IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 関西大学の特許一覧 ▶ 株式会社AIKIリオテックの特許一覧

<>
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図1
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図2
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図3
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図4
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図5
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図6
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図7
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図8
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図9
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図10
  • 特許-駆動機構および穿孔装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】駆動機構および穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/12 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F16H25/12 Z
F16H25/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020551183
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2019039742
(87)【国際公開番号】W WO2020075736
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018193783
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510028914
【氏名又は名称】株式会社AIKIリオテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】青柳 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松本 一
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082568(JP,A)
【文献】特開2015-100889(JP,A)
【文献】特開昭64-002877(JP,A)
【文献】特開平09-229157(JP,A)
【文献】特開2017-000620(JP,A)
【文献】特表2006-521886(JP,A)
【文献】特開2004-073298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構であって、
中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、
上記回転棒を取り囲む環状の摺動溝が形成された支持体と、
上記回転棒と上記支持体との間に配置されており、上記中心軸に沿った複数の縦溝が形成されている外筒と、を備え、
上記複数の分割体の各々は、当該分割体の側面から突出した突起部を有しており、
上記突起部は、上記摺動溝内および上記縦溝内を摺動することができ、
上記突起部を有する分割体の各々は、当該突起部が上記摺動溝内を摺動することにより、上記中心軸に沿った方向に移動し、
上記突起部は、上記中心軸を回転軸として上記外筒が回転することにより、上記摺動溝内を摺動する、駆動機構。
【請求項2】
駆動機構であって、
中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、
上記複数の分割体の各々に接続されている、複数の追従移動部と、
回転中心から縁部までの距離が一定ではない複数の回転カムと、
上記複数の回転カムを互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構と、を備え、
