(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】可変コンデンサ及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01G 5/013 20060101AFI20240306BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240306BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01G5/013 352
H05H1/46 L
H05H1/46
H01G5/013 380
H01G5/013 381
C23C16/505
(21)【出願番号】P 2019113170
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】茨木 満雄
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清
(72)【発明者】
【氏名】岸田 茂明
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-233338(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107540(WO,A1)
【文献】実開平06-052134(JP,U)
【文献】特開昭54-096761(JP,A)
【文献】米国特許第03588641(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/013
H05H 1/46
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と、前記固定電極との間でコンデンサを形成する可動電極とを有し、前記可動電極が移動することで前記固定電極との対向面積が変化して、静電容量が変化する可変コンデンサであって、
前記対向面積が最小となる状態から、前記可動電極の移動度を増大させた場合に、前記対向面積の変化特性が上に凸となるように、前記固定電極又は前記可動電極の少なくとも一方が構成されて
おり、前記移動度に対して、前記対向面積の逆数が比例する、可変コンデンサ。
【請求項2】
前記対向面積の最小値が0より大きい、請求項
1記載の可変コンデンサ。
【請求項3】
固定電極と、前記固定電極との間でコンデンサを形成する可動電極とを有し、前記可動電極が移動することで前記固定電極との対向面積が変化して、静電容量が変化する可変コンデンサであって、
前記対向面積が最小となる状態から、前記可動電極の移動度を増大させた場合に、前記対向面積の変化特性が上に凸となるように、前記固定電極又は前記可動電極の少なくとも一方が構成されており、
前記可動電極が回転移動するものであり、
前記固定電極又は前記可動電極の少なくとも一方の外径及び/又は内径が、前記可動電極の回転角度をパラメータとした関数で表される、可変コンデンサ。
【請求項4】
アンテナ導体に高周波電流を流して真空容器内にプラズマを発生させ、当該プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置であって、
請求項1乃至
3のうち何れか一項に記載の可変コンデンサが、前記アンテナ導体に電気的に接続されている、プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記アンテナ導体は、内部に冷却液が流れる流路を有しており、
前記可変コンデンサの誘電体が前記冷却液により構成されている、請求項
4記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変コンデンサ及びこの可変コンデンサを備えるプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、プラズマ生成チャンバ内に複数のアンテナ導体を配置するとともに、互いに隣り合うアンテナ導体の間に可変コンデンサを接続したものがある。
【0003】
かかる構成によれば、可変コンデンサの静電容量を変化させることで、アンテナ導体の上での高周波電圧分布を変化させることができ、このアンテナ導体とプラズマとの静電的結合を制御することができる。
【0004】
ところが、可変コンデンサのリアクタンスが静電容量の逆数に比例することから、静電容量をゼロから増やそうとした場合に、静電容量の僅かな変化がリアクタンスを大きく変動させてしまい、高周波電圧分布の微調整が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、リアクタンスの微調整が可能な可変コンデンサを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る可変コンデンサは、固定電極と、前記固定電極との間でコンデンサを形成する可動電極とを有し、前記可動電極が移動することで前記固定電極との対向面積が変化して、静電容量が変化するものであって、前記対向面積が最小となる状態から、前記可動電極の移動度を増大させた場合に、前記対向面積の変化特性が上に凸となるように、前記固定電極又は前記可動電極の少なくとも一方が構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、可動電極の移動度に対する対向面積の変化特性が上に凸となるように構成されているので、対向面積に対して可変コンデンサの静電容量が比例し、可変コンデンサの静電容量に対してインピーダンスが反比例することに鑑みれば、可動電極の移動度に対する可変コンデンサのインピーダンスの変化特性が、線形或いは線形に近い変化となり、インピーダンスの微調整が可能となる。
【0009】
