(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】無線局および周波数誤差補正方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20240306BHJP
H03L 7/10 20060101ALI20240306BHJP
H03L 7/08 20060101ALI20240306BHJP
H04L 27/12 20060101ALI20240306BHJP
G06F 1/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H04B1/04 F
H03L7/10 140
H03L7/08 230
H04L27/12 Z
G06F1/08
(21)【出願番号】P 2020056801
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】冨田 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 仁規
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-328046(JP,A)
【文献】特開2018-026772(JP,A)
【文献】特開2012-23626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H03L 7/10
H03L 7/08
H04L 27/12
G06F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を出力する発振器と、
前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出する誤差算出部と、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成する変調用データ生成部と、
前記基準信号および前記変調用データが入力され、前記変調用データに応じて発振周波数が変化する電圧制御発振器を有し、前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う変調部と、
を備える無線局。
【請求項2】
複数の前記発振器を有し、
前記複数の発振器のいずれかを選択する選択部をさらに備え、
前記誤差算出部は、前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して前記周波数誤差を算出する、
請求項
1に記載の無線局。
【請求項3】
基準信号を出力する複数の発振器と、
前記複数の発振器のいずれかを選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出する誤差算出部と、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成する変調用データ生成部と、
前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う変調部と、
を備える無線局。
【請求項4】
前記変調用データの中央値は、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する、
請求項1
から3のいずれか1項に記載の無線局。
【請求項5】
前記変調用データ生成部は、前記誤差算出部で算出した前記周波数誤差が正数である場合、負数の前記補正量を前記送信データに加算して前記変調用データを生成し、前記誤差算出部で算出した前記周波数誤差が負数である場合、正数の前記補正量を前記送信データに加算して前記変調用データを生成する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の無線局。
【請求項6】
前記誤差算出部は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)信号から生成される一定周期の時刻信号の周期で前記基準信号の周期数をカウントし、前記周期においてカウントされた前記周期数に基づいて前記基準信号の周波数を算出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線局。
【請求項7】
発振器が出力する基準信号の周波数を算出し、
算出した前記基準信号の周波数から前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出し、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成し、
前記基準信号および前記変調用データが入力され、前記変調用データに応じて発振周波数が変化する電圧制御発振器を用いて、前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う、
周波数誤差補正方法。
【請求項8】
基準信号を出力する複数の発振器のいずれかを選択し、
選択した前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、
算出した前記基準信号の周波数から選択した前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出し、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成し、
前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う、
