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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20240306BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019057670
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157856
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】星 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 和樹
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026255(JP,A)
【文献】特開2019-043293(JP,A)
【文献】特開2018-161916(JP,A)
【文献】特開2018-043687(JP,A)
【文献】特許第6356882(JP,B1)
【文献】特開2018-051152(JP,A)
【文献】特開2005-287536(JP,A)
【文献】特開2018-020714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 7/00 - A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
シートバックと、
前記シートクッションと前記シートバックとに跨がって配置され、送風装置と前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくとも一方に形成された通気路を接続するダクトと、を備える乗物用シートであって、
前記シートクッションは、
前記シートクッションの左右のフレームを構成する左右のクッションサイドフレームと、
前記左右のクッションサイドフレームの後部同士を連結する後部フレームと、
前記後部フレームに係合する板状の受圧部材と、を備え、
前記受圧部材は、
前記後部フレームに係合する板状の第1壁であって、左右方向に延びるとともに、前記後部フレームの前側を通って前記後部フレームよりも下まで延びる第1壁と、
板状の第2壁であって、前記第1壁の下端に接続される板状の第1部位と、当該第1部位から左右方向外側に延び、前記第1壁よりも左右方向外側に突出する板状の第2部位と、を有する第2壁と、を有し、
前記ダクトは、前記第1壁と左右方向で並び、かつ、前記第2部位と前後方向で並ぶ位置であって、前記受圧部材と接触しない位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第2部位は、前記第1部位から左右方向外側および上側に向けて斜めに延びていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記受圧部材は、
前記第1部位から前斜め上方に向けて延びる板状の第3壁をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートバックに取り付けられるハーネスをさらに備え、
前記ダクトは、前記ハーネスの外周面の一部が入る第1凹部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1凹部の深さは、前記ハーネスの直径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートバックに取り付けられるハーネスをさらに備え、
前記ダクトは、当該ダクト内の通路を形成する壁と、当該壁から外側に突出する突出部と、を有し、
前記ハーネスは、前記ダクトの前記壁および前記突出部に接触することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記突出部の前記壁からの高さは、前記ハーネスの直径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ダクトは、前記後部フレームの外周面の一部が入る第2凹部を有し、
前記第2凹部は、前記後部フレームに接触することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記後部フレームは、円筒形状であり、
前記第2凹部の深さは、前記後部フレームの半径より小さいことを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートクッションまたは前記シートバックのフレームを構成するフレーム部材と、
前記フレーム部材を覆うパッドと、
