちの1つに結合され、各バスは、配電線の部分111に結合される。負荷112,113,および114は、それぞれバス122,123,および124に接続される。各負荷は、配電線の部分111から受け取った電力を消費するよう構成される任意のタイプのデバイスまたはシステムとすることができる。DER115および116は、それぞれバス125および126に結合される。各DERは、電力を生成し、ゾーンコントローラ130から受信した設定点に従って、生成された電力をネットワーク100の負荷に供給するよう構成される。いくつかの実施形態では、各DERはまた、電力を受電および蓄積するようにも構成され得る。各DERは、ほんの数例を挙げると、太陽光発電アレイ、風力タービン、天然ガス発生器、またはバッテリバンクを含んでもよい。
【0008】
複数の測定装置128は、ゾーン110の異なるノードにおける電気的特性を測定するよう構成される。図示の実施形態では、複数の測定装置128は、ゾーン110の各バスのバス電圧を測定するよう構成される電圧センサである。いくつかの実施形態では、複数の測定装置は、ほんの数例を挙げると、電流センサ、電力センサ、変圧器、または変流器を含んでもよい。複数の測定装置128は、ほんの数例を挙げると、電圧の大きさ、電圧の位相角、電流の大きさ、電流の位相角、電力の流れ、有効電力、または無効電力を測定するよう構成され得る。ある実施形態では、複数の測定装置のうちの1つ以上は、一例を挙げると、DER等の別の装置に組み込まれてもよい。
【0009】
複数の測定装置128ならびにDER115および116は、複数の通信チャネル127を介してゾーンコントローラ130と通信する。ある実施形態では、複数の通信チャネル127は、発行および加入ブローカまたはブローカレスデータ交換バスを形成する。複数の測定装置128は、測定値をデータバスに非同期的に発行することができる。コントローラ130は、発行された測定値をリアルタイムで読み取り、データバスを用いてDER115および116にコマンドを送信することができる。コントローラ130は、いくつか例を挙げると、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)、AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)、DDS(Data Distribution Service)、またはO
PC UA(Open Platform Communication Unified Architecture)などのゾーン通信プロトコルを用いて、複数の測定装置128およびDER115および116と通信することができる。いくつかの実施形態では、ゾーン110のデバイスのうちの1つは、MODBUS、MODBUS TCP、DNP、またはIEC61850などのユーティリティ標準プロトコルからゾーン通信プロトコルのうちの1つに変換するためのアダプタを含むことができる。コントローラ130、DER115および116、ならびに複数の測定装置128の間のデータ転送は、メッセージングプロトコル認証(すなわち、MQTT IDおよびパスワード)、トランスポート層セキュリティ(すなわち、TSL)、およびインターネットプロトコル認証層を通して安全にされてもよい。
【0010】
ゾーンコントローラ130は、入出力装置131と、処理装置133と、メモリ装置135とを含む。ゾーンコントローラ130は、スタンドアロンデバイス、組み込みシステム、または複数のデバイスであってもよい。ゾーンコントローラ130は、いくつか例を挙げると、ルータ、ルーティングスイッチ、統合アクセスデバイス、無線ゲートウェイデバイス、または別のタイプのアクセスデバイス等のエッジデバイスであってもよい。
【0011】
入出力装置131は、ゾーンコントローラ130がネットワーク100の他のデバイスと通信することを可能にする。入出力装置131は、複数の測定装置128から測定値を受信し、設定点を含むコマンドをDER115および116に送信するよう構成される。たとえば、入出力装置131は、ほんの数例を挙げると、ネットワークアダプタ、ネットワーククレデンシャル、インターフェイス、またはポート(例えば、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVI、HDMI(登録商標)、FireWire、CAT5、イーサネット(登録商標)、ファイバ、または任意の他のタイプのポートもしくはインターフェイス)であってもよい。入出力装置131は、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアから構成されてもよい。入出力装置131は、これらのアダプタ、クレデンシャル、またはデータを受信するための第1のポートおよびデータを送信するための第2のポートなどのポート、のうちの1つより多くを含むことができる。
