(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電子機器のLCD取付構造
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20240306BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G02F1/1333
H05K5/02 V
(21)【出願番号】P 2020130196
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】植田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】住 賢司
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332770(JP,A)
【文献】特開2005-072114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G09F 9/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のLCD取付構造であって、
電子機器の筐体内に固定されるシャーシと、
前記シャーシに固定される基板ユニットと、
前記筐体の正面窓にLCDの表示面が臨み、かつ前記基板ユニットに対面する位置に配置されるLCD、及びこのLCDの少なくとも外周部及び背面を保持するLCDホルダーから成るLCDユニットと、を備え、
前記シャーシは、当該シャーシの幅方向両側面に前記LCDホルダーを係止するためのフック部を有し、
前記LCDホルダーは、前記シャーシのフック部に係止される受け部を有し、
前記LCDユニットは、前記LCDホルダーの受け部が前記シャーシのフック部に結合されることで前記シャーシに固定され
、
前記シャーシは、前記フック部の下方に外方へ突出する段差を有し、
前記LCDホルダーは、前記シャーシに固定された状態で、前記受け部を有する脚部の下端が前記段差に当接し得る構成とされている、ことを特徴とする電子機器のLCD取付構造。
【請求項2】
前記シャーシのフック部は、当該シャーシの幅方向両側面に設けられた凸部から成り、
前記LCDホルダーの受け部は、前記シャーシの幅方向両側面に沿う方向に延出された
脚部に設けられ、前記凸部が引っ掛かる開口から成
り、前記開口は下方が拡がるテーパー形状とされている、ことを特徴とする請求項1記載の電子機器のLCD取付構造。
【請求項3】
前記LCDユニットは、前記LCDの背面と前記基板ユニットとの間に空間を持った状態で前記シャーシに固定される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器のLCD取付構造。
【請求項4】
前記LCDは、前記基板ユニットの幅寸法と同等以上の幅寸法を有している、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電子機器のLCD取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機などの電子機器のLCD(表示用液晶)の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、
図5に示すように、電子機器の筐体内に内装されるLCD5の幅W1が、基板ユニット3の幅W2よりも小さい。そのため、LCD5の固定スペースに余裕があり、LCD5の取付は、基板ユニット3に設けた取付穴にLCD5を固定することによって行っていた。
【0003】
この種のLCD取付例として、回路基板の側面に設けられた突辺、貫通孔などを用いて液晶ユニット(LCD)を回路基板に固定することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、組立製品の第1の部材と第2の部材を取付ける構造として、一方の部材に設けられたフックを、他方の部材のフック受けに引っ掛けることにより結合することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5257345号公報
【文献】特許第4718421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のLCDの大型化に伴い、筐体内の基板の幅よりもLCDの幅が大きくなり、LCDを基板上に取り付けることが困難になっている。基板上にLCDを取り付けることができない場合、筐体フレームにLCDを固定する方法が考えられる。しかしながら、その場合、LCDの端子を基板回路と接続するのにフレキシブルケーブルを用いる必要がある。ところが、フレキシブルケーブルを使用すると、ロボットによる組立が困難になる。そのため、ロボットを用いた組立をするには、LCDは基板側に固定する必要があった。
【0006】
上述の特許文献1に示されるような取付構造は、LCDの大型化に伴い、LCDを基板上に取り付けることが困難になった場合への対応になっていないし、製品落下時にLCD周辺で受けた衝撃が直接的に基板に伝わり、基板を損傷し易いものとなっていた。また、特許文献2に示される取付構造は、複数の部材の分解を容易にするものの、外部から衝撃が加わった場合への対応には適当ではない。
【0007】
そこで、本発明は、LCDの大型化に伴い、LCDを基板上に取り付けることができない場合に対処し、省スペースでLCDの取付を実現できると共に、製品落下時の衝撃を基板に伝え難くし、また、ロボットによる組立が容易な、電子機器のLCD取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子機器のLCD取付構造であって、
電子機器の筐体内に固定されるシャーシと、
前記シャーシに固定される基板ユニットと、
前記筐体の正面窓にLCDの表示面が臨み、かつ前記基板ユニットに対面する位置に配置されるLCD、及びこのLCDの少なくとも外周部及び背面を保持するLCDホルダーから成るLCDユニットと、を備え、
前記シャーシは、当該シャーシの幅方向両側面に前記LCDホルダーを係止するためのフック部を有し、
前記LCDホルダーは、前記シャーシのフック部に係止される受け部を有し、
前記LCDユニットは、前記LCDホルダーの受け部が前記シャーシのフック部に結合されることで前記シャーシに固定され、
前記シャーシは、前記フック部の下方に外方へ突出する段差を有し、
前記LCDホルダーは、前記シャーシに固定された状態で、前記受け部を有する脚部の下端が前記段差に当接し得る構成とされている、ことを特徴とする。
【0009】
上記LCD取付構造において、前記シャーシのフック部は、当該シャーシの幅方向両側面に設けられた凸部から成り、前記LCDホルダーの受け部は、前記シャーシの幅方向両側面に沿う方向に延出された脚部に設けられ、前記凸部が引っ掛かる開口から成り、前記開口は下方が拡がるテーパー形状とされている、ものとしてもよい。
【0010】
上記LCD取付構造において、前記LCDユニットは、前記LCDの背面と前記基板ユニットとの間に空間を持った状態で前記シャーシに固定される、ものとしてもよい。
【0011】
上記LCD取付構造において、前記LCDは、前記基板ユニットの幅寸法と同等以上の幅寸法を有している、ものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、LCD表示部の大型化に拘わらずに、LCDユニットを、基板でなく、LCDホルダーを介してシャーシに省スペースで固定することができる。また、LCDホルダーが下方から支えられ、製品落下時の衝撃が基板に伝わり難くなり、壊れにくい構造となる。また、組立時にLCDユニットと基板の電気的接続が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器のLCD取付構造を示す斜視図。
【
図2】同LCD取付構造を示す、
図1とは異なる角度からの斜視図。
【
図4】同LCD取付構造におけるシャーシの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る電子機器のLCD取付構造について図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、電子機器として無線機のLCD取付構造を示し、
図3はLCD取付構造の分解状態を示す。LCD取付構造は、電子機器1の筐体(図示なし)内に固定される金属素材で成るシャーシ2と、シャーシ2に固定される基板ユニット3と、基板ユニット3に対面する位置に配置される表示用のLCDユニット4と、を備える。
【0015】
LCDユニット4は、LCD5、及びこのLCD5を保持するLCDホルダー6から成る。LCDホルダー6は、少なくとも直方体形状のLCD5の外周部及び背面を保持して、LCD5をシャーシ2に固定するための部材である。LCD5は、その表示面が筐体の正面窓に臨むように配置される。
【0016】
シャーシ2は、電磁シールド機能を持つ金属素材で成り、略長方形の基板ユニット3の平面外形(左右幅及びそれに直交する縦方向寸法)と平面視で同等以上の大きさを有する。LCDホルダー6は、本実施形態では略枠形状にした金属板から成り、その左右幅寸法がシャーシ2の左右幅寸法と略同等とされ、シャーシ2の上に載置され固定される。LCDホルダー6は、その枠部60の外周縁から切り起こした起立片6a,6b,6c,6d,6eを有し、これらによりLCD5の外周縁を保持する。
【0017】
LCD5は、基板ユニット3の幅寸法と同等以上の幅寸法Wを有する大型サイズとされている。LCD5は、液晶パネル51と、液晶パネル51の外周縁を囲むフレーム52と、液晶パネル51から導出されたフレキシブルケーブル53とを有する。フレキシブルケーブル53は、基板ユニット3の回路に設けられたソケットに電気的に接続される。なお、シャーシ2の上端面には無線機のVOL用のエンコーダー7が固定されている。
【0018】
