(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】中高電圧回路遮断器のための電気モータアクチュエータの動作のための制御方式
(51)【国際特許分類】
H02P 31/00 20060101AFI20240306BHJP
H01H 33/36 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02P31/00
H01H33/36
(21)【出願番号】P 2022541889
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2021050079
(87)【国際公開番号】W WO2021140098
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キーフェルンドルフ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】マテイ,ステファノ
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-311345(JP,A)
【文献】特開2016-72064(JP,A)
【文献】特開2009-289566(JP,A)
【文献】特開昭60-263206(JP,A)
【文献】特開平11-176293(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 31/00
H01H 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路遮断器のための接点作動ユニットであって、
電気機械デバイス(110)を備え、前記電気機械デバイス(110)のアクチュエータは、前記電気回路遮断器内の接点構成に接続され、前記接点作動ユニットはさらに、
制御ユニット(200)を備え、前記制御ユニット(200)は、前記アクチュエータを移動させるとともに前記接点構成を第1の位置から第2の位置に導くために前記電気機械デバイス(110)を制御するように構成され、前記接点作動ユニットはさらに、
1つ以上のデータ信号を提供するように構成されたモーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)を備え、
提供された前記データ信号のうち少なくとも1つは、予め定められた力および/またはトルク値を示し、前記アクチュエータで前記接点構成を予め定められた位置に移動させるように前記制御ユニット(200)に命令するように適合され、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、処理ユニットおよび記憶領域を備え、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)からの前記予め定められた力および/もしくはトルク値は、前記電気回路遮断器内の前記接点構成のうちの少なくとも1つの所望の移動曲線に対応しており、
前記予め定められた力および/もしくはトルク値は、システムモデルから導出され、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、
1つ以上のセンサによって、前記電気回路遮断器内のガスの測定値を得、
前記システムモデルから、前記ガスの測定値の関数として前記移動曲線を導出し、
前記電気機械デバイス(110)は、回転電気機械またはリニアモータまたはソレノイドであり、
前記アクチュエータは、前記回転電気機械の回転子または前記リニアモータの変換器または前記ソレノイドの電機子であり、
前記アクチュエータは前記接点構成に直接結合されるか、または、前記アクチュエータは運動学的連鎖で前記接点構成に結合されるか、または、前記アクチュエータはギアで前記接点構成に結合される、接点作動ユニット。
【請求項2】
電気回路遮断器のための接点作動ユニットであって、
電気機械デバイス(110)を備え、前記電気機械デバイス(110)のアクチュエータは、前記電気回路遮断器内の接点構成に接続され、前記接点作動ユニットはさらに、
制御ユニット(200)を備え、前記制御ユニット(200)は、前記アクチュエータを移動させるとともに前記接点構成を第1の位置から第2の位置に導くために前記電気機械デバイス(110)を制御するように構成され、前記接点作動ユニットはさらに、
1つ以上のデータ信号を提供するように構成されたモーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)を備え、
提供された前記データ信号のうち少なくとも1つは、予め定められた力および/またはトルク値を示し、前記アクチュエータで前記接点構成を予め定められた位置に移動させるように前記制御ユニット(200)に命令するように適合され、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、処理ユニットおよび記憶領域を備え、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)からの前記予め定められた力および/もしくはトルク値は、前記電気回路遮断器内の前記接点構成のうちの少なくとも1つの所望の移動曲線に対応しており、
前記予め定められた力および/もしくはトルク値は、システムモデルから導出され、
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、
1つ以上のセンサによって、前記電気回路遮断器内のガスの測定値を得、
前記システムモデルから、前記ガスの測定値の関数として前記移動曲線を導出し、
追加の力および/またはトルク値を前記制御ユニット(200)に提供するように構成されるフィードバックコントローラ(220,230,240)をさらに備え、
前記フィードバックコントローラ(220,230,240)は、前記電気機械デバイス(110)からモーションデータを受取り、前記モーションデータと前記移動曲線との間のずれに基づいて力および/もしくはトルクを提供するように構成され、
ならびに/または、前記フィードバックコントローラ(220,230,240)に提供される前記モーションデータは、
前記1つ以上のセンサからのデータの関数であり、および/もしくは
前記システムモデルから推定される、電気回路遮断器のための接点作動ユニット。
【請求項3】
前記システムモデルは、前記接点作動ユニットおよび/もしくは前記電気回路遮断器の1つ以上の機械パラメータおよび/もしくは電気パラメータ、ならびに/または、移動曲線を表わす、請求項1または請求項2に記載の接点作動ユニット。
【請求項4】
前記記憶領域は、前記力および/もしくはトルク値ならびに/または移動曲線の少なくとも1つの予め定められたセットを表わす予め定められたデータを含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の接点作動ユニット。
【請求項5】
少なくとも1つの