周波数誤差補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局および周波数誤差補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイマルキャストによる無線通信システムは、複数のサイトの無線局が同一周波数で送信することによりカバーエリアを広げる無線通信システムである。このため、RF(Radio Frequency:無線周波数)領域において高い周波数精度が求められる。周波数精度を高めるために、RF変調に用いられる発振器の誤差を補正する補正装置が用いられることがある。この種の補正装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される周波数誤差補正装置は、発振器のクロック数をカウントし、ネットワークを介して受信した時刻情報と、カウント結果とに基づいて、所望の周波数からの発振器の周波数のずれを算出する。そして、周波数誤差補正装置は、算出した周波数のずれに基づいて、発振器の周波数誤差を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される周波数誤差補正装置は、発振周波数が電圧で制御可能である発振器を有する。この周波数誤差補正装置は、算出した周波数のずれに基づいた制御信号を発振器に送り、発振器を電圧制御する。複数の発振器を切り替えて使用する無線局の場合、発振器を電圧制御するための回路が複数個必要となる。またC/N比(Carrier-to-Noise Ratio:搬送波電力対雑音比)の悪化を防ぐために、時定数の大きい回路が必要となる。このため、動作中の無線局においてRF領域の周波数誤差を補正することが難しい。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、動作中に発振器の周波数誤差を補正することが可能な無線局および周波数誤差補正方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線局は、
基準信号を出力する発振器と、
前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出する誤差算出部と、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成する変調用データ生成部と、
前記基準信号および前記変調用データが入力され、前記変調用データに応じて発振周波数が変化する電圧制御発振器を有し、前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う変調部と、
を備える。
【0008】
好ましくは、複数の前記発振器を有し、
前記複数の発振器のいずれかを選択する選択部をさらに備え、
前記誤差算出部は、前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して前記周波数誤差を算出する。
【0009】
本発明の第2の観点に係る無線局は、
基準信号を出力する複数の発振器と、
前記複数の発振器のいずれかを選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、算出した前記基準信号の周波数から前記選択部で選択された前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出する誤差算出部と、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成する変調用データ生成部と、
前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う変調部と、
を備える。
【0010】
好ましくは、前記変調用データの中央値は、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する。
【0011】
好ましくは、前記変調用データ生成部は、前記誤差算出部で算出した前記周波数誤差が正数である場合、負数の前記補正量を前記送信データに加算して前記変調用データを生成し、前記誤差算出部で算出した前記周波数誤差が負数である場合、正数の前記補正量を前記送信データに加算して前記変調用データを生成する。
【0012】
好ましくは、前記誤差算出部は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)信号から生成される一定周期の時刻信号の周期で前記基準信号の周期数をカウントし、前記周期においてカウントされた前記周期数に基づいて前記基準信号の周波数を算出する。
【0013】
本発明の第3の観点に係る周波数誤差補正方法は、
発振器が出力する基準信号の周波数を算出し、
算出した前記基準信号の周波数から前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出し、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成し、
前記基準信号および前記変調用データが入力され、前記変調用データに応じて発振周波数が変化する電圧制御発振器を用いて、前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う。
本発明の第4の観点に係る周波数誤差補正方法は、
基準信号を出力する複数の発振器のいずれかを選択し、
選択した前記発振器が出力する前記基準信号の周波数を算出し、
算出した前記基準信号の周波数から選択した前記発振器が出力する前記基準信号の目標周波数を減算して周波数誤差を算出し、
送信データを取得し、前記周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を前記送信データに加算して変調用データを生成し、
前記変調用データおよび前記基準信号に基づいて、周波数変調を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誤差算出部は、発振器が出力する基準信号の周波数誤差を算出する。また変調用データ生成部は、周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を送信データに加算して変調用データを生成する。そして、変調部が、変調用データおよび基準信号に基づいて、周波数変調を行うことで、無線局の動作中に発振器の周波数誤差を補正することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る無線局の構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態1に係る変調部の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態1に係る無線局が行う周波数誤差補正方法の動作の一例を示すフローチャート