シャーシ2は、その幅方向両側面にLCDホルダー6を係止するためのフック部21,22,23,24を有している。一方、LCDホルダー6は、枠部60からシャーシ2の幅方向両側面に沿う方向に延出された脚部6f,6g,6h,6iに、シャーシ2のフック部21,22,23,24に係止される受け部61,62,63,64を有している。上記LCDホルダー6の脚部6f,6g,6h,6iは、金属板を打ち抜き折り曲げることで形成可能である。ここに、LCDホルダー6の受け部61,62,63,64を有する脚部6f,6g,6h,6iの内面が、シャーシ2のフック部21,22,23,24を有する両側面に対して外接する関係にしておくことが望ましい。これにより、シャーシ2のフック部21,22,23,24にLCDホルダー6の受け部61,62,63,64を、それぞれ金属素材の弾性を持って結合させることで、LCDユニット4をシャーシ2に容易に固定することができる。
【0019】
このように、LCDホルダー6及びシャーシ2の側面を利用してLCD5をシャーシ2に固定することにより、LCD表示部の大型化に拘わらずにLCD5を基板でなくシャーシ2に省スペースで固定することができる。
【0020】
本実施形態においては、シャーシ2のフック部21,22,23,24は、シャーシ2の幅方向両側面に設けられた凸部から成り、LCDホルダー6の受け部61,62,63,64は、シャーシ2の幅方向両側面に沿う方向に延出された脚部6f,6g,6h,6iに設けられ、上記凸部が引っ掛かる開口から成る。これらの結合により、LCDホルダー6をシャーシ2に容易に固定することができると共に、LCDホルダー6がシャーシ2により下方から支えられるので、電子機器の落下時に表示部周辺で衝撃(
図2の矢印F)を受けたとしても、その衝撃が基板ユニット3に伝わり難くなる。
【0021】
また、LCDホルダー6は、LCD5の背面と基板ユニット3との間に空間を持った状態でLCDユニット4をシャーシ2に固定できるような寸法に構成しておく。これにより、
図2に示されるように、基板ユニット3の上面の空間を有効利用して、各種部品を基板上に配置できる。また、LCDホルダー6の枠部60の外周縁から切り起こした起立片6a,6b,6c,6d,6eは、それらの上端部がLCD5の表示面よりも上方に突出している。このため、筐体が衝撃を受けても、LCD5が直接、衝撃を受けることは防止される。
【0022】
本実施形態によるシャーシ2の詳細構成を
図4に示す。シャーシ2は、上記略長方形の基板ユニット3を受け入れるように周辺部に設けられた複数の立壁のうち、シャーシ2の幅方向両側面に位置する立壁2a,2b,2c,2dにフック部21,22,23,24が設けられている。フック部21,22,23,24により、LCDホルダー6を係止する。
【0023】
ここで、再び
図3を参照して、LCD取付の手順を説明する。まず、LCD5は、その背面が両面粘着テープ等でもってLCDホルダー6に固定され、また、LCD5の外周縁がLCDホルダー6の枠部60の外周縁から切り起こされた起立片6a,6b,6c,6d,6eにより保持することにより、LCDユニット4とされる。一方、基板ユニット3はシャーシ2に固定する。LCDユニット4のフレキシブルケーブル53は基板ユニット3のソケット3aに電気的に接続する。
【0024】
次いで、LCDユニット4をシャーシ2に基板ユニット3を跨るようにして固定する。LCDユニット4のシャーシ2への固定は、シャーシ2の幅方向両側面に設けられたフック部21,22,23,24(実施形態の凸部)に、LCDホルダー6の受け部61,62,63,64(実施形態の開口)に結合させることで行う。これらの結合でもって、LCDホルダー6はシャーシ2により下方から支えられて、取付が成される。
【0025】
(実施の形態2)
上記実施形態1においては、フレキシブルケーブル53によりLCD5と基板ユニット3とを接続する構成について説明したが、本発明は、フレキシブルケーブル53を必須とする構成に限られるものではない。すなわち、実施の形態2として、LCD5の背面と基板ユニット3に、ボード・トゥ・ボードコネクタやバネ端子などを設けて、電気的接続をする構成としても構わない。その場合、フレキシブルケーブル53を接続する組立工程を省くことができ、LCDユニット4を基板ユニット3の上から積層することのみで電子機器を組立てることができる。このため、ロボットによる組立とすることが容易となる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、シャーシ2のフック部21,22,23,24と、LCDホルダー6の受け部61,62,63,64とは、相互に結合し合い、支えとなる構造であれば任意の形態を採用することができる。すなわち、シャーシ2のフック部21,22,23,24が、凸部に限られず、段差や凹部であって、LCDホルダー6の受け部61,62,63,64が、開口に限られず、段差や凸部であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 電子機器
2 シャーシ
2a,2b,2c,2d 立壁
21,22,23,24 フック部
3 基板ユニット
4 LCDユニット
5 LCD
51 液晶パネル
52 フレーム
53 フレキシブルケーブル
6 LCDホルダー
6a,6b,6c,6d,6e 起立片
6f,6g,6h,6i 脚部
60 枠部
61,62,63,64 受け部