(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】双眼ルーペ
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20240306BHJP
G02C 1/04 20060101ALN20240306BHJP
G02C 9/04 20060101ALN20240306BHJP
A61B 90/20 20160101ALN20240306BHJP
【FI】
G02B25/00
G02C1/04
G02C9/04
A61B90/20
(21)【出願番号】P 2020003326
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134648
【氏名又は名称】株式会社ナイツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 翔太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 重一
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-195185(JP,A)
【文献】特開2003-315688(JP,A)
【文献】特開2004-138870(JP,A)
【文献】米国特許第05129717(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G02C 1/00-13/00
A61B 90/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者が観察対象を拡大観察するために用いられる医療用の双眼ルーペであって、
装用時に前記装用者の眼前を覆う透明又は半透明のシールドレンズと、
前記シールドレンズに固定されたルーペ鏡筒と、を備え、
前記シールドレンズは、前記ルーペ鏡筒を抱え込む鏡筒抱え込み部を有するとともに、当該鏡筒抱え込み部の近傍に複数の固定用小貫通孔が形成されており、
前記ルーペ鏡筒は、拡大レンズと、当該拡大レンズを支持するレンズ枠部と、当該レンズ枠部の外周面からフランジ形状で張り出し、前記固定用小貫通孔の近傍において前記シールドレンズの対物側の面に密着する対物側密着部と、前記固定用小貫通孔を貫く連結軸を介して前記対物側密着部に着脱可能に固定され、前記固定用小貫通孔の近傍において前記シールドレンズの接眼側の面に密着する接眼側密着部と、を有し、
前記鏡筒抱え込み部は、前記ルーペ鏡筒の逃げとしての切り欠きを有し、
複数の前記固定用小貫通孔のうちの2つは、前記切り欠きを介して対向する位置に配置され
ていること、を特徴とする双眼ルーペ。
【請求項2】
前記シールドレンズの表面は、曲面であり、
前記対物側密着部の接眼側の面は、前記シールドレンズの表面形状に倣った曲面であることを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項3】
前記シールドレンズの裏面は、曲面であり、
前記接眼側密着部の対物側の面は、前記シールドレンズの裏面形状に倣った曲面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の双眼ルーペ。
【請求項4】
前記固定用小貫通孔が長孔形状に形成されており、前記連結軸が円柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項5】
前記接眼側密着部は、それぞれの前記固定用小貫通孔の周囲において密着する複数の密着部分同士が連結した一体構造であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項6】
前記接眼側密着部は、前記レンズ枠部に嵌合することを特徴とする請求項5に記載の双眼ルーペ。
【請求項7】
前記ルーペ鏡筒は、装用時における前記装用者の下向きの視線に対応させた光軸方向で前記シールドレンズに固定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項8】
装用時の前記装用者の真正面視線方向と前記光軸方向とは、20°~55°の角度をなしていることを特徴とする請求項7に記載の双眼ルーペ。
【請求項9】
前記レンズ枠部は、前記拡大レンズを支持する可動部分と、当該可動部分を移動可能に支持し、前記対物側密着部と繋がる固定部分と、を有することを特徴とする
