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特許7448788バーリング加工材の製造方法、バーリング加工用中子及びバーリング加工装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】バーリング加工材の製造方法、バーリング加工用中子及びバーリング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20240306BHJP
   B21D 37/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D37/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020044667
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142561
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】田村 翔平
(72)【発明者】
【氏名】有田 英弘
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022517(JP,A)
【文献】米国特許第04679289(US,A)
【文献】再公表特許第2015/115514(JP,A1)
【文献】特開2012-024768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
B21D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の内部に中子を挿入する第1工程と、
前記中子が挿入された状態で前記部材に対してバーリング加工を施してバーリング加工材を得る第2工程と、
前記バーリング加工材から前記中子を抜き出す第3工程と、
を備える、バーリング加工材の製造方法であって、
前記部材が、断面形状において、互いに平行な第1壁部及び第2壁部を有し、
前記中子が、第1中子と、第2中子と、前記第1中子及び前記第2中子の間に設けられた第3中子とを備え、前記第1中子が前記第1壁部と接触する第1接触面を有し、前記第2中子が前記第2壁部と接触する第2接触面を有し、前記第3中子が、前記第1中子と接触する第3接触面と、前記第2中子と接触する第4接触面とを有し、前記第1接触面と前記第2接触面とが互いに平行であり、前記第3接触面及び前記第4接触面が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行であり、前記第1中子が第1孔を有し、前記第2中子が第2孔を有し、前記第1孔と前記第2孔とが中心軸を共有しており、前記中心軸が前記第1接触面及び前記第2接触面に対して垂直であり、前記第3中子が前記第1中子及び前記第2中子に対して着脱できるように構成されており、前記中子が前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外すことで前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めることができるように構成されており、
前記第1工程において、前記第1接触面を前記第1壁部に接触させ、且つ、前記第2接触面を前記第2壁部に接触させながら、前記部材の外部から前記第1壁部及び前記第2壁部の間へと前記中子を挿入し、
前記第2工程において、前記第1孔を利用して前記第1壁部に第1バーリング加工孔を設け、前記第2孔を利用して前記第2壁部に第2バーリング加工孔を設け、ここで、前記第1バーリング加工孔は前記第2壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、前記第2バーリング加工孔は前記第1壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、
前記第3工程において、前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外して前記第3中子を前記バーリング加工材の外部に抜き出し、前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めて、前記第1バーリング加工孔の前記立ち上がり部と前記第2バーリング加工孔の前記立ち上がり部との間を通り抜けるようにして前記第1中子及び前記第2中子を前記バーリング加工材の外部へと抜き出す、
バーリング加工材の製造方法。
【請求項2】
前記部材の内部に前記中子を挿入する前において、前記第1接触面と前記第2接触面との距離Xが前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yよりも長く、
前記第1工程において、前記第1壁部及び前記第2壁部の間へと前記中子を挿入することで、前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yを拡大させる、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1中子と前記第3中子との間に第1位置決め部が設けられており、
前記第2中子と前記第3中子との間に第2位置決め部が設けられている、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
互いに平行な第1壁部及び第2壁部を有する部材に対してバーリング加工を施す際に前記第1壁部及び前記第2壁部の間に挿入されるように構成された、バーリング加工用中子であって、
第1中子と、第2中子と、前記第1中子及び前記第2中子の間に設けられた第3中子とを備え、
前記第1中子が前記第1壁部と接触する第1接触面を有し、前記第2中子が前記第2壁部と接触する第2接触面を有し、前記第3中子が、前記第1中子と接触する第3接触面と、前記第2中子と接触する第4接触面とを有し、前記第3接触面及び前記第4接触面が互いに平行であり、
前記第1中子が第1孔を有し、前記第2中子が第2孔を有し、前記第1孔と前記第2孔とが中心軸を共有しており、前記中心軸が前記第1接触面及び前記第2接触面に対して垂直であり、
前記第3中子が前記第1中子及び前記第2中子に対して着脱できるように構成されており、
前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外すことで前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めることができるように構成されており、
前記第1壁部及び前記第2壁部の間に前記バーリング加工用中子を挿入する際、前記第1中子の前記第1接触面が前記第1壁部に接触し、且つ、前記第2中子の前記第2接触面が前記第2壁部に接触するように構成されている、
バーリング加工用中子。
【請求項5】
前記部材の内部に前記バーリング加工用中子を挿入する前において、前記第1接触面と前記第2接触面との距離Xが前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yよりも長い、
