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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】油性固形クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240306BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/81
A61K8/37
A61Q19/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019191388
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021046387
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019166255
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】小海 賢ニ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095375(JP,A)
【文献】特開2004-346061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ヒマシ油、(B)融点が70~110℃の炭化水素系ワックス、(C)25℃における粘度が50mPa・s以下のエステル油、及び(D)ノニオン界面活性剤、を含有し、
前記エステル油は、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸イソプロピル、及びミリスチン酸オクチルドデシルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ノニオン界面活性剤は、HLBが7以上14以下であり、且つ、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びそれらのアルキレングリコール付加物、並びにポリアルキレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(A)成分の含有量が、1~5質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、1~5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、60質量%以上であり、
前記(A)成分及び前記(B)成分の合計含有量が、4~7.5質量%である、油性固形クレンジング化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分の合計含有量が、97質量%以上である、請求項1に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記(C)成分の50質量%以上が、25℃における粘度が20mPa・s以下のエステル油である、請求項1又は2に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項4】
前記(B)成分が、融点70~110℃のポリエチレンワックスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項5】
前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)が、1/5~1/1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項6】
25℃における硬度が0.3~1.2Nである、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧持ちに優れたメイクアップ化粧料が多く開発されている。そのため、メイクの除去には、メイクアップ化粧料とのなじみ(メイクなじみ)がよい油性クレンジング化粧料が適している。油性クレンジング化粧料は一般に液状又は固形状の形態で提供される。
【0003】
液状の油性クレンジング化粧料は、液状油を主剤としており、メイクアップ化粧料とのなじみが特に優れ、クレンジング効果が高いことが知られている。しかし、液状の油性クレンジング化粧料は、粘度が低いため、使用時に垂れ落ちやすいという問題や、使用中の摩擦動作が直接肌に伝わりやすく、肌への負担または刺激が強く感じられるという問題もある。
【0004】
一方、固形状の油性クレンジング化粧料は、液状油に加えてワックスなどの固形油が配合されており、固形油が形成するカードハウス構造内に液状油が取り込まれることで、液状油の流動性が抑制されたオイルゲル構造体が形成されている。このような油性固形クレンジング化粧料は、液状のものに比べてハンドリングしやすく、使用時には、オイルゲル構造体にずり応力を与えることにより、構造体の一部が崩壊して液状油が肌に広がり、メイクアップ化粧料となじませることができる。油性固形クレンジング化粧料の伸び広がりやメイクなじみを向上させることも検討されており、例えば、下記特許文献1には、液状油及び固形油に加えて、多糖脂肪酸エステルと固形状のアニオン性界面活性剤とを更に配合した油性固形クレンジング化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-095375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の油性固形クレンジング化粧料は、冬季などの低温時にはオイルゲル構造体が強固になるため、容器から取り出しづらく、メイクアップ化粧料とのなじみが悪化することがあった。低温時の使用性を良くするために固形油を低減してオイルゲル構造体を脆弱にすると、温度サイクル試験において硬度が低下するなど保存安定性が不十分になるため、単に固形油量を変更してオイルゲル構造体の強度を調整するだけでは使用性と保存安定性とを両立させることが難しい。なお、上記特許文献の化粧料のように油ゲル化剤を併用することでオイルゲル構造体を補強する手法もあるが、メイクなじみが悪化したり、ぬるつきを感じるなど、使用性の点で必ずしも十分であるとはいえない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容器から取り出しやすく、メイクアップ化粧料とのなじみに優れ、ぬるつきが少ない良好な使用性と、硬度が変化しにくい十分な保存安定性とを両立することができる油性固形クレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、(A)水添ヒマシ油、(B)炭化水素系ワックス、(C)25℃における粘度が50mPa・s以下のエステル油、及び(D)ノニオン界面活性剤、を含有し、(A)成分の含有量が、1~5質量%であり、(B)成分の含有量が、1~5質量%であり、(C)成分の含有量が、60質量%以上であり、(A)成分及び(B)成分の合計含有量が、4~7.5質量%である油性固形クレンジング化粧料を提供する。
