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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】中空構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20240306BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20240306BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20240306BHJP
   F16B 5/01 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16B5/07 K
B29C43/36
B60R5/04 Z
F16B5/01
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020135870
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032264
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】早水 幹益
(72)【発明者】
【氏名】南 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘規
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129377(WO,A1)
【文献】特開2011-011615(JP,A)
【文献】実開平04-127037(JP,U)
【文献】特公昭46-011369(JP,B1)
【文献】特開2019-162968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0258965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00-5/12
B29C 43/36
B60R 3/00-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成された本体部と、前記本体部を被係止部材に係止するための係止部とを備え、
前記本体部の周縁には、前記中空板材がその厚み方向に圧縮されてなる前記係止部が前記本体部と一体に形成されており、
前記係止部は、前記被係止部材に係止するための係止本体部と、前記係止本体部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部とを備えていることを特徴とする中空構造体。
【請求項2】
前記係止本体部は、前記ヒンジ部を介して前記本体部側へ回動可能に構成されており、
前記係止本体部には、前記本体部側への自身の回動を規制する回動規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中空構造体。
【請求項3】
前記係止本体部は、前記ヒンジ部を介して前記本体部側へ回動したときに、前記本体部から離間する方向に付勢されることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空構造体。
【請求項4】
前記係止本体部の先端部には、前記被係止部材の被係止凹部に係止する係止突部が形成されており、
前記係止突部は、前記係止本体部を前記本体部側へ回動させた状態で、該本体部とは反対側に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の中空構造体。
【請求項5】
複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成された本体部と、前記本体部に一体に形成された係止部とを備えているとともに、前記係止部が、前記本体部を被係止部材に係止する係止本体部と、前記係止本体部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部とを備えている中空構造体の製造方法であって、
凹凸シート材で前記中空板材を形成する中空板材形成工程と、
加熱された前記中空板材をプレス成型して前記係止部を有する中間体を成形するプレス成型工程と、
前記中間体の周縁部を除去して前記中空構造体を得る後加工工程と
を備えていることを特徴とする中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に複数のセルを有する板状の中空構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の中空構造体は、適度な強度を有し、軽量で取扱い性にも優れていることから、例えば、車両後部の荷室床面を構成するラゲッジボードに適用することが知られている。板状のラゲッジボードは、車両後部のフロアパネル上方の取付段部に載置されて、ラゲッジボード上方に荷物の収納空間を区画する。
【0003】
ラゲッジボードを取付段部上に安定して載置するために、クリップのような取付治具を用いて固定する場合がある。この場合、ラゲッジボードと取付段部との双方に貫設された取付孔内に、クリップを挿入してラゲッジボードを固定したり、ラゲッジボードに予め取り付けられたクリップを、取付段部に貫設された取付孔内に挿入してラゲッジボードを固定したりすることが考えられる。
【0004】
特許文献1には、車両後部のフロアパネルに形成されたスペアタイヤ収納用凹部の上方位置に物品収納用ボックスを配置するとともに、物品収納用ボックスの上方位置に、合成樹脂製で板状のリッドを配置することが記載されている。リッドは、車室後部の側面部分のクオータートリムに形成された取付部に、クリップによって着脱可能な状態で固定されて車両の荷室床面の一部を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-108792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クリップを使用して板材を取付部に取り付けると、部品点数が増えて取付作業の効率が悪くなることやクリップが外れて紛失することがある。
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、取付作業のし易い中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の中空構造体は、複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成された本体部と、前記本体部を被係止部材に係止するための係止部とを備え、前記本体部の周縁には、前記中空板材がその厚み方向に圧縮されてなる前記係止部が前記本体部と一体に形成されており、前記係止部は、前記被係止部材に係止するための係止本体部と、前記係止本体部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部とを備えている。
【0008】
上記の構成によれば、被係止部材に係止するために別部材を準備する必要がない。被係止部材への取付作業がし易く、中空構造体の取付作業性が向上する。また、係止本体部を回動させることにより、適宜の位置に設けられた被係止部材に対して係止することができる。利便性が向上する。さらに、被係止部材に係止するための係止部が、中空板材を厚み方向に圧縮されて形成されているため、係止部では、中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度が高くなっている。これにより、係止部の剛性が本体部に比べて向上している。被係止部材に係止するために必要な強度、係止本体部がヒンジ部を介して回動する際に必要な強度を備えている。
【0009】
上記の構成において、前記係止本体部は、前記ヒンジ部を介して前記本体部側へ回動可能に構成されており、前記係止本体部には、前記本体部側への自身の回動を規制する回動規制部が設けられていることが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、係止部が本体部側へ必要以上に回動することが抑制される。そのため、係止部の位置が安定し、被係止部材に対する中空構造体の取付状態が安定する。
上記の構成において、前記係止本体部は、前記ヒンジ部を介して前記本体部側へ回動したときに、前記本体部から離間する方向に付勢されることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、本体部の周縁に一体に形成された係止部が、本体部から離間する方向に付勢されるため、本体部の側方に位置する被係止部に対して強固に係止される。中空構造体の側方に位置する被係止部に対する中空構造体の取付状態が安定する。
【0012】
上記の構成において、前記係止本体部の先端部には、前記被係止部材の被係止凹部に係止する係止突部が形成されており、前記係止突部は、前記係止本体部を前記本体部側へ回動させた状態で、該本体部とは反対側に突出するように形成されていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、係止突部が被係止部材に係止されることにより、被係止部材に対する中空構造体の移動が規制される。係止部が被係止部材から抜け難く、中空構造体の安定した取付状態が維持される。
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の中空構造体の製造方法は、複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成された本体部と、前記本体部に一体に形成された係止部とを備えているとともに、前記係止部が、前記本体部を被係止部材に係止する係止本体部と、前記係止本体部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部とを備えている中空構造体の製造方法であって、凹凸シート材で前記中空板材を形成する中空板材形成工程と、加熱された前記中空板材をプレス成型して前記係止部を有する中間体を成形するプレス成型工程と、前記中間体の周縁部を除去して前記中空構造体を得る後加工工程とを備えている。
【0015】
上記の構成によれば、プレス成型工程によって、中空板材に係止部を一体成形することができる。取付作業性に優れた中空構造体を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、取付作業のし易い中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の中空構造体であるラゲッジボードを上方から見た斜視図。
図2】被係止部材であるラゲッジルームの側壁と係止部との係止状態を示す断面図であって、図1のα‐α線に相当する部分と側壁との係止状態を示す断面図。
図3】(a)は中空板材の斜視図、(b)は(a)におけるβ‐β線断面図、(c)は(a)におけるγ‐γ線断面図。
図4】係止部の拡大斜視図。
図5図1のα‐α線での係止部の断面図であり、(a)はラゲッジボードを係止する前の状態での断面図、(b)はラゲッジボードを係止した状態での断面図。
図6】ラゲッジボードを製造する方法について説明する図であり、コア層を形成する工程について説明する図。(a)はコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
図7】(a)~(e)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
図8】(a)、(b)は係止部を被係止部材に係止する状態について説明する断面図。
図9】係止部の変更例について説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の中空構造体の一実施形態を具体化したラゲッジボード11について説明する。ラゲッジボード11は、車両の後部に設けられたラゲッジルームの底面を形成するものである。
【0019】