前記システムモデルは、1つ以上の回路遮断器の1つ以上の例示的な遮断接点構成のモーション軌道のモデルデータによって表わされる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の接点作動ユニット。
【請求項6】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は1つ以上のセンサと通信し、前記1つ以上のセンサは、
電気回路遮断器チャンバ内のガスの組成、前記電気回路遮断器チャンバ内の1つ以上の温度
からなる群のうちの1つ以上の値を測定するように構成される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項7】
前記1つ以上のセンサは、
周囲温度、湿度、前記
電気回路遮断器内の前記接点構成のスイッチング動作の回数、前記接点構成にわたるシステム電流、直近のスイッチング動作のスイッチング時間、前記電気回路遮断器内のガス圧力
からなる群のうちの1つ以上の値をさらに測定するように構成される、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項8】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、1つ以上の前記予め定められた力および/またはトルク値を1つ以上のセンサ
の値の関数として決定し、それぞれの力および/またはトルク値を前記制御ユニット(200)に提供するように構成される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項9】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、
過去のメンテナンスおよび/または計画されたメンテナンスの日付、接点構成の寿命、電気回路遮断器の寿命、スイッチング動作の履歴
からなる群の値のうちの少なくとも1つに基づいて、前記記憶領域から、1つ以上の前記予め定められた力および/またはトルク値を決定するように構成される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項10】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、前記接点構成の予想外のスイッチング挙動の場合に力および/またはトルクの値を自己適応させるように構成される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項11】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、前記記憶領域からの1つ以上の予め定められた移動曲線またはそれらの組合せ
を1つ以上のセンサ
からの値の関数として決定し、前記移動曲線の少なくとも1つのセットによって表わされるそれぞれの力および/またはトルク値を提供するように構成される、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項12】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)内の前記処理ユニットは、前記力および/またはトルク値に従った前記接点構成の予想された挙動と、前記電気機械デバイス(110)の前記アクチュエータの測定された時間依存性挙動または前記接点構成の前記移動曲線の測定された時間依存性挙動との間の比較に基づいて、前記記憶領域内のデータ値を適合させる(更新する)ように構成される、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項13】
前記モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ(210)は、前記接点構成の前記移動曲線の予想された挙動と前記接点構成の前記移動曲線の測定された挙動との間のずれに基づいて、力および/またはトルク値および/または前記システムモデルについての値を決定し、前記力および/もしくはトルク値ならびに/または前記システムモデルに関する値についての補正された値を計算し、前記補正された値を前記記憶領域に記憶するように構成される、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の
、接点作動ユニット。
【請求項14】
追加の力および/またはトルク値を前記制御ユニット(200)に提供するように構成されるフィードバックコントローラ(220,230,240)をさらに備える、請求項
1に記載の
、接点作動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、電気スイッチングデバイス、たとえば、特に高電圧回路遮断器または中電圧回路遮断器(high voltage circuit breaker(HVCB)、medium voltage circuit breaker(MVCB))用の負荷開閉器または回路遮断器(circuit breaker:CB)の分野に関する。特に、本願は、電気スイッチングデバイスのための電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電気スイッチングデバイス、たとえば、特に高電圧回路遮断器または中電圧回路遮断器(HVCB、MVCB)用の負荷開閉器または回路遮断器(CB)は、負荷電流および/または故障電流を切替えるタスクに割当てられるユニットの必須の部分を構成し得るものであって、典型的な値は1kA~300kAの二乗平均平方根の範囲内である。電気スイッチングデバイスは、接点の相対的な動きによって開閉される。
【0003】
本開示は、たとえば1000ボルトよりも高い電圧用の高電圧および中電圧回路遮断器デバイスに関し得る。
【0004】
高電圧および中電圧の開閉装置における遮断および接続/切断の両方のための電気的動作は、接点構成において接点を移動させることによって実行され得ることが知られている。これは、電気的動作を実行するための作動システムによって行なわれる。
【0005】
遮断および接続/切断動作のために、負荷開閉器の従来のシステムにおいて最も頻繁に用いられる作動デバイスは、機械式または油圧式のデバイスであり得る。
【0006】
機械作動デバイスは、一般に、それ自体を作動させるために、力を移動接点に伝達するための複雑な運動システムを必要とする可能性がある。加えて、複雑な調整プロセスが必要となり得る。なぜなら、移動接点の移動曲線/モーション軌道は、関与する構造要素の機械的特性によって独占的に決定され得る一方で、ユーザによって変更することができないからである。これらの特性は、大部分が、電気スイッチングデバイスまたは接点構成の設計中に設定され得る。
【0007】
複雑な運動学的連鎖が存在するので、このような接点構成の応答時間は比較的長い。応答時間をより短くするために、単一の可動機械要素を移動させるのに必要とされるエネルギよりもかなり多くのエネルギを供給することが必要となる可能性がある。
【0008】