【0009】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、上記構成を有することにより、容器から取り出しやすく、メイクアップ化粧料とのなじみに優れ、ぬるつきが少ない良好な使用性と、硬度が変化しにくい十分な保存安定性とを両立することができる。
【0010】
上記の効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり考えている。水添ヒマシ油を配合することで、炭化水素系ワックス及び上記特定のエステル油を含んでなるオイルゲル構造体が安定化し、更に各成分が上記特定の含有量で含まれることにより、保存安定性が十分であるとともに、使用時には軽いずり応力でオイルゲル構造が崩れ、ぬるつきを感じさせることなく容易にエステル油が伸び広がるシャーベット状の構造体が形成可能になったものと考えられる。また、上記特定のエステル油がメイクなじみと伸び広がりに優れていることも、良好な使用性が得られる一因と本発明者らは考えている。
【0011】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイクなじみと伸び広がりの観点から、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計含有量が、97質量%以上であることが好ましい。
【0012】
メイクアップ化粧料となじみやすく、ぬるつきがより少ない使用性を得る観点から、(C)成分の50質量%以上が、25℃における粘度が20mPa・s以下のエステル油であることが好ましい。
【0013】
保形性の観点から、(B)成分が、融点70~110℃のポリエチレンワックスであることが好ましい。
【0014】
保存安定性を十分維持しつつ、更に良好な使用性を得る観点から、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)が、1/5~1/1であることが好ましい。
【0015】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、容器から取り出しやすく、ぬるつきがより少ない使用性を得る観点から、25℃における硬度が0.3~1.2Nであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器から取り出しやすく、メイクアップ化粧料とのなじみに優れ、ぬるつきが少ない良好な使用性と、硬度が変化しにくい十分な保存安定性とを両立することができる油性固形クレンジング化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料は、(A)水添ヒマシ油(以下、(A)成分という場合もある)、(B)炭化水素系ワックス(以下、(B)成分という場合もある)、(C)25℃における粘度が50mPa・s以下のエステル油(以下、(C)成分という場合もある)、及び(D)ノニオン界面活性剤(以下、(D)成分という場合もある)を含有する。
【0018】
<(A)水添ヒマシ油>
水添ヒマシ油(硬化ヒマシ油)は、香粧品に用いられるものであれば特に限定されず使用することができる。水添ヒマシ油は、ヒマシ硬化油A(伊藤製油株式会社製、製品名)、カスターワックスAフレーク(日油株式会社製、製品名)、ヒマ硬(ケイエフ・トレーディング株式会社製、製品名)などの市販品を用いることができる。
【0019】
(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
油性固形クレンジング化粧料における(A)成分の含有量は、化粧料全量を基準として、1~5質量%とすることができ、1~4質量%であってもよく、1~3質量%であってもよく、1~2質量%であってもよい。
【0021】
<(B)炭化水素系ワックス>
炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン、オケゾライト等が挙げられる。
【0022】
(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
保形性及び保存安定性の観点から、炭化水素系ワックスは、融点が70~110℃であるものが好ましく、80~110℃であるものがより好ましく、80~105℃であるものが更に好ましい。
【0024】
本明細書において融点とは、以下の方法によって測定される値を意味する。
まず、試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れる。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置する。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~50mL/minのもと、試料及び基準試料を0℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から0℃まで降温させ、再び昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得る。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とする。
【0025】
保存安定性の観点から、油性固形クレンジング化粧料は、融点70~110℃、好ましくは80~105℃のポリエチレンワックスを含むことが好ましい。
【0026】
油性固形クレンジング化粧料における(B)成分の含有量は、化粧料全量を基準として、1~5質量%とすることができ、2~5質量%であってもよく、3~5質量%であってもよく、4~5質量%であってもよい。
【0027】
使用性と保存安定性とを高水準で両立させる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計含有量は、化粧料全量を基準として、4~7.5質量%であることが好ましく、4~7質量%であることがより好ましく、4~6質量%であることが更に好ましい。
【0028】
また、保存安定性を十分維持しつつ、更に良好な使用性を得る観点から、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)は、1/5~1/1であることが好ましく、1/5~1/3であることがより好ましく、1/5~1/2であることが更に好ましい。
【0029】