上記追従移動部の各々は、上記回転カムの縁部に当接しており、上記回転カムの回転に追従して上記中心軸に沿った方向に移動し、
上記回転棒、上記追従移動部、上記回転カムおよび上記カム回転機構、上記中心軸を回転軸として回転させる動力を与える回転動力部をさらに備えている、駆動機構。
【請求項3】
駆動機構であって、
中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、
上記複数の分割体の各々に接続されている、複数の追従移動部と、
回転中心から縁部までの距離が一定ではない複数の回転カムと、
上記複数の回転カムを互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構と、を備え、
上記追従移動部の各々は、上記回転カムの縁部に当接しており、上記回転カムの回転に追従して上記中心軸に沿った方向に移動し、
上記回転棒、上記追従移動部、上記回転カムおよび上記カム回転機構は、上記中心軸を回転軸として回転可能に構成されており、
上記カム回転機構は、
上記中心軸と平行に配され、回転駆動源によって回転する入力側軸と、
上記入力側軸に設けられた駆動ベベルギアと、
上記駆動ベベルギアと噛み合い、上記駆動ベベルギアの回転を上記複数の回転カムの回転動作に変換する、複数の従動ベベルギアと、
を備えており、
上記従動ベベルギアの各々には、上記回転カムが設けられている、駆動機構
【請求項4】
駆動機構であって、
中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、
上記複数の分割体の各々に接続されている、複数の追従移動部と、
回転中心から縁部までの距離が一定ではない複数の回転カムと、
上記複数の回転カムを互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構と、を備え、
上記追従移動部の各々は、上記回転カムの縁部に当接しており、上記回転カムの回転に追従して上記中心軸に沿った方向に移動し、
上記回転棒、上記追従移動部、上記回転カムおよび上記カム回転機構は、上記中心軸を回転軸として回転可能に構成されており、
一方向の回転運動を、時計回りおよび反時計回りを交互に繰り返す回転運動に機械的に変換する、機械的変換機構をさらに備えている、駆動機構
【請求項5】
上記カム回転機構は、
上記中心軸と平行に配され、回転駆動源によって回転する入力側軸と、
上記入力側軸に設けられた駆動ベベルギアと、
上記駆動ベベルギアと噛み合い、上記駆動ベベルギアの回転を上記複数の回転カムの回転動作に変換する、複数の従動ベベルギアと、
を備えており、
上記従動ベベルギアの各々には、上記回転カムが設けられている、請求項2に記載の駆動機構。
【請求項6】
一方向の回転運動を、時計回りおよび反時計回りを交互に繰り返す回転運動に機械的に変換する、機械的変換機構をさらに備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の駆動機構と、
上記分割体が往復運動している状態の上記回転棒を、上記中心軸に沿った方向に移動させる平行移動部と、
を備えている、穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動機構、および当該駆動機構を備えている穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動および往復運動は、いずれも基本的な機械動作の一種である。しかし、棒状の部材を回転させながら、当該棒状の部材の一部を構成している分割体を交互に往復運動させるための機構は、現在に至るまで開発されずにいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した通り、棒状の部材を回転させながら、当該棒状の部材の一部を構成している分割体を交互に往復運動させるための機構は、未開発である。本発明の一態様は、このような機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る駆動機構は、(i)中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、(ii)上記回転棒を取り囲む環状の摺動溝が形成された支持体と、(iii)上記回転棒と上記支持体との間に配置されており、上記中心軸に沿った複数の縦溝が形成されている外筒と、を備え;上記複数の分割体の各々は、当該分割体の側面から突出した突起部を有しており;上記突起部は、上記摺動溝内および上記縦溝内を摺動することができ;上記突起部を有する分割体の各々は、当該突起部が上記摺動溝内を摺動することにより、上記中心軸に沿った方向に移動し;上記突起部は、上記中心軸を回転軸として上記外筒が回転することにより、上記摺動溝内を摺動する。
【0005】
本発明の他の態様に係る駆動機構は、(i)中心軸に沿った方向に沿って分割された複数の分割体を備えている回転棒であって、上記分割体の各々は独立に上記中心軸に沿った方向に移動可能である、回転棒と、(ii)上記複数の分割体の各々に接続されている、複数の追従移動部と、(iii)回転中心から縁部までの距離が一定ではない複数の回転カムと、(iv)上記複数の回転カムを互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構と、を備え;上記追従移動部の各々は、上記回転カムの縁部に当接しており、上記回転カムの回転に追従して上記中心軸に沿った方向に移動し;上記回転棒、上記追従移動部、上記回転カムおよび上記カム回転機構は、上記中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、棒状の部材を回転させながら、当該棒状の部材の一部である分割体を交互に往復運動させるための機構が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は、本発明の実施形態1における、回転棒および分割体の一例を表す分解図である。(b)は、本発明の実施形態1における、支持体および摺動溝の一例を表す斜視図である。(c)は、本発明の実施形態1における、支持体および摺動溝の他の例を表す斜視図である。(d)は、本発明の実施形態1における、外筒の一例を表す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る駆動機構を表す組立図である。
図3】本発明の実施形態1に係る駆動機構が駆動する様子を表す遷移図である。
図4】(a)は、本発明の実施形態2における、回転棒、ならびに、分割体および追従移動部の一例を表す分解図である。(b)は、本発明の実施形態2における、回転カムの一例を表す斜視図である。(c)は、本発明の実施形態2における、回転カムの他の例を表す斜視図である。
図5】本発明の実施形態2に係る駆動機構を表す組立図である。(a)は外筒を用いておらず、(b)は外筒を用いている。
図6】本発明の実施形態2に係る駆動機構が駆動する様子を表す遷移図である。
図7】本発明の実施形態3に係る穿孔装置の要部を表すブロック図である。
図8】(a)~(c)は、本発明の実施形態3に係る穿孔装置における、回転棒の先端の例を表す斜視図である。
図9】機械的変換機構の構成の一例を表す模式図である。
図10】(a)および(b)は、機械的変換機構により回転方向が切り替えられる様子を表す模式図である。
図11】(a)および(b)は、分割体の変形例を表す図である。それぞれ、上パネルが斜視図であり、下パネルが回転棒の中心軸に垂直な断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に基づいて本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は個別の実施形態に限定解釈されるものではなく、各実施例形態に記載されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1~3を参照しながら説明する。
【0010】
実施形態1に係る駆動機構100は、
1.中心軸lに沿った方向に沿って分割された複数の分割体11を備えている回転棒10であって、分割体11の各々は独立に中心軸lに沿った方向に移動可能である、回転棒10(図1の(a)を参照);
2.回転棒10を取り囲む環状の摺動溝31が形成された支持体A、B(図1の(b)および(c)を参照);および、
3.回転棒10と支持体A、Bとの間に配置されており、中心軸lに沿った複数の縦溝51が形成されている外筒50(図1の(d)および図2を参照);
を備えている。
【0011】
図1の(a)は、本発明の実施形態1に係る駆動機構100における、回転棒10の分解図である。回転棒10は、分割体11aおよび分割体11bから構成されている。分割体11a、11bは、それぞれ、突起部12a、12bを有している。突起部12a、12bは、摺動溝31内を摺動することにより、中心軸lに沿った方向に移動することができる。このことを、図1の(b)および(c)を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1の(b)は、摺動溝31の一例を表す斜視図である。同図に示す摺動溝は、回転棒の中心軸lに対して直交する平面上にではなく、中心軸lに対して斜交する平面上に形成されている。分割体11上における突起部12の位置は固定されているから、このような形状の摺動溝31内を突起部12が摺動すると、分割体11は常に中心軸lに沿った方向に移動することになる。
【0013】
図1の(c)は、摺動溝31の他の例を表す斜視図である。同図に示されている摺動溝31には、スロープ部Xが存在しており、スロープ部Xは中心軸lに対して斜交する平面上に形成されている。このような摺動溝31内を突起部12が移動すると、分割体11は、突起部12がスロープ部Xを通過する際には中心軸lに沿った方向に移動し、それ以外の部分を通過する際には中心軸lに沿った方向には移動しない。このような摺動溝31も、駆動機構100の部材として用いることができる。
【0014】
なお、図1の(b)および(c)では、摺動溝31を、支持体A、Bの間に設けられた間隙として描いている。しかし、摺動溝31は、突起部12a、12bが摺動できるように構成されていれば充分である。例えば、回転棒10を収容する筐体を支持体とし、当該筐体に設けられた凹部を摺動溝31としてもよい。
【0015】
図1の(d)は、外筒50の斜視図である。外筒50には、中心軸lに沿った方向に、縦溝51a、51bが設けられている。縦溝51a、51bには、突起部12a、12bがそれぞれ嵌合し、その中を摺動することができる。なお、縦溝51は、図1の(d)のように、外筒50の一端にまで達している必要はない。つまり、突起部12が摺動溝31内を摺動できるならば、縦溝51の形状は特に限定されない。しかし、図1の(d)のように外筒50の一端に達している方が、外筒50の加工が容易であり、また図2のように各部材を組み立てやすい。このような形状の外筒50を採用する場合、縦溝51のある側から回転棒10が突出するように部材を組み立ててもよいし(図2を参照)、縦溝51のある側とは逆側から回転棒10が突出するように部材を組み立ててもよい。すなわち、駆動機構100を組み立てた際の外筒50の方向は、図2とは反対方向であってもよい。
【0016】
外筒50は、駆動機構100において複数の役割を担っている。以下にそれぞれを説明する。
【0017】
第一に、縦溝51には、突起部12が嵌合するので、外筒50を回転させることにより、複数の突起部12は、摺動溝31内を同時に摺動することになる。つまり、外筒50を回転させるだけで、突起部12を摺動溝31内で摺動させながら、複数の分割体11が回転することになる。その結果、(例えば1つのモータによって)外筒50に回転動力を伝動すれば、複数の分割体11に、回転運動と往復運動とを与えることができる。
【0018】
第二に、外筒50の縦溝51は、突起部12が、摺動溝31内を摺動しながら中心軸lに沿った方向に移動することをサポートする。これは、突起部12が、摺動溝31に加えて縦溝51内をも摺動することができることに由来する機能である。
【0019】
第三に、回転棒を中空状とし、内部に液体を流通させる場合(例えば、実施例3における「穿刺装置」として駆動機構100を利用する場合)には、外筒50を、当該液体の流路とすることができる。この場合は、縦溝51が外筒50の一端に達している外筒50を採用し、図2のように、縦溝51のある側から回転棒10が突出するように部材を組み立てることが好ましい。つまり、実施例3における「穿刺装置」として駆動機構100を利用する場合には、縦溝51のある側から回転棒10(中空針)の針先が突出するように部材を組み立てることが好ましい。あるいは、縦溝51が外筒50の一端に達していない外筒50を採用することも好ましい。このような構成とすれば、外筒50を液体の流路とする場合に、縦溝51から外部へと漏出する液体を最小限に止められる。
【0020】
図2は、実施形態1に係る駆動機構100を表す組立図である。駆動機構100は、図1に表した回転棒10、支持体A、Bおよび外筒50を組み立てたものである。
【0021】
図2に示されるように、外筒50は、モータ20に接続されている。上述したように、モータ20から回転動力を伝動して、中心軸lを回転軸として外筒50を回転させれば、回転棒10の回転運動と分割体11の交互の往復運動とが実現する。外筒50に伝動される回転動力は、一方向の回転であってもよいし、時計回りと反時計回りとを切り替える両方向の回転であってもよい。なお、回転動力を供給する手段はモータに限定されない。例えば、ゼンマイを用いてもよいし、手動で回転動力を生み出してもよい(この点は、本明細書および添付の図面の他の箇所に表れる「モータ」に関しても同様である)。
【0022】
図3は、駆動機構100が回転棒10を駆動する様子を表す遷移図である。図3に示された例では、中心軸lに対して斜交する平面上に摺動溝31が形成されている(図1の(b)のような摺動溝31が採用されている)。このため、突起部12a、12bが摺動溝31内を摺動するに伴って、分割体11a、11bは、中心軸lの方向における位置が変化する。より具体的には、突起部12a、12bが摺動溝31の中を一回転すると、分割体11a、11bは「中心軸lに沿って前進し、中心軸lに沿って後退する」という往復運動を行う。このとき、分割体11a、11bの往復運動は、位相が同期しておらず、交互になされる。つまり、分割体11aが前進すれば分割体11bが後退し、分割体11bが前進すれば分割体11aが後退するようになる。
【0023】
このように、駆動機構100においては、中心軸lを回転軸とする回転動力を、モータ20が外筒50に与えることによって、(i)回転棒10には回転運動を行わせ、(ii)分割体11a、11bには交互に往復運動を行わせることができる。
【0024】
なお、駆動機構100を適宜設計すれば、外筒50の回転方向を途中で切り替える回転によっても(例えば、時計回り→反時計回りの順に180°ずつ回転させる回転)、分割体11a、11bに交互に往復運動を行わせることができる。外筒50をこのように回転させると、(i)回転棒10には回転方向を切り替えながら回転運動を行わせ、(ii)分割体11a、11bには交互に往復運動を行わせることができる。
【0025】
〔実施形態2〕
以下、本発明の実施形態2について、図4~6を参照しながら説明する。
【0026】
実施形態2に係る駆動機構200は、
1.中心軸lに沿った方向に沿って分割された、複数の分割体11を備えている回転棒10(分割体11の各々には、追従移動部15が接続されている。図4の(a)を参照);
2.回転中心から縁部までの距離が一定ではない、複数の回転カム35(図4の(b)および(c)を参照);および、
3.複数の回転カム35を互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構36(図5を参照);
を備えている。
【0027】
さらに、追従移動部15は、回転カム35の縁部に当接しており、回転カム35の回転に追従して中心軸lに沿った方向に移動する。ここで、複数の回転カム35は位相が異なるように回転しているので、追従移動部15の各々の中心軸lに沿った方向への移動も、位相が異なっている。つまり、カム回転機構36が回転カム35を回転させることによって、追従移動部15に接続されている分割体11は、交互に往復運動を行う。このような駆動機構200の全体(すなわち、回転棒10、追従移動部15、回転カム35およびカム回転機構36)に、例えばモータ20から、回転動力を伝動すると、回転棒10の回転運動と、分割体11の交互の往復運動とを、同時に得ることができる。
【0028】
図4の(a)は、本実施形態に係る駆動機構200における、回転棒10の分解図である。回転棒10は、分割体11aおよび分割体11bから構成されている。分割体11a、11bにはそれぞれ、追従移動部15a、15bが接続されている。追従移動部15a、15bは、L字形状の棒体であり、共に分割体11a、11bの側面から後方に延びている。
【0029】
図4の(b)および(c)は、本実施形態に係る駆動機構200における、回転カム35の例を表す斜視図である。(b)は楕円柱状の回転カム35を、(c)は回転中心が偏心している円柱状の回転カム35を表している。いずれの回転カム35も、回転中心Oから縁部までの距離が一定ではない(L1とL2が異なる長さであることに注目されたい)。回転カム35は、中心軸lに対して垂直な軸を回転軸として回転可能になっている(図5を参照)。
【0030】
図5の(a)は、実施形態2に係る駆動機構200を表す組立図である。駆動機構200において、回転カム35a、35bはそれぞれ、その縁部において、分割体11a、11bの各々に設けられている追従移動部15a、15bと当接している。また、回転カム35a、35bは、カム回転機構36によって回転させることができる。
【0031】
カム回転機構36は、入力側軸36aと、駆動ベベルギア36bと、2つの従動ベベルギア36cと、を備えている。入力側軸36aは、中心軸lと平行に配され、回転駆動源38(モータなど)によって回転する。また、駆動ベベルギア36bは、入力側軸36aに設けられており、入力側軸36aを軸として回転する。また、駆動ベベルギア36bには、2つの従動ベベルギア36cが噛み合っている。従動ベベルギア36cの各々には回転カム35a、35bが設けられている。図5に示す例では、回転カム35a、35bは、図4の(b)に示されるような、楕円状である。また回転カム35a、35bは、位相を異ならせて配置されている。すなわち、回転カム35aは、楕円の短軸が中心軸lと平行になるように配されているのに対し、回転カム35bは、楕円の長軸が中心軸と平行になるように配されている。