請求項1~8のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項10】
前記固定部分に対する前記可動部分の繰り出し量を調整可能な繰り出し量調整機構をさらに有することを特徴とする
請求項9に記載の双眼ルーペ。
【請求項11】
前記固定部分に対する前記可動部分の向きを調整可能な角度調整機構をさらに有することを特徴する
請求項9に記載の双眼ルーペ。
【請求項12】
前記固定部分に対する前記可動部分の光軸と交わる方向への位置を調整可能な位置調整機構をさらに有することを特徴とする
請求項9に記載の双眼ルーペ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の双眼ルーペに関する。
【背景技術】
【0002】
医科・眼科・歯科治療、外科手術等の医療現場において、医療用ルーペ、サージカルルーペ、サージテルルーペ等と呼ばれる双眼ルーペが活用されている。双眼ルーペを活用することにより、装用者は、通常の裸眼の状態(純粋に裸眼の状態に限らず、コンタクトレンズまたは眼鏡を着用している状態を含む。)であれば詳しく観察できないような狭く微細な部位であっても、当該部位を拡大して詳しく観察することができる。医療用の双眼ルーペとして、シールドレンズにルーペ鏡筒が直接固定されたTTLルーペ(Through The Lens Loupe)が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。また、TTLルーペにおけるシールドレンズへのルーペ鏡筒の固定形態としては、従来の第1の双眼ルーペにおける接着固定形態(例えば、特許文献1参照。)や、従来の第2の双眼ルーペにおける取付リング固定形態(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
図13は、従来の第1の双眼ルーペ801の説明図である。
図13(a)は、従来の第1の双眼ルーペ801の斜視図である。
図13(b)は、従来の第1の双眼ルーペ801におけるシールドレンズ820へのルーペ鏡筒830の固定形態を示す模式図である。
図13(b)では、ルーペ鏡筒830の光軸に沿った断面を、ルーペ鏡筒830の内部を省略して示している。
図14は、従来の第2の双眼ルーペ901の説明図である。
図14(a)は、従来の第2の双眼ルーペ901の斜視図である。
図14(b)は、従来の第2の双眼ルーペ901におけるシールドレンズ920へのルーペ鏡筒930の固定状態を示す模式図である。
図14(b)では、ルーペ鏡筒930の光軸に沿った断面を、ルーペ鏡筒930の内部を省略して示している。
【0004】
従来の第1の双眼ルーペ801は、
図13(a)に示すように、一般的な眼鏡枠形状のフレーム810と、フレーム810のシールドレンズ枠811に固定されたシールドレンズ820と、シールドレンズ820に固定されたルーペ鏡筒830と、を備えている。ルーペ鏡筒830は、
図13(b)に示すように、接眼側の外径の細い部分がシールドレンズ820内側の円穴821に通されている。そのうえで、ルーペ鏡筒830は、接着剤850によってシールドレンズ820に対して固定されている。従来の第1の双眼ルーペ801は、フレーム810の鼻受け部812が装用者の鼻に載せられ、耳掛け部814が装用者の耳に掛けられることで、装用者に装用される。装用者は、視線を所定の向きに移動させることにより、ルーペ鏡筒830を通して観察対象を拡大観察することができる。
【0005】
従来の第2の双眼ルーペ901は、
図14(a)に示すように、一般的な眼鏡枠形状のフレーム910と、フレーム910のシールドレンズ枠911に固定されたシールドレンズ920と、シールドレンズ920に固定されたルーペ鏡筒930と、を備えている。ルーペ鏡筒930は、
図14(b)に示すように、端部外周面に雄ねじを有する接眼側の外径の細い部分が、円筒状の対物側スペーサーリング933、シールドレンズ920内側の円穴921、円筒状の接眼側スペーサーリング934、に通されている。そのうえで、ルーペ鏡筒930には、円筒状で内周面に雌ねじ有する固定リング940が接眼側から螺合されている。これにより、ルーペ鏡筒930は、対物側スペーサーリング933及び接眼側スペーサーリング934によってシールドレンズ920を挟み込むようにして、シールドレンズ920に固定されている。従来の第2の双眼ルーペ901は、フレーム910の鼻受け部912が装用者の鼻に載せられ、耳掛け部914が装用者の耳に掛けられることで、装用者に装用される。装用者は、視線を所定の向きに移動させることにより、ルーペ鏡筒930を通して観察対象を拡大観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-144297号公報
