(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240306BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/00 D
B60C11/00 B
B60C11/03 100C
(21)【出願番号】P 2019205063
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友松 亮一
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131079(JP,A)
【文献】特開2004-050869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置された一対の交差ベルトと、キャップトレッドゴムおよびアンダートレッドゴムを積層して成ると共に前記交差ベルトの径方向外側に配置されたトレッドゴムと、トレッド面のタイヤ幅方向最外側に形成された一対のショルダー主溝および前記ショルダー主溝の間の少なくとも1本のセンター主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に区画された一対のショルダー陸部と、前記ショルダー主溝および前記センター主溝に区画された少なくとも2つのセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ赤道面上または前記タイヤ赤道面に最も近い内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cとが、Ga_ce<Ga_cの関係を有し、
前記内側センター陸部における接地幅W_ceと、少なくとも1つの前記外側センター陸部における接地幅W_cとが、W_ce>W_cの関係を有
し、
前記キャップトレッドゴムの60℃における損失正接Tacと、前記アンダートレッドゴムの60℃における損失正接Tauとが、Tac>Tauの関係を有し、
前記キャップトレッドゴムのゴム硬さHscと、アンダートレッドゴムのゴム硬さHsuとが、HSc>HSuの関係を有する、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側センター陸部における前記トレッドゴムの平均ゲージGat_ceと、前記内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_ceとが、Ga_ce/Gat_ce=0.23±0.05の関係を有し、
少なくとも1つの前記外側センター陸部における前記トレッドゴムの平均ゲージGat_cと、当該外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cとが、Ga_c/Gat_c=0.30±0.05の関係を有する、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cとが、0.30≦Ga_ce/Ga_c≦0.95の関係を有し、
前記内側センター陸部における接地幅W_ceと、少なくとも1つの前記外側センター陸部における接地幅W_cとが、1.10≦W_ce/W_c≦2.00の関係を有する、
請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_ca、および少なくとも1つの前記外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cは、1.5mm以上4.0mm以下の範囲にあり、
各前記センター陸部における各前記アンダートレッドゴムの最大ゲージは、各前記主溝の溝底からタイヤ径方向外側へ1.6mmの地点を通って前記トレッド面のプロファイルラインに平行な仮想ラインよりも、タイヤ径方向内側に位置する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_caと、少なくとも1つの前記外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cと、各前記ショルダー陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_s1,Ga_s2とが、Ga_ce>Ga_s1、Ga_ce>Ga_s2、Ga_c>Ga_s1、Ga_c>Ga_s2の関係を有し、
前記内側センター陸部における接地幅W_ceと、少なくとも1つの前記外側センター陸部における接地幅W_cと、各前記ショルダー陸部における接地幅W_s1,W_s2とが、
W_ce<W_s1、W_ce<W_s2、W_c<W_s1、W_c<W_s2の関係を有する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記キャップトレッドゴムの60℃における損失正接Tacと、前記アンダートレッドゴムの60℃における損失正接Tauとが、1.20≦Tac/Tau≦13.0の関係を有する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トレッド部がゴム硬度の異なるアンダートレッドゴムとキャップゴムとから成る構造の空気入りタイヤが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレッド部の構造において、ロードノイズを低減する騒音性能を向上するため、トレッド部のゴム硬度を低くすると、操縦安定性能が悪化する懸念がある。また、一般的な乗用車と比較して天井の高いハイト系車両においては、車両のふらつきを防止する要求が高く、操縦安定性のうち、特に、直進安定性能が重要視されるが、その一方で乗り心地性能も重要視されている。
【0005】
この発明は、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置された一対の交差ベルトと、キャップトレッドゴムおよびアンダートレッドゴムを積層して成ると共に前記交差ベルトの径方向外側に配置されたトレッドゴムと、トレッド面のタイヤ幅方向最外側に形成された一対のショルダー主溝および前記ショルダー主溝の間の少なくとも1本のセンター主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に区画された一対のショルダー陸部と、前記ショルダー主溝および前記センター主溝に区画された少なくとも2つのセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、タイヤ赤道面上または前記タイヤ赤道面に最も近い内側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部における前記アンダートレッドゴムの平均ゲージGa_cとが、Ga_ce<Ga_cの関係を有し、前記内側センター陸部における接地幅W_ceと、少なくとも1つの前記外側センター陸部における接地幅W_cとが、W_ce>W_cの関係を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、この空気入りタイヤは、トレッド面の接地時にタイヤ周方向の接地長が最も長くなるタイヤ赤道面上またはタイヤ赤道面に最も近い内側センター陸部における接地幅が、他の少なくとも1つの外側センター陸部におけるトレッド面の接地幅よりも広い。