【0032】
図5に例示したカム回転機構36の例は、駆動機構200の構造を簡潔なものとするため好ましい。しかし、回転カム35a、35bを互いに位相が異なるように回転させられる限り、カム回転機構36の構造は特に限定されない。なお、図5に示す駆動機構において、「回転カム35a、35bを互いに位相が異なるように回転させる」ためには、例えば、各従動ベベルギア36cに設ける回転カム35の方向および形状を適宜設定すればよい。
【0033】
なお、図5の(a)では、中心軸lを回転軸として駆動機構200全体(すなわち、回転棒10、追従移動部15、回転カム35およびカム回転機構36)を回転させる動力を、追従移動部15a、15bに伝動している。しかし、駆動機構200全体を回転させることができるならば、モータ20からの動力はどこに伝動されてもよい。
【0034】
また、図5の(b)のように、駆動機構200にも外筒50を組み合わせることができる。駆動機構200における外筒50は、追従移動部15が中心軸lに沿った方向に移動することをサポートするという機能を果たす。また、回転棒の内部に液体を流通させ、外筒50をも液体の流路とする場合には、縦溝51から外部へと漏出する液体を最小限に止める役割も果たす。
【0035】
図6は、駆動機構200が駆動する様子を表す遷移図である。(a)は、カム回転機構36によって分割体が交互に往復する様子を、(b)は、駆動機構200に対して、さらにモータ20による回転動力が伝動された様子を、それぞれ表している。なお、伝動される回転動力は、(i)一方向の回転でもよいし、(ii)時計回りと反時計回りとが切り替わる両方向の回転でもよい。
【0036】
ここで、従動ベベルギア36cは、駆動ベベルギア36bと噛み合い、駆動ベベルギア36bの回転を回転カム35a、35bの回転に変換する機能を有する。より詳細には、以下の機構によって回転カム35a、35bが回転する(図6の(a)を参照)。
【0037】
すなわち、回転駆動源38が入力側軸36aを回転させると、入力側軸36aに設けられている駆動ベベルギア36bが回転する。駆動ベベルギア36bの回転に伴って、駆動ベベルギア36bと噛み合っている従動ベベルギア36cは、入力側軸36aの延びる方向に垂直な軸を回転軸として回転する(このとき、2つの従動ベベルギア36cは、互いに逆方向に回転する)。そして、従動ベベルギア36cの各々の回転によって、回転カム35a、35bが回転する。このとき、回転カム35a、35bは、駆動ベベルギア36bの回転軸に対して垂直な軸を回転軸として回転する。
【0038】
回転カム35a、35bには、追従移動部15a、15bが当接している。ここで、回転カム35a、35bは、いずれも、回転中心から縁部までの距離が一様ではない。このため、追従移動部15a、15bと回転カム35a、35bとの当接位置が、中心軸lに沿った方向で前後に変化する。この当接位置の変化に応じて、分割体11a、11bは、中心軸lに沿った方向に往復運動する。
【0039】
さらに、回転カム35a、35bは楕円状であり、それぞれ位相を異ならせて配されており、さらに互いに回転方向が逆である。このため、分割体11aおよび分割体11bは往復移動するタイミングが同期せず、結果として、分割体11a、11bは、交互に往復運動する。
【0040】
なお、カム回転機構36による回転カム35a、35bの回転の位相差は、分割体11a、11bの往復運動の周期や、分割体11a、11bの交互の往復運動のタイミングなどに応じて、適宜設定することができる。また、回転カム35a、35bの形状および配置は、回転カム35a、35bの回転の位相差に応じて適宜設定することができる。
【0041】
〔実施形態3〕
実施形態1、2で説明した駆動機構100、200の応用例について説明する。図7は、本発明の実施形態3に係る穿孔装置300の要部を表すブロック図である。穿孔装置300は、駆動機構100または駆動機構200に加えて、モータ20および平行移動部40を備えている。平行移動部40は、往復運動する回転棒10を、中心軸lに沿った方向に移動させることができる。このとき、(i)回転棒10は、中心軸lを回転軸として回転しており、かつ、(ii)分割体11の各々は、中心軸lに沿った方向に交互に往復運動している。なお、平行移動部40としては、公知の機構(ラック・ピニオンなど)を採用することができる。
