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特許7448903抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法
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  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図1
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2A
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2B
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2C
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2D
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2E
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図2F
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図3
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図4
  • 特許-抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】抗ROR1免疫療法によってがんを処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240306BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240306BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240306BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240306BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240306BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/30
C07K14/725
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/0783
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020524450
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018059003
(87)【国際公開番号】W WO2019090110
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/581,284
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517435353
【氏名又は名称】レンティジェン・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LENTIGEN TECHNOLOGY, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】514124403
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロフ,ディミタ・エス
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジョンユー
(72)【発明者】
【氏名】オレンタス,リマス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディナ
(72)【発明者】
【氏名】ドロプリク,ボロ
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527070(JP,A)
【文献】特表2017-527275(JP,A)
【文献】特表2017-506513(JP,A)
【文献】特表2014-507118(JP,A)
【文献】Clin. Cancer Res.,2013年,Vol.19, No.12,pp.3153-3164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号7を含むヌクレオチド配列でコードされるROR1抗原結合ドメインを含む少なくとも1つの細胞外の抗原結合ドメインと、CD8膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインと、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータ細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、単離された核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項3】
前記ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
請求項2に記載のベクターを含む細胞。
【請求項5】
キメラ抗原受容体(CAR)をそれらの表面に発現するように遺伝的に改変された抗腫瘍有効量のヒトT細胞の集団を含む医薬組成物であって、前記T細胞は、ヌクレオチド配列によりコードされるCARを含み、前記CARは、配列番号8のアミノ酸配列を含むROR1抗原結合ドメインを含む少なくとも1つの細胞外の抗原結合ドメイン、IgG4またはCD8の細胞外ドメインに由来するリンカードメイン、CD8膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータ細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含み、ここにおいてT細胞がROR-1を発現するがんを有するヒトのT細胞である、医薬組成物。
【請求項6】
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR-1)を発現するがんを治療する医薬組成物を製造するためのヒトT細胞の集団の使用であって、ここにおいてヒトT細胞はキメラ抗原受容体(CAR)をそれらの表面に発現するように遺伝的に改変されており、前記T細胞は、ヌクレオチド配列によりコードされるCARを含み、前記CARは、配列番号8のアミノ酸配列を含むROR1抗原結合ドメインを含む少なくとも1つの細胞外の抗原結合ドメイン、IgG4またはCD8の細胞外ドメインに由来するリンカーまたはスペーサードメイン、CD8膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータ細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含み、ここにおいてT細胞がROR-1を発現するがんを有する対象のT細胞である、使用。
【請求項7】
細胞外のROR1抗原結合ドメインは、リーダーペプチドをコードするリーダーヌクレオチド配列の後ろに位置する、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
細胞外のROR1抗原結合ドメインをコードする核酸配列は、配列番号7のヌクレオチドを含む核酸配列を含む、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
ROR-1を発現するがんが血液がんである、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記血液がんは白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記白血病は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、または慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記リンパ腫は、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、またはホジキンリンパ腫である、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ROR-1を発現するがんは、口腔および咽頭がん、消化器がん、呼吸器がん、骨および関節がん、軟部組織がん、皮膚がんを含む成人癌、小児腫瘍、中枢神経系の腫瘍、ならびに、乳房、生殖器系、泌尿器系、眼および眼窩、内分泌系、脳および他の神経系のがん、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、米国特許法第119(e)条に準拠して、2017年11月3日付で提出された米国仮特許出願第62/581,284号に基づく優先権を主張する。同米国仮特許出願の全記載内容を引用により本明細書に援用する。
【0002】
配列表
本願は、ASCII様式にて電子的に提出された配列表を含み、この配列表の全体を引用により本明細書に援用する。このASCIIのコピー(2018年10月25日作成)のファイル名は「SequenceListing.txt」であり、サイズは90.0キロバイトである。
【0003】
連邦政府の資金援助を受けた研究または開発に関する記述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所と米国保健福祉省の一機関との共同研究開発契約(Cooperative Research and Development Agreement)の実現によってなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0004】
本開示の分野
本願は、がんの分野、特に、ROR1抗原結合ドメイン、このROR1抗原結合ドメインを含有するキメラ抗原受容体(CAR)、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
がんは、人間の健康にとって非常に致死率の高い脅威の1つである。がんは、米国だけで毎年130万人近くが新たに罹患し、死亡原因としては心血管疾患に続いて第2位であり、死亡例の4例に1例はがんによるものである。こうした死亡例のほとんどは固形腫瘍が原因である。いくつかの特定のがんの医学的処置は著しく進歩したが、すべてのがんを合わせた5年生存率は、過去20年間で約10%しか改善されていない。がんまたは悪性腫瘍の転移および増殖は急速かつ制御不可能であるため、処置が極めて困難である。
【0006】
固形腫瘍および液性腫瘍の処置においては、非常に多くの治療上の要求事項が満たされていない。ROR1(受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1)は、CLL、乳房の癌、神経膠芽細胞腫、肺腺癌、および肉腫(ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、および線維肉腫)を含む多くの型のがんに高発現しているが、正常組織中には一般的には存在しない、胚性タンパク質である(Suping Zhangら,2012,The Onco-Embryonic Antigen ROR1 Is Expressed by a Variety of Human Cancers.Am J Pathol,181:1903-1910,Ashwini Balakrishnanら,2017,Analysis of ROR1 Protein Expression in Human Cancer and Normal Tissues.,Clin Cancer Res 23:3061-3071,Borcherding,Nicholasら,2017,ROR1,an Embryonic Protein with an Emerging Role in Cancer Biology.Protein&Cell 5.7(2014):496-502)。ROR1は、3つのスプライスバリアントを有し、これには、アミノ酸937個(シグナルペプチド1~29個)からなる104kDa(グリコシル化に依存して上限120kDa)の膜貫通型糖タンパク質と、これより小さい、細胞内形態および分泌形態の2つのバリアントとが含まれる(GeneBank NP_005003,Masiakowski,P.およびCarroll,R.D.,1992,A Novel Family of Cell Surface Receptors with Tyrosine Kinase-like Domain,J Biol Chem 36:26181-26190.)。形質転換された細胞の表面にROR1が存在するということは、ROR1を標的とすることによって、慢性リンパ球性白血病(CLL)などの多くの液性がんおよびそれら以外の固形腫瘍に対する新規のがん処置の開発が可能となり得ることを示す(Borcherding,N.,Kusner,D.ら,2014,ROR1,an embryonic protein with an emerging role in cancer biology.Protein&Cell,5:496-502)。
【0007】
一般的には成人組織中に存在しないが、少なくとも1つの報告によると、副甲状腺、膵島、ならびに食道、胃、および十二指腸の領域におけるROR1の発現が見いだされており(Ashwini Balakrishnanら,2017,Analysis of ROR1 Protein Expression in Human Cancer and Normal Tissues.,Clin Cancer Res 23:3061-3071)、このことは、ROR1を標的とする抗がん療法の臨床適用における注意の根拠となる。ROR1受容体はサイトゾルプロテインキナーゼドメインを含有し、これは、いくつかの報告によると、WntおよびEGFRのシグナル伝達に関与している(Borcherding,N.,Kusner,D.ら,2014,ROR1,an embryonic protein with an emerging role in cancer biology.Protein&Cell,5:496-502)。腫瘍において、ROR1は、上皮間葉転換(EMT)を誘発し、腫瘍の増殖、侵襲、および転移形成を促進し、アポトーシス耐性に影響を及ぼし得る(Yamaguchi,Tomoyaら,2012,“NKX2-1/TITF1/TTF-1-Induced ROR1 is required to sustain EGFR survival signaling in lung adenocarcinoma.” Cancer cell 21.3:348-361;Borcherding,N.,Kusner,D.ら,2014,ROR1,an embryonic protein with an emerging role in cancer biology.Protein&Cell,5:496-502)。腫瘍表現型への寄与におけるその役割から、これが腫瘍の開始または増悪において重要な機能を果たしている可能性があり、そのため、ドライバタンパク質であることが示される。
【0008】
がん処置におけるこれまでのアプローチは、手術、放射線療法、化学療法、および、血腫に対する骨髄移植を含む。しかしながら、現行の一次治療は、さらなる改善が必要であることを示す。このような改善は、新規の免疫療法方策にとって必要とされる。現在継続中の、ROR1抗原を標的とする前臨床研究および臨床試験研究は、複数のモダリティを使用して構築されている。ROR1特異的CARを発現するTリンパ球が、マウスおよび非ヒト霊長類系の両方において試験されている(Huang X,Park H,Greene J,Pao J,Mulvey E,Zhou SXら,2015,IGF1R-and ROR1-Specific CAR T Cells as a Potential Therapy for High Risk Sarcomas.PLoS ONE 10(7):e0133152;Hudecek M,Schmitt TM,Baskar S,Lupo-Stanghellini MT,Nishida T,Yamamoto TN,Bleakley M,Turtle CJ,Chang WC,Greisman HA,Wood B,Maloney DG,Jensen MC,Rader C,Riddell SR,2010,The B-cell tumor-associated antigen ROR1 can be targeted with T cells modified to express a ROR1-specific chimeric antigen receptor.Blood 116:4532-41.)。非ヒト霊長類において毒性がないことから、ヒトにおける研究に着手できるという確信がもたらされる(Berger,C.ら,2015,Safety of targeting ROR1 in primates with chimeric antigen receptor-modified T cells.Cancer Immunol Res 3:2016-216.)。さらに、未改変のROR1抗体および免疫毒素と結合したROR1抗体の両方が、治療的使用を目的として提案されている(Yang,Jiahuiら,2011,“Therapeutic potential and challenges of targeting receptor tyrosine kinase ROR1 with monoclonal antibodies in B-cell malignancies.” PloS One 6.6:e21018;Baskar,Sivasubramanianら,2012,“Targeting malignant B cells with an immunotoxin against ROR1.” MAbs,4:3,349-361.)。現行のB系白血病の標準治療は、高用量の化学療法または放射線療法による寛解導入処置に続いて地固め療法を行なうものであると考えられるが、必要に応じて幹細胞移植およびさらなる化学療法を行なうことを特徴とし得る(ワールドワイドウェブのcancer.govを参照)。こうした処置は毒性が高く、再発、二次性悪性腫瘍、またはGVHDなどの合併症のリスクもあるため、これに代わるより良い治療法が探索されている。目下のオープンの臨床試験は、血液悪性腫瘍に対するROR1標的T細胞(Genetically Modified T-Cell Therapy in Treating Patients with Advanced ROR1+ Malignancies,NCT02706392,資金援助:フレッドハッチンソン癌研究所(Fred Hutchinson Cancer Research Center),ClinicalTrials.gov アクセス日:2017年9月20日.)、および化学療法の範囲内での乳がんに対するROR1特異的抗体(Study of Circumtuzumab and Paclitaxel for Metastatic or Locally Advanced,Unresectable Breast Cancer,NCT02776917,資金援助:Barbara Parker,MD,University of California,San Diego,ClinicalTrials.gov アクセス日:2017年9月20日)を含む。
【0009】
キメラ抗原受容体(CAR)は、(1)細胞外の抗原結合モチーフ、(2)結合/膜貫通モチーフ、および(3)細胞内のT細胞シグナル伝達モチーフという3つの必須ユニットからなる混成分子である(Long AH,Haso WM,Orentas RJ.Lessons learned from a highly-active CD22-specific chimeric antigen receptor,Oncoimmunology.2013;2(4):e23621)。CARの抗原結合モチーフは、一般的に、免疫グロブリン(Ig)分子の最も小さい結合ドメインである一本鎖可変断片(single chain Fragment variable;ScFv)を模して作製される。受容体リガンド(すなわち、腫瘍において発現するIL-13受容体に結合するようにIL-13を設計した)などの他の抗原結合モチーフ、完全型免疫受容体、ライブラリ由来のペプチド、および自然免疫系エフェクター分子(たとえば、NKG2D)も、設計によって組み込まれている。CARを発現させる他の細胞標的(NKまたはガンマ-デルタT細胞など)も開発中である(Brown CEら Clin Cancer Res.2012;18(8):2199-209;Lehner Mら PLoS One.2012;7(2):e31210)。CARベクターを用いて形質導入するT細胞集団のうち活性が最も高いものを明らかにし、最適な培養および増殖技術を見つけ、CARタンパク質の構造自体を分子レベルで詳細に解明するには、さらに相当の労力が費やされなければならない。
【0010】
CARの結合モチーフは、IgGの定常ドメインなどの比較的安定な構造ドメインであってよい、または、長い可動性リンカーとして設計できる。IgG定常ドメイン由来構造モチーフなどの構造モチーフを使用して、T細胞細胞膜表面から遠い位置までScFv結合ドメインを引き延ばすことができる。このことは、結合ドメインが腫瘍細胞表面膜の特に近くにあるいくつかの腫瘍標的(ジシアロガングリオシドGD2など;Orentasら、この観察は未公開)にとって重要である可能性がある。これまでCARにおいて使用されているシグナル伝達モチーフはいずれも、CD3-ゼータ鎖を含む。というのは、このコアモチーフはT細胞活性化にとって重要なシグナルであるためである。最初に報告された第2世代のCARは、CD28シグナル伝達ドメインおよびCD28膜貫通配列を特徴とするものであった。このモチーフは、CD137(4-1BB)シグナル伝達モチーフをさらに含有する第3世代のCARに使用された(Zhao Yら J Immunol.2009;183(9):5563-74)。新技術が出現したことによって、抗CD3抗体および抗CD28抗体に結合したビーズによるT細胞の活性化、ならびにCD28からの古典的な「シグナル2」の存在を、CAR自体がコードする必要はもはやなくなった。ビーズ活性化を用いた第3世代ベクターは、in vitroアッセイにおいて第2世代ベクターを超えるものではないことが分かり、さらに、白血病マウスモデルにおいて第2世代ベクターを明らかに超える利益を提供するものではなかった(Haso W,Lee DW,Shah NN,Stetler-Stevenson M,Yuan CM,Pastan IH,Dimitrov DS,Morgan RA,FitzGerald DJ,Barrett DM,Wayne AS,Mackall CL,Orentas RJ.Anti-CD22-chimeric antigen receptors targeting B cell precursor acute lymphoblastic leukemia,Blood.2013;121(7):1165-74;Kochenderfer JNら Blood.2012;119(12):2709-20)。このことは、第2世代のCD28/CD3-ゼータ(Lee DWら American Society of Hematology Annual Meeting.New Orleans,LA;2013年12月7~10日)およびCD137/CD3-ゼータシグナル伝達様式(Porter DLら N Engl J Med.2011;365(8):725-33)におけるCD19特異的CARの臨床での成功によって証明されている。CD137に加えて、OX40などの腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの他のメンバーも、CARが形質導入されたT細胞において重要な持続性シグナルを提供できる(Yvon Eら Clin Cancer Res.2009;15(18):5852-60)。これと同様に重要なのは、CAR T細胞集団を培養した培養条件、たとえば、サイトカインIL-2、IL-7、および/またはIL-15を含めることなどである(Kaiser ADら Cancer Gene Ther.2015;22(2):72-78)。
【0011】
現時点で、CAR療法をがんに対してさらに幅広く効果的に適応するにあたっての課題は、有望な標的がほとんど存在しないことに関連する。細胞表面抗原に結合するバインダの作製は現在では容易に達成できるが、腫瘍に特異的でありかつ正常組織に影響を及ぼさない細胞表面抗原の発見は、依然として非常に困難である。CAR発現T細胞に、これまでよりも強い標的細胞特異性を与え得る方法として、複数のCARアプローチを組み合わせて使用する方法がある。1つの系において、CD3-ゼータシグナルユニットおよびCD28シグナルユニットを、同一細胞中に発現させた2つの異なるCARコンストラクトのそれぞれに分割し、別の系において、2つのCARを同一T細胞中に発現させるが、そのうち一方のほうが親和性が低いため、もう一方のCARを最初に結合させて、後者のCARの活性を最大限とする必要がある(Lanitis Eら Cancer Immunol Res.2013;1(1):43-53;Kloss CCら Nat Biotechnol.2013;31(1):71-5)。単一のScFvに基づくCARを免疫療法剤として作製するにあたっての2つめの課題は、腫瘍細胞が均一でないことである。少なくとも1つのグループが、CARを用いた神経膠芽細胞腫の治療法を開発しており、この方法は、エフェクター細胞集団が同時に複数種の抗原(HER2、IL-13Ra、EphA2)を標的とするもので、標的抗原を有さない集団の増殖回避を試みたものである(Hegde Mら Mol Ther.2013;21(11):2087-101)。
【0012】
T細胞に基づく免疫療法は、合成生物学における新たな最先端領域となった。この高効力の細胞を腫瘍微小環境へ誘導する目的で複数のプロモーターおよび遺伝子産物が構想されており、T細胞は、腫瘍微小環境において、負の制御シグナルを回避して効果的な腫瘍の死滅を仲介し得る。AP1903などの二量体化誘導化学物質を使用した誘導性カスパーゼ9コンストラクトの二量化(薬剤に誘発される二量化)によって不要なT細胞を除去する手法は、T細胞集団を制御できる強力なスイッチを薬理学的に始動させ得る1つの方策を提示するものである(Di Stasi Aら N Engl J Med.2011;365(18):1673-83)。さらに、おとりの受容体を発現させることにより、形質転換増殖因子βの負の制御作用に反応しないエフェクターT細胞集団を作製する手法は、最適な抗腫瘍活性を得るためにエフェクターT細胞を操作できる程度を示す(Foster AEら J Immunother.2008;31(5):500-5)。したがって、CARは内因性T細胞受容体と類似する様式にてT細胞活性化をトリガできるようではあるが、現時点では、in vivoにおけるCAR+ T細胞の増殖が限られていること、この細胞が輸液後すぐに消失すること、および臨床活動が不調であることが大きな障害となっていて、当該技術の臨床応用は進んでいない。使用されたCAR配列のいくつかがマウス由来であることに一部起因する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
抗体またはCAR-T療法のいずれかを受けた患者に対し、反応を持続させるために、続いてHSCTを受けさせる必要があるか否か、ということは、依然として活発に議論されている領域である。CD19 CAR-T試験において高い反応が報告されているが、少なくとも20%の患者が短期間で不成功に終わっている(Davis KL,Mackall CL,2016,Blood Advances 1:265-268)。CAR19処置の12か月後の時点で報告された最も良好な結果として、ペンシルベニア大学においてT細胞生成物の投与を受け得た患者の55%がRFSを示し、79%がOSを示した(Maude SL,Teachey DT,Rheingold SR,Shaw PA,Aplenc R,Barrett DM,Barker CS,Callahan C,Frey NV,Farzana N,Lacey SF,Zheng A,Levine B,Melenhorst JJ,Motley L,Prter DL,June CH,Grupp SA,2016,J Clin Oncol 34,no.15_suppl(2016年5月)3011-3011)。予期された長期の反応が50%以下であったことから、依然として、ROR1などの新しいB細胞性悪性腫瘍標的が臨床において大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、がんならびに他の疾患および/または状態の処置に使用できるCAR組成物ならびに治療方法を提供することによって、上述される必要性に対処するものである。特に、本明細書中に開示および記載される本発明は、ROR1の調節不全発現に関連する疾患、障害、または状態の処置に使用できるCARを提供し、このCARは、形質導入T細胞上での表面発現が高いROR1抗原結合ドメインを含有し、ROR1発現細胞の細胞溶解の程度が高く、かつ、形質導入T細胞がin vivoにおいて増殖および持続する。
【0015】
概要
新規の抗ROR1抗体、またはその抗原結合ドメイン、およびこのようなROR1抗原結合ドメインを含有するキメラ抗原受容体(CAR)、および、この受容体を発現する宿主細胞(たとえば、T細胞)、およびこの受容体をコードする核酸分子が、本明細書中において提供される。このCARは、形質導入T細胞上での表面発現が高く、細胞溶解の程度が高く、かつ形質導入T細胞がin vivoにおいて増殖および持続する。さらに、たとえば、対象におけるがんを処置するための、開示されるCAR、宿主細胞、および核酸分子の使用方法が提供される。
【0016】
したがって、一態様において、配列番号1および7からなる群より選択される核酸配列を含む、ヒト抗ROR1抗体またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0017】
一実施形態において、完全ヒト抗ROR1抗体またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、ここで、この抗体またはその断片は、Fab断片、F(ab’)断片、Fv断片、および一本鎖Fv(ScFv)からなる群より選択される断片を含む。
【0018】
一実施形態において、完全ヒト抗ROR1抗体またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、ここで、この抗体またはその断片は、配列番号2および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
一態様において、N末端からC末端に向かって、配列番号1および7からなる群より選択される核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる少なくとも1つのROR1抗原結合ドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子が提供される。
【0020】
一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1抗原結合ドメインは、ROR1に結合する抗体の少なくとも1つの一本鎖可変断片を含む。
【0021】
別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1抗原結合ドメインは、ROR1に結合する抗体の少なくとも1つの重鎖可変領域を含む。
【0022】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるCARの細胞外のROR1抗原結合ドメインは、ROR1に結合する、少なくとも1つのリポカリンに基づく抗原結合抗原(アンチカリン)をさらに含む。
【0023】
一実施形態において、単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1抗原結合ドメインは、リンカードメインによって、膜貫通ドメインに結合している。
【0024】
別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるROR1の細胞外の抗原結合ドメインは、リーダーまたはシグナルペプチドをコードする配列の後ろに位置する。
【0025】
さらに別の一実施形態において、配列番号1および7からなる群より選択される核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる少なくとも1つのROR1抗原結合ドメインを含むCARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、CARは、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CD33、CD38、CD123(IL3RA)、CD138、BCMA(CD269)、GPC2、GPC3、FGFR4、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、TSLPR、NY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCR、またはこれらの任意の組み合わせを含む(がこれらに限定されない)抗原を標的とする細胞外の抗原結合ドメインをさらにコードする。
【0026】
特定の実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、さらにコードされる細胞外の抗原結合ドメインは、抗CD19 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD20 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD22 ScFv抗原結合ドメイン、抗メソテリンScFv抗原結合ドメイン、抗CD33 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD38 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD123(IL3RA)ScFv抗原結合ドメイン、抗CD138 ScFv抗原結合ドメイン、抗BCMA(CD269)ScFv抗原結合ドメイン、抗GPC2 ScFv抗原結合ドメイン、抗GPC3 ScFv抗原結合ドメイン、抗FGFR4 ScFv抗原結合ドメイン、抗TSLPR ScFv抗原結合ドメイン、抗c-Met ScFv抗原結合ドメイン、抗PMSA ScFv抗原結合ドメイン、抗糖脂質F77 ScFv抗原結合ドメイン、抗EGFRvIII ScFv抗原結合ドメイン、抗GD-2 ScFv抗原結合ドメイン、抗NY-ESO-1 TCR ScFv抗原結合ドメイン、抗MAGE A3 TCR ScFv抗原結合ドメイン、またはこれらとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0027】
一態様において、本明細書中において提供されるCARは、リンカーまたはスペーサドメインをさらに含む。
【0028】
一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、細胞外のROR1抗原結合ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、またはその両方は、リンカー(L)、ヒンジ(H)、またはスペーサドメインによって、膜貫通ドメインに結合される。
【0029】
一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるリンカードメインは、CD8またはCD28の細胞外ドメインに由来し、かつ、膜貫通ドメインに結合している。
【0030】
別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるCARは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD83、CD86、CD134、CD137、およびCD154、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインをさらに含む。
【0031】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内ドメインをさらに含む。
【0032】
一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内ドメインよりもN末端側に位置している。
【0033】
別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0034】
さらなる実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる少なくとも1つの共刺激ドメインは、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、DAP12、および4-1BB(CD137)、またはこれらの組み合わせの機能的シグナル伝達ドメインを含む。
【0035】
一実施形態において、リーダー配列またはシグナルペプチドをさらに含有するCARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、リーダーまたはシグナルペプチド(LP)のヌクレオチド配列は、配列番号19のヌクレオチド配列を含む。
【0036】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるリーダー配列は、配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0037】
一態様において、N末端からC末端に向かって、少なくとも1つのROR1抗原結合ドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)が、本明細書中において提供される。
【0038】
一実施形態において、CARが提供され、ここで、細胞外のROR1抗原結合ドメインは、抗原に結合する抗体の少なくとも1つの一本鎖可変断片、または抗原に結合する抗体の少なくとも1つの重鎖可変領域、またはこれらの組み合わせを含む。
【0039】
別の一実施形態において、CARが提供され、ここで、少なくとも1つの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TNFRSF19、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、CARが提供され、ここで、CARは、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CD33、CD38、CD123(IL3RA)、CD138、BCMA(CD269)、GPC2、GPC3、FGFR4、TSLPR、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、TSLPR、NY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCR、またはこれらとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む細胞外の抗原結合ドメインをさらにコードする。
【0041】
一実施形態において、CARが提供され、ここで、細胞外の抗原結合ドメインは、抗CD19 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD20 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD22 ScFv抗原結合ドメイン、抗メソテリンScFv抗原結合ドメイン、抗CD33 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD38 ScFv抗原結合ドメイン、抗CD123(IL3RA)ScFv抗原結合ドメイン、抗CD138 ScFv抗原結合ドメイン、抗BCMA(CD269)ScFv抗原結合ドメイン、抗GPC2 ScFv抗原結合ドメイン、抗GPC3 ScFv抗原結合ドメイン、抗FGFR4 ScFv抗原結合ドメイン、抗TSLPR ScFv抗原結合ドメイン、抗c-Met ScFv抗原結合ドメイン、抗PMSA ScFv抗原結合ドメイン、抗糖脂質F77 ScFv抗原結合ドメイン、抗EGFRvIII ScFv抗原結合ドメイン、抗GD-2 ScFv抗原結合ドメイン、抗NY-ESO-1 TCR ScFv抗原結合ドメイン、抗MAGE A3 TCR ScFv抗原結合ドメイン、またはこれらとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0042】
別の一実施形態において、CARが提供され、ここで、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0043】
さらに別の一実施形態において、CARが提供され、ここで、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、DAP12、および4-1BB(CD137)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む共刺激ドメインを含む。
【0044】
一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号3の核酸配列(LTG 1941 LP-ScFV4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CAR核酸配列(図2A))を含む。一実施形態において、核酸配列は、配列番号4のアミノ酸配列(LTG 1941 LP-ScFv4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2A))を含むCARをコードする。
【0045】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列(LTG 2528 LP-ScFv4-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CAR核酸配列(図2B))を含む。一実施形態において、核酸配列は、配列番号6のアミノ酸配列(LTG 2528 LP-ScFv4-1-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2B))を含むCARをコードする。
【0046】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号9の核酸配列(LTG1942 LP-ScFv9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARヌクレオチド配列(図2C))を含む。一実施形態において、核酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列(LTG1942 LP-ScFv9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2C))を含むCARをコードする。
【0047】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号11の核酸配列(LTG2529 LP-ScFv9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CAR核酸配列(図2D))を含む。一実施形態において、核酸配列は、配列番号12のアミノ酸配列(LTG2529 LP-ScFv9-IgG4H/CD8 TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2D))を含むCARをコードする。
【0048】
一態様において、本明細書中に開示されるCARは、がん患者の診断、モニタリング、および/もしくは無増悪生存などの処置転帰の予測において使用するための、またはこのような処置の進捗をモニタリングするための、検出可能なマーカーを発現または含有するように改変される。
【0049】
一実施形態において、開示されるCARをコードする核酸分子は、ウイルスベクターなどのベクター中に含有されてよい。ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、またはこれらの組み合わせである。
【0050】
特定の実施形態において、ベクターはプロモーターをさらに含み、このプロモーターは、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、自殺プロモーター、またはこれらの任意の組み合わせである。
【0051】
さらに別の一実施形態において、CARを発現するベクターは、CAR T細胞の発現を制御するため、または自殺スイッチによってCAR-T細胞を除去するための、1つ以上の作動可能な要素を含むようにさらに改変されてよい。この自殺スイッチは、たとえば、アポトーシス誘発シグナル伝達カスケードまたは細胞死を誘発する薬物を含んでよい。好ましい一実施形態において、CARを発現するベクターは、チミジンキナーゼ(TK)またはシトシンデアミナーゼ(CD)などの酵素を発現するようさらに改変されてよい。
【0052】
別の一態様において、CARをコードする核酸分子を含む宿主細胞がさらに提供される。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、対象から得られる初代T細胞などのT細胞である。一実施形態において、宿主細胞は、CD8+ T細胞である。
【0053】
さらに別の一態様において、抗腫瘍有効量のヒトT細胞の集団を含む医薬組成物が提供され、ここで、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含み、CARは、配列番号2または8のアミノ酸配列を含むヒトROR1抗原結合ドメインを含む少なくとも1つの細胞外の抗原結合ドメインと、少なくとも1つのリンカードメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、T細胞は、がんを有するヒトのT細胞である。がんは、とりわけ、白血病(たとえば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、または慢性骨髄性白血病(CML))、リンパ腫(たとえば、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、またはホジキンリンパ腫)、または多発性骨髄腫、またはこれらの組み合わせなどの血液がんを含む。
【0054】
一実施形態において、医薬組成物が提供され、ここで、CARの少なくとも1つの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、メソテリン、CD33、CD37、CD64、CD80、CD83、CD86、CD134、CD137、CD154、TNFRSF19、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含有する。
【0055】
別の一実施形態において、医薬組成物が提供され、ここで、ヒトのがんは、口腔および咽頭がん(舌、口、咽頭、頭頸部)、消化器がん(食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、肝内胆管(interhepatic bile duct)、胆嚢、膵臓)、呼吸器がん(喉頭、肺、および気管支)、骨および関節がん、軟部組織がん、皮膚がん(黒色腫、基底細胞癌および扁平上皮癌)を含む成人癌、小児腫瘍(神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫)、中枢神経系の腫瘍(脳、星状細胞腫、神経膠芽細胞腫、神経膠腫)、ならびに、乳房、生殖器系(子宮頸部、子宮体部、卵巣、外陰部、膣、前立腺、精巣、陰茎、子宮内膜)、泌尿器系(膀胱、腎臓および腎盂、尿管)、眼および眼窩、内分泌系(甲状腺)、脳および他の神経系のがん、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0056】
さらに別の一実施形態において、がんを有するヒトのヒトT細胞の集団を抗腫瘍有効量にて含む医薬組成物が提供され、ここで、がんは、1種以上の化学療法剤に反応しない難治性がんである。がんは、造血器がん、骨髄異形成症候群、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)における微小残存病変(MRD)、CLL(慢性リンパ球性白血病)、CML(慢性骨髄性白血病)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む成人B細胞性悪性腫瘍、小児B細胞性悪性腫瘍(B系ALL(急性リンパ球性白血病)を含む)、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、黒色腫、または他の血液がんおよび固形腫瘍、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0057】
別の一態様において、CAR含有T細胞(以下では「CAR-T細胞」)の作製方法が提供される。この方法は、ROR1に特異的に結合するCAR(開示される)をコードするベクターまたは核酸分子をT細胞に形質導入する工程を含み、これによってCAR-T細胞を作製する。
【0058】
さらに別の一態様において、RNA操作細胞の集団の発生方法が提供され、これは、開示されるCARをコードする核酸分子のin vitro転写RNAまたは合成RNAを、対象の細胞中に導入する工程を含み、これによってCAR発現細胞を発生させる。
【0059】
さらに別の一態様において、細胞におけるROR1の発現に関連する疾患、障害、または状態の診断方法が提供され、これは、a)細胞をヒト抗ROR1抗体またはその断片に接触させる工程であって、この抗体またはその断片が、配列番号2または8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む工程と、b)ROR1の存在を検出する工程であって、ROR1が存在する場合に、ROR1の発現に関連する疾患、障害、または状態であると診断する工程とを含む。
【0060】
一実施形態において、ROR1の発現に関連する疾患、障害、または状態は、造血器がん、骨髄異形成症候群、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)における微小残存病変(MRD)、CLL(慢性リンパ球性白血病)、CML(慢性骨髄性白血病)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む成人B細胞性悪性腫瘍、小児B細胞性悪性腫瘍(B系ALL(急性リンパ球性白血病)を含む)、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、黒色腫、または他の血液がんおよび固形腫瘍、またはこれらの任意の組み合わせを含むがんである。
【0061】
別の一実施形態において、哺乳動物におけるROR1関連疾患について診断または予後診断またはリスク判断する方法が提供され、これは、哺乳動物に由来する試料中におけるROR1の発現を検出する工程を含み、この工程は、a)試料をヒト抗ROR1抗体またはその断片に接触させる工程であって、この抗体またはその断片が、配列番号2または8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、工程と、b)ROR1の存在を検出する工程であって、ROR1が存在する場合に、哺乳動物においてROR1関連疾患であると診断する工程とを含む。
【0062】
別の一実施形態において、ROR1依存性T細胞阻害の阻害方法が提供され、これは、細胞をヒト抗ROR1抗体またはその断片に接触させる工程を含み、この抗体またはその断片は、配列番号2または8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、細胞は、ROR1発現腫瘍細胞、腫瘍関連マクロファージ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0063】
別の一実施形態において、ROR1発現細胞に介在されるT細胞阻害を遮断し、かつ、腫瘍微小環境を変化させて哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法が提供され、これは、単離された抗ROR1抗体またはその断片を含む組成物を、有効量にて、哺乳動物に投与する工程を含み、この抗体またはその断片は、配列番号2および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、細胞は、ROR1発現腫瘍細胞、腫瘍関連マクロファージ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0064】
別の一実施形態において、哺乳動物における抗腫瘍性または抗がん性の免疫応答の免疫抑制を阻害、抑制、または予防する方法が提供され、これは、単離された抗ROR1抗体またはその断片を含む組成物を、有効量にて、哺乳動物に投与する工程を含み、この抗体またはその断片は、配列番号2および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、この抗体またはその断片は、第1の細胞とT細胞との間の相互作用を阻害し、第1の細胞は、ROR1発現腫瘍細胞、腫瘍関連マクロファージ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0065】
別の一態様において、哺乳動物における抗腫瘍免疫を誘発するための方法が提供され、これは、開示されるCARをコードするベクターまたは核酸分子が形質導入されたT細胞を、治療的有効量にて、哺乳動物に投与する工程を含む。
【0066】
別の一実施形態において、哺乳動物におけるがんの処置または予防方法が提供され、これは、哺乳動物に、開示されるCARの1種以上を、哺乳動物におけるがんの処置または予防に有効な量にて投与する工程を含む。上記方法は、対象においてCARの抗原結合ドメイン、ROR1の細胞外ドメイン、および/または上述される抗原のうち1種以上からなる免疫複合体を形成するのに十分な条件下において、ROR1および/または上述される抗原のうち1種以上に特異的に結合するCAR(開示される)を発現する宿主細胞の治療的有効量を、対象に投与する工程を含む。
【0067】
さらに別の一実施形態において、腫瘍抗原の発現上昇に関連する疾患、障害、または状態を有する哺乳動物を処置するための方法が提供され、上記方法は、抗腫瘍有効量のT細胞の集団を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含み、CARは、配列番号2および8のアミノ酸配列またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つの細胞外のROR1抗原結合ドメイン、少なくとも1つのリンカーまたはスペーサドメイン、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含み、T細胞は、がんを有する対象のT細胞である。
【0068】
さらに別の一実施形態において、それを必要とする対象におけるがんを処置するための方法が提供され、これは、抗腫瘍有効量のT細胞の集団を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含み、CARは、配列番号2もしくは8のアミノ酸配列またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのROR1抗原結合ドメイン、少なくとも1つのリンカーまたはスペーサドメイン、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含み、T細胞は、がんを有する対象のT細胞である。上述される方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD19、CD22、メソテリン、CD33、CD37、CD64、CD80、CD83、CD86、CD134、CD137、CD154、TNFRSF16、TNFRSF19、またはこれらの組み合わせの膜貫通を含む。
【0069】
さらに別の一実施形態において、がんと診断されたヒトにおいて持続性の遺伝子操作T細胞の集団を発生させるための方法が提供される。一実施形態において、上記方法は、CARを発現するよう遺伝子操作されたT細胞をヒトに投与する工程を含み、CARは、配列番号2もしくは8のアミノ酸配列またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのROR1抗原結合ドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、持続性の遺伝子操作T細胞の集団、またはT細胞の子孫の集団は、ヒトにおいて、投与後、少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、2年間、または3年間持続する。
【0070】
一実施形態において、ヒトにおける子孫T細胞は、メモリーT細胞を含む。別の一実施形態において、T細胞は、自己T細胞である。
【0071】
本明細書中に記載される方法のすべての態様および実施形態において、上述される、腫瘍抗原の発現上昇に関連するがん、疾患、障害、または状態は、いずれも、本明細書中に開示されるCARの1種以上を使用して処置または予防または寛解され得る。
【0072】
さらに別の一態様において、上述されるキメラ抗原受容体T細胞を作製するための、または、上述される、対象における腫瘍抗原の発現上昇に関連するがん、疾患、障害、もしくは状態のうち任意のものを予防、処置、もしくは寛解するための、キットが提供され、これは、上記に開示される核酸分子、ベクター、宿主細胞、もしくは組成物のうち任意の1種、またはこれらの任意の組み合わせ、または当該キットの使用説明の入った容器を含む。
【0073】
上述されるCAR、宿主細胞、核酸、および方法が、本明細書中において詳細に記載される具体的な態様および実施形態の範囲を超えて有用であることが理解される。上述される本開示の特徴および利点は、付属の図面を参照して記載される以下の詳細な説明によって、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】新規の細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を有するCARの一般的なドメイン構造の概略図である。キメラ抗原受容体は、細胞外ROR1結合ScFvドメインと、(IgG4またはCD8に由来する)スペーサーまたはヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達CD137共刺激ドメインと、CD3ゼータシグナル伝達ドメインとから構成される。
図2A図2Aは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG1941(LP-ScFv4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)核酸配列(配列番号3)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号4)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図2B図2Bは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG2528(LP-ScFv4-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)核酸配列(配列番号5)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号6)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図2C図2Cは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG1942(LP-ScFv9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)ヌクレオチド配列(配列番号9)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号10)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図2D図2Dは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG2529(LP-ScFv9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)核酸配列(配列番号11)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号12)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図2E図2Eは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG 1943(LP-コントロールScFv-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)核酸配列(配列番号15)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号16)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図2F図2Fは、新規のヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインの配列を含有するいくつかのキメラ抗原受容体(CAR)の核酸およびアミノ酸配列を示す。当該CARの概略的なスキームは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチド(SPまたはLP、リーダーペプチド)、ヒト抗ROR1バインダ一本鎖可変断片(ScFv)、細胞外リンカー(またはヒンジ、H)、膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。CAR LTG2527:(LP-コントロールScFv-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)核酸配列(配列番号17)およびこれにコードされるアミノ酸配列(配列番号18)を発現するレンチウイルスベクターを示す。
図3】初代ヒトT細胞における抗ROR1 CAR表面発現を示す。ScFvドメインを使用してROR1腫瘍抗原に再指向させたCAR T細胞を、レンチウイルスを用いたCAR発現コンストラクトの形質導入によって発生させた。CAR Tの検出はフローサイトメトリーによって行なった。T細胞を冷PBS-EDTAバッファー中で2回洗浄し、ROR1-Fcペプチド、続いて蛍光標識抗ヒト-FcポリクローナルF(ab)’2断片を用いて染色した。細胞を、前方散乱および側方散乱、1重項識別、ならびに7AAD陰性に基づいてゲーティングし、これによって、生細胞のみを分析できるようにした。データを、APCチャネルにおいてMACSQuant 10 フローサイトメーターを使用して取得した。分析した試料が左軸上に列記されている:UTD、非形質導入ネガティブコントロール細胞、GFP-LVコントロール形質導入、LTG1941(ScFv4)、LTG1942(ScFv9)、およびLTG1943(コントロール-ScFv)。垂直の点線により、CAR発現のゲートが明示され、各集団におけるCAR発現の割合が列記される、CAR%MFI。
図4】ScFvバインダ(LTG1941、LTG1942、およびLTG1943)を組み込んだ抗ROR1 CAR T細胞による、in vitroにおけるROR1陽性腫瘍の細胞溶解への介在を示す。抗ROR1コンストラクトを発現するCAR T細胞を、ホタルルシフェラーゼを安定的に形質導入したROR1陽性細胞株(Jeko-LucおよびA431-Luc)またはROR1陰性株(Reh-luc)と共に、x軸上に記載されるエフェクター標的比(E:T)にて、一晩インキュベートした。CAR T細胞傷害活性を、ルシフェラーゼ活性測定によって、材料および方法(Materials and Methods)に記載されるとおりに評価した。UTD-形質導入されていないT細胞ネガティブコントロール、1538-LTG1538 FMC63 マウス抗CD19 CARポジティブコントロール。
図5】ROR1陽性白血病株(Jeko、灰色、またはA432、薄い灰色)と共培養した場合の、または、T細胞を非発現株(Reh)と共に、もしくは単独(灰色、最後の列)でインキュベートした場合の、ROR1特異的CAR T細胞による高レベルのサイトカイン産生を示す。このアッセイは、E:T比10:1にて一晩実施し、次いで、上清のサイトカイン濃度をELISAによって分析した。N=2 technical replicates +/-SD。ネガティブコントロール:UT-非形質導入T細胞、LTG1941、LTG1942、LTG1943、抗ROR1形質導入T細胞。LTG1398、GFP-LV形質導入コントロールT細胞が、x軸に明記される。
【発明を実施するための形態】
【0075】
詳細な説明
定義
本明細書中において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかな矛盾がない限り、単数形と複数形の両方を指す。たとえば、用語「an antigen(抗原)」は、1つまたは複数の抗原を含み、「少なくとも1つの抗原」という言葉と同等であるとみなし得る。本明細書中において使用される場合、用語「comprises」は「includes」を意味する。したがって、「comprising an antigen」は、他の要素を除外しない「including an antigen」を意味する。「および/または」という言葉は、「および」または「または」を意味する。さらに、特に記載がない限り、核酸またはポリペプチドに与えられる任意のおよびすべての塩基の大きさまたはアミノ酸の大きさならびにすべての分子量または分子質量の値は、近似値であり、説明目的で提供されることが理解される。本明細書中に記載されるものと類似または同等の多くの方法および材料を使用できるが、特に好適な方法および材料が以下に記載される。万一矛盾がある場合には、本明細書(用語の説明を含む)が支配する。これに加えて、材料、方法、および例示は、例証することのみを目的とし、限定を意図しない。多様な実施形態の確認を容易にするために、以下に用語の説明が提供される。
【0076】
用語「約」は、量および持続期間などの測定可能な可能な値を指す場合、明示される値から±20%、または場合によっては±10%、または場合によっては±5%、または場合によっては±1%、または場合によっては±0.1%の変量を含むことを意味する。というのは、こうした変量が、開示される方法の実施に適切であるためである。
【0077】
特に記載がない限り、本明細書中の科学用語は、従来の用法で使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes VII、オックスフォード大学出版局より出版、1999年;Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science社より出版、1994年;およびRobert A.Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers社より出版、1995年;および他の類似する参考資料において見つけ得る。
【0078】
本開示は、ROR1抗体またはその断片、およびこのようなROR1抗原結合ドメインを有するキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CARの機能活性を向上させることは、CAR発現T細胞の機能活性の向上に直接関連する。こうした改変の1つ以上がなされた結果として、CARは、サイトカイン誘発性の細胞溶解と、形質導入T細胞における細胞表面発現との両方を、高レベルで呈し、かつ、in vivoにおけるT細胞の増殖および形質導入したCAR発現T細胞の持続が高レベルとなる。
【0079】
異なるタンパク質ドメインに由来する機能的部位を組み合わせることができるユニークな能力は、キメラ抗原受容体(CAR)の有する革新的な特徴である。こうしたタンパク質ドメインのいずれを選択するかということは、これらが特異的に結合する様式と同じように、重要な設計上の特徴である。個々の設計ドメインは、リンパ球の機能を操作する目的で、あらゆる異種のCARプラットフォームにおいて使用できる、必須の構成要素である。たとえば、細胞外結合ドメインの選択によって、そのままでは有効でないCARを有効とすることができる。
【0080】
CARの細胞外抗原結合ドメインの作製に使用される免疫グロブリン由来タンパク質の配列の非可変フレームワーク構成要素は、完全に中立的なものであってもよいし、または、自己結合し、T細胞を代謝性消耗状態にすることにより、このCARを発現する治療用T細胞の有効性を大幅に減ずるようなものであってもよい。この現象は、このCARドメインの抗原結合機能とは独立して生じる。さらに、細胞内シグナル伝達ドメインの選択によって、免疫療法に使用される治療用リンパ球集団の活性および耐久性を支配することもできる。ここで、標的抗原を結合する能力、ならびに、上述される細胞外および細胞内ドメインのそれぞれを経て活性化シグナルをT細胞に伝達する能力は、重要なCAR設計態様であるが、このことと共に明白になったのは、細胞外抗原結合断片の供給源の選択がCARの効力に著しい作用を及ぼす可能性があり、したがって、CARの機能および臨床有用性において決定的な役割を有する可能性があるということである。
【0081】
驚くべきことに、かつ予期しないことに、マウス由来抗原結合断片(宿主において抗マウス免疫応答およびCAR T除去を誘発する傾向がある)(参照:ペンシルベニア大学の資金援助によるマウス由来のSS1 ScFv配列を使用した臨床試験、NCT02159716)ではなく、完全ヒト抗原結合ドメインを、CARにおいて使用することが、CAR発現T細胞の機能活性を決定し得ることが見いだされた。
【0082】
この発見に照らして、ヒトscFv発現ライブラリからの複数のROR1バインダが開発された。これらの完全ヒトROR1 CARは、マウス由来ではなくなっているため、患者によるアレルギーまたは拒絶反応を誘発しにくい(Maus MV,Haas AR,Beatty GL,Albeda SM,Levine BL,Liu X,Zhao Y,Kalos M,June CH,2013,Cancer Immunology Research,1:26-31を参照)。その結果、これらの「完全ヒト」CARをT細胞において発現させた後で患者に注入すると、治療的有効性がより高くなる可能性がある。こうしたヒト配列由来CARバインダを、ヒトにおけるROR1抗原を発現するがん、白血病、およびリンパ腫(B-CLL、卵巣がん、トリプルネガティブ乳がん、肺腺癌、および神経膠芽細胞腫を含むがこれらに限定されない)の処置に使用し得る(Balakrishnan,A.ら,2016,Clin Cancer Res,23:3061-3071;および Baskar,S.ら,2008,Clin Cancer Res 14:396-404;および Jung,E.H.ら,Cell Biochem Funct,34:149-157)。
【0083】
本明細書中に開示されるCARは、細胞中で高レベルで発現する。このCARを発現する細胞はin vivoにおける増殖率が高く、大量のサイトカインを産生し、かつ、CARが結合するROR1抗原を表面に有する細胞に対する傷害活性が高い。ヒト細胞外ROR1抗原結合ドメインを使用した結果、in vivoにおける機能が改善されたCARが作製され、同時に、宿主における免疫応答における抗CAR免疫の誘発とCAR T細胞集団の死滅とが回避される。完全ヒト細胞外ROR1 ScFv抗原結合ドメインを発現するCARは、優れた活性および/または特性を呈し、これには、i)CAR Tの不良な持続性および不良な機能(マウス由来の結合配列でみられる)の防止と、ii)効力発揮のための特定領域(すなわち、胸膜内)へのCARの運搬の欠如と、iii)ROR1親和性の高いバインダと低いバインダの両方に基づいたCAR T細胞の設計を可能とする能力とが含まれる。後者の特性があることによって、研究者は、CAR T生成物の効力対毒性および/または組織特異性をより良好に調節することができる。というのは、ROR1が正常組織よりも腫瘍において高発現しているために、親和性が低い方のバインダが正常組織よりも腫瘍に対して高い特異性を有する可能性があり、これにより、on-target off tumor toxicityおよびバイスタンダー細胞死(bystander cell killing)を防止できるためである。
【0084】
次に、本発明のCARについて詳細に説明する。この説明には、その細胞外のROR1抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインについての説明と、CAR、抗体、およびその抗原結合断片、結合体(conjugates)、ヌクレオチド、発現、ベクター、および宿主細胞、開示されるCARを使用する処置方法、組成物、およびキットについてのさらなる説明が含まれる。
【0085】
A.キメラ抗原受容体(CAR)
本明細書中に開示されるCARは、ROR1に結合できる少なくとも1つのROR1抗原結合ドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内ドメインとを含む。
【0086】
キメラ抗原受容体(CAR)は、膜貫通ドメインを介してT細胞シグナル伝達ドメインに結合した抗体の抗原結合ドメイン(たとえば、一本鎖可変断片(ScFv))を含有する、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質またはポリペプチドである。CARの特徴として、MHCに制限されない様式で、T細胞の特異性および反応性を、選択された標的に再指向させ、モノクローナル抗体の抗原結合特性を活用する能力を含む。MHCに制限されずに抗原を認識できるため、CARを発現するT細胞は、抗原プロセシングから独立して抗原を認識でき、その結果として腫瘍エスケープの主要な機序を回避できる能力を有する。また、CARは、T細胞において発現すると、有利にも、内因性のT細胞受容体(TCR)のアルファおよびベータ鎖と二量体化しない。
【0087】
本明細書中に開示されるとおり、CARの細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、たとえば、T細胞受容体シグナル伝達ドメイン、T細胞共刺激シグナル伝達ドメイン、またはその両方を含んでよい。T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、たとえばCD3ゼータ タンパク質の細胞内部分など(これに限定されない)のT細胞受容体の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指し、これは、リンパ球が抗原に対して効率よく反応するために必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。
【0088】
1.細胞外ドメイン
一実施形態において、CARは、抗原結合ドメインまたは部位とも称される標的特異的結合要素を含む。ドメインの選択は、標的細胞の表面を定めるリガンドの種類および数に依存する。たとえば、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上において細胞表面マーカーとして働くリガンドを認識するように選択されてよい。したがって、CARにおける抗原結合ドメインのリガンドとして働き得る細胞表面マーカーの例は、ウイルス感染、細菌感染、および寄生虫感染、自己免疫疾患、およびがん細胞に関連するものを含む。
【0089】
一実施形態において、CARは、腫瘍細胞上の抗原に特異的に結合する所望の抗原結合ドメインを設計することによって、目的の腫瘍抗原を標的とするように設計できる。腫瘍抗原は、腫瘍細胞によって産生され、免疫応答、特にT細胞介在性の免疫応答を顕在化させるタンパク質である。抗原結合ドメインの選択は、処置するがんの具体的な種類に依存し得る。腫瘍抗原は、たとえば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ(prostase)、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン(prostein)、PSMA、Her2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD20、CD22、ROR1、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、およびCD19を含む。本明細書中に開示される腫瘍抗原は、単に例示として含まれる。その列記は限定を意図するものではなく、これら以外の例が当業者には容易に認識されるであろう。
【0090】
一実施形態において、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する1つ以上の抗原がんエピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原として働き得る複数のタンパク質を発現する。こうした分子は、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼ、およびGP100、ならびに前立腺がんにおける前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異抗原(PSA)などの組織特異抗原を含むが、これらに限定されない。これら以外の標的分子として、がん遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属するものがある。さらに別の標的抗原の群として、癌胎児性抗原(CEA)などのがん胎児性の抗原がある。B細胞リンパ腫においては、腫瘍特異的なイディオタイプの免疫グロブリンが、個々の腫瘍に固有である真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原に該当する。CD19、CD20、CD22、BCMA、ROR1、およびCD37などのB細胞分化抗原もまた、B細胞リンパ腫における標的抗原の候補である。こうした抗原(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイプ)のうちいくつかは、モノクローナル抗体を使用する受動免疫療法の標的として使用されているが、十分な成功は収めていない。
【0091】
好ましい一実施形態において、腫瘍抗原はROR1であり、ROR1の発現に関連する腫瘍は、細胞外タンパク質ROR1を高レベルで発現する肺中皮腫、卵巣および膵臓がん、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0092】
腫瘍抗原の種類は、腫瘍特異抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)であってもよい。TSAは腫瘍細胞に固有であり、身体の他の細胞上には生じない。TAAは、腫瘍細胞に固有ではなく、その代わり、この抗原に対する免疫寛容状態が誘発されない条件下おいて、正常細胞上にも発現する。腫瘍におけるこの抗原の発現は、この抗原に対する免疫系の応答を可能とする条件下において生じ得る。TAAは、免疫系が成熟しておらず抗原に応答できない胎児発生の間に正常細胞上に発現する抗原であり得る、または、TAAは、通常から正常細胞上に極めて低レベルで存在しているが腫瘍細胞上ではこれより大幅に高いレベルで発現する抗原であり得る。
【0093】
TSAまたはTAAの例は、MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2などの分化抗原、およびMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15などの腫瘍特異的多系譜抗原;CEAなどの過剰発現胚抗原;p53、Ras、HER-2/neuなどの過剰発現がん遺伝子および突然変異腫瘍抑制遺伝子;染色体転座に起因する固有の腫瘍抗原;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RARなど;ならびに、Epstein Barrウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7などのウイルス抗原を含むが、これらに限定されない。これら以外の、タンパク質に基づく大きな抗原は、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3/CA 27.29/BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68/P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733/EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90/Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSを含む。
【0094】
一実施形態において、CARの抗原結合ドメイン部分は、CD19、CD20、CD22、ROR1、CD33、CD38、CD123、CD138、BCMA、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、FGFR4、TSLPR、NY-ESO-1 TCR、およびMAGE A3 TCRなどを含むがこれらに限定されない抗原を標的とする。
【0095】
好ましい一実施形態において、CARの抗原結合ドメイン部分は、細胞外ROR1抗原を標的とする。
【0096】
好ましい一実施形態において、細胞外ROR1結合ドメインscFv4をコードする単離された核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列、またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含む。一実施形態において、単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1抗原結合ドメインscFv4は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列との同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列を含む。
【0097】
好ましい一実施形態において、細胞外ROR1抗原結合ドメインScV9をコードする単離された核酸分子は、配列番号7のヌクレオチド配列、またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含む。一実施形態において、単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1抗原結合ドメインScFv9は、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8のアミノ酸配列との同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列を含む。
【0098】
好ましい一実施形態において、細胞外ROR1コントロールScFv抗原結合ドメインをコードする単離された核酸分子は、配列番号13のヌクレオチド配列、またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含む。一実施形態において、単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされる細胞外のROR1コントロールScFv抗原結合ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列、または配列番号14のアミノ酸配列との同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列を含む。
【0099】
本明細書中に開示されるROR1特異的CARの多様な実施形態において、概略的なスキームは図1中に記載され、これは、N末端からC末端に向かって、シグナルまたはリーダーペプチド、抗ROR1 ScFv、細胞外リンカーまたはヒンジ(H)ドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、4-1BB、CD3ゼータを含み、太字の文字は、リンカードメイン(linking domain)のクローニングサイトを表す。
【0100】
一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号3の核酸配列を含み、かつ、配列番号4のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG1941 LP-ScFv4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Aに示される)]。
【0101】
一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号3の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号4のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG1941 LP-ScFv4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Aに示される)]。
【0102】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列を含み、かつ、配列番号14のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG2528 LP-ScFv4-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Bに示される)]。
【0103】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号6のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG2528 LP-ScFv4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Bに示される)]。
【0104】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号9の核酸配列を含み、かつ、配列番号10のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG1942 LP-ScFv9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2Cに示される)]。
【0105】
別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号9の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号10のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG1942 LP-ScFv9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ CARアミノ酸配列(図2Cに示される)]。
【0106】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号11の核酸配列を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG2529 LP-ScFv9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Dに示される)]。
【0107】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号11の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG2529 LP-ScFv9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Dに示される)]。
【0108】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号15の核酸配列を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG1943 LP-コントロールScFv-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Eに示される)]。
【0109】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号15の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG1943 LP-コントロールScFv-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Eに示される)]。
【0110】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号17の核酸配列を含み、かつ、配列番号18のアミノ酸配列を含むCARをコードする[LTG2527 LP-コントロールScFv-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Fに示される)]。
【0111】
さらに別の一実施形態において、CARをコードする核酸配列は、配列番号17の核酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含み、かつ、配列番号18のアミノ酸配列またはこれとの同一性が85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%である配列を含むCARをコードする[LTG2527 LP-コントロールScFv-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ アミノ酸配列(図2Fに示される)]。
【0112】
ROR1抗原に反応する一本鎖可変断片(ScFv)配列を組み込んだ抗ROR1 CARの表面発現が下記の実施例2中に示され、その概要が表2中に示される。各ScFv含有CARの発現レベルを、組換えROR1-Fcペプチド、続いて、AF647に結合させた抗ヒトFc F(ab’)2断片を使用した、健康なドナーからのLV形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析によって求め、APCチャネルにおいて検出した(図3を参照)。ScFvに基づく抗ROR1 CARコンストラクトLTG1941、LTG1942~LTG1943は、非形質導入T細胞コントロール(ゲーティングしていない細胞集団)と比較して、ヒト初代T細胞において高発現していた(ゲーティングした集団により示される)。ドナー1人からの代表的な結果が示される。
【0113】
実施例2ならびに図4において示されるように、以下のCARを発現するレンチウイルスベクター(LV)を作製して抗白血病活性について試験したところ、ROR1 CARの高い細胞溶解活性が示された。実験に用いたCARはいずれも、記載された4-1BB/CD3ゼータ鎖シグナル伝達モチーフおよび特異的抗ROR1結合モチーフ/ドメインを含有する。ROR1表面発現を有する白血病標的株を使用した:JekoおよびA431;ならびにROR1陰性Reh。ScFvに基づく抗ROR1 CARコンストラクトLTG1941、LTG1942、およびLTG1943は、A431を効率よく溶解できたが、これらは、Rehに対する特異的な溶解活性を有さなかった(図4を参照)。抗ROR1 CAR LTG1941およびLTG1942の有するJeko溶解能力は異なっており、これより、生物学的活性も異なることが示される。こうした結果から、作製したCARコンストラクトの効率および特異性が示される。
【0114】
次いで、抗ROR1 CAR T細胞のサイトカイン分泌能力を評価した。腫瘍細胞を、CAR T細胞またはコントロールT細胞と共に、エフェクター標的比10:1にて、一晩インキュベートし、培養上清をELISAによって、IFNガンマ、TNFアルファ、およびIL-2について分析した(図5を参照)。注目すべきことに、CAR T発現細胞LTG1942およびLTG1943は高レベルのIFNガンマを産生し、LTG1941は、Jekoには応答してIFN-ガンマを中程度の量で産生したが、A431白血病細胞株の場合には産生しなかった。類似する結果がIL-2およびTNF-アルファの発現についてもみられた。ネガティブコントロール(非形質導入T細胞、UN、または、コントロールLTG1398 LVで形質導入したT細胞)は、測定できるサイトカイン誘発を示さなかった。重要なことに、細胞溶解性およびサイトカイン機能においてみられた結果が明らかに示すのは、LTG1942は、コントロールのScFvを有するCARであるLTG1943に類似する能力を有するが、LTG1941のサイトカイン産生はこれより大幅に低く、Jeko白血病細胞株の溶解能力も大幅に低いということである。とはいうものの、LTG1941のA431溶解能力が示すのは、もしCAR-Tの臨床研究においてLTG1942の活性または高い毒性が明らかとなった場合には、好まれ得る別の選択肢があるということである。
【0115】
いかなる特定の作用機序に限定されることも意図しないが、本発明に係る例示的なCARに関連して治療的機能が向上した理由には、たとえば、a)細胞膜中における横方向の動きが改善されたためにシグナル伝達がより高効率となった、b)細胞膜マイクロドメイン中における位置が優れていたために(脂質ラフトなど)、T細胞活性化に関連する膜貫通型シグナル伝達カスケードとの相互作用能力が向上した、c)低減性もしくは下方調節性の相互作用から離れる優先的な動きがあったために、細胞膜中における位置が優れていた、たとえば、CD45などのホスファターゼからの距離が比較的遠かったもしくは当該ホスファターゼとの相互作用が比較的少なかった、ならびに、d)T細胞受容体シグナル伝達複合体(すなわち、免疫シナプス)へのアセンブリが優れていた、またはこれらの任意の組み合わせが含まれると考えられるが、これらに限定されない。
【0116】
ここまで、例示的な細胞外のROR1 ScFv抗原結合ドメインを用いて本開示が例証されてきたが、ROR1可変ScFv抗原結合ドメイン中の他のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸バリアントも、これを使用して重鎖単独結合ドメインまたはそのサブセットを誘導することができるため、本明細書中に記載されるCARにおいて使用するためのROR1抗原結合ドメインを含んでよい。
【0117】
標的とする所望の抗原に依存して、CARは、所望の抗原標的に特異的な適切な抗原結合ドメインを含むようにさらに操作されてもよい。たとえば、ROR1が、標的とする所望の抗原である場合には、ROR1に対する抗体を、CARに組み込む抗原結合ドメインとして使用してよい。
【0118】
例示的な一実施形態において、CARの抗原結合ドメイン部分は、さらにCD33を標的とする。好ましくは、CARにおける抗原結合ドメインは、抗CD33 ScFvであり、ここで、抗CD33 ScFvの核酸配列は、配列番号34の配列を含む。一実施形態において、抗CD33 ScFvは、配列番号35のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CARの抗CD33 ScFv部分は、配列番号35のアミノ酸配列を含む。
【0119】
例示的な一実施形態において、CARの抗原結合ドメイン部分は、さらにメソテリンを標的とする。好ましくは、CARにおける抗原結合ドメインは、抗メソテリンScFvであり、ここで、抗メソテリンScFvの核酸配列は、配列番号36の配列を含む。一実施形態において、抗メソテリンScFvは、配列番号37のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CARの抗メソテリンScFv部分は、配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0120】
例示的な一実施形態において、CARの抗原結合ドメイン部分は、さらにCD19を標的とする。好ましくは、CARにおける抗原結合ドメインは、抗CD19 ScFvであり、ここで、抗メソテリンScFvの核酸配列は、配列番号32の配列を含む。一実施形態において、抗メソテリンScFvは、配列番号33のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CARの抗CD19 ScFv部分は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。
【0121】
本発明の一態様において、たとえば、レトロウイルス科(たとえば、HIV-1およびHIV-LPなどのヒト免疫不全ウイルス)、ピコルナウイルス科(たとえば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、およびエコーウイルス)、風疹ウイルス、コロナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科(たとえば、1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ならびにヘルペスウイルス)、ポックスウイルス科(たとえば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス)、またはC型肝炎ウイルス、またはこれらの任意の組み合わせに由来する抗原(これらに限定されない)を含む、TSA以外またはTAA以外に結合できるCARが提供される。
【0122】
本発明の別の一態様において、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、シュードモナス、またはサルモネラ菌といった菌種に由来する抗原に結合できるCARが提供される。特に、たとえば、ヘリコバクター・ピロリ、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア種(たとえば、結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ(M.kansaii)、またはM.ゴルドナエ(M.gordonea))、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、リステリア菌、化膿連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌(ストレプトコッカス・アガラクチア)、肺炎連鎖球菌、もしくは破傷風菌といった菌種またはこれらの組み合わせなどの感染性細菌に由来する抗原に結合できるCARが提供される。
【0123】
2.膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、CARは、当該CARの細胞外ROR1抗原結合ドメインに融合した1つ以上の膜貫通ドメインを含む。
【0124】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれに由来するものであってよい。供給源が天然のものである場合、このドメインは、任意の膜結合型または膜貫通型タンパク質に由来するものであってよい。
【0125】
本明細書中に記載されるCARにおいて特に有用な膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、メソテリン、CD33、CD37、CD64、CD80、CD83、CD86、CD134、CD137、CD154、TNFRSF16、またはTNFRSF19に由来する(すなわち、その膜貫通領域を少なくとも含む)ものであってよい。代替的には、膜貫通ドメインは、合成されたものであってよく、この場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主として含んでよい。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端にみられてよい。任意に、好ましくはアミノ酸2~10個の長さの、短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の結合を形成していてよい。グリシンとセリンとのダブレットは、特に好適なリンカーを提供する。
【0126】
一実施形態において、CARにおけるドメインの1つに元々関連している膜貫通ドメインが、上述される膜貫通ドメインに加えて使用される。
【0127】
いくつかの例において、膜貫通ドメインは、当該ドメインと他の受容体複合体構成要素との相互作用を最小限とするために、当該ドメインが、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように選択またはアミノ酸置換できる。
【0128】
一実施形態において、本発明に係るCARにおける膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。一実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号21の核酸配列を含む。一実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号22のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0129】
一実施形態において、コードされる膜貫通ドメインは、配列番号22のアミノ酸配列、または配列番号22のアミノ酸配列との同一性が95~99%である配列に改変(たとえば、置換)を少なくとも1、2、もしくは3つ加えたものであって、ただし改変(たとえば、置換)が20、10、もしくは5つ以下であるアミノ酸配列を含む。
【0130】
いくつかの例において、CARの膜貫通ドメインは、CD8アルファヒンジドメインを含む。一実施形態において、CD8ヒンジドメインは、配列番号23の核酸配列を含む。一実施形態において、CD8ヒンジドメインは、配列番号24のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CD8ヒンジドメインは、配列番号24のアミノ酸配列またはこれとの同一性が95~99%である配列を含む。
【0131】
一実施形態において、単離された核酸分子が提供され、ここで、コードされるリンカードメインは、CD8の細胞外ドメインに由来し、膜貫通CD8ドメイン、膜貫通CD28ドメイン、またはこれらの組み合わせに結合している。
【0132】
3.スペーサー(ヒンジ、H)ドメイン
CARにおいて、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、または細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間に、スペーサドメインが配置されていてよい。スペーサドメインとは、膜貫通ドメインを細胞外ドメインと、および/または膜貫通ドメインを細胞内ドメインと結合させるように働く、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。スペーサドメインは、アミノ酸上限300個まで、好ましくはアミノ酸10~100個、最も好ましくはアミノ酸25~50個を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、リンカーはスペーサ要素を含んでよく、スペーサ要素が存在する場合、スペーサ要素によってリンカーが大きくなり、エフェクター分子または検出可能なマーカーと抗体または抗原結合断片との間の距離が増大する。スペーサの具体例は当業者に周知されており、米国特許第7,964,566号、第7,498,298号、第6,884,869号、第6,323,315号、第6,239,104号、第6,034,065号、第5,780,588号、第5,665,860号、第5,663,149号、第5,635,483号、第5,599,902号、第5,554,725号、第5,530,097号、第5,521,284号、第5,504,191号、第5,410,024号、第5,138,036号、第5,076,973号、第4,986,988号、第4,978,744号、第4,879,278号、第4,816,444号、および第4,486,414号、ならびに米国特許公開第20110212088号および第20110070248号中に列記されるものを含む(これらの全体を引用により本明細書に援用する)。
【0134】
スペーサドメインは、好ましくは、CARと抗原との結合を促進し細胞中へのシグナル伝達を増大させる配列を有する。結合を促進すると予期されるアミノ酸の例は、システイン、荷電アミノ酸、ならびにグリコシル化の可能性のある部位におけるセリンおよびトレオニンを含み、これらのアミノ酸を、スペーサドメインを構成するアミノ酸として使用できる。
【0135】
このスペーサドメインとして、CD8アルファ(NCBI RefSeq:NP__001759.3)のヒンジ領域のアミノ酸番号137~206(配列番号25)、CD8ベータ(GenBank:AAA35664.1)のアミノ酸番号135~195、CD4(NCBI RefSeq:NP__000607.1)のアミノ酸番号315~396、またはCD28(NCBI RefSeq:NP__006130.1)のアミノ酸番号137~152の、全体または一部を使用できる。また、このスペーサドメインとして、抗体のH鎖またはL鎖の定常領域の一部も使用できる。さらに、このスペーサドメインは、人工的に合成された配列であってもよい。
【0136】
また、スペーサードメインは、IgG4に由来するものなどの、免疫グロブリンタンパク質を含む免疫グロブリンドメインを結合する配列を含む、免疫グロブリン(Ig)定常ドメインの要素からなっていてもよい。スペーサーまたはヒンジドメインは、scFv ROR1結合ドメインのC末端に存在し、CAR膜貫通ドメインに延びている。一実施形態において、IgG4ヒンジ(H)ドメインは、配列番号38の核酸配列を含む。一実施形態において、CD8ヒンジドメインは、配列番号39のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CD8ヒンジドメインは、配列番号39のアミノ酸配列、またはこれと95~99%同一である配列を含む。
【0137】
いくつかの例において、IgG4定常領域はヒンジ(H)として働き、CD8の膜貫通ドメインに結合している。一実施形態において、IgG4Hドメインは、CD8膜貫通ドメインに結合しており、これと一緒になって、配列番号40の核酸配列を含む。一実施形態において、CD8膜貫通ドメインに結合したIgG4Hドメインは、配列番号41のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の一実施形態において、CD8膜貫通ドメインに結合したIgG4Hは、配列番号41のアミノ酸配列、またはこれと95~99%同一である配列を含む。
【0138】
さらに、CARにおいて、N末端にシグナルペプチド配列が結合していてよい。このシグナルペプチド配列は、多くの分泌タンパク質および膜タンパク質のN末端に存在し、アミノ酸15~30個の長さを有する。細胞内ドメインとして上述されるタンパク質分子の多くがシグナルペプチド配列を有するため、このシグナルペプチドを、CARのためのシグナルペプチドとして使用できる。一実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0139】
4.細胞内ドメイン
CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが導入された免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化を担う。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊機能を指す。たとえば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。よって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを伝達し細胞が特殊機能を果たすように仕向ける、タンパク質部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体を使用できるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインを切断した一部が使用される場合、この切断部分がエフェクター機能シグナルを伝達できる限りは、これを完全な鎖の代わりに使用してよい。したがって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」の意味には、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分が含まれる。
【0140】
CARにおいて使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの好ましい例は、抗原と受容体との結合後にシグナル伝達を開始するよう協同作用するT細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の派生物またはバリアント、ならびに同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含む。
【0141】
TCRのみを通って発されたシグナルはT細胞を十分に活性化するには不十分であること、および第2のまたは共刺激シグナルがさらに必要であることが知られている。したがって、T細胞活性化には、抗原依存性の第1の活性化をTCRを経て開始するもの(第1の細胞質シグナル伝達配列)と、抗原とは独立した様式で働いて第2のまたは共刺激シグナルを提供するもの(第2の細胞質シグナル伝達配列)との、2つの別個の種類の細胞質シグナル伝達配列が介在するといえる。
【0142】
第1の細胞質シグナル伝達配列は、TCR複合体の第1の活性化を、刺激的様式または阻害的様式のいずれかで調節する。刺激的様式で働く第1の細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有してよい。
【0143】
本明細書中に開示されるCARにおいて特に有用な第1の細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例は、TCRゼータ(CD3ゼータ)、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものを含む。ITAMの具体例は、CD3ゼータ(NCBI RefSeq:NP__932170.1)のアミノ酸番号51~164、FcイプシロンRIガンマ(NCBI RefSeq:NP__004097.1)のアミノ酸番号45~86、FcイプシロンRIベータ(NCBI RefSeq:NP__000130.1)のアミノ酸番号201~244、CD3ガンマ(NCBI RefSeq:NP__000064.1)のアミノ酸番号139~182、CD3デルタ(NCBI RefSeq:NP__000723.1)のアミノ酸番号128~171、CD3イプシロン(NCBI RefSeq:NP__000724.1)のアミノ酸番号153~207、CD5(NCBI RefSeq:NP__055022.2)のアミノ酸番号402~495、0022(NCBI RefSeq:NP__001762.2)のアミノ酸番号707~847、CD79a(NCBI RefSeq:NP__001774.1)のアミノ酸番号166~226、CD79b(NCBI RefSeq:NP__000617.1)のアミノ酸番号182~229、およびCD66d(NCBI RefSeq:NP__001806.2)のアミノ酸番号177~252の配列を有するペプチド、ならびに、これらのペプチドと同じ機能を有するバリアントを含むが、これらに限定されない。本明細書中に記載されるNCBI RefSeq IDまたはGenBankのアミノ酸配列情報に基づくアミノ酸番号は、各タンパク質の前駆体(シグナルペプチド配列などを含む)の全長に基づいて番号付けされたものである。一実施形態において、CARにおける細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0144】
好ましい一実施形態において、CARの細胞内ドメインは、それ自体がCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含むように設計されてよい、または、CARとの関連で有用である任意の他の望ましい細胞質ドメインと組み合わせてよい。たとえば、CARの細胞内ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達領域を含んでよい。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に対して効率よく反応するために必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。このような共刺激分子の例は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、および特異的にCD83と結合するリガンドなどを含む。このような共刺激分子の具体例は、CD2(NCBI RefSeq:NP__001758.2)のアミノ酸番号236~351、CD4(NCBI RefSeq:NP__000607.1)のアミノ酸番号421~458、CD5(NCBI RefSeq:NP__055022.2)のアミノ酸番号402~495、CD8アルファ(NCBI RefSeq:NP__001759.3)のアミノ酸番号207~235、CD83(GenBank:AAA35664.1)のアミノ酸番号196~210、CD28(NCBI RefSeq:NP__006130.1)のアミノ酸番号181~220、CD137(4-1BB、NCBI RefSeq:NP__001552.2)のアミノ酸番号214~255、CD134(OX40、NCBI RefSeq:NP__003318.1)のアミノ酸番号241~277、およびICOS(NCBI RefSeq:NP__036224.1)のアミノ酸番号166~199の配列を有するペプチド、ならびに、これらのペプチドと同じ機能を有するバリアントを含むが、これらに限定されない。このように、本開示は、ここまで、共刺激シグナル伝達要素として主に4-1BBを用いて例示されてきたが、他の共刺激要素も本開示の範囲内である。
【0145】
CARの細胞質シグナル伝達部分における細胞質シグナル伝達配列は、無作為のまたは特定の順序で、互いに結合していてよい。任意に、好ましくはアミノ酸2~10個の長さの、短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、この結合を形成していてよい。グリシンとセリンとのダブレットは、特に好適なリンカーを提供する。
【0146】
一実施形態において、細胞内ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の一実施形態において、細胞内ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。さらに別の一実施形態において、細胞内ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメイン、ならびにCD28および4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。
【0147】
一実施形態において、CARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ゼータのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、ここで、4-1BBのシグナル伝達ドメインは配列番号26の核酸配列を含み、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインは配列番号28の核酸配列および配列番号30のバリアント核酸配列を含む。一実施形態において、CARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ゼータのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、ここで、4-1BBのシグナル伝達ドメインは配列番号26の核酸配列を含み、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインは配列番号28の核酸配列および配列番号30のバリアント核酸配列を含む。
【0148】
一実施形態において、CARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ゼータのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、ここで、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号27のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列をコードする核酸配列および配列番号31のアミノ酸配列をコードするバリアント核酸を含む。
【0149】
一実施形態において、CARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ゼータのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、ここで、4-1BBのシグナル伝達ドメインは配列番号27のアミノ酸配列を含み、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインは配列番号29のアミノ酸配列および配列番号31のバリアントアミノ酸配列を含む。
【0150】
5.CARについてのさらなる説明
本明細書中に開示されるCARの機能的部分もまた、本発明の範囲内に明白に含まれる。用語「機能的部分」は、CARに言及して使用される場合、本明細書中に開示されるCARの1種以上の任意の部分または断片を指し、この部分または断片は、当該CAR(親CAR)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、たとえば、親CARと類似する程度に、親CARと同程度に、または親CARよりも高程度に、標的細胞の認識、または疾患の検出、処置、もしくは予防を行なう能力を保持する、CAR部分を包含する。親CARに関して、機能的部分は、たとえば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれ以上を含み得る。
【0151】
機能的部分は、当該部分のアミノ末端またはカルボキシ末端または両末端に、親CARのアミノ酸配列にはみられないさらなるアミノ酸を含んでよい。望ましくは、これらのさらなるアミノ酸は、たとえば、標的細胞の認識、がんの検出、がんの処置または予防などの、機能的部分の生物学的機能を妨げない。より望ましくは、これらのさらなるアミノ酸は、こうした生物学的活性を、親CARの生物学的活性よりも向上させる。
【0152】
本明細書中に開示されるCARの機能的バリアントが、本開示の範囲内に含まれる。用語「機能的バリアント」は、本明細書中において使用される場合、親CARとの配列同一性または類似性が相当程度または顕著であるCAR、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、この機能的バリアントは、当該バリアントの派生元であるCARの生物学的活性を保持する。機能的バリアントは、たとえば、本明細書中に記載されるCAR(親CAR)のバリアントであって、親CARと類似する程度に、親CARと同程度に、または親CARよりも高程度に、標的細胞を認識する能力を保持するものを包含する。親CARに関して、機能的バリアントは、たとえば、親CARとのアミノ酸配列同一性が、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%、またはそれ以上であってよい。
【0153】
機能的バリアントは、たとえば、親CARのアミノ酸配列に少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を加えたものを含んでよい。代替的には、または追加的には、機能的バリアントは、親CARのアミノ酸配列に少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を加えたものを含んでよい。この場合、この非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を妨害または阻害しないことが好ましい。この非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を向上させて、その結果、機能的バリアントの生物学的活性が親CARよりも優れるようにするものであってよい。
【0154】
CARのアミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当技術分野において周知されており、特定の物理的および/または化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じまたは類似する化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるようなアミノ酸置換を含む。たとえば、保存的アミノ酸置換は、酸性/負荷電極性アミノ酸(たとえば、AspまたはGlu)を別の酸性/負荷電極性アミノ酸で置換すること、非極性側鎖含有アミノ酸(たとえば、Ala、Gly、Val、He、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)を別の非極性側鎖含有アミノ酸で置換すること、塩基性/正荷電極性アミノ酸(たとえば、Lys、His、Argなど)を別の塩基性/正荷電極性アミノ酸で置換すること、極性側鎖含有非荷電アミノ酸(たとえば、Asn、Gin、Ser、Thr、Tyrなど)を別の極性側鎖含有非荷電アミノ酸で置換すること、ベータ分枝側鎖含有アミノ酸(たとえば、He、Thr、およびVal)を別のベータ分枝側鎖含有アミノ酸で置換すること、芳香族側鎖含有アミノ酸(たとえば、His、Phe、Trp、およびTyr)を別の芳香族側鎖含有アミノ酸で置換することなどであってよい。
【0155】
CARは、本質的に、本明細書中に記載される1つまたは複数の指定のアミノ酸配列からなるものであってよく、その結果、他の構成要素(たとえば、他のアミノ酸)によって機能的バリアントの生物学的活性が実質的に変化しない。
【0156】
CAR(機能的部分および機能的バリアントを含む)は、CAR(またはその機能的部分または機能的バリアント)が、たとえば、抗原への特異的結合能力、哺乳動物における疾患細胞検出能力、または哺乳動物における疾患の処置もしくは予防能力などの、生物学的活性を保持する限り、任意の長さであってよい、すなわち任意の数のアミノ酸を含むものであってよい。たとえば、CARは、アミノ酸約50~約5000個の長さ、たとえば、アミノ酸50個、70個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、またはそれ以上の長さであってよい。
【0157】
CAR(本発明に係る機能的部分および機能的バリアントを含む)は、1つ以上の天然アミノ酸に替えて、合成アミノ酸を含んでよい。このような合成アミノ酸は当技術分野において周知であり、たとえば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、-アミノ n-デカン酸(-amino n-decanoic acid)、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-およびtrans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、a-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、Ν’,Ν’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、-アミノシクロペンタンカルボン酸(-aminocyclopentane carboxylic acid)、a-アミノシクロヘキサンカルボン酸、a-アミノシクロヘプタンカルボン酸、a-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびa-tert-ブチルグリシンを含む。
【0158】
CAR(機能的部分および機能的バリアントを含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(たとえば、ジスルフィド架橋により)、または酸付加塩に変換、および/または任意に二量体化もしくは重合もしくは共役されていてよい。
【0159】
CAR(その機能的部分および機能的バリアントを含む)は、当技術分野において周知の方法によって得ることができる。CARは、任意の好適なポリペプチドまたはタンパク質作製方法によって作製されてよい。ポリペプチドおよびタンパク質を新たに合成する好適な方法が、Chanら,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,ed.Westwoodら,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001;および米国特許第5,449,752号などの先行技術文献中に記載される。また、ポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書中に記載される核酸を使用し、標準的な組換え方法を使用して、組換えにより産生されてもよい。たとえば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;および、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照。さらに、CAR(その機能的部分および機能的バリアントを含む)のいくつかは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(たとえば、ラット、ヒトなど)などの供給源から単離および/または精製されてよい。単離および精製方法は当技術分野において周知されている。代替的には、本明細書中に記載されるCAR(その機能的部分および機能的バリアントを含む)は、企業により商業的に合成されたものであってもよい。この点に関し、CARは、合成、組換え、単離、および/または精製されたものであってよい。
【0160】
B.抗体および抗原結合断片
一実施形態は、本明細書中に開示される抗原の1つ以上に特異的に結合する、CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合ドメインもしくは一部分をさらに提供する。本明細書中において使用される場合、「CARを発現するT細胞」または「CAR T細胞」は、CARを発現するT細胞を意味し、たとえばCARの抗体由来標的ドメインによって決定される、抗原特異性を有する。
【0161】
本明細書中において使用される場合、「抗原結合ドメイン」は、抗体およびその抗原結合断片を含んでよい。用語「抗体」は、本明細書中において、その最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を呈するものであれば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、およびその抗原結合断片を含む(がこれらに限定されない)多様な抗体構造を包含する。抗体の例は、たとえば、抗原に対する結合親和性を保持する当技術分野において周知の完全型免疫グロブリンならびにそのバリアントおよび断片を含むが、これらに限定されない。
【0162】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体である。すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、ごく微量で存在し得る天然の突然変異を有し得ることを除いて、同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原エピトープに対するものである。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から当該抗体が得られるという特性を示すものであって、当該抗体が何らかの特定の方法によって作製される必要があると解釈されるべきではない。いくつかの例において、モノクローナル抗体は、Bリンパ球の単一クローンによって、または、単一の抗体(またはその抗原結合断片)についてその抗体の軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸がトランスフェクションされた細胞もしくはその子孫によって、産生された抗体である。いくつかの例において、モノクローナル抗体は、対象から単離される。モノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響しない保存的アミノ酸置換を有してよい。例示的なモノクローナル抗体作製方法は周知されており、たとえば、Harlow&Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,第2版 Cold Spring Harbor Publications,New York(2013)を参照。
【0163】
典型的には、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合により互いに結合した重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子を含む。軽鎖にはラムダ(λ)およびカッパ(κ)の2種類がある。主要な重鎖には5つのクラス(またはアイソタイプ)があり、これらが抗体分子の機能活性を決定する(IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgE)。
【0164】
重鎖および軽鎖はそれぞれ、定常領域(または定常ドメイン)および可変領域(または可変ドメイン)を含有する(たとえば、Kindtら Kuby Immunology,第6版,W.H.Freeman and Co.,91ページ(2007)を参照)。いくつかの実施形態において、重鎖および軽鎖可変領域が組み合わさって、抗原に特異的に結合する。追加的な実施形態において、重鎖可変領域のみが必要とされる。たとえば、重鎖のみからなる天然のラクダ類抗体は、軽鎖がなくても機能的かつ安定である(たとえば、Hamers-Castermanら,Nature,363:446-448,1993;Sheriffら,Nat.Struct.Biol.,3:733-736,1996を参照)。「VH」への言及、または「VH」は、抗原結合断片の可変領域を含む、抗体重鎖の可変領域、たとえばFv、ScFv、dsFv、またはFabなどを指す。「VL」への言及、または「VL」は、Fv、ScFv、dsFv、またはFabのものを含む抗体軽鎖の可変ドメインを指す。
【0165】
軽鎖および重鎖の可変領域は、「フレームワーク」領域と、これを中断する3つの超可変領域(「相補性決定領域」または「CDR」ともよばれる)とを含有する(たとえば、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services),1991を参照)。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、同種間で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成軽鎖および構成重鎖のフレームワーク領域が一緒になって、三次元空間においてCDRを位置決めおよび整列させている。
【0166】
CDRは、主に、抗原エピトープへの結合を担う。所与のCDRのアミノ酸配列の境界は、Kabatら(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 第5版 Public Health Service,アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,MD,1991;“Kabat” numbering scheme)、Al-Lazikaniら(JMB 273,927-948,1997;“Chothia” numbering scheme)、およびLefrancら(“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev.Comp.Immunol.,27:55-77,2003;“IMGT” numbering scheme)により記載されるスキームを含む複数の周知のスキームのうち任意のものを使用して容易に判断できる。各鎖のCDRは、典型的には、CDR1、CDR2、およびCDR3(N末端からC末端に向かって)と称され、さらに、典型的には、そのCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、VH CDR3は、これを含む抗体の重鎖の可変ドメインからのCDR3であり、VL CDR1は、これを含む抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3と称される場合がある。重鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3と称される場合がある。
【0167】
「抗原結合断片」は、同族の抗原を特異的に認識する能力を保持する、全長抗体の一部分、およびこのような部分の多様な組み合わせである。抗原結合断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体(linear antibodies);一本鎖抗体分子(たとえば、ScFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。抗体断片は、抗体全体の改変によって作製された、または、組換えDNA方法論を使用して新たに合成された、抗原結合断片を含む(たとえば、Kontermann and Dubel(Ed),Antibody Engineering,Vols.1-2,第2版,Springer Press,2010を参照)。
【0168】
一本鎖抗体(ScFv)は、1つ以上の抗体のVHドメインとVLドメインとを好適なポリペプチドリンカーによって結合して遺伝子融合一本鎖分子としたものを含有する、遺伝子操作された分子である(たとえば、Birdら,Science,242:423 426,1988;Hustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.,85:5879 5883,1988;Ahmadら,Clin.Dev.Immunol.,2012,doi:10.1155/2012/980250;Marbry,IDrugs,13:543-549,2010を参照)。ScFv内におけるVHドメインおよびVLドメインの分子内配向は、典型的には、ScFvを決定づけるものではない。したがって、起こり得る編成(VHドメイン-リンカードメイン-VLドメイン;VLドメイン-リンカードメイン-VHドメイン)の両方を有するScFvを使用してよい。
【0169】
dsFvにおいて、重鎖および軽鎖の可変鎖は、突然変異によりジスルフィド結合を導入して、両鎖の結合を安定化させたものである。また、ダイアボディも含まれ、これは2価の二重特異性抗体であって、VHドメインとVLドメインとが1本のポリペプチド鎖上に発現しているが、2つのドメインを繋いで1本の鎖にするには短すぎるリンカーを使用しているため、2つのドメインを別の鎖の相補的ドメインと繋いでおり、2つの抗原結合部位が形成されている(たとえば、Holligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:6444 6448,1993;Poljakら,Structure,2:1121 1123,1994を参照)。
【0170】
抗体は、さらに、キメラ抗体(ヒト化マウス抗体など)およびヘテロ結合抗体(heteroconjugate antibodies)(二重特異性抗体など)などの遺伝子操作された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL);Kuby,J.,Immunology,第3版,W.H.Freeman&Co.,New York,1997も参照。
【0171】
天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築できる、または、組換えによって作製できる、または、たとえば、Huseら,Science 246:1275-1281(1989)(引用により本明細書に援用する)により記載される可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって得ることができる。これらの方法、ならびに、たとえばキメラ、ヒト化、CDRグラフト、一本鎖、および二機能性抗体を作製するための、他の方法は、当業者に周知されている(Winter and Harris,Immunol.Today 14:243-246(1993);Wardら,Nature 341:544-546(1989);Harlow and Lane,上述,1988;Hilyardら,Protein Engineering:A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck,Antibody Engineering,第2版(Oxford University Press 1995);これらの各々を引用により本明細書に援用する)。
【0172】
参照抗体としての「同じエピトープに結合する抗体」は、拮抗アッセイにおいて参照抗体とその抗原との結合を50%以上妨げる抗体を指し、逆に、参照抗体は、拮抗アッセイにおいてこの抗体とその抗原との結合を50%以上妨げる。抗体拮抗アッセイは周知されており、例示的な拮抗アッセイが本明細書中において提供される。
【0173】
「ヒト化」抗体または抗原結合断片は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(マウス、ラット、または合成など)抗体または抗原結合断片からの1つ以上のCDRとを含む。このCDRを与える非ヒト抗体または抗原結合断片は「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを与えるヒト抗体または抗原結合断片は「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態において、すべてのCDRが、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンからのものである。定常領域は存在しなくてもよいが、存在する場合には、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一であってよく、たとえば少なくとも約85~90%(約95%以上など)同一であってよい。よって、ヒト化抗体または抗原結合断片のすべての部分(恐らくはCDRを除く)が、天然ヒト抗体配列の対応部分と実質的に同一である。
【0174】
「キメラ抗体」は、2つの異なる抗体(典型的には種が異なる)に由来する配列を含む抗体である。いくつかの例において、キメラ抗体は、1つのヒト抗体からの1つ以上のCDRおよび/またはフレームワーク領域と、別のヒト抗体からのCDRおよび/またはフレームワーク領域とを含む。
【0175】
「完全ヒト抗体」または「ヒト抗体」は、ヒトゲノムからの(または、これに由来する)配列を含み、別の種からの配列を含まない抗体である。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、ヒトゲノムからの(または、これに由来する)CDR、フレームワーク領域、および(存在する場合には)Fc領域を含む。ヒト抗体は、たとえばファージディスプレイまたは遺伝子組換え動物の使用により、ヒトゲノム由来配列に基づく抗体作製技術を使用することによって、同定および単離できる(たとえば、Barbasら Phage display:A Laboratory Manuel.第1版 New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,2004.Print.;Lonberg,Nat.Biotech.,23:1117-1125,2005;Lonenberg,Curr.Opin.Immunol.,20:450-459,2008を参照)。
【0176】
抗体は、1つ以上の結合部位を有してよい。結合部位が1を超える場合には、これらの結合部位は、互いに同じであってよい、または異なってもよい。たとえば、天然の免疫グロブリンは2つの同じ結合部位を有し、一本鎖抗体またはFab断片は1つの結合部位を有し、二重特異性または二機能性抗体は2つの異なる結合部位を有する。
【0177】
CARの任意の機能的部分に結合できる抗体能力を試験する方法は当技術分野において周知であり、たとえば、放射免疫測定(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、および競合阻害アッセイなどの、任意の抗体抗原結合アッセイを含む(たとえば、下記のJanewayら、米国特許出願公開第2002/0197266 Al号、および米国特許第7,338,929号を参照)。
【0178】
また、CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分は、たとえば、放射性同位体、フルオロフォア(たとえば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(たとえば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、および元素粒子(たとえば、金粒子)などの、検出可能な標識を含むように改変されていてよい。
【0179】
C.結合体(conjugates)
本明細書中に開示される抗原の1つ以上に対して特異的な、CAR、CARを発現するT細胞、またはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片は、当業者に周知の多くの手段のうち任意の手段を使用して、エフェクター分子または検出可能なマーカーなどの剤に結合されていてよい。共有結合による手段および非共有結合による手段のいずれを使用してもよい。結合体は、本明細書中に開示される抗原の1つ以上に対して特異的に結合する抗体または抗原結合断片と、エフェクター分子または検出可能なマーカーとが共有結合している分子を含むが、これらに限定されない。当技術分野における当業者には、化学療法剤、抗血管新生剤、毒素、125I、32P、14C、H、および35Sなどの放射性剤、ならびに、他の標識、標的部位、およびリガンドなどを含む(がこれらに限定されない)多様なエフェクター分子および検出可能なマーカーを使用できるということが理解される。
【0180】
具体的なエフェクター分子または検出可能なマーカーの選択は、具体的な標的分子または細胞、および所望される生物学的作用に依存する。したがって、たとえば、エフェクター分子は、特定の標的細胞(腫瘍細胞など)の死を引き起こすために使用される細胞毒であってもよい。
【0181】
エフェクター分子または検出可能なマーカーを抗体または抗原結合断片に付着させる手順は、エフェクターの化学構造によって異なる。ポリペプチドは、典型的には、カルボン酸(COOH)、遊離アミン(-NH)、またはスルフヒドリル(-SH)基などの多様な官能基を含有しており、これらを抗体上の好適な官能基との反応に利用でき、その結果として、エフェクター分子または検出可能なマーカーの結合が得られる。代替的には、抗体または抗原結合断片を誘導体化して、さらなる反応性官能基を露出または付着させる。誘導体化は、Pierce Chemical Company(Rockford、IL)から入手できるものなどの複数の周知のリンカー分子のうち任意のものの付着に関連してよい。リンカーは、抗体または抗原結合断片をエフェクター分子または検出可能なマーカーと結合させるために使用される任意の分子であってよい。リンカーは、抗体または抗原結合断片とエフェクター分子または検出可能なマーカーとの両方に共有結合を形成できる。好適なリンカーは当業者に周知されており、直鎖もしくは分枝鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーを含むが、これらに限定されない。抗体または抗原結合断片およびエフェクター分子または検出可能なマーカーがポリペプチドである場合、リンカーは、その側鎖を介して構成アミノ酸に(たとえば、ジスルフィド結合を介してシステインに)、または末端アミノ酸のアルファ炭素のアミノ基およびカルボキシ基に結合していてよい。
【0182】
いくつかの実施形態において、リンカーはスペーサ要素を含んでよく、スペーサ要素が存在する場合、スペーサ要素によってリンカーが大きくなり、エフェクター分子または検出可能なマーカーと抗体または抗原結合断片との間の距離が増大する。スペーサの具体例は当業者に周知されており、米国特許第号7,964,566号、第7,498,298号、第6,884,869号、第6,323,315号、第6,239,104号、第6,034,065号、第5,780,588号、第5,665,860号、第5,663,149号、第5,635,483号、第5,599,902号、第5,554,725号、第5,530,097号、第5,521,284号、第5,504,191号、第5,410,024号、第5,138,036号、第5,076,973号、第4,986,988号、第4,978,744号、第4,879,278号、第4,816,444号、および第4,486,414号、ならびに米国特許公開第20110212088号および第20110070248号中に列記されるものを含む(これらの各々の全体を引用により本明細書に援用する)。
【0183】
いくつかの実施形態において、リンカーは、細胞内という条件下において開裂可能であり、リンカーの開裂によって、細胞内環境において、抗体または抗原結合断片からエフェクター分子または検出可能なマーカーが解放される。さらに別の実施形態において、リンカーは開裂可能ではなく、エフェクター分子または検出可能なマーカーは、たとえば抗体の分解によって、解放される。いくつかの実施形態において、リンカーは、細胞内環境内(たとえば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ(caveolea)内)に存在する開裂剤によって開裂可能である。リンカーは、たとえば、細胞内のペプチダーゼ、またはリソソームプロテアーゼもしくはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されないプロテアーゼ酵素によって開裂したペプチドリンカーであってよい。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、少なくともアミノ酸2個の長さ、または少なくともアミノ酸3個の長さである。しかしながら、リンカーは、アミノ酸4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個の長さ、たとえばアミノ酸1~2個、1~3個、2~5個、3~10個、3~15個、1~5個、1~10個、1~15個の長さであってよい。プロテアーゼは、カテプシンBおよびD、ならびにプラスミンを含んでよく、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して、標的細胞中において活性薬物を放出することが知られている(たとえば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照)。たとえば、チオール依存性プロテアーゼ カテプシン-Bによって開裂可能なペプチドリンカーを使用できる(たとえば、フェニルアラニン-ロイシンまたはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシンリンカー)。このようなリンカーの他の例が、たとえば米国特許第6,214,345号中に記載され、これを引用により本明細書に援用する。具体的な一実施形態において、細胞内プロテアーゼによって開裂可能なペプチドリンカーは、バリン-シトルリン(Citruline)リンカーまたはフェニルアラニン-リシンリンカーである(たとえば、米国特許第6,214,345号を参照。この文献はドキソルビシンとバリン-シトルリン(Citruline)リンカーとの合成を記載している)。
【0184】
別の実施形態において、開裂可能なリンカーは、pH感受性である、すなわち、特定のpH値において加水分解に感受性を有する。典型的には、こうしたpH感受性リンカーは、酸性条件下において加水分解する。たとえば、リソソーム内で加水分解し得る酸不安定リンカー(たとえば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニットアミド(cis-aconitic amide)、オルトエステル、アセタール、またはケタールなど)を使用できる。(たとえば、米国特許第5,122,368号、第5,824,805号、第5,622,929号;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123;Nevilleら,1989,Biol.Chem.264:14653-14661を参照)。こうしたリンカーは、中性pH条件下(血液中など)においては比較的安定であるが、リソソームのおよそのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。特定の実施形態において、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカーである(たとえば、アシルヒドラゾン結合を介して当該治療剤に結合したチオエーテルなど(たとえば、米国特許第5,622,929号などを参照))。
【0185】
別の実施形態において、リンカーは、還元条件下において開裂可能である(たとえば、ジスルフィドリンカー)。多様なジスルフィドリンカーが当技術分野において周知されており、たとえば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)、およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)-、SPDBおよびSMPTを使用して形成できるものを含む。(たとえば、Thorpeら,1987,Cancer Res.47:5924-5931;Wawrzynczakら,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel編,Oxford U.Press,1987);Phillipsら,Cancer Res.68:92809290,2008を参照)。また、米国特許第4,880,935号も参照される。
【0186】
さらに別の具体的な実施形態において、リンカーは、マロネートリンカー(Johnsonら,1995,Anticancer Res.15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1299-1304)、または3’-N-アミド類似体(Lauら,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1305-12)である。
【0187】
さらに別の実施形態において、リンカーは開裂可能ではなく、エフェクター分子または検出可能なマーカーは抗体の分解によって解放される(米国公報第2005/0238649号を参照、この全体を引用により本明細書に援用する)。
【0188】
いくつかの実施形態において、リンカーは、細胞外環境において、開裂に対して抵抗性を有する。たとえば、結合体が細胞外環境内(たとえば、血漿中)に存在する際には、結合体の試料中において、リンカーの約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約3%以下、または約1%以下が開裂している。細胞外環境内においてリンカーが開裂に対して抵抗性を有するか否かは、たとえば、目的とするリンカーを含有する結合体を血漿と共に、あらかじめ定められた時間(たとえば、2、4、8、16、または24時間)かけてインキュベートし、次いで、血漿中に遊離しているエフェクター分子または検出可能なマーカーの量を定量することによって、判断できる。結合体中において使用できる多様な例示的なリンカーが、WO2004-010957号、米国公報第2006/0074008号、米国公報第20050238649号、および米国公報第2006/0024317号中に記載され、これらの各々の全体を引用により本明細書に援用する。
【0189】
いくつかの実施形態において、CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分と、カリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、およびCC1065などの1つ以上の小分子毒素、ならびにこれらの毒素の誘導体で毒素活性を有するものとの結合体が提供される。
【0190】
メイタンシノイド毒素部位としての使用に好適なメイタンシン化合物が当技術分野において周知されており、周知の方法にしたがって天然の供給源から単離でき、遺伝子操作技術を使用して作製できる(Yuら(2002)PNAS 99:7968-7973を参照)、または、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体を周知の方法にしたがって合成により調製できる。メイタンシノイドは、チューブリン重合の阻害によって作用する有糸分裂阻害剤(mitototic inhibitors)である。メイタンシンは、東アフリカ産の灌木であるMaytenus serrataから最初に単離された(米国特許第3,896,111号)。続いて、さらに、特定の微生物が、メイタンシノールおよびC-3メイタンシノールエステルなどのメイタンシノイドを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノールならびにその誘導体および類似体が、たとえば、米国特許第4,137,230号、第4,248,870号、第4,256,746号、第4,260,608号、第4,265,814号、第4,294,757号、第4,307,016号、第4,308,268号、第4,308,269号、第4,309,428号、第4,313,946号、第4,315,929号、第4,317,821号、第4,322,348号、第4,331,598号、第4,361,650号、第4,364,866号、第4,424,219号、第4,450,254号、第4,362,663号、および第4,371,533中に開示され、これらの各々を引用により本明細書に援用する。メイタンシノイドを含有する結合体、その作製方法、およびその治療的使用が、たとえば、米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、第6,441,163号、および欧州特許第EP0425235 B1号中に開示され、その開示内容を引用により本明細書に明白に援用する。
【0191】
さらなる毒素を、CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分と共に使用できる。毒素の例は、シュードモナス外毒素(PE)、リシン(ricin)、アブリン、ジフテリア毒素およびそのサブユニット、リボトキシン(ribotoxin)、リボヌクレアーゼ、サポリン、およびカリケアマイシン、ならびにボツリヌストキシンA~Fを含む。こうした毒素は当技術分野において周知されており、その多くを商業的供給元(たとえば、Sigma Chemical Company、St.Louis、MO)から容易に入手できる。意図される毒素は、こうした毒素のバリアントをも含む(たとえば、米国特許第5,079,163号および第4,689,401号を参照)。
【0192】
サポリンは、Saponaria officinalisに由来する毒素であり、リボソーム複合体の60S部分の不活性化によってタンパク質合成を妨げる(Stirpeら,Bio/Technology,10:405-412,1992)。しかしながら、この毒素は、細胞内に特異的に浸入するための機構を有さず、そのため、細胞内に効率よく入るには、内在している細胞表面タンパク質を認識する抗体または抗原結合断片に結合する必要がある。
【0193】
ジフテリア毒素は、Corynebacterium diphtheriaeから単離される。典型的には、免疫毒素中において使用するためのジフテリア毒素は、突然変異により、非特異的毒性が低減または除去されている。CRM107として知られる突然変異体は、十分な酵素活性を有するが非特異的毒性が著しく低減されたものであり、1970年代から周知され(Laird and Groman,J.Virol.19:220,1976)、ヒト臨床試験において使用されている。米国特許第5,792,458号および米国特許第5,208,021号を参照。
【0194】
リシンは、Ricinus communis(トウゴマ(Castor bean))から得られるレクチンRCA60である。リシンの例は、米国特許第5,079,163号および米国特許第4,689,401号を参照。Ricinus communis凝集素(RCA)には2つの形態があり、これらの分子量がそれぞれ約65kDおよび約120kDであることからRCA60およびRCA120と称される(Nicholson&Blaustein,J.Biochim.Biophys.Acta 266:543,1972)。A鎖はタンパク質合成の不活性化と細胞の死滅とを担う。B鎖は、細胞表面ガラクトース残基にリシンを結合させて、サイトゾル中へのA鎖の輸送を促進する(Olsnesら,Nature 249:627-631,1974および米国特許第3,060,165号)。
【0195】
リボヌクレアーゼもまた、標的分子に結合させることによって免疫毒素として使用されている(Suzukiら,Nat.Biotech.17:265-70,1999を参照)。α-サルシン(sarcin)およびレストリクトシン(restrictocin)などの例示的なリボトキシンが、たとえば、Rathoreら,Gene 190:31-5,1997、およびGoyal and Batra,Biochem.345 Pt 2:247-54,2000中に記載されている。カリケアマイシンは、Micromonospora echinosporaから最初に単離されたものであり、DNA二本鎖の切断を引き起こしてアポトーシスを導くエンジイン抗腫瘍抗生物質ファミリーのメンバーである(たとえば、Leeら,J.Antibiot.42:1070-87,1989を参照)。この薬物は、臨床試験において、免疫毒素の毒性部位である(たとえば、Gillespieら,Ann.Oncol.11:735-41,2000を参照)。
【0196】
アブリンは、Abrus precatoriusから得られる毒性レクチンを含む。その毒性成分であるアブリンa、b、c、およびdは、分子量が約63~67kDであり、2つのポリペプチド鎖AおよびBがジスルフィド結合したものから構成される。A鎖はタンパク質合成を阻害し、B鎖(アブリン-b)はD-ガラクトース残基に結合する(Funatsuら,Agr.Biol.Chem.52:1095,1988;および、Olsnes,Methods Enzymol.50:330-335,1978を参照)。
【0197】
本明細書中に開示される抗原の1つ以上に対して特異的な、CAR、CARを発現するT細胞、モノクローナル抗体、その抗原結合断片は、検出可能なマーカー、たとえば、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法、または画像診断技術(コンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴画像法(NMRI)、磁気共鳴断層撮影(MTR)、超音波診断、光ファイバー検査、および腹腔鏡下検査など)によって検出できる検出可能なマーカーとも結合していてよい。検出可能なマーカーの具体例は、フルオロフォア、化学発光剤、酵素による結合、放射性アイソタイプ、および重金属または化合物(たとえば、MRIによる検出を目的とした超常磁性酸化鉄ナノ結晶)を含むが、これらに限定されない。たとえば、有用である検出可能なマーカーは、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド(5-dimethylamine-1-napthalenesulfonyl chloride)、フィコエリトリン、およびランタニド発光体などを含む蛍光性化合物を含む。ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などの生物発光マーカーも有用である。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコースオキシダーゼなどの、検出にとって有用な酵素と結合していてもよい。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分が、検出可能な酵素と結合している場合、当該酵素に使用されると識別可能な反応生成物を生成するようなさらなる試薬を添加することによって検出できる。たとえば、剤である西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加によって着色反応生成物が得られ、これを目視によって検出できる。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、ビオチンと結合していてもよく、アビジンまたはストレプトアビジンの結合を間接的に測定することによって検出されてもよい。注目すべきことに、アビジン自体が酵素または蛍光標識と結合していてもよい。
【0198】
CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分は、ガドリニウムなどの常磁性剤と結合していてもよい。超常磁性酸化鉄などの常磁性剤も、標識として有用である。抗体はまた、ランタニド(ユーロピウムおよびジスプロシウムなど)およびマンガンと結合していてもよい。抗体または抗原結合断片はまた、第2のレポーター(ロイシンジッパーの配列対、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)によって認識されるあらかじめ定められたポリペプチドエピトープで標識されていてもよい。
【0199】
CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、放射性標識アミノ酸と結合していてもよい。放射性標識は、診断目的および治療目的の両方に使用してよい。たとえば、放射性標識は、本明細書中に開示される抗原の1つ以上および抗原発現細胞をX線、発光スペクトル、または他の診断技術によって検出するために使用してよい。さらに、放射性標識は、治療において、対象における腫瘍を処置するための、たとえば神経芽細胞腫を処置するための、毒素として使用してよい。ポリペプチドのための標識の例は、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iなどの放射性同位体または放射性ヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0200】
このような検出可能なマーカーの検出手段は、当業者に周知されている。したがって、たとえば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンタを使用して検出されてよく、蛍光性マーカーは、光検出器を使用して放射光を検出することによって検出されてよい。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を与えて、基質に対する酵素の作用により生成した反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、単純に、着色した標識を可視化することによって検出される。
【0201】
D.ヌクレオチド、発現、ベクター、および宿主細胞
本発明の一実施形態によって、本明細書中に記載されるCAR、抗体、またはその抗原結合部分(その機能的部分および機能的バリアントを含む)のうち任意のものをコードするヌクレオチド配列を含む核酸がさらに提供される。本発明に係る核酸は、本明細書中に記載されるリーダー配列、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのうち任意のものをコードするヌクレオチド配列を含んでよい。
【0202】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、コドンが改変されたものであってよい。いかなる理論にも拘束されないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化によってmRNA転写物の翻訳効率が増大すると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然コドンを、同じアミノ酸をコードするが細胞内での利用がより容易なtRNAによって翻訳され得る別のコドンに置換することを伴ってよく、したがって、翻訳効率が増大し得る。ヌクレオチド配列の最適化はまた、翻訳を妨害し得る二次mRNA構造を低減し得るものであってよく、したがって、翻訳効率が増大し得る。
【0203】
本発明の一実施形態において、核酸は、本発明のCARの抗原結合ドメインをコードするコドン改変ヌクレオチド配列を含んでよい。本発明の別の一実施形態において、核酸は、本明細書中に記載されるCAR(その機能的部分および機能的バリアントを含む)のうち任意のものをコードするコドン改変ヌクレオチド配列を含んでよい。
【0204】
本明細書中において使用される「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸分子」を含むものであり、一般的には、一本鎖または二本鎖であってよく、合成または天然の供給源から(たとえば、単離および/または精製により)得られてよく、天然、非天然、または変化したヌクレオチドを含有してよく、天然、非天然、または変化したヌクレオチド間結合(無改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルに代えて、ホスホロアミデート結合またはホスホロチオエート結合など)を含有してよい、DNAまたはRNAのポリマーを意味する。いくつかの実施形態において、核酸は、挿入、欠失、反転、および/または置換を全く含まない。しかしながら、本明細書中において記載されるとおり、いくつかの例においては、核酸が1つ以上の挿入、欠失、反転、および/または置換を含むことが好適であってよい。
【0205】
組換え核酸は、天然には存在しない配列を有するもの、または、配列中では離れた2つの領域を人工的に組み合わせた配列を有するものであってよい。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または、より一般的には、離れた核酸領域を、たとえば、上述されるSambrookらの文献中に記載されるものなどの、遺伝子操作技術により、人工的に操作して、実現されることが多い。核酸は、当技術分野において周知される手順を使用した化学合成および/または酵素による結合反応に基づいて構築されてもよい。たとえば、上述されるSambrookらの文献および上述されるAusubelらの文献を参照。たとえば、核酸は、天然のヌクレオチドを使用して、または、当該分子の生物学的安定性を増大させるように、もしくはハイブリダイゼーションにより形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるように設計された、多様な様式で改変されたヌクレオチド(たとえば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成されてもよい。核酸生成に使用できる改変ヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されない。代替的には、本発明に係る核酸の1つ以上を、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA、米国)などの企業から購入してもよい。
【0206】
核酸は、上述されるCARのうち任意のものまたはその機能的部分もしくは機能的バリアントをコードする任意の単離または精製されたヌクレオチド配列を含んでよい。代替的には、ヌクレオチド配列は、上述される配列のうち任意のものに縮重(degenerate)されたヌクレオチド配列または縮重(degenerate)配列の組み合わせを含んでよい。
【0207】
一実施形態は、本明細書中に記載される核酸のうち任意のもののヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または本明細書中に記載される核酸のうち任意のもののヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離または精製された核酸をさらに提供する。
【0208】
ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高度にストリンジェントな条件下においてハイブリダイズしてよい。「高度にストリンジェントな条件」とは、ヌクレオチド配列が標的配列(本明細書中に記載される核酸のうち任意のもののヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズし、その量が、非特異的なハイブリダイゼーションよりも検出可能な程度に多いことを意味する。高度にストリンジェントな条件は、厳密に相補的な配列を有するポリヌクレオチドまたはミスマッチが2~3個散在するのみであるものを、当該ヌクレオチド配列に一致する小領域(たとえば、3~10塩基)を偶然にも2~3個有する無作為の配列から区別できるような条件を含む。こうした小さな相補性領域は、塩基14~17個またはそれ以上の長さの全長相補性領域よりも容易に融解され、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションによってこれらを容易に区別できる。比較的高度にストリンジェントな条件は、たとえば、約0.02~0.1M NaClまたはこれと同等で温度約50~70℃などのような低塩および/または高温条件を含み得る。このように高度にストリンジェントな条件は、ヌクレオチド配列と鋳型または標的鎖との間のミスマッチを、万一許容するとしても、その程度は非常に低く、本発明のCARのうち任意のものの発現を検出するために特に好適である。一般的に、ホルムアミドの添加量を増加することによって条件をさらにストリンジェントにすることができると理解される。
【0209】
また、本明細書中に記載される核酸のうち任意のものとの同一性が少なくとも約70%またはそれ以上、たとえば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。
【0210】
一実施形態において、核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれてよい。この点において、一実施形態は、上述される核酸のうち任意のものを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書中に記載される目的において、用語「組換え発現ベクター」は、遺伝子改変オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、このコンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、当該ベクターと宿主細胞とを、宿主細胞中において当該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが発現するのに十分な条件下において接触させた場合に、宿主細胞が当該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを発現できるものである。こうしたベクターは、総じて、天然には存在しない。
【0211】
しかしながら、こうしたベクターの一部は天然に存在し得る。この組換え発現ベクターは、DNAおよびRNAを含むがこれらに限定されない、任意の種類のヌクレオチドを含んでよく、これらは、一本鎖または二本鎖であってよく、合成または一部は天然の供給源から得られてよく、天然、非天然、または変化したヌクレオチドを含有してよい。組換え発現ベクターは、天然または非天然のヌクレオチド間結合、または両方の型の結合を含んでよい。好ましくは、非天然または変化したヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合は、当該ベクターの転写または複製を妨げない。
【0212】
一実施形態において、組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであってよく、任意の好適な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするために使用できる。好適なベクターは、繁殖および増殖を目的として、または発現を目的として、またはその両方の目的で設計されたもの(プラスミドおよびウイルスなど)を含む。ベクターは、pUC系(Fermentas Life Sciences、Glen Burnie、MD)、pBluescript系(Stratagene、LaJolla、CA)、pET系(Novagen、Madison、WI)、pGEX系(Pharmacia Biotech、Uppsala、スウェーデン)、およびpEX系(Clontech、Palo Alto、CA)からなる群より選択されてよい。
【0213】
λυΤΙΟ、λυΤΙ 1、λZapII(Stratagene)、EMBL4、およびλΝΜΙ 149などのバクテリオファージベクターも使用できる。植物発現ベクターの例は、pBIOl、pBI101.2、pBHOl.3、pBI121、およびpBIN19(Clontech)を含む。動物発現ベクターの例は、pEUK-Cl、pMAM、およびpMAMneo(Clontech)を含む。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、たとえば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであってよい。レンチウイルスベクターは、特に、Miloneら,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)中において提供されるような自己不活型レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来するベクターである。診療所において使用され得るレンチウイルスベクターの他の例は、たとえば、Oxford BioMedica plcからのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子導入技術、LentigenなどからのLENTIMAX(商標)ベクター系を含むが、これらに限定されない。臨床用の型ではないレンチウイルスベクターも入手可能であり、当業者に周知され得る。
【0214】
複数のトランスフェクション技術が当技術分野において一般的に周知されている(たとえば、Grahamら,Virology,52:456-467(1973);Sambrookら,上述;Davisら,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986);および、Chuら,Gene,13:97(1981)を参照)。
【0215】
トランスフェクション方法は、リン酸カルシウム共沈(たとえば、上述されるGrahamらを参照)、培養細胞中への直接マイクロインジェクション(たとえば、Capecchi,Cell,22:479-488(1980)を参照)、エレクトロポレーション(たとえば、Shigekawaら,BioTechniques,6:742-751(1988)を参照)、リポソーム介在性遺伝子導入(たとえば、Manninoら,BioTechniques,6:682-690(1988)を参照)、脂質介在性形質導入(たとえば、Feignerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413-7417(1987)を参照)、および高速微粒子銃を使用した核酸導入(たとえば、Kleinら,Nature,327:70-73(1987)を参照)を含む。
【0216】
一実施形態において、組換え発現ベクターは、たとえば上述されるSambrookら、および上述されるAusubelら中に記載される、標準的な組換えDNA技術を使用して調製されてよい。発現ベクターの環状または線状コンストラクトは、原核または真核生物の宿主細胞において機能する複製機構を含有するように調製されてよい。複製機構は、たとえば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、およびウシパピローマウイルスなどに由来するものであってよい。
【0217】
組換え発現ベクターは、ベクター導入先の宿主細胞(たとえば、細菌、真菌、植物、または動物)の種類に対して適宜特異的であり、かつ、ベクターがDNAまたはRNAのいずれに基づくかが考慮された、転写コドンおよび翻訳開始コドンおよび停止コドンなどの調節配列を含んでよい。組換え発現ベクターは、クローニングを促進するための制限部位を含んでよい。
【0218】
組換え発現ベクターは、形質転換またはトランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能とする1つ以上のマーカー遺伝子を含んでよい。マーカー遺伝子は、たとえば抗生物質、重金属などに対する耐性といった、殺生物剤耐性、および、原栄養性とするための栄養要求性宿主における補完などを含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子は、たとえば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、およびアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0219】
組換え発現ベクターは、CAR(その機能的部分および機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列、またはCARをコードするヌクレオチド配列に相補的なもしくはこれにハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に結合した、天然または非天然のプロモーターを含んでよい。プロモーターの選択(たとえば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、および発生特異的(developmental-specific)など)は、当業者の通常の知識の範囲内である。同様にヌクレオチド配列とプロモーターとの結合も、当業者の通常の知識の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、たとえば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、またはマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列中にみられるプロモーターであってよい。
【0220】
組換え発現ベクターは、一過性の発現、または安定的な発現、またはその両方のうちのいずれかを目的として設計されてよい。また、組換え発現ベクターは、恒常的発現または誘導性発現を目的として作製されてよい。
【0221】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製されてよい。本明細書中において使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、自殺遺伝子を発現している細胞の死を引き起こす遺伝子を指す。自殺遺伝子は、当該遺伝子が発現している細胞に、たとえば薬物などの剤に対する感受性を与えて、当該細胞がこの剤に接触または曝露されると当該細胞の死を引き起こす遺伝子であってよい。自殺遺伝子は当技術分野において周知されており(たとえば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照)、かつ、たとえば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、およびニトロレダクターゼを含む。
【0222】
一実施形態は、本明細書中に記載される組換え発現ベクターのうち任意のものを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書中において使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明に係る組換え発現ベクターを含有し得る任意の型の細胞を指す。宿主細胞は、たとえば植物、動物、真菌、もしくは藻類などの、真核細胞であってもよいし、または、たとえば細菌もしくは原生動物などの、原核細胞であってもよい。宿主細胞は、培養細胞、または、初代細胞(すなわち、たとえばヒトなどの、生物から直接単離されたもの)であってよい。宿主細胞は、接着細胞、または、懸濁細胞(すなわち、懸濁液中で増殖する細胞)であってよい。好適な宿主細胞は当技術分野において周知されており、たとえば、DH5a大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、およびHEK293細胞などを含む。組換え発現ベクターの増幅または複製が目的である場合には、宿主細胞は、原核細胞、たとえばDH5a細胞であってよい。組換えCARの作製が目的である場合には、宿主細胞は哺乳動物細胞であってよい。宿主細胞はヒト細胞であってよい。宿主細胞は任意の細胞型であってよく、任意の種類の組織に由来してよく、任意の発生段階であってよいが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)であってよい。宿主細胞はT細胞であってよい。
【0223】
本明細書中に記載される目的において、T細胞は任意のT細胞であってよく、培養T細胞(たとえば初代T細胞など)、または培養T細胞株(たとえば、Jurkat、SupTlなど)からのT細胞、または哺乳動物から得られるT細胞であってよい。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、または他の組織もしくは体液を含むがこれらに限定されない、非常に多様な供給源から得られてよい。T細胞は、強化または精製されていてもよい。T細胞はヒトT細胞であってよい。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であってよい。T細胞は、任意の型のT細胞であってよく、任意の発生段階であってよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、たとえばTh1およびTh2細胞、CD8+ T細胞(たとえば、細胞毒性T細胞)、腫瘍浸潤性細胞、メモリーT細胞、メモリー幹細胞、すなわちTscm、およびナイーブ型T細胞などを含むがこれらに限定されない。T細胞は、CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞であってよい。
【0224】
一実施形態において、本明細書中に記載されるCARは、T細胞ではない好適な細胞において使用できる。このような細胞は、たとえば、NK細胞および多能性幹細胞から発生させたT様細胞などの、免疫エフェクター機能を有するものである。
【0225】
また、一実施形態は、本明細書中に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞の集団も提供する。この細胞の集団は、記載される組換え発現ベクターのうち任意のものを含む宿主細胞に加えて、少なくとも1種の他の細胞、たとえば、組換え発現ベクターのうち任意のものを含まない宿主細胞(たとえば、T細胞)、またはT細胞以外の細胞、たとえば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞などを含む、不均質な集団であってよい。代替的には、細胞の集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(たとえば、本質的にこれからなる)、実質的に均質な集団であってよい。また、集団は、当該集団の全細胞が組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、したがって当該集団の全細胞がこの組換え発現ベクターを含むような、クローン細胞集団であってもよい。本発明の一実施形態において、細胞の集団は、本明細書中に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0226】
CAR(その機能的部分およびバリアントを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、および抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離および/または精製されてよい。たとえば、精製された(または単離された)宿主細胞の調製物中では、宿主細胞の純度が、体内の自然環境中における純度よりも高い。このような宿主細胞は、たとえば標準的な精製技術によって作製されてよい。いくつかの実施形態において、宿主細胞の調製物は、この調製物の総細胞含有量の少なくとも約50%、たとえば少なくとも約70%を宿主細胞が占めるように精製される。たとえば、この純度は、少なくとも約50%であってよい、または約60%、約70%、もしくは約80%を超えてよい、または約100%であってよい。
【0227】
E.処置方法
本明細書中に開示されるCARを哺乳動物における疾患の処置または予防方法において使用してよいことが意図される。この点において、一実施形態は、哺乳動物におけるがんの処置または予防方法を提供し、これは、哺乳動物に、CAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、抗体および/またはその抗原結合部分、および/または医薬組成物を、哺乳動物におけるがんの処置または予防に有効な量にて投与する工程を含む。
【0228】
一実施形態は、さらに、本明細書中に開示されるCARを投与するより前に、哺乳動物をリンパ球枯渇させる工程を含む。リンパ球枯渇の例は、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法、骨髄破壊的リンパ球枯渇化学療法、全身照射などを含むが、これらに限定されなくてよい。
【0229】
宿主細胞または細胞の集団が投与される本方法の目的において、この細胞は、当該哺乳動物の同種異系由来の細胞、またはこれの自己由来細胞であってよい。好ましくは、この細胞は、当該哺乳動物の自己由来細胞であってよい。本明細書中において使用される場合、同種異系由来とは、任意の材料であって、当該材料を導入した個体と同種であるが別個体である動物に由来することを意味する。2つ以上の個体について、1つ以上の座における遺伝子が同一でない場合に、これらの個体は互いに同種異系由来であるといわれる。いくつかの態様において、同種の個体からの同種異系由来の材料は、抗原性的に相互に作用できるほど十分に遺伝学的に異なっていてよい。本明細書中において使用される場合、「自己由来」は、任意の材料であって、この材料を後に再び導入することになる個体と同じ個体に由来する材料を意味する。
【0230】
本明細書中において言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であってよい。本明細書中において使用される場合、用語「哺乳動物」は、マウスおよびハムスターなどの齧歯目哺乳動物およびウサギなどのウサギ目(Logomorpha)哺乳動物を含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ科(ネコ)およびイヌ科(イヌ)を含む食肉目のものであってよい。哺乳動物は、ウシ亜科(ウシ)およびブタ類(ブタ)を含む偶蹄目、またはウマ科(ウマ)を含む奇蹄目(Perssodactyla)のものであってよい。哺乳動物は、霊長目、セボイド類(Ceboids)、もしくはシモイド類(Simoids)(サル(monkeys))、または類人猿類(ヒトおよびサル(apes))であってよい。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0231】
上述される方法に関して、がんは、急性ンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣型横紋筋肉腫、膀胱がん(たとえば、膀胱癌)、骨がん、脳がん(たとえば、髄芽細胞腫)、乳がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頚部、胆嚢、または胸膜のがん、鼻、鼻腔、または中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頚がん、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、頭頸部がん(たとえば、頭頸部扁平上皮癌)、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液性腫瘍、肝臓がん、肺がん(たとえば、非小細胞肺癌および肺腺癌)、リンパ腫、中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、B-慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)およびBurkittリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、網、および腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、固形腫瘍、滑膜肉腫、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、ならびに尿管がんのうち任意のものを含む、任意のがんであってよい。
【0232】
用語「処置」および「予防」ならびにこれらの派生語は、本明細書中において使用される場合、必ずしも100%のまたは完全な処置または予防を示唆するものではない。そうではなく、むしろ、当技術分野において通常の知識を有する者が利益または治療効果の可能性を認識する処置または予防には、多様な程度のものがある。この点に関し、本方法は、哺乳動物における任意の量または任意のレベルのがん処置または予防を提供できる。
【0233】
さらに、本方法によって提供される処置または予防は、処置または予防されている疾患(たとえば、がん)の1つ以上の状態または症状の処置または予防を含んでよい。また、本明細書中に記載される目的において、「予防」は、疾患またはその症状もしくは状態の発症の遅延を包含してもよい。
【0234】
別の一実施形態は、哺乳動物におけるがんの存在の検出方法を提供し、これは、(a)哺乳動物からの1つ以上の細胞を含む試料をCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、抗体、および/またはその抗原結合部分、または医薬組成物に接触させることによって、複合体を形成する工程と、(b)この複合体を検出する工程とを含み、複合体が検出された場合、哺乳動物においてがんが存在することが示唆される。
【0235】
この試料は、たとえば生検または剖検などの、任意の好適な方法によって得られてよい。生検は、個体から組織および/または細胞を除去することである。こうした除去は、除去された組織および/または細胞を実験法に供するために、個体から組織および/または細胞を採取するものであってよい。この実験法は、この個体が特定の状態もしくは疾患状態を有するか否かおよび/またはこれに罹患しているか否かを判断するための実験を含んでよい。この状態または疾患は、たとえば、がんであってよい。
【0236】
哺乳動物における増殖性障害、たとえばがん、の存在の検出方法の一実施形態に関して、哺乳動物の細胞を含む試料は、全細胞、その溶解物、または全細胞溶解物画分、たとえば、核もしくは細胞質画分、総タンパク質画分、または核酸画分、を含む試料であってよい。試料が全細胞を含む場合、この細胞は、哺乳動物の任意の細胞、たとえば、任意の臓器または組織の細胞(血液細胞または内皮細胞を含む)であってよい。
【0237】
上述される接触は、哺乳動物について、in vitroまたはin vivoにおいて生じてよい。好ましくは、当該接触はin vitroにおいて生じる。
【0238】
また、複合体の検出は、当技術分野において周知される複数の方法のうち任意のものによって行なってよい。たとえば、本明細書中に開示されるCAR、本明細書中に記載されるポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、または抗体、またはその抗原結合部分は、たとえば、上記に開示されるとおり、放射性同位体、フルオロフォア(たとえば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(たとえば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、および元素粒子(たとえば、金粒子)などの、検出可能な標識で標識されてよい。
【0239】
CARの標的細胞認識能力および抗原特異性を試験する方法は、当技術分野において周知されている。たとえば、Clayら,J.Immunol,163:507-513(1999)は、サイトカイン(たとえば、インターフェロン-γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF-a)、またはインターロイキン2(IL-2))の放出の測定方法を教示する。それに加えて、CARの機能を、Zhaoら,J.Immunol,174:4415-4423(2005)中に記載されるとおり、細胞の細胞毒性の測定によって評価してよい。
【0240】
別の一実施形態は、哺乳動物における増殖性障害、たとえばがん、を処置または予防するための、本発明に係るCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、抗体、またはその抗原結合部分、および/または医薬組成物の使用を提供する。このがんは、本明細書中に記載されるがんのうち任意のものであってよい。
【0241】
局所および全身投与を含む任意の投与方法を、開示される治療剤に対して使用してよい。たとえば、外用的、経口、静脈内などの血管内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、くも膜下腔内、および皮下への投与を使用してよい。具体的な投与様式および投薬レジメンは、担当臨床医によって、当該症例の詳細(たとえば、対象、疾患、関連する疾患状態、および処置が予防的であるか否か)を考慮の上で選択されてよい。1種を超える剤または組成物が投与される場合、1種以上の投与経路が使用されてよく、たとえば、化学療法剤は経口的に投与されてよいし、抗体または抗原結合断片または結合体または組成物は静脈内に投与されてよい。投与方法は注射を含み、この注射において、CAR、CAR T細胞、結合体、抗体、抗原結合断片、または組成物は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、不揮発性油、オレイン酸エチル、またはリポソームなどの、非毒性でありかつ製薬学的に許容される担体中に提供される。いくつかの実施形態において、開示される化合物の局所投与は、たとえば、抗体または抗原結合断片を、腫瘍除去後の組織領域、または腫瘍発生傾向が疑われる領域に適用することによって使用されてよい。いくつかの実施形態において、治療的有効量の抗体または抗原結合断片を含む医薬調製物の持続的な腫瘍内(または腫瘍近傍)への放出が有益である可能性がある。他の例において、結合体は、点眼剤として、外用的に角膜に、または眼の硝子体内に適用される。
【0242】
開示される治療剤は、正確な投薬量を1回1回投与するのに好適な単位投薬形態で製剤化されてよい。それに加えて、開示される治療剤は、単回投与または複数回投与のスケジュールで投与されてよい。複数回投与のスケジュールは、最初の一連の処置では1回を超える投与(たとえば1~10回の投与)が1回1回別個に行なわれてよく、続いてその後、必要に応じて、組成物の作用を維持または増大させるために、残りの投与が時間間隔をあけて行なわれてよいというものである。処置は、化合物を1日1回または1日複数回(multi-daily doses)、2~3日間から数か月間、またはさらには数年間の期間にわたって投与することを伴ってよい。したがって、投薬レジメンは、処置する対象の具体的な要求事項にも少なくとも一部基づいて決定されてよく、投与担当医の判断に依存してよい。
【0243】
抗体または結合体の典型的な投薬量は、約0.01~約30mg/kg、たとえば約0.1~約10mg/kgの範囲であってよい。
【0244】
具体的な例において、対象は、結合体、抗体、組成物、CAR、CAR T細胞、またはさらなる剤のうち1種以上を含む治療用組成物を、少なくとも連続2日間および連続10日間などの複数日投与スケジュール(multiple daily dosing schedule)にて、たとえば数週間、数か月間、または数年間の期間にわたって投与される。一例において、対象は、結合体、抗体、組成物、またはさらなる剤を、少なくとも30日間の期間にわたって、たとえば少なくとも2か月間、少なくとも4か月間、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも24か月間、または少なくとも36か月間の期間にわたって投与される。
【0245】
いくつかの実施形態において、開示される方法は、開示される抗体、抗原結合断片、結合体、CAR、またはCARを発現するT細胞と組み合わせて(たとえば、逐次的に、実質的に同時に、または同時に)、手術、放射線療法、および/または化学療法を、対象に提供することを含む。このような剤および処置についての方法および治療的投薬量は当業者に周知されており、熟練した臨床医によって判断されてよい。さらなる剤についての調製物および投与スケジュールは、製造元の説明書にしたがって、または熟練した医師の経験に基づく判断にしたがって使用されてよい。また、このような化学療法の調製物および投与スケジュールは、Chemotherapy Service,(1992)Ed.,M.C.Perry,Williams&Wilkins,Baltimore,Md中に記載される。
【0246】
いくつかの実施形態において、併用療法は、さらなるがん阻害剤の治療的有効量を対象に投与することを含んでよい。併用療法と共に使用できるさらなる治療剤の例は、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたはクロスリンカー、DNA合成阻害剤、DNAおよびRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、遺伝子制御剤、ならびに血管新生阻害剤を含むが、これらに限定されない。これらの剤(治療的有効量にて投与される)および処置は、単独で、または組み合わせで使用されてよい。たとえば、任意の好適な抗がんまたは抗血管新生剤が、本明細書中に開示されるCAR、CAR-T細胞、抗体、抗原結合断片、または結合体との組み合わせで投与されてよい。このような剤についての方法および治療的投薬量は当業者に周知されており、熟練した臨床医によって決定され得る。
【0247】
さらなる化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード(たとえば、クロラムブチル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、およびメルファラン)、ニトロソウレア(たとえば、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、およびストレプトゾシン)、白金化合物(たとえば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、およびBBR3464)、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、およびウラムスチンなどのアルキル化剤;葉酸(たとえば、メトトレキサート、ペメトレキセド、およびラルチトレキセド)、プリン(たとえば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、およびチオグアニン)、ピリミジン(たとえば、カペシタビン)、シタラビン、フルオロウラシル、およびゲムシタビンなどの代謝拮抗剤;ポドフィルム(たとえば、エトポシドおよびテニポシド)、タキサン(たとえば、ドセタキセルおよびパクリタキセル)、ビンカ(たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)などの植物アルカロイド;アントラサイクリンファミリーのメンバー(たとえば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびバルルビシン)、ブレオマイシン、リファンピシン、ヒドロキシ尿素、およびマイトマイシンなどの細胞毒性/抗腫瘍性抗生物質;トポテカンおよびイリノテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、およびトラスツズマブなどのモノクローナル抗体;アミノレブリン酸、アミノレブリン酸メチル、ポルフィマーナトリウム、およびベルテポルフィンなどの光増感剤;ならびに、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、ベキサロテン、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキンジフチトクス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ラパチニブ、パゾパニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、タモキシフェン、ソラフェニブ、スニチニブ、ベムラフェニブ(vemurafinib)、バンデタニブ、およびトレチノインなどの他の剤を含むが、これらに限定されない。このような剤の選択および治療的投薬量は当業者に周知されており、熟練した臨床医によって決定され得る。
【0248】
併用療法は、相乗作用を生じ得るものであり、かつ、相乗的であることが立証され得る、すなわち、複数の活性成分を一緒に使用した際に達成される作用が、同じ化合物を別個に使用した際に得られる作用を合わせたものより大きい。相乗効果は、複数の活性成分が、(1)一緒に製剤化されて、これらを合わせた単位投薬用調製物として同時に投与もしくは送達された場合、(2)別個の調製物として、交互にもしくは平行して送達された場合、または(3)何らかの他のレジメンが使用された場合に生じ得る。交互に送達された場合には、たとえば別個のシリンジで別々に注射されることによって、当該化合物が逐次的に投与または送達された際に、相乗効果が生じ得る。一般的に、交互の場合には、各活性成分の有効投薬量が逐次的に、すなわち連続的に投与され、一方、併用療法では、2種以上の活性成分の有効投薬量が一緒に投与される。
【0249】
一実施形態において、本明細書中に開示される抗原の1つ以上に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片またはその結合体の有効量が、腫瘍を有する対象に、抗がん処置後に投与される。十分な時間が経過して、投与された抗体または抗原結合断片または結合体が、それぞれのがん細胞上に発現した抗原と免疫複合体を形成した後、この免疫複合体が検出される。免疫複合体が存在すること(または存在しないこと)が、上記処置の有効性を示す。たとえば、上記処置よりも前に得たコントロールと比較して免疫複合体が増加していれば、上記処置が有効でないことが示され、上記処置よりも前に得たコントロールと比較して免疫複合体が減少していれば、上記処置が有効であることが示される。
【0250】
F.バイオ医薬組成物
本明細書中に開示される1つ以上の抗原に特異的に結合する、開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、抗原結合断片、結合体、CAR、またはCARを発現するT細胞のうち1種以上を、担体(製薬学的に許容される担体など)中に含む、バイオ医薬組成物または生物組成物(以下、「組成物」)が、本明細書中において、遺伝子療法、免疫療法、および/または細胞療法における使用を目的として提供される。この組成物は、対象への投与のために単位投薬形態にて調製されてよい。投与の量およびタイミングは、所望される転帰を達成するために、処置担当臨床医によって判断される。この組成物は、全身(静脈内など)または局所(腫瘍内など)への投与を目的として配合されてよい。一例において、開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、抗原結合断片、結合体は、静脈内投与などの非経口投与を目的として配合される。本明細書中に開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、結合体、抗体、または抗原結合断片を含む組成物は、たとえば、腫瘍(たとえば、神経芽細胞腫であるが、これに限定されない)の処置および検出に有用である。いくつかの例において、この組成物は、癌の処置または検出に有用である。本明細書中に開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、結合体、抗体、または抗原結合断片を含む組成物は、たとえば病理学的血管新生の検出にも有用である。
【0251】
この投与用組成物は、CAR、またはCARを発現するT細胞、結合体、抗体、または抗原結合断片を、水性担体などの製薬学的に許容される担体中に溶解した、溶液を含んでよい。たとえば緩衝生理食塩水などの、多様な水性担体が使用されてよい。こうした溶液は、滅菌されており、一般的に、望ましくない物質を含まない。この組成物は、従来から周知される滅菌技術によって滅菌されていてよい。この組成物は、生理的条件に近づけるために、必要に応じて、たとえば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなどの、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤、および補助剤といった製薬学的に許容される補助的な物質を含有してよい。当該調製物中におけるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、または抗原結合断片、または結合体の濃度は、広範囲で変動してよく、主に流体の体積、粘度、および体重などに基づいて、選択された特定の投与様式および対象の要求事項に応じて選択されてよい。遺伝子療法、免疫療法、および/または細胞療法において使用するためのこのような投薬形態の実際の調製方法は、周知されている、または当業者には明らかであろう。
【0252】
静脈内投与用の典型的な組成物は、対象1人につき1日当たり約0.01~約30mg/kgの、抗体または抗原結合断片または結合体(または、対応する投与量のCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体もしくは抗原結合断片を含む結合体)を含む。投与用組成物の実際の調製方法は、当業者に周知または明白であってよく、Remington’s Pharmaceutical Science,第19版,Mack Publishing Company,Easton,PA(1995)などの出版物中に、より詳細に記載される。
【0253】
CAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、抗原結合断片、または結合体は、凍結乾燥形態で提供されてよく、滅菌水で戻して投与されてよいが、周知の濃度の滅菌溶液中に溶解した形態でも提供される。CAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、または抗原結合断片、または結合体の溶液は、次いで、0.9%塩化ナトリウム(USP)を入れた注入バッグに充填され、場合によっては、0.5~15mg/kg体重の投薬量で投与される。抗体または抗原結合断片および結合体の薬物の投与にあたっては、当技術分野において相当量の経験を見いだすことができ、たとえば、抗体薬が、1997年のリツキサン(登録商標)の承認以来、米国市場に出回っている。CAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、その抗原結合断片および結合体は、静脈内プッシュ(push)またはボーラスではなく、低速の注入によって投与されてよい。一例において、より高負荷の投与量が投与され、続いて、これより低い程度にて維持投与量が投与される。たとえば、抗体または抗原結合断片が初期負荷投与量4mg/kg(または、抗体もしくは抗原結合断片を含む結合体の、これに対応する投与量)が約90分間にわたって注入され、この初期投与量が良好に許容されれば、続いて、週1回の維持投与量2mg/kgが、一回につき30分間、4~8週間にわたって注入されてよい。
【0254】
制御放出非経口調製物は、移植片、油性注射、または粒子系として調製されてよい。タンパク質送達系の広範囲の全体像は、Banga,A.J.,Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems,Technomic Publishing Company,Inc.,Lancaster,PA,(1995)を参照。粒子系は、微小球体、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノ球体、およびナノ粒子を含む。マイクロカプセルは、細胞毒または薬物などの治療用タンパク質を中心核として含有する。微小球体中、粒子の全体に治療薬が分散している。約1μm未満の粒子、微小球体、およびマイクロカプセルは、一般的に、それぞれ、ナノ粒子、ナノ球体、およびナノカプセルと称される。毛細血管は直径約5μmであるため、ナノ粒子のみが静脈内に投与される。微粒子は、典型的には直径約100μmであり、皮下または筋肉内に投与される。たとえば、Kreuter,J.,Colloidal Drug Delivery Systems,J.Kreuter編,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,pp.219-342(1994);および、Tice&Tabibi,Treatise on Controlled Drug Delivery,A.Kydonieus編,Marcel Dekker,Inc.New York,NY,pp.315-339,(1992)を参照。
【0255】
ポリマーを、本明細書中に開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、または抗原結合断片、または結合体の組成物のイオン制御(ion-controlled)放出に使用してよい。制御薬物送達において使用するための多様な分解性および非分解性ポリマーマトリックスが当技術分野において周知されている(Langer,Accounts Chem.Res.26:537-542,1993)。たとえば、ブロックコポリマーであるポロキサマー(polaxamer)407は、低温では粘性を有する可動性の液体として存在するが、体温においては半固体のゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの調製物および持続送達にとって有効なビヒクルであることが示されている(Johnstonら,Pharm.Res.9:425-434,1992;および、Pecら,J.Parent.Sci.Tech.44(2):58-65,1990)。代替的には、ヒドロキシアパタイトが、タンパク質の制御放出用のマイクロ担体として使用されている(Ijntemaら,Int.J.Pharm.112:215-224,1994)。さらに別の一態様において、リポソームが、脂質カプセル化薬物の制御放出および薬物標的のために使用される(Betageriら,Liposome Drug Delivery Systems,Technomic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,PA(1993))。これら以外にも、治療用タンパク質の制御送達のための非常に多くの系が周知されている(米国特許第5,055,303号、米国特許第5,188,837号、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号、米国特許第4,957,735号、米国特許第5,019,369号、米国特許第5,055,303号、米国特許第5,514,670号、米国特許第5,413,797号、米国特許第5,268,164号、米国特許第5,004,697号、米国特許第4,902,505号、米国特許第5,506,206号、米国特許第5,271,961号、米国特許第5,254,342号、および米国特許第5,534,496号)。
【0256】
G.キット
一態様において、本明細書中に開示されるCARを使用するキットがさらに提供される。たとえば、対象における腫瘍を処置するための、または本明細書中に開示されるCARの1種以上を発現するCAR T細胞を作製するためのキットである。こうしたキットは、典型的には、本明細書中に開示される抗体、抗原結合断片、結合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞を含んでよい。開示される抗体、抗原結合断片、結合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞のうち1種を超えるものが、キット中に含まれてよい。
【0257】
キットは、容器と、容器に付けられたまたは容器に付随するラベルまたは添付文書とを含んでよい。好適な容器は、たとえば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されていてよい。容器には、典型的には、開示される抗体、抗原結合断片、結合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞のうち1種以上を含む組成物が入っている。いくつかの実施形態において、容器は、滅菌アクセス口を有してよい(たとえば、容器は、皮下注射針で穿孔可能な栓を有する静脈内投与用液剤バッグまたはバイアルであってよい)。ラベルまたは添付文書は、組成物を特定の状態の処置に使用するということを示すものである。
【0258】
ラベルまたは添付文書は、典型的には、たとえば、腫瘍の処置もしくは予防方法、またはCAR T細胞の作製方法における、開示される抗体、抗原結合断片、結合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞の使用についての説明をさらに含んでよい。添付文書は、典型的には、治療用製品の市販パッケージ中に慣習的に入っている説明書を含んでおり、この説明書は、当該治療用製品の使用に関連する適応、用法、投薬量、投与、禁忌、および/または警告についての情報を含む。説明書の内容は、電子形式(フロッピーディスクまたはコンパクトディスクなど)または視覚形式(ビデオファイルなど)で記述されていてよい。キットは、さらに、キット設計目的である特定の用途を推進するためのさらなる構成要素を含んでよい。したがって、たとえば、キットには、さらに、標識検出手段(たとえば、酵素標識のための酵素基質、蛍光標識検出のためのフィルターセット、または、二次抗体などの適切な二次標識など)が入っていてよい。キットには、さらに、特定の方法の実施において慣例的に使用されるバッファーおよび他の試薬が入っていてよい。このようなキットおよび適切な内容物は、当業者に周知されている。
【0259】
実施例
本発明が、以下の実施例によってさらに例証されるが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。逆に、様々な他の実施形態、改変、および等価物に頼らなければならず、こうした他の実施形態、改変、および等価物は、本発明の精神および/または付属の請求項の範囲から逸脱することなく、本明細書の記載を読んだ後、当業者の念頭に浮かび得るということが明瞭に理解される。
【実施例1】
【0260】
ファージディスプレイおよび酵母ディスプレイされた完全ヒトScFvライブラリからのROR1特異的バインダの単離
材料および方法:
a)ヒトROR1に対する完全ヒトScFc(分析のためのFcドメインを有するScFv)バインダの作製
健康なドナー50人の末梢血B細胞から構築されたナイーブヒトScFv(免疫グロブリンの組換え一本鎖可変断片)ファージディスプレイライブラリ(およその多様性として、ユニークな特異性が1010)(Z.Y.ZhuおよびD.S.Dimitrov、データは未発表)を使用して、組換えヒトROR1タンパク質のためのScFvを選択した。ファージディスプレイさせた1012個のScFvの増幅ライブラリを、5μg、3μg、および1μgにて被覆したROR1と共に、体積5×100μl(96ウェルプレートの5つのウェル中に等しく分配)にて、1回目、2回目、および3回目のバイオパニングの間、各回につき2時間ずつ、室温でインキュベートした。各回のインキュベーションの後、1回目の後には5回、以降の回の後には10回、0.05% Tween20(PBST)含有リン酸緩衝生理食塩水でウェルを洗浄して、非特異的に結合したファージを除去し、結合したファージは37℃において1時間かけてTG1コンピテントセルと混合し、感染した細胞から当該ファージを増幅して次の回のバイオパニングにおいて使用した。3回目のバイオパニングの実施後、感染したTG1細胞から380個のクローンを無作為に選び、その1つ1つを、96ウェルプレート中の100μg/ml カルベニシリンおよび0.2%グルコースを含有する2YT培地150μl中に接種した。この細菌培養物の600nmでの光学濃度(OD600)が0.5に達した後、感染多重度(MOI)が10のヘルパーファージM13K07および50μg/ml(最終濃度)のカナマイシンを培地に添加し、プレートを30℃においてさらに一晩、250rpmの振とう器中にてインキュベートした。ファージ上清を3%脱脂乳(PBS中)と体積比4:1にて混合して、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)に使用し、ROR1結合親和性の高いScFvを提示するファージのクローンを特定した。96ウェルプレートの各ウェルに50ngずつ被覆した組換えヒトROR1と共に、上清を室温で2時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄した(4℃において一晩インキュベートした後、3%脱脂乳(PBS中)でブロッキングし、0.05% Tween20を含有するPBSで3回洗浄した)。ROR1結合ファージを、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗M13抗体を使用して検出した。この標的抗体と共にインキュベートした後、ウェルを洗浄することによって、非特異的に結合した抗体を除去し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、溶液の吸光度を450nmにおいて測定した(A450)。A450が1.0を超えたROR1結合クローンを選択して、さらなる特徴づけに供した。
【0261】
b)選択した可溶性ScFvの発現および精製
選択したクローンのVHおよびVLのDNA配列を決定し、クローンによってコードされる、固有の配列を有するScFvを、以下に記載される通りに発現させ、精製した。当該クローンから抽出したプラスミドを使用して、HB2151細胞を形質転換した。新たに形質転換させた細胞の入ったプレートから単一コロニーを選び、これを、100μg/mlのアンピシリンおよび0.2%グルコースを含有する2YT培地200ml中に接種して、250rpmにて振とうしながら37℃においてインキュベートした。この培養物の600nmにおけるODが0.90に達したときに、イソプロピル-β-d-チオガラクトピラノシドを最終濃度0.5mMとなるように添加して、培養物を30℃においてさらに一晩インキュベートした。8,000×gにおいて20分間遠心分離して細菌ペレットを採取し、これを、0.5mU ポリミキシンB(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を含有するPBSバッファー中に再懸濁した。50rpmにて回転させながら室温において30分間インキュベートした後、再懸濁したペレットを25,000×gで4℃において25分間遠心分離し、上清を使用して、Ni-NTA樹脂を用いて、業者のプロトコール(Qiagen)のとおりに、ScFvを精製した。
【0262】
c)ELISA結合アッセイ
PBS中に2μg/mlにて希釈した組換えヒトROR1 50μlを、4℃において一晩かけて96ウェルプレートに被覆した。HisタグおよびFlagタグを有する精製ScFvを段階希釈して、標的タンパク質で被覆したウェル中に添加した。洗浄後、1:3000にて希釈したHRP標識抗Flag抗体を、1時間かけて室温において添加した。洗浄後、3,3,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、室温において10分間インキュベートした後、1N HSOを添加して反応を停止させ、450nmでのO.D.を読み取って、ScFvの相対的なROR1結合能力を定量した。
【0263】
結果:
組換えヒトROR1に対して特異的な2つのScFvクローンを特定して、ヒト抗ROR1 ScFvバインダ ScFv4およびScFv9として分類した。結合結果が極めて少ないということは、当該2つのバインダが、CARおよび免疫グロブリン治療用コンストラクトに組み入れることのできる、完全にユニークでありかつ重要な、新しいROR1結合部位であることを示す。LTG1941、LTG1942、LTG2528、およびLTG2529 ヒト抗ROR1バインダを発現するキメラ抗原受容体の作製が、下記の実施例2中に概説される。
【実施例2】
【0264】
抗ROR1完全ヒト結合配列を発現するCAR。
ホモ・サピエンスROR1(受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1)は、よく研究されているがん胚細胞表面糖タンパク質であり、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および、肉腫の一部、癌、または肺の腺癌などの様々な固形腫瘍において発現している。再発または抵抗性の慢性リンパ球性白血病に対する抗ROR1抗体UC-961(シルムツズマブ(Cirtuzumab))の第1相研究が、現在進行中である(資金援助、Thomas Kipps、NCT02222688)。この第1級の研究の結果が待たれる。ROR1に特異的なCAR-Tを用いた第1相臨床試験も初期段階である(資金援助、フレッドハッチンソン癌研究所、NCT02706392)。本出願人らは、我々の研究を一定基準に基づいて評価するため、かつ我々のコンストラクトの活性を実証するために、発表されたROR1バインダを我々のコントロール(LTG1943、LTG2527)として含めた(Hudecekら,2013,Clin Cancer Res 19:3153-3164を参照)。最近では抗CD19 CARが市販されていることを含めて、T細胞に基づく療法の現時点での進歩を考慮すると、ROR1を発現するCLLおよび他の悪性腫瘍に対しての、本明細書中に提示されるCARコンストラクトを特徴とする、細胞に基づく免疫療法の開発は、ヒト配列に由来する結合部位を使用してヒトの疾患を処置するための革新的で新規のアプローチである。
【0265】
本明細書中に記載される新規の抗ROR1 CAR-Tコンストラクトは、初代ヒトT細胞における細胞表面発現と、ROR1陽性腫瘍細胞に対する特異性および潜在細胞毒性およびサイトカイン機能とが、高レベルである。実施例1でのように、ファージディスプレイによって特定したScFv候補に由来するROR1結合配列を使用して、ROR1 CARを設計し、特徴づけのために、選択された構造ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含有するレンチウイルス発現ベクター中に、EF1aプロモーターの制御下においてクローニングし、in vitroで、形質導入効率、死滅機能、およびサイトカイン産生について、モデル細胞株および初代ヒトT細胞の両方において試験した。表1は、使用される学術用語の概要を示す。CARコンストラクトLTG1943は妥当な比較である、というのは、この配列が臨床使用において提案されているためである(KTE-C19、Kite Pharma、およびCTL019、Novartisを参照)。
【0266】
【表1】
【0267】
材料および方法
(a)細胞株
すべての細胞株および試薬は、特記しない限り、American Tissue Culture Collection(ATCC、Manassass、VA)から購入したものである。急性リンパ球性白血病細胞株REHおよびマントル細胞リンパ腫株Jeko-1(ACC-553 DSMZ、Leibniz Institute DSMZ、Braunschwieg、ドイツ)、ならびに慢性骨髄性白血病株K562は、10%熱失活ウシ胎児血清(FBS、Hyclone、Logan、UT)および2mM L-Glutamax(Thermo Fisher Scientific、Grand Island、NY)を添加したRPMI-1640培地中で培養した。
【0268】
(b)キメラ抗原受容体(CAR)発現ベクターの作製
ROR1 CARコンストラクトを、フレーム中の各scFvをCD8のヒンジドメインおよび膜貫通ドメイン(aa 141182~191、UniProt番号P01732)のいずれか、またはIgG4ヒンジドメイン(aa 99~110、UniProt配列番号P01861)と結合させ、続いて、CD8膜貫通ドメイン(aa 183~203、UniProt配列番号P01732)、4-1BB(CD137、aa 214~255、UniProt配列番号Q07011)トランス活性化ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメイン(CD247、aa 52~163、参照配列番号:NP_000725.1.)と結合させることによって、作製した。T細胞膜へのCARの輸送を促進するために、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体アルファサブユニットからのリーダー配列を、すべてのコンストラクトに含めた。CARコンストラクトの配列は、コドン最適化して、第3世代レンチウイルスプラスミドバックボーン中にクローニングした(Lentigen Technology社、Gaithersburg、MD)。
【0269】
初代T細胞の精製および形質導入
CD4およびCD8細胞の免疫磁気ビーズ選択を製造元のプロトコールのとおりに使用して(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)、健康な志願者からのヒト初代T細胞を全血またはバフィーコート(民間供給元から購入、ドナーの同意を書面で得てある)から精製した。200IU/mlのIL-2を添加したTexMACS培地中において、T細胞を密度0.3~2×10個/mlにて培養し、CD3/CD28 MACS(登録商標)GMP T細胞TransAct試薬(Miltenyi Biotec)を用いて活性化して、2日目に、CARコンストラクトをコードするレンチウイルスベクターを用いて、10μg/mlプロタミン硫酸塩(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)の存在下において一晩かけて形質導入し、3日目に培地を交換した。200IU/mlのIL-2を添加したTexMACS培地中において培養物を繁殖させてから、8~12日目に回収した。
【0270】
(d)免疫性エフェクターアッセイ(CTLおよびサイトカイン)
細胞介在性の細胞毒性を調べるために(CTLアッセイ)、ホタルルシフェラーゼを安定的に形質導入した標的細胞5,000個を、多様なエフェクター標的比(E:T)にてCAR T細胞と組み合わせて、一晩インキュベートした。SteadyGlo試薬(Promega、Madison WI)を各ウェルに添加し、得られた発光を、EnSpireプレートリーダー(Perkin Elmer、Shelton、Connecticut)で分析し、1秒あたりのカウントとして記録した(試料CPS)。標的のみのウェル(最大CPS)と、標的のみのウェルに1% Tween-20を添加したもの(最小CPS)とを使用して、アッセイ範囲を決定した。特異的溶解の割合を、(1-(試料CPS-最小CPS)/(最大CPS-最小CPS))として計算した。E:T比10にてエフェクターおよび腫瘍細胞株を同時インキュベーションした後で回収した上清に対して、サイトカイン放出アッセイを行なった。サイトカインIFNg、続いてIL-2を、ELISAによって3通りで測定した(Thermo Fischer、Waltham、MA)。
【0271】
フローサイトメトリー分析
細胞の染色にあたり、CAR Tを形質導入した細胞50万個を培養物から回収して、0.5%ウシ血清アルブミン(Miltenyi Biotec)を添加した冷AutoMACSバッファー中において2回洗浄し、ROR1-Fcペプチド(R&D、Minneapolis、MN)、続いて抗Fc-AF647結合体で染色することによって、CAR表面発現を検出した(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして使用した。すべての研究において、7AAD染色によって死細胞を除外した(BD Biosciences、San Jose、CA)。細胞を2回洗浄し、200μlの染色バッファー中に再懸濁した後、フローサイトメトリーによって定量分析した。MACSQuant(登録商標)10 Analyzer(Miltenyi Biotec)を使用してフローサイトメトリー分析を行ない、FlowJoソフトウェア(Ashland、OR)を使用してデータプロットを生成した。
【0272】
結果:
GMCSFRに由来するリーダーペプチド、抗ヒトROR1 ScFv、CD8またはIgG4ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激(costimulatiory)ドメイン、およびCD3z活性化ドメインの配列をフレーム中で組み合わせることによって、ROR1腫瘍抗原を標的とする完全ヒトCAR Tコンストラクトを設計した。このCAR Tコンストラクトの概略図、ならびに設計したコンストラクトおよび各ScFv標的ドメインのリストが提供される(図1および表1)。同一条件下において増殖させた非形質導入T細胞(UTD)を、コントロールとして含めた。
【0273】
すべての試験CARコンストラクトおよびコントロールCARコンストラクトを、ヒトEf1-アルファプロモーターの制御下においてLVバックボーン発現ベクター中にクローニングし、これを使用して、標準的な4プラスミド系を用いての293細胞中へのトランスフェクションによって、レンチウイルスベクター粒子を作製した。活性化させたヒト初代T細胞を、CAR試験コンストラクトまたはコントロールをコードするLV上清で形質導入し、培養8~10日目まで増殖させた。フローサイトメトリー分析において、組換えのROR1-Fc融合タンパク質、続いて抗Fc APCを使用して、すべての試験CARコンストラクトが、形質導入したヒトT細胞における表面発現を示した(図3)。
【0274】
【表2】
【0275】
抗ROR1キメラ抗原受容体を形質導入したT細胞は、サイトカイン発現および細胞溶解活性を示す。
【0276】
CAR Tの細胞毒性機能を評価するために、培養8~10日目に、CAR T細胞を、ROR1マントル細胞リンパ腫Jeko-1、ROR1類表皮癌A431、またはROR1 Reh白血病細胞と、E:T比40:1、20:1、または10:1にて組み合わせた(図3)。抗ROR1 scFv R12(参照 9)に基づくポジティブコントロールCARコンストラクトLTG1943、および、GFP(1398)をコードするレンチウイルスベクターが形質導入されたネガティブコントロールT細胞または非形質導入T細胞(UTD)を、比較のために含めた。示されたすべてのコンストラクト(LTG1941~1943)が、用量依存性のROR1特異的腫瘍死滅を示した。ROR1腫瘍株に対する最大の細胞毒性(Jeko-1 ROR1細胞においてE:T比40:1にて80%)は、CARコンストラクトLTG1942によって示され、その腫瘍死滅程度は、R12 抗ROR1 scFv(参照 9)に基づく、コントロールCARコンストラクトLTG1943と同等であった。CARコンストラクトLTG1941も、ROR1腫瘍株に対して、比較的小さくはあるが細胞毒性を示し、Jeko-1細胞に対して、E:T比40:1における特異的溶解が最大の40%であった。CAR T介在性溶解に対する感受性が比較的低いA431株において、CAR LTG1941は有効ではなかったが、CAR LTG1942はポジティブコントロールCAR LTG1943と同等またはこれよりも有効であった。
【0277】
次いで、ROR1陽性およびROR1陰性腫瘍細胞株によって誘発した際に、ROR1 CARコンストラクトが形質導入されたCAR T細胞により分泌された炎症性サイトカインIFN-ガンマ、TNF-アルファ、およびIL-2の濃度を測定した(図4)。サイトカイン産生の基礎レベルを調べる目的で、各コンストラクトにCAR T細胞単独を含めた。GFP(LTG1398)が形質導入されたT細胞をネガティブコントロールとして含めた。ROR1 Jeko-1、またはA431株によって誘発した際に、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、およびIL-2のレベルがCAR T細胞コンストラクトLTG1942およびポジティブコントロールLTG1493によって強く誘発され、これよりも低い程度でCAR LTG1491によっても誘発されたが、ROR1 Rehコントロール株の場合には誘発されなかった。ネガティブコントロールのGFPまたはUTD群ではサイトカインの誘発はみられなかった。とりわけ、LTG1941のサイトカイン産生レベルは非常に低く、このことは、このベクターを発現するT細胞を活性化する能力が異なっていることを示す。このことは、LTG1941とLTG1942との比較において、Jeko細胞株に対する細胞溶解レベルがより低いが、A431に対してはそうではないことに対応した。このことは、まず第1に、バインダを特定するだけでは、このバインダを配列中に含むCARの真の活性を調べるのに十分でないことを示す。重要なことに、こうした差異は非常に重要である可能性があり、所望の標的抗原密度に応じてCARの活性を調節できる可能性がある。腫瘍標的を溶解できる能力は、T細胞表面におけるCAR発現レベルと、標的腫瘍細胞表面上における腫瘍抗原の標的発現レベルとの両方に、複雑に関与している(Walker,A.ら,2017,Mol Ther 25:2189-2201)。したがって、たとえばLTG1492によって、正常T細胞上におけるROR1の発現がCAR-T活性を誘発するのであれば、正常組織上における低い発現レベルに対して、がんを識別して標的とするために、LTG1941のようなコンストラクトを使用できる可能性がある。さらに、いずれのコンストラクトも、腫瘍細胞標的の非存在下において、ベースラインを超えるサイトカイン産生を示さなかった。このことは、いくつかのCARコンストラクトについて以前に報告されたような自動活性化というものは存在しないということの重要な実証である(Long,A.H.ら,2015,Nature Med 20:581-590)。以上より、CAR TコンストラクトLTG1941、LTG1942、およびLTG1943は、モデル腫瘍細胞株において発現させたROR1腫瘍抗原に対して特異的であった。
【0278】
総合すると、CAR LTG1942およびLTG1941は、腫瘍溶解活性、および、ROR1腫瘍に応答したサイトカイン合成として現れる、機能的特異性を示した。したがって、本願中に記載されるコンストラクトは、臨床用途において有望な候補である。
【0279】
本文中に引用された各出願および特許、ならびに各出願および特許中に引用された各文献または先行技術文献(訴訟中の各発行済特許「出願引用文献」を含む)、ならびに当該出願および特許のいずれかに対応するおよび/またはその優先権を主張する各PCT出願または特許および外国出願または特許、ならびに各出願引用文献中に引用または参照された各文献を、引用により明白に本明細書に援用し、これらは本発明の実施において使用されてよい。より一般的には、文献または先行技術文献は本文中、請求項の前の先行技術文献一覧、または本文自体のいずれかにおいて引用され、当該文献または先行技術文献の各々(「本明細書中引用先行技術文献」)、および各本明細書中引用先行技術文献中に引用された各文献または先行技術文献(製造元の規格、説明書などを含む)を、引用により明白に本明細書に援用する。
【0280】
いくつかの具体的な実施形態についての上述される記載は、他者が最新の知識の適用により、一般的概念から逸脱することなく、多様な用途のために当該具体的な実施形態を容易に変更または適合させるのに十分な情報を提供するものであり、したがって、このような適合および変更は、当該開示される実施形態の等価物の意味および範囲内であると理解されるべきである。本明細書中において使用される語句または専門用語は説明目的であって限定目的でないことが理解される。図面および記載中、例示的な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されている可能性があるが、これらは、特記しない限り、一般的かつ説明目的のみで使用されており、限定を目的するものではないため、これによって請求項の範囲が限定されるものではない。また、当業者には、本明細書中に開示される方法の特定の工程を別の順序で実施してよいこと、または工程を組み合わせてよいことが理解される。したがって、本明細書中に開示される具体的な実施形態に付属の請求項が限定されないことが意図される。当業者には、本明細書中に記載される本発明に係る実施形態の多くの等価物が認識され得る、または常套的な実験法のみを使用して把握できる。かかる等価物は、下記請求項に包含される。
【0281】
本開示に係る配列
以下に列記される核酸およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822で規定されるように、ヌクレオチド塩基の標準的な文字省略およびアミノ酸の3文字コードを使用して示される。各核酸配列について一方の鎖のみが示されるが、示された鎖に言及する場合にはその相補鎖が含まれることが理解される。付属の配列表において:
配列番号1 抗ROR1バインダ:ScFV4 のヌクレオチド配列
CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCCGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGCACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATACCCGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACACCTGGGGGGTGATGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGTGGCGGTAGCGGTGGAGGCGGATCCCTGCCTGTGCTGACTCAGCCCCCCTCGGTGTCAGTGGCCCCAGGACAGACGGCCAGGATTACCTGTGGGGGGAACAACATTGGAAGTAAAAGTGTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCAGGCCAGGCCCCTGTGCTGGTCGTCTATGATGATAGCGACCGGCCCTCAGGGATCCCTGAGCGATTCTCTGGCTCCAACTCTGGGAACACAGCCACTCTGACCATCAGCGGGACCCAGGCTATGGATGAGGCTGACTACTTCTGTCAGTCTTATGATAGCAGCAATCCCGTGGTATTCGGCGGAGGGACCCAGCTCACCGTTTTA
配列番号2 抗ROR1バインダ:ScFV4 のアミノ酸配列
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTIPVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARHLGGDAFDIWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSLPVLTQPPSVSVAPGQTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYFCQSYDSSNPVVFGGGTQLTVL
配列番号3 ROR1-CAR DNA SEQ LTG1941(LP-ScFV4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAAGTTCAGCTGCAAGAATCAGGACCTGGGCTTGTCAAACCATCTGAAACCCTCAGCTTGACTTGTACCGTATCAGGAGGGTCAATTTCAAGCTCATCCTACTATTGGGGATGGATCAGACAACCACCCGGGAAAGGGCTCGAGTGGATAGGGTCCATATATTACAGCGGATCTACATACTACAACCCGTCATTGAAGTCCAGGGTAACGATTCCGGTGGACACTAGCAAGAATCAGTTTAGCCTCAAGTTGAGCAGTGTAACTGCTGCGGACACGGCGGTATATTATTGTGCTCGACACCTCGGTGGAGATGCTTTTGACATATGGGGTCAAGGGACAACAGTCACCGTTAGCTCAGGTGGAGGGGGTAGCGGGGGGGGCGGATCTGGGGGAGGCGGTTCATTGCCCGTACTTACACAGCCACCCTCTGTCAGCGTCGCACCTGGACAAACCGCTCGCATCACCTGTGGCGGAAATAATATAGGTTCCAAGTCTGTTCATTGGTATCAGCAGAAACCGGGACAGGCCCCCGTCCTTGTGGTGTATGATGATTCTGATAGGCCATCTGGTATCCCAGAACGGTTTTCAGGTAGCAATTCAGGGAATACTGCCACTCTCACTATTAGCGGTACTCAAGCTATGGATGAGGCCGACTATTTTTGCCAGAGCTACGACTCTAGTAACCCAGTCGTGTTCGGGGGAGGGACCCAGTTGACCGTGCTGGCGGCCGCAACTACCACCCCTGCCCCTCGGCCGCCGACTCCGGCCCCAACCATCGCAAGCCAACCCCTCTCCTTGCGCCCCGAAGCTTGCCGCCCGGCCGCGGGTGGAGCCGTGCATACCCGGGGGCTGGACTTTGCCTGCGATATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号4 ROR1-CAR AA SEQ LTG1941(LP-ScFV4-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTIPVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARHLGGDAFDIWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSLPVLTQPPSVSVAPGQTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYFCQSYDSSNPVVFGGGTQLTVLAAATTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号5 ROR1-CAR DNA SEQ LTG2528(LP-ScFV4-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAAGTTCAGCTGCAAGAATCAGGACCTGGGCTTGTCAAACCATCTGAAACCCTCAGCTTGACTTGTACCGTATCAGGAGGGTCAATTTCAAGCTCATCCTACTATTGGGGATGGATCAGACAACCACCCGGGAAAGGGCTCGAGTGGATAGGGTCCATATATTACAGCGGATCTACATACTACAACCCGTCATTGAAGTCCAGGGTAACGATTCCGGTGGACACTAGCAAGAATCAGTTTAGCCTCAAGTTGAGCAGTGTAACTGCTGCGGACACGGCGGTATATTATTGTGCTCGACACCTCGGTGGAGATGCTTTTGACATATGGGGTCAAGGGACAACAGTCACCGTTAGCTCAGGTGGAGGGGGTAGCGGGGGGGGCGGATCTGGGGGAGGCGGTTCATTGCCCGTACTTACACAGCCACCCTCTGTCAGCGTCGCACCTGGACAAACCGCTCGCATCACCTGTGGCGGAAATAATATAGGTTCCAAGTCTGTTCATTGGTATCAGCAGAAACCGGGACAGGCCCCCGTCCTTGTGGTGTATGATGATTCTGATAGGCCATCTGGTATCCCAGAACGGTTTTCAGGTAGCAATTCAGGGAATACTGCCACTCTCACTATTAGCGGTACTCAAGCTATGGATGAGGCCGACTATTTTTGCCAGAGCTACGACTCTAGTAACCCAGTCGTGTTCGGGGGAGGGACCCAGTTGACCGTGCTGGCGGCCGCAGAGTCAAAATACGGTCCTCCGTGCCCTCCGTGTCCGATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号6 ROR1-CAR AA SEQ LTG2528(LP-ScFV4-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTIPVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARHLGGDAFDIWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSLPVLTQPPSVSVAPGQTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYFCQSYDSSNPVVFGGGTQLTVLAAAESKYGPPCPPCPIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号7 抗ROR1バインダ:ScFV9 のヌクレオチド配列
CAGGCGGCCCAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATGGATCAACCCTAACAGTGGTGGCACAAACTATGCACAGAGGTTTCAGGGCAGGGTCACCATGACCAGGGACACGTCCATCAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGGCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGTTATAATGATGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGTGGCGGTAGCGGTGGTGGCGGATCCAATTTTATGCTGACTCAGCCCCACTCTGTGTCGGAGTCTCCGGGGAAGACGGTAACCATCTCCTGCACCCGCAGCAGTGGCAGCATTGCCAGCAACTATGTGCAGTGGTACCAGCAGCGCCCGGGCAGTGCCCCCACCATTGTGATCTATGAGGATGATCAAAGACCCTCTGGGGTCCCTGATCGGTTCTCTGGCTCCATCGACACCTCCTCCAACTCTGCCTCCCTCACCATCTCTGGACTGCAGAGTGAGGACGAGGCTGACTACTACTGTCAGTCTTATGAGCCCGGCAATGGGGTATTCGGCGGAGGGACCAAGGTCACCGTCCTA
配列番号8 抗ROR1バインダ:ScFV9 のアミノ酸配列
QAAQVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQRFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCASYNDAFDIWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSNFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSAPTIVIYEDDQRPSGVPDRFSGSIDTSSNSASLTISGLQSEDEADYYCQSYEPGNGVFGGGTKVTVL
配列番号9 ROR1-CAR DNA SEQ LTG1942(LP-ScFV9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAGGCGGCCCAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATGGATCAACCCTAACAGTGGTGGCACAAACTATGCACAGAGGTTTCAGGGCAGGGTCACCATGACCAGGGACACGTCCATCAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGGCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGTTATAATGATGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGTGGCGGTAGCGGTGGTGGCGGATCCAATTTTATGCTGACTCAGCCCCACTCTGTGTCGGAGTCTCCGGGGAAGACGGTAACCATCTCCTGCACCCGCAGCAGTGGCAGCATTGCCAGCAACTATGTGCAGTGGTACCAGCAGCGCCCGGGCAGTGCCCCCACCATTGTGATCTATGAGGATGATCAAAGACCCTCTGGGGTCCCTGATCGGTTCTCTGGCTCCATCGACACCTCCTCCAACTCTGCCTCCCTCACCATCTCTGGACTGCAGAGTGAGGACGAGGCTGACTACTACTGTCAGTCTTATGAGCCCGGCAATGGGGTATTCGGCGGAGGGACCAAGGTCACCGTCCTAGCGGCCGCAACTACCACCCCTGCCCCTCGGCCGCCGACTCCGGCCCCAACCATCGCAAGCCAACCCCTCTCCTTGCGCCCCGAAGCTTGCCGCCCGGCCGCGGGTGGAGCCGTGCATACCCGGGGGCTGGACTTTGCCTGCGATATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号10 ROR1-CAR AA SEQ LTG1942(LP-ScFV9-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQAAQVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQRFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCASYNDAFDIWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSNFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSAPTIVIYEDDQRPSGVPDRFSGSIDTSSNSASLTISGLQSEDEADYYCQSYEPGNGVFGGGTKVTVLAAATTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号11 ROR1-CAR DNA SEQ LTG2529(LP-ScFV9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAGGCGGCCCAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATGGATCAACCCTAACAGTGGTGGCACAAACTATGCACAGAGGTTTCAGGGCAGGGTCACCATGACCAGGGACACGTCCATCAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGGCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGTTATAATGATGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGTGGCGGTAGCGGTGGTGGCGGATCCAATTTTATGCTGACTCAGCCCCACTCTGTGTCGGAGTCTCCGGGGAAGACGGTAACCATCTCCTGCACCCGCAGCAGTGGCAGCATTGCCAGCAACTATGTGCAGTGGTACCAGCAGCGCCCGGGCAGTGCCCCCACCATTGTGATCTATGAGGATGATCAAAGACCCTCTGGGGTCCCTGATCGGTTCTCTGGCTCCATCGACACCTCCTCCAACTCTGCCTCCCTCACCATCTCTGGACTGCAGAGTGAGGACGAGGCTGACTACTACTGTCAGTCTTATGAGCCCGGCAATGGGGTATTCGGCGGAGGGACCAAGGTCACCGTCCTAGCGGCCGCAGAGTCAAAATACGGTCCTCCGTGCCCTCCGTGTCCGATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号12 ROR1-CAR AA SEQ LTG2529(LP-ScFV9-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQAAQVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQRFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCASYNDAFDIWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSNFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSAPTIVIYEDDQRPSGVPDRFSGSIDTSSNSASLTISGLQSEDEADYYCQSYEPGNGVFGGGTKVTVLAAAESKYGPPCPPCPIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号13 コントロール抗ROR1バインダのヌクレオチド配列:
CAAGAACAGCTTGTAGAGTCCGGCGGTAGATTGGTGACACCGGGGGGGAGCCTTACCCTGTCTTGTAAGGCATCTGGGTTCGATTTCAGTGCGTATTATATGAGCTGGGTTCGGCAGGCGCCCGGGAAGGGGCTGGAATGGATAGCCACTATATACCCGTCATCCGGCAAGACTTACTACGCGACTTGGGTAAACGGGAGGTTTACGATAAGCTCAGATAACGCCCAAAACACGGTTGATCTCCAAATGAATAGCTTGACCGCCGCTGATAGGGCGACCTATTTCTGTGCGCGGGACTCTTACGCTGATGACGGGGCCCTCTTCAATATATGGGGACCGGGAACGCTCGTAACCATATCATCTGGAGGAGGTGGGAGCGGAGGCGGAGGGTCAGGTGGGGGCGGGAGCGAACTCGTACTTACACAATCTCCAAGCGTAAGCGCAGCGTTGGGGAGTCCAGCAAAGATCACCTGCACTTTGTCAAGCGCCCACAAAACGGATACGATAGATTGGTATCAGCAACTCCAAGGTGAAGCGCCACGATATCTCATGCAGGTACAGAGCGACGGGAGTTATACTAAGAGGCCCGGGGTCCCAGACAGATTCAGTGGCAGCAGTTCAGGTGCCGACAGATACCTGATAATACCCTCAGTTCAAGCCGATGATGAAGCCGATTACTACTGTGGGGCTGACTACATAGGTGGGTATGTTTTCGGGGGCGGCACTCAATTGACAGTTACAGGG
配列番号14 コントロール抗ROR1バインダのアミノ酸配列:
QEQLVESGGRLVTPGGSLTLSCKASGFDFSAYYMSWVRQAPGKGLEWIATIYPSSGKTYYATWVNGRFTISSDNAQNTVDLQMNSLTAADRATYFCARDSYADDGALFNIWGPGTLVTISSGGGGSGGGGSGGGGSELVLTQSPSVSAALGSPAKITCTLSSAHKTDTIDWYQQLQGEAPRYLMQVQSDGSYTKRPGVPDRFSGSSSGADRYLIIPSVQADDEADYYCGADYIGGYVFGGGTQLTVTG
配列番号15 ROR1-CAR DNA SEQ コントロールLTG1943(LP-コントロールScFv-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAAGAACAGCTTGTAGAGTCCGGCGGTAGATTGGTGACACCGGGGGGGAGCCTTACCCTGTCTTGTAAGGCATCTGGGTTCGATTTCAGTGCGTATTATATGAGCTGGGTTCGGCAGGCGCCCGGGAAGGGGCTGGAATGGATAGCCACTATATACCCGTCATCCGGCAAGACTTACTACGCGACTTGGGTAAACGGGAGGTTTACGATAAGCTCAGATAACGCCCAAAACACGGTTGATCTCCAAATGAATAGCTTGACCGCCGCTGATAGGGCGACCTATTTCTGTGCGCGGGACTCTTACGCTGATGACGGGGCCCTCTTCAATATATGGGGACCGGGAACGCTCGTAACCATATCATCTGGAGGAGGTGGGAGCGGAGGCGGAGGGTCAGGTGGGGGCGGGAGCGAACTCGTACTTACACAATCTCCAAGCGTAAGCGCAGCGTTGGGGAGTCCAGCAAAGATCACCTGCACTTTGTCAAGCGCCCACAAAACGGATACGATAGATTGGTATCAGCAACTCCAAGGTGAAGCGCCACGATATCTCATGCAGGTACAGAGCGACGGGAGTTATACTAAGAGGCCCGGGGTCCCAGACAGATTCAGTGGCAGCAGTTCAGGTGCCGACAGATACCTGATAATACCCTCAGTTCAAGCCGATGATGAAGCCGATTACTACTGTGGGGCTGACTACATAGGTGGGTATGTTTTCGGGGGCGGCACTCAATTGACAGTTACAGGGGCGGCCGCAACTACCACCCCTGCCCCTCGGCCGCCGACTCCGGCCCCAACCATCGCAAGCCAACCCCTCTCCTTGCGCCCCGAAGCTTGCCGCCCGGCCGCGGGTGGAGCCGTGCATACCCGGGGGCTGGACTTTGCCTGCGATATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号16 ROR1-CAR AA SEQ コントロールLTG1943(LP-コントロールScFv-CD8H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQEQLVESGGRLVTPGGSLTLSCKASGFDFSAYYMSWVRQAPGKGLEWIATIYPSSGKTYYATWVNGRFTISSDNAQNTVDLQMNSLTAADRATYFCARDSYADDGALFNIWGPGTLVTISSGGGGSGGGGSGGGGSELVLTQSPSVSAALGSPAKITCTLSSAHKTDTIDWYQQLQGEAPRYLMQVQSDGSYTKRPGVPDRFSGSSSGADRYLIIPSVQADDEADYYCGADYIGGYVFGGGTQLTVTGAAATTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号17 ROR1-CAR DNA SEQ コントロールLTG2527(LP-コントロールScFv-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCGCAAGAACAGCTTGTAGAGTCCGGCGGTAGATTGGTGACACCGGGGGGGAGCCTTACCCTGTCTTGTAAGGCATCTGGGTTCGATTTCAGTGCGTATTATATGAGCTGGGTTCGGCAGGCGCCCGGGAAGGGGCTGGAATGGATAGCCACTATATACCCGTCATCCGGCAAGACTTACTACGCGACTTGGGTAAACGGGAGGTTTACGATAAGCTCAGATAACGCCCAAAACACGGTTGATCTCCAAATGAATAGCTTGACCGCCGCTGATAGGGCGACCTATTTCTGTGCGCGGGACTCTTACGCTGATGACGGGGCCCTCTTCAATATATGGGGACCGGGAACGCTCGTAACCATATCATCTGGAGGAGGTGGGAGCGGAGGCGGAGGGTCAGGTGGGGGCGGGAGCGAACTCGTACTTACACAATCTCCAAGCGTAAGCGCAGCGTTGGGGAGTCCAGCAAAGATCACCTGCACTTTGTCAAGCGCCCACAAAACGGATACGATAGATTGGTATCAGCAACTCCAAGGTGAAGCGCCACGATATCTCATGCAGGTACAGAGCGACGGGAGTTATACTAAGAGGCCCGGGGTCCCAGACAGATTCAGTGGCAGCAGTTCAGGTGCCGACAGATACCTGATAATACCCTCAGTTCAAGCCGATGATGAAGCCGATTACTACTGTGGGGCTGACTACATAGGTGGGTATGTTTTCGGGGGCGGCACTCAATTGACAGTTACAGGGGCGGCCGCAGAGTCAAAATACGGTCCTCCGTGCCCTCCGTGTCCGATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGCAAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTGCGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号18 ROR1-CAR AA SEQ コントロールLTG2527(LP-コントロールScFv-IgG4H/CD8TM-41BB-CD3ゼータ)
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQEQLVESGGRLVTPGGSLTLSCKASGFDFSAYYMSWVRQAPGKGLEWIATIYPSSGKTYYATWVNGRFTISSDNAQNTVDLQMNSLTAADRATYFCARDSYADDGALFNIWGPGTLVTISSGGGGSGGGGSGGGGSELVLTQSPSVSAALGSPAKITCTLSSAHKTDTIDWYQQLQGEAPRYLMQVQSDGSYTKRPGVPDRFSGSSSGADRYLIIPSVQADDEADYYCGADYIGGYVFGGGTQLTVTGAAAESKYGPPCPPCPIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号19 リーダー/シグナルペプチド配列(LP)のヌクレオチド配列
ATGCTGCTGCTGGTGACCAGCCTGCTGCTGTGCGAACTGCCGCATCCGGCGTTTCTGCTGATTCCG
配列番号20 リーダー/シグナルペプチド配列(LP)のアミノ酸配列
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP
配列番号21 DNA CD8膜貫通ドメインのヌクレオチド配列
ATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGC
配列番号22 CD8膜貫通ドメインのアミノ酸配列
IWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
配列番号23 DNA CD8ヒンジドメインのヌクレオチド配列
ACTACCACCCCTGCCCCTCGGCCGCCGACTCCGGCCCCAACCATCGCAAGCCAACCCCTCTCCTTGCGCCCCGAAGCTTGCCGCCCGGCCGCGGGTGGAGCCGTGCATACCCGGGGGCTGGACTTTGCCTGCGATATCTAC
配列番号24 CD8ヒンジドメインのアミノ酸配列
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY
配列番号25 CD8アルファのアミノ酸番号137~206のヒンジおよび膜貫通領域のアミノ酸配列(NCBI REFSEQ:NP__001759.3)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
配列番号26 4-1BBのシグナル伝達ドメインのヌクレオチド配列
AAGAGGGGCCGGAAGAAGCTGCTTTACATCTTCAAGCAGCCGTTCATGCGGCCCGTGCAGACGACTCAGGAAGAGGACGGATGCTCGTGCAGATTCCCTGAGGAGGAAGAGGGGGGATGCGAACTG
配列番号27 4-1BBのシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
配列番号28 CD3-ゼータの細胞内シグナル伝達ドメインのヌクレオチド配列
CGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATCAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号29 CD3-ゼータのアミノ酸配列
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号30 CD3-ゼータの細胞内シグナル伝達ドメイン、バリアント、のヌクレオチド配列
CGCGTCAAGTTCTCACGGTCCGCCGACGCCCCCGCATATAAACAGGGCCAGAATCAGCTCTACAACGAGCTGAACCTGGGAAGGAGAGAGGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGACGCGGACGCGACCCGGAGATGGGGGGGAAACCACGGCGGAAAAACCCTCAGGAAGGACTGTACAACGAACTCCAGAAAGACAAGATGGCGGAAGCCTACTCAGAAATCGGGATGAAGGGAGAGCGGAGGAGGGGAAAGGGTCACGACGGGCTGTACCAGGGACTGAGCACCGCCACTAAGGATACCTACGATGCCTTGCATATGCAAGCACTCCCACCCCGG
配列番号31 CD3-ゼータシグナル伝達ドメイン、バリアント、のアミノ酸配列
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号32 ScFV CD19(FMC63)のヌクレオチド配列
GACATTCAGATGACTCAGACCACCTCTTCCTTGTCCGCGTCACTGGGAGACAGAGTGACCATCTCGTGTCGCGCAAGCCAGGATATCTCCAAGTACCTGAACTGGTACCAACAGAAGCCCGACGGGACTGTGAAGCTGCTGATCTACCACACCTCACGCCTGCACAGCGGAGTGCCAAGCAGATTCTCCGGCTCCGGCTCGGGAACCGATTACTCGCTTACCATTAGCAACCTCGAGCAGGAGGACATCGCTACCTACTTCTGCCAGCAAGGAAATACCCTGCCCTACACCTTCGGCGGAGGAACCAAATTGGAAATCACCGGCGGAGGAGGCTCCGGGGGAGGAGGTTCCGGGGGCGGGGGTTCCGAAGTGAAGCTCCAGGAGTCCGGCCCCGGCCTGGTGGCGCCGTCGCAATCACTCTCTGTGACCTGTACCGTGTCGGGAGTGTCCCTGCCTGATTACGGCGTGAGCTGGATTCGGCAGCCGCCGCGGAAGGGCCTGGAATGGCTGGGTGTCATCTGGGGATCCGAGACTACCTACTACAACTCGGCCCTGAAGTCCCGCCTGACTATCATCAAAGACAACTCGAAGTCCCAGGTCTTTCTGAAGATGAACTCCCTGCAAACTGACGACACCGCCATCTATTACTGTGCTAAGCACTACTACTACGGTGGAAGCTATGCTATGGACTACTGGGGGCAAGGCACTTCGGTGACTGTGTCAAGC
配列番号33 ScFV CD19(FMC63)のアミノ酸配列
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号34 抗CD33 ScFV(LTG1936)のヌクレオチド配列
CAGGTGCAGCTGGTGCAATCTGGGGCAGAGGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAGGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATTCAGTTTTCCCACCTACTGGATCGGCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCATCTATCCTGGTGACTCTGATACCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAGGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCAGCACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATGTATTACTGTGCGAGACTAGTTGGAGATGGCTACAATACGGGGGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGTGGCGGTAGCGGTGGTGGCGGATCCGATATTGTGATGACCCACACTCCACTCTCTCTGTCCGTCACCCCTGGACAGCCGGCCTCCATCTCCTGCAAGTCTAGTCAGAGCCTCCTGCATAGTAATGGAAAGACCTATTTGTATTGGTACCTGCAGAAGCCAGGCCAGCCTCCACAGCTCCTGATCTATGGAGCTTCCAACCGGTTCTCTGGAGTGCCAGACAGGTTCAGTGGCAGCGGGTCAGGGACAGATTTCACACTGAAAATCAGCCGGGTGGAGGCTGAGGATGTTGGGGTTTATTACTGCATGCAAAGTATACAGCTTCCTATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAA
配列番号35 抗CD33 ScFV(LTG1936)のアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGESLRISCKGSGFSFPTYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIYPGDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARLVGDGYNTGAFDIWGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTHTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLHSNGKTYLYWYLQKPGQPPQLLIYGASNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQSIQLPITFGQGTRLEIK
配列番号36 抗メソテリンScFV(LTG1904)のヌクレオチド配列
GAGGTCCAGCTGGTACAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGCCATGCACTGGGTCCGGCAAGCTCCAGGGAAGGGCCTGGAGTGGGTCTCAGGTATTAGTTGGAATAGTGGTAGCATAGGCTATGCGGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCTGAGGACACGGCCTTGTATTACTGTGCAAAAGATTTATCGTCAGTGGCTGGACCCTTTAACTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGCGGGTCTGGTGGAGGCGGTAGCGGCGGTGGCGGATCCTCTTCTGAGCTGACTCAGGACCCTGCTGTGTCTGTGGCCTTGGGACAGACAGTCAGGATCACATGCCAAGGAGACAGCCTCAGAAGCTATTATGCAAGCTGGTACCAGCAGAAGCCAGGACAGGCCCCTGTACTTGTCATCTATGGTAAAAACAACCGGCCCTCAGGGATCCCAGACCGATTCTCTGGCTCCAGCTCAGGAAACACAGCTTCCTTGACCATCACTGGGGCTCAGGCGGAGGATGAGGCTGACTATTACTGTAACTCCCGGGACAGCAGTGGTAACCATCTGGTATTCGGCGGAGGCACCCAGCTGACCGTCCTCGGT
配列番号37 抗メソテリンScFV(LTG1904)のアミノ酸配列
EVQLVQSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCAKDLSSVAGPFNYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSRDSSGNHLVFGGGTQLTVLG
配列番号38 IgG4H(ヒンジ)のヌクレオチド配列
GAGTCAAAATACGGTCCTCCGTGCCCTCCGTGTCCG
配列番号39 IgG4H(ヒンジ)のアミノ酸配列
ESKYGPPCPPCP
配列番号40 CD8 TM(膜貫通)に結合したIgG4Hのヒンジドメインのヌクレオチド配列
GAGTCAAAATACGGTCCTCCGTGCCCTCCGTGTCCGATCTACATTTGGGCCCCGCTGGCCGGCACTTGCGGCGTGCTCCTGCTGTCGCTGGTCATCACCCTTTACTGC
配列番号41 CD8 TM(膜貫通)に結合したIgG4Hのヒンジドメインのアミノ酸配列
ESKYGPPCPPCPIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
【配列表】
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