【文献】特開2003-315688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の第1の双眼ルーペは、接着剤の劣化等により、シールドレンズからのルーペ鏡筒脱落の虞が大きいという問題がある。
【0008】
また、従来の第2の双眼ルーペは、第1の双眼ルーペと違ってシールドレンズからのルーペ鏡筒脱落の虞が小さいものの、ルーペ鏡筒全周囲において、シールドレンズをスペーサーリング等で挟み込んで固定する必要があるため、シールドレンズの外形形状を必要以上に大きくしなければならない場合があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、シールドレンズの外形形状を必要以上に大きくしなくとも、シールドレンズからのルーペ鏡筒脱落の虞が小さい医療用の双眼ルーペを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の双眼ルーペは、装用者が観察対象を拡大観察するために用いられる医療用の双眼ルーペであって、装用時に前記装用者の眼前を覆う透明又は半透明のシールドレンズと、前記シールドレンズに固定されたルーペ鏡筒と、を備え、前記シールドレンズは、前記ルーペ鏡筒を抱え込む鏡筒抱え込み部を有するとともに、当該鏡筒抱え込み部の近傍に固定用小貫通孔が形成されており、前記ルーペ鏡筒は、拡大レンズと、当該拡大レンズを支持するレンズ枠部と、当該レンズ枠部から張り出し、前記固定用小貫通孔の近傍において前記シールドレンズの対物側の面に密着する対物側密着部と、前記固定用小貫通孔を貫く連結軸を介して前記対物側密着部に着脱可能に固定され、前記固定用小貫通孔の近傍において前記シールドレンズの接眼側の面に密着する接眼側密着部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の双眼ルーペによれば、装用時に装用者の眼前を覆う透明又は半透明のシールドレンズと、拡大レンズを有し、シールドレンズに固定されたルーペ鏡筒と、を備えるため、装用者は、シールドレンズを通して前方を視認できるとともに視線を移動するだけでルーペ鏡筒を通した拡大観察を行うことができる。
【0012】
また、本発明の双眼ルーペにおいては、シールドレンズは、ルーペ鏡筒を抱え込む鏡筒抱え込み部を有するとともに、鏡筒抱え込み部の近傍に固定用小貫通孔が形成されている。また、ルーペ鏡筒は、拡大レンズを支持するレンズ枠部と、固定用小貫通孔の近傍においてシールドレンズの対物側の面に密着する対物側密着部と、固定用小貫通孔を貫く連結軸を介して対物側密着部に着脱可能に固定され、固定用小貫通孔の近傍においてシールドレンズの接眼側の面に密着する接眼側密着部と、を有している。すなわち、本発明の双眼ルーペによれば、ルーペ鏡筒がシールドレンズの固定用小貫通孔の近傍を対物側密着部と接眼側密着部とで挟み込まれて固定される構造でよいため、シールドレンズの外形を大きくしなくてもよい位置に対物側密着部を設ければよいことから、シールドレンズの外形形状を必要以上大きくしなくてもシールドレンズにルーペ鏡筒を固定できる。また、本発明の双眼ルーペによれば、両密着部をつなぐ連結軸がシールドレンズの固定用小貫通孔に引っかかる構造であるため、ルーペ鏡筒がシールドレンズから脱落する虞を小さくしてシールドレンズにルーペ鏡筒を固定できる。
【0013】
その結果、本発明の双眼ルーペは、シールドレンズの外形形状を必要以上に大きくしなくても、シールドレンズからのルーペ鏡筒脱落の虞が小さい医療用の双眼ルーペとなる。
【0014】
[2]本発明の双眼ルーペにおいては、前記シールドレンズの表面は曲面であり、前記対物側密着部の接眼側の面は、前記シールドレンズの表面形状に倣った曲面であることが好ましい。
【0015】
このように構成することで、対物側密着部をシールドレンズに十分に密着させることができるため、シールドレンズにルーペ鏡筒を安定させて固定できる。
【0016】
[3]本発明の双眼ルーペにおいては、前記シールドレンズの裏面は曲面であり、前記接眼側密着部の対物側の面は、前記シールドレンズの裏面形状に倣った曲面であることが好ましい。
【0017】
このように構成することで、接眼側密着部をシールドレンズに十分に密着させることができるため、シールドレンズにルーペ鏡筒を安定させて固定できる。
【0018】
[4]本発明の双眼ルーペにおいては、前記固定用小貫通孔が長孔形状に形成されており、前記連結軸が円柱形状に形成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することで、長孔形状の固定用小貫通孔内で円柱形状の連結軸を移動可能であるため、瞳孔間距離を調整可能にすることができる。
【0020】
[5]本発明の双眼ルーペにおいては、前記固定用小貫通孔は、複数形成されており、前記接眼側密着部は、それぞれの前記固定用小貫通孔の周囲において密着する複数の密着部分同士が連結した一体構造であることが好ましい。
【0021】
このように構成することで、接眼側密着部の部品点数を削減することができ、取り外した際の取り扱いを容易にすることができる。
【0022】
[6]本発明の双眼ルーペにおいては、前記接眼側密着部は、前記レンズ枠部に嵌合することが好ましい。
【0023】
このように構成することで、接眼側密着部が対物側密着部に固定されていない状態でもレンズ枠部で支持されるため、接眼側密着部の着脱を容易に行うことができる。
【0024】
[7]本発明の双眼ルーペにおいては、前記ルーペ鏡筒は、装用時における前記装用者の下向きの視線に対応させた光軸方向で前記シールドレンズに固定されていることが好ましい。
【0025】
[8]その際、装用時の前記装用者の真正面視線方向と前記光軸方向とは、20°~55°の角度をなしていることが好ましい。
【0026】
このように構成することで、装用者が、身体の正面で拡大観察ができるとともに、わずかな視線移動だけで拡大観察の有無を切り替えることができる。
【0027】
[9]本発明の双眼ルーペにおいては、前記鏡筒抱え込み部は、前記ルーペ鏡筒の逃げとしての切り欠きを有していてもよい。
【0028】
このように構成することで、シールドレンズの外形を必要以上に大きくしないようにできる。
【0029】
[10]本発明の双眼ルーペにおいては、前記レンズ枠部は、前記拡大レンズを支持する可動部分と、当該可動部分を移動可能に支持し、前記対物側密着部と繋がる固定部分と、を有していてもよい。
【0030】
[11]その際、前記固定部分に対する前記可動部分の繰り出し量を調整可能な繰り出し量調整機構をさらに有していてもよい。
【0031】
[12]またその際、前記固定部分に対する前記可動部分の向きを調整可能な角度調整機構をさらに有していてもよい。
【0032】
[13]またその際、前記固定部分に対する前記可動部分の光軸と交わる方向への位置を調整可能な位置調整機構をさらに有していてもよい。
【0033】
このように構成することで、装用者にさらに合わせた微調整をすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、シールドレンズの加工が容易で、シールドレンズの外形形状を必要以上に大きくしなくても、シールドレンズからのルーペ鏡筒脱落の虞が小さい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図7】実施形態1の双眼ルーペ1のシールドレンズ20の正面図である。
【
図8】実施形態1の双眼ルーペ1におけるシールドレンズ20へのルーペ鏡筒30の固定状態を示す模式図である。
【
図9】実施形態2の双眼ルーペ101の背面図である。
【
図10】実施形態2の双眼ルーペ101におけるシールドレンズ20へのルーペ鏡筒30の固定状態を示す模式図である。
【
図11】変形例におけるシールドレンズの正面図である。
【
図12】変形例におけるルーペ鏡筒の模式図である。
【
図13】従来の第1の双眼ルーペ801の説明図である。
図13(a)は、従来の第1の双眼ルーペ801の斜視図である。
図13(b)は、従来の第1の双眼ルーペ801におけるシールドレンズ820へのルーペ鏡筒830の固定状態を示す模式図である。
【
図14】従来の第2の双眼ルーペ901の説明図である。
図14(a)は、従来の第2の双眼ルーペ901の斜視図である。