【
図4】本発明の実施の形態2に係る無線局の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る無線局および周波数誤差補正方法について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0017】
(実施の形態1)
サイマルキャストによる無線通信システムが備えるレピータを例にして、実施の形態1に係る無線局1について説明する。
図1に示す無線局1は、基準信号を出力する発振器2を備える。無線局1の動作中に発振器2が有する後述の水晶振動子の温度が上昇すると、発振器2が出力する基準信号の周波数が目標周波数からずれる、すなわち、発振器2の周波数誤差が生じることがある。なお無線局1は、後述するように、無線局1の動作中に、発振器2の周波数誤差を補正する機能を有する。
【0018】
無線局1はさらに、基準信号に基づいて発振器2の周波数誤差を算出する誤差算出部3と、誤差算出部3で算出された周波数誤差に基づいて変調用データを生成する変調用データ生成部4と、を備える。無線局1はさらに、変調用データおよび基準信号に基づいて、周波数変調を行ってRF(Radio Frequency:無線周波数)信号を生成する変調部5と、変調部5で生成されたRF信号から送信信号を生成し、アンテナ7を介して送信する送信部6と、を備える。
【0019】
上述の各部を制御するため、無線局1はコントローラ20を備える。コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21と、I/O(Input/Output)22と、RAM(Random Access Memory)23と、ROM(Read-Only Memory)24と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から無線局1の各部への信号線が省略されているが、コントローラ20は無線局1の各部にI/O22を介して接続しており、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU21は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行して、無線局1の制御を行う。またI/O22を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM23に一時的に記憶される。CPU21は、RAM23に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、無線局1の制御を行う。
【0020】
無線局1の各部について説明する。
発振器2は、水晶振動子と発振回路とを有し、基準信号を誤差算出部3および変調部5に出力する。なお実施の形態1では、基準信号は、正弦波のクロック信号である。
【0021】
誤差算出部3は、図示しないGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)受信機から、PPS(Pulse Per Second)信号を取得し、PPS信号に基づいて正確な時刻情報を得る。なおGNSS受信機は、GNSS信号から一定周期の時刻信号であるPPS信号を生成し、出力する。そして、誤差算出部3は、測定時間、具体的にはPPS信号の周期において、基準信号の周期数、すなわちクロック信号のクロック数をカウントし、カウントしたクロック数に基づいて発振器2の周波数を算出する。詳細には、誤差算出部3は、クロック信号を矩形波に成形し、矩形波に基づいてクロック数をカウントする。さらに誤差算出部3は、算出した発振器2の周波数から発振器2の目標周波数を減算して周波数誤差を算出する。そして誤差算出部3は、算出した周波数誤差を変調用データ生成部4に出力する。なお誤差算出部3は、発振器2の目標周波数を予め保持している。
【0022】
変調用データ生成部4は、自装置に登録されている無線端末に送信するためのデータである送信データを取得し、送信データに補正量を加算して変調用データを生成する。なお送信データは、例えば、図示しない通信IFを介してレピータコントローラから取得したデータ、図示しない受信アンテナを介して自装置に登録されている他の無線端末から受信したデータ等に基づくデータである。
【0023】
また補正量は、誤差算出部3で算出された周波数誤差に対して負の相関関係で変化する値である。補正量が周波数誤差に対して負の相関関係で変化するため、結果として、変調用データの中央値は、周波数誤差に対して負の相関関係で変化する。なお補正量の絶対値は、周波数誤差に係数を乗算して得られる値である。この係数は、周波数1Hzに対する送信データの変化量に応じて定められる。
【0024】
具体的には、変調用データ生成部4は、誤差算出部3で算出した周波数誤差が正数である場合、負数の補正量を送信データに加算して変調用データを生成する。また変調用データ生成部4は、誤差算出部3で算出した周波数誤差が負数である場合、正数の補正量を送信データに加算して変調用データを生成する。
【0025】
変調部5は、変調用データおよび基準信号に基づいて、周波数変調を行って、RF信号を生成する。このように変調部5は、基準信号に基づく搬送波の周波数を変調用データに応じて変化させる周波数変調を行ってRF信号を生成することで、変調用データの生成に用いられた送信データの送信を可能とする。詳細については後述するが、変調波であるRF信号の中心周波数fcは、誤差算出部3が算出した周波数誤差に応じて調節され、目標値に維持される。結果として、基準信号の周波数誤差、すなわち、発振器2の周波数誤差が補正される。
【0026】
送信部6は、変調部5が生成したRF信号に基づいて送信信号を生成し、アンテナ7を介して送信信号を、例えば自装置に登録されている無線端末に送信する。
【0027】