前記パッドを覆う表皮と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションの下に配置された送風装置から、シートバックに向けて延びるダクトを備えた乗物用シートが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、シートクッションは、シートに座った乗員からの荷重を受ける受圧部材を備えている。受圧部材は、主に複数のワイヤ部材で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、受圧部材を複数のワイヤ部材で構成したものであり、受圧部材を板状の部材とすることを想定していない。受圧部材を板状の部材とした場合には、受圧部材とダクトが干渉しやすいため、受圧部材とダクトの干渉により受圧部材またはダクトが摩耗するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、板状の受圧部材とダクトが干渉して、受圧部材またはダクトが摩耗してしまうのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明に係る乗物用シートは、シートクッションと、シートバックと、前記シートクッションと前記シートバックとに跨がって配置され、送風装置と前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくとも一方に形成された通気路を接続するダクトと、を備える。
前記シートクッションは、前記シートクッションの左右のフレームを構成する左右のクッションサイドフレームと、前記左右のクッションサイドフレームの後部同士を連結する後部フレームと、前記後部フレームに係合する板状の受圧部材と、を備える。
前記ダクトは、前記受圧部材を避けて配置されている。
【0007】
この構成によれば、ダクトが受圧部材を避けて配置されるので、受圧部材とダクトが干渉して、受圧部材またはダクトが摩耗してしまうのを抑制することができる。
【0008】
また、前記ダクトは、前記後部フレームと前記受圧部材の間に配置されていてもよい。
【0009】
これによれば、後部フレームと受圧部材の間のスペースを使って、ダクトをコンパクトに配置することができる。
【0010】
また、前記ダクトは、前記受圧部材と前記クッションサイドフレームの間に配置されていてもよい。
【0011】
これによれば、乗物用シートの後ろのシートに座った着座者の足が受圧部材に当たっても、ダクトに影響がないので、着座者の足でダクトが蹴られて破損するのを抑制することができる。
【0012】
また、前記ダクトは、前記受圧部材に接触していてもよい。
【0013】
これによれば、ダクトが受圧部材に接触することで、受圧部材に対するダクトの位置を決めることができる。
【0014】
また、前記ダクトは、前記受圧部材に固定されていてもよい。
【0015】
これによれば、ダクトを受圧部材で支持することができる。
【0016】
また、前記ダクトは、前記後部フレームに接触していてもよい。
【0017】
これによれば、ダクトが後部フレームに接触することで、後部フレームに対するダクトの位置を決めることができる。
【0018】
また、前記乗物用シートは、前記シートバックに取り付けられるハーネスをさらに備え、前記ハーネスは、一方の前記クッションサイドフレームと前記受圧部材の間を通り、前記ダクトは、他方の前記クッションサイドフレームと前記受圧部材の間を通っていてもよい。
【0019】
これによれば、ハーネスを取り回す際にダクトが邪魔になるのを抑えることができる。
【0020】
また、前記乗物用シートは、前記シートバックに取り付けられるハーネスをさらに備え、前記ハーネスは、前記ダクトに接触していてもよい。
【0021】
これによれば、ダクトによってハーネスを支持することができる。
【0022】
また、前記ハーネスは、前記ダクトに固定されていてもよい。
【0023】
これによれば、ダクトによってハーネスをより良好に支持することができる。
【0024】
また、前記乗物用シートは、前記シートクッションまたは前記シートバックのフレームを構成するフレーム部材と、前記フレーム部材を覆うパッドと、前記パッドを覆う表皮と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、板状の受圧部材とダクトが干渉して、受圧部材またはダクトが摩耗してしまうのを抑制することができる。
【0026】
また、ダクトが後部フレームと受圧部材の間に配置されることで、後部フレームと受圧部材の間のスペースを使って、ダクトをコンパクトに配置することができる。
【0027】
また、ダクトが受圧部材とクッションサイドフレームの間に配置されることで、乗物用シートの後ろのシートに座った着座者の足が受圧部材に当たっても、ダクトに影響がないので、着座者の足でダクトが蹴られて破損するのを抑制することができる。