前記移動度に対して、前記対向面積の逆数が比例することが好ましい。
このような構成であれば、可動電極の移動度に対してインピーダンスを比例させることができるので、インピーダンスをより精度良く調整することができる。
【0010】
静電容量をゼロから増やそうとした場合、すなわち対向面積をゼロから増やそうとした場合、僅かに重なり合った固定電極及び可動電極の間に電流が集中して流れるため、その部分が過度に発熱する。その結果、例えば可変コンデンサに大電流を流す場合には、固定電極や可動電極の変質や融解の恐れが生じる。
そこで、前記対向面積の最小値が0より大きいことが好ましい。
これならば、可動電極の回転角度に関わらず、固定電極及び可動電極が重なり合っている状態を維持できるので、電流の集中を防ぐことができ、大電流を流す場合であっても、固定電極や可動電極の変質や融解を抑制することができる。
【0011】
可動電極が回転移動するものである場合、可変コンデンサの静電容量は、固定電極や可動電極の枚数や可動電極の回転角度に依ることから、回転角度に対するインピーダンスの変化特性を所望の変化特性にするためには、前記固定電極又は前記可動電極の少なくとも一方の外径及び/又は内径が、前記可動電極の回転角度をパラメータとした関数で表されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るプラズマ処理装置は、アンテナ導体に高周波電流を流して真空容器内にプラズマを発生させ、当該プラズマを用いて基板を処理するものであって、上述した可変コンデンサが、前記アンテナ導体に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
かかるプラズマ処理装置によれば、上述したように可変コンデンサのインピーダンスを適切に制御することができるので、アンテナ導体の上での高周波電圧分布を微調整することができ、プラズマ密度の均一化を図れる。
【0013】
このように可変コンデンサを用いた場合、プラズマ生成時に生じる熱により、可変コンデンサの誘電率が変化して静電容量が不意に変動してしまい、可変コンデンサのリアクタンスを安定して制御することが難しい。
そこで、前記アンテナ導体は、内部に冷却液が流れる流路を有しており、前記可変コンデンサの誘電体が前記冷却液により構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、アンテナ導体を流れる冷却液を、可変コンデンサの誘電体として用いることで、その冷却液により可変コンデンサを冷却することができ、静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、可変コンデンサのリアクタンスを微調整することができ、ひいてはプラズマ処理装置におけるプラズマ密度の均一化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図である。
【
図3】同実施形態の接続導体を模式的に示す横断面図である。
【
図4】同実施形態の接続導体を模式的に示す縦断面図である。
【
図5】同実施形態の可変コンデンサを導入ポート側から見た側面図である。
【
図6】同実施形態の可動電極の回転角度しθが0°の状態を示す模式図である。
【
図7】同実施形態の可動電極の回転角度しθが90°の状態を示す模式図である。
【
図8】同実施形態の可変コンデンサの回転角度θと対向面積Aとの相関を示すグラフである。
【
図9】同実施形態の可変コンデンサの回転角度θと静電容量の逆数との相関を示すグラフである。
【
図10】その他の実施形態の可変コンデンサの回転角度θと静電容量の逆数との相関を示すグラフである。
【
図11】その他の実施形態における可動金属板の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0018】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0019】
具体的にプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された直線状のアンテナ導体3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ導体3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ導体3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ導体3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0020】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置5によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0021】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及びアンテナ導体3に沿う方向に配置された複数のガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。
【0022】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ6が設けられている。この例のように、基板ホルダ6にバイアス電源7からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ6内に、基板Wを加熱するヒータ61を設けておいても良い。
【0023】
アンテナ導体3は、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)複数配置されている。