上述の変調部5の構成の詳細について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、変調部5は、基準信号と後述の分周器15で分周されたRF信号とに基づく位相差信号を出力する位相比較器11と、位相差信号を電流に変換して出力するチャージポンプ12と、チャージポンプ12が出力する電流を電圧に変換して出力するループフィルタ13と、制御電圧に応じた発振周波数で発振することでRF信号を生成するVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)14と、を備える。
【0028】
変調部5はさらに、RF信号を後述のΔΣ変調器16が出力する分周比に応じて分周する分周器15と、変調用データに基づいて分周比を算出するΔΣ変調器16と、変調用データをD-A(Digital-to-Analog)変換して出力するD-A変換器17と、を備える。
【0029】
変調部5の各部について説明する。
位相比較器11は、基準信号の位相と分周器15で分周されたRF信号の位相とを比較し、基準信号と分周されたRF信号との位相差に応じた信号である位相差信号を出力する。
【0030】
チャージポンプ12は、位相比較器11が出力する位相差信号に基づいてチャージポンプ動作を行うことにより、位相差信号を電流に変換して出力する。
【0031】
ループフィルタ13は、LPF(Low-Pass-Filter:低域通過フィルタ)としての特性を有する。そして、ループフィルタ13は、チャージポンプ12から出力される電流を積分して平滑化することで電圧に変換し、この電圧を第1の制御電圧としてVCO14に出力する。
【0032】
VCO14は、制御電圧に応じて発振し、RF信号を出力する。詳細には、VCO14の発振周波数は、D-A変換器17から入力される後述の第2の制御電圧に応じて変化する。
【0033】
分周器15は、ΔΣ変調器16が出力する分周比に応じて、VCO14が出力するRF信号を分周し、分周したRF信号を位相比較器11に出力する。
【0034】
ΔΣ変調器16は、RF信号の中心周波数fcの目標値fc0および変調用データに基づいて、分周比を決定し、分周器15に出力する。なおRF信号の中心周波数fcの目標値fc0は、発振器2の周波数が目標周波数に一致する場合に得られるRF信号の中心周波数である。
【0035】
D-A変換器17は、変調用データ生成部4が生成した変調用データをD-A変換して、第2の制御電圧を生成し、VCO14に出力する。
【0036】
変調用データをD-A変換して得られる第2の制御電圧の中央値は、周波数誤差に対して負の相関関係で変化する。詳細には、周波数誤差が正数である場合、すなわち、発振器2の周波数が目標周波数を上回る場合、第2の制御電圧の中央値は、発振器2の周波数が目標周波数に一致する場合の第2の制御電圧の中央値から減少する。発振器2の周波数が目標周波数を上回る場合に、第2の制御電圧の中央値を減少させることで、RF信号の中心周波数fcは、目標値fc0に維持される。
【0037】
一方、周波数誤差が負数である場合、すなわち、発振器2の周波数が目標周波数を下回る場合、第2の制御電圧の中央値は、発振器2の周波数が目標周波数に一致する場合の第2の制御電圧の中央値から増大する。発振器2の周波数が目標周波数を下回る場合に、第2の制御電圧の中央値を増大させることで、RF信号の中心周波数fcは、目標値fc0に維持される。上述したように周波数誤差に応じて中央値が変化する第2の制御電圧をVCO14に入力することで、変調波であるRF信号の中心周波数fcは目標値fc0に維持される。すなわち、発振器2の周波数誤差が補正される。
【0038】
上記構成を有する無線局1の動作について
図3を用いて説明する。誤差算出部3は、測定時間において、基準信号であるクロック信号のクロック数をカウントし、カウントしたクロック数に基づいて発振器2の周波数を算出する(ステップS11)。そして、誤差算出部3は、ステップS11で算出した発振器2の周波数から目標周波数を減算することで、周波数誤差を算出する(ステップS12)。
【0039】
変調用データ生成部4は、ステップS12で算出された周波数誤差が0であるか否かを判定する(ステップS13)。ステップS12で算出された周波数誤差が0である場合(ステップS13;Yes)、ステップS14-S16の処理は行われない、すなわち、変調用データ生成部4は、送信データを変調用データとして出力する。この場合、一例として、変調用データ生成部4は、10と-10と、を繰り返す送信データに基づき、10と-10とを繰り返す変調用データを出力する。
【0040】
ステップS12で算出された周波数誤差が0でなく(ステップS13;No)、周波数誤差が正数である場合(ステップS14;Yes)、変調用データ生成部4は、負数の補正量を送信データに加算して変調用データを生成する(ステップS15)。例えば、ステップS12で算出された周波数誤差が+1Hzである場合、変調用データ生成部4は、ステップS15において、補正量-1を送信データに加算し、9と、-11と、を繰り返す変調用データを生成し、出力する。
【0041】
またステップS12で算出された周波数誤差が0でなく(ステップS13;No)、周波数誤差が負数である場合(ステップS14;No)、変調用データ生成部4は、正数の補正量を送信データに加算して変調用データを生成する(ステップS16)。例えば、ステップS12で算出された周波数誤差が-2Hzである場合、変調用データ生成部4は、ステップS16において、補正量2を送信データに加算し、12と、-8と、を繰り返す変調用データを生成し、出力する。
【0042】
ステップS12で算出された周波数誤差が0である場合(ステップS13;Yes)、あるいは、ステップS15またはステップS16の処理が終了すると、変調部5は、変調用データ生成部4が出力する変調用データおよび基準信号に基づいて、周波数変調を行って、RF信号を生成する(ステップS17)。
【0043】
詳細には、ステップS15の処理によって、負数の補正量を送信データに加算することで変調用データが生成されると、変調部5が有するVCO14に入力される第2の制御電圧の中央値が減少する。これにより、発振器2の周波数が目標周波数を上回る場合でも、ステップS17で生成されるRF信号の中心周波数fcは目標値fc0に維持される。この結果、基準信号の周波数誤差、すなわち、発振器2の周波数誤差が補正される。