【0012】
処理装置133は、プログラマブルタイプ、専用のハードワイヤードステートマシン、またはそれらの組合せであってもよい。たとえば、装置133は、高度縮小命令セット計算機(ARM)であってもよい。装置133は、ほんの数例を挙げると、複数のプロセッサ、算術論理演算ユニット(ALU)、中央処理ユニット(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含んでもよい。複数の処理ユニットを有する処理装置133の形態については、分散処理、パイプライン処理、または並列処理が使用されてもよい。処理装置133は、本明細書で説明される動作のみの実行専用であってもよく、または1つ以上の追加のアプリケーションで利用されてもよい。図示の形態では、処理装置133は、メモリ装置135に記憶されたプログラミング命令(ソフトウェアまたはファームウェアなど)に従ってプロセスを実行し、データを処理するプログラム可能な種類のものである。代替的または追加的に、プログラミング命令は、ハードワイヤード論理または他のハードウェアによって少なくとも部分的に定義される。処理装置133は、入出力装置131または他の場所から受信した信号を処理し、所望の出力信号を提供するのに適した任意のタイプの1つ以上の構成要素から構成されてもよい。そのような構成要素は、デジタル回路、アナログ回路、または両方の組合せを含んでもよい。
【0013】
メモリ装置135は、いくつか例を挙げると、ソリッドステートタイプ、電磁タイプ、光学タイプ、またはこれらの形態の組み合わせ等の1つ以上のタイプであってもよい。さらに、メモリ装置135は、揮発性、不揮発性、一時的、非一時的、またはこれらのタイプの組合せであってもよく、メモリ装置135のいくつかまたはすべては、ほんの数例を挙げると、ディスク、テープ、メモリスティック、カートリッジなどのポータブルな種類のものであってもよい。加えて、メモリ装置135は、プログラミング命令を記憶することに加えて、またはその代わりに、入出力装置131から受信されるか、またはそこに送られる信号を表すデータなど、処理装置133によって操作されるデータを記憶してもよい。
【0014】
ネットワーク100のゾーンコントローラは各々、電力ネットワーク全体の電圧を調節するのに有効な分散型電圧制御アルゴリズムを実行する。各ゾーンは、それ自体のゾーンコントローラによって制御されるので、ネットワークは、ゾーンの数に限定されない。
【0015】
ネットワーク100の各ゾーンコントローラは、制御戦略を生成するために他のゾーンの測定装置からの測定値または他のデータを用いることなく、対応するゾーンの制御可能デバイスを操作する。各ゾーンコントローラは、他のゾーンと通信することなく、対応するゾーンの制御可能デバイスを制御するので、ネットワーク100の分散型ゾーンコントローラは、専用のコントローラ間通信チャネルを必要とせず、レイテンシ、同期、および帯域幅などの他の分散型制御システムの厳しい通信制限から解放される。さらに、制御戦略生成中のゾーンコントローラ間の通信がないことは、ゾーンコントローラによる電圧違反に対する応答性の増大を可能にする。
【0016】
ゾーンコントローラがローカル測定値のみを使用し、隣接するゾーンの影響を考慮することなく設定点を調整する分散型制御システムとは異なり、例示的なゾーンコントローラは、ローカル測定値を用いてネットワーク100内の他のゾーンの影響を近似する。各ゾーンコントローラは、ローカル測定値を用いて感度行列を生成し、再帰的に更新する。感度行列は、他のゾーンからの測定値またはデータを必要とすることなく、ゾーンコントローラのゾーンに対する他のゾーンの相互効果(結合効果としても知られる)を捕捉するように計算される。感度行列が再帰的に更新され続けると、行列の、他のゾーンの効果の近似がより正確になる。さらに、感度行列はゾーンのDERに対する設定点を計算するために使用されるので、設定点は、感度行列の、他のゾーンの相互効果の近似に部分的に基づいて決定されることになる。
【0017】
他のゾーンコントローラからの測定値または他のデータを必要としないことに加えて、各ゾーンコントローラは、ゾーン制御戦略を生成するためにゾーン感度に関する先験的な情報を必要としない。代わりに、各ゾーンコントローラは、ゾーン測定装置からの測定値を用いて、その感度行列を初期化し、再帰的に更新することによって、ゾーン間の相互効果を考慮する。
【0018】