さらに、上記移動曲線/モーション軌道は、単独の構成要素が摩耗するせいで時間とともに変化する可能性があり、これにより性能が低下し、結果として、作動システムの公称挙動を維持するために実行する必要があるメンテナンス介入の回数が多くなってしまう。
【0009】
液圧式作動デバイスは、これらの問題を部分的に改善したものであるが、流体の存在や、何よりも、温度変化に対する当該流体の感度に起因して、他のいくつかの欠点を有する。
【0010】
いくつかのスイッチングデバイスは、電気的動作のために、自動的にトリガされ得るかまたはオペレータによって手動で作動され得る電気モータを備えた作動システムおよび制御システムを用いる。アクチュエータとして近年導入された強力なモータ駆動部は、従来のばねまたは空気圧構成についての信頼性のある、安価で、カスタマイズ可能な代替案として大きな有望性を示してきた。
【0011】
現在公知のモータ駆動システムでは、汎用の位置フィードバック制御が提案されてきた。公知のシステムの1つは、位置、速度および電流のためのカスケード式の比例積分(proportional-integral:PI)フィードバックループに基づく制御方式を採用し得る。
【0012】
これらのPIコントローラのパラメータは、場当たり的に調整しなければならず、接点構成内でスイッチング接点の所望の移動曲線に到達するために試行錯誤による手順が必要となる可能性がある。
【0013】
しかしながら、これは、モータ駆動部の汎用性を十分に活用するためにいくつかの制限をもたらす恐れがある。たとえば、フィードバック制御が有する固有の遅延により、直接的で連続的な制御基準調整が実行不可能となる。別の欠点として、現行の制御下での動作は間接的で予測困難な方法で移動曲線を定義するものであるので、その調整にかなりの時間および繰返しが必要になるという点があり得る。さらに、移動曲線は、さまざまな故障条件に容易に適合させることができない。
【0014】
したがって、それらのタスクを履行するにも関わらず、これらの作動システムおよび制御システムでさえも、上述したのと同様に、これらシステムが移動させる機械要素のモーション軌道を制御することができないものと特徴付けられる。遮断動作中および切断動作中の両方において移動曲線/モーション軌道が制御されないので、移動接点の動きを制限するために行程制限装置の存在が必要となり、さらに、動作の終了時に残留運動エネルギを放散させるためにショックアブソーバまたはダンパの存在が必要となる。
【0015】
移動曲線/モーション軌道が制御されないので、移動接点自体の位置決めが不正確になり、電気的動作によって影響を受ける機械部品の早期摩耗を招く可能性がある。
【0016】
さらに、遮断動作、接続動作、および切断動作中に移動曲線/モーション軌道が制御されないので、それらの動作を正確に調整することが困難になる。これにより、数回の介入が必要となる可能性があり、動作を完了させるのに必要な時間が著しく長くなってしまう。
【0017】
したがって、本開示の目的は、公知のデバイスについての上記提示の欠点を克服するために、回路遮断器内の接点構成を予め定義されたスイッチング挙動で動作させるための改善された方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
上記および他の潜在的な問題に対処するために、本開示の実施形態は、以下の局面のうちの1つ以上を提案する。
【0019】
本開示の一局面では、電気回路遮断器のための接点作動ユニットが提供される。当該接点作動ユニットは電気駆動部を備え得る。当該電気駆動部のアクチュエータは、当該電気回路遮断器内の接点構成に接続される。
【0020】
接点作動ユニットはさらに、制御ユニットを備え得る。当該制御ユニットは、当該アクチュエータを移動させるとともに当該接点構成を第1の位置から第2の位置に導くために当該電気駆動部を制御するように構成され得る。当該接点作動ユニットはさらに、1つ以上のデータ信号を提供するように構成されたモーション軌道およびフィードフォワードコントローラを備え得る。提供されたデータ信号のうち少なくとも1つは、予め定められた力および/またはトルク値を示し、当該アクチュエータで当該接点構成を予め定められた位置に移動させるように当該制御ユニットに命令するように適合される。
【0021】
図面の簡単な説明
本開示の実施形態が例示の意味で提示され得るとともに、それらの利点が、添付の図面を参照して以下においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施形態に従った接点作動ユニットの制御方式を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に従ったブロック図である。
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態に従ったモーションコントローラの一実施形態を示す図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態に従ったフィードフォワードコントローラの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の詳細な説明
以下、例示的な実施形態を参照して、本開示の原理および精神を説明する。これらの実施形態のすべてが、単に当業者が本開示のより良い理解およびさらなる実施のために与えられるものであり、本開示の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。たとえば、一実施形態の一部として図示または説明される特徴は、さらに別の実施形態をもたらすように、別の実施形態とともに用いられてもよい。
【0024】
明確にするために、実際の実現例のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当然ながら、任意のこのような実際の実施形態の開発時に、実現例毎に異なるであろうシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守などの開発者の特定の目標を達成するために、多数の実現例特有の判断がなされるべきであることが理解されるだろう。さらに、このような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるものの、本開示の利益を受ける当業者にとっては日常的な取組みであり得ることが理解されるだろう。
【0025】
ここで、開示される主題を添付の図を参照して説明する。さまざまな構造、システム、およびデバイスが、説明のみを目的として、当業者にとって周知である詳細でその説明を不明瞭にしないように、添付の図面に概略的に示されている。しかしながら、添付の図面は、開示される主題の具体的な例を記述および説明するために含まれるものである。本明細書で用いられる語および語句は、当業者によるそれらの語および語句の理解と一致する意味を有するものと理解および解釈されるべきである。
【0026】