【0044】
またステップS16の処理によって、正数の補正量を送信データに加算することで変調用データが生成されると、変調部5が有するVCO14に入力される第2の制御電圧の中央値が増大する。これにより、発振器2の周波数が目標周波数を下回る場合でも、ステップS17で生成されるRF信号の中心周波数fcは目標値fc0に維持される。この結果、基準信号の周波数誤差、すなわち、発振器2の周波数誤差が補正される。
【0045】
以上説明したとおり、実施の形態1に係る無線局1は、発振器2の周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を送信データに加算して変調用データを生成し、変調用データおよび基準信号に基づいて周波数変調を行う。これにより、変調波であるRF信号の中心周波数は目標値fc0に維持され、結果的に無線局1の動作中に発振器2の周波数誤差を補正することが可能である。周波数変調処理の結果として、発振器2の周波数誤差が補正されるため、リアルタイムで発振器2の周波数誤差を補正することができる。
【0046】
(実施の形態2)
無線局1は、複数個の発振器を備えてもよい。発振器2a,2bを備える無線局1について実施の形態2で説明する。
図4に示す無線局1は、発振周波数が異なる発振器2a,2bを有する。無線局1はさらに、発振器2a,2bのいずれかを選択し、選択した発振器2a,2bのいずれかが出力する基準信号を誤差算出部3および変調部5に送る選択部8を備える。実施の形態1に係る無線局1と異なる点について、以下に説明する。
【0047】
選択部8は、コントローラ20によって制御され、発振器2a,2bのいずれかを選択する。そして、選択部8は、選択した発振器2a,2bのいずれかと誤差算出部3および変調部5のそれぞれとを接続する。選択部8が発振器2aを選択した場合、発振器2aが誤差算出部3および変調部5のそれぞれに接続される。この結果、発振器2aが出力する基準信号が、誤差算出部3および変調部5に送られる。また選択部8が発振器2bを選択した場合、発振器2bが誤差算出部3および変調部5のそれぞれに接続される。この結果、発振器2bが出力する基準信号が、誤差算出部3および変調部5に送られる。
【0048】
誤差算出部3は、発振器2a,2bのそれぞれの目標周波数を予め保持している。また誤差算出部3は、選択部8が発振器2a,2bのいずれを選択したかの情報を、コントローラ20から取得する。
【0049】
選択部8が発振器2aを選択した場合、誤差算出部3は、測定時間において、発振器2aが出力する基準信号であるクロック信号のクロック数をカウントし、発振器2aの周波数を算出する。そして、誤差算出部3は、算出した発振器2aの周波数から、発振器2aの目標周波数を減算して周波数誤差を算出する。
【0050】
また選択部8が発振器2bを選択した場合、誤差算出部3は、測定時間において、発振器2bが出力する基準信号であるクロック信号のクロック数をカウントし、発振器2bの周波数を算出する。そして、誤差算出部3は、算出した発振器2bの周波数から、発振器2bの目標周波数を減算して周波数誤差を算出する。
【0051】
選択部8が発振器2aを選択した場合、変調部5は、変調用データおよび発振器2aが出力する基準信号に基づいて周波数変調を行って、RF信号を生成する。
【0052】
また選択部8が発振器2bを選択した場合、変調部5は、変調用データおよび発振器2bが出力する基準信号に基づいて周波数変調を行って、RF信号を生成する。
【0053】
以上説明したとおり、実施の形態2に係る無線局1は、複数の発振器2a,2bを備える。選択された発振器2a,2bのいずれかの周波数誤差に対して負の相関関係で変化する補正量を送信データに加算して変調用データを生成し、変調用データおよび基準信号に基づいて周波数変調を行う。これにより、変調波であるRF信号の中心周波数は目標値fc0に維持され、結果的に無線局1の動作中に、選択された発振器2a,2bのいずれかの周波数誤差を補正することが可能である。周波数変調処理の結果として、選択された発振器2a,2bのいずれかの周波数誤差が補正されるため、リアルタイムで選択された発振器2a,2bのいずれかの周波数誤差を補正することができる。
【0054】
本発明の実施の形態は、上述の例に限られない。
上述の実施の形態では、送信時の周波数誤差の補正について説明したが、受信時にも同様に、発振器2,2a,2bの周波数誤差を補正することができる。
【0055】
無線局1は、サイマルキャストによる無線通信システムを構成するレピータに限られず、動作中に周波数誤差を補正する必要がある任意の無線局である。また無線局1はレピータに限られず、レピータを介して通信を行う無線端末でもよい。
【0056】
無線局1が備える発振器の個数は任意である。無線局1が2以上の複数の発振器2を備える場合、選択部8は、実施の形態2と同様に、複数の発振器2のいずれかを選択すればよい。
【0057】
誤差算出部3は、PPS信号に限られず、任意の手段で時刻情報を取得すればよい。一例として、誤差算出部3は、NTP(Network Time Protocol)サーバから時刻情報を取得してもよい。
【0058】
上述の実施の形態では、変調部は、発振器2,2a,2bの出力を基準信号として周波数変調に用いたが、基準信号は、発振器2,2a,2bが出力するクロック信号を分周あるいは逓倍して得られる信号でもよい。この場合でも、発振器2,2a,2bが出力するクロック信号のクロック数をカウントすることで、基準信号の周波数を算出することができる。
【0059】
その他、上述のハードウェア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 無線局
2,2a,2b 発振器
3 誤差算出部
4 変調用データ生成部
5 変調部
6 送信部
7 アンテナ
8 選択部
11 位相比較器
12 チャージポンプ
13 ループフィルタ
14 VCO
15 分周器
16 ΔΣ変調器
17 D-A変換器
20 コントローラ
21 CPU
22 I/O
23 RAM
24 ROM