ゾーン110のデバイスの前述の特徴のいずれかまたはすべては、ゾーン140のデバイス内にも存在し得ることを理解されたい。例えば、ゾーン140の負荷、DER、測定装置、およびコントローラの前述の特徴は、ゾーン140の負荷、DER、測定装置、およびコントローラにも存在し得る。
【0019】
ゾーン140は、配電線の部分141に結合された複数のバスに結合された負荷、DER、および測定装置を含む。負荷142,143,および144は、それぞれバス152,153,および154に結合される。DER145および146は、それぞれバス155および156に結合される。複数の測定装置158は、ゾーン140の電気的特性を測定するよう構成される。図示の実施形態では、複数の測定装置158は、ゾーン140の各バスのバス電圧を測定するよう構成される電圧センサである。
【0020】
ゾーンコントローラ160は、入出力装置161と、処理装置163と、メモリ装置165とを含む。複数の測定装置158ならびにDER145および146は、複数の通信チャネル157を介してゾーンコントローラ160と通信する。
【0021】
以下でより詳細に説明されるように、ネットワーク100の各ゾーンコントローラは、他のゾーンの結合効果を依然として考慮しながら、別のゾーンコントローラから受信される測定値または他のデータを用いることなく、電圧違反に応答するよう構成される。ある実施形態では、ネットワーク100のゾーンコントローラは、コントローラ間通信ネットワークを介して通信してもよい。たとえば、時間的制約のない制御機能のためのゾーン対ゾーン通信を可能にするために、メッシュネットワークが提供されてもよい。無線反復デバイスからデバイスへのホッピングに起因するレイテンシは、同期通信が可能でない場合があることを意味する。しかしながら、ネットワーク100は、電圧違反に応答するなど、時間的制約のある制御機能のためにコントローラ間通信を使用しないので、レイテンシ、同期、または帯域幅などのコントローラ間通信制限に脆弱ではない。これは、低頻度の、断続的な、または島状の通信動作モードなどの任意のコントローラ間通信ネットワークに対する緩和された要件を可能にする。
【0022】
図2を参照すると、複数の相互接続されたゾーンを含む電力ネットワークを動作させるための例示的なプロセス200が示されており、例示的なネットワークの各ゾーンは、少なくとも1つの負荷と、少なくとも1つの分散されたエネルギ資源と、複数の測定装置と、ゾーンコントローラとを含む。プロセス200は、ネットワーク制御の集約された効果を生じさせるために、各ゾーンのゾーンコントローラによって実施される。例えば、プロセス200の1つ以上の態様の省略、さらなる条件および動作の追加、動作および条件の再編成、1つ以上の動作および条件の別個のプロセスへの分離、または1つの動作の別個の動作への分割を含む、プロセス200に対するいくつかの変形および修正が企図されることをさらに理解されたい。
【0023】
プロセス200は、動作201において開始し、ゾーンコントローラは、同じゾーンのDERおよび複数の測定装置との通信を初期化する。
【0024】
プロセス200は動作203に進み、ゾーンコントローラは、ゾーンの電気的特性に対応するデータを複数の測定装置から受信する。
【0025】
プロセス200は、動作205に進み、ゾーンコントローラは、動作207を実行するために必要なすべてのデータが受信されたかどうかを判断することによって、動作203で受信されたデータを検証する。プロセス200は、すべての必要なデータが受信されるまで動作205で待機する。動作205において、ゾーンコントローラは、データが偽データを含むかどうかも判断してもよい。
【0026】
プロセス200は、動作207に進み、ゾーンコントローラは、動作203で受信された測定値を用いて感度行列を計算する。ゾーンコントローラは、感度行列を計算するために、ネットワークトポロジなどの先験的な情報、または他のゾーンで取られた測定値を必要としない。感度行列は、ゾーン内の複数のノードで取得された電圧と、位相角と、実電力測定値または無効電力測定値との間の関係を定義する。感度行列はまた、ゾーンコントローラのゾーンと電力ネットワークの他のゾーンとの間の相互結合の効果を捕捉する。
【0027】
感度行列は、計算コストを低減し、動作207をゾーンコントローラで実行するのに適したものにするために、再帰的アルゴリズムを用いて計算される。ゾーンコントローラが動作207を実行するたびに、ゾーンコントローラは、動作203から直近に受信された測定値を用いて再帰アルゴリズムの1回の反復を計算する。
【0028】
感度行列は、通常の最小二乗アルゴリズムまたは正則化最小二乗アルゴリズムを用いて計算してもよい。ゾーンコントローラは、動作205において判断された偽データの存在に基づいて、通常の最小二乗アルゴリズムまたは正規最小二乗アルゴリズムのいずれかを選択してもよい。正則化最小二乗法アルゴリズムは、通常の最小二乗法アルゴリズムよりも多くの計算能力を必要とするが、異常なデータ、例えば、誤動作しているかまたは障害が生じた測定装置からのデータを管理するのにより適している。
【0029】
ゾーンコントローラが、通常の最小二乗法アルゴリズムを用いる場合、ゾーンコントローラは、最初に動作207を実行するときに、以下の初期化式に従って感度行列を算出し、ここで、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列である:
【0030】
【数1】
【0031】
加重行列Wは、感度行列を計算するために使用される測定の古さに基づいて、ユーザが重みを割り当てることによって決定される。測定行列Aは、以下のように定義することができ、ここで、tは時刻であり、iはゾーン番号であり、ΔPはゾーン有効電力の変化であり、ΔQはゾーン無効電力の変化である。
【0032】
【数2】
【0033】
行列Dは、以下のように定義することができ、ここで、ΔVは電圧の変化であり、iはゾーン番号であり、tは時刻である。
【0034】
【数3】
【0035】
動作207の後続の実行において、以下の式のセットを用いて、式のセット(1)を用いて最初に計算された感度行列を更新することによって、感度行列を計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは時刻であり、aは測定行列のベクトルであり、Λは感度行列であり、νは忘却係数であり、Iは単位行列であり、Δは第2の差分演算子であり、Pはゾーン有効電力であり、Qはゾーン無効電力であり、Vはゾーン電圧である:
【0036】
【数4】
【0037】
ゾーンコントローラが、正則化最小二乗法アルゴリズムを用いる場合、ゾーンコントローラは、最初に動作207を実行するときに、以下の初期化式に従って感度行列を算出し、ここで、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Πは定数正則化行列(constant regularization matrix)であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列である:
【0038】
【数5】
【0039】
加重行列Wは、感度行列を計算するために使用される測定の古さに基づいて、ユーザが重みを割り当てることによって決定される。測定行列Aは、以下のように定義することができ、ここで、tは時刻であり、iはゾーン番号であり、ΔPはゾーン有効電力の変化であり、ΔQはゾーン無効電力の変化である。
【0040】
【数6】
【0041】
行列Dは、以下のように定義することができ、ここで、ΔVは電圧の変化であり、iはゾーン番号であり、tは時刻である。
【0042】
【数7】
【0043】
動作207の後続の実行において、以下の式のセットを用いて、式のセット(7)を用いて最初に計算された感度行列を更新することによって、感度行列を計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助変数であり、tは時刻であり、aは測定行列のベクトルであり、Λは感度行列であり、νは忘却係数であり、Πは定数正則化行列であり、Iは単位行列であり、Δは第2の差分演算子であり、Pはゾーン有効電力であり、Qはゾーン無効電力であり、Vはゾーン電圧である:
【0044】
【数8】
【0045】
プロセス200は動作209に進み、ゾーンコントローラは中央コントローラから基準値を受信する。ある実施形態では、ゾーンコントローラは、基準値に対応する無効電力基準値または命令を受信する。
【0046】
プロセス200は条件211に進む。ゾーンコントローラが、電圧違反がゾーン内で発生していないと判断する場合、プロセス200は動作217に進み、ゾーンコントローラは、新たな設定点を決定せず、ゾーンのDERが、以前に決定された設定点を用いて動作を継続することを可能にする。次いで、プロセス200は動作219に進む。
【0047】
ゾーンコントローラが、ゾーン内のある点で電圧違反が生じていると判断する場合、プロセス200は、条件211から動作213に進む。動作213において、ゾーンコントローラは、動作207中に計算された感度行列の直近に計算された反復および線形プログラミングアルゴリズムを用いて、ゾーンのDERのうちの1つ以上に対する新たな設定点を決定する。感度行列のより多くの反復が計算されるにつれて、計算された設定点は、制約された変数を境界内に維持するのにより成功する。
【0048】
新たな設定点は、DER有効電力または無効電力を制約内にあるよう最小限に増加させるのに有効に決定される。ある実施形態では、制約は、1)ノード電圧がそれらの下限および上限内にあること、2)ゾーンのDERによって生成される有効および無効電力が、
有効電力逆流を防止するためにゾーンの負荷の電力消費を超えないこと、ならびに3)DERによる電力出力のいかなる増加もDERの能力を超えないこと、を含んでもよい。制約は、追加または除去されてもよい。
【0049】
各DERの設定点は、電圧違反のタイプおよびDERの動作モードに基づいて、以下の式のセットのうちの1つを用いて決定され得る。不足電圧違反およびDERが力率補正モードで動作する場合、ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて新たなDER設定点を決定することができ、ここで、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは、電圧変化を無効電
力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Qは無効電力であり、DERは設定点が計算されているDERであり、
【0050】
【数9】
【0051】
は無効電力設定点である:
【0052】
【数10】
【0053】
過電圧違反およびDERが力率補正モードで動作する場合、ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて新たなDER設定点を決定することができ、ここで、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは、電圧変化を無効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、
Qは無効電力であり、DERは設定点が計算されているDERであり、
【0054】
【数11】
【0055】
は無効電力設定点である:
【0056】
【数12】
【0057】
不足電圧違反およびDERがユニティモードで動作する場合、ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて新たなDER設定点を決定することができ、ここで、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは、電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり
、Pは、有効電力であり、DERは、設定点が計算されているDERであり、
【0058】
【数13】
【0059】
は有効電力設定点である:
【0060】
【数14】
【0061】
過電圧違反およびDERがユニティモードで動作する場合、ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて新たなDER設定点を決定することができ、ここで、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは、電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、
Pは、有効電力であり、DERは、設定点が計算されているDERであり、
【0062】
【数15】
【0063】
は有効電力設定点である:
【0064】
【数16】
【0065】
特定の実施形態では、動作213を実行する時間を監視することができる。動作を実行する時間が閾値を超える場合、プリプロセッサとして動作するゾーンコントローラは、動作213の実行をクラウドホスト仮想マシンにプッシュする。仮想マシンは、リモートデータセンタ上に位置してもよく、またはオンプレミスサーバ上に位置してもよい。動作213の結果は、ゾーンコントローラに返送される。
【0066】
プロセス200は動作215に進み、ゾーンコントローラは設定点を1つ以上のDERに送信する。
【0067】
プロセス200は、動作219に進み、ゾーンコントローラは、次いで、複数の測定装置から新たなデータを受信し、ゾーンのDERが正しい設定点を用いて動作していることを検証する。動作219が完了すると、プロセス200は動作205に戻る。プロセス200は、動作203において受信されたデータが使用されたのと同じ方法で、動作219において受信された新たなデータを用いて進む。
【0068】
図3図7を参照すると、ゾーンコントローラ160によって実行される図2に示す例示的なネットワーク制御プロセスのシミュレーション中における、図1に示す例示的な配電ネットワーク100のゾーン140の電気的特性を示すグラフである。グラフはまた、電圧違反に応答するためにネットワークの分散コントローラがデータを交換する従来の分散型制御ネットワークのシミュレーション中における、図1の電力ネットワーク100と同じトポロジを有する電力ネットワークの電気的特性を示す。グラフはまた、制御システムが電圧違反に応答しなかった電力ネットワークのシミュレーション中における、図1の電力ネットワーク100と同じトポロジを有する電力ネットワークの電気的特性を示す。