請求項4に記載のバーリング加工用中子。
【請求項6】
前記第1中子と前記第3中子との間に第1位置決め部が設けられており、
前記第2中子と前記第3中子との間に第2位置決め部が設けられている、
請求項4又は5に記載のバーリング加工用中子。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のバーリング加工用中子を備えるバーリング加工装置。
【請求項8】
前記第3中子に接続された第1シリンダーを備え、
前記第1シリンダーによって前記第3中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行な方向に移動できるように構成されている、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1中子及び前記第2中子に接続された第2シリンダーを備え、
前記第2シリンダーによって前記第1中子及び前記第2中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行な方向に移動できるように構成されている、
請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1中子に接続された第3シリンダー及び前記第2中子に接続された第4シリンダーを備え、
前記第3シリンダー及び前記第4シリンダーによって、前記第1中子及び前記第2中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と垂直な方向に移動できるように構成されている、
請求項7~9のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はバーリング加工材の製造方法、バーリング加工用中子及びバーリング加工装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4に開示されているように、部材の内部に金型としての保持材を挿入したうえでバーリング加工を行う技術が知られている。図1に示されるように、従来技術においては、バーリング加工を行う前に部材の内部に保持材を配置しておき、当該保持材に対して先細り型(楔型)の駆動材を挿入して保持材に押し付け、部材の内壁に向かって保持材を移動させて、部材の内壁に保持材を当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-039716号公報
【文献】国際公開第2015/115514号
【文献】特開2016-022517号公報
【文献】特開2012-024768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のように、部材の内部に予め配置された保持材に対して先細り型の駆動材を挿入して、駆動材を保持材に押し付ける場合、駆動材の先細り部の折れが懸念される。また、バーリング加工を施すべき部材の形状によっては、先細り型の駆動材に十分な傾斜角を確保できない場合がある。この場合、保持材に駆動材を挿入して押し付けたとしても、部材の内壁に向かって保持材を適切に移動させることができず、部材の内壁に保持材を適切に当接させることができない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
部材の内部に中子を挿入する第1工程と、前記中子が挿入された状態で前記部材に対してバーリング加工を施してバーリング加工材を得る第2工程と、前記バーリング加工材から前記中子を抜き出す第3工程と、を備える、バーリング加工材の製造方法であって、前記部材が、断面形状において、互いに平行な第1壁部及び第2壁部を有し、前記中子が、第1中子と、第2中子と、前記第1中子及び前記第2中子の間に設けられた第3中子とを備え、前記第1中子が前記第1壁部と接触する第1接触面を有し、前記第2中子が前記第2壁部と接触する第2接触面を有し、前記第3中子が、前記第1中子と接触する第3接触面と、前記第2中子と接触する第4接触面とを有し、前記第1接触面と前記第2接触面とが互いに平行であり、前記第3接触面及び前記第4接触面が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行であり、前記第1中子が第1孔を有し、前記第2中子が第2孔を有し、前記第1孔と前記第2孔とが中心軸を共有しており、前記中心軸が前記第1接触面及び前記第2接触面に対して垂直であり、前記第3中子が前記第1中子及び前記第2中子に対して着脱できるように構成されており、前記中子が前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外すことで前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めることができるように構成されており、前記第1工程において、前記第1接触面を前記第1壁部に接触させ、且つ、前記第2接触面を前記第2壁部に接触させながら、前記部材の外部から前記第1壁部及び前記第2壁部の間へと前記中子を挿入し、前記第2工程において、前記第1孔を利用して前記第1壁部に第1バーリング加工孔を設け、前記第2孔を利用して前記第2壁部に第2バーリング加工孔を設け、ここで、前記第1バーリング加工孔は前記第2壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、前記第2バーリング加工孔は前記第1壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、前記第3工程において、前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外して前記第3中子を前記バーリング加工材の外部に抜き出し、前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めて、前記第1バーリング加工孔の前記立ち上がり部と前記第2バーリング加工孔の前記立ち上がり部との間を通り抜けるようにして前記第1中子及び前記第2中子を前記バーリング加工材の外部へと抜き出す、バーリング加工材の製造方法
を開示する。
【0006】
本開示の製造方法においては、前記部材の内部に前記中子を挿入する前において、前記第1接触面と前記第2接触面との距離Xが前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yよりも長くてもよく、前記第1工程において、前記第1壁部及び前記第2壁部の間へと前記中子を挿入することで、前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yを拡大させてもよい。
【0007】
本開示の製造方法においては、前記第1中子と前記第3中子との間に第1位置決め部が設けられていてもよく、前記第2中子と前記第3中子との間に第2位置決め部が設けられていてもよい。