【0024】
アンテナ導体3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ導体3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材8がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材8を、アンテナ導体3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン91によって真空シールされている。各絶縁部材8と真空容器2との間も、例えばパッキン92によって真空シールされている。なお、絶縁部材8の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0025】
さらに、アンテナ導体3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材8によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0026】
そして、複数のアンテナ導体3は、内部に冷却液CLが流通する流路3Sを有する中空構造のものである。本実施形態では、直管状をなす金属パイプである。金属パイプ31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0027】
なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路11によりアンテナ導体3を流通するものであり、前記循環流路11には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構111と、循環流路11において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構112とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0028】
また、複数のアンテナ導体3は、
図2に示すように、接続導体12によって接続されて1本のアンテナ構造となるように構成されている。つまり、互いに隣接するアンテナ導体3における真空容器2の外部に延出した端部同士を接続導体12によって電気的に接続している。具体的には、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3の端部と他方のアンテナ導体3の端部とを接続導体12により電気的に接続している。
【0029】
ここで、接続導体12により接続される2つのアンテナ導体3の端部は同じ側壁側に位置する端部である。これにより、複数のアンテナ導体3は、互いに隣接するアンテナ導体3に互いに逆向きの高周波電流が流れるように構成される。
【0030】
そして、接続導体12は内部に流路を有しており、その流路に冷却液CLが流れように構成されている。具体的には、接続導体12の一端部は、一方のアンテナ導体3の流路と連通しており、接続導体12の他端部は、他方のアンテナ導体3の流路と連通している。これにより、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3を流れた冷却液CLが接続導体12の流路を介して他方のアンテナ導体3に流れる。これにより、共通の冷却液CLにより複数のアンテナ導体3を冷却することができる。また、1本の流路によって複数のアンテナ導体3を冷却することができるので、循環流路11の構成を簡略化することができる。
【0031】
複数のアンテナ導体3のうち接続導体12で接続されていない一方の端部が給電端部3aとなり、当該給電端部3aには、整合回路41を介して高周波電源4が接続される。また、他方の端部である終端部3bは直接接地されている。なお、終端部3bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地しても良い。
【0032】
上記構成によって、高周波電源4から、整合回路41を介して、アンテナ導体3に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0033】
<接続導体12の構成>
次に接続導体12について、
図3~
図7を参照して詳細に説明する。なお、
図3及び
図4などにおいて一部のシール部材などは記載を省略している。
【0034】
接続導体12は、
図3及び
図4に示すように、アンテナ導体3に電気的に接続される可変コンデンサ13と、当該可変コンデンサ13と一方のアンテナ導体3の端部とを接続する第1の接続部14と、可変コンデンサ13と他方のアンテナ導体3の端部とを接続する第2の接続部15とを有している。
【0035】
第1の接続部14及び第2の接続部15は、アンテナ導体3の端部を取り囲むことによって、アンテナ導体3に電気的に接触するとともに、アンテナ導体3の端部に形成された開口部3Hから冷却液CLを可変コンデンサ13に導くものである。これら接続部14、15の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0036】
本実施形態の各接続部14、15は、アンテナ導体3の端部において、開口部3Hよりも真空容器2側でOリングなどのシール部材S1を介して液密に装着されるものであり、開口部3Hよりも外側は拘束しないように構成されている(
図3参照)。これにより、接続部14、15に対するアンテナ導体3の若干の傾きを許容する構成としている。
【0037】
可変コンデンサ13は、一方のアンテナ導体3に電気的に接続される第1の固定電極16と、他方のアンテナ導体3に電気的に接続される第2の固定電極17と、第1の固定電極16との間で第1のコンデンサを形成するとともに、第2の固定電極17との間で第2のコンデンサを形成する可動電極18とを有している。