図1に示すように、ラゲッジボード11は略長方形板状に形成されており、車幅方向に延びるヒンジ部12を介して、車両後側の後板部13と車両前側の前板部14とが一体的に接続された形状とされている。ラゲッジボード11は、複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材10で構成されており、ヒンジ部12は、ラゲッジボード11を構成する中空板材10が圧縮されてその板厚が薄くされることによって形成されている。ヒンジ部12を回動軸として後板部13を上方に持ち上げると、ラゲッジボード11の下側の空間に保管された工具等を出し入れすることができる。ここで、ラゲッジボード11の上下とは、車両の上下を言うものとし、ラゲッジボード11の上方に位置する面を上面11a、下方に位置する面を下面11bと言うものとする。
【0020】
図2に示すように、ラゲッジルームの周縁下方にはラゲッジボード11の下面を支持する図示しない取付段部が設けられているとともに、ラゲッジルームの車幅方向の両側には、ラゲッジボード11を側方から支持する一対の側壁50が設けられている。ラゲッジボード11は、図示しない取付段部上に載置されるとともに、車幅方向に対向して設けられた一対の側壁50の間で支持されている。一対の側壁50の内面50aは、上下方向に延びている。図1に示すように、ラゲッジボード11の後板部13の車幅方向の長さL1は、一対の側壁50の内面50aの間隔とほぼ等しい。
【0021】
まず、ラゲッジボード11を構成する熱可塑性樹脂製の中空板材10について説明する。
図3(a)に示すように、中空板材10は、内部に複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製のコア層20と、コア層20の両主面でコア層20全体を覆うように接合された熱可塑性樹脂製のスキン層24、25とで構成されている。中空板材10は、スキン層24が接合された側がラゲッジボード11の上面11a側、スキン層25が接合された側がラゲッジボード11の下面11b側となるように配置されてラゲッジボード11を構成している。
【0022】
図3(a)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。以下で説明するように、コア層の上壁部21及び下壁部22は、1層構造と2層構造とが混在した構造とされているが、図3(a)では、コア層20の上壁部21及び下壁部22を1層構造で示している。
【0023】
図3(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図3(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、2層構造の上壁部21には、コア層20の成形時に熱可塑性樹脂が熱収縮することにより、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。
【0024】
一方、図3(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部22には、コア層20成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。
【0025】
また、図3(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部23の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
【0026】
図3(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0027】
コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知の熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態のコア層20及びスキン層24、25は、ポリプロピレン樹脂製とされている。コア層20を構成する熱可塑性樹脂と、スキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂は、同じ材質であることが好ましい。本実施形態では、スキン層24とスキン層25の厚みは同一とされている。
【0028】
ラゲッジボード11は、こうした構成を有する中空板材10を所定の大きさの長方形状に切断したものを加工することによって形成されている。なお、図2図7図8では、中空板材10の内部の中空構造を省略して示している。
【0029】
図1に示すように、ラゲッジボード11は、本体部30と係止部40を備えている。本体部30は、ヒンジ部12及び後板部13と、前板部14のほぼ全体に亘る部分とを有して長方形板状に形成されており、ラゲッジボード11の主要部分を構成している。図4及び図5(a)に示すように、本体部30の周縁には、全周に亘って側面31が形成されている。側面31は、ラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して、約45゜の角度で交差するとともに、下方ほど内方へ傾斜する傾斜面として形成されている。
【0030】
図1に示すように、係止部40は、本体部30の前板部14における車幅方向の両側部のそれぞれで、本体部30から車幅方向外方へ突出するような形状で本体部30と一体に形成されている。車幅方向の両側部の係止部40は同じ形状、大きさである。
【0031】
図1及び図4に示すように、係止部40は、車両前後方向に延びるヒンジ部41と、ヒンジ部41を介して本体部30に接続される係止本体部42を有している。係止本体部42は、係止部40の基端側から順に、車両前後方向に長い回動規制部43と、回動規制部43の車両前後方向の両端部に形成された係止薄肉部44及び係止突部45を有している。車両前後方向の両端部の係止薄肉部44及び係止突部45は、同じ形状、大きさである。図5(a)に示すように、側壁50に係止する前の状態のラゲッジボード11では、係止本体部42の下面42aは、ラゲッジボード11の下面11bとほぼ面一の位置で、ラゲッジボード11の下面11bとほぼ平行に延びている。
【0032】
図5(a)に示すように、係止部40は、本体部30を構成する中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによってその厚みが薄くされた形状をなしている。ヒンジ部41、回動規制部43、係止薄肉部44、及び係止突部45では、それぞれの厚みが異なっている。
【0033】
ヒンジ部41は、係止部40の中で最も厚みが薄く形成されており、その厚みは中空板材10の厚みの約1/10程度である。この部分では、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて一体化して、隙間のない状態となっている。熱可塑性樹脂が一体化した状態のヒンジ部41は、係止本体部42を本体部30に対して回動可能に連結する曲げ弾性を有している。図5(a)の矢印Aで示すように、係止部40では、ヒンジ部41を回動軸として、係止本体部42が本体部30側に回動可能に連結されている。
【0034】
回動規制部43では、係止部40において基端側及び先端側となる位置に、ラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して約45゜の角度で交差する傾斜面43a、43bが形成されている。これにより、回動規制部43は、その厚みが厚い部分と薄い部分とを有しており、コア層20の側壁部23がほとんど折り曲げられることなく立設状態を維持している部分と、側壁部23が折り曲げられた部分とが混在している。図5(a)及び(b)に示すように、係止本体部42が矢印Aの方向に回動すると、基端側の傾斜面43aが本体部30の側面31に当接することによって、係止本体部42の矢印Aの方向への回動が規制される。
【0035】
図5(a)に示すように、係止薄肉部44は、係止部40の中で2番目に厚みが薄く形成されており、その厚みは中空板材10の厚みの約1/5程度である。この部分では、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて一体化しており、一体化した熱可塑性樹脂の中に僅かな隙間が形成された状態となっている。係止薄肉部44は、ある程度の曲げ弾性を有している。係止薄肉部44の上面44aは、ラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して平行となるように形成されている。
【0036】
係止突部45は、中空板材10の中で3番目に厚みが薄く形成されており、その厚みは中空板材10の厚みの約1/2~2/3程度である。この部分では、コア層20の側壁部23が折り曲げられている部分と、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となっている。係止突部45の基端面45aは、係止薄肉部44の上面44aに対して直交するように上下方向に延びており、係止突部45の上面45bは、ラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して平行となるように形成されている。また、係止突部45の先端面45cは、基端面45aと平行となるように上下方向に延びており、先端面45cと上面45bとの間には、断面R形状の湾曲面45dが形成されている。
【0037】
図5(a)に示すように、係止本体部42が、ヒンジ部41を回動軸として矢印Aの方向に回動されると、回動規制部43に形成された傾斜面43aが、本体部30の側面31に当接して、係止本体部42はそれ以上の回動が規制される。図5(b)に示すように、本体部30の側面31及び回動規制部43の傾斜面43aがともに、ラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して約45゜の角度で交差するように傾斜する傾斜面として形成されているため、傾斜面43aが側面31に当接すると、係止本体部42は、本体部30に対して直交するような状態となる。矢印Aの方向に回動された係止本体部42には、矢印Aの方向とは反対の方向であって、本体部30から離間する方向である矢印Bの方向に付勢する力が作用する。
【0038】
図2に示すように、ラゲッジボード11が係止される一対の側壁50の内面50aには、それぞれ凹部51が形成されている。凹部51は、係止薄肉部44の上面44aからの係止突部45の突出長より少し深く形成されており、係止薄肉部44の上面44aからの係止突部45の突出部分より少し大きい大きさに形成されている。ラゲッジボード11は、係止本体部42が矢印Aの方向に回動された状態で、係止突部45が側壁50の凹部51内に収容されることにより、一対の側壁50の間で係止される。側壁50が請求項で言う被係止部材であり、凹部51が請求項で言う被係止凹部である。
【0039】
次に、ラゲッジボード11を製造する方法について、図6及び図7に基づいて説明する。
ラゲッジボード11を製造する方法は、中空板材形成工程、加熱工程、プレス成型工程、及び後加工工程を備えている。中空板材形成工程は、一枚のシート材100からコア層20を形成するとともに、コア層20にスキン層24、25を接合する工程である。加熱工程は、中空板材10を加熱する工程である。プレス成型工程は、金型70内で中空板材10を成形して中間体60を得る工程である。後加工工程は、中間体60を加工してラゲッジボード11を得る工程である。
【0040】
図6(a)~(c)に示すように、中空板材形成工程では、まず、シート材100を折り畳むことによってコア層20を形成する。
図6(a)に示すように、シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成されている。シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0041】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0042】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0043】
図6(a)及び(b)に示すように、上述のように構成されたシート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図6(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
【0044】
上記のようにシート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、図6(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0045】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0046】
続いて、コア層20の上面にスキン層24を重ね合わせ、コア層20の下面にスキン層25を重ね合わせる。スキン層24、25は、加熱処理して軟化させた状態にしておくことが好ましい。スキン層24、25が加熱処理されることで、スキン層24、25にコーティングされた熱可塑性樹脂の接着層は、一部熱溶融された状態となっている。そのため、コア層20に重ね合わされたスキン層24、25は、コア層20に仮接合された状態で位置決めされる。コア層20及びスキン層24、25の温度低下により接着層が固化し、コア層20にスキン層24、25が接合されて中空板材10が形成される。
【0047】
次に、中空板材10を加熱する加熱工程について説明する。
図7(a)に示すように、まず、ラゲッジボード11に使用する中空板材10として、先に製造した中空板材10を、ラゲッジボード11より少し大きな形状に切断したものを準備する。具体的には、ラゲッジボード11の大きさより、長手方向及び短手方向のそれぞれで、例えば50mm程度大きい略長方形状に切断したものを準備する。なお、中空板材10、中間体60、ラゲッジボード11の形状、大きさ等については実際のものとは異なり、必要な部分を誇張して示している。図7(b)~(e)では、金型70、中間体60、及びラゲッジボード11について、図1のα‐α線に相当する部分についてのみ示している。
【0048】
加熱工程では、所定温度に設定された加熱炉H内に中空板材10を入れて、所定時間保持する。加熱炉H内の温度は、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂が溶融する程度に設定されている。
【0049】
次に、中空板材10を成形して中間体60を得るプレス成型工程について説明する。
図7(b)に示すように、プレス成型工程に使用する金型70は、上型71及び下型72を備えている。本実施形態の上型71及び下型72は、全体が加熱されることなく常温に保持されている。上型71及び下型72の形状は、ラゲッジボード11の形状に対応しているが、ここでは、ラゲッジボード11の係止部40に対応する部分についてのみ説明する。ヒンジ部12に対応する部分は、ヒンジ部12の形状の図示しない凸部が下型72に形成されている。
【0050】
図7(b)に示すように、下型72には、凹部72a、72b、及び凸部72cが形成されている。凹部72aは、ラゲッジボード11の本体部30の外側を形成する部分であり、ラゲッジボード11の大きさ、形状に形成されている。凹部72bは、中間体60における係止部40の係止本体部42を成形するための部分である。凸部72cは、係止部40のヒンジ部41を成形するための部分である。
【0051】
上型71には、凹部71a、71b、及び凸部71cが形成されている。凹部71aは、ラゲッジボード11の本体部30と、係止部40の回動規制部43を成形するための部分である。凹部71bは、係止部40の係止突部45を成形するための部分である。凸部71cは、係止部40の係止薄肉部44を成形するための部分である。
【0052】
図7(b)に示すように、まず、加熱された中空板材10を下型72の上に載置する。このとき、中空板材10は、その周縁部が凹部72a、72bから少し外方に突出した状態とされている。
【0053】
図7(c)に示すように、上型71及び下型72の型締めによってキャビティが形成される。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。中空板材10はキャビティの形状に成形されて中間体60となる。
【0054】
図7(c)に示すように、中間体60のうち、上型71の凹部71a及び下型72の凹部72aの部分では、型締め時によって、コア層20はその厚み方向にほとんど圧縮されることがない。また、コア層20を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融しない。コア層20は上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となってコア層20のハニカム構造が維持される。これにより、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
【0055】
中間体60のうち、上型71の凸部71c及び下型72の凹部72bの部分では、型締め時によって、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて、ラゲッジボード11のヒンジ部41に対応する部分が成形される。コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに、スキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した状態となる。
【0056】
中間体60のうち、上型71の凹部71bより外側に位置する下型72の凹部72bの部分では、型締め時によって、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて圧縮部分61が成形される。圧縮部分61では、コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに、スキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した状態となる。
【0057】
中間体60のうち、上型71の凸部71c及び下型72の凹部72bの部分では、型締め時によって、コア層20の側壁部23が上下方向に圧縮されて折り曲げられた部分と、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となって、係止突部45に対応する部分が成形される。係止突部45では、溶融一体化した熱可塑性樹脂と僅かな隙間を残して溶融一体化した熱可塑性樹脂が混在した状態となり、熱可塑性樹脂の密度が中空板材10での密度より高くなる。