【0028】
また、ダクトが受圧部材に接触することで、受圧部材に対するダクトの位置を決めることができる。
【0029】
また、ダクトが受圧部材に固定されることで、ダクトを受圧部材で支持することができる。
【0030】
また、ダクトが後部フレームに接触することで、後部フレームに対するダクトの位置を決めることができる。
【0031】
また、シートバックに取り付けられるハーネスが、一方のクッションサイドフレームと受圧部材の間を通り、ダクトが他方の前記クッションサイドフレームと受圧部材の間を通ることで、ハーネスを取り回す際にダクトが邪魔になるのを抑えることができる。
【0032】
また、シートバックに取り付けられるハーネスがダクトに接触することで、ダクトによってハーネスを支持することができる。
【0033】
また、ハーネスがダクトに固定されることで、ダクトによってハーネスをより良好に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係る乗物用シートとしての車両用シートを示す図である。
図2】車両用シートの断面図である。
図3】シートフレームの斜視図である。
図4】ダクトの斜視図である。
図5】クッションフレーム、送風装置およびダクトを下から見た図である。
図6】ハーネスの位置を変更した形態を示す斜視図である。
図7】ハーネスをダクトに固定する形態を示す斜視図(a),(b)である。
図8】パンフレームにダクトを固定する形態を示す図である。
図9】パンフレームにダクトを係合させる形態を示す図である。
図10】ダクトのリアパイプとの接触部分の変形例を示す断面図である。
図11】インナーカバーを設けた形態を示す平面図(a)と、図11(a)のI-I断面図(b)である。
図12】ダクトの下側部分を二股にした形態を示す図である。
図13】ダクトをリアパイプの後ろに通した形態を示す図である。
図14】ダクトをリアパイプの後ろで二股にした形態を示す図である。
図15】バックパッドのダクトとの接続口にスリットを形成した形態を示す図である。
図16】パンフレームに形成したコネクタにダクトおよびクッションパッドの接続口を接続させる形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートは、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。
【0036】
図2に示すように、車両用シートSは、フレーム部材としてのシートフレームF(図3参照)に、ウレタンフォームなどからなるパッドPと、布地や皮革などからなる表皮U1,U2を被せることで構成されている。パッドPは、シートフレームFを覆い、表皮U1,U2は、パッドPを覆っている。
【0037】
パッドPは、シートクッションS1のパッドを構成するクッションパッドP1と、シートバックS2のパッドを構成するバックパッドP2を含む。クッションパッドP1は、内部に形成された通気路A1と、上側の面から通気路A1に連通する複数の通気穴H1とを有している。また、バックパッドP2は、内部に形成された通気路A2と、前側の面から通気路A2に連通する複数の通気穴H2とを有している。
【0038】
通気路A1,A2は、後述するダクトDにより送風装置70と接続されている。送風装置70は、シロッコファンであり、後述するパンフレーム12の下側に配置されている。送風装置70は、パンフレーム12にブラケット71を介して取り付けられている。車両用シートSは、送風装置70から送風された空気を、ダクトDと通気路A1,A2を通して通気穴H1,H2からシートに座った乗員に向けて吹き出すように構成されている。
【0039】
図3に示すように、シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するバックフレームF2とを含む。シートクッションS1は、クッションフレームF1をクッションパッドP1と表皮U1で覆うことで構成されており、シートバックS2は、バックフレームF2をバックパッドP2と表皮U2で覆うことで構成されている(図1参照)。
【0040】
クッションフレームF1は、左右のクッションサイドフレーム11と、受圧部材としてのパンフレーム12と、後部フレームとしてのリアパイプ13と、フロントパイプ14(図5参照)とを備えている。左右のクッションサイドフレーム11は、シートクッションS1の左右のフレームを構成する部材であり、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。クッションサイドフレーム11は、板金からなり、前後に長い長尺状に形成されている。
【0041】
