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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/12 20230101AFI20240306BHJP
【FI】
G06Q40/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020071875
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021168087
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】322006076
【氏名又は名称】弥生株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武志
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016696(JP,A)
【文献】特開2019-139381(JP,A)
【文献】特開2018-173935(JP,A)
【文献】特開2016-021147(JP,A)
【文献】特開2003-091694(JP,A)
【文献】特開2018-097813(JP,A)
【文献】特開2015-014854(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110517130(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110503537(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引の内容を表す摘要と前記摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトルを格納する格納部と、
第1の個別取引データと前記全体単語ベクトルとを用いて、前記第1の個別取引データに対応する、摘要から勘定科目を推論するための第1の個別科目ベクトルを生成するベクトル生成部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記ベクトル生成部は、前記第1の個別科目ベクトルを初期化し、前記第1の個別取引データ及び前記全体単語ベクトルを用いて前記第1の個別科目ベクトルを更新することにより前記第1の個別科目ベクトルを生成し、前記全体単語ベクトルは更新しない、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ベクトル生成部は、前記全体取引データを用いて前記全体単語ベクトルを生成する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記個別取引データは、事業者に関連する事業者関連情報をさらに含み、
前記ベクトル生成部は、前記第1の個別取引データに含まれる前記事業者関連情報をさらに用いて、前記第1の個別科目ベクトルを生成する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記事業者関連情報は、前記事業者が個人事業主であるか法人であるかを示す情報を含む、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記事業者関連情報は、前記事業者の業種を示す情報を含む、請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記ベクトル生成部は、前記摘要に基づいて生成した単語辞書に前記事業者関連情報を加えた辞書データを用いて、前記第1の個別科目ベクトルを生成する、請求項4から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記格納部は、前記全体取引データを用いて生成された全体科目ベクトルと、前記ベクトル生成部によって生成された前記第1の個別科目ベクトルとをさらに格納し、
前記情報処理装置は、
勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部と、
前記全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記全体科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論し、前記第1の個別科目ベクトルを用いた個別推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記第1の個別科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論する推論部と
をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
取引の内容を表す摘要と前記摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトルを格納する格納部と、
前記全体取引データに含まれる複数の前記個別取引データのうちの一部の前記個別取引データを含むグループ別取引データと前記全体単語ベクトルとを用いて、前記グループ別取引データに対応する、摘要から勘定科目を推論するためのグループ別科目ベクトルを生成するベクトル生成部と
を備える情報処理装置。
【請求項10】
取引の内容を表す摘要と前記摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルと、第1の個別取引データ及び前記全体単語ベクトルに基づいて生成された第1の個別科目ベクトルとを格納する格納部と、
勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部と、
