(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アーチ形セグメントの組立装置および組立方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2020060631
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 英治
(72)【発明者】
【氏名】北村 秀之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大作
(72)【発明者】
【氏名】赤木 英治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】三木 章生
(72)【発明者】
【氏名】新原 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】村上 豪
(72)【発明者】
【氏名】内山 信
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広幸
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 善英
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-060999(JP,A)
【文献】特開2014-211054(JP,A)
【文献】特開2002-054398(JP,A)
【文献】実公昭46-020589(JP,Y1)
【文献】特開平03-296000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ形状の覆工壁を構成するセグメントを構築する際に用いるアーチ形セグメントの組立装置であって、
セグメントピースをエレクター装置で把持した状態で所定位置にガイドして移動させるため、アーチ形状のセグメントの内周面の曲率形状に沿って延在する延在面に、周方向に相互間隔をおいて複数の回転コロ受けを設けて、その回転コロ受けによってセグメントピースの下面を受けて、セグメントピースの重量を受ける構造としたガイド装置を備え、
前記回転コロ受けは
フリーボールよりなる、アーチ形セグメントの組立装置。
【請求項2】
前記エレクター装置を前記ガイド装置の周方向に移動走行させるためのアーチ形状の前後一対の走行ビームの前後からエレクター装置の走行域を挟んで複数の逆L形のガイド支柱を前後に向き合う形で設け、前後のガイド支柱には各々の上端にセグメントの内周面曲率に沿った形状のガイドビームを設け、そのガイドビームの外周面に周方向において前記回転コロ受けを配列し、前記エレクター装置でセグメントピースを把持した状態で、回転コロ受けによりセグメントピースの重量を支持できるようにした請求項1に記載のアーチ形セグメントの組立装置。
【請求項3】
前後一対の走行ビームの周方向の2箇所に設置され、アーチ形セグメントの組立装置の中央部に供給されるセグメントピースをその下面両端部の前後で支持できる間隔で配置された前後各一対のリフト装置を有し、
前後の両リフト装置は、それぞれガイド筒と、そのガイド筒に支持され、油圧シリンダによって昇降される昇降ロッドとを有し、前後の昇降ロッドを連結材によって相互に連結し、昇降ロッドの上昇によりセグメントピースをエレクター装置による把持位置まで上昇させる請求項1に記載のアーチ形セグメントの組立装置。
【請求項4】
前記ガイド装置の回転コロ受けは、前側ガイド支柱の先端のガイドビーム上においてその周方向に沿って1列以上を配列し、後側ガイド支柱先端のガイドビーム上においてその周方向に2列以上を配列するとともに、後側ガイド支柱の上端に1列以上を配列し、前側ガイドビーム上の回転コロ受けと後側ガイドビーム上の回転コロ受けとをエレクター装置の走行域を前後に挟んで配置した請求項1または2に記載のアーチ形セグメントの組立装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアーチ形セグメントの組立装置を用いて行うアーチ形セグメントの組立方法であって、
セグメントピースをエレクター装置で把持した状態で所定位置にガイドして移動させ、前記複数の回転コロ受けによってセグメントピースの下面を受けて、セグメントピースを組み立てることを特徴とするアーチ形セグメントの組立方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアーチ形セグメントの組立装置において、
アーチ形セグメントの構築に際し、後側ガイド支柱の後列側の回転コロ受けを既設セグメント位置下になるように配置し、本組立装置の下部に設けたアウトリガー装置で本組立装置全体を上昇させて、後列側の回転コロ受けを既設セグメントの下部に押し当てて、位置決めがされるアーチ形セグメントの組立方法。
【請求項7】
請求項3に記載のアーチ形セグメントの組立装置のリフト装置において、