パンフレーム12は、シートに座った乗員からの荷重を受ける板状の部材である。パンフレーム12の左右方向の幅は、リアパイプ13の長さの半分以上となっている。パンフレーム12は、板金からなり、左右のクッションサイドフレーム11、リアパイプ13およびフロントパイプ14で支持されている。なお、パンフレーム12の構造は、後で詳述する。
【0042】
図5に示すように、リアパイプ13とフロントパイプ14は、金属製のパイプ材からなり、前後に離間して配置され、左右のクッションサイドフレーム11を連結している。詳しくは、リアパイプ13が左右のクッションサイドフレーム11の後部同士を連結しており、フロントパイプ14が左右のクッションサイドフレーム11の前部同士を連結している。ダクトDは、左右方向におけるシートクッションS1の中央(中央面CP)よりも右(左右方向の一方)に配置されている。
【0043】
図3に示すように、バックフレームF2は、左右の板金フレーム22と、パイプフレーム23と、ロアフレーム24と、架橋フレーム25とを備えている。左右の板金フレーム22は、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。板金フレーム22は、板金からなり、上下に長い長尺状に形成されている。
【0044】
パイプフレーム23は、金属製のパイプ材からなり、略上下に延びる左右のアッパーサイドフレーム23Aと、アッパーサイドフレーム23Aの上端同士を連結するアッパーフレーム23Bとを有している。左右のアッパーサイドフレーム23Aは、下部が板金フレーム22の上部に接続されていることで、左右の板金フレーム22とともに、シートバックS2の左右のフレームを構成する左右のバックサイドフレーム21を形成している。ロアフレーム24は、板金からなり、左右のバックサイドフレーム21の下部同士を連結している。架橋フレーム25は、板金からなり、左右のバックサイドフレーム21の上部同士を連結している。
【0045】
クッションサイドフレーム11の後部とバックサイドフレーム21の下部とは、リクライニング機構RLを介して回動可能に連結されている。これにより、車両用シートSは、シートバックS2がシートクッションS1に対して前後に回動可能となっている。
【0046】
右側の板金フレーム22には、リクライニング機構RLを駆動するためのモータが内蔵されるモータブラケットMBが設けられている。なお、ダクトDは、モータブラケットMBに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0047】
また、シートバックS2には、ハーネスHNが取り付けられている。ハーネスHNは、リクライニング機構RLを駆動するためのモータなどの電気部品と、車両用シートS外に配置される電源とを繋いでいる。複数のハーネスHNは、シートバックS2の左側部と右側部を上から下に這うように取り回された後、シートバックS2の下部の左側で一束に束ねられて、下方に延びている。
【0048】
パンフレーム12は、前側底壁W1と、中央底壁W2と、後側底壁W3と、縦壁W4と、フランジW5と、傾斜壁W6と、後壁W7とを有している。前側底壁W1は、略水平方向に延びており、クッションサイドフレーム11の前部に配置されている。
【0049】
縦壁W4は、前側底壁W1の前端および左右の各端から上方に延びている。フランジW5は、前、左右の縦壁W4から外側(前側底壁W1から水平方向に離れる方向)に向けて延びている。フランジW5は、クッションサイドフレーム11の前部に接合されている。
【0050】
中央底壁W2は、前側底壁W1の後端から後ろ斜め下方に向けて延びている。中央底壁W2は、ダクトDの一部(後述する第4ダクト部材140)が通る孔H3を有している。孔H3は、中央底壁W2の左右方向中央に対して左右対称に2つ配置されている。なお、本実施形態では、ダクトDを車両用シートSの右側に配置するため、右側の孔H3を使用するが、ダクトDを車両用シートSの左側に配置するタイプの場合には、左側の孔H3を使用すればよい。
【0051】
後側底壁W3は、中央底壁W2の後端から後方に向けて延びている。後側底壁W3は、乗員の臀部に対応した位置に配置され、乗員の臀部をクッションパッドP1等を介して支持している。
【0052】
傾斜壁W6は、後側底壁W3の左右両側に設けられている。傾斜壁W6は、後側底壁W3の左端または右端から左右方向外側および上側に向けて斜めに延びている。左右の傾斜壁W6は、乗員の臀部の左右の側部に対応した位置に配置され、乗員の臀部の左右の側部をクッションパッドP1等を介して支持している。
【0053】
各傾斜壁W6は、中央底壁W2と後壁W7とになだらかに繋がっている。各傾斜壁W6は、前後方向において、リアパイプ13から離れている。
【0054】
後壁W7は、後側底壁W3の後端から後ろ斜め上に向けて斜めに延びている。後壁W7の後端部は、リアパイプ13の外周面に沿ったフック状に形成され、リアパイプ13に上から係合している。
【0055】