このため、内側センター陸部の剛性を確保できる。また、この空気入りタイヤは、アンダートレッドゴムについて内側センター陸部の平均ゲージに対して少なくとも1つの外側センター陸部の平均ゲージが厚い。このため、低燃費に繋がる転がり抵抗を低減し、乗り心地性能を向上できる。ただし、センター陸部においてアンダートレッドゴムの平均ゲージを厚くすると、陸部の剛性が下がり、直進安定性能の低下が懸念されるため、接地幅を比較的広くして剛性を確保した内側センター陸部では、アンダートレッドゴムの平均ゲージを比較的薄くして直進安定性能を確保する。その一方で、少なくとも1つの外側センター陸部では、アンダートレッドゴムの平均ゲージを比較的厚くして路面からの入力を低減することで乗り心地性能を確保する。この結果、この空気入りタイヤは、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[空気入りタイヤ]
図1は、本実施形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0011】
タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義される。タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLに向かう側をいい、タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。タイヤ径方向内側は、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側をいい、タイヤ径方向外側は、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、点Tは、タイヤ接地端である。
【0012】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、
図1に示すように、一対のビードコア11,11と、一対のビードフィラー12,12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16,16と、一対のリムクッションゴム17,17とを備える。
【0013】
一対のビードコア11,11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12,12は、一対のビードコア11,11のタイヤ径方向外側でタイヤ周方向に沿ってそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11,11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、80deg以上100deg以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0015】
例えば、
図1の構成では、カーカス層13が単一のカーカスプライから成る単層構造を有し、その巻き返し部132が本体部131の外周面に沿って延在してベルト層14に対してタイヤ幅方向にオーバーラップしている。また、カーカス層13の巻き返し部132の終端部が、後述するショルダー主溝21,24よりもタイヤ幅方向外側に位置している。
【0016】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~144は、一対の交差ベルト141,142と、ベルトカバー143およびベルトエッジカバー144とを含む。
【0017】
一対の交差ベルト141,142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15deg以上55deg以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト141,142は、相互に異符号のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。また、一対の交差ベルト141,142は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0018】
ベルトカバー143およびベルトエッジカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0deg以上10deg以下のコード角度を有する。また、ベルトカバー143およびベルトエッジカバー144は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141,142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。また、ベルトカバー143が交差ベルト141,142の全域を覆って配置され、一対のベルトエッジカバー144,144が交差ベルト141,142の左右のエッジ部をタイヤ径方向外側から覆って配置される。
【0019】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。また、トレッドゴム15は、キャップトレッドゴム151と、アンダートレッドゴム152と、を備える。トレッドゴム15の詳細については、後述する。
【0020】
一対のサイドウォールゴム16,16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。例えば、
図1の構成では、サイドウォールゴム16のタイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム15の下層に配置されてベルト層14とカーカス層13との間に挟み込まれている。これに限らず、サイドウォールゴム16のタイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム15の外層に配置されてバットレス部に露出しても良い(図示省略)。
【0021】
一対のリムクッションゴム17,17は、左右のビードコア11,11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0022】