【0008】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
互いに平行な第1壁部及び第2壁部を有する部材に対してバーリング加工を施す際に前記第1壁部及び前記第2壁部の間に挿入されるように構成された、バーリング加工用中子であって、第1中子と、第2中子と、前記第1中子及び前記第2中子の間に設けられた第3中子とを備え、前記第1中子が前記第1壁部と接触する第1接触面を有し、前記第2中子が前記第2壁部と接触する第2接触面を有し、前記第3中子が、前記第1中子と接触する第3接触面と、前記第2中子と接触する第4接触面とを有し、前記第1接触面と前記第2接触面とが互いに平行であり、前記第3接触面及び前記第4接触面が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行であり、前記第1中子が第1孔を有し、前記第2中子が第2孔を有し、前記第1孔と前記第2孔とが中心軸を共有しており、前記中心軸が前記第1接触面及び前記第2接触面に対して垂直であり、前記第3中子が前記第1中子及び前記第2中子に対して着脱できるように構成されており、前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外すことで前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めることができるように構成されており、前記第1壁部及び前記第2壁部の間に前記中子を挿入する際、前記中子の前記第1接触面が前記第1壁部に接触し、且つ、前記第2接触面が前記第2壁部に接触するように構成されている、バーリング加工用中子
を開示する。
【0009】
本開示の中子においては、前記部材の内部に前記中子を挿入する前において、前記第1接触面と前記第2接触面との距離Xが前記第1壁部と前記第2壁部との距離Yよりも長くてもよい。
【0010】
本開示の中子においては、前記第1中子と前記第3中子との間に第1位置決め部が設けられていてもよく、前記第2中子と前記第3中子との間に第2位置決め部が設けられていてもよい。
【0011】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、上記本開示の中子を備えるバーリング加工装置を開示する。
【0012】
本開示の装置は、前記第3中子に接続された第1シリンダーを備えてもよく、前記第1シリンダーによって前記第3中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行な方向に移動できるように構成されていてもよい。
【0013】
本開示の装置は、前記第1中子及び前記第2中子に接続された第2シリンダーを備えてもよく、前記第2シリンダーによって前記第1中子及び前記第2中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と平行な方向に移動できるように構成されていてもよい。
【0014】
本開示の装置は、前記第1中子に接続された第3シリンダー及び前記第2中子に接続された第4シリンダーを備えてもよく、前記第3シリンダー及び前記第4シリンダーによって、前記第1中子及び前記第2中子が前記第1接触面及び前記第2接触面と垂直な方向に移動できるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の技術によれば、部材にバーリング加工を施すにあたって部材の内部に中子を挿入する際、中子が折れ難い。また、中子と部材の内壁との間に隙間が生じ難く、部材の内壁に中子を適切に当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術を説明するための図である。
図2A】バーリング加工材の製造方法の第1工程を説明するための図である。部材10及び中子20の断面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図2B】バーリング加工材の製造方法の第1工程を説明するための図である。部材10及び中子20の平面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図3A】バーリング加工材の製造方法の第2工程を説明するための図である。部材10、中子20及びバーリング加工材30の断面構成を概略的に示している。
図3B】バーリング加工材の製造方法の第2工程を説明するための図である。部材10、中子20及びバーリング加工材30の平面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図4A】バーリング加工材の製造方法の第3工程を説明するための図である。中子20及びバーリング加工材30の断面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図4B】バーリング加工材の製造方法の第3工程を説明するための図である。中子20及びバーリング加工材30の平面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図5A】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の外観構成を概略的に示している。
図5B】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の平面構成を概略的に示している。
図5C】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の外観構成を概略的に示している。
図6A】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の外観構成を概略的に示している。
図6B】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の外観構成を概略的に示している。
図7A】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の断面構成を概略的に示している。
図7B】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の断面構成を概略的に示している。
図7C】部材の形状の一例について説明するための図である。部材の断面構成を概略的に示している。
図8A】中子の形状の一例について説明するための図である。中子の断面構成を概略的に示している。
図8B】中子の形状の一例について説明するための図である。中子の平面構成を概略的に示している。
図9A】中子の形状の一例について説明するための図である。中子の断面構成を概略的に示している。
図9B】中子の形状の一例について説明するための図である。中子の平面構成を概略的に示している。
図10A】中子に設けられた位置決め部の一例について説明するための図である。中子の外観構成を概略的に示している。
図10B】中子に設けられた位置決め部の一例について説明するための図である。中子の断面構成を概略的に示している。