後壁W7は、左右方向の幅がリアパイプ13の長さよりも小さく、リアパイプ13の左右方向中央に配置されている。これにより、後壁W7は、左右方向において、クッションサイドフレーム11から離れている。
【0056】
以上のようにパンフレーム12が構成されることで、パンフレーム12の後部の左右には、クッションフレームF1を上下方向に貫通する孔HR,HLが形成されている。具体的に、各孔HR,HLは、傾斜壁W6の後端と、後壁W7の右端または左端と、リアパイプ13と、クッションサイドフレーム11とで囲まれることで形成されている。
【0057】
そして、右側の孔HRには、後述するダクトDの一部(シートクッションS1からシートバックS2に向けて延びる部分、詳しくは、後述する湾曲管部112)が通っている。つまり、ダクトDは、パンフレーム12を避けて配置されている。なお、本実施形態では、ダクトDの湾曲管部112は、パンフレーム12に接触していない。また、左側の孔HLには、前述したハーネスHNが通っている。
【0058】
言い換えると、ダクトDの一部は、リアパイプ13とパンフレーム12の右側の傾斜壁W6の間に配置されている。また、ダクトDの一部は、右側のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の後壁W7の間に配置されている。ハーネスHNは、左側のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の後壁W7の間に配置されている。なお、本実施形態では、ダクトDの一部は、パンフレーム12およびクッションサイドフレーム11には接触していない。
【0059】
図2に示すように、ダクトDは、シートクッションS1およびシートバックS2のパッドP(P1,P2)に形成された通気路A1,A2と送風装置70を接続する部材である。ダクトDは、複数の部品を接続してなる。具体的には、図4に示すように、ダクトDは、第1ダクト部材110と、第2ダクト部材120と、第3ダクト部材130と、第4ダクト部材140とを有している。
【0060】
第1ダクト部材110は、略前後に延びるロア管部111と、ロア管部111の後端から後に凸となるように湾曲しながら上方に延びる湾曲管部112と、湾曲管部112の上端から略上方に延びる第1接続管部113とを有している。ロア管部111は、前端部が送風装置70に接続されている(図2参照)。
【0061】
第2ダクト部材120は、第1ダクト部材110の後部に接続されており、略上下に延びるように設けられている。第2ダクト部材120は、第2接続管部121と、第2接続管部121の上に設けられたフレキシブル部としての第1蛇腹部122と、第1蛇腹部122の上に設けられた第3接続管部123とを有している。第2接続管部121は、第1ダクト部材110の第1接続管部113が内側に嵌るようなサイズに形成されている。第1蛇腹部122は、可撓性を有するとともに伸縮自在となっている。
【0062】
第3ダクト部材130は、第2ダクト部材120の上端に接続されている。第3ダクト部材130は、略上下に延びる第4接続管部131と、第4接続管部131の上端から左斜め上方(左右方向における車両用シートSの中央に向けて斜め上方)に延びる第1アッパー管部132と、第1アッパー管部132の上端から左(左右方向における車両用シートSの中央)に向けて延びる第2アッパー管部133と、第2アッパー管部133から略前方に延びるバック接続管部134とを有している。第4接続管部131は、第2ダクト部材120の第3接続管部123の内側に嵌るようなサイズに形成されている。バック接続管部134は、前端部がバックパッドP2に形成された通気路A2に接続されている(図2参照)。
【0063】
第4ダクト部材140は、第1ダクト部材110の前部に接続されており、略上下に延びるように設けられている。第4ダクト部材140は、第2蛇腹部141と、第2蛇腹部141の上に設けられたクッション接続管部142と、第2蛇腹部141の下に設けられた左右の接続壁部143とを有している。第2蛇腹部141は、可撓性を有するとともに伸縮自在となっている。クッション接続管部142は、クッションパッドP1に形成された通気路A1に接続されている(図2参照)。接続壁部143は、第2蛇腹部141の下端から下方に向けて延び、第1ダクト部材110のロア管部111を左右から挟むように設けられている。なお、本実施形態では、ダクトDは、当該ダクトDが接続される送風装置70、クッションパッドP1およびバックパッドP2によって支持されており、パンフレーム12には固定されていないこととする。
【0064】