前記全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記全体科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論し、前記第1の個別科目ベクトルを用いた個別推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記第1の個別科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論する推論部と
を備える情報処理装置。
【請求項11】
取引の内容を表す摘要と前記摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルと、前記全体取引データに含まれる複数の前記個別取引データのうちの一部の前記個別取引データを含むグループ取引データと前記全体単語ベクトルとを用いて生成されたグループ別科目ベクトルと格納する格納部と、
勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部と、
前記全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記全体科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論し、前記グループ別科目ベクトルを用いたグループ別推論を実行する場合、前記全体単語ベクトル及び前記グループ別科目ベクトルを用いて前記摘要に対する勘定科目を推論する推論部と
を備える情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1から11のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
支払元と支払先との取引を示す取引情報に対して、勘定科目等を自動的に対応付ける自動仕訳機能が知られていた(例えば、特許文献1、2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2006-285710号公報
[特許文献2]特開2019-139381号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、取引の内容を表す摘要と摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトルを格納する格納部を備えてよい。情報処理装置は、第1の個別取引データと全体単語ベクトルとを用いて、第1の個別取引データに対応する、摘要から勘定科目を推論するための第1の個別科目ベクトルを生成するベクトル生成部を備えてよい。
【0004】
上記ベクトル生成部は、上記第1の個別科目ベクトルを初期化し、上記第1の個別取引データ及び上記全体単語ベクトルを用いて上記第1の個別科目ベクトルを更新することにより上記第1の個別科目ベクトルを生成してよく、上記全体単語ベクトルは更新しなくてよい。上記ベクトル生成部は、上記全体取引データを用いて上記全体単語ベクトルを生成してよい。上記個別取引データは、事業者に関連する事業者関連情報をさらに含んでよく、上記ベクトル生成部は、上記第1の個別取引データに含まれる上記事業者関連情報をさらに用いて、上記第1の個別科目ベクトルを生成してよい。上記事業者関連情報は、上記事業者が個人事業主であるか法人であるかを示す情報を含んでよい。上記事業者関連情報は、上記事業者の業種を示す情報を含んでよい。上記ベクトル生成部は、上記摘要に基づいて生成した単語辞書に上記事業者関連情報を加えた辞書データを用いて、上記全体単語ベクトルを生成してよい。上記格納部は、上記全体取引データを用いて生成された全体科目ベクトルと、上記ベクトル生成部によって生成された上記第1の個別科目ベクトルとをさらに格納してよく、上記情報処理装置は、勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部と、上記全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、上記全体単語ベクトル及び上記全体科目ベクトルを用いて上記摘要に対する勘定科目を推論し、上記第1の個別科目ベクトルを用いた個別推論を実行する場合、上記全体単語ベクトル及び上記第1の個別科目ベクトルを用いて上記摘要に対する勘定科目を推論する推論部とをさらに備えてよい。
【0005】
本発明の第2の態様によれば、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、取引の内容を表す摘要と摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトルを格納する格納部を備えてよい。情報処理装置は、全体取引データに含まれる複数の個別取引データのうちの一部の個別取引データを含むグループ別取引データと全体単語ベクトルとを用いて、グループ別取引データに対応する、摘要から勘定科目を推論するためのグループ別科目ベクトルを生成するベクトル生成部を備えてよい。
【0006】
本発明の第3の態様によれば、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、取引の内容を表す摘要と摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルと、第1の個別取引データ及び全体単語ベクトルに基づいて生成された第1の個別科目ベクトルとを格納する格納部を備えてよい。情報処理装置は、勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部を備えてよい。情報処理装置は、全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを用いて摘要に対する勘定科目を推論し、第1の個別科目ベクトルを用いた個別推論を実行する場合、全体単語ベクトル及び第1の個別科目ベクトルを用いて摘要に対する勘定科目を推論する推論部を備えてよい。
【0007】