<(C)25℃における粘度が50mPa・s以下のエステル油>
25℃における粘度が50mPa・s以下のエステル油としては、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0030】
本明細書においてエステル油の25℃における粘度は、25℃の試料について、B型粘度計を用いて、BLアダプタ、回転数12rpmの条件で測定したときの値を指す。
【0031】
(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
油性固形クレンジング化粧料における(C)成分の含有量は、化粧料全量を基準として、メイクなじみの観点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましく、保形性及び保存安定性の観点から、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
メイクアップ化粧料となじみやすく、ぬるつきがより少ない使用性が得られやすくなる観点から、(C)成分の50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上が、25℃における粘度が20mPa・s以下のエステル油であることが好ましく、25℃における粘度が15mPa・s以下のエステル油であることがより好ましい。
【0034】
25℃における粘度が20mPa・s以下のエステル油としては、例えば、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0035】
油性固形クレンジング化粧料は、メイクなじみ及び保存安定性の観点から、(C)成分として、25℃における粘度が1~15mPa・s、より好ましくは5~15mPa・s、更に好ましくは7~13mPa・sである第1のエステル油と、25℃における粘度が16~50mPa・s、より好ましくは20~50mPa・s、更に好ましくは20~40mPa・s、更により好ましくは25~35mPa・s、特に好ましくは25~32mPa・sである第2のエステル油とを含有することが好ましい。メイクなじみ、保存安定性及びぬるつきのなさを更に高水準で満足させる観点から、第2のエステル油は、25℃における粘度が25~35mPa・sであることが好ましく、25~32mPa・sであることがより好ましい。
【0036】
上記第1のエステル油と上記第2のエステル油との質量比(第1のエステル油)/(第2のエステル油)は、ぬるつきを少なくする観点から、1/1~4/1が好ましく、2/1~4/1がより好ましく、3/1~4/1が更に好ましい。
【0037】
<(D)ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及び、それらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0038】
(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
(D)成分は、クレンジング後の水又はぬるま湯での洗い流しやすさの観点から、HLBが7以上であることが好ましく、洗い流し後のつっぱり感軽減の観点から、HLBが14以下であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料においては、メイクなじみと伸び広がりの観点から、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計含有量が、化粧料全量を基準として、97質量%以上であってもよく、97.5質量%以上であってもよく、98質量%以上であってもよく、98.5質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
【0041】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料には、上記の各成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば、(C)成分以外の液状油、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0042】
(C)成分以外の液状油としては、脂肪族アルコール、炭化水素油、シリコーン油、25℃における粘度が50mPa・s超のエステル油等を用いることができる。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルドデカノール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の25℃で液状である脂肪族アルコールが挙げられる。シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。25℃における粘度が50mPa・s超のエステル油としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ジリノール酸ジイソプロピル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3等が挙げられる。
【0043】
油性固形クレンジング化粧料における(C)成分以外の液状油の含有量は、洗い流し後のつっぱり感を軽減する観点から、化粧料全量を基準として、0.1~30質量%であってもよい。
【0044】
油性固形クレンジング化粧料が(C)成分以外の液状油を含む場合、メイクなじみの観点から、(C)成分と(C)成分以外の液状油との合計含有量が、化粧料全量を基準として、70~95質量であることが好ましく、80~85質量%であることがより好ましい。また、保存安定性の観点から、(C)成分と(C)成分以外の液状油との質量比((C)成分)/((C)成分以外の液状油)は、2/1~20/1が好ましく、2/1~10/1がより好ましく、2/1~8/1が更に好ましく、2.5/1~5/1が更により好ましい。
【0045】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料は、(C)成分以外の液状油として、脂肪族アルコール及びシリコーン油からなる群より選択される一種又は二種以上を含むことが好ましい。
【0046】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料は、容器から取り出しやすく、ぬるつきがより少ない使用性を得る観点から、レオメーター((株)レオテック製)を用い、感圧軸の先端形状:直径5mmの円盤、針入速度6cm/min、針入深度10mm、温度25℃で測定される硬度が、0.3~1.2Nであることが好ましく、0.4~1.1Nであることがより好ましく、0.5~1.0Nであることが更に好ましい。