【0038】
本実施形態の可変コンデンサ13は、可動電極18が所定の回転軸C周りに回転することによって、その静電容量を変更できるように構成されている。そして、可変コンデンサ13は、第1の固定電極16、第2の固定電極17及び可動電極18を収容する絶縁性を有する収容容器19を備えている。
【0039】
収容容器19は、一方のアンテナ導体3からの冷却液CLを導入する導入ポートP1と、冷却液Clを他方のアンテナ導体3に導出する導出ポートP2とを有している。導入ポートP1は、収容容器19の一方の側壁(
図3では左側壁19a)に形成され、導出ポートP2は収容容器19の他方の側壁(
図3では右側壁19b)に形成されており、導入ポートP1及び導出ポートP2は互いに対向した位置に設けられている。なお、本実施形態の収容容器19は、内部に中空部を有する概略直方体形状をなすものであるが、その他の形状であってもよい。
【0040】
第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、可動電極18の回転軸C周りに互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、第1の固定電極16は、収容容器19の導入ポートP1から収容容器19の内部に挿入して設けられている。また、第2の固定電極17は、収容容器19の導出ポートP2から収容容器19の内部に挿入して設けられている。これにより、第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられている。
【0041】
第1の固定電極16は、互いに対向するように設けられた複数の第1の固定金属板161を有している。また、第2の固定電極17は、互いに対向するように設けられた複数の第2の固定金属板171を有している。これら固定金属板161、171はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられている。
【0042】
そして、複数の第1の固定金属板161は、互いに同一形状をなすものであり、第1のフランジ部材162に支持されている。第1のフランジ部材162は、収容容器19の導入ポートP1が形成された左側壁19aに固定される。ここで、第1のフランジ部材162には、導入ポートP1に連通する貫通孔162Hが形成されている(
図5参照)。また、複数の第2の固定金属板171は、互いに同一形状をなすものであり、第2のフランジ部材172に支持されている。第2のフランジ部材172は、収容容器19の導出ポートP2が形成された右側壁19bに固定される。ここで、第2のフランジ部材172には、導出ポートP2に連通する貫通孔172Hが形成されている。これら複数の第1の固定金属板161及び複数の第2の固定金属板171は、収容容器19に固定された状態で、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられる。
【0043】
また、第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171は平板状をなすものであり、
図6に示すように、平面視において、回転軸Cに向かうに従って幅が縮小する形状をなしている。そして、各固定金属板161、171において、幅が縮小する端辺161a、171aは回転軸Cの径方向に沿って形成されている。なお、互いに対向する端辺161a、171aのなす角度は、90度である。また、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161b、171bは円弧状をなしている。
【0044】
可動電極18は、
図3に示すように、収容容器19の側壁(
図3では前側壁19c)に回転軸C周りに回転可能に軸支される回転軸体181と、当該回転軸体181に支持された可動金属板182とを有している。
【0045】
回転軸体181は、回転軸Cに沿って延びる直線状をなすものである。この回転軸体181は、その一端部が収容容器19の前側壁19cから外部に延出するように構成されている。そして、この収容容器19の前側壁19cにおいてOリングなどのシール部材S2により回転可能に支持される。ここでは、前側壁において2つのOリングにより2点支持されている。また、回転軸体181の他端部は、収容容器19の内面に設けられた位置決め凹部191に回転可能に接触している。
【0046】
また、回転軸体181は、可動金属板182を支持する部分181xが金属製などの導電材料から形成され、収容容器19から外部に延出した部分181yが樹脂製などの絶縁材料から形成されている。
【0047】
可動金属板182は、各固定金属板161、171の間に配置されており、
図3では、固定金属板161、171をそれぞれ6枚とし、可動金属板182を5枚としているが、これに限られない。なお、可動金属板182と固定金属板161、171とのギャップは例えば1mmである。
【0048】
具体的に可動金属板182は、
図6及び
図7に示すように、第1の固定電極16に対向する第1要素183と、回転軸体181に支持されて第2の固定電極17に対向する第2要素184とを有している。
【0049】
第1要素183は、第1の固定金属板161に対応して複数設けられている。なお、第1要素183はそれぞれ同一形状をなすものである。また、第2要素184は、第2の固定金属板171に対応して複数設けられている。なお、第2要素184はそれぞれ同一形状をなすものである。これら第1要素183及び第2要素184はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられており、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものである。