【0042】
回転棒10の回転運動と、分割体11の交互の往復運動とを組み合わせることによって、回転棒10を穿孔対象に突き刺す際に生じる抵抗を低減することができる。その結果、穿孔対象へのダメージを減少させたり、少ないエネルギーで穿孔したりすることができる。
【0043】
(穿孔装置の具体例)
図8の(a)のように、回転棒10を中空針とすれば、穿孔装置300を、穿刺装置(例えば注射器)として利用することができる。穿刺装置は、中空針を通して液体を採取または注入することができるので、採血、手術、薬物送達など、医療一般に用いることができる。
【0044】
このように中空針を動作させることにより、中空針を穿刺対象に穿刺する際の穿刺抵抗を低減することができる。これによって、例えば、穿刺に伴う痛みを軽減することができる。
【0045】
また、駆動機構100、200は、構造が単純であるために、小型化が容易であり、廉価で提供することができる。そのため、穿孔装置300は、穿刺装置としての応用に特に適している。
【0046】
その他にも図8の(b)のような中実針である回転棒10を用いれば、穿孔対象に孔を空けることができる。図8の(c)のような筒状である回転棒10を用いれば、穿孔対象に孔を空けると共に、中空部に当該穿孔対象を抜き取ることができる。つまり、図8の(c)のような回転棒10によれば、穿孔対象のサンプルを抜き出すことができる。より具体的に、この穿孔装置は、材料加工(穴あけ加工など)、サンプル採取、液体注入、ボーリングなどに利用することができる。
【0047】
〔駆動機構100および駆動機構200のそれぞれの利点〕
駆動機構100は、1つの回転動力源(モータなど)だけで、回転棒10の回転と、分割体11の交互の往復とを実現できる。また、部品の数も少数にとどめられる。駆動機構200は、既存の部品を組み合わせて作製できるので、動作の信頼性が高い。また、小型化にも適している。
【0048】
〔変形例1〕
上述の実施形態において、駆動機構100、200は、一方向の回転運動を時計回りおよび反時計回りを交互に繰り返す回転運動に機械的に変換する、機械的変換機構22をさらに備えていてもよい。機械的変換機構22は、一方向の回転駆動を入力することによって、反時計回り方向の回転と時計回り方向の回転とが交互に現れる回転駆動を出力する機構である。機械的変換機構22を備えていることによって、一方向の回転駆動から、時計回り方向および反時計回り方向の両方向の回転運動を機械的に取り出すことができる。その結果、回転棒10の回転運動は、時計回りの回転と反時計回りの回転とを交互に繰り返すものになる。このような構成とすれば、例えばモータに複雑な制御を施すことなく(単純な構造のモータを使用して)、回転棒10に時計回りの回転と反時計回りの回転とを交互に繰り返させることができる。
【0049】
機械的変換機構22は、公知の機構によって実装することができる。図9は、機械的変換機構22の構成例を示す図である。図9に示された機械的変換機構22は、欠歯ベベルギアによる差動歯車機構を応用した構成となっている。この機械的変換機構22は、欠歯ベベルギアG11、ベベルギアG12、G13、およびシャフトSから構成されている。欠歯ベベルギアG11は、モータMと接続されている。欠歯ベベルギアG11は、歯が部分的に欠けており、ベベルギアG12、G13のいずれか一方と噛み合うように構成されている。また、シャフトSは、回転棒10に回転運動を伝える部材であり、ベベルギアG12、G13が固定されている。ベベルギアG12が欠歯ベベルギアG11と噛み合うことにより、シャフトSは反時計回りに回転する。また、ベベルギアG13は、欠歯ベベルギアG11と噛み合うことにより、シャフトSは時計回りに回転する。
【0050】
図10は、図9に示す機械的変換機構22により、回転方向が切り替えられる様子を表す模式図である。欠歯ベベルギアG11は、歯が部分的に欠けている。そのため、欠歯ベベルギアG11は、回転中、ベベルギアG12およびベベルギアG13の一方のみと噛み合う。
【0051】
図10の(a)は、欠歯ベベルギアG11がベベルギアG12のみと噛み合った状態を示す。この状態では、シャフトSは、ベベルギアG12側から見て反時計回りに回転する。図10の(b)は、欠歯ベベルギアG11はベベルギアG13のみと噛み合った状態を示す。この状態では、シャフトSは、ベベルギアG12側から見て時計回りに回転する。なお、図10の(a)および(b)のいずれにおいても、欠歯ベベルギアG11の回転方向は同じである。
【0052】