インナーライナ18は、タイヤ内腔面に配置されてカーカス層13を覆う空気透過防止層であり、カーカス層13の露出による酸化を抑制し、また、タイヤに充填された空気の洩れを防止する。また、インナーライナ18は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物などから構成される。
【0023】
[トレッドパターン]
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、サマータイヤのトレッド面15aを示している。トレッド面15aは、トレッド部の外周表面、つまり、走行時に路面と接触するトレッド踏面(タイヤ接地面)を構成する面である。
【0024】
なお、同図において、タイヤ周方向は、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向として定義される。また、符号Tは、タイヤ接地端である。タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。また、符号TWは、タイヤ接地幅である。タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0025】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧230kPaであり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88%である。
【0026】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝(主溝)21~24と、これらの周方向主溝21~24に区画された複数の陸部31~35とをトレッド面15aに備える。
【0027】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、4.0mm以上の溝幅および6.5mm以上の溝深さを有する。
【0028】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド面15aの延長線と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0029】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から最大溝深さ位置までの距離として測定される。また、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0030】
例えば、
図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CLを境界とする左右非対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1は、例えば、タイヤ赤道面CLを中心とする左右線対称なトレッドパターンを有しても良いし、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ略点対称なトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
【0031】
また、
図1および
図2に示す構成のトレッドパターンは、タイヤ赤道面CLを境界とする左側領域に2本の周方向主溝21,22を有し、タイヤ赤道面CLを境界とする右側領域に2本の周方向主溝23,24をそれぞれ有している。そして、トレッドパターンは、これらの周方向主溝21~24により、5列の陸部31~35が区画されている。トレッドパターンは、陸部31~35のうち、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0032】
なお、トレッドパターンは、上記構成に限らない。例えば、トレッドパターンは、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良い(図示省略)。また、トレッドパターンは、周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称または左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、トレッドパターンは、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されても良い(図示省略)。
【0033】
また、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の領域に配置された周方向主溝21,22において、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝21をショルダー主溝として定義し、他の周方向主溝22をセンター主溝として定義する。また、タイヤ赤道面CLを境界とする他方の領域に配置された周方向主溝23,24において、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝24をショルダー主溝として定義し、他の周方向主溝23をセンター主溝として定義する。周方向主溝が3本の場合、タイヤ幅方向の最も外側にある2本の周方向主溝をショルダー主溝として定義し、他の1本の周方向主溝をセンター主溝として定義する(図示省略)。
【0034】
また、ショルダー主溝21,24に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31,35をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31,35は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。他の陸部32~35をセンター陸部として定義する。
【0035】
図2のような4本の周方向主溝21~24を備える構成では、一対のショルダー陸部31,35と、3列のセンター陸部32~34とが定義される。そして、
図2のような4本の周方向主溝21~24を備える構成において、3列のセンター陸部32~34のうち、ショルダー主溝である周方向主溝21と、当該周方向主溝21とタイヤ幅方向で隣り合うセンター主溝である周方向主溝22との間に区画されるセンター陸部32を外側センター陸部として定義する。また、
図2のような4本の周方向主溝21~24を備える構成において、3列のセンター陸部32~34のうち、ショルダー主溝である周方向主溝24と、当該周方向主溝24とタイヤ幅方向で隣り合うセンター主溝である周方向主溝23との間に区画されるセンター陸部34を外側センター陸部として定義する。また、
図2のような4本の周方向主溝21~24を備える構成において、3列のセンター陸部32~34のうち、センター主溝である周方向主溝22,23の間に区画されるセンター陸部33を内側センター陸部として定義する。