本発明の第4の態様によれば、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、取引の内容を表す摘要と摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む事業者毎の個別取引データを複数含む全体取引データを用いて生成された全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルと、全体取引データに含まれる複数の個別取引データのうちの一部の個別取引データを含むグループ取引データと全体単語ベクトルとを用いて生成されたグループ別科目ベクトルと格納する格納部を備えてよい。情報処理装置は、勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する摘要取得部を備えてよい。情報処理装置は、全体科目ベクトルを用いた全体推論を実行する場合、全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを用いて摘要に対する勘定科目を推論し、グループ別科目ベクトルを用いたグループ別推論を実行する場合、全体単語ベクトル及びグループ別科目ベクトルを用いて摘要に対する勘定科目を推論する推論部を備えてよい。
【0008】
本発明の第5の態様によれば、コンピュータを、上記情報処理装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】会計情報管理装置100の通信環境の一例を概略的に示す。
図2】会計情報管理装置100の機能構成の一例を概略的に示す。
図3】ベクトル生成部106による全体推論用の学習処理の流れの一例を概略的に示す。
図4】ベクトル生成部106による個別推論用の学習処理の流れの一例を概略的に示す。
図5】単語辞書120の具体例を概略的に示す。
図6】初期化された全体単語ベクトル130の一例を概略的に示す。
図7】初期化された全体科目ベクトル140の一例を概略的に示す。
図8】初期化された個別科目ベクトル150の一例を概略的に示す。
図9】推論部110による推論処理の流れの一例を概略的に示す。
図10】単語辞書120の一例を概略的に示す。
図11】全体単語ベクトル160の一例を概略的に示す。
図12】会計情報管理装置100として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、会計情報管理装置100の通信環境の一例を概略的に示す。会計情報管理装置100は、取引を行う事業者等の会計情報を管理し、事業者等の会計業務を支援する。会計情報管理装置100は、情報処理装置の一例であってよい。
【0013】
会計情報管理装置100は、複数の事業者のそれぞれについて、会計情報を管理する。会計情報は、複数の取引レコードを含む。取引レコードは、例えば、取引日、取引先、摘要、勘定科目、取引金額、及び税率等を含む。
【0014】
また、会計情報管理装置100は、複数の事業者のそれぞれについて、事業者に関連する事業者関連情報を管理する。事業者関連情報は、事業者が個人事業主であるか法人であるかを示す情報を含んでよい。事業者関連情報は、事業者の業種を示す情報を含んでよい。事業者関連情報は、事業者の業態を示す情報を含んでよい。事業者関連情報は、事業者に関連するその他の任意の情報を含んでよい。
【0015】
会計情報管理装置100は、例えば、ユーザ350によって通信端末300を用いて入力された事業者の事業者関連情報及び取引情報を、ネットワーク10を介して通信端末300から受信する。そして、会計情報管理装置100は、受信した取引情報に対応する会計情報を管理する。取引情報に対応する会計情報は、会計情報管理装置100によって生成されてよい。また、取引情報に対応する会計情報は、ユーザ350によって生成されてもよい。会計情報管理装置100は、例えば、ユーザ350によって通信端末300を用いて入力された会計情報を、ネットワーク10を介して通信端末300から受信してもよい。
【0016】
ユーザ350は、事業者であってよい。また、ユーザ350は、事業者の会計を管理する会計事務所等であってもよい。ユーザ350は、通信端末300を用いて、会計情報管理装置100が管理する情報にアクセス可能であってよい。
【0017】
通信端末300は、通信可能な端末であれば任意の端末であってよい。例えば、通信端末300は、スマートフォン等の携帯電話、タブレット端末、及びPC(Personal Computer)等である。通信端末300を用いたアクセスは、例えば、アプリケーションベースで行われる。通信端末300を用いたアクセスは、Webベースで行われてもよい。
【0018】
ネットワーク10は、例えば、インターネットを含む。ネットワーク10は、3G(3rd Generation)通信システム、LTE(Long Term Evolution)通信システム、5G(5th Generation)通信システム、及び6G(6th Generation)通信システム以降の通信システム等の移動体通信システムを含んでもよい。ネットワーク10は、LAN(Local Area Network)等の専用網を含んでもよい。
【0019】
会計情報管理装置100は、事業者の取引情報を管理して提供するサービスを行う1又は複数の取引情報提供装置200から、ネットワーク10を介して、事業者の取引情報を受信してもよい。取引情報提供装置200は、例えば、事業者の銀行口座の情報を管理して提供する。また、取引情報提供装置200は、例えば、事業者のクレジットカード明細情報を管理して提供する。また、取引情報提供装置200は、例えば、事業者のレジ情報を管理して提供する。レジ情報は、POS(Point Of Sale)による情報であってよい。取引情報提供装置200は、その他任意の情報を管理して提供してよい。
【0020】
本実施形態に係る会計情報管理装置100は、いわゆる自動仕訳処理を実行可能である。会計情報管理装置100は、単語ベクトルと、摘要から勘定科目を推論するための科目ベクトルとを用いた自動仕訳処理を実行してよい。
【0021】
会計情報管理装置100は、例えば、fastTextを改修することによって生成されたライブラリを用いて、単語ベクトル及び科目ベクトルを生成する。会計情報管理装置100は、fastTextとは関係なく生成されたライブラリを用いて、単語ベクトル及び科目ベクトルを生成してもよい。