図2に示すように、ダクトDは、シートクッションS1とシートバックS2とに跨がって配置されている。詳しくは、ダクトDは、主に、第1ダクト部材110と第4ダクト部材140がシートクッションS1に配置され、第3ダクト部材130がシートバックS2に配置され、第2ダクト部材120がシートクッションS1とシートバックS2を跨ぐように配置されている。ダクトDは、リアパイプ13に接触している。なお、ダクトDはリアパイプ13に接触していなくてもよい。
【0065】
以上のように構成された本実施形態の車両用シートSでは、次の各効果を奏することができる。
ダクトDがパンフレーム12を避けて配置されるので、パンフレーム12とダクトDが干渉して、パンフレーム12またはダクトDが摩耗してしまうのを抑制することができる。
【0066】
ダクトDがリアパイプ13とパンフレーム12の間に配置されているので、リアパイプ13とパンフレーム12の間のスペースを使って、ダクトDをコンパクトに配置することができる。
【0067】
ダクトDがパンフレーム12とクッションサイドフレーム11の間に配置されることで、車両用シートSの後ろのシートに座った着座者の足がパンフレーム12に当たっても、ダクトDに影響がないので、着座者の足でダクトDが蹴られて破損するのを抑制することができる。
【0068】
ダクトDがリアパイプ13に接触しているので、リアパイプ13に対するダクトDの位置を決めることができる。
【0069】
ハーネスHNが、一方のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の間を通り、ダクトDが、他方のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の間を通るので、ハーネスHNを取り回す際にダクトDが邪魔になるのを抑えることができる。
【0070】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0071】
前記実施形態では、パンフレーム12の後壁W7の右にダクトDを配置し、左にハーネスHNを配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、ダクトDとハーネスHNを、パンフレーム12の後壁W7の右側、つまり左右方向において同じ側に配置してもよい。この場合、ハーネスHNは、ダクトDに接触していてもよい。これによれば、ダクトDによってハーネスHNを支持することができる。
【0072】
また、この場合、図7(a),(b)に示すように、ハーネスHNをダクトDに固定してもよい。これによれば、ダクトDによってハーネスHNをより良好に支持することができる。
【0073】
具体的に、図7(a)に示す形態では、ダクトDは、ハーネスHNの外周の一部が入る凹部D1を有している。凹部D1の深さは、ハーネスHNの直径よりも小さい。そして、ハーネスHNは、外周の一部が凹部D1内に入った状態で、結束バンドBDによってダクトDに固定されている。
【0074】
また、図7(b)に示す形態では、ダクトDは、ダクトDを構成する所定の壁D2から外側に突出する突出部D3を有している。突出部D3の壁D2からの高さは、ハーネスHNの直径よりも小さい。そして、ハーネスHNは、壁D2と突出部D3とに接触した状態で、結束バンドBDによってダクトDに固定されている。
【0075】
前記実施形態では、ダクトDをパンフレーム12に固定していないが、本発明はこれに限定されず、ダクトDをパンフレーム12に固定してもよい。具体的には、図8に示すように、ダクトDのうちパンフレーム12の下に配置される部分に、上方に突出するフックD4を設け、パンフレーム12にフックD4と係合する孔H4を設けてもよい。この形態によれば、ダクトDをパンフレーム12で良好に支持することができる。
【0076】
前記実施形態では、ダクトDの一部(シートクッションS1からシートバックS2に向けて延びる部分、詳しくは、湾曲管部112)を、パンフレーム12と非接触としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、ダクトDの一部は、パンフレーム12に接触していてもよい。具体的に、この形態では、パンフレーム12の後壁W7は、左右方向外側に向けて突出する2つの突起W8を有している。2つの突起W8は、前後方向に間隔を空けて並んでいる。ダクトDの一部は、2つの突起W8の間に配置され、2つの突起W8で挟持されている。この形態によれば、ダクトDの一部がパンフレーム12に接触することで、パンフレーム12に対するダクトDの一部の位置を決めることができる。
【0077】
前記実施形態では、ダクトDの一部をリアパイプ13に単に接触させるだけにしたが、図10に示すように、ダクトDの一部に凹部D5を設け、この凹部D5にリアパイプ13の外周の一部を入れて接触させてもよい。なお、凹部D5の深さは、例えば、リアパイプ13の半径より小さくしてもよい。これによれば、凹部D5が、ダクトD内の空気の流れの抵抗になるのを抑制することができる。
【0078】