【0036】
なお、3本の周方向主溝を備える構成では、一対のショルダー陸部と、2列のセンター陸部とが定義される。この場合、2列のセンター陸部は、タイヤ赤道面上またはタイヤ赤道面に最も近いセンター陸部が内側センター陸部として定義し、他のセンター陸部が外側センター陸部として定義する。なお、2列のセンター陸部がタイヤ赤道面から等距離の場合、一方のセンター陸部を内側センター陸部として定義し、他方のセンター陸部を外側センター陸部として定義する。
【0037】
なお、5本の周方向主溝を備える構成では、一対のショルダー陸部と、4列のセンター陸部とが定義される。そして、5本の周方向主溝を備える構成において、4列のセンター陸部のうち、ショルダー主溝と、当該ショルダー主溝とタイヤ幅方向で隣り合う各センター主溝との間に区画されるセンター陸部を外側センター陸部として定義する。また、5本の周方向主溝を備える構成において、4列のセンター陸部のうち、タイヤ幅方向で隣り合う各センター主溝の間に区画される2列のセンター陸部をタイヤ赤道面上またはタイヤ赤道面に最も近いセンター陸部を内側センター陸部として定義する。なお、4列のセンター陸部のうち、タイヤ幅方向で隣り合う各センター主溝の間に区画される2列のセンター陸部がタイヤ赤道面から等距離の場合、一方のセンター陸部を内側センター陸部として定義し、他方のセンター陸部を外側センター陸部として定義する。
【0038】
ショルダー陸部31は、ラグ溝311を備える。ラグ溝311は、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口し、他方の端部にてショルダー主溝である周方向主溝21に交差せずショルダー陸部31内にて終端する。ラグ溝311は、タイヤ周方向に複数設けられている。
【0039】
ここで、ラグ溝は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲にあり、溝深さが、主溝の溝深さに対して0.55倍以上0.80倍以下の範囲にある。なお、サイプは、1.8mm以下のサイプ幅および3.0mm以上7.0mm以下のサイプ深さを有する。サイプは、トレッド面15aに形成された切り込みであり、上記したサイプ幅およびサイプ深さを有することによりタイヤ接地時に閉塞する点で、ラグ溝に対して区別される。
【0040】
また、ショルダー陸部31は、トレッド面15aの接地幅W_s1がタイヤ接地幅TWの10%以上20%以下の範囲にある。接地幅W_s1は、タイヤ接地幅TWと同様に、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したとき、ショルダー陸部31のトレッド面15aと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0041】
外側センター陸部であるセンター陸部32は、ラグ溝321を備える。ラグ溝321は、一方の端部にてショルダー主溝である周方向主溝21に開口すると共に他方の端部にてセンター主溝である周方向主溝22に交差せずセンター陸部32内にて終端する。ラグ溝321は、タイヤ周方向に複数設けられている。また、センター陸部32は、トレッド面15aの接地幅W_c1(W_c)がタイヤ接地幅TWの10%以上20%以下の範囲にある。
【0042】
内側センター陸部であるセンター陸部33は、ラグ溝331を備える。ラグ溝331は、一方の端部にてセンター主溝である周方向主溝22に開口すると共に他方の端部がセンター主溝である周方向主溝23に交差せずセンター陸部33内にて終端する。ラグ溝331は、タイヤ周方向に複数設けられている。また、センター陸部33は、トレッド面15aの接地幅W_ceがタイヤ接地幅TWの10%以上20%以下の範囲にある。
【0043】
外側センター陸部であるセンター陸部34は、ラグ溝341を備える。ラグ溝341は、一方の端部にてセンター主溝である周方向主溝23に開口すると共に他方の端部にてショルダー主溝である周方向主溝24に交差せずセンター陸部34にて終端する。ラグ溝341は、タイヤ周方向に複数設けられている。また、センター陸部34は、トレッド面15aの接地幅W_c2(W_c)がタイヤ接地幅TWの7%以上15%以下の範囲にある。
【0044】
ショルダー陸部35は、1本の周方向細溝25を備える。周方向細溝25は、タイヤ周方向に延在し、センター陸部33をタイヤ幅方向で2つに区画する。ここで、周方向細溝は、主溝よりも溝幅が細く、主溝よりも溝深さが浅い。ショルダー陸部35は、ラグ溝351,352を備える。ラグ溝351は、一方の端部にてショルダー主溝である周方向主溝24に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝25に交差せずタイヤ幅方向内側に区画されたセンター陸部33内にて終端する。ラグ溝351は、タイヤ周方向に複数設けられている。ラグ溝352は、一方の端部が周方向細溝25に交差せずタイヤ幅方向外側に区画されたセンター陸部33内にて終端すると共に他方の端部にてタイヤ接地端Tに開口する。ラグ溝352は、タイヤ周方向に複数設けられている。また、ショルダー陸部35は、トレッド面15aの接地幅W_s2がタイヤ接地幅TWの15%以上25%以下の範囲にある。
【0045】
[トレッドゴム]
図3~
図5は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
図3は、トレッド部全体の拡大図である。
図4は、トレッド部の一部の拡大図であって、ショルダー陸部31およびセンター陸部32を示している。
図5は、主にセンター陸部32~34を示している。
【0046】
トレッドゴム15は、キャップトレッドゴム151と、アンダートレッドゴム152とを備える。
【0047】
キャップトレッドゴム151は、接地特性および耐候性に優れるゴム材料から成り、タイヤ接地面の全域に渡ってトレッド面15aに露出して、トレッド部の外表面を構成する。キャップトレッドゴム151は、損失正接(tanδ)Tacが0.10以上0.30以下の範囲にあることが好ましい。また、キャップトレッドゴム151は、ゴム硬さHscが60以上70以下の範囲にあることが好ましい。
【0048】
ここで、損失正接(tanδ)は、JIS-K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件にて測定される。また、ゴム硬さは、JIS-A硬さであり、JIS K-6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。
【0049】
ここで、キャップトレッドゴム151、アンダートレッドゴム152、およびトレッドゴム15の厚さをゲージともいう。キャップトレッドゴム151、アンダートレッドゴム152、およびトレッドゴム15のゲージは、タイヤ子午線方向の断面においてトレッド面15aの接線に対して垂直な仮想線(法線)上にて測定される。
【0050】
キャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152は、周方向主溝21~24の溝底の最大溝深さ位置にも設けられている。この、周方向主溝21~24の溝底の最大溝深さ位置に設けられたキャップトレッドゴム151やアンダートレッドゴム152のゲージを溝底ゲージという。周方向主溝21~24の溝底ゲージは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。このとき、例えば、以下の測定方法が用いられる。まず、レーザープロファイラによって計測されたタイヤプロファイルの仮想線にタイヤ単体を当てはめてテープ等で固定する。そして、測定対象であるゲージについてノギスなどで測定する。なお、ここで使用したレーザープロファイラとは、タイヤプロファイル測定装置(株式会社マツオ製)である。
【0051】
キャップトレッドゴム151は、溝底ゲージにおける最小ゲージGac_mが0.6mm以上であることが好ましい。また、キャップトレッドゴム151は、最小ゲージGac_m位置においてキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したトレッドゴム15のトータル溝底ゲージGat_mの40%以上であることが好ましい(
図5参照)。
【0052】
アンダートレッドゴム152は、キャップトレッドゴム151よりも低硬度かつ耐熱性に優れるゴム材料から成り、キャップトレッドゴム151とベルト層14との間に挟み込まれて配置されて、トレッドゴム15のベース部分を構成する。アンダートレッドゴム152は、損失正接Tauが0.10未満であることが好ましい。また、アンダートレッドゴム152は、ゴム硬さHsuが50以上60以下の範囲にあることが好ましい。
【0053】
アンダートレッドゴム152は、損失正接Tauが、キャップトレッドゴム151の損失正接Tacよりも小さいことが好ましい(Tac>Tau)。キャップトレッドゴム151の損失正接Tacとアンダートレッドゴム152の損失正接Tauとの差が、0.02以上であることが好ましい。
【0054】
また、アンダートレッドゴム152は、ゴム硬さHsuがキャップトレッドゴム151のゴム硬さHscよりも小さいことが好ましい(Hsc>Hsu)。キャップトレッドゴム151のゴム硬さHscとアンダートレッドゴム152のHsuとの差が、4以上であることが好ましい。
【0055】
アンダートレッドゴム152は、溝底ゲージにおける最小ゲージGau_mが0.2mm以上1.0mm以下の範囲にあることが好ましい。また、アンダートレッドゴム152は、最小ゲージGau_m位置においてキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したトレッドゴム15のトータル溝底ゲージGat_mの8%以上60%以下であることが好ましい(
図5参照)。
【0056】
また、アンダートレッドゴム152は、センター陸部32~34のうちの外側センター陸部32,34における平均ゲージGa_c(Ga_c1,Ga_c2)が1.5mm以上4.0mm以下の範囲にある(
図3参照)。また、アンダートレッドゴム152は、センター陸部32~34のうちの内側センター陸部33における平均ゲージGa_ceが1.5mm以上4.0mm以下の範囲にある。ここで、センター陸部32~34のアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_c(Ga_c1,Ga_c2),Ga_ceは、それぞれセンター陸部32~34のタイヤ幅方向寸法CWに対しタイヤ幅方向中央の70%の範囲CWaにおいて、タイヤ幅方向の両端a,bと中央cの3箇所のタイヤ径方向位置におけるゲージを平均して求める(
図4参照)。なお、センター陸部32~34のキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したトレッドゴム15のトータル平均ゲージGat_c(Gat_c1,Gat_c2),Gat_ceも、それぞれセンター陸部32~34のタイヤ幅方向寸法CWに対しタイヤ幅方向中央の70%の範囲CWaにおいて、タイヤ幅方向の両端a,bと中央cの3箇所のタイヤ径方向位置におけるゲージを平均して求める(
図4参照)。トレッドゴム15のトータル平均ゲージGat_c(Gat_c1,Gat_c2),Gat_ceは、トレッド面15aからキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したものであり、ラグ溝321~341に関わらない(
図3参照)。アンダートレッドゴム152は、センター陸部32~34(主に外側センター陸部32,34)における最大ゲージ位置が、各周方向主溝21~24の溝底からタイヤ径方向外側へ1.6mmの地点を通ってトレッド面15aのプロファイルラインに平行な仮想ラインLwよりも、タイヤ径方向内側に位置する(
図5参照)。
【0057】
また、アンダートレッドゴム152は、ショルダー陸部31,35における平均ゲージGa_s1,Ga_s2が0.5mm以上3.0mm以下の範囲にある(
図3参照)。ここで、ショルダー陸部31,35のアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2は、それぞれショルダー陸部31,35においてショルダー主溝である周方向主溝21,24の開口端dからタイヤ接地端Tまでのタイヤ幅方向寸法SWに対し、周方向主溝21,24の開口端dと当該開口端dからタイヤ接地端T側へ20%の範囲SWaの端eとの2箇所のタイヤ径方向位置におけるゲージを平均して求める(
図4参照)。なお、ショルダー陸部31,35のキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したトレッドゴム15のトータル平均ゲージGat_s1,Gat_s2も、ショルダー陸部31,35においてショルダー主溝である周方向主溝21,24の開口端dからタイヤ接地端Tまでのタイヤ幅方向寸法SWに対し、周方向主溝21,24の開口端dと当該開口端dからタイヤ接地端T側へ20%の範囲WSaの端eとの2箇所のタイヤ径方向位置におけるゲージを平均して求める(
図4参照)。トレッドゴム15のトータル平均ゲージGat_s1,Gat_s2は、トレッド面15aからキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したものであり、ラグ溝311,351,352に関わらない(
図3参照)。アンダートレッドゴム152は、ショルダー陸部31,35における最大ゲージ位置が、各周方向主溝21~24の溝底からタイヤ径方向外側へ1.6mmの地点を通ってトレッド面15aのプロファイルラインに平行な仮想ラインLwよりも、タイヤ径方向内側に位置する(