【0022】
従来、自動仕訳を行うにあたって、個別推論及び全体推論が実施されていた。従来の全体推論では、多数の事業者の会計情報を用いて生成した全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルが用いられていた。また、従来の個別推論では、各事業者の会計情報を用いて生成した各事業者用の個別単語ベクトル及び個別科目ベクトルが用いられていた。従来のシステムでは、例えば、個別推論を実行して勘定科目を推論した場合の、推論確度が閾値より高い場合には、当該勘定科目を推論結果として出力し、推論確度が閾値より低い場合に、全体推論を実行する、等の処理が行われていた。
【0023】
このような処理を実行すべく、従来のシステムでは、全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルと、多数の事業者のそれぞれの個別単語ベクトル及び個別科目ベクトルを格納する必要があった。科目ベクトルについては、使用する勘定科目の総数が100~200等の単位であり、そのデータ量はあまり多くないが、単語ベクトルは、単語の総数が勘定科目の総数と比較して桁違いに大きいことから、そのデータ量が膨大になり得る。特に、n-gramを採用している場合、顕著となる。
【0024】
本実施形態に係る会計情報管理装置100は、個別推論において、単語ベクトルを学習せずに、全体推論において作成した単語ベクトルを用いて科目ベクトルのみを学習する。言い換えると、本実施形態に係る会計情報管理装置100では、全体推論の単語ベクトルを、個別推論に流用する。
【0025】
個別単語ベクトル及び個別科目ベクトルを用いた推論(第1の推論と記載する。)と、全体単語ベクトル及び個別科目ベクトルを用いた推論(第2の推論と記載する。)を比較してみたところ、第2の推論の精度は第1の推論の精度よりも高くなることがわかった。これは、科目ベクトルと比較して単語ベクトルは、個人毎、個人事業主毎、法人毎の違いが出にくい性質があるので、個別単語ベクトルよりも多くのデータに基づいて生成される全体単語ベクトルを用いた推論の方が有利になったことに起因すると考えられる。
【0026】
このように、本実施形態に係る会計情報管理装置100によれば、多数の事業者の個別単語ベクトルを格納する必要をなくすことによって、データ容量の大幅な削減を実現しつつ、推論精度の向上をも実現することができる。
【0027】
図2は、会計情報管理装置100の機能構成の一例を概略的に示す。会計情報管理装置100は、登録部102、格納部104、ベクトル生成部106、摘要取得部108、及び推論部110を備える。
【0028】
登録部102は、各種登録を受け付ける。登録部102は、ユーザ350による通信端末300を用いた各種登録を受け付けてよい。登録部102は、取引情報提供装置200による各種登録を受け付けてもよい。登録部102は、例えば、取引情報の登録を受け付ける。登録部102は、例えば、会計情報の登録を受け付ける。登録部102は、例えば、事業者関連情報の登録を受け付ける。登録部102は、登録を受け付けた各種情報を、事業者を識別する事業者識別情報に対応付けて格納部104に格納してよい。
【0029】
ベクトル生成部106は、格納部104に格納されている情報を用いて、各種ベクトルを生成する。ベクトル生成部106は、例えば、全体取引データを用いて全体単語ベクトルを生成する。全体取引データは、複数の事業者の個別取引データを含む。個別取引データは、摘要と、当該摘要に対応する取引が仕訳された勘定科目とを含む。ベクトル生成部106は、生成した全体単語ベクトルを格納部104に格納する。
【0030】
また、例えば、ベクトル生成部106は、全体取引データ及び全体単語ベクトルを用いて、全体推論用の全体科目ベクトルを生成する。ベクトル生成部106は、生成した全体科目ベクトルを格納部104に格納する。
【0031】
また、例えば、ベクトル生成部106は、複数の事業者のそれぞれについて、個別取引データと、全体単語ベクトルとを用いて、個別推論用の、個別科目ベクトルを生成する。ベクトル生成部106は、生成した個別科目ベクトルを格納部104に格納する。
【0032】
また、例えば、ベクトル生成部106は、全体取引データに含まれる複数の個別取引データのうちの一部の個別取引データを含むグループ別取引データと、全体単語ベクトルとを用いて、グループ別取引データに対応する、摘要から勘定科目を推論するためのグループ別科目ベクトルを生成する。グループ別取引データは、全体取引データよりも少ない、任意の数の個別取引データを含んでよい。
【0033】
グループの数は、任意の数であってよい。グループは、業種別、業態別、取引関係等の属性に応じたグループであってよく、任意に選択された事業者によって構成されたグループであってもよい。ベクトル生成部106は、グループ毎に、グループ別科目ベクトルを生成してよい。ベクトル生成部106は、生成したグループ別科目ベクトルを格納部104に格納する。
【0034】
摘要取得部108は、勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する。摘要取得部108は、例えば、登録部102によって新たに登録され、格納部104に格納された取引情報に含まれる摘要を、勘定科目を推論する対象として取得する。摘要取得部108は、ユーザ350によって通信端末300を介して指定された摘要を、勘定科目を推論する対象として取得してもよい。
【0035】
推論部110は、摘要取得部108が取得した摘要に対して、勘定科目を推論する。推論部110は、例えば、全体推論を実行することにより、勘定科目を推論する。すなわち、推論部110は、格納部104に格納されている全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを用いて、勘定科目を推論する。
【0036】
また、推論部110は、例えば、個別推論を実行することにより、勘定科目を推論する。すなわち推論部110は、格納部104に格納されている全体単語ベクトルと、対象となる事業者に対応する個別科目ベクトルとを用いて、勘定科目を推論する。
【0037】
また、推論部110は、例えば、グループ別推論を実行することにより、勘定科目を推論する。すなわち推論部110は、格納部104に格納されている全体単語ベクトルと、対象となるグループに対応するグループ別科目ベクトルとを用いて、勘定科目を推論する。
【0038】
図3は、ベクトル生成部106による全体推論用の学習処理の流れの一例を概略的に示す。ここでは、複数の事業者の会計情報が格納部104に格納されている状態を開始状態として説明する。
【0039】
ステップ(ステップをSと省略して記載する場合がある。)102では、ベクトル生成部106が、格納部104から全体取引データを取得する。ベクトル生成部106は、格納部104に格納されている全事業者の個別取引データを含む全体取引データを取得してよい。ベクトル生成部106は、格納部104に格納されている全事業者のうち、一部の事業者の個別取引データを含む全体取引データを取得してもよい。
【0040】
S104では、ベクトル生成部106が、学習データを生成する。学習データは、例えば、全体取引データに含まれる複数の摘要と勘定科目との対を、1行ずつ並べたものであってよい。
【0041】
S106では、ベクトル生成部106が、学習データに含まれる複数の摘要から、単語辞書を生成する。ベクトル生成部106は、複数の摘要から抽出した複数の単語のそれぞれに、単語を識別するためのIDを割り当てた単語辞書を生成してよい。ベクトル生成部106は、例えば、複数の摘要に存在する、スペース分割した単語と、単語をWord-Ngramで結合した単語とを単語辞書に含めてよい。ベクトル生成部106は、生成した単語辞書を格納部104に格納する。
【0042】
S108では、ベクトル生成部106が、全体単語ベクトルの行列Aを初期化する。ベクトル生成部106は、一様分布のランダム値によって、行列Aを初期化してよい。ランダム値の生成方法は、ガウス分布を用いる等、公知の任意の手法を用いてよい。
【0043】
S110では、ベクトル生成部106が、全体科目ベクトルを初期化する。ベクトル生成部106は、全体科目ベクトルとなる出力層Bを初期化してよい。ベクトル生成部106は、複数の勘定科目の各次元に対応する値をすべて0とすることによって、出力層Bを初期化してよい。
【0044】
S112では、ベクトル生成部106が、学習データの一部を読み取る。ベクトル生成部106は、例えば、摘要と勘定科目との対が1行ずつ並べられている学習データから、1行分を読み取る。ベクトル生成部106は、読み取った行に含まれる摘要を、one-hotベクトルに変換してよい。
【0045】
S114では、ベクトル生成部106が、隠れ層を算出する。ベクトル生成部106は、全体単語ベクトルの行列Aと、S112で変換したone-hotベクトルとの内積を計算することによって、隠れ層を算出する。
【0046】
S116では、ベクトル生成部106が、スコアを計算する。ベクトル生成部106は、出力層Bのうちの、学習データに含まれる勘定科目に対応する行と、S114において計算した隠れ層との内積を計算することによって、スコアを計算する。
【0047】
S118では、ベクトル生成部106が、更新量αを算出する。ベクトル生成部106は、下記数式1によって、更新量αを算出してよい。
【0048】
【数1】
【0049】
スコアは、S116において算出されたスコアである。lrは、学習率(ハイパーパラメータ)である。lrは、学習の間、同じ値であってよい。lrは、学習が進むにつれて変化してもよい。例えば、lrは、学習が進むにつれて低減される。
【0050】
S120では、ベクトル生成部106が、勾配ベクトルを算出する。ベクトル生成部106は、出力層Bのうちの、学習データに含まれる勘定科目に対応する行の転置行列と、S118において算出した更新量αとの内積を計算することによって、勾配ベクトルを算出してよい。
【0051】
S122では、ベクトル生成部106が、全体科目ベクトルを更新する。ベクトル生成部106は、出力層Bに対して、S114において算出した隠れ層の転置行列に更新量αを乗じた値を加算することによって、全体科目ベクトルを更新してよい。
【0052】
S124では、ベクトル生成部106が、全体単語ベクトルを更新する。ベクトル生成部106は、全体単語ベクトルの行列Aに対して、S120において算出した勾配ベクトルを加算することによって、全体単語ベクトルを更新してよい。
【0053】
S126では、ベクトル生成部106が、学習が終了したか否かを判定する。ベクトル生成部106は、S104において生成した学習データのすべてについて処理が完了した場合、学習が終了したと判定し、完了していない場合、学習が終了していないと判定してよい。学習が終了していないと判定した場合、S112に戻り、ベクトル生成部106が、次の学習データの一部を読み取る。
【0054】
このように、ベクトル生成部106は、従来のfastTextと同様の流れで、全体推論用の学習処理を実行してよい。
【0055】
図4は、ベクトル生成部106による個別推論用の学習処理の流れの一例を概略的に示す。ここでは、図3に示す処理が実行されることによって、全体単語ベクトルの学習が終了した状態を開始状態として説明する。
【0056】
S202では、ベクトル生成部106が、図3に示す処理が実行されることによって格納部104に格納されている単語辞書及び全体単語ベクトルを取得する。S204では、ベクトル生成部106が、格納部104に格納されている複数の個別取引データのうち、対象となる1つの個別取引データを取得する。
【0057】
S206では、ベクトル生成部106が、学習データを生成する。学習データは、例えば、個別取引データに含まれる複数の摘要と勘定科目との対を、1行ずつ並べたものであってよい。
【0058】
S208では、ベクトル生成部106が、個別科目ベクトルを初期化する。ベクトル生成部106は、個別科目ベクトルとなる出力層Bを初期化してよい。ベクトル生成部106は、複数の勘定科目の各次元に対応する値をすべて0とすることによって、出力層Bを初期化してよい。
【0059】
S210では、ベクトル生成部106が、学習データの一部を読み取る。ベクトル生成部106は、例えば、摘要と勘定科目との対が1行ずつ並べられている学習データから、1行分を読み取る。ベクトル生成部106は、読み取った行に含まれる摘要を、one-hotベクトルに変換してよい。
【0060】
S212では、ベクトル生成部106が、隠れ層を算出する。ベクトル生成部106は、全体単語ベクトルの行列Aと、S210で変換したone-hotベクトルとの内積を計算することによって、隠れ層を算出する。
【0061】
S214では、ベクトル生成部106が、スコアを計算する。ベクトル生成部106は、出力層Bのうちの、学習データに含まれる勘定科目に対応する行と、S212において算出した隠れ層との内積を計算することによって、スコアを計算する。
【0062】
S216では、ベクトル生成部106が、更新量αを算出する。ベクトル生成部106は、上記数式1によって、更新量αを算出してよい。
【0063】
S218では、ベクトル生成部106が、個別科目ベクトルを更新する。ベクトル生成部106は、出力層Bに対して、S212において算出した隠れ層の転置行列に更新量αを乗じた値を加算することによって、全体科目ベクトルを更新してよい。
【0064】
S220では、ベクトル生成部106が、学習が終了したか否かを判定する。ベクトル生成部106は、S206において生成した学習データのすべてについて処理が完了した場合、学習が終了したと判定し、完了していない場合、学習が終了していないと判定してよい。学習が終了していないと判定した場合、S210に戻り、ベクトル生成部106が、次の学習データの一部を読み取る。
【0065】
上述したように、本実施形態に係るベクトル生成部106は、個別科目ベクトルを初期化し、個別取引データ及び全体単語ベクトルを用いて個別科目ベクトルを更新することにより、個別科目ベクトルを生成し、全体単語ベクトルは更新しない。全体単語ベクトルに対して、例えば、一つの個別取引データを用いて再学習をしてしまうと、個別に単語ベクトルを保持する必要が生じてしまい、記憶容量の増加という問題を招いてしまう。本実施形態に係る会計情報管理装置100によれば、このような事態を防止することができる。
【0066】
また、全体推論用に生成された全体単語ベクトルに対して、後から追加学習を実行すると、全体単語ベクトルの精度が低下し得る。なぜなら、fastTextのようなライブラリにおける学習は、より後のデータに対する依存度が高いので、追加学習をした場合、追加データの傾向がより強く表れてしまうためである。本実施形態に係るベクトル生成部106は、個別推論用の学習において、全体単語ベクトルを流用し、かつ、全体語ベクトルの更新を、あえて実行しないようにすることで、このような、全体単語ベクトルの精度の低下を防止することもできる。
【0067】
図4に示す処理は、例えば、fastTextに対して、全体推論用の単語辞書と全体単語ベクトルとを読み込み、個別科目ベクトルの更新は行う一方、全体単語ベクトルの更新は行わないように改修を加えることによって生成したライブラリを用いることによって実現されてよい。また、図4に示す処理は、fastTextとは独立して生成されたライブラリを用いることによって実現されてもよい。
【0068】
ベクトル生成部106は、図4に示した個別推論用の学習処理の流れと同様の流れで、グループ別推論用の学習処理を実行してよい。この場合、ベクトル生成部106は、S204において、格納部104に格納されている複数のグループ別取引データのうち、対象となる1つのグループ別取引データを取得する。また、ベクトル生成部106は、S208において、グループ別科目ベクトルを初期化する。
【0069】
図5は、単語辞書120の一例を概略的に示す。ここでは、説明を簡単にすべく、全体取引データに、「あう」という摘要と勘定科目Aとの対、及び「あいう」という摘要と勘定科目Bとの対のみが含まれる場合の、単語辞書120の一例を示す。図6は、初期化された全体単語ベクトル130の一例を概略的に示す。図7は、初期化された全体科目ベクトル140の一例を概略的に示す。
【0070】
以下、全体推論のための学習と、個別推論のための学習について、単語辞書120、全体単語ベクトル130、及び全体科目ベクトル140を用いて、その概要を説明する。ベクトル生成部106は、全体推論のための学習をする場合に、まず、1つ目の取引データである「あう」及び勘定科目Aを取得して、「あう」を勘定科目Aで学習する。具体的に、まず、ベクトル生成部106は、下記数式2に示すように、全体単語ベクトル130と、「あう」のone-hotベクトルとの内積を計算することによって、隠れ層を算出する。
【0071】
【数2】
【0072】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式3に示すように、全体科目ベクトル140の勘定科目Aの行と、隠れ層との内積を計算することによって、スコアを算出する。
【0073】
【数3】
【0074】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式4に示すように、1からスコアを減算した値に、lrを乗ずることによって、更新量αを算出する。
【0075】
【数4】
【0076】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式5に示すように、全体科目ベクトル140の勘定科目Aの行の転置行列と、更新量αとの内積を計算することによって、勾配ベクトルを算出する。
【0077】
【数5】
【0078】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式6に示すように、全体科目ベクトル140に、隠れ層の転置行列に更新量αを乗じた値を加算することによって、全体科目ベクトル140を更新する。
【0079】
【数6】
【0080】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式7に示すように、全体単語ベクトル130に対して、勾配ベクトルを加算することによって、全体単語ベクトル130を更新する。
【0081】
【数7】
【0082】
そして、ベクトル生成部106は、次の取引データである「あいう」及び勘定科目Bを取得して、同様に学習を実行する。全体取引データに、より多くの取引データが含まれる場合、ベクトル生成部106は、同様に学習を繰り返し実行することによって、学習済みの全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを生成してよい。
【0083】
次に、ベクトル生成部106は、個別推論のための学習を実行する。ここでは、説明を簡単にすべく、個別取引データに、「あえ」という摘要と勘定科目Aとの対、及び「いう」という摘要と勘定科目Dとの対のみが含まれる場合の、学習の流れを説明する。
【0084】
ベクトル生成部106は、まず、単語辞書120と、学習済みの全体単語ベクトル130とを格納部104から取得する。ここでは、図6に示す全体単語ベクトル130が、学習済みの全体単語ベクトル130と仮定して説明する。
【0085】
次に、ベクトル生成部106は、個別科目ベクトル150を初期化する。ベクトル生成部106は、複数の勘定科目の各次元に対応する値をすべて0とすることによって、個別科目ベクトル150を初期化してよい。図8は、初期化された個別科目ベクトル150の一例を示す。
【0086】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式8に示すように、全体単語ベクトル130と、「あえ」のone-hotベクトルとの内積を計算することによって、隠れ層を算出する。
【0087】
【数8】
【0088】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式9に示すように、個別科目ベクトル150の勘定科目Aの行と、隠れ層との内積を計算することによって、スコアを算出する。
【0089】
【数9】
【0090】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式10に示すように、1からスコアを減算した値に、lrを乗ずることによって更新量αを算出する。
【0091】
【数10】
【0092】
次に、ベクトル生成部106は、下記数式11に示すように、個別科目ベクトル150に、隠れ層の転置行列に更新量αを乗じた値を加算することによって、個別科目ベクトル150を更新する。
【0093】
【数11】
【0094】
そして、ベクトル生成部106は、次の取引データである「いう」及び勘定科目Dを取得して、同様に学習を実行する。個別取引データに、より多くの取引データが含まれる場合、ベクトル生成部106は、同様に学習を繰り返し実行することによって、学習済みの個別科目ベクトルを生成してよい。ベクトル生成部106は、グループ別推論について、個別推論と同様に学習を実行してよい。
【0095】
図9は、会計情報管理装置100による推論処理の流れの一例を概略的に示す。ここでは、複数の摘要のそれぞれに対応する勘定科目を推論する推論処理の流れを説明する。
【0096】
S302では、摘要取得部108が、勘定科目を推論する対象となる摘要を取得する。S304では、推論部110が、全体推論を実行するか、個別推論を実行するかを決定する。推論部110は、例えば、設定に従って、全体推論を実行するか、個別推論を実行するかを決定する。全体推論を実行すると決定した場合、S306に進み、個別推論を実行すると決定した場合、S310に進む。
【0097】
S306では、推論部110が、格納部104から、全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを読み出す。S308では、推論部110が、S306において読み出した全体単語ベクトル及び全体科目ベクトルを用いて、複数の摘要のそれぞれに対する勘定科目を推論する。
【0098】
S310では、推論部110が、格納部104から、全体単語ベクトル及び個別科目ベクトルを読み出す。S312では、推論部110が、S310において読み出した全体単語ベクトル及び個別科目ベクトルを用いて、複数の摘要のそれぞれに対する勘定科目を推論する。そして、処理を終了する。このように、推論部110は、設定に従って、全体推論を実行するか個別推論を実行するかを決定してよい。また、推論部110は、同様にして、設定に従って、全体推論を実行するかグループ別推論を実行するかを決定してもよい。
【0099】
図9では、設定に従って、全体推論を実行するか個別推論を実行するかを決定する場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、推論部110は、摘要取得部108が取得した摘要に対して、個別推論を実行して勘定科目を推論し、推論の確度が予め定められた閾値より高い場合には、当該勘定科目を推論結果とし、推論の確度が閾値より低い場合に、摘要に対して全体推論を実行する。また、例えば、推論部110は、摘要取得部108が取得した摘要に対して、グループ別推論を実行して勘定科目を推論し、推論の確度が予め定められた閾値より高い場合には、当該勘定科目を推論結果とし、推論の確度が閾値より低い場合に、摘要に対して全体推論を実行する。
【0100】
図10は、単語辞書122の一例を概略的に示す。本実施形態に係る会計情報管理装置100は、単語辞書122に、複数の摘要から抽出した複数の単語に加えて、事業者関連情報を含めてもよい。図10では、事業者関連情報として、パラメータA及びパラメータBを含む単語辞書122を例示している。例えば、パラメータAは、事業者が個人事業主であるか否かを示し、パラメータBは、事業者が法人であるか否かを示す。
【0101】