用語または語句の特別な定義、すなわち、当業者によって理解されるとおりの通常の一般的な意味とは異なる定義はいずれも、本明細書中で当該用語または語句を矛盾無く一貫性をもって使用することによって暗示されるよう意図されるものではない。用語または語句が特別な意味、すなわち当業者によって理解される以外の意味を有することが意図される範囲で、このような特別な定義が、用語または語句についての特別な定義を直接的かつ明確に提供する定義的形式で明細書中に明示的に記載されるだろう。
【0027】
本開示は、現在公知のスイッチングシステムを改善させようとするものであり、中高電圧回路遮断器の改善された動作メカニズムを提供し得る。回路遮断器の遮断能力は、当該回路遮断器内の接点構成における接点モーションの移動曲線によって強く影響される可能性があり、これにより、遮断器チャンバのさまざまな区画内の圧力と、スイッチング動作の結果として電気アークが燃焼している接点の位置とに影響が及ぶ可能性がある。
【0028】
提案されているモータ駆動式アクチュエータは、接点構成の移動曲線を直接制御するという可能性を提供し得る。これにより、最適な遮断能力を設計することが可能となり得る。接点モーションの発生が数十ミリ秒の時間スケールでなければならないことを考えると、高速かつ精密な制御戦略が最も重要となる。
【0029】
本開示は、回路遮断器の接点構成における接点の所望の移動曲線を入力として直接取込むとともに力および/またはトルク基準を生成し得るコマンドフィードフォワード実現例を導入することによって、前述の欠点を克服するための新規な制御方式を提案する。
【0030】
したがって、本開示の実施形態は、電気回路遮断器のための接点作動ユニットを提供し得る。接点作動ユニットは電気機械デバイス110を備え得る。電気機械デバイス110はアクチュエータを有し得る。電気機械デバイス110のアクチュエータは、電気回路遮断器内の接点構成に接続され得る。
【0031】
接点作動ユニットはさらに、制御ユニット200を有し得る。制御ユニット200は、アクチュエータを移動させるとともに接点構成を第1の位置から第2の位置に導くように電気機械デバイス110を制御するように構成され得る。
【0032】
本開示に従った接点作動ユニットはさらに、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラブロック210を有し得る。モーション軌道およびフィードフォワードコントローラブロック210は、1つ以上のデータ信号を提供するように構成され得る。提供されたデータ信号のうち少なくとも1つは、予め定められた力および/またはトルク値を示しており、アクチュエータで、接点構成を予め定められた位置に移動させるように制御ユニット200に命令するように適合される。
【0033】
図1は、このようなシステムの例示的な実施形態を示す。ブロック210はコマンドフィードフォワード機能を構成する。このコマンドフィードフォワードブロック210は、所望の力またはトルク値を表わす値を出力し得る。(この例では、たとえば、力値についてはF
cff
*であり、たとえばトルク値についてはT
cff
*である。)これらの値は、コマンドフィードフォワードブロック210に接続されるかまたは含まれるストレージメモリおよび/またはルックアップテーブルによって提供され得る。
【0034】
これらの値は、第2のブロック250に読込まれ得る。この第2のブロック250は、さらなる信号値、この例では、さらに処理され得る電流値I*(但しこれに限定されない)、を生成し得る。
【0035】
ブロック250は、「力/トルク対電流マッピング」ブロックと称されることもある。換言すれば、コマンドフィードフォワードブロックからの力またはトルク値(たとえば、力/トルク基準値)は、所望の力/トルク値を表わし得る特定の電流(またはそれぞれの情報を含む任意の他の信号)値に「マッピング」される。上述のように、ブロック250はまた、力/トルク値に対応し得る任意の形式の値(たとえば、電圧値)を出力するように適合されてもよい。
【0036】
マッピングは、アルゴリズムによってブロック210からの値(たとえば、Fcff
*および/またはTcff
*)を処理することによって実現されてもよく、または、特定の値(たとえば、電流または電圧)が力/トルク値に割当てられているルックアップテーブルから取得されてもよい。
【0037】
図1の例では、電流値(たとえば、I
*であるが、これは限定とみなされなくてもよい)がブロック260に供給され得る。このブロックは、次のブロック、たとえばPWMブロック270への電流制御を含み得る。ブロック260は、ブロック250から入来する値から信号(この例では電圧V
*)を生成するように適合され得る。当該信号は、電圧信号に限定され得るものではなく、電流信号または任意の適切なデータ信号であってもよい。
【0038】
しかしながら、当該信号は、PWMを実行するためのブロック270において
図1に示されるように、変調信号、特にパルス幅変調信号を生成するための適切な情報を提供するように適合されてもよく、すなわち、ブロック270は、各々が特定のデューティサイクルを有する1つ以上のパルス幅変調信号を生成してもよい。
【0039】
PWMブロック270からの信号、特に1つ以上のパルス変調信号は、たとえば電圧源インバータ180内のスイッチング素子(半導体スイッチ)を制御するように適合される。電圧源インバータ180は、電気機械デバイス110に接続される。電圧源インバータ180は、電気機械デバイス110、特に電気機械デバイス110内のアクチュエータ、に、特定の予め定められた位置に移動するように命令するように適合され得る。PWM信号は、電気機械デバイス110において、アクチュエータを特定の位置へと駆動する所望のトルクまたは力を当該アクチュエータ上で生成する特定の予め定められた磁場が設定されるように、電圧源インバータ内のスイッチを動作させることを可能にする。
【0040】
一実施形態では、アクチュエータからのフィードバックなしで当該位置に到達させ得ることに留意されたい。コマンドフィードフォワードコントローラまたはモーション軌道コマンドフィードフォワードコントローラ210から入来する所望のトルク/力からの「情報」は、完全な接点構成を備えた「健全な」回路遮断器において、アクチュエータが予め定められた時間内に所望の位置にセットされ得ると想定するのに充分であり得る。
【0041】
「予め定められた時間」は、特定の挙動が達成されるまで、実験によって、トルク/力コマンドが特定の接点構成で調整されていたことを意味し得る。これらの力/トルク値は、場合によっては周囲データ(温度、気体圧力など)とともに、後で使用できるようにブロックのいずれかの記憶領域に記憶されていてもよい。
【0042】
このような位置は、電気機械デバイス110が回転子を作用体として備える電気モータである場合、予め定められた回転角度であり得る。このような位置はまた、電気駆動部がソレノイドまたはリニアモータである場合、電機子または変換器の特定の励磁であってもよい。
図1の電気機械デバイス110は、例示的なデバイスとしてのみ機能し得るとともに、前述の駆動部のいずれかを表わし得る。電気機械デバイス110のアクチュエータのこの予め定められた位置は、回路遮断器内の接点構成における接点の特定の位置に対応する。換言すれば、アクチュエータの特定の位置は、接点構成における接点の特定の位置に対応する。
【0043】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210からの力および/またはトルク値が、電気回路遮断器内の接点構成についての少なくとも1つの所望の移動曲線に対応し得ることを提案する。
【0044】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、所望の力および/またはトルク値がシステムモデルから導出され得ることを提案する。当該システムモデルは、接点作動ユニットおよび/または電気回路遮断器についての1つ以上の機械パラメータおよび/または電気パラメータを表わし得る。当該システムモデルはまた、たとえば、さまざまな周囲条件またはさまざまな接点セットに関する1つ以上の移動曲線を表わし得る。
【0045】
当該システムモデルはさまざまなレベルの複雑さを有する可能性がある。このさまざまなレベルの複雑さは、フィードフォワードコントローラに明確に含まれ得るか、または、本発明者らにとって公知であるシミュレーションツールによって予め計算され得るルックアップテーブルとして提供され得る。ルックアップテーブルは、フィードフォワードコントローラの一部であってもよい。
【0046】
モデルまたはそのパラメータはまた、変化する動作条件をカバーするように適合させることもできる。このようなタイプの動作は、公称電流の生成または遮断を意味する公称動作であり得る。別のタイプの動作として故障中断があり得る。この場合、変化する動作条件は、特定のタイプの(たとえば、電流/電圧(I/V)測定値に基づいた)故障であり得る。
【0047】
システムモデルまたはそのパラメータで表わされ得る他の変化する動作条件は、摩耗/疲労条件であり得る。摩耗条件とは、材料が長い動作時間中に摩耗するかまたは疲労する可能性があることを意味する。これらの条件は、故障の履歴に基づくものであり得るか、または、たとえば機械部品の摩耗または疲労を認識するように適合され得る特定のセンサ(光学センサ、電流センサなど)の測定値に基づくものであり得る。
【0048】
パラメータおよび/またはシステムモデルのうちの1つ以上に影響を及ぼし得る他の条件は、ノズルの摩耗、摩擦、たとえば、機械部品間の摩擦、ガス組成の変化、温度、チャンバ圧力等の周囲条件のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0049】
回路遮断器の動作中、事前に計算された値を中心として外乱および不正確さが生じる可能性がある。したがって、フィードフォワード入力は、誤差に基づいたモーション制御によって補完され得る。誤差に基づいた制御は、フィードフォワード基準からの実際の負荷のずれを補償することが可能であり得る。
【0050】
モーション軌道およびフィードフォワードブロック210は、移動曲線から生成された基準をモーションコントローラ240に提供し得る。力/トルクフィードフォワード出力も、このブロックによって生成され得る。モーションコントローラ240のトルク基準出力と組合わされた力/トルクフィードフォワードは、力/トルク対電流マッピングブロック250に入力を提供し得る。このブロックは電流コントローラブロック260についての電流基準を生成し得る。当該電流コントローラブロック260は電圧源インバータ180についての電圧基準を提供し得る。レゾルバ130は、任意には、電気機械デバイス110のアクチュエータ位置、特に時間依存性のアクチュエータ位置、を測定するために用いられてもよい。モーション推定器ブロック220は、任意には、レゾルバ130から提供された値からモーションコントローラ240についてのフィードバック値を生成し得る。
【0051】
別の実施形態では、システムは、当該システム内の事前に判断された故障または予想外の挙動から学習するように構成されてもよい。このような予想外の挙動は、たとえば、フィードフォワードブロック210からの力/トルクコマンドによる回路遮断器内の接点構成の予想された閉鎖/開放時間と、フィードバック構成によって測定される閉鎖/開放時間との間のずれであり得る。
【0052】
すなわち、力/トルクコマンドから、たとえば、接点構成内の接点がたとえばx msの位置へと移動することが予想され得る。しかしながら、フィードバックは、動作がx+amsを必要としていたことを示している。このずれ「a」は補償されなければならない。
【0053】
次いで、当該システムは、これらのずれを考慮に入れて、システムモデルのデータおよび/またはルックアップテーブル内のデータを更新するように適合され得る。これは、たとえば、接点構成の次の動作において、異なる力/トルクコマンドが送信されることとなるか、または、同じ力/トルクコマンドに、たとえば、現在のマッピングブロック250への力/トルクの新しいマッピングが割当てられる(割付けられる)ことを意味する。
【0054】
更新はまた、システムモデルまたはルックアップテーブルからの事前に選択された値を上書きすること、および、それら値を、予想されるシステム挙動(たとえば、回路遮断器内の接点構成の予想される切替え時間)も満たし得る値と置換えること、を組入れてもよい。力/トルク値は適合可能であり得る。代替的には、現在のマッピングブロック250への力/トルクの値は、同じ力/トルク値によって現在のマッピングブロック250への力/トルクのさまざまな出力値が生成されるように適合されてもよい。
【0055】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が処理ユニットおよび記憶領域を備え得ること、当該記憶領域が予め定められたデータを含み得ることを提案している。「データセット」とも称され得る予め定められたデータは、力および/もしくはトルク値ならびに/または移動曲線の少なくとも1つの予め定められたセットを表わし得る。有利には、移動曲線の予め定められたセットごとの少なくとも1つの力および/またはトルクデータが記憶され得る。
【0056】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、少なくとも1つのシステムモデルが、1つ以上の回路遮断器の1つ以上の例示的な遮断接点構成のモーション軌道のモデルデータによって表わされ得ることを提案し得る。
【0057】
すなわち、いくつかの公知のタイプのスイッチが市場に出回っている可能性がある。それらスイッチはそれぞれ特有の接点構成を備え得る。この接点構成は、特に、力/トルクフィードバックコントローラからの特定の力/トルク値に応答して、接点が第1の(たとえば、開いた)位置から第2の(たとえば、閉じた)位置に移動する期間、特定の挙動/機械的特性を呈する特定のモーション軌道(移動曲線)を有し得る。これらのタイプの接点構成/接点スイッチの各々の挙動が分析され得る。これらのスイッチの挙動を表わすデータセットは、データ値/特性曲線(データセット)として記憶領域に記憶され得る。
【0058】
使用されるいずれのシステムモデルも、このような曲線によって表わされ得る。換言すれば、記憶領域には、システムモデルとして取得することのできるいくつかのさまざまなモーション軌道を記憶させ得る。スイッチング挙動に基づいて、コントローラ200は、複数の記憶された曲線から適切なシステムモデルを選択し得る。
【0059】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が1つ以上のセンサと通信し得ることを提案し得る。1つ以上のセンサ(図示せず)は、1つ以上の値を測定するように構成され得る。
【0060】
これらの値は、接点構成または電気回路遮断器の状態、たとえば健全性状態を表わし得る。これらの値は、電気回路遮断器チャンバ内のガス(たとえば絶縁ガスまたは焼入れガス)の組成、電気回路遮断器チャンバ内の1つ以上の温度からなる群のうちの1つ以上であり得る。
【0061】
他の実施形態と組合わされ得る電気回路遮断器用の接点作動ユニットの別の実施形態は、1つ以上のセンサが、回路遮断器の内部および/または外部の周囲温度、湿度、回路遮断器内の接点構成のスイッチング動作の回数、接点構成にわたるシステム電流、直近のスイッチング動作のスイッチング時間、電気回路遮断器内のガス圧力、からなる群のものであり得る値をさらに測定するように構成され得ることを提案し得る。
【0062】
他の実施形態と組合わされ得る電気回路遮断器用の接点作動ユニットの別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が、1つ以上の予め定められた力および/またはトルク値(たとえば、Fcff
*/Tcff
*)を1つ以上のセンサ値の関数として決定するように構成され得ることを提案し得る。
【0063】
モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210はさらに、センサ値に基づいて、それぞれの力および/またはトルク値を制御ユニット200に提供するように構成されてもよく、すなわち、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210は、処理ユニットにおいて、記憶領域に記憶されたデータまたはデータセットのうちのいずれが測定された値に対応し得るかを計算してもよい。
【0064】
たとえば、特定の温度値が、たとえば温度センサから測定され得る場合、処理ユニットは、より高い/より低い力/トルク値が、所要のスイッチング挙動を達成するために選択され得ると判断し得る。別の例では、たとえば直近のスイッチング動作が、たとえば可動部品の摩耗によるスイッチング時間のずれを示した場合、処理ユニットは、次の動作のために適切な力/トルク値を選択することを決定し得る。
【0065】
しかしながら、後者の場合、当該システムは、システムモデルについてのパラメータおよび/またはそれぞれのルックアップテーブル内のパラメータを更新すると決定してもよい。なぜなら、後者の場合、機械的摩耗/疲労が時間とともに改善し得ないものであるように摩耗が可逆的なものではないからである。
【0066】
コントローラは、単一の力/トルク値を計算および選択するように構成されてもよく、または、コントローラはさらに、システムモデルから移動曲線のうちの1つを選ぶように構成されてもよい。
【0067】
このような移動曲線は、力/トルク値の完全なデータセットにリンクされ得る。この場合、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210は、値を計算する必要がない可能性がある。コントローラは、選択された移動曲線から、特定の測定値に対応し得る力/トルク値を(計算なしで)選択してもよい。
【0068】
相違点として、後者の場合、計算が不要になり得ることが挙げられる。これは、必要とされ得る処理能力がより少なくて済むことを意味する。しかしながら、システムモデルが、予想されるスイッチング挙動に関する必要性をもはや満たさないことも起こり得る。これは、たとえば、摩耗/疲労(機械的)の場合、またはたとえば極端な周囲温度のような他の問題の場合に起こり得る。
【0069】
この場合、コントローラ210は、それ自体の力/トルク値を計算することに依拠し得る。特に、アクチュエータの動きがスイッチング動作に直接関係しているので、作動ユニットからのフィードバック、特に作用体からの動きについてのデータ、が基準として採用され得る。
【0070】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が、過去のメンテナンスおよび/または計画されたメンテナンスの日付、接点構成の寿命、電気回路遮断器の寿命、スイッチング動作の履歴からなる群の値のうちの少なくとも1つに基づいて、ブロックのいずれかにおける記憶領域から1つ以上の予め定められた力および/またはトルク値を決定するように構成されることを提案し得る。
【0071】
換言すれば、たとえば、メンテナンスが実行されて、場合によっては回路遮断器の部品(たとえば、接点)が交換された場合、新しい部品は機械的に摩耗していないため、特定のスイッチング挙動を達成するために事前に選択された力/トルク値を変更することが必要になるかもしれない。したがって、交換された(新しい)部品でのスイッチング挙動に対応する力/トルク値がそれぞれのコントローラによって選択され得るように、接点作動ユニットは、たとえば実行されたメンテナンスに関する情報を受信するように構成され得る。
【0072】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、接点構成の予想外のスイッチング挙動の場合に、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が、力および/またはトルクについての、たとえばブロックのいずれかの記憶領域における値を自己適応させることができるように構成され得ることを提案し得る。
【0073】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が、記憶領域からの1つ以上の予め定められた移動曲線またはそれらの組合せを1つ以上のセンサ値の関数として決定するとともに、移動曲線の少なくとも1つのセットによって表わされるそれぞれの力および/またはトルク値をモーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210の出力において利用可能にするように構成され得ることを提案する。
【0074】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210内の処理ユニットが、力および/またはトルク値に従った接点構成の予想される挙動と、電気機械デバイス110のアクチュエータの測定された時間依存性挙動、または接点構成の移動曲線の測定された時間依存性挙動測定値との比較に基づいて、記憶領域内のデータ値を適合させる(更新する)ように構成され得ることを提案する。換言すれば、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210内の処理ユニットは、挙動のずれを自律的に検出および補正し得る。たとえば力および/またはトルクについての新しい値および更新された値は、記憶領域に自律的に書込まれてもよい。
【0075】
本開示における記憶領域は、不揮発性の書換え可能なタイプであってもよい。オペレータには、記憶領域上で実行されたいずれの更新動作も通知され得る。
【0076】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210が、特に現在のシステムモデルを更新するための現在アクティブなシステムモデルについて、力および/またはトルク値を決定するように構成され得ることを提案し得る。
【0077】
これは、回路遮断器内の接点構成の移動曲線の予想される挙動と接点構成の移動曲線の測定された挙動との間のずれに基づき得る。力および/もしくはトルク値についての補正された値、ならびに/またはシステムモデルに関する値についての補正された値が計算され、補正された値として記憶領域に記憶されてもよい。この実施形態は、上述の実施形態のうちの1つの「自己更新」機能と同様であり得る。
【0078】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、電気機械デバイス110が、回転電気機械、たとえば、交流(Alternating Current:AC)、ブラシレス直流(Brushless Direct Current:BLDC)モータ、(BLDCと同様の)ステッパモータ、またはリニアモータもしくはソレノイドであることを提案し得る。アクチュエータは、回転電気機械の回転子であってもよいし、リニアモータの変換器であってもよいし、ソレノイドの電機子であってもよい。
【0079】
リニアモータは、その固定子および回転子が「巻かれていない」電気モータと見なされてもよく、このため、トルク(回転)をもたらす代わりに、その長さに沿って直線力をもたらす。したがって、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210は力値を出力し得る。しかしながら、リニアモータは必ずしも直線的である必要はない。リニアモータは、そのアクチュエータに沿って高い加速度をもたらし得る。リニアモータは、回転機械と同様のコイル構成を有し得る。
【0080】
したがって、たとえば空間ベクトルPWMを用いた周知の電圧源インバータでの制御が実現可能である。空間ベクトルパルス幅変調(Space Vector Pulse Width Modulation:SVPWM)は、所与の電圧ベクトルを電気駆動部に印加するために用いられる(たとえば、永久磁石または誘導機で三相化される)変調方式である。
【0081】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、アクチュエータが接点構成に直接結合され得るか、または、アクチュエータが運動学的連鎖で接点構成に結合され得るか、または、アクチュエータがギアで接点構成に結合され得ることを提案する。アクチュエータと接点構成内の接点との間の直接的な結合により、スイッチング遅延を最小限に抑える。
【0082】
モーションが直線的であり、接点構成内の接点の動きを単純化するので、電気デバイス110等のリニアモータを用いることが有利であり得る。これにより質量が節約され(可動部品がより少なくなり)、したがって、慣性が低減され得ることで、力(またはトルク)値のより迅速な切替え/低減が可能となる。
【0083】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、電気回路遮断器のための接点作動ユニットが、ブロック250に追加の力および/またはトルク値を与えるように構成されたフィードバックコントローラをさらに備え得ることを提案し得る。他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、フィードバックコントローラが、電気機械デバイス110からモーションデータを受取り、モーションデータと移動曲線との間のずれに基づいて力および/またはトルクを提供するように構成され得ることを提案し得る。
【0084】
図2では、フィードバック制御を用いる本開示のさらなる例示的な実施形態が提供される。モーション軌道およびコマンドフィードフォワード(Command Feed Forward:CFF)ブロック210はまた、力/トルクフィードフォワード値を提供することに加えて、移動曲線制御基準をモーションコントローラブロック240に提供し得る。
【0085】
基準は、電気駆動部の種類に応じて、1つ以上の値を含み得る。モーションコントローラブロックは、アクチュエータからのフィードバック情報と組合わせて、たとえば、基準トルク/力値Tfb/Ffbをトルク/力マッピングブロック250に提供し、力/トルクマッピングブロックは、補正された出力値をブロック260に提供し得る。
【0086】
回転機械の場合、移動曲線基準は、角度値およびそれらの時間微分、たとえば移動制御基準角度θ*、移動制御基準速度ω*、移動制御基準角加速度α*を含み得る。リニアモータの場合、基準は、変換器の励起の時間微分を含み得る。
【0087】
力/トルク対電流マッピングブロック250は、トータルの力/トルク入力を対応する値、たとえば直接直交(direct quadrature:d-q)基準電流(Id
*およびIq
*)に変換し得る。電流コントローラブロック260の出力は、空間ベクトルパルス幅変調(SVPWM)によって制御される電圧源インバータを介してモータに供給され得る。電流コントローラブロック260によって計算されて提供される値は、非限定的に、電圧値Vd/Vqのような1つ以上のパラメータを含み得る。
【0088】
上記フィードバックコントローラは、単一のブロックとして現われなくてもよい。モーション推定器ブロック220、モーションコントローラブロック240、およびレゾルバ130は、フィードバックコントローラを(任意の組合わせで)表わしているとみなされてもよい。これらは、1つの単独の機能ブロックに組合わされてもよい。電気機械デバイス110のアクチュエータからの時間依存性モーションデータが、レゾルバ130で測定され得る。当該時間依存性モーションデータは、電気機械が回転機械である場合の電気機械デバイス110の回転子の角度位置を表わす、たとえば、sin(θ)およびcos(θ)のようなデータであり得る。
【0089】
それぞれのモーションデータは、リニアモータの変換器またはソレノイドの電機子の場合にも提供され得る。電気機械デバイス110に接続されたレゾルバ130は、このような値を1つ以上のフィードバックパラメータ値として測定および提供するように適合され得る。
【0090】
リニアモータの場合、これは、リニアモータのアクチュエータ(変換器)の時間依存性位置であってもよく、および/またはたとえばアクチュエータ(変換器)の速度/加速度であってもよい。ソレノイドの電機子についても同様であり得る。回転機械の回転子の場合、このような値は、角度、角速度、または角加速度であり得る。