図5参照)。
【0058】
[特徴および効果]
上述したように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、カーカス層13と、カーカス層13の径方向外側に配置された一対の交差ベルト141,142と、キャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152を積層して成ると共に交差ベルト141,142の径方向外側に配置されたトレッドゴム15と、トレッド面15aのタイヤ幅方向最外側に形成された一対のショルダー主溝21,24およびショルダー主溝21,24の間の少なくとも1本のセンター主溝22,23と、ショルダー主溝21,24のタイヤ幅方向外側に区画された一対のショルダー陸部31,35と、ショルダー主溝21,24およびセンター主溝22,23に区画された少なくとも2つのセンター陸部(内側センター陸部33、外側センター陸部32,34)と、を備える。
【0059】
即ち、本実施形態の空気入りタイヤ1は、例えば、
図6~
図8に示すように、4本の周方向主溝(ショルダー主溝21,24、センター主溝22,23)を有して5列の陸部(ショルダー陸部31,35、外側センター陸部32,34、内側センター陸部33)が区画された構成や、例えば、
図9や
図10に示すように、3本の周方向主溝(ショルダー主溝21,24、センター主溝22(23))を有して4列の陸部(ショルダー陸部31,35、内側センター陸部33、外側センター陸部32(34))が区画された構成や、例えば、図には明示しないが、5本の周方向主溝を有して6列の陸部が区画された構成を含む。
【0060】
そして、本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図3に示すように、タイヤ赤道面CL上またはタイヤ赤道面CLに最も近い内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_c(Ga_c1,Ga_c2)とが、Ga_ce<Ga_cの関係を有する。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、内側センター陸部33におけるトレッド面15aの接地幅W_ceと、少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッド面15aの接地幅W_cとが、W_ce>W_cの関係を有する。
【0061】
従って、この空気入りタイヤ1は、トレッド面15aの接地時にタイヤ周方向の接地長が最も長くなるタイヤ赤道面CL上またはタイヤ赤道面CLに最も近い内側センター陸部33における接地幅が、他の少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッド面15aの接地幅よりも広い。このため、内側センター陸部33の剛性を確保できる。また、この空気入りタイヤ1は、アンダートレッドゴム152について内側センター陸部33の平均ゲージに対して少なくとも1つの外側センター陸部32,34の平均ゲージが厚い。このため、低燃費に繋がる転がり抵抗を低減し、乗り心地性能を向上できる。ただし、センター陸部32,33,34においてアンダートレッドゴム152の平均ゲージを厚くすると、陸部の剛性が下がり、直進安定性能の低下が懸念されるため、接地幅を比較的広くして剛性を確保した内側センター陸部33では、アンダートレッドゴム152の平均ゲージを比較的薄くして直進安定性能を確保する。その一方で、内側センター陸部33に隣接する少なくとも1つの外側センター陸部32,34では、アンダートレッドゴム152の平均ゲージを比較的厚くして路面からの入力を低減することで乗り心地性能を確保する。この結果、この空気入りタイヤ1は、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上できる。
【0062】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33におけるトレッドゴム15の平均ゲージGat_ceと、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceとが、Ga_ce/Gat_ce=0.23±0.05(0.18≦Ga_ce/Gat_ce≦0.28)の関係を有することが好ましい。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1では、少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッドゴム15の平均ゲージGat_cと、当該外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cとが、Ga_c/Gat_c=0.30±0.05(0.25≦Ga_c/Gat_c≦0.35)の関係を有することが好ましい。
【0063】
従って、この空気入りタイヤ1は、センター陸部32,33,34において、内側センター陸部33および少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッドゴム15におけるアンダートレッドゴム152の厚さを規定することで、転がり抵抗の低減および乗り心地性能の向上に寄与する。
【0064】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cとが、0.30≦Ga_ce/Ga_c≦0.95の関係を有することが好ましい。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33における接地幅W_ceと、少なくとも1つの外側センター陸部32,34における接地幅W_cとが、1.10≦W_ce/W_c≦2.00の関係を有することが好ましい。
【0065】
従って、この空気入りタイヤ1は、内側センター陸部33と少なくとも1つの外側センター陸部32,34とのアンダートレッドゴム152の平均ゲージの関係を規定し、かつ内側センター陸部33と少なくとも1つの外側センター陸部32,34とのトレッド面15aの接地幅の関係を規定することで、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0066】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ca、および少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cは、1.5mm以上4.0mm以下の範囲にあり、各センター陸部32,33,34における各アンダートレッドゴム152の最大ゲージは、各主溝21,22,23,24の溝底からタイヤ径方向外側へ1.6mmの地点を通って前記トレッド面のプロファイルラインに平行な仮想ラインLwよりも、タイヤ径方向内側に位置することが好ましい。