図11】本開示の中子の優位性を説明するための図である。
図12】第1工程の一例について説明するための図である。部材及び中子の断面構成を概略的に示している。
図13A】バーリング加工装置の一例について説明するための図である。装置の断面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図13B】バーリング加工装置の一例について説明するための図である。装置の断面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
図13C】バーリング加工装置の一例について説明するための図である。装置の断面構成を概略的に示している。説明の便宜上、外金型の存在を省略して示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.バーリング加工材の製造方法
図2~4に示されるバーリング加工材の製造方法は、部材10の内部に中子20を挿入する第1工程と、中子20が挿入された状態で部材10に対してバーリング加工を施してバーリング加工材30を得る第2工程と、バーリング加工材30から中子20を抜き出す第3工程と、を備える。
【0018】
図2~4に示されるように、部材10は、断面形状において、互いに平行な第1壁部1及び第2壁部2を有する。
【0019】
図2~4に示されるように、中子20は、第1中子21と、第2中子22と、第1中子21及び第2中子22の間に設けられた第3中子23とを備える。第1中子21は第1壁部1と接触する第1接触面21aを有する。第2中子22は第2壁部2と接触する第2接触面22aを有する。第3中子23は、第1中子21と接触する第3接触面23aと、第2中子と接触する第4接触面23bとを有する。第1接触面21aと第2接触面22aとは互いに平行である。第3接触面23a及び第4接触面23bは第1接触面21a及び第2接触面22aと平行である。第1中子21は第1孔21bを有する。第2中子22は第2孔22bを有する。第1孔21bと第2孔22bとは中心軸Aを共有している。中心軸Aは第1接触面21a及び第2接触面22aに対して垂直である。第3中子23は第1中子21及び第2中子22に対して着脱できるように構成されている。中子20は、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外すことで第1接触面21aと第2接触面22aとの距離を狭めることができるように構成されている。
【0020】
図2A及びBに示されるように、第1工程においては、第1接触面21aを第1壁部1に接触させ、且つ、第2接触面22aを第2壁部2に接触させながら、部材10の外部から第1壁部1及び第2壁部2の間へと中子20を挿入する。
【0021】
図3A及びBに示されるように、第2工程においては、第1孔21bを利用して第1壁部1に第1バーリング加工孔11aを設け、第2孔22bを利用して第2壁部2に第2バーリング加工孔12aを設ける。ここで、第1バーリング加工孔11aは第2壁部2に向かって伸びる立ち上がり部11bを有し、第2バーリング加工孔12aは第1壁部1に向かって伸びる立ち上がり部12bを有する。
【0022】
図4A及びBに示されるように、第3工程においては、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外して第3中子23をバーリング加工材30の外部に抜き出し、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離を狭めて、第1バーリング加工孔11aの立ち上がり部11bと第2バーリング加工孔12aの立ち上がり部12bとの間を通り抜けるようにして第1中子21及び第2中子22をバーリング加工材30の外部へと抜き出す。
【0023】
1.1 部材
部材10は、断面形状において、互いに平行な第1壁部1及び第2壁部2を有する。本願において「平行」とは、完全な平行に限定されるものではなく、実質的に平行であればよい。すなわち、第1壁部1と第2壁部2とが完全な平行ではない場合においても、工業生産上許容される誤差の範囲内であれば平行とみなす。具体的には、第1壁部1と第2壁部2とのなす角が0°±1°の場合、当該第1壁部1と第2壁部2とは平行であるものとみなす。後述の中子20における「平行」についても同様である。尚、部材10は、中子20を挿入する際、或いは、挿入後、撓み等が生じてもよい。
【0024】
部材10において、第1壁部1及び第2壁部2は、各々の壁面全体があらゆる方向において互いに平行である必要はなく、断面形状において互いに平行であればよい。断面形状において互いに平行であれば、平行な壁部1、2に沿って中子20を挿入することができる。例えば、部材10が円筒状等の開口形状が曲面形状である場合においても、断面形状において第1壁部1及び第2壁部2を認定でき、且つ、断面形状において当該第1壁部1及び第2壁部2が互いに平行となり得る。
【0025】
部材10は、外部から第1壁部1及び第2壁部2の間へと中子20を挿入可能な構造を有する。例えば、図2Aに示されるように、部材10は、外部から第1壁部1及び第2壁部2の間へと中子20を挿入することができるように、第1壁部1及び第2壁部2の端部に開口部3を有していてもよい。
【0026】
部材10は一つの部材からなっていてもよいし、複数の部材を組み合わせて一つの部材10を構成してもよい。部材10は、継ぎ目のない部材であってもよいし、継ぎ目のある部材であってもよい。例えば、一枚の板の一端と他端とを突き合せて(或いは、重ね合わせて)接合された継ぎ目のある部材であってもよいし、コ字状(U字状)の板からなる部材であってもよいし、コ字状(U字状)の板同士を突き合せて(或いは、重ね合わせて)接合した継ぎ目のある部材であってもよいし、これら以外の形状や構造を有する部材であってもよい。以下、部材10の一例を示すが、本開示の製造方法において部材10はこれらに限定されるものではない。
【0027】
図5に部材10の形状の一例を示す。図5に示されるように、部材10は、互いに対向する第1壁部1及び第2壁部2と、第1壁部1及び第2壁部2を連結する側壁部4、5とを備えていてもよい。また、部材10は、第1壁部1、第2壁部2及び側壁部4、5の一端部及び他端部の双方に開口部3が設けられていてもよい。すなわち、部材10は管状(中空状)部材であってもよい。開口部3の開口形状は特に限定されず、図5に示されるような四角形状であってもよいし、或いは、四角形以外の多角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。図5に示されるように、第1壁部1及び第2壁部2は互いに平行である。一方、側壁部4と側壁部5とは、図5Aに示されるように互いに平行であってもよいし、図5B及び図5Cに示されるように平行でなくてもよい。すなわち、図5Bに示されるように、平面形状において、側壁部4、5が平行でなくてもよいし、或いは、図5Cに示されるように、開口形状において側壁部4、5が平行でなくてもよい。
【0028】
図5に示される部材10において、2つの開口部3のうちの一方が閉じられていてもよい。或いは、図5に示される部材10において、開口部3に加えて、側壁部4、5にさらに開口部(不図示)が設けられていてもよい。
【0029】
図6に部材10の形状のその他の例を示す。図6Aに示されるように、部材10は、互いに対向する第1壁部1及び第2壁部2と、第1壁部1及び第2壁部2を連結する側壁部4とを備えていてもよい。この場合、第1壁部1及び第2壁部2は側壁部4のみによって所定の間隔にて保持される。或いは、図6Bに示されるように、部材10は、互いに対向する第1壁部1及び第2壁部2と、第1壁部1及び第2壁部2を連結する側壁部4、5とを備え、側壁部4、5が互いに連結されていてもよい。図6Bに示す部材10に中子20を挿入する場合、中子20を部材10の幅方向(図6Bの紙面奥手前方向)に挿入してもよいし、長手方向(図6Bの紙面左右方向)に挿入してもよいし、幅方向及び長手方向と交差する方向(斜め方向)に挿入してもよい。図6A及びBに示される部材10においても、第1壁部1及び第2壁部2は互いに平行である。
【0030】
図7に部材10の形状のその他の例を示す。図7A~Cに示されるように、部材10は、互いに対向する壁部間の距離が拡大した拡大部8や、互いに対向する壁部間の距離が縮小した縮小部9を有していてもよい。或いは、部材10は、断面形状において、第1壁部1及び第2壁部2以外の部分が曲面により構成されていてもよい。このような場合においても、部材10は、少なくともバーリング加工を施す部分において互いに平行な第1壁部1及び第2壁部2を備え、中子20を、第1壁部1及び第2壁部2へと接触させながら、第1壁部1及び第2壁部2の間に挿入することができる。
【0031】
図2及び3に示されるように、部材10は、中子20が挿入される前において、第1壁部1に第1下孔1aを有していてもよく、第2壁部2に第2下孔2aを有していてもよく、第1下孔1aと第2下孔2aとが中心軸を共有していてもよく、中心軸は第1壁部1及び第2壁部2に対して垂直であってもよい。或いは、中子20を部材10の内部に挿入した後で、部材10に対して下孔1a、2aを設けてもよい。下孔1a、2aを設ける方法は特に限定されず、例えば、パンチを用いて第1壁部1や第2壁部2を打ち抜く方法が挙げられる。下孔1a、2aの大きさや形状については特に限定されるものではなく、バーリング加工孔11a、12aの形状や立ち上がり部11b、12bの高さ等を考慮して適宜決定されればよい。
【0032】
図2に示されるように、部材10においては第1壁部1と第2壁部2との間に所定の間隔が設けられる。部材10において、第1壁部1と第2壁部2との距離Yの具体的な値は特に限定されるものではない。本開示の技術は、距離Yが小さい場合でも大きい場合でも効果を発揮するが、特に距離Yが小さい場合により顕著な効果を発揮するものと考えられる。すなわち、従来の先細り型の駆動材を用いる場合、距離Yが小さいと、当該駆動材に十分な傾斜角を確保できない。そのため、保持材に駆動材を挿入して押し付けたとしても、部材の内壁に向かって保持材を適切に移動させることができず、部材の内壁に対して保持材を適切に当接できない虞がある。これに対し、本開示の技術においては、部材10の外部から内部へと中子20を挿入する際、当該中子20を部材10の内壁に接触させつつ摺動させることから、中子20を部材10の内壁に適切に当接させることができる。
【0033】
部材10の第1壁部1及び第2壁部2において、バーリング加工が施される位置は特に限定されるものではない。本開示の製造方法は、中子20が挿入される第1壁部1及び第2壁部2の端部(開口部)からバーリング加工される位置までの距離が大きい場合(部材10の内部の奥深い位置にバーリング加工を施す場合)でも、当該距離が小さい場合でも顕著な効果を発揮する。特に、部材10の内部の奥深い位置にバーリング加工を施す場合に、より顕著な効果を発揮するものと考えられる。すなわち、従来技術においては、部材10の内部の奥深い位置にバーリング加工を施す場合、保持材を適切な位置に配置できない虞があるほか、駆動材に十分な傾斜角を確保できない虞がある。そのため、保持材に駆動材を挿入して押し付けたとしても、部材の内壁に向かって保持材を適切に移動させることができず、部材の内壁に対して保持材を適切に当接できない虞がある。これに対し、本開示の技術においては、部材10の外部から内部へと中子20を挿入する際、当該中子20を部材10の内壁に接触させつつ摺動させることから、バーリング加工の位置によらず、中子20を部材10の内壁に適切に当接させることができる。
【0034】
部材10はバーリング加工可能な材質からなる。例えば、部材10は金属材であってもよいし、鋼材であってもよい。第1壁部1及び第2壁部2の厚み(厚みT1及びT2、図12参照)は特に限定されるものではない。
【0035】
1.2 中子
中子20は、第1中子21と、第2中子22と、第1中子21及び第2中子22の間に設けられた第3中子23とを備える。
【0036】
図2~4に示されるように、第1中子21は第1壁部1と接触する第1接触面21aを有し、第2中子22は第2壁部2と接触する第2接触面22aを有する。第3中子23は、第1中子21と接触する第3接触面23aと、第2中子と接触する第4接触面23bとを有する。第1接触面21aと第2接触面22aとは互いに平行である。第3接触面23a及び第4接触面23bは第1接触面21a及び第2接触面22aと平行である。すなわち、部材10の内部に中子20を挿入した状態において、部材10の第1壁部1及び第2壁部2と、中子20の第1接触面21a、第2接触面22a、第3接触面23a及び第4接触面23bとが互いに平行となる。従来においては傾斜部を有する先細り型(楔型)の駆動体が用いられていたのに対し、本開示の中子20は第1接触面21aと第2接触面22aとが平行である。よって、従来の駆動体と比較して、中子20は、一端から他端の全体に亘って剛性を確保し易い。そのため、中子20を部材10の内部に挿入する際、中子20が折れ難い。
【0037】
図2に示されるように、第1中子21は第1孔21bを有し、第2中子22は第2孔22bを有する。第1孔21bと第2孔22bとは中心軸Aを共有しており、当該中心軸Aは第1接触面21a及び第2接触面22aに対して垂直である。第1孔21b及び第2孔22bの形態はバーリング加工孔11a、12aの形状に応じて適宜決定されればよい。第1孔21b及び第2孔22bの深さも特に限定されるものではなく、バーリング加工孔の立ち上がり部11b、12bの高さに応じて適宜決定されればよい。
【0038】
例えば、図2~4に示されるように、中子20においては、第3中子23によって第1孔21bと第2孔22bとが区切られていてもよい。
【0039】
或いは、中子20において第1孔21bと第2孔22bとが連通していてもよい。すなわち、図8A及びBに示されるように、第3中子23に第3孔23cが設けられていてもよく、第1孔21b、第2孔22b及び第3孔23cが中心軸Aを共有していてもよく、第1中子21及び第2中子22に第3中子23を取り付けた状態において、第1孔21bと第2孔22bと第3孔23cとによって、一続きの貫通孔が形成されてもよい。