【0069】
シミュレーションについて、ネットワーク100のDERの各々は、PFCモードで動作する光起電アレイである。各光起電アレイは、150kVARの無効電力定格を有した。ゾーン140の各バスについて、下限電圧は7950Vであり、上限電圧は7970Vである。
【0070】
負荷の有効電力消費および無効電力消費は、シミュレーション全体を通して変動する。時間t0において、測定値の第1のセットがゾーンコントローラ160によって受信されると、ネットワーク100内のすべてのDERの無効電力は、分布N(1,0.1)を有する乗法性白色ガウス雑音を用いて摂動される。t0の後、ゾーン140内のDERは、ゾーンコントローラ160によって制御されるが、ゾーン110内のDERの電力出力は、ゾーン140内において電圧変動を引き起こすのに充分な雑音である、分布N(1,0.3)を有する乗法性白色ガウス雑音を用いて、シミュレーションの残り全体にわたって摂動される。
【0071】
シミュレーションは2時間継続した。ゾーンコントローラ160は、0.97の許容係数および0.1×Iの定数正則化行列を用いて感度行列を計算するために分散正則化再帰最小二乗アルゴリズムを使用した。
【0072】
引き続き図3を参照すると、無調整電力ネットワーク、例示的なネットワーク制御プロセス、および従来のネットワーク制御プロセスのシミュレーション中のバス152における電圧を示すグラフ300がある。グラフ300は、下限電圧303、上限電圧301、無調整シミュレーション電圧305、従来のシミュレーション電圧307、および例示的なシミュレーション電圧309を表す複数の線を含む。
【0073】
引き続き図4を参照すると、無調整電力ネットワーク、例示的なネットワーク制御プロセス、および従来のネットワーク制御プロセスのシミュレーション中のバス153における電圧を示すグラフ400がある。グラフ400は、下限電圧403、上限電圧401、無調整シミュレーション電圧405、従来のシミュレーション電圧407、および例示的なシミュレーション電圧409を表す複数の線を含む。
【0074】
引き続き図5を参照すると、無調整電力ネットワーク、例示的なネットワーク制御プロセス、および従来のネットワーク制御プロセスのシミュレーション中のバス154における電圧を示すグラフ500がある。グラフ500は、下限電圧503、上限電圧501、無調整シミュレーション電圧505、従来のシミュレーション電圧507、および例示的なシミュレーション電圧509を表す複数の線を含む。
【0075】
引き続き図6を参照すると、例示的なネットワーク制御プロセスおよび従来のネットワーク制御プロセスのシミュレーション中のDER145の無効電力出力を示すグラフ600がある。グラフ600は、例示的な無効電力609および従来の無効電力607を表す複数の線を含む。
【0076】
引き続き図7を参照すると、例示的なネットワーク制御プロセスおよび従来のネットワーク制御プロセスのシミュレーション中のDER146の無効電力出力を示すグラフ700がある。グラフ700は、例示的な無効電力709および従来の無効電力707を表す複数の線を含む。
【0077】
ここで、いくつかの例示的な実施形態をさらに記載する。一実施形態は、電力ネットワークであって、複数のゾーンを備え、各上記ゾーンは、対応するゾーンの電気的特性を測定するよう構成される複数の測定装置と、上記複数の測定装置から測定値を受信するよう構成されるゾーンコントローラと、分散されたエネルギ資源(DER)と、負荷とを含み、各ゾーンコントローラは、上記対応するゾーンの上記複数の測定装置からローカル測定値のセットを受信し、上記受信されたローカル測定値のセットを用いて感度行列を計算し、電圧違反が上記対応するゾーンで発生したかどうかを判断し、上記電圧違反が上記対応するゾーンで発生したと判断したことに応答して、上記受信されたローカル測定値のセットを用いてDER設定点を決定し、上記DER設定点を上記DERに送信するよう構成される、電力ネットワークである。
【0078】