【0067】
従って、この空気入りタイヤ1は、トレッド部が摩耗寿命(摩耗末期)になっても、各センター陸部32,33,34のアンダートレッドゴム152がトレッド踏面に露出する事態を防止できる。
【0068】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_caと、少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cと、各ショルダー陸部31,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2とが、Ga_ce>Ga_s1、Ga_ce>Ga_s2、Ga_c>Ga_s1、Ga_c>Ga_s2の関係を有することが好ましい。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側センター陸部33におけるトレッド面15aの接地幅W_ceと、少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッド面15aの接地幅W_cと、各ショルダー陸部31,35におけるトレッド面15aの接地幅W_s1,W_s2とが、W_ce<W_s1、W_ce<W_s2、W_c<W_s1、W_c<W_s2の関係を有することが好ましい。
【0069】
従って、この空気入りタイヤ1は、アンダートレッドゴム152の平均ゲージにおいて、内側センター陸部33および少なくとも1つの外側センター陸部32,34を各ショルダー陸部31,35よりも厚くすることで、低燃費に繋がる転がり抵抗を低減し、乗り心地性能を向上できる。ただし、センター陸部32,33,34においてアンダートレッドゴム152の平均ゲージを厚くすると、陸部の剛性が下がり、直進安定性能の低下が懸念されるため、接地幅を比較的広くして剛性を確保した各ショルダー陸部31,35では、アンダートレッドゴム152の平均ゲージを比較的薄くして直進安定性能を確保する。その一方で、センター陸部32,33,34では、アンダートレッドゴム152の平均ゲージを比較的厚くして路面からの入力を低減することで乗り心地性能を確保する。この結果、この空気入りタイヤ1は、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上する効果を顕著に得ることができる。なお、0.9≦Ga_ce/Ga_s1≦1.5、0.9≦Ga_ce/Ga_s2≦1.5、1.3≦Ga_c/Ga_s1≦3.0 、1.3≦S_c/S_s2≦3.0、の関係を有し、かつ0.5≦W_ce/W_s1≦0.8、0.3≦W_ce/W_s2≦0.7、0.5≦W_c/W_s1≦0.8、0.7≦W_c/W_s2≦0.9の関係を有することで、直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗および乗り心地性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151は、溝底ゲージにおける最小ゲージGac_mが0.6mm以上であることが好ましい。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151は、最小ゲージGac_m位置においてキャップトレッドゴム151およびアンダートレッドゴム152の厚さを合計したトレッドゴム15のトータル溝底ゲージGat_mの40%以上であることが好ましい。
【0071】
従って、この空気入りタイヤ1は、キャップトレッドゴム151の溝底ゲージを確保することで、繰り返し歪みによる主溝21,22,23,24の溝底のクラック発生を抑制できる。なお、キャップトレッドゴム151の溝底ゲージにおける最小ゲージGac_mは、0.7mm以上あることが好ましく、主溝21,22,23,24の溝底のクラック発生をより抑制できる。
【0072】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151の60℃における損失正接Tacと、アンダートレッドゴム152の60℃における損失正接Tauとが、1.20≦Tac/Tau≦13.0の関係を有することが好ましい。
【0073】
即ち、この空気入りタイヤ1は、60℃における損失正接がキャップトレッドゴム151よりもアンダートレッドゴム152の方が小さい。従って、この空気入りタイヤ1は、60℃における損失正接の小さいアンダートレッドゴム152の平均ゲージを規定することで、低燃費に繋がる転がり抵抗の低減により寄与できる。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151の60℃における損失正接Tacが0.10以上であり、アンダートレッドゴム152の60℃における損失正接Tauが0.10未満であることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151のゴム硬さHscと、アンダートレッドゴム152のゴム硬さHsuが、HSc>HSuの関係を有することが好ましい。
【0075】
従って、この空気入りタイヤ1は、ゴム硬さの小さいアンダートレッドゴム152の平均ゲージを規定することで、低燃費に繋がる転がり抵抗の低減により寄与できる。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151のゴム硬さHscと、アンダートレッドゴム152のゴム硬さHsuとは、1.10≦HSc/HSu≦1.80の関係を有することが好ましい。また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、キャップトレッドゴム151のゴム硬さHscが60以上70以下の範囲にあり、アンダートレッドゴム152のゴム硬さHsuが50以上60以下の範囲にあることが好ましい。
【0076】
なお、
図6で示す例では、4本の主溝21,22,23,24で、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceに対し一方の外側センター陸部32におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cが大きく、かつ各ショルダー陸部31,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2が最も小さい形態を表している。また、