連結材によって連結された前後一対の昇降ロッドは同調して同ストロークで昇降され、左右の各一対の昇降ロッドは異なるストロークで昇降され、昇降ロッドの上端に積載されたセグメントピースをエレクター装置によるセグメント把持位置まで昇降させ把持姿勢の傾きを左右で調整してエレクター装置に供給するアーチ形セグメントの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、並設された2本の既設トンネル覆工間において拡幅掘削された地下空間において、その地下空間の天井部の地山内面に対してアーチ形状に覆工するセグメント(以下、アーチ形セグメントという)を構築する技術に関するものである。特に、本発明においては、アーチ形セグメントを構築する際に、そのアーチ形セグメントを設置場所にガイドするためのアーチ形セグメントの組立装置及び組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下に道路トンネルを構築する場合、地上の道路へ分岐あるいは地上の道路から合流するための地上からのランプトンネルと地下の本線トンネルとを接合する必要がある。これらの接合領域を地下で施工する工法の一つとして両トンネルを近接して並設に施工したうえで、両トンネルの覆工間の地山をアーチ形状の地山内面とした地下空間となるように拡幅掘削する工法が採用されている。本発明はこの拡幅掘削断面の上半部における天井部に覆工されるアーチ形セグメントを構築する組立装置および組立方法に関するものである。
【0003】
先行技術として特許文献1が開示されている。この技術のアーチ形状セグメントは鋼製セグメント(鋼板による箱型構造)を前提に案出されたものである。しかし、昨今では拡幅断面が大断面化し、また、大深度での施工の条件の工事に対応するために覆工構造は重構造セグメント(例として鋼殻にコンクリートを充填したセグメント)が採用され、セグメントのピース当たり重量が従来の数倍と拡大している。これらの条件を鑑みた場合、先行技術の方法および構造では過剰負荷となり改良が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アーチ形セグメントの左右方向の端部の位置においては、拡幅掘削後の地山に設置された支保工と既設トンネル覆工との間の間隔が狭くなるため、端部のセグメントピースは左右方向の中央側から挿入する形で組み付ける必要がある。
【0006】
特許文献1においては、端部セグメントピースを組付ける際にエレクター装置の左右に張出したアーム先端の把持部にセグメントピースの中央側の端部近くを片持ち支持し、端部の所定位置までアームを旋回走行して組付けを行っていた。この方法では大重量化したセグメントピースの場合、エレクター装置への片持ちによるモーメント荷重の負担が大きくなり、工法実現のためには装置が大規模となり、限られた広さのスペース(地下空間)の中では、採用が困難となる。
【0007】
特許文献1において、エレクター装置を旋回走行させるガイドレールの曲率と新規組立セグメントの組立基準となる既設セグメントの曲率とのセンタリングは、ガイドレールが搭載されている上部支持台と下部台車フレームとの間のジャッキで調整操作していた。また、既設セグメントと新設セグメントとの内面の面一合わせおよび互いのボルト穴粗位置合わせは、エレクター装置によりセグメントピースの把持姿勢を調整操作しており、これらの調整に組立時間が費やされていた。
【0008】
この方法では、大型化、大重量化したセグメントでこれらの調整を行うにはさらに長い調整時間が費やされることが懸念される。
特許文献1において、セグメント組立装置に組付けセグメントピースを積載把持する際は、同組立装置の前方に配置されたリフト用台車でセグメントピースを吊り上げ、その下部まで同組立装置を移動させて、セグメントピースを受け渡し把持する。そして、その後に同組立装置はセグメントピースを把持した状態でセグメント組立位置まで再移動していた。複数あるセグメントピース毎にこの作業を繰り返す必要あり、積載把持作業に時間を要していた。また、リフト台車はウィンチとシーブによりワイヤーに玉掛けして吊り上げていたため、セグメントが大重量化した場合におけるリフト台車を含む吊り上げ装置の大規模化と作業時間が課題となる。
【0009】
本発明の目的は、地下拡幅断面の大型化および大深度化に伴うアーチ形セグメントの大重量化に対応するためになされたものである。そして、より具体的な目的は、アーチ形セグメントを組付けるエレクター装置に対する荷重負担を軽減するとともに、組付け時の姿勢調整操作を含む組立作業時間を短縮したうえで組立精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明においては、アーチ形状の覆工壁を構成するセグメントを構築する際に用いるアーチ形セグメントの組立装置であって、セグメントピースをエレクター装置で把持した状態で所定位置にガイドして移動させるため、アーチ形状のセグメントの内周面の曲率形状に沿って延在する延在面に、周方向に相互間隔をおいて複数の回転コロ受けを設けて、その回転コロ受けによってセグメントピースの下面を受けて、セグメントピースの重量を受ける構造としたガイド装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、回転コロ受けによりセグメントピースの下面でその重量を受けて、エレクター装置で把持してセグメントを組み付け位置まで移動できる。従って、アーチ形セグメントの左右両端部における端部セグメントピースを組付ける際のセグメントピースの一端を把持する極端な片持ち荷重状態での移動を省略でき、エレクター装置への荷重負担を軽減することができる。
【0012】
また、本発明の組立装置の作動において、セグメント組立前に組立装置を組立装置のアウトリガー装置などによって上昇させ、既設セグメントの内周面にガイド装置の回転コロ受けを押し当てることができる。このようにすれば、回転コロ受けの転動により組立装置の設置位置は既設セグメントの内周曲率に合わせてセンタリングされる。これによりガイド装置は回転コロ受けが既設セグメント内側に沿ったガイドとなり、ガイド装置上を搬送させる組付け前のセグメントピースの径方向の位置が既設セグメントに倣って決まる。従って、既設セグメントと新設セグメントの内面の面一合わせおよび互いのボルト穴粗位置合わせするための把持姿勢を調整操作する時間が短縮され、また、セグメント組立精度が向上する。特に、アーチ形セグメントの両端部のセグメントピースの組付けの際は狭隘の組立スペースで、しかも内側セグメントピースと連結状態のセグメントの把持重量が大きいため、これらの効果は大きい。
【0013】
前記にあるように、セグメント組立前にガイド装置を上昇させ、既設セグメントの内周面にガイド装置の回転コロ受けを押し当てると回転コロ受けの転動により、回転コロ受けの全体が既設セグメントに接触して既設セグメントの内周面に沿う。このため、セグメント組立時に発生する各種反力をアウトリガー装置などとともに支持できる形態となり、セグメント組立時のアーチ形セグメントの組立装置全体の姿勢を固定支持でき、安定した組立作業が可能となる。
【0014】
前記ガイド装置を使用してアーチ形セグメントを組付ける際にセグメントピースのエレクター装置での把持位置であるガイド装置上までセグメントピースをリフトアップする必要がある。前記発明を前提とした構成においては、アーチ形セグメントの組立装置の幅方向のほぼ中央位置でガイド装置を左右に分断したスペースを設け、セグメントピース把持位置までリフトアップするリフト装置を設けるとよい。このようにすれば、組立装置をセグメント組立場所の定位置に設置した状態で繰り返しセグメントピースを重機でリフト装置に供給できるため、積載把持作業に要する時間の短縮化が図られ、リフト台車のようなセグメントピース吊り上げ用の装置が不要となる。また、セグメントピースと吊り上げ装置との玉掛けおよびその解除作業も不要となり作業の効率向上が図れる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明においては、エレクター装置への荷重負担を軽減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】拡幅掘削施工部におけるアーチ形覆工壁を示す全体正断面図。
【
図2】アーチ形セグメントの組立装置の施工前の状態における掘削施工部における上部空間部を示す正断面図。
【
図3】アーチ形セグメントの組立装置の施工前の状態における掘削施工部における上部空間部を示す端部拡大正断面図。
【
図4】アウトリガー装置の作動状態におけるアーチ形セグメントの組立装置の側断面図。
【
図7】エレクター装置とセグメントとの関係を示すガイド装置の側断面図。
【
図9】第1セグメントピース(端部)の施工前におけるアウトリガー装置の作動状態を示す正断面図。
【
図10】第1セグメントピースをリフト装置に載置した状態を示す正断面図。
【
図11】第1セグメントピースをエレクター装置による把持位置までリフトした状態を示す正断面図。
【
図12】第1セグメントピースをガイド装置に仮置きした状態を示す正断面図。
【
図13】ガイド装置上で第2セグメントピースを第1セグメントに連結した状態を示す正断面図。
【
図14】第1セグメントピースおよび第2セグメントピースを所定位置(端部)に設置した状態を示す正断面図。
【
図15】第3セグメントピースをリフト装置に載置した状態を示す正断面図。
【
図16】第3セグメントピースをエレクター装置による把持位置までリフトした状態を示す正断面図。
【
図17】第3セグメントピースをガイド装置によって仮置きした状態を示す正断面図。
【
図18】ガイド装置上で第4セグメントピースを第3セグメントピースに連結した状態を示す正断面図。
【
図19】第3セグメントピースおよび第4セグメントピースを所定位置(端部)に設置した状態を示す正断面図。
【
図20】第5セグメントピースをエレクター装置に把持した状態を示す正断面図。
【
図21】第6セグメントピース(Kセグメントピース)をエレクター装置による把持位置までリフトアップした状態を示す正断面図。
【
図22】第6セグメントピースをエレクター装置に把持した挿入前の状態を示す側断面図。
【
図23】第6セグメントピースの挿入状態を示す簡略平面図。
【
図24】第6セグメントピースの挿入状態を示す正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は地中の拡幅掘削施工部10全体を示すものである。この拡幅掘削施工部10は
図1の紙面と直交する方向に延長される。拡幅掘削施工部10には相互間隔をおくとともに、拡幅掘削施工部10の延長方向に延びる2本の円筒状の既設トンネル覆工11が包含されている。既設トンネル覆工11の用途は道路などのトンネルである。
【0018】
図1に示すように、両トンネル覆工11間の領域の拡幅掘削施工部10は上部拡幅掘削部15と下部拡幅掘削部16に分かれ、中間部には未掘削部14を残す。未掘削部14の上面は上部拡幅掘削部15の覆工作業のベースとなる。本発明の実施形態の対象となる上部拡幅掘削部15の天井部はアーチ形状となっている。後述する本実施形態のアーチ形セグメントの組立装置12は、上部拡幅掘削部15部において用いられるものである。上部拡幅掘削部15の掘削後に天井部の内側面には一次支保としてアーチ形の支保工17が設けられる。
【0019】
図1に示すように、上部拡幅掘削部15の天井部における支保工17の内側面はアーチ形セグメント23によって覆われる。このアーチ形セグメント23は、第1~第6セグメントピース231~236よりなる。第1~第6セグメントピース231~236は、鋼殻21と、その鋼殻21内に充填されたコンクリート22とによって構成されている。そして、アーチ形セグメント23は一列毎に組み付けて構築されて、トンネルの延長方向に並設される。本実施形態においては、一列のアーチ形セグメント23が第1~第6セグメントピース231~236により6分割に構成されているが、その分割数は工事により変わるのでこの限りではない。
【0020】
図2以降の図面に示すアーチ形セグメントの組立装置12の基本的な構造および機能の概要を説明する。アーチ形セグメントの組立装置12は前記の一列のアーチ形セグメント23が分割された第1~第6セグメントピース231~236を1ピース毎にエレクター装置71を用いて両端部から順次組み付けるものである。エレクター装置71は拡幅掘削施工部10の延長方向に並設された一対のアーチ状をした走行ビーム31に沿ってエレクター装置71に設けた台車駆動部により移動走行する。本発明の実施形態の主要要素であるガイド装置24は走行ビーム31より支持されている。アーチ形セグメントの組立装置12の中央部はガイド装置24が左右に分断状に配置されている。それらの間隔スペースにセグメントピース231~236を供給するためのリフト装置61を設け、その位置でセグメントピース231~236はエレクター装置71に供給されて、把持される。
【0021】
図2~
図4に示すように、走行ビーム31の両端にアウトリガー装置35を設け、組立作業時にアーチ形セグメントの組立装置12を固定する。アーチ形セグメント23の一列分の組立が終了すれば、アーチ形セグメントの組立装置12を上部拡幅掘削部15の延長方向の前方にアーチ形セグメント23の一列の幅分の距離を移設して次の列の組立を行い、この繰り返しで拡幅掘削施工部10の延長方向に進行していく。そのため、アーチ形セグメントの組立装置12はレール34上において走行用の車輪33を支持脚32下部に設け、全体的には門型台車構造としている。
【0022】
そこで、以下に、アーチ形セグメントの組立装置12に備えられ、アーチ形セグメント23を構築できるようにしたセグメントガイド装置24および関連構成について説明する。このセグメントガイド装置24および関連構成は、第1~第6セグメントピース231~236組立の前行程で構築された既設アーチ形セグメント20のアーチ内周面20bに沿って第1~第6セグメントピース231~236ガイドすることにより、アーチ形セグメント23の構築に使用される。
【0023】
図2~
図6に示すように、セグメントガイド装置24は、I形状の断面をしたアーチ状の一対の走行ビーム31から支持されている。走行ビーム31上においてエレクター装置71が移動する。これらの走行ビーム31は構築されるアーチ形セグメント23に対して同心円状に沿う内周面曲率のカーブを有している。両走行ビーム31の左右方向の中央部には4本の支持脚32が設置されており、支持脚32の下端には車輪33が設けられている。この車輪33により、アーチ形セグメントの組立装置12は未掘削部14の上面に拡幅掘削施工部10の延長方向に延びるように敷設されたレール34上を走行可能である。
【0024】
図2~
図6に示すように、両走行ビーム31の両端部側面の前後の4箇所に張り出されたアーム36にアウトリガー装置35が固定されている。アウトリガー装置35は下方に伸縮作動する内筒部39と、内筒部39の摺動を外側でガイドする外筒部38とで構成され、外筒部38がアーム36の先端に設置されている。内筒部39には内筒部39を伸縮作動させるための油圧シリンダ37を内蔵し、この油圧シリンダ37は、内筒部39と外筒部38との間に結合されている。内筒部39の下端には球面自在継手40を介してアウトリガーシュー41が揺動可能に支持されており、接地面となる既設トンネル覆工11に対する設置角度に対応できる。また、内筒部39と球面自在継手40との間は幅方向(
図6の左右方向)に摺動可能となる構造としており、ガイド装置24によるアーチ形セグメントの組立装置12のセンタリング時にはアウトリガーシュー41の位置とは関係なく前記幅方向に位置調整が可能となる。
【0025】
図2,
図3および
図5に示すように、各アーム36と支持脚32との間には筋交い状のステー材42が介在されている。各アーム36とガイド装置24を構成するガイドビーム53,54の周方向の下降側端部の間に架設された間隔保持材44との間には筋交い状のステー材43が介在されている。
【0026】
そして、
図4および
図9に示すように、油圧シリンダ37と結合された内筒部39が下方に突出されることにより、アウトリガーシュー41は接地面としての既設トンネル覆工11の外周上面に押し当て状態において設置される。その作動により、アーチ形セグメントの組立装置12全体が上方へ押し上げられ、ガイド装置24が既設アーチ形セグメント20のアーチ内周面20bに押し当てられる。
【0027】
図3,
図6および
図7に示すように、走行ビーム31の周方向の中央部を除く両側部の前後両面には、それぞれ周方向に間隔をおいて複数本のガイド支柱51が梁材52を設けて両者51,52で逆L形とし、前後のガイド支柱51が梁材52を内側に向き合う形で立設されている。両ガイド支柱51には梁材52を介してそれぞれアーチ内周面20bにほぼ沿う曲率の円弧状をなすガイドビーム53,54が両走行ビーム31の上方に位置するように設置されている。従って、ガイドビーム53,54の上面が、アーチ内周面20bに沿って延在する延在面になる。ここで、
図4に示すように、走行ビーム31前側のガイド支柱51で支持されたガイド装置24を前側ガイド装置241(
図4の左側)とし、走行ビーム後側のガイド支柱51で支持されたガイド装置24を後側ガイド装置242(
図4の右側)とする。
【0028】
図4および
図6に示すように、走行ビーム31の両側部の前後両面におけるガイド支柱51の上端、ガイドビーム53,54の上面にはそれぞれリテーナ55により保持されたフリーボールよりなる回転コロ受け56が全方向に回転可能に支持されている。従って、回転コロ受け56は走行ビーム31の外周面に位置している。そして、各回転コロ受け56の設置外周半径はアーチ内周面20bに対して同じ曲率になっている。前側ガイド装置241はガイドビーム53の周方向に1列の回転コロ受け56を配列する。後側ガイド装置242はガイドビーム54の周方向に2列と各ガイド支柱51の上端に1列の計3列の回転コロ受け56を配列する。なお、回転コロ受け56の各列数は最小列数であり、与えられる負荷が増える場合は、この限りではない。
【0029】
そして、
図4に示すように、回転コロ受け56の全4列のうち後側ガイド装置242の後列2列が既設アーチ形セグメント20位置の下になるようにアーチ形セグメントの組立装置12を設置する。この状態でアウトリガー装置35によってアーチ形セグメントの組立装置12全体が押し上げられることにより、後列2列の回転コロ受け56に既設アーチ形セグメント20の内側が押し当てられ、アーチ形セグメントの組立装置12全体の固定とガイド装置24の位置決めがなされる。残りの前側ガイド装置241の1列と後側ガイド装置242の前列1列の回転コロ受け56はエレクター装置71で把持して移動する各セグメントピース231~236のガイド機能を果たす。
【0030】
図3,
図6および
図11に示すように、ガイドビーム53,54の左右端部付近には端部ピース固定溝57が形成されており、この端部ピース固定溝57には角状の端部ピース固定材58が着脱可能に装着される。端部ピース固定材58は、端部ピース固定溝57に装着された状態で回転コロ受け56の配列曲面から上方に突出する。
【0031】
図3および
図7に示すように、各セグメントピース231~236をアーチ形セグメントの組立装置12に供給するために、中央部でガイド装置24が左右に分断されて確保されたスペースにおいて、両走行ビーム31の前後両面にリフト装置61が4基支持されている。このリフト装置61は、走行ビーム31に設置したガイド筒62と、そのガイド筒62に昇降可能に支持された昇降ロッド63とを有している。昇降ロッド63は油圧シリンダ64によって昇降される。走行ビーム31を挟んだ左右各一対の昇降ロッド63の下端は前後で連結材65によって相互に連結されており、このため、走行ビーム31を挟んだ昇降ロッド63は同調して同ストロークで昇降される。ただし、左右においては一対毎に異なるストロークで昇降できる。
【0032】
図7および
図8に示すように、左右の前後一対の昇降ロッド63の上端には支持材66が互いの方向に向かって突出して互いに対向するように設置されており、この支持材66の内側側面に円形断面の受け材67が設置されている。受け材67の上端は支持材66の上面より高いところに位置している。後方側の受け材67の上面には位置決め材68が設置されている。支持材66の先端には、支持材66の上面より低いところに位置し、かつ、受け材67と直角をなすとともに、走行ビーム31の両端部を指向する方向に突出する落下防止材69が設置されており、その落下防止材69の先端にはストッパー70が設置されている。
【0033】
そして、例えば
図8に2点鎖線で示すように、各セグメントピース231~236が位置決め材68によって位置決めされた状態で受け材67上に載置される。そして、この載置状態で油圧シリンダ64によって受け材67が下降位置から上昇されることにより、載置状態のセグメントピース231~236がエレクター装置71の把持位置まで上昇される。このとき、セグメントピース231~236の周方向への過度な移動が落下防止材69に設けられたストッパー70によって規制されて、セグメントピース231~236の落下が防止される。
【0034】
図2および
図4に示すように、走行ビーム31には、セグメントピース231~236をアーチ内周面20bに沿って走行ビーム31の周方向に沿って移動させるためのエレクター装置71が搭載されている。エレクター装置71はシールド掘進機などの既存技術の構成を踏襲しているため詳細な説明は省略するが、
図7において概要を示すように、基本的な構成としては以下のとおりである。すなわち、走行ビーム31に沿って走行移動するための走行ビーム31のレール上を転動する走行車輪76と走行ビーム31のラックとエレクター装置71のピニオンとの噛合を介する走行駆動部73を搭載した走行台車部74を有する。また、セグメントピース231~236を把持する把持装置72およびセグメントピース231~236の把持装置を支持してセグメントピース231~236を外周側に押し上げる昇降装置75を有する。
【0035】
次に、前記エレクター装置71およびガイド装置24、リフト装置61を使用してアーチ形セグメント23の一列を構築する方法の一例を説明する。
図2は、アーチ形セグメントの組立装置12を拡幅掘削施工部10の延長方向に移動させる際のアウトリガー装置35のアウトリガーシュー41が上方側に縮作動された状態を示し、車輪33がレール34上に載置されている。その状態においては、ガイド装置24が下方側に位置して、既設アーチ形セグメント20と離隔した状態となっている。そして、この状態において、アーチ形セグメントの組立装置12は図示しない走行駆動装置により、アーチ形セグメント23の組立位置までレール34上に沿って走行される。
【0036】
そして、
図9に示すように、その組立位置において、アウトリガー装置35を下方に伸長させ、アウトリガーシュー41を下降させれば、アウトリガーシュー41が既設トンネル覆工11の上面に押し当て状態で設置される。その作動によりアーチ形セグメントの組立装置12が上昇されて、後側ガイド装置242の後列2列の回転コロ受け56が既設アーチ形セグメント20に押し当てられ、アーチ形セグメントの組立装置12の組立時の状態となる。前側ガイド装置241の1列と後側ガイド装置242の前列1列の回転コロ受け56はアーチ内周面20bの位置と同位置となる。このとき、リフト装置61の受け材67は下降位置とする。
【0037】
この状態で、
図10に示すように、未掘削部14上において第1セグメントピース231がレール34の延長方向の後方よりセグメント搬送台車(図示しない)でアーチ形セグメントの組立装置12の下部を通過される。そして、第1セグメントピース231はその前方の持ち上げに支障がない位置まで搬送される。搬送された位置で第1セグメントピース231はフォークリフトなどの持ち上げ手段(図示しない)により持ち上げられる。次いで、その状態でその位置から第1セグメントピース231はレール34の延長方向に後退移動して、第1セグメントピース231の下面両端部を、
図8および
図10に示すように、リフト装置61の下降位置で受け材67上に載置させる。そして、第1セグメントピース231をアーチ形セグメントの23の覆工位置までリフト装置61で上昇させる。
【0038】
この状態で、
図11に示すように、第1セグメントピース231をエレクター装置71での把持姿勢にするために左右のリフト装置61の各ストロークを調整して第1セグメントピース231の傾きを調整する。その後、エレクター装置71が走行ビーム31上を移動して、第1セグメントピース231の下方に位置する。そして、この状態で、エレクター装置71の昇降装置75が上方へ伸長されて、その中央部の把持装置72が第1セグメントピース231の内面中央部の下向きの把持穴部25に挿入されて、第1セグメントピース231に連結し把持される。そして、リフト装置61の受け材67を下降し、第1セグメントピース231がエレクター装置71上に受け渡される。
【0039】
このとき、
図12に示すように、ガイド装置24のガイドビーム53の端部ピース固定溝57には、端部ピース固定材58を装着する。なお、端部ピース固定材58の端部ピース固定溝57に対する装着は、これより以前のタイミングで行われてもよい。そして、エレクター装置71が走行ビーム31の一方の下降端部側へ移動されて、エレクター装置71に把持された第1セグメントピース231がともに移動され、第1セグメントピース231の端部側が端部ピース固定材58によって制止されて仮置きされる位置に至る。この状態で、エレクター装置71の把持装置72と第1セグメントピース231の把持穴部25との連結を解除し、昇降装置75を下方へ縮作動して、把持装置72を第1セグメントピース231の把持穴部25から離脱させる。そして、エレクター装置71が単独で
図11に示す走行ビーム31の中央位置に待避移動する。
【0040】
次いで、前記第1セグメントピース231と同様にして、リフト装置61の受け材67上に次段の第2セグメントピース232が載置され、リフト装置61により第2セグメントピース232をアーチ形セグメント23の覆工位置まで上昇させる。そして、
図13に示すように、前記と同様にして、エレクター装置71の昇降装置75を上方へ伸長させて、第2セグメントピース232の把持穴部25にエレクター装置71の把持装置72を連結し把持させ、リフト装置61の受け材67が下降されて、第2セグメントピース232がエレクター装置71に受け渡される。
【0041】
そして、
図13に示すように、エレクター装置71の移動により、第2セグメントピース232がガイド装置24上に仮置きされた第1セグメントピース231と接する位置まで移動される。次いで、第2セグメントピース232の端部が第1セグメントピース231の端部に対してボルト(図示しない)により締結される。
【0042】
その後、
図14に示すように、内側の第2セグメントピース232をその把持穴部25で把持した状態で、第1セグメントピース231を保持していた端部ピース固定材58が端部ピース固定溝57から抜き取られる。そして、エレクター装置71の移動により、回転コロ受け56によって案内されながら、第1セグメントピース231および第2セグメントピース232が一体に下降端部側に移動される。これによって、第1セグメントピース231の端部が既設トンネル覆工11の接続部に、両セグメントピース231,232の後面側が前列の既設アーチ形セグメント20のピースにそれぞれボルトによって締結されて、端部の第1セグメントピース231および第2セグメントピース232が組付けられる。
【0043】
次いで、
図15に示すように、エレクター装置71が他方の下降端部側に退避移動される。この状態で、
図16に示すように、第3セグメントピース233がリフト装置61上に載置されて、アーチ形セグメント23の覆工位置までリフト装置61で上昇させる。そして、エレクター装置71が第3セグメントピース233の把持位置に移動された後に、エレクター装置71の昇降装置75を伸長させ、このため、第3セグメントピース233が把持装置72と連結されて把持される。この状態で、
図17に示すように、エレクター装置71の他方の下降端部側への移動により、第3セグメントピース233が反対側の端部ピース固定材58の位置まで移動され、仮置きされる。この端部ピース固定材58の端部ピース固定溝57への装着は、前記と同様に、第3セグメントピース233の移動開始前であれば、いつでもよい。
【0044】
次いで、
図18に示すように、第4セグメントピース234がリフト装置61上に支持されて、アーチ形セグメント23の覆工位置までリフト装置61で上昇される。そして、第4セグメントピース234は、前述した第2セグメントピース232の取り扱いと同様に、エレクター装置71によって、ガイド装置24上に仮置きされた第3セグメントピース233の位置まで移動されて、その第3セグメントピース233にボルト締結される。
【0045】
そして、
図19に示すように、第4セグメントピース234をその把持穴部25で把持した状態で、端部ピース固定材58が端部ピース固定溝57から抜き取られる。次いで、第3セグメントピース233および第4セグメントピース234が回転コロ受け56によって案内されながら、第4セグメントピース234はエレクター装置71によって移動される。第3セグメントピース233の端部は他方の下降端部側において既設トンネル覆工11に、両セグメントピース233,234の後面側は前列の既設アーチ形セグメント20のピースにそれぞれボルトによって締結されて、端部の第3セグメントピース233および第4セグメントピース234が組付けられる。
【0046】
次いで、
図20に示すように、第5セグメントピース235がリフト装置61によってアーチ形セグメント23の覆工位置まで上昇されて、エレクター装置71に把持される。そして、第5セグメントピース235はエレクター装置71の移動によって第2セグメントピース232側に移動されるが、この場合、第5セグメントピース235は両ガイドビーム53,54間における走行ビーム31の中央部に位置している。従って、第5セグメントピース235は、ガイドビーム53,54の回転コロ受け56に案内されることなく、エレクター装置71のみによって所定位置に移動された後に、端部側は第2セグメントピース232に、後面側は前列の既設アーチ形セグメント20にボルト締結される。この後、第5セグメントピース235および第4セグメントピース234は、未掘削部14上のアーチ形セグメントの組立装置12の前方に設置された形状保持装置(図示しない)によって下方から支持され、ガイド装置24離脱後のセグメントピース231~235の変位を防止する。
【0047】
次いで、
図21および
図22に示すように、アウトリガー装置35の油圧シリンダ37が縮作動されて、アーチ形セグメントの組立装置12が下降して、車輪33がレール34上に載置され、ガイド装置24はセグメントピース231~235から下方に離隔する。また、アウトリガー装置35の内筒部39およびアウトリガーシュー41は既設トンネル覆工11から離隔し上昇される。そして、この状態で、アーチ形セグメントの組立装置12が図示しない駆動手段によってアーチ形セグメント23の幅寸法分だけ前方に移動される。さらに、この状態で、リフト装置61上に第6セグメントピース236が載置された後に、エレクター装置71上に受け渡される。このため、第6セグメントピース236は第5セグメントピース235の前方に位置する。その後、エレクター装置71の移動により、第6セグメントピース236が第5セグメントピース235と第3セグメントピース233との間の間隙の位置に対向する。
【0048】
ここで、
図23に示すように、第6セグメントピース236は両側面が後方へ向かって収束するテーパー面28としたテーパーキー状になっている。両側の第3セグメントピース233および第5セグメントピース235の対向側面は前方側に向かって同じ角度で拡開するテーパー面27になっている。
【0049】
そのため、第6セグメントピース236の組付けに際しては、エレクター装置71上に第6セグメントピース236が把持された状態で、アーチ形セグメントの組立装置12が前方から後方へ復帰移動される。この後、エレクター装置71の昇降装置75に設けられた把持装置72の前後方向摺動装置(図示しない)により、
図23および
図24に示すように、第6セグメントピース236が第3セグメントピース233と第5セグメントピース235との間に挿入される。この後、第6セグメントピース236の両端部を第3セグメントピース233および第5セグメントピース235に、後面側は前列の既設アーチ形セグメント20と接触させて、ボルト29によって締結すれば、アーチ形セグメント23の一列分が構築される。
【0050】
このようにして、アーチ形セグメントの組立装置12を前方側へ配列ピッチずつ移動させながらアーチ形セグメント23は順次構築される。
本実施形態においては、以下の効果がある。
【0051】
(1)アーチ形セグメント23の左右方向の両端部は支保工17と既設トンネル覆工11との間の間隔が狭くなるため、端部に位置するセグメントピース231,233を中央側から挿入する形で組み付ける必要がある。それを可能とするために第1・第2セグメントピース231,232および第3・第4セグメントピース233,234は、各2個のセグメントピースをガイド装置24上で連結する。そして、内側のセグメントピース232,234の把持穴部25をエレクター装置71で把持して回転コロ受け56によって下面でその重量を受けてガイドして、アーチ内周面20bに沿って前記の両端部側に向かって移動させる。従って、従来構成とは異なり、第1~第4セグメントピース231~234をそれらの一端を把持して片持ち状態において両端部に差し込むように移動させる必要はない。このため、第1~第4セグメントピース231~234の自重によるエレクター装置71へのモーメントがほとんど作用しない。また、第5および第6セグメントピース235,236はその中央部においてエレクター装置71で単独で把持されるため、第5および第6セグメントピース235,236の自重によってエレクター装置71に生じるモーメントは小さい。このため、拡幅掘削施工部10の大規模化に伴う、第1~第6セグメントピース231~236が大型化および大重量化された場合でも、エレクター装置71および走行ビーム31などを高剛性の頑丈なものにする必要はなく、エレクター装置71を動作させるための走行駆動部73などの駆動装置を省力化できる。
【0052】
(2)アーチ形セグメント23の組立前の状態でアーチ形セグメントの組立装置12のアウトリガー装置35を伸長作動させ、既設アーチ形セグメント20のアーチ内周面20bに後側ガイド装置242の後列2列の回転コロ受け56を押し当てる。このようにすると、回転コロ受け56の転動によりアーチ形セグメントの組立装置12の設置位置は既設アーチ形セグメント20の内周曲率に合わせてセンタリングされる。これにより、セグメントガイド装置24は残りの前列2列の回転コロ受け56が既設アーチ形セグメント20のアーチ内周面20bに沿ったガイドとなる。従って、エレクター装置71に把持されてガイド装置24上を移動されるセグメントピース231~236の径方向の位置が既設アーチ形セグメント20に倣って決まる。よって、既設アーチ形セグメント20と新設アーチ形セグメント23のアーチ内周面20bの面一合わせおよび互いのボルト穴粗位置合わせするための把持姿勢を調整操作する時間が短縮される。また、アーチ形セグメント23の組立精度が向上する。特に、前記で示すアーチ形セグメント23の両端部の第1セグメントピース231および第3セグメントピース233の組付けの際は、狭隘のスペースで、しかもそれらの内側セグメントである第2セグメントピース232および第4セグメントピース234との連結状態におけるセグメント重量が大きいためそれらの効果は大きい。
【0053】
(3)アーチ形セグメント23の組立前の状態でアーチ形セグメントの組立装置12のアウトリガー装置35を伸長作動させ、既設アーチ形セグメント20のアーチ内周面20bに後側ガイド装置242の後列2列の回転コロ受け56を押し当てる。このようにすると、回転コロ受け56の転動により、後列2列の回転コロ受け56の全体が既設アーチ形セグメント20に接触し、そのアーチ内周面20bに沿う。このため、アーチ形セグメント23の組立時に発生する各種反力をアウトリガー装置35と併せて支持できる形態となり、セグメント組立時のアーチ形セグメントの組立装置12全体の姿勢を固定支持でき、安定した組立作業が可能となる。
【0054】
(4)ガイド装置24を使用してアーチ形セグメント23を組付ける際に各セグメントピース231~236のエレクター装置71での把持位置であるガイド装置24上までリフトアップする必要がある。この場合、アーチ形セグメントの組立装置12の幅方向のほぼ中央位置でガイド装置24を左右に分断したスペースにリフト装置61が設けられている。このリフト装置61により、アーチ形セグメント23の組立場所にアーチ形セグメントの組立装置12を定位置に設置した状態で繰り返し第1セグメントピース213~第5セグメントピース235組み付けまで重機でリフト装置61に供給できる。このため、エレクター装置71で把持するまでの供給把持作業に要する時間の短縮が図れる。また、従来技術にあるリフト台車のようなセグメントピース吊り上げ用の装置が不要となり、セグメントピースと吊り上げ装置との玉掛けおよびその解除作業も不要となり、作業の効率が向上する。
【0055】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・セグメントガイド装置24のフリーボールよりなる回転コロ受け56に代えて、一軸線を中心に回転される円筒状あるいは円柱状のガイドローラを用いること。
・アウトリガー装置35を省略すること。それに代えて、ガイド装置24の支持脚32内に、その支持脚32を伸縮させる機構を設け、その伸縮機構の作動によりアーチ形セグメントの組立装置12が昇降されるように構成すること。
【0057】
・リフト装置61をアーチ形セグメントの組立装置12とは別体で独立して設けること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握される技術的思想は以下の通りである。
【0058】
(A)前記走行ビームに走行可能に支持され、前記セグメントにその下面側から連結されてそのセグメントをアーチカーブに沿って移動させるエレクター装置を設けた請求項1に記載のガイド装置を備えたアーチ形セグメントの組立装置。
【0059】
(B)前記回転コロ受けをフリーボールによって構成した請求項1に記載のガイド装置を備えたアーチ形セグメントの組立装置。
【符号の説明】
【0060】
12…アーチ形セグメントの組立装置
23…アーチ形セグメント
24…ガイド装置
31…走行ビーム
32…支持脚
33…車輪
37…油圧シリンダ
35…アウトリガー装置
41…アウトリガーシュー
51…ガイド支柱
53…ガイドビーム
54…ガイドビーム
56…回転コロ受け
61…リフト装置
62…ガイド筒
63…昇降ロッド
64…油圧シリンダ
65…連結材
67…受け材
71…エレクター装置
231…第1セグメントピース
232…第2セグメントピース
233…第3セグメントピース
234…第4セグメントピース
235…第5セグメントピース
236…第6セグメントピース
241…前側ガイド装置
242…後側ガイド装置。