【0040】
第1孔21bや第2孔22bは、「貫通孔」に限られず、「凹部」であってもよい。すなわち、図9A及びBに示されるように、第1孔21bが、第1中子21の第1接触面21aから第3中子23に向かって凹む、凹部であってもよい。同様に、第2孔22bが、第2中子22の第2接触面22aから第3中子23に向かって凹む、凹部であってもよい。
【0041】
図2~4に示されるように、第3中子23は第1中子21及び第2中子22の間に設けられる。また、図4に示されるように、第3中子23は第1中子21及び第2中子22に対して着脱できるように構成されている。図4に示されるように、中子20は、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外すことで第1接触面21aと第2接触面22aとの距離を狭めることができるように構成されている。第1中子21及び第2中子22に対して第3中子23を着脱可能とする具体的な形態は特に限定されるものではない。例えば、第1中子21及び第2中子22に対して第3中子23をスライドさせつつ嵌め込む形態や、留め具等を用いて第1中子21及び第2中子22の間に第3中子23を保持する形態等が挙げられる。
【0042】
第1中子21及び第2中子22と第3中子23とは、互いに位置決めされていてもよい。例えば、図10A及びBに示されるように、第1中子21と第3中子23との間に第1位置決め部21cが設けられており、第2中子22と第3中子23との間に第2位置決め部22cが設けられていてもよい。これにより、例えば、第1中子21と第2中子22と第3中子23とを、ロボット等を用いて機械的により容易に取り付けることができる。位置決め部21c、22cの具体的な形態は特に限定されるものではなく、例えば、凸部や凹部(溝)とすることができる。後述する第3工程において第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xを大きく狭め易くする観点からは、図10A及びBに示されるように、第1位置決め部21cが第3中子23から第1中子21に向かって凸となる凸部であってもよく、第2位置決め部22cが、第3中子23から第2中子22に向かって凸となる凸部であってもよい。また、第3中子23から第1中子21や第2中子22が脱落することを防止する観点からは、図10Aに示されるように、第1位置決め部21cが、第3中子23側を短辺、第1中子21側を長辺とし、当該短辺と長辺とが平行である台形状の凸部であってもよく、第2位置決め部22cが、第3中子23側を短辺、第2中子22側を長辺とし、当該短辺と長辺とが平行である台形状の凸部であってもよい。また、図10A及びBに示されるように、位置決め部21c、22cは、中子20の一方の端部のみに設けられていてもよい。
【0043】
中子20の全体としての形状は部材10の内部の形状に応じて適宜決定することができる。例えば、部材10が互いに対向する第1壁部1及び第2壁部2と、第1壁部1及び第2壁部2を連結する側壁部4、5とを備える場合(図5参照)、中子20は、部材10の内部に挿入される際、第1接触面21aが第1壁部1と接触し、且つ、第2接触面22aが第2壁部2と接触するとともに、中子20の側面が側壁部4、5と接触するようにしてもよい。すなわち、部材10の内部に中子20を挿入した状態において、中子20は、部材10の部分のうち第1壁部1及び第2壁部2以外の部分と当接していてもよい。また、中子20は、その先端部の角(稜)にテーパ(又は丸み)20aを有していてもよい(図12参照)。これにより、中子20を第1壁部1及び第2壁部2の間によりスムーズに挿入することができる。
【0044】
上述の通り、第1中子21の第1接触面21aと第2中子22の第2接触面22aと第3中子23の第3接触面23a及び第4接触面23bとは、互いに平行である。ここで、図11に示すように、第3中子の第3接触面及び第4接触面が傾斜角を有し、第3中子が先細り型である場合においても、第1中子及び第2中子を第1壁部1及び第2壁部2に当接させることが可能である。ただし、第1中子21の第1接触面21aと第2中子22の第2接触面22aと第3中子23の第3接触面23a及び第4接触面23bとを互いに平行としたほうが、第1中子21、第2中子22及び第3中子23の各々について高い剛性を確保し易く、さらには、第3中子23を第1中子21及び第2中子22から取り外して第1接触面21a及び第2接触面22aの距離を狭めた際、第1接触面21a及び第2接触面22aの平行を維持しつつ、第1中子21及び第2中子22を部材10からより容易に引き抜くことができる。
【0045】
第1中子21と第2中子22と第3中子23との厚み比(第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xに占める中子21~23の各々の厚みの割合)は特に限定されるものではない。例えば、第1中子21及び第2中子22の合計の厚みをTc1、第3中子23の厚みをTc2とした場合(すなわち距離X=Tc1+Tc2とした場合)、Tc1/Tc2が1.0以下であってもよい。
【0046】
中子20は必要な剛性等を有する材質からなる。例えば、中子20は金属からなるものであってもよいし、セラミックからなるものであってもよいし、樹脂からなるものであってもよい。中子20、特に第1中子21及び第2中子22が、部材10より硬質である場合、中子20に疵が付くことを抑制することができる。中子20において、第1中子21、第2中子22及び第3中子23は、同じ材質からなるものであってもよいし、異なる材質からなるものであってもよい。例えば、第1中子21及び第2中子22を同じ材質とし、第3中子23は異なる材質としてもよい。
【0047】
1.3 第1工程
図2A及びBに示されるように、第1工程においては、中子20の第1接触面21aを第1壁部1に接触させ、且つ、第2接触面22aを第2壁部2に接触させながら、部材10の外部から第1壁部1及び第2壁部2の間へと中子20を挿入する。すなわち、第1工程において、中子20は第1壁部1及び第2壁部2の双方に同時に接触する。これにより、部材10の内壁に中子20を適切に当接させることができる。尚、図示していないが、第1工程において、部材10を外金型によって外側から拘束してもよい。
【0048】