【0047】
次に、本実施形態の油性固形クレンジング化粧料の製造方法について説明する。
【0048】
本実施形態の油性固形クレンジング化粧料の製造方法は、上述した、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、並びに、必要に応じて、その他の成分を含有する化粧料基材を調製する工程と、化粧料基材を所定の容器に充填し、固化する工程とを備える。
【0049】
化粧料基材は、上述した本実施形態の油性固形クレンジング化粧料が得られるように組成を適宜設定することができる。化粧料基材における各成分の配合量も上述した油性固形クレンジング化粧料における好ましい範囲と同様にすることができる。
【0050】
化粧料基材の調製は、上述した、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分と、必要に応じて、その他の成分とを、加熱しながら混合する方法が挙げられる。
【0051】
混合手段は特に限定されないが、例えば、ディスパーやホモミキサーなどを用いることができる。加熱温度は、(A)成分及び(B)成分の融点以上に設定することができる。
【0052】
化粧料基材の固化は、例えば、充填後の化粧料基材を室温まで冷却する方法などにより行うことができる。
【0053】
所定の容器としては、ボトル、チューブ、ジャー、パウチ容器などが挙げられる。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<油性固形クレンジング化粧料の製造>
(実施例1~15、比較例1~7)
表1~3に示される各成分を同表中に示す割合(質量%)で、ディスパーを用いて105℃で混合し、油性固形クレンジング化粧料をそれぞれ得た。
【0056】
なお、表1~3に示される各成分の詳細は下記のとおりである。
水添ヒマシ油:融点85~87℃
ポリエチレンワックスA:PERFORMALENE 500 POLYETHYLENE(Baker Petrolite LLC製、製品名、融点83.8℃)
ポリエチレンワックスB:PERFORMALENE 655 POLYETHYLENE(Baker Petrolite LLC製、製品名、融点96.7℃)
キャンデリラワックス:融点75~85℃(カタログ値)
カルナバワックス:融点80~86℃(カタログ値)
パルミチン酸エチルヘキシル:粘度11mPa・s@25℃
トリエチルヘキサノイン:粘度31mPa・s@25℃
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:粘度26mPa・s@25℃
イソステアリン酸イソステアリル:粘度36mPa・s@25℃
ジメチコン:粘度6mPa・s@25℃
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:粘度15mPa・s@25℃
【0057】
(ワックスの融点)
ワックスの融点は、以下の手順で測定した。
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れた。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置した。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~50mL/minのもと、試料及び基準試料を0℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から0℃まで降温させ、再び昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得た。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とした。
【0058】
(エステル油の粘度)
25℃の試料について、B型粘度計を用いて、BLアダプタ、回転数12rpmの条件で粘度を測定した。なお、測定時間は1分間とした。また、エステル油以外の液状油についても同様の条件で測定した。
【0059】
<油性固形クレンジング化粧料の評価>
油性固形クレンジング化粧料について、下記の評価方法にしたがって、初期硬度、使用性(取り出しやすさ、メイクなじみ、ぬるつきのなさ)、及び保存安定性を評価した。結果を表1~2に示す。
【0060】
(初期硬度)
化粧料を容量20mLの軟膏壺に充填し、25℃にて一晩放置した測定用サンプルを用意した。この測定用サンプルについて、レオメーター((株)レオテック製)を用い、感圧軸の先端形状:直径5mmの円盤、針入速度6cm/min、針入深度10mm、温度25℃の条件で硬度を測定した。
【0061】
(使用性:取り出しやすさ、メイクなじみ、ぬるつきのなさ)
化粧品評価専門パネル10名に、サンプルを使用してもらい、容器からの取り出しやすさ、肌へ塗布したときのメイクなじみ、ぬるつきのなさについて、各自が以下の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の基準に従って判定した。
[評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準(評点の平均点)]
◎:4.5以上
○:3.5以上4.5未満
△:2.5以上3.5未満
×:2.5未満
【0062】
(保存安定性)
化粧料をジャー容器に100g充填し、5℃~40℃のサイクル恒温槽に1週間保存した。保存後の化粧料について、初期硬度と同様の方法で硬度を測定し、初期硬度に対する硬度の変化率を求め、以下の基準に従って3段階で判定した。
[判定基準]
○:初期硬度に対する変化率が±0%以上20%以下
△:初期硬度に対する変化率が±20%超50%以下
×:初期硬度に対する変化率が±50%超
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例16)
(成分) (配合割合(質量%))
1. 水添ヒマシ油 1.5
2. ポリエチレンワックスA 4.0
3. パルミチン酸エチルヘキシル 61.5
4. オクチルドデカノール 20.0
5. トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル 13.0

各成分の詳細は上記と同様である。なお、オクチルドデカノールの25℃における粘度は49mPa・sである。
【0067】
<製法>
1~5の成分をディスパーを用いて105℃で混合し、油性固形クレンジング化粧料を得た。
【0068】
<評価>
得られた油性固形クレンジング化粧料について、上記と同様の評価を行ったところ、初期硬度0.66N、使用性(取り出しやすさ「◎」、メイクなじみ「〇」、ぬるつきのなさ「◎」)、保存安定性「〇」の結果であった。