【0050】
このように構成された可変コンデンサ13において可動電極18を回転させることによって、
図7に示すように、第1の固定金属板161及び第1要素183の対向面積(第1の対向面積A1)が変化し、第2の固定金属板171及び第2要素184の対向面積(第2の対向面積A2)が変化する。
【0051】
然して、本実施形態の可変コンデンサ13は、
図8に示すように、対向面積Aが最小となる状態から、可動電極の移動度たる回転角度θを増大させた場合に、対向面積Aの変化特性が上に凸となるように構成されている。なお、ここでいう対向面積Aは、第1の固定金属板161と可動金属板182との対向面積と、第2の固定金属板171と可動金属板182との対向面積とを合わせた総面積である。ただし、上述した第1の対向面積A1や第2の対向面積A2の変化特性に関しても、最小となる状態から、可動電極の回転角度θを増大させた場合に上に凸となる。
【0052】
より詳細には、対向面積Aが最小となる状態を回転角度θが0°であるとした場合、本実施形態の可変コンデンサ13は、回転角度θが0°から90°に到るまで対向面積Aが増大し続けるように構成されている。すなわち、この可変コンデンサ13は、回転角度θが0°から90°に到るまで静電容量が増大し続け、静電容量の逆数に比例するインピーダンスは減少し続ける。
【0053】
そこで、まず
図9に示すように、回転角度θの増大に対して、静電容量の逆数を所望の変化特性で減少させること、すなわち回転角度θを増大させた場合に、静電容量の逆数を予め定めた特性線分Xに沿って減少させることを考える。なお、回転角度θに対して静電容量が比例して変化する従来の可変コンデンサでは、回転角度θに対する静電容量の逆数が反比例するので、その特性線分は
図9の点線で示すものとなる。
【0054】
本実施形態の可変コンデンサ13の特性線分Xは、直線であっても良いし、曲線であっても良く、例えば回転角度θをパラメータとした関数で表されるものとしても良い。ここでは、特性線分Xを、
図9に示す直線で表されるものとした場合、すなわち回転角度θに対して静電容量の逆数を比例して減少させる場合を考える。なお、直線の傾きは適宜変更して構わない。
【0055】
この場合、静電容量は対向面積Aに比例することから、本実施形態の可変コンデンサ13は、回転角度θに対して、対向面積Aの逆数が比例するように構成されていることになり、言い換えれば、
図8に示すように、回転角度θに対する対向面積Aの変化特性が上に凸となる。
【0056】
より具体的に説明すると、
図6及び
図7に示すように、可動金属板182の第1要素183及び第2要素184は、径方向に延びる第1端辺183a、184a及び第2端辺183b、184bと、これらの第1端辺183a、184aの及び第2端辺183b、184bの外端を結ぶ外周辺183c、184cとを有している。第1端辺183a、184aは、回転角度θを0°から増大させた場合に、最初に固定金属板161、171の端辺161a、171aを横切る辺であり、第2端辺183b、184bは、最後に固定金属板161、171の端辺161a、171aを横切る辺である。そして、外周辺183c、184cが、第1端辺183a、184aから第2端辺183b、184bに向かうに連れて徐々に長くなるように構成されている。
【0057】
言い換えれば、
図7に示すように、回転中心から外周辺183c、184cまでの距離を外径r1、回転中心から固定金属板161、171の内周辺までの距離を内径r2とした場合に、外径r1から内径r2を差し引いた距離Lが、第1端辺183a、184aから第2端辺183b、184bに向かうに連れて徐々に長くなるように構成されている。なお、上述した特性線分Xが回転角度θをパラメータとした関数で表されるものであっても良いように、この距離Lも回転角度θをパラメータとした関数で表されるものであっても良い。
【0058】
この実施形態では、各固定金属板161、171の先端辺161b、171bは円弧状であり、内径r2は回転角度θに関わらず一定であることから、外径r1が第1端辺183a、184aから第2端辺183b、184bに向かうに連れて徐々に長くなるように構成されている。
【0059】
かかる構成により、本実施形態の可動金属板182は、可動電極18の回転角度θに対して対向面積Aの逆数が比例する形状、換言すれば、可動電極18の回転角度θに対して静電容量の逆数が比例する形状をなすものとなる。
【0060】
さらに、可動金属板182は、
図6及び
図7に示すように、可動電極18の回転角度θに関わらず、固定電極16、17との間で可変コンデンサ13の静電容量を一定以上に保つ容量保持要素185をさらに有している。
【0061】
この容量保持要素185は、第1要素183及び第2要素184の間に亘って形成されたものであり、可動金属板182と各固定金属板161、171との対向面積Aの最小値を、回転角度θに関わらず0よりも大きく保持するものである。すなわち、容量保持要素185は、可動電極18の回転角度θが0°の状態で、固定金属板161、171と対向するように構成されたものである。
【0062】
この容量保持要素185の形状は適宜変更して構わないが、ここでは固定金属板161、171の先端辺161b、171bと同心の円弧状をなすものであり、その外径を、先端辺161b、171bの内径よりも大きく設定したものである。これにより、容量保持要素185と各固定金属板161、171との対向面積Aは、可動電極18の回転角度θに比例して変化する。
【0063】
