(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ブローピン及び成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/60 20060101AFI20240306BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B29C49/60
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2019236128
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 良太
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 秀治
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-031397(JP,B1)
【文献】実開平03-124822(JP,U)
【文献】特開2000-000883(JP,A)
【文献】特開2013-203413(JP,A)
【文献】米国特許第5795598(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気排出路を備えるリング部を有
し、前記リング部の上方にカットリングを備えることを特徴とするブローピン。
【請求項2】
前記空気排出路は、一端が前記リング部外周に開口し、他端が前記リング部の外側に開口することを特徴とする請求項1に記載のブローピン。
【請求項3】
前記空気排出路は、前記リング部の下面に所定間隔で放射状に形成される横空気排出溝を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブローピン。
【請求項4】
前記空気排出路は、前記横空気排出溝と接続して中央孔部の内周面に軸方向に沿って形成される縦空気排出溝を有することを特徴とする請求項3に記載のブローピン。
【請求項5】
パリソンを金型で挟み込み、前記パリソンの上端部を切断して開口する型締工程と、
前記金型の環状突部との間で前記パリソンを押圧するリング部を備えるブローピンを前記パリソンの前記上端部から挿入し、前記パリソンと前記リング部の外周との間に形成される空気溜まりの空気を、前記リング部に形成される空気排出路により前記空気溜まり以外に排出するブローピン挿入工程と、
前記ブローピンの降下により、前記ブローピンのカットリング下面と前記金型上面とによって前記パリソンの上方をカットすると共に容器の口部を形成する口部形成工程と、
を有することを特徴とする成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器等のブロー成形に用いられるブローピンと、該ブローピンを用いたブロー成形の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押出し成形されたパリソンから容器等を成形するブロー成形が行われている。特許文献1には、カットリングを備えるブローピンを用いて、口部を備える容器のブロー成形が開示される。このような容器には、特許文献2で示すように、プルリングが形成される栓部材を口部に打栓した容器もある。このような容器は、口部の下にくびれ部を形成して、該くびれ部の下側に栓部材のアンダーカット部を乗り越え嵌合させて栓部材を係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5970906号公報
【文献】特開2018-122896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の容器のように、くびれ部が形成される場合、金型には、くびれ部を形成するための環状突部が設けられる。そして、ブローピンは、環状突部との間で樹脂材料(パリソン)を挟み込んで該樹脂材料を押圧する部位(多くはカットリングに形成される)を有する。しかしながら、ブローピンを口部に挿入する際、パリソンとブローピン(ブローピン本体やカットリング)との間に閉塞された空間が形成されることがある。すると、ブローピンの挿入の進行と共に当該閉塞された空間が徐々に小さくなり、当該閉塞された空間の空気が樹脂材料を圧迫して、成形品に凹部が形成される等の成形不良を引き起こす場合があった。
【0005】
本発明は、成形不良を低減したブローピン及び成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブローピンは、空気排出路を備えるリング部を有し、前記リング部の上方にカットリングを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の成形方法は、パリソンを金型で挟み込み、パリソンの上端部を切断して開口する型締工程と、前記金型の環状突部との間でパリソンを押圧するリング部備えるブローピンを前記上端部から挿入し、前記パリソンと前記リング部の外周との間に形成される空間の空気を、前記リング部に形成される該リング部の外周から該リング部の外側に空気を排出する空気排出路を通じて排出するブローピン挿入工程と、前記ブローピンの降下により、前記ブローピンのカットリング下面と前記金型上面とによって前記パリソンの上方をカットすると共に容器の口部を形成する口部形成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形不良を低減したブローピン及び成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形方法で成形した容器の口部を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るブローピンを示し、(a)はブローピンの断面図を示し、(b)は(a)のA-A端面で示すリング部の下面を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における成形方法を示す図であり、パリソンを金型で挟み込んだ状態を示す要部拡大端面図である。