第1工程においては、中子20を部材10に挿入する際、中子20によって部材10の第1壁部1及び第2壁部2を押し広げるようにしてもよい。例えば、図12に示されるように、部材10の内部に中子20を挿入する前において、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xが第1壁部1と第2壁部2との距離Yよりも長く、第1工程において、第1壁部1及び第2壁部2の間へと中子20を挿入することで、第1壁部1と第2壁部2との距離Yを拡大させるようにしてもよい。この場合、距離Xと距離Yとの比は特に限定されるものではない。部材10の厚みT1及びT2等にもよるが、例えば、距離Xを距離Yの1.01倍以上としてもよいし、1.02倍以上としてもよく、1.25倍以下としてもよいし、1.10倍以下としてもよい。このように、中子20を部材10に挿入する際、中子20によって部材10の内部を押し広げることで、バーリング加工後に得られるバーリング加工材30の面性状や外観が一層良好なものとなる。また、バーリング加工時において部材10の不要な変形等を一層抑えることもできる。尚、図12に示されるように、中子20によって部材10の内部を押し広げる場合、中子20を第1壁部1及び第2壁部2の間にスムーズに挿入できるように、中子20の先端部の角にテーパ(又は丸み)20aが設けられていてもよい。
【0049】
部材10への中子20の挿入は手作業で行ってもよいし、シリンダー機構やロボット等を用いて機械的に行ってもよい。
【0050】
1.4 第2工程
図3A及びBに示されるように、第2工程においては、第1孔21bを利用して第1壁部1に第1バーリング加工孔11aを設け、第2孔22bを利用して第2壁部2に第2バーリング加工孔12aを設ける。ここで、第1バーリング加工孔11aは第2壁部2に向かって伸びる立ち上がり部11bを有し、第2バーリング加工孔12aは第1壁部1に向かって伸びる立ち上がり部を有する。すなわち、バーリング加工孔11a、12aは部材10の内側に向かって立ち上がり部11b、12bを有する内向きのバーリング加工孔である。図3Aに示されるように、第2工程においては、部材10を外金型60によって外側から拘束してもよい。
【0051】
第2工程において、壁部1、2に対してバーリング加工孔11a、12aを設ける具体的な方法は特に限定されるものではない。従来の方法によってバーリング加工孔11a、12aを設けることができる。例えば、図3Aに示されるように、壁部1、2の下孔1a、2aの部分をバーリングパンチ41、42によって打ち抜くことで、バーリング加工孔11a、12aを設けることができる。バーリングパンチ41、42による打ち抜きの際は、バーリングパンチ41、42の中心軸と部材10に設けられた下孔1a、2aの中心軸とを、中子20に設けられた孔21b、22bの中心軸Aと一致させるとよい。この場合、第2工程により形成される第1バーリング加工孔11aと第2バーリング加工孔12aとが、中心軸Aを共有することとなる。
【0052】
1.5 第3工程
図4A及びBに示されるように、第3工程においては、バーリング加工材30から中子20を抜き出す。第3工程においては、バーリング加工材30を外金型60(図3A参照)によって拘束しながら、当該バーリング加工材30から中子20を抜き出してもよいし、外金型60からバーリング加工材30を取り外した後で、当該バーリング加工材30から中子20を抜き出してもよい。尚、図示していないが、第3工程において、部材10を外金型によって外側から拘束してもよい。
【0053】
図4A及びBに示されるように、第3工程においては、まず、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外して第3中子23をバーリング加工材30の外部に抜き出す。第3中子23の取り外し及び抜き出しは、手作業で行ってもよいし、シリンダー機構やロボット等を用いて機械的に行ってもよい。
【0054】
次に、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xを狭める。例えば、第1中子21と第2中子22とを互いに近づけるように、各々を中心軸Aに沿った方向に移動させるとよい。この際、バーリング加工孔11a、12aの立ち上がり部11b、12bに第1中子21及び第2中子22が引っ掛かる場合があるが、第1中子21及び第2中子22に力を加えることで、立ち上がり部11b、12bから第1中子21及び第2中子22を容易に取り外すことができる。第1中子21及び第2中子22の移動や第1中子21及び第2中子22の立ち上がり部11b、12bからの取り外しは、手作業で行ってもよいし、シリンダー機構やロボット等を用いて機械的に行ってもよい。或いは、第1中子21及び第2中子22に対して第3中子23を取り付けた状態において、第1中子21から第3中子23に向かって、及び、第2中子22から第3中子23に向かって拘束圧を付与しておき、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外した場合に、当該拘束圧によって第1中子21及び第2中子22を互いに近づくように移動させ、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xを狭めてもよい。
【0055】
このようにして、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xを狭めて、当該距離Xを、立ち上がり部11b、12bの間の隙間以下とする。これにより、第1バーリング加工孔11aの立ち上がり部11bと第2バーリング加工孔12aの立ち上がり部12bとの間を通り抜けるようにして、第1中子21及び第2中子22をバーリング加工材30の外部へと容易に抜き出すことができる。第1中子21及び第2中子22の抜き出しは、手作業で行ってもよいし、シリンダー機構やロボット等を用いて機械的に行ってもよい。
【0056】
1.6 バーリング加工材
以上の通り、部材10及び中子20を用い、第1工程~第3工程を経て部材10に対してバーリング加工を施すことで、バーリング加工材30を容易に製造することができる。本開示の技術によれば、部材10と中子20との間に隙間が生じ難く、部材10の内壁に中子20を適切に当接させながらバーリング加工を行うことができる。結果として、面性状や外観に優れるバーリング加工材30を得ることができる。
【0057】
2.バーリング加工用中子
本開示の技術はバーリング加工用中子としての側面も有する。図2~4に示されるように、本開示のバーリング加工用中子20は、互いに平行な第1壁部1及び第2壁部2を有する部材に対してバーリング加工を施す際に第1壁部1及び第2壁部2の間に挿入されるように構成されている。中子20は、第1中子21と、第2中子22と、第1中子21及び第2中子22の間に設けられた第3中子23とを備えている。第1中子21は第1壁部1と接触する第1接触面21aを有する。第2中子22は第2壁部2と接触する第2接触面22aを有する。第3中子23は、第1中子21と接触する第3接触面23aと、第2中子と接触する第4接触面23bとを有する。第1接触面21aと第2接触面22aとは互いに平行である。第3接触面23a及び第4接触面23bは第1接触面21a及び第2接触面22aと平行である。第1中子21は第1孔21bを有し、第2中子22は第2孔22bを有する。第1孔21bと第2孔22bとは中心軸Aを共有している。中心軸Aは第1接触面21a及び第2接触面22aに対して垂直である。第3中子23は第1中子21及び第2中子22に対して着脱できるように構成されている。中子20は、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外すことで第1接触面21aと第2接触面22aとの距離を狭めることができるように構成されている。また、中子20は、第1壁部1及び第2壁部2の間に当該中子20を挿入する際、中子20の第1接触面21aが第1壁部1に接触し、且つ、第2接触面22aが第2壁部2に接触するように構成されている。