前述の電力ネットワークのある形態では、各ゾーンコントローラは、上記感度行列を計算するために上記ローカル測定値のセット以外のデータを使用せず、上記計算された感度行列は、上記複数のゾーンのうちの他のゾーンの相互効果を捕捉する。ある形態では、各ゾーンコントローラは、上記対応するゾーンの外部から基準値を受信し、上記基準値を上記ローカル測定値のセットと比較することによって、電圧違反が発生したかどうかを判断する。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記DER設定点を上記DERに送信した後、ローカル測定値の第2のセットを受信し、上記ローカル測定値の第2のセットを用いて、上記DERが上記DER設定点を用いて動作していることを検証するよう構成される。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記ローカル測定値の第2のセットを再帰最小二乗アルゴリズムのステップにおいて用いて上記感度行列を更新する。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記感度行列を、以下の式のセットを用いて計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Πは定数正則化行列であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列である。
【0079】
【数17】
【0080】
ある形態では、上記測定行列Aおよび行列Dは、以下のように定義される。
【0081】
【数18】
【0082】
ある形態では、上記DERは力率補正モードで動作しており、上記ゾーンコントローラは、受信した無効電力基準値と以下の式のセットとを用いて上記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは電圧変化を無効電力の変化に関連付ける感度行列Λの
分割であり、Qは無効電力であり、DERは上記設定点が計算されているDERであり、
【0083】
【数19】
【0084】
は無効電力設定点である。
【0085】
【数20】
【0086】
ある形態では、上記DERはDERユニティモードで動作しており、上記ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて上記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Pは有効
電力であり、DERは上記設定点が計算されているDERであり、
【0087】
【数21】
【0088】
は、有効電力設定点である。
【0089】
【数22】
【0090】
ある形態では、上記DER設定点を決定することは、上記ゾーンコントローラが、上記ゾーンコントローラで上記DER設定点を決定するための時間が閾値を超えると判断することを含み、上記DER設定点は、上記ゾーンコントローラで上記DER設定点を決定するための上記時間が上記閾値を超えると判断することに応答して、クラウドホスト仮想マシンを用いて決定される。
【0091】
別の例示的な実施形態は、複数のゾーンに分割された電力ネットワークを動作させるための方法であって、ゾーンコントローラが、上記複数のゾーンのうちの第1のゾーンを動作させることを含み、上記第1のゾーンは、上記第1のゾーンの電気的特性を測定するよう構成される複数の測定装置と、分散されたエネルギ資源(DER)と、負荷とを含み、上記方法はさらに、上記ゾーンコントローラが、対応するゾーンの上記複数の測定装置からローカル測定値のセットを受信することと、上記ゾーンコントローラが、上記受信したローカル測定値のセットを用いて感度行列を計算することと、上記ゾーンコントローラが、上記対応するゾーンにおいて電圧違反が発生したかどうかを判断することと、上記ゾーンコントローラが、上記電圧違反が上記対応するゾーンで発生したと判断したことに応答して、上記受信されたローカル測定値のセットを用いてDER設定点を決定することと、上記ゾーンコントローラが、上記DER設定点を上記DERに送信することとを含む、方法である。
【0092】
前述の方法のある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記感度行列を計算するために上記ローカル測定値のセット以外のデータを使用せず、上記計算された感度行列は、上記複数のゾーンのうちの他のゾーンの相互効果を捕捉する。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記対応するゾーンの外部から基準値を受信し、上記基準値を上記ローカル測定値のセットと比較することによって、電圧違反が発生したかどうかを判断する。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記DER設定点を上記DERに送信した後、ローカル測定値の第2のセットを受信し、上記ローカル測定値の第2のセットを用いて、上記DERが上記DER設定点を用いて動作していることを検証するよう構成される。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記ローカル測定値の上記第2のセットを再帰最小二乗アルゴリズムのステップにおいて用いて、上記感度行列を更新する。ある形態では、上記ゾーンコントローラは、上記感度行列を、以下の式のセットを用いて計算し、式中、iはゾーン番号であり、Mは補助行列であり、tは初期時刻であり、Aは測定行列であり、Wは加重行列であり、Πは定数正則化行列であり、Λは感度行列であり、Dは電圧測定行列である。