ベクトル生成部106は、単語辞書122を用いることによって、複数の摘要から抽出した複数の単語と、事業者関連情報とを用いて、全体単語ベクトルを生成し得る。ベクトル生成部106は、図11に例示するような、全体単語ベクトル160を生成して、学習してよい。ベクトル生成部106は、全体単語ベクトル160を用いて、個別科目ベクトルや、グループ別科目ベクトルを生成してよい。このように、ベクトル生成部106は、事業者関連情報をさらに用いて、個別科目ベクトル及びグループ別科目ベクトルを生成してよい。
【0102】
事業者が個人事業主であるか法人であるかを示す情報を含む事業者関連情報を用いることによって、個人事業主による仕訳の傾向と、法人による仕訳の傾向とを反映した学習を実現することができ、勘定科目の推論精度の向上に貢献することができる。
【0103】
事業者関連情報は、事業者の業種を示す情報を含んでもよい。この場合、単語辞書122には、複数の業種のそれぞれに対応するパラメータが追加されてよい。事業者の業種を示す情報を含む事業者関連情報を用いることによって、業種毎の仕訳の傾向を反映した学習を実現することができ、勘定科目の推論精度の向上に貢献することができる。事業者関連情報は、事業者の業態等、事業者に関連する他の様々な情報を含んでもよい。
【0104】
図12は、会計情報管理装置100として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、本実施形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、本実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0105】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、及びグラフィックコントローラ1216を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ1226、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。DVDドライブ1226は、DVD-ROMドライブ及びDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230及びキーボードのようなレガシの入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されている。
【0106】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0107】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVDドライブ1226は、プログラム又はデータをDVD-ROM1227等から読み取り、記憶装置1224に提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0108】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0109】
プログラムは、DVD-ROM1227又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0110】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM1227、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0111】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ1226(DVD-ROM1227)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0112】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0113】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0114】
本実施形態におけるフローチャート及びブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表わしてよい。特定の段階及び「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及びプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、及び他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0115】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0116】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0117】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0118】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0119】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0120】
10 ネットワーク、100 会計情報管理装置、102 登録部、104 格納部、106 ベクトル生成部、108 摘要取得部、110 推論部、120 単語辞書、122 単語辞書、130 全体単語ベクトル、140 全体科目ベクトル、150 個別科目ベクトル、160 全体単語ベクトル、200 取引情報提供装置、300 通信端末、350 ユーザ、1200 コンピュータ、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インタフェース、1224 記憶装置、1226 DVDドライブ、1227 DVD-ROM、1230 ROM、1240 入出力チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12