【0058】
中子20を構成する第1中子21、第2中子22及び第3中子23の構成については上述した通りである。例えば、部材10の内部に中子20を挿入する前において、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離Xが第1壁部1と第2壁部2との距離Yよりも長くてもよい。また、第1中子21と第3中子23との間に第1位置決め部21cが設けられており、第2中子22と第3中子23との間に第2位置決め部22cが設けられていてもよい。
【0059】
3.バーリング加工装置
本開示の技術はバーリング加工装置としての側面も有する。図13A~Cにバーリング加工装置の構成の一例を示す。図13A~Cに示されるように、バーリング加工装置100は、上記本開示のバーリング加工用中子20を備える。
【0060】
図13に示されるように、中子20をシリンダーに接続することで、中子20を所定の方向へと機械的に移動可能としてもよい。具体的には、図13A~Cに示されるように、バーリング加工装置100は、第3中子23に接続された第1シリンダー51を備えていてもよく、図13Bに示されるように、第1シリンダー51によって第3中子23が第1接触面21a及び第2接触面22aと平行な方向に移動できるように構成されていてもよい。
【0061】
また、図13A~Cに示されるように、バーリング加工装置100は、第1中子21及び第2中子22に接続された第2シリンダー52a、52bを備えていてもよく、図13Cに示されるように、第2シリンダー52a、52bによって第1中子21及び第2中子22が第1接触面21a及び第2接触面22aと平行な方向に移動できるように構成されていてもよい。第2シリンダー52a、52bを一つのシリンダーによって構成して、第1中子21及び第2中子22を同時に移動可能としてもよいし、第1中子21に接続される第2シリンダー52aと、第2中子22に接続される第2シリンダー52bとを別々のシリンダーとして、第1中子21及び第2中子22を各々独立して移動可能としてもよい。
【0062】
また、図13A~Cに示されるように、バーリング加工装置100は、第1接触面21a及び第2接触面22aとは垂直に伸縮する第3シリンダー53及び第4シリンダー54を有していてもよい。具体的には、バーリング加工装置100は、第1中子21に接続された第3シリンダー53及び第2中子22に接続された第4シリンダー54を備えていてもよく、第3シリンダー53及び第4シリンダー54によって、第1中子21及び第2中子22が第1接触面21a及び第2接触面22aと垂直な方向に移動できるように構成されていてもよい。これにより、第1中子21及び第2中子22から第3中子23を取り外した後、第1中子21及び第2中子22を互いに近づけるように容易に移動させることができ、第1接触面21aと第2接触面22aとの距離を容易に狭めることができる。
【0063】
バーリング加工装置100は、本開示の中子20を備えること以外は、従来と同様の構成を有していてもよい。例えば、バーリング加工装置100は、部材10に対して下孔1a、2aを設けるためのパンチ(不図示)や、部材10に対してバーリング加工孔11a、12aを設けるためのバーリングパンチ41、42(図3A参照)や、部材10を外側から拘束する外金型60(図3A参照)等を備えていてもよい。
【0064】
4.補足
以下に示す方法であっても、ある程度の効果を奏するものと考えられる。すなわち、本開示の方法は、
部材の内部に中子を挿入する第1工程と、
前記中子が挿入された状態で前記部材に対してバーリング加工を施してバーリング加工材を得る第2工程と、
前記バーリング加工材から前記中子を抜き出す第3工程と、
を備える、バーリング加工材の製造方法であって、
前記部材が、断面形状において、対向する第1壁部及び第2壁部を有し、
前記中子が、第1中子と、第2中子と、前記第1中子及び前記第2中子の間に設けられた第3中子とを備え、前記第1中子が前記第1壁部と接触する第1接触面を有し、前記第2中子が前記第2壁部と接触する第2接触面を有し、前記第3中子が、前記第1中子と接触する第3接触面と、前記第2中子と接触する第4接触面とを有し、前記第1中子が第1孔を有し、前記第2中子が第2孔を有し、前記第1孔と前記第2孔とが中心軸を共有しており、前記第3中子が前記第1中子及び前記第2中子に対して着脱できるように構成されており、前記中子が前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外すことで前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めることができるように構成されており、
前記第1工程において、前記第1接触面を前記第1壁部に接触させ、且つ、前記第2接触面を前記第2壁部に接触させながら、前記部材の外部から前記第1壁部及び前記第2壁部の間へと前記中子を挿入し、
前記第2工程において、前記第1孔を利用して前記第1壁部に第1バーリング加工孔を設け、前記第2孔を利用して前記第2壁部に第2バーリング加工孔を設け、ここで、前記第1バーリング加工孔は前記第2壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、前記第2バーリング加工孔は前記第1壁部に向かって伸びる立ち上がり部を有し、
前記第3工程において、前記第1中子及び前記第2中子から前記第3中子を取り外して前記第3中子を前記バーリング加工材の外部に抜き出し、前記第1接触面と前記第2接触面との距離を狭めて、前記第1バーリング加工孔の前記立ち上がり部と前記第2バーリング加工孔の前記立ち上がり部との間を通り抜けるようにして前記第1中子及び前記第2中子を前記バーリング加工材の外部へと抜き出す、
バーリング加工材の製造方法である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1壁部
2 第2壁部
3 開口部
4 側壁部
5 側壁部
10 部材
11a 第1バーリング加工孔
11b 立ち上がり部
12a 第2バーリング加工孔
12b 立ち上がり部
20 中子
21 第1中子
21a 第1接触面
21b 第1孔
21c 第1位置決め部
22 第2中子
22a 第2接触面
22b 第2孔
22c 第2位置決め部
23 第3中子
23a 第3接触面
23b 第4接触面
30 バーリング加工材
41、42 バーリングパンチ
51 第1シリンダー
52a、52b 第2シリンダー
53 第3シリンダー
54 第4シリンダー
60 外金型
100 バーリング加工装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C