【
図4】本発明の実施形態における成形方法を示す図であり、金型にブローピンを挿入する過程を示す要部拡大端面図である。
【
図5】本発明の実施形態における成形方法を示す図であり、ブローピンの金型への挿入が完了した状態を示す要部拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は容器1の口部10を拡大して示す断面模式図である。容器1は、プルリング21を有する中栓20が打設され、外キャップ30が着脱可能に形成される。なお、中栓20、外キャップ30は二点鎖線で示す。口部10は、上端部に円筒状の外壁部11が形成される。外壁部11の内周側は開口部11aとされる。外壁部11は、接続壁部12と連続して接続される。接続壁部12は、内周側が縮径するよう断面視テーパ状に形成される。接続壁部12は、首壁部13と連続して接続する。首壁部13は、内周側を縮径開口部13aとし、外周には雄ねじ部13bが形成される。首壁部13は、全体を図示しない容器の収納部18と連続して接続する。ここで、接続壁部12から首壁部13に亘る外周は、くびれ部15が形成される。
【0011】
中栓20は、口部10の外壁部11の内外から挟み込むように形成される二重筒状壁部22が形成される。二重筒状壁部22の外側の壁部の下端には、径方向内側に環状(又は間欠する環状)に突出するアンダーカット部23が形成される。このアンダーカット部23が、外壁部11の外周からくびれ部15に落ち込むようにしてくびれ部15と嵌合することにより、中栓20は口部10に固定される。二重筒状壁部22の内側の壁部には、プルリング21が形成される栓板24が形成される。二重筒状壁部22の内側の壁部及び栓板24は、首壁部13の内周面13cと密着する栓ガイド筒25と接続される。また、外キャップ30は、雌ねじ部31を有し、口部10の首壁部13の雄ねじ部13bと螺合して容器1に取り付けられる。
【0012】
容器1は、ブロー成形により形成される。この成形手順の概略を説明すると、先ず、熱可塑性樹脂を押出機から筒状に押し出したパリソンを金型で挟み込む。パリソン上端はカットされ、パリソン下端は金型の喰い切り歯によって喰い切る。そして、ブローピンを金型に差し込み、ブローピンから圧縮気体をパリソンに吹き込み、パリソンを膨らませ、パリソンを成形する。パリソンの成形終了後、金型を開いて製品である容器1を取り出す。
【0013】
図2(a)は、容器1のブロー成形で用いるブローピン50の断面図である。ブローピン50は、略筒状のブローピン本体51を備える。ブローピン本体51の外形は、容器1の形状等に適合させて適宜の形状で形成される。ブローピン本体51には、ブローピン本体51から径方向外方に突出するリング部52が設けられる。リング部52は、ブローピン本体51や後述のカットリング53とは別部材として形成してもよいし、ブローピン本体51と一体としてもよい。リング部52が別部材の場合には、例えばリング部52の内周面に、ブローピン本体51と螺合するねじ部を形成してブローピン本体51に固定することができる。リング部52は、リング部52の外周からリング部52の外側に空気を排出する空気排出路52aを有する。本実施形態のリング部52には、周方向等間隔に4箇所の空気排出路52aが形成される。なお、空気排出路52aは、4箇所に限定されることなく、1箇所でもよいし、4箇所以外の複数個所に設けてもよい。
【0014】
空気排出路52aは、リング部52の径方向に形成される横空気排出溝52a1を有する。横空気排出溝52a1は、リング部52の下面に放射状に所定間隔の等間隔で形成される凹溝である。本実施形態においては、リング部52は、下面縁がC面取りされて、当該C面取り部分に横空気排出溝52a1が開口される。そして、リング部52の中央孔部の内周面には、軸方向に沿って形成される縦空気排出溝52a2が形成される。縦空気排出溝52a2は、凹溝に形成されて、一端は横空気排出溝52a1と接続され、他端はリング部52の上面側に開口される。
【0015】
なお、空気排出路52aの横空気排出溝52a1は、パリソンを形成する樹脂が入り込まない程度の小さい穴とすると好適である。例えば、横空気排出溝52a1の大きさは、幅3mm、高さ(リング部52の底面からの高さ)0.03mmとすることができる。このように、横空気排出溝52a1は、高さよりも幅を大きくすることにより、樹脂が横空気排出溝52a1を覆ってしまい空気を逃がすことができなくなることを防止することができる。
【0016】
リング部52の上方のブローピン本体51には、カットリング53が設けられる。カットリング53は、ブローピン本体51に対して遊嵌して軸方向に移動自在とされる。なお、
図2(a)ではリング部52とカットリング53は離間した状態が示されている。カットリング53は、ブローピン本体51から径方向に突出するよう間欠的に設けられる規制突起51aにより上方への移動が規制される。カットリング53のブローピン本体51への取付けは、カットリング53の内周面に、規制突起51aを通過可能とする切欠きを設け、軸回りに回転することにより規制突起51aで規制可能な状態とすることもできる。また、ブローピン本体51は、螺合構造を用いて上下に分割可能に形成して、リング部52やカットリング53を取り付け可能に形成してもよい。
【0017】
次に、ブローピン50を用いたブロー成形について説明する。なお、金型80は、
図3~5において、左右に分割される分割型である。
図3~5に示すように、金型80には、キャビティ85の中央上部を容器1の口部10に対応する部位として、該部位に、くびれ部15を形成するための環状突部81が形成される。環状突部81は、断面視山形状に形成される。環状突部81の下方には、首壁部13の雄ねじ部13bを形成するためのねじ部82が形成される。
【0018】
ブローピン50を用いたブロー成形は、先ず、
図3に示すように、型締工程として、パリソン60を金型80により挟み込んで、パリソン60の上端部及び下端部を金型80の図示しない喰い切刃によりカットする。
【0019】
次に、
図4に示すように、ブローピン挿入工程として、ブローピン50を金型80のパリソン60に挿入する。このとき、リング部52の外周とパリソン60が接している部位Pにおけるパリソン60は、ブローピン50に熱を奪われて冷却されるので、他の部位よりも早く硬化し始める。一方、金型80の環状突部81とブローピン50の外周で挟まれるパリソン60の部位Qも同様に硬化し始める。すると、ブローピン50(リング部52)外周とパリソン60とで囲まれた空間S(空気溜まり)が形成される。空間Sは、ブローピン50の下降に伴って小さくなる。すると、空間Sの空気は、
図4の白抜きの矢印に示すように、リング部52の空気排出路52aを通って空間Sの外側(本実施形態においてはリング部52の外周側からリング部52の上面側)に排出される。リング部52の上面側に排出された空気は、リング部52とカットリング53との間を通ってパリソン60の外部に排出される。なお、カットリング53の内径にも隙間が形成されていれば、該隙間を介しても外部に空間Sの空気が排出される。
【0020】
なお、パリソン60と金型80の環状突部81との間の空間Uの空気は、金型内に設けた空気排出孔(不図示)から外部に排出される。
【0021】
このように、従来は空気溜まりとされる空間Sの空気が圧縮されることにより、容器1の口部10に凹みが形成されてしまい成形不良が生じる場合があったが、本発明に係るブローピン50を用いることにより空間Sの空気は空気溜まり以外の外部に排出されるので、容器1の成形不良が低減される。
【0022】
そして、
図5に示すように、ブローピン50が完全に下降し終えると、カットリング53の下面と金型80の上面が当接することにより、口部10の天面より上方のパリソン60がカットされると共に、金型80に倣って容器1の口部10が形成される。その後、ブローピン50を介して圧縮空気が充填されて、キャビティ85に倣って樹脂材料(パリソン60)が成形される。成形後、金型80が開く。このとき、ブローピン50のブローピン本体51が環状突部81に対応する箇所(容器1における首壁部13の内周面13c)からリング部52までの間の樹脂がブローピン50に吸着して、ブローピン50は成形後の容器1を保持することができる。その後、図示しない把持手段により容器1を取り出す。このように、リング部52は、型開き後におけるブローピン50による容器1の保持にも寄与している。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、適宜変更して実施することができる。例えば、本実施形態の容器1は、外キャップ30と中栓20が別体として形成したが、一体とすることもできる。また、本実施形態では容器1のブロー成形について説明したが、これに限られず、他の製品についても実施することができる。また、本実施形態における空気排出路52aは、凹溝状の横空気排出溝52a1と縦空気排出溝52a2により形成されるが、これに限られず、一端が成形時の空気溜まりに対して開口され、他端が該空気溜まり以外に開口されていればよい。換言すれば、本発明は、本実施形態における首壁部13の内周面13cの上側に、内周面13cよりも拡径した部分(接続壁部12、外壁部11)を備えるブロー成形品について実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 容器 10 口部
11 外壁部 11a 開口部
12 接続壁部 13 首壁部
13a 縮径開口部 13b 雄ねじ部
13c 内周面
15 くびれ部 18 収納部
20 中栓 21 プルリング
22 二重筒状壁部 23 アンダーカット部
24 栓板 25 栓ガイド筒
30 外キャップ 31 雌ねじ部
50 ブローピン 51 ブローピン本体
51a 規制突起 52 リング部
52a 空気排出路 52a1 横空気排出溝
52a2 縦空気排出溝 53 カットリング
60 パリソン 80 金型
81 環状突部 82 ねじ部
85 キャビティ