図11(a)に示すように、車両用シートSは、クッションサイドフレーム11の後部を覆うインナーカバーCVを備えていてもよい。この場合、ダクトDの一部は、インナーカバーCVと接触していてもよい。また、図11(b)に示すように、ダクトDの一部をインナーカバーCVに固定してもよい。具体的には、ダクトDの一部にフックD6を設け、インナーカバーCVにフックD6と係合する孔H5を設けてもよい。
【0079】
図12に示すように、ダクトDは、パンフレーム12の下において、二股に分かれていてもよい。具体的に、この形態では、第1ダクト部材110は、前記実施形態のロア管部111と略同形状の第1ロア管部111Aと、第1ロア管部111Aからパンフレーム12の後壁W7の左側に向けて延びる第2ロア管部111Bとを有している。
【0080】
各ロア管部111A,111Bの後端には、前記実施形態と同様の湾曲管部112がそれぞれ接続されている。右側の湾曲管部112は、右側のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の後壁W7の間を通って上方に延び、左側の湾曲管部112は、左側のクッションサイドフレーム11とパンフレーム12の後壁W7の間を通って上方に延びている。
【0081】
そして、各湾曲管部112は、前記実施形態と同様の第1接続管部113、第3ダクト部材130を介して、バックパッドP2に形成された通気路にそれぞれ接続されている。この形態によれば、バックパッドP2の通気路に供給される空気の量を多くすることができる。なお、第2ロア管部111Bを、前記実施形態と同様の第4ダクト部材140を介して、クッションパッドP1の通気路に接続してもよい。
【0082】
前記実施形態では、ダクトDがリアパイプ13の前を通る構造としたが、本発明はこれに限定されず、図13に示すように、ダクトDは、リアパイプ13の後ろを通るように構成されていてもよい。これによれば、ダクトDがモータブラケットMB(図3参照)に干渉するのを抑えることができる。
【0083】
また、ダクトDをリアパイプ13の後ろに通す構造では、図14に示すように、ダクトDの一部(湾曲管部112)を、リアパイプ13の左右方向中央に配置してもよい。つまり、ダクトDの一部が、パンフレーム12の後壁W7の後ろを通るように構成されていてもよい。
【0084】
また、この場合、ダクトDは、リアパイプ13の後側で二股に分かれていてもよい。具体的に、この形態では、第3ダクト部材230は、第2ダクト部材120に接続される第4接続管部231と、第4接続管部231から左側に延びる第1延出管部232と、第4接続管部231から右側に延びる第2延出管部233とを有している。
【0085】
バックパッドP2の通気路A2は、バックパッドP2の左側において下に向けて開口する第1開口A21と、バックパッドP2の右側において下に向けて開口する第2開口A22とを有している。第1延出管部232の端部は、上方に延びて、第1開口A21に下から接続されている。第2延出管部233の端部は、上方に延びて、第2開口A22に下から接続されている。
【0086】
この形態でも、バックパッドP2の通気路A2に流れる空気の量を多くすることができる。また、各延出管部232,233を各開口A21,A22に下から接続する構造では、前記実施形態のようにダクトDの上部を前後方向に大きく屈曲させる必要がないので、車両用シートSの外観性を向上させることができるとともに、ダクトDでの圧力損失を少なくすることができる。
【0087】
図15に示すように、バックパッドP2のダクトDとの接続口P21に、スリットSLを形成してもよい。スリットSLは、図に示すように、例えば、ダクトDを挟んだ一方側と他方側に1つずつ設けることができる。これによれば、シートバックS2の移動に伴って、バックパッドP2がダクトDに対して移動した場合に、接続口P21を容易に変形させることができるので、ダクトDに負荷がかかるのを抑えることができる。なお、スリットは、クッションパッドのダクトとの接続口に設けてもよい。
【0088】
図16に示すように、パンフレーム12は、ダクトDに接続される第1コネクタC1と、クッションパッドP1のダクトDとの接続口P11に接続される第2コネクタC2とを一体に有していてもよい。この形態では、パンフレーム12は、例えば樹脂からなる。具体的に、各コネクタC1,C2は、ダクトDから供給される空気を通すための孔H3を囲うように筒状に形成されている。
【0089】
第1コネクタC1は、パンフレーム12の下面から下に向けて突出している。第2コネクタC2は、パンフレーム12の上面から上に向けて突出している。また、ダクトDの第1コネクタC1との接続部分であるクッション接続管部142の先端には、外側に延出するフランジ部144が設けられている。フランジ部144は、タッピングネジTSによってパンフレーム12に固定されている。