【0093】
【数23】
【0094】
ある形態では、上記測定行列Aおよび行列Dは、以下のように定義される。
【0095】
【数24】
【0096】
ある形態では、上記DERは力率補正モードで動作しており、上記ゾーンコントローラは、受信した無効電力基準値と以下の式のセットとを用いて上記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVQ,tは電圧変化を無効電力の変化に関連付ける感度行列Λの
分割であり、Qは無効電力であり、DERは上記設定点が計算されているDERである。
【0097】
【数25】
【0098】
ある形態では、上記DERはDERユニティモードで動作しており、上記ゾーンコントローラは、以下の式のセットを用いて上記DER設定点を決定し、式中、yは補助変数であり、tは時刻であり、Vは電圧基準値の下限であり、Vは電圧基準値の上限であり、ΛVP,tは電圧変化を有効電力の変化に関連付ける感度行列Λの分割であり、Pは有効
電力であり、DERは上記設定点が計算されているDERであり、
【0099】
【数26】
【0100】
は、有効電力設定点である。
【0101】
【数27】
【0102】
ある形態では、上記DER設定点を決定することは、上記ゾーンコントローラが、上記ゾーンコントローラで上記DER設定点を決定するための時間が閾値を超えると判断することを含み、上記DER設定点は、上記ゾーンコントローラで上記DER設定点を決定するための上記時間が上記閾値を超えると判断することに応答して、クラウドホスト仮想マシンを用いて決定される。
【0103】
さまざまな実施形態からのさまざまな態様、特徴、プロセス、および動作は、反対のことが明示的に述べられていない限り、他の実施形態のいずれにおいても使用され得ることが企図される。示されたいくつかの動作は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上でコンピュータプログラム製品を実行する処理装置を含むコンピュータによって実現され得、コンピュータプログラム製品は、処理装置に、動作のうちの1つ以上を実行させるかまたは他の装置に1つ以上の動作を実行するようコマンドを発行させる命令を含む。
【0104】
本開示は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されているが、これは、例示的であって、性質において限定的ではないと見なされるべきであり、ある例示的実施形態のみが図示および説明されており、本開示の精神内に入るすべての変更および修正が保護されることが所望されることを理解されたい。上記の説明で利用される「好ましい」、「好ましくは」、「好まれる」、または「より好まれる」などの語の使用は、そのように説明される特徴がより望ましい場合があることを示すが、それにもかかわらず、それは必要ではなくてもよく、それを欠く実施形態は、本開示の範囲内であると企図されてもよく、その範囲は、特許請求の範囲によって規定されることを理解されたい。請求項を読む際に、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「少なくとも1つの(at least one)」
、または「少なくとも1つの部分(at least one portion)」などの語が使用される場合、請求項において反対のことが具体的に述べられない限り、請求項を1つの項目のみに限定する意図はないことが意図される。「~の(of)」という用語は、別の項目との関連性または別の項目への接続、およびそれが使用される文脈によってわかるような別の項目への所属または別の項目への接続を意味し得る。「~に結合される」、「~と結合される」などの文言は、間接的な接続および結合を含み、反対のことが明示的に示されない限り、直接的な結合または接続をさらに含むが、必要とはしない。「少なくとも一部」および/または「一部」という文言が使用される場合、項目は、特に反対の記載がない限り、一部および/または項目全体を含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7