〔変形例2〕
図11を参照しながら、分割体11の構成の変形例について説明する。上述した通り、複数の分割体11は、回転棒10を中心軸lに沿って分割したものである。上述の実施形態では、回転棒10を、中心軸lに沿って2等分した分割体11の例を示したが、それ以外の分割体11の例として、図11の(a)および(b)に示すものがある。
【0053】
図11の(a)は、分割体11aを分割体11bよりも小さくした例を示している(下パネルの断面図を参照すると、より明白である)。図11の(b)は、分割体11a、11b、11cの3つに、回転棒10を分割した例を示している(こちらも、下パネルの断面図を参照すると、より明白である)。
【0054】
図11から判るように、「回転棒10を中心軸lに沿って分割した」とは、「隣接する分割体11の境界面が、中心軸lと平行(または、実質的に平行)である」と換言することもできる。もちろん、分割体11に交互に往復運動を行わせることができる限りは、隣接する分割体11の境界面は、中心軸lと厳密には平行でなくてもよいし、境界面自体が平面状でなくてもよい。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
〔まとめ〕
本発明は、以下の構成を包含している。
【0057】
<1>
駆動機構100であって、
中心軸lに沿った方向に沿って分割された複数の分割体11を備えている回転棒10であって、上記分割体11の各々は独立に上記中心軸lに沿った方向に移動可能である、回転棒10と、
上記回転棒10を取り囲む環状の摺動溝31が形成された支持体A;Bと、
上記回転棒10と上記支持体A;Bとの間に配置されており、上記中心軸lに沿った複数の縦溝51が形成されている外筒50と、を備え、
上記複数の分割体11の各々は、当該分割体11の側面から突出した突起部12を有しており、
上記突起部12は、上記摺動溝31内および上記縦溝51内を摺動することができ、
上記突起部12を有する分割体11の各々は、当該突起部12が上記摺動溝31内を摺動することにより、上記中心軸lに沿った方向に移動し、
上記突起部12は、上記中心軸lを回転軸として上記外筒50が回転することにより、上記摺動溝31内を摺動する、駆動機構100。
【0058】
<2>
駆動機構200であって、
中心軸lに沿った方向に沿って分割された複数の分割体11を備えている回転棒10であって、上記分割体11の各々は独立に上記中心軸lに沿った方向に移動可能である、回転棒10と、
上記複数の分割体11の各々に接続されている、複数の追従移動部15と、
回転中心から縁部までの距離が一定ではない複数の回転カム35と、
上記複数の回転カム35を互いに位相が異なるように回転させるカム回転機構36と、を備え、
上記追従移動部15の各々は、上記回転カム35の縁部に当接しており、上記回転カム35の回転に追従して上記中心軸lに沿った方向に移動し、
上記回転棒10、上記追従移動部15、上記回転カム35および上記カム回転機構36は、上記中心軸lを回転軸として回転可能に構成されている、駆動機構200。
【0059】
<3>
上記カム回転機構36は、
上記中心軸lと平行に配され、回転駆動源38によって回転する入力側軸36aと、
上記入力側軸36aに設けられた駆動ベベルギア36bと、
上記駆動ベベルギア36bと噛み合い、上記駆動ベベルギア36bの回転を上記複数の回転カム35の回転動作に変換する、複数の従動ベベルギア36cと、
を備えており、
上記従動ベベルギア36cの各々には、上記回転カム35が設けられている、<2>に記載の駆動機構200。
【0060】
<4>
一方向の回転運動を、時計回りおよび反時計回りを交互に繰り返す回転運動に機械的に変換する、機械的変換機構22をさらに備えている、<1>~<3>のいずれか1つに記載の駆動機構100;200。
【0061】
<5>
<1>~<4>のいずれか1つに記載の駆動機構100;200と、
上記分割体11が往復運動している状態の上記回転棒10を、上記中心軸lに沿った方向に移動させる平行移動部40と、
を備えている、穿孔装置300。
【符号の説明】
【0062】
10 :回転棒
11 :分割体
12 :突起部
15 :追従移動部
22 :機械的変換機構
31 :摺動溝
35 :回転カム
36 :カム回転機構
36a:入力側軸
36b:駆動ベベルギア
36c:従動ベベルギア
38 :回転駆動源
40 :平行移動部
100、200 :駆動機構
300 :穿孔装置
A、B :支持体
l :回転棒の中心軸(中心軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11