上記の構成において、収容容器19の導入ポートP1から冷却液CLが流入すると、収容容器19の内部が冷却液CLにより満たされる。このとき、第1の固定金属板161及び第1要素183の間や、第2の固定金属板171及び第2要素184の間や、第1の固定金属板161や第2の固定金属板171と容量保持要素185との間が冷却液CLで満たされる。これにより、冷却液CLが第1のコンデンサの誘電体及び第2のコンデンサの誘電体となる。本実施形態では、第1のコンデンサの静電容量と第2のコンデンサの静電容量とは同じである。また、このように構成される第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは直列に接続されており、可変コンデンサ13の静電容量は、第1のコンデンサ(又は第2のコンデンサ)の静電容量の半分となる。
【0064】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、可動電極18の回転角度θに対する対向面積Aの変化特性が上に凸となるように構成されているので、対向面積Aに対して可変コンデンサ13の静電容量が比例し、可変コンデンサ13の静電容量に対してインピーダンスが反比例することに鑑みれば、可動電極18の回転角度θに対する可変コンデンサ13のインピーダンスの変化特性が、線形或いは線形に近い変化となり、インピーダンスの微調整が可能となる。
その結果、可変コンデンサ13のインピーダンスを適切に制御することができるので、アンテナ導体3の上での高周波電圧分布を微調整することができ、プラズマ密度の均一化を図れる。
【0065】
より詳細には、可動電極18の回転角度θに対して、対向面積Aの逆数が比例するようにしてあるので、可動電極18の回転角度θに対してインピーダンスを比例して変化させることができ、インピーダンスをより精度良く調整することができる。
【0066】
ところで、静電容量をゼロから増やそうとした場合、すなわち対向面積をゼロから増やそうとした場合、僅かに重なり合った固定金属板161、171及び可動金属板182の間に電流が集中して流れるため、その部分が過度に発熱する。その結果、例えば可変コンデンサ13に大電流を流す場合には、固定金属板161、171や可動金属板182の変質や融解の恐れが生じる。
これに対して、本実施形態に係るプラズマ処理装置100であれば、可動金属板182が、可動電極18の回転角度θが0°の状態で固定金属板161、171と重なり合う容量保持要素185を有しているので、上述した電流の集中を防ぐことができ、大電流を流す場合であっても、固定金属板161、171や可動金属板182の変質や融解を抑制することができる。
【0067】
加えて、アンテナ導体3の内部を流れる冷却液CLを可変コンデンサ13の誘電体として用いているので、その冷却液CLにより可変コンデンサ13を冷却することができ、静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0068】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0069】
前記実施形態では、回転角度θに対する静電容量の逆数の変化特性を示す特性線分Xが直線である場合について説明したが、この特性線分Xは、反比例曲線でなければ、例えば
図10に示すように、上に凸又は下に凸な曲線であっても良い。
【0070】
また、可動金属板の形状は、前記実施形態のものに限らず、
図11に示すように、適宜変更して構わない。
さらには、可動金属板における第1要素及び第2要素の厚みを、第1端辺から第2端辺に向かうに連れて徐々に薄くなるようにすることで、可動電極の回転角度対して静電容量の逆数が比例するようにしても良いし、同様に、固定金属板の厚みを適宜変更させても良い。
【0071】
また、前記実施形態では、可動金属板の形状を、可動電極の回転角度に対して静電容量の逆数が比例するような形状にしていたが、固定金属板の形状を、可動電極の回転角度に対して静電容量の逆数が比例するような形状にしても良い。このような構成の一例としては、固定金属板の内径を、一方の端辺から他方の端辺に向かって徐々に短くする構成を挙げることができる。
【0072】
加えて、前記実施形態では、可変コンデンサが互いに隣接するアンテナ導体の間に設けられているが、アンテナ導体と接地との間に設けられるものであってもよい。この場合、第1の固定電極はアンテナ導体に電気的に接続され、第2の固定電極は接地される。
【0073】
さらに加えて、前記実施形態では、アンテナ導体は直線状をなすものであったが、湾曲又は屈曲した形状であっても良い。この場合、金属パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良いし、絶縁パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良い。
【0074】
そのうえ、前記実施形態では、可動電極が回転軸周りに回転するものであったが、可動電極が固定電極に対してスライド移動(並進移動)するものであってもよい。このように可動電極がスライドする構成としては、可動電極が固定電極との対向方向に直交する方向にスライドして対向面積が変化する構成を挙げることができる。
【0075】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
100・・・プラズマ処理装置
W・・・基板
P・・・誘導結合プラズマ
2・・・真空容器
3・・・アンテナ導体
3S・・・流路
CL・・・冷却液
13・・・可変コンデンサ
16・・・第1の固定電極
161・・・固定金属板
17・・・第2の固定電極
171・・・固定金属板
161a、171a・・・縮小する端辺
161b、171b・・・先端辺
18・・・可動電極
182・・・可動金属板
183・・・第1要素
184・・・第2要素
185・・・容量保持要素
19・・・収容容器
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート