(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20240306BHJP
A01M 1/22 20060101ALI20240306BHJP
A01M 29/24 20110101ALI20240306BHJP
【FI】
A47G9/10 C
A01M1/22 Z
A01M29/24
(21)【出願番号】P 2020027622
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和2年1月15日 刊行物 中部経済新聞 令和2年1月15日朝刊,第3面
(73)【特許権者】
【識別番号】520060955
【氏名又は名称】有限会社後藤縫製
(73)【特許権者】
【識別番号】000114031
【氏名又は名称】ミクロ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130074
【氏名又は名称】中村 繁元
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正一
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-316953(JP,A)
【文献】特開2002-011079(JP,A)
【文献】特開平03-244302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
A01M 1/22
A01M 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蕎麦殻を一時的に貯留するホッパと、ベルトコンベヤーと、マイクロ波照射室とを備えたマイクロ波照射機を使用して行う熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法において、
蕎麦の実を脱穀した蕎麦殻を、ふるい選別機で残留する蕎麦の実及びほこり等のごみと蕎麦殻を選別する
第1の工程と、
選別された蕎麦殻をベルトコンベヤーに、30mm以上50mm以下の一定の厚さの積層した状態で供給する
第2の工程と、
ベルトコンベヤーで供給される蕎麦殻をマイクロ波照射室に搬送する
第3の工程と、
マイクロ波照射室で蕎麦殻にマイクロ波を照射して加熱する
第4の工程と、を有し、
前記マイクロ波を照射
して加熱する第4の工程では、マイクロ波照射室に80℃以上の熱風を供給する
ものであって、
前記第2の工程において使用する前記ホッパの最下部には、蕎麦殻排出口が設けられており、一時的に貯留された蕎麦殻は、重力によって前記蕎麦殻排出口からベルトコンベヤーの表面に落下するものであると共に、前記蕎麦殻排出口の近傍には、蕎麦殻を前記ベルトコンベヤーに、30mm以上50mm以下の一定の厚さで供給するための調整可能な厚さ調整板が固定されており、
前記ホッパは、その内部の所定の位置に取り付けられたセンサと、前記蕎麦殻排出口を閉鎖する排出口閉鎖装置とを備えており、
前記ホッパ内の蕎麦殻が所定量よりも少なくなったことを前記センサが検出した場合には、前記排出口閉鎖装置が作動して前記蕎麦殻排出口が閉鎖されることを特徴とする熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法。
【請求項2】
ベルトコンベヤーの幅方向の両端部近傍には、ガイド板が設置されており、該ガイド板によって、一定の厚さに積層された蕎麦殻が崩れないようにしていることを特徴とする請求項1に記載の熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に枕やクッション等の袋体に充填される熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸放湿性に優れている蕎麦殻は、枕やクッション等の袋体に充填されているものが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の蕎麦殻の製造方法は、圧力釜中で水蒸気により100℃以上の温度で蒸した後、乾燥させるものであった。これにより、蕎麦殻に付着していた虫や虫が産みつけた卵を死滅させることができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法では、圧力釜で蒸す工程の燃料代で製造コストが嵩むこととなる。また、水蒸気を使用することから乾燥工程は必須であるが、天日干し乾燥では天気に左右されることとなる。また、ヒーターを使用しての乾燥ではさらに製造コストが嵩むことになる。また、一度に大量の蕎麦殻を圧力釜に投入した場合には、蕎麦殻の位置で熱の伝わり方が異なることから温度ムラが生じ易く、これを防ぐためには圧力釜の温度を必要以上に高く設定する必要があり、これにより、製造コストが嵩むという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、製造時間を短縮させることができると共に、製造コストが嵩むこと無く、蕎麦殻に付着している虫や虫が産みつけた卵を確実に死滅させることができる熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法の発明は、蕎麦殻を一時的に貯留するホッパと、ベルトコンベヤーと、マイクロ波照射室とを備えたマイクロ波照射機を使用して行う熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法において、蕎麦の実を脱穀した蕎麦殻を、ふるい選別機で残留する蕎麦の実及びほこり等のごみと蕎麦殻を選別する第1の工程と、選別された蕎麦殻をベルトコンベヤーに、30mm以上50mm以下の一定の厚さの積層した状態で供給する第2の工程と、ベルトコンベヤーで供給される蕎麦殻をマイクロ波照射室に搬送する第3の工程と、マイクロ波照射室で蕎麦殻にマイクロ波を照射して加熱する第4の工程と、を有し、前記マイクロ波を照射して加熱する第4の工程では、マイクロ波照射室に80℃以上の熱風を供給するものであって、前記第2の工程において使用する前記ホッパの最下部には、蕎麦殻排出口が設けられており、一時的に貯留された蕎麦殻は、重力によって前記蕎麦殻排出口からベルトコンベヤーの表面に落下するものであると共に、前記蕎麦殻排出口の近傍には、蕎麦殻を前記ベルトコンベヤーに、30mm以上50mm以下の一定の厚さで供給するための調整可能な厚さ調整板が固定されており、前記ホッパは、その内部の所定の位置に取り付けられたセンサと、前記蕎麦殻排出口を閉鎖する排出口閉鎖装置とを備えており、前記ホッパ内の蕎麦殻が所定量よりも少なくなったことを前記センサが検出した場合には、前記排出口閉鎖装置が作動して前記蕎麦殻排出口が閉鎖されることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、蕎麦殻をベルトコンベヤーでマイクロ波照射室に搬送することとしているので、蕎麦殻を連続的にマイクロ波照射室に搬送することができ、装置を停止する必要がないので、短時間で熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造を行うことができ、製造コストの低減を図ることができる。また、マイクロ波の照射により蕎麦殻を加熱することとしたので、従来の圧力釜による加熱と比較して製造コストの低減を図ることができる。また、マイクロ波照射室に80℃以上の熱風を供給することで蕎麦殻から発生する水蒸気がマイクロ波照射室の壁面で結露するのを防ぐことができ、短時間で熱による殺虫及び殺卵を蕎麦殻に施すことができる。また、積層された蕎麦殻の位置による温度ムラを防ぐと共に、蕎麦殻を必要とされる温度まで加熱させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法において、ベルトコンベヤーの幅方向の両端部近傍には、ガイド板が設置されており、該ガイド板によって、一定の厚さに積層された蕎麦殻が崩れないようにしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1又は2に記載の熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法の発明は、蕎麦殻を連続的にマイクロ波照射室に搬送することができ、短時間で熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造を行うことができ、製造コストの低減を図ることができる。また、蕎麦殻から発生する水蒸気がマイクロ波照射室の壁面で結露するのを防ぐことができ、短時間で熱による殺虫及び殺卵を蕎麦殻に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法の概要を示す説明図である。
【
図2】本発明で使用するマイクロ波照射機の概要を示す正面図である。
【
図3】本発明で使用するマイクロ波照射機の概要を示す平面図である。
【
図4】本発明で使用するマイクロ波照射機の詳細を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明に係る熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法の概要を示す説明図である。
図1を用いて以下に本発明に係る熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法について説明する。
【0018】
本発明に係る熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法は、あらかじめ蕎麦の実を脱穀した蕎麦殻を使用する。そして、第1の工程では、ふるい選別機1を使用して、残留する蕎麦の実及びほこり等のごみと蕎麦殻を選別する。
【0019】
第1の工程で選別された蕎麦殻は、図示していない昇降機などの移送手段を使用して第2の工程へと運ばれる。第2の工程では、マイクロ波照射機2のベルトコンベヤー2aを使用して蕎麦殻をマイクロ波照射室2bに搬送する。したがって、蕎麦殻を連続的にマイクロ波照射室2bに搬送することができ、マイクロ波照射機2を停止する必要がないので、短時間で熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造を行うことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0020】
第3の工程では、第2の工程でマイクロ波照射室2bに搬送された蕎麦殻にマイクロ波を照射して蕎麦殻は80℃以上に加熱される。また、第3の工程では、マイクロ波照射室2bに80℃以上の熱風を供給している。本発明では、マイクロ波の照射により蕎麦殻を加熱することとしたので、従来の圧力釜による加熱と比較して製造コストの低減を図ることができる。また、マイクロ波照射室2bに80℃以上の熱風を供給することで蕎麦殻から発生する水蒸気がマイクロ波照射室2bの壁面で結露するのを防ぐことができ、短時間で熱による殺虫及び殺卵を蕎麦殻に施すことができる。
【0021】
第4の工程では、第3の工程でマイクロ波を照射して加熱された蕎麦殻を冷ました後、図示していない昇降機などの移送手段を使用して蕎麦殻充填機3に移送し、枕やクッション等の袋体に蕎麦殻を充填する。尚、第4の工程は、本発明に係る熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法における必須の工程ではなく、熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻を他の用途に使用する場合も本発明に含まれる。
【0022】
図2は、本発明で使用するマイクロ波照射機の全体概要を示す正面図であり、
図3は、同平面図である。また、
図4は、マイクロ波照射機の詳細を示す一部拡大斜視図である。これらの図を用いて本発明の熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法で使用するマイクロ波照射機について説明する。
【0023】
マイクロ波照射機2は、前述したベルトコンベヤー2aと、マイクロ波照射室2bに加えて、ホッパ2cを備えている。このホッパ2cは、第1の工程で選別された蕎麦殻を一時的に貯留する機能と、蕎麦殻をベルトコンベヤー2aに、30mm以上50mm以下の一定の厚さの積層した状態で連続して供給する機能とを備えている。
【0024】
具体的には、ホッパ2cの最下部には蕎麦殻排出口4が設けられており、ホッパ2cに一時的に貯留された蕎麦殻は重力によって蕎麦殻排出口4からベルトコンベヤー2aの表面に落下する。蕎麦殻排出口4の近傍には、厚さ調整板5(
図4参照)が設置されており、この厚さ調整板5には上下方向に複数の長穴5a、5aが形成されており、この長穴5a、5aにホッパ2c側に固定されている複数のボルト5b、5bが挿通されて長穴5a、5aの所定の位置でナット5c、5cにより、厚さ調整板5はホッパ2cに固定されている。この厚さ調整板5によって、落下して積層された蕎麦殻のベルトコンベヤー2aの表面からの厚さXが30mm以上50mm以下の一定の厚さとなるように調整される。したがって、積層された蕎麦殻の位置による温度ムラを防ぐと共に、蕎麦殻を必要とされる温度まで加熱させることができる。
【0025】
また、ホッパ2cの内部には所定の位置にセンサが取り付けられており、ホッパ2c内の蕎麦殻が所定量よりも少なくなった場合には、排出口閉鎖装置9が作動して蕎麦殻排出口4が閉鎖される。そして、マイクロ波照射機2の所定箇所に設置されている複数のセンサによってベルトコンベヤー2aに蕎麦殻が載置されていないことを検知した場合には、マイクロ波照射室2bにおいてマイクロ波が照射されない構成としている。
【0026】
また、ベルトコンベヤー2aの幅方向の両端部近傍には、ガイド板6、6が設置されている。このガイド板6、6は、一定の厚さに積層された蕎麦殻が崩れないように、ガイド板6、6が設置されている。
【0027】
マイクロ波照射室2bは、上部に撹拌羽根7を備えている。この撹拌羽根7は、回転軸7aを介して回転モータ7bと連結しており、マイクロ波を照射する工程において、撹拌羽根7を回転させ、この回転によりマイクロ波を反射及び分散させている。したがって、短時間のマイクロ波照射で蕎麦殻を加熱することができるので、製造コストの低減を図ることができると共に、蕎麦殻に温度ムラが生じるのを防ぐことができる。
【0028】
マイクロ波照射室2bは、排気孔8を備えている。この排気孔8は、マイクロ波を照射する工程において、加熱された蕎麦殻から発生する水蒸気を、マイクロ波照射室2bの外へと排気している。したがって、マイクロ波を照射した蕎麦殻を短時間で乾燥させることができる。尚、排気孔8に送風機を設置して強制的に水蒸気を排気する構成とすることもできる。
【0029】
尚、マイクロ波を照射する工程において、マイクロ波照射室2bにおけるマイクロ波の出力は、2kW以上8kW以下であることが好ましく、マイクロ波照射室2bにおけるマイクロ波の照射時間は、1分以上5分以下であることが好ましい。これは実験により得られた数値であり、殺虫及び殺卵に必要とされる最小限のマイクロ波の出力を設定することによって、一層の製造コストの低減を図ることができ、殺虫及び殺卵に必要とされる最小限のマイクロ波の照射時間を設定することによって、一層の製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
【0031】
表1は、ベルトコンベヤー2aの幅を500mmとし、積層された蕎麦殻のベルトコンベヤー2aの表面からの厚さを40mmとして連続的にマイクロ波照射室2bに投入した場合の実験結果である。表1の実験1に示すように、マイクロ波出力を3kWとした場合には、加熱直後の蕎麦殻の温度は83℃であった。また、実験2に示すように、マイクロ波出力を6kWとした場合には、加熱直後の蕎麦殻の温度は101℃であった。また、実験3に示すように、実験2に対してベルトコンベヤー2aのベルト速度を2倍の速さにして、マイクロ波照射室2bの通過時間を半分にした場合には、加熱直後の蕎麦殻の温度は86℃であった。そして、加熱直後の温度が80℃以上であった蕎麦殻を検査機関に送り、分析を依頼したところ、動物性異物は認められないとの結果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るは、熱による殺虫及び殺卵を施した蕎麦殻の製造方法は、主に、枕やクッション等の袋体に充填される蕎麦殻の製造方法として利用される。
【符号の説明】
【0033】
1 ふるい選別機
2 マイクロ波照射機
2a ベルトコンベヤー
2b マイクロ波照射室
2c ホッパ
3 蕎麦殻充填機
4 蕎麦殻排出口
5 厚さ調整板
5a 長穴
5b ボルト
5c ナット
6 ガイド板
7 撹拌羽根
7a 回転軸
7b 回転モータ
8 排気孔
9 排出口閉鎖装置
X ベルトコンベヤー表面からの厚さ