【0090】
この形態では、パンフレーム12の一部が、クッションパッドP1とダクトDを接続させるためのコネクタとして構成されるので、例えばコネクタをパンフレーム12とは別部品とする構造と比べ、構造を簡易化することができる。
【0091】
なお、第1コネクタおよび第2コネクタは、パンフレームと別体であってもよい。つまり、パンフレームの孔とダクトを接続させる第1コネクタと、第1コネクタとクッションパッドP1の通気路とを接続させる第2コネクタを、パンフレームと別部品で構成してもよい。
【0092】
前記実施形態では、ダクトDの一部(シートクッションS1からシートバックS2に向けて延びる部分)を、パンフレーム12の外縁の外側に通すことで、パンフレーム12を避けて配置したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ダクトDの一部が、パンフレームに形成した孔を通ることで、パンフレームを避けて配置されていてもよい。
【0093】
前記実施形態では、受圧部材としてパンフレーム12を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、受圧部材は、パンフレームとは別部材であってもよい。具体的には、例えば、車両用シートは、クッションパッドの前部を支持するパンフレームと、クッションパッドの後部を支持する受圧部材とを備えていてもよい。この場合、受圧部材は、樹脂からなっていてもよい。また、受圧部材は、パンフレームとリアパイプに係合していてもよい。
【0094】
なお、ダクトDは、前記実施形態で説明した構成に対し、左右対称の形状を有する構成であってもよい。また、ダクトDは、例えば、湾曲する部分(湾曲管部112)を備えない構成であってもよい。また、前記実施形態では、ダクトDがフレキシブル部として第1蛇腹部122を有していたが、これに限定されず、フレキシブル部は、可撓性を有するものであれば、その構成は特に問わない。また、前記実施形態では、ダクトDが複数の部品を接続してなるものであったが、これに限定されず、単一の部品からなるものであってもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、後部フレームとしてパイプ材からなるリアパイプ13を例示したが、これに限定されず、例えば、後部フレームは、板金からなる板状のフレームであってもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、第1蛇腹部122の下端部(フレキシブル部の一部)がクッションパッドP1とバックパッドP2の間に位置していたが、これに限定されず、例えば、フレキシブル部の全体がクッションパッドとバックパッドの間に位置していてもよい。また、シートバックがシートクッションに対してリクライニングしない構成であれば、フレキシブル部以外の部分がクッションパッドとバックパッドの間に位置していてもよい。また、ダクトは、フレキシブル部を備えない構成であってもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、送風装置70としてシロッコファンを例示したが、これに限定されず、例えば、プロペラファンやターボファンなどであってもよい。また、前記実施形態では、車両用シートSが通気穴H1,H2から空気を吹き出すように構成されていたが、これに限定されず、例えば、通気穴から空気を吸い込むように構成されていてもよい。
【0098】
また、送風装置は、例えば、羽根車の回転方向を切り替えることで、送風と吸引を切り替えることができるものであってもよい。また、前記実施形態では、車両用シートSが送風装置70を備えていたが、車両用シート自体は送風装置を備えない構成であってもよい。言い換えると、送風装置は、車両用シートが搭載される自動車の車体に設けられていてもよい。この場合、車両用シートは、ダクトが、例えば、車体に設けられた空気の吹出口または吸引口に接続される構成とすることができる。
【0099】
また、前記実施形態では、ダクトDにより送風装置と接続される通気路が、シートクッションおよびシートバックの両方に形成されていたが、これに限定されず、シートクッションおよびシートバックのいずれか一方だけに形成された構成であってもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0101】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0102】
11 クッションサイドフレーム
12 パンフレーム
13 リアパイプ
70 送風装置
A1 通気路
A2 通気路
D ダクト
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16