【0058】
中間体60のうち、上型71の凹部71a及び下型72の凹部72bの部分では、型締め時によって熱可塑性樹脂の状態が部位によって異なった回動規制部43に対応する部分が成形される。具体的には、コア層20の側壁部23が上下方向に圧縮されて折り曲げられた部分と、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となって、これらの割合がキャビティの高さに応じて変わる。キャビティの高さが低いほど、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分の割合が多くなる。
【0059】
図7(d)に示すように、下型72から上型71を離間させた後、中間体60を下型72から取り出す。プレス成型工程を経て得られた中間体60は、ラゲッジボード11に相当する大きさを有する部分の周縁部全周に亘って圧縮部分61が形成されている。
【0060】
次に、中間体60を加工してラゲッジボード11を得る後加工工程について説明する。後加工工程では、中間体60の周縁部の圧縮部分61を切り落して側面の形状を整える。
図7(d)及び(e)に示すように、中間体60に形成された圧縮部分61を、図示しない切断冶具で切断する。圧縮部分61が切断された後を研磨、塗装等して、ラゲッジボード11の形状を整える。なお、圧縮部分61を切断する切断冶具としてトムソン刃やレーザー等を使用した場合には、研磨、塗装等を必ずしも行わなくてもよい。
【0061】
以上の各工程を経て、ラゲッジボード11が得られる。
次に、本実施形態のラゲッジボード11の作用について、図8に基づいて説明する。
ラゲッジボード11の係止本体部42は、図5(a)に矢印Aで示すように、ヒンジ部41を回動軸として本体部30側に回動可能である。図8(a)に示すように、ラゲッジボード11の係止本体部42を本体部30側へ少し回動させた状態で、ラゲッジボード11を下方に向けて押すと、係止本体部42は、係止突部45の湾曲面45dから上面45bにかけての部分が側壁50に沿うようにして下方に移動する。ラゲッジボード11への押圧力は、係止本体部42を矢印Aの方向へ回動させる力となって作用する。湾曲面45dが断面R形状となっていることで、ラゲッジボード11は下方へスムーズに移動する。
【0062】
図8(b)に示すように、係止本体部42が本体部30側に回動されると、係止本体部42の回動規制部43に形成された傾斜面43aが、本体部30の側面31に当接し、係止本体部42はそれ以上の回動が規制される。そのため、係止突部45が側壁50の凹部51より上方の内面50aに沿って下方に移動する際には、係止本体部42が、本体部30に対して直交するような状態に保持されながら移動する。その一方で、係止突部45の基端側に設けられた係止薄肉部44は、ある程度の曲げ弾性を有している。そのため、係止突部45は本体部30側への撓みをある程度許容されつつ、側壁50の内面50aに沿って凹部51まで移動する。
【0063】
図8(b)に示すように、矢印Aの方向に回動された係止本体部42には、矢印Aの方向とは反対の方向であって、本体部30から離間する矢印Bの方向に付勢する力が作用している。そのため、係止突部45が凹部51の位置まで到達すると、矢印Bの方向に付勢する力によって、係止突部45は凹部51内に収容される。このとき、係止薄肉部44の上面44aが側壁50の凹部51より上方の内面50aに当接し、係止突部45の基端面45aが側壁50の凹部51の上面51aに当接する。係止本体部42に対する矢印Bの方向に付勢する力により、係止突部45は凹部51内でその移動を規制された状態で保持される。
【0064】
また、一対の側壁50の内面50aには凹部51がそれぞれ形成されており、ラゲッジボード11は、本体部30の車幅方向の長さL1が、一対の側壁50の間隔とほぼ等しくなるように形成されている。そのため、ラゲッジボード11は、一対の側壁50の凹部51内に車幅方向両側部に形成された係止突部45を収容させた状態で、一対の側壁50の間に強固に保持される。
【0065】
本実施形態のラゲッジボード11によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)ラゲッジボード11は、複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材10で構成されており、被係止部材としての側壁50に係止するための係止部40が、本体部30の周縁に一体に形成されている。
【0066】
そのため、被係止部材に係止するために別部材を準備する必要がない。被係止部材への取付作業がし易く、中空構造体の取付作業性が向上する。
(2)係止部40は、ヒンジ部41と係止本体部42を備えており、係止本体部42はヒンジ部41を介して本体部30に回動可能に接続されている。
【0067】
そのため、係止本体部42を回動させることにより、本体部30の側方に設けられた側壁50に対して容易に係止することができる。
(3)係止部40は、本体部30を構成する中空板材10が厚み方向に圧縮されて形成されている。
【0068】
そのため、係止部40では、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂の密度が高くなっており、係止部40の剛性が本体部30に比べて向上している。側壁50に係止するために必要な強度を備えている。また、係止本体部42がヒンジ部41を介して回動する際に必要な強度を備えている。
【0069】
(4)係止本体部42には、傾斜面43aが形成された回動規制部43が設けられており、傾斜面43aが本体部30の側面31に当接することによって、本体部30側への係止本体部42の回動が規制される。
【0070】
そのため、係止部40が本体部30側へ必要以上に回動することが抑制されて、係止部40の位置が安定する。側壁50に対するラゲッジボード11の取付状態が安定する。
(5)本体部30の側面31及び回動規制部43の傾斜面43aは、ともにラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して約45゜で交差するように傾斜している。