【0091】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、フィードバックコントローラ220、230、240に提供されるモーションデータが、1つ以上のセンサからのデータの関数であり得ること、および/または、システムモデルから推定され得ることを提案し得る。
【0092】
モーション推定コントローラ220は、電気機械デバイス110のアクチュエータの角度または位置
【0093】
【0094】
アクチュエータの速度、たとえば、アクチュエータが回転機械内の回転子である場合の角速度
【0095】
【0096】
アクチュエータの加速度、たとえば、アクチュエータが回転機械内の回転子である場合の角加速度
【0097】
【0098】
の値からなる群のうちの1つ以上を決定するように構成される。また、リニアモータのアクチュエータの場合のそれぞれの値も提供され得る。上述の値のうちの1つまたはすべては瞬時値であり得る。
【0099】
なお、アクチュエータの時間依存性の位置値は必ずしもレゾルバ130を採用する必要はないことに留意されたい。電流および電圧はまた、モーション値の群、たとえば、位置、速度、および/または加速度を推定するために用いられてもよい。別の可能性として、エンコーダなどの別の位置測定装置を用いることが挙げられる。
【0100】
電気機械デバイス110のアクチュエータの位置を決定するために用いられ得るさらなる可能性として、電気機械デバイス110への電流がいわゆる「リップル」を含み得ることが含まれ得る。これは、電気機械デバイス110のほとんどがアクチュエータ内に永久磁石を有するという事実に関連している(別々に励起された電気機械デバイスはここでは考慮されない)。「リップルカウント(Ripple count)」法は、電気駆動部110への電力供給ワイヤのうちの1つにおける電流変動を測定することに依拠するものである。アクチュエータの位置を決定するための別の方法として、移動中のアクチュエータによって生成される電圧過渡を測定することに基づいた過渡の集計があり得る。
【0101】
後者の方法はともに、アクチュエータと結合された特定のレゾルバ130を必ずしも必要としないだろう。それにもかかわらず、モーション推定ブロック220内またはフィードバック制御の他の箇所における方法/センサの多くの実現可能な組合わせで位置決定が可能である。
【0102】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、コントローラ200が、電気駆動部の3相化電流を直流成分および直交成分
【0103】
【0104】
に変換するための変換ブロック(クラーク/パーク変換:Clarke/Park transformation)を含み得ることを提案し得る。コントローラ200はまた、上記変換の逆を実行するために変換ブロック(
図2を参照)を備えてもよい。
【0105】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーションコントローラ240によって計算および提供される1つ以上の値が少なくとも基準力/トルク値を含み得ることを提案し得る。基準力/トルク値は、「力/トルク対電流マッピングブロック」250(
図2)に提供され得るとともに、フィードバックコントローラによって決定された誤差を補正するために用いられ得る。
【0106】
図3は、モーションコントローラ240の例示的な実施形態300を示す。この例示的な実施形態では、モーション軌道およびコマンドフィードフォワードブロック210からの速度および位置基準入力と、モーション推定器ブロック220からの推定される速度および位置フィードバックとが入力として用いられる。この例示的な実施形態では、アクチュエータの加速度値は採用されていない。
【0107】
他の実施形態と組合わされ得る本開示の別の実施形態は、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210がコマンドフィードフォワードブロックを含み得ることを提案し得る。この場合、力/トルクフィードフォワードFcff
*/Tcff
*;値は、慣性、粘性減衰、動的摩擦または他の値、たとえば、接点構成の可動部品(機械部品)の慣性または運動学的連鎖の慣性を含む1つ以上の関数に基づき得る。
【0108】
図4は、慣性、粘性減衰および動的摩擦を含む例示的なシステムモデルに基づいたコマンドフィードフォワードコントローラの非限定的な実施形態400を示す。このシステムモデルのパラメータは、遮断器の詳細なシステムモデルに基づいたルックアップテーブルとして提供されてもよく、シミュレーションツールによって事前に計算されてもよい。本開示において前述した他のパラメータも、システムモデルの一部を形成し得る。
【0109】
コマンドフィードフォワードコントローラは、モーション軌道およびフィードフォワードコントローラ210の必須の部分であり得る。
【0110】
代替的な実施形態では、力/トルクフィードフォワード値は、システムモデルから事前に計算されたルックアップテーブルに基づいて、ユニット250に直接提供することができる。モデルまたはそのパラメータ値はまた、(上記で詳細に説明したように)変動する動作条件に適合させることもできる。次に、一実施形態では、さまざまなルックアップテーブルを提供することができ、さまざまなテーブル間の補間を行なうことができる。さらなる実施形態では、システムモデルまたはこれを好適に単純化したものは、たとえば、これに限定されないが、機能的なモックアップユニット等の標準化されたモデルコンテナを用いて、フィードフォワードコントローラに組込むことができる。
【0111】
要約すると、回路遮断器における接点構成のための改善された接点作動ユニットが本開示において提供される。接点構成は、電気駆動部(たとえばモータ)によって駆動される。電気機械デバイス110は、接点構成に結合されたアクチュエータを有してもよい。
【0112】
フィードフォワード制御は、有利には、たとえば、閉位置から開位置へ、およびその逆方向の位置へ、または任意の他の中間位置へ、接点構成を移動させるように電気駆動部およびアクチュエータにそれぞれ命令するために用いられる。
【0113】
接点のモーションは、フィードフォワード制御からの値(力/トルク)のみで実行可能である。力/トルク値は、たとえば、利用可能な回路遮断器の接点構成のシステムモデルによって提供される。しかしながら、スイッチング動作に関する情報を与えるためにフィードバックが採用されてもよい。
【0114】
予想された挙動と実際の挙動との間のずれが判断され得る。オプションのモーションコントローラは、位置決めのための基準値(移動曲線)およびその導関数と、それぞれの測定されたフィードバック値との間の相違を補償する。位置およびその導関数の正確な推定は、適切なオブザーバによって実現することができる。
【0115】
接点作動ユニットは、更新された力/トルク値で後続のスイッチング動作が実行され得るように、接点作動ユニットの制御ブロックの記憶領域内の力/トルク値を(自律的に)更新/補正するように適合され得る。