図7に示す例では、4本の主溝21,22,23,24で、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceに対し各外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cが大きく、かつ各ショルダー陸部31,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2が最も小さい形態を表している。また、
図8に示す例では、4本の主溝21,22,23,24で、一方のショルダー陸部31、一方の外側センター陸部32、内側センター陸部33、他方の外側センター陸部34、他方のショルダー陸部35の順でアンダートレッドゴム152の平均ゲージが大きい形態を表している。また、
図9に示す例では、3本の主溝21,22,23(24)で、内側センター陸部33(34)におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceに対し外側センター陸部32におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cが大きく、かつ各ショルダー陸部31,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2が最も小さい形態を表している。また、
図10に示す例では、3本の主溝21(22),23,24で、内側センター陸部33(32)におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceに対し外側センター陸部34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_cが大きく、かつ各ショルダー陸部31,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_s1,Ga_s2が最も小さい形態を表している。
【実施例】
【0077】
図11は、本実施形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0078】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、転がり抵抗性能、乗り心地性能、および直進安定性能に関する評価が行われた。また、この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15 91Hの試験タイヤがリムサイズ15×6Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤにJATMAの規定内圧(230kPa)が付与される。
【0079】
転がり抵抗性能に関する評価では、リム径1707[mm]のドラム試験機が用いられ、ISO28580に準拠して荷重4.8kN、空気圧230kPa、速度80km/hの条件にて試験タイヤの転がり抵抗係数が算出された。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど転がり抵抗が小さく好ましい。
【0080】
乗り心地性能に関する評価では、全輪に試験タイヤを装着した試験車両(国産ハイト系車両:ミニバン)で乾燥路面のテストコースを速度60km/h~100km/hで走行し、テストドライバーがレーチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行った。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど乗り心地性が高く好ましい。
【0081】
直進安定性能に関する評価では、上記試験車両で乾燥路面のテストコースを速度60km/h~100km/hで走行し、テストドライバーが直進時における安定性について官能評価を行った。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が99以上で大きいほど直進安定性が高く好ましい。
【0082】
実施例1~実施例8の試験タイヤは、
図1~
図3の構成を備え、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceと、他の少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_c(Ga_c1,Ga_c2)とが、Ga_ce<Ga_cの関係を有し、内側センター陸部33におけるトレッド面15aの接地幅W_ceと、少なくとも1つの外側センター陸部32,34におけるトレッド面15aの接地幅W_c(W_c1,W_c2)とが、W_ce>W_cの関係を有する。
【0083】
実施例9の試験タイヤは、
図1~
図3の構成において
図9を参照するように、外側センター陸部34を有しておらず、センター主溝22が1本であり、内側センター陸部33におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_ceと、外側センター陸部32におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージGa_c(Ga_c1)とが、Ga_ce<Ga_cの関係を有し、内側センター陸部33におけるトレッド面15aの接地幅W_ceと、外側センター陸部32におけるトレッド面15aの接地幅W_c(W_c1)とが、W_ce>W_cの関係を有する。
【0084】
従来例1の試験タイヤは、
図1~
図3の構成において、すべての陸部31~35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージが同一である。また、従来例2の試験タイヤは、
図1~
図3の構成において
図9を参照するように、外側センター陸部34を有しておらず、センター主溝22が1本であり、すべての陸部31,32,33,35におけるアンダートレッドゴム152の平均ゲージが同一である。
【0085】
なお、溝面積比は、大>中>小の関係で表し、各従来例や比較例や各実施例において大=大、中=中、小=小の関係となる。
【0086】
試験結果に示すように、実施例1~実施例8の試験タイヤは、従来例1に対して直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗性能および乗り心地性能を向上できることが分かる。試験結果に示すように、実施例9の試験タイヤは、従来例2に対して直進安定性能を確保しつつ、転がり抵抗性能および乗り心地性能を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
1 空気入りタイヤ
13 カーカス層
141,142 交差ベルト
15 トレッドゴム
15a トレッド面
151 キャップトレッドゴム
152 アンダートレッドゴム
21,24 ショルダー主溝
22,23 センター主溝
31,35 ショルダー陸部
32,34 外側センター陸部
33 内側センター陸部