【0071】
そのため、係止本体部42が回動して側面31と傾斜面43aが当接すると、係止本体部42は、本体部30に対して直交するような状態となる。これにより、係止本体部42は、上下方向に延びる側壁50に沿うように保持されることで、側壁50に対する係止本体部42の係止状態が安定する。
【0072】
(6)係止本体部42は、ヒンジ部41を介して本体部30側へ回動したときに、本体部30から離間する矢印Bの方向に付勢される。
そのため、ラゲッジルームの車幅方向の両側に設けられた一対の側壁50の凹部51に対して係止本体部42が強固に係止される。
【0073】
(7)係止本体部42の先端部には、側壁50の凹部51に係止する係止突部45が形成されており、係止突部45は、係止本体部42を本体部30側へ回動させた状態で、本体部30とは反対側に突出するように形成されている。
【0074】
そのため、係止突部45が凹部51に係止された状態では、側壁50に対するラゲッジボード11の上方への移動が規制される。係止部40が凹部51から抜け難く、ラゲッジボード11の安定した取付状態が維持される。
【0075】
(8)係止突部45の基端面45aは、ラゲッジボード11が側壁50に係止された状態で、凹部51の上面51aに当接する。
そのため、ラゲッジボード11の上方への移動が規制されるだけでなく、凹部51内での係止突部45のガタつきが抑制される。
【0076】
(9)係止薄肉部44の上面44aは、ラゲッジボード11が側壁50に係止された状態で、側壁50の内面50aに当接する。
そのため、係止薄肉部44が一対の側壁50の内面50a間でガタつき難く、ラゲッジボード11の取付状態が安定する。
【0077】
(10)係止本体部42の係止突部45には、先端面45cと上面45bとを滑らかに繋ぐ断面R形状の湾曲面45dが形成されている。
そのため、ラゲッジボード11を取り付ける際、係止突部45の外面が、側壁50の内面50aに沿いやすい。ラゲッジボード11の取り付けをスムーズに行うことができる。
【0078】
(11)係止本体部42の係止薄肉部44では、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて一体化しており、一体化した熱可塑性樹脂の中に僅かな隙間が形成された状態となっている。
【0079】
そのため、係止薄肉部44は、ある程度の曲げ弾性を有しており、係止突部45が側壁50の内面50aに沿って移動する際の係止本体部42の撓みが許容される。ラゲッジボード11の取り付けをスムーズに行うことができる。
【0080】
(12)係止本体部42の回動規制部43では、コア層20の側壁部23が上下方向に圧縮されて折り曲げられた部分と、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となっている。
【0081】
そのため、回動規制部43における熱可塑性樹脂の密度が中空板材10のそれより高くなっており、回動規制部43の傾斜面43aが本体部30の側面31に当接した場合の、回動規制部43の強度が保持される。
【0082】
(13)係止本体部42の係止突部45では、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分と、僅かな隙間を残して溶融一体化した部分とが混在した状態となっている。
【0083】
そのため、係止突部45における熱可塑性樹脂の密度が中空板材10のそれより高くなっており、係止突部45が凹部51に係止される場合の剛性が保持される。
(14)ラゲッジボード11の係止部40、ヒンジ部12以外の部分では、中空板材10のコア層20を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融していない。また、コア層20は上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となってコア層20のハニカム構造が維持されている。
【0084】
そのため、ラゲッジボード11のほぼ全体に亘ってコア層20のハニカム構造が維持されており、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
(15)ラゲッジボード11の本体部30の車幅方向の長さL1は、一対の側壁50の内面50a間の距離に等しくなるように形成されている。
【0085】
そのため、側壁50に係止したラゲッジボード11のガタつきが抑制され、係止状態が安定する。
(16)係止部40は、プレス成型工程で中間体60を成形する際に同時に成形される。
【0086】
そのため、係止部40を容易に成形することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・上記実施形態の係止部40は、ヒンジ部41と係止本体部42を備え、係止本体部42では、基端側から順に、回動規制部43、係止薄肉部44、及び係止突部45が形成されているが、係止本体部42の構成、形状はこれに限定されない。
【0088】
・回動規制部43、係止薄肉部44の少なくともいずれかが形成されていなくてもよい。
・上記実施形態の係止部40は、ヒンジ部41の厚みが中空板材10の厚みの約1/10程度、係止薄肉部44の厚みが中空板材10の厚みの約1/5程度、係止突部45の厚みが中空板材10の厚みの約1/2~2/3程度に形成されているが、これに限定されない。これより厚くてもよく、薄くてもよい。各部に要求される剛性、強度、曲げ弾性等の機能を実現できる程度に適宜変更することができる。
【0089】
・本体部30の側面31がラゲッジボード11の上面11a及び下面11bに対して直交するように形成されていてもよい。この場合、回動規制部43の形状をヒンジ部41より少し厚い程度の薄板状に形成することで、本体部30の側面31に当接した回動規制部は、本体部30に対して直交するような状態となる。
【0090】
・係止本体部42が矢印Aの方向に回動した状態で、矢印Bの方向に付勢されていなくてもよい。
・上記実施形態の係止部40は、車両前後方向に長い回動規制部43に対して、車両前後方向の2箇所に係止薄肉部44及び係止突部45が連設された形状に形成されているが、係止部40の形状はこれに限定されない。例えば、回動規制部43、係止薄肉部44、及び係止突部45の車両前後方向の長さがすべて同じとなるように形成された係止本体部42が、車両前途方向の2箇所に形成されていてもよい。
【0091】
・係止薄肉部44及び係止突部45は、車両前後方向に2箇所でなく、3箇所以上に形成されていてもよい。また、1箇所に形成されていてもよい。
図9に示すように、係止突部45は、係止本体部42を本体部30側へ回動させた状態で、本体部30側に突出するように形成されていてもよい。この場合、ラゲッジボード11を側方から支持する一対の側壁50の内側に、側壁50に対向するように被係止部材52が立設されており、被係止部材52には、側壁50に対向する位置に被係止凹部53が形成されていることが好ましい。
【0092】
・ラゲッジボード11は、係止部40及びヒンジ部12以外に凹凸形状を有していてもよい。例えば、ラゲッジボード11より下方に位置する車両構造体の凹凸形状を吸収するようにラゲッジボード11の下面11bに凹凸形状を有していてもよい。
【0093】
・ラゲッジボード11は、平坦な板状でなくてもよく、例えば湾曲板状であってもよい。
・ラゲッジボード11は長方形板状に限定されない。適用される車両の形状に応じて適宜変更することができる。
【0094】
・本発明の中空構造体をラゲッジボード11以外のものに適用することができる。被係止部材に係止するものであれば、例えば、棚板等に適用してもよい。
・ラゲッジボード11を構成する中空板材10として、スキン層24、25の少なくともいずれかが接合されていないものを使用してもよい。
【0095】
・スキン層24、25は一層構造としたが、多層構造であってもよい。
・中空板材10のスキン層24、25は、熱可塑樹脂製のシート材で構成したが、少なくともいずれか一方を不織布とすることもできる。スキン層24、25を不織布とする場合、一方の面に熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂)製の接着層をコーティングし、接着層を介してコア層20に接合することができる。スキン層24、25を構成する不織布は、例えばポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維などの従来公知の各種繊維で成形することができる。スキン層24、25をいずれも不織布とする場合、スキン層24とスキン層25とは同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0096】
・スキン層24、25は、樹脂フィルムに印刷されたものであってもよい。ラゲッジボード11の意匠性を向上させることができる。
・スキン層24、25は接着層を介してコア層20に接合されているが、接着層を省略することもできる。この場合でも、コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂が一部溶融して互いに接合される。
【0097】
・コア層20は、一枚のシート材100を折り畳み成形して構成するのに限らない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にシート層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
【0098】
・上記実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0099】
・コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0100】
・上記実施形態では、一枚のシート材100を折り畳み成形して、コア層20の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層20を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層20を形成してもよい。
【0101】
・コア層20及びスキン層24、25を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20及びスキン層24、25のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20及びスキン層24、25の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0102】
・プレス成型工程で使用する上型71及び下型72には、吸引孔が複数形成されているものを使用してもよい。この場合、吸引孔の形状、位置は特に限定されない。
・上型71及び下型72は全体が加熱されることなく常温に保持されるようにしたが、上型71及び下型72を加熱してもよい。
【0103】
上記実施形態及び変更例から把握される技術思想について記載する。
(イ)複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成された本体部と、前記本体部を被係止部材に係止するための係止部とを備え、前記本体部の周縁には、前記中空板材がその厚み方向に圧縮されてなる前記係止部が前記本体部と一体に形成されて、前記係止部を構成する熱可塑性樹脂の密度が前記中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度より高くされており、前記係止部は、被係止部材に係止するための係止本体部と、前記係止本体部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部とを備えていることを特徴とする中空構造体。
【符号の説明】
【0104】
10…中空板材
11…ラゲッジボード(中空構造体)
30…本体部
40…係止部
41…ヒンジ部
42…係止本体部
43…回動規制部
45…係止突部
50…側壁(被係止部材)
51…凹部(被係止凹部)
52…被係止部材
53…被係止凹部
S…セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9