図14(b)は、従来の第2の双眼ルーペ901におけるシールドレンズ920へのルーペ鏡筒930の固定状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の双眼ルーペおよび双眼ルーペを備える双眼ルーペ装置について、図面を参照して説明する。なお、本明細書では、直立した装用者に装用された状態における装用者から見た方向を基準として、「前」「後」「上」「下」「左」「右」方向を用いて説明する。また、双眼ルーペは、装用者の両眼それぞれに対応するシールドレンズ部、及びルーペ鏡筒(ルーペ)を有するが、図面において符号の後に「L」が付いている場合は、装用者の左眼用を表し、符号の後に「R」が付いている場合は、装用者の右眼用を表している。また、各図面は必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0037】
[実施形態1]
1-1.実施形態1に係る双眼ルーペ1の構成
図1は、実施形態1の双眼ルーペ1の斜視図である。
図2は、実施形態1の双眼ルーペ1の正面図である。
図3は、実施形態1の双眼ルーペ1の背面図である。
図4は、実施形態1の双眼ルーペ1の上面図である。
図5は、実施形態1の双眼ルーペ1の下面図である。
図6は、実施形態1の双眼ルーペ1の側面図である。
図7は、実施形態1の双眼ルーペ1のシールドレンズ20の正面図である。
図8は、実施形態1の双眼ルーペ1におけるシールドレンズ20へのルーペ鏡筒30の固定状態を示す模式図である。
図8では、ルーペ鏡筒30の光軸に沿った断面を、ルーペ鏡筒30の内部を省略して示している。
【0038】
実施形態1に係る双眼ルーペ1は、
図1~6に示すように、フレーム10と、フレーム10に固定されたシールドレンズ20と、シールドレンズ20に固定されたルーペ鏡筒30と、を備えている。双眼ルーペ1は、医科・眼科・歯科治療、外科手術等の医療現場において、装用者が視線を所定の向きに移動させることによりルーペ鏡筒30を通して観察対象を拡大観察するために用いられる観察器具である。双眼ルーペ1は、シールドレンズ20にルーペ鏡筒30が固定されたTTLルーペ(Through The Lens Loupe)である。双眼ルーペ1は、フレーム10が概ね一般的な眼鏡のフレーム形状をしており、シールドレンズ20が概ね一般的な眼鏡のレンズ形状(本実施形態ではゴーグルレンズ形状)をしていることで、ルーペ鏡筒30以外において概ね一般的な眼鏡形状をしている。これにより、双眼ルーペ1は、一般的な眼鏡と同様にして装用者に装用される。
【0039】
フレーム10は、装用者の顔面に沿うように主に左右方向に延びる上フレーム部11と、装用者の鼻に載るように下方に湾曲面を有する鼻受け部12と、上フレーム部11の中央部分と鼻受け部12とを繋いで中央に広がる中央フレーム部13と、上フレーム部11の両端部それぞれから後方に延びる耳掛け部14とを備えている。中央フレーム部13は、前面左右の稜線部から前方に突出した照明取り付け用壁を有し、この照明取り付け用壁を利用して照明装置(不図示)を取り付け可能に構成されている。また、中央フレーム部13は、下方にスリットを有し、下方からこのスリットにはめ込まれたシールドレンズ20を挟み込んで固定できるよう構成されている。双眼ルーペ1は、フレーム10の鼻受け部12が装用者の鼻に載せられ、耳掛け部14が装用者の耳に掛けられることで、装用者に装用される。
【0040】
シールドレンズ20は、左右方向に大きく広がる透明又は半透明の板からなる。シールドレンズ20の材質は、透光性のあるガラス又は樹脂を採用することができる。シールドレンズ20の表面及び裏面は、球体に沿うように湾曲している。シールドレンズ20は、
図7に示すように、中央部上方にフレーム10の中央フレーム部13のスリットに対応するフレーム固定用切り欠きS1を有し、中央部下方にフレーム10の鼻受け部12を逃げる鼻逃げ用切り欠きS2を有する。また、シールドレンズ20は、鼻逃げ用切り欠きS2の両側に、双眼ルーペ1に組み込まれた際にルーペ鏡筒30を抱え込む鏡筒抱え込み部21(21L,21R)を稜線とした円弧状の鏡筒抱え込み切り欠きS3を有している。これにより、鏡筒抱え込み部21は、ルーペ鏡筒30の逃げ(ルーペ鏡筒30を干渉させないようにした空間)としての切り欠きを有しており、ルーペ鏡筒30の全周囲の3/4程度を囲っている。それぞれの鏡筒抱え込み部21L,21Rの円弧中心間の距離は、装用者の瞳孔間距離(PD)を考慮して、50~70mm程度、例えば、56mm、60mm、64mmとなっている。さらに、シールドレンズ20には、鏡筒抱え込み部21の近傍に、前後方向へ小サイズで貫通する固定用小貫通孔22が複数(実施形態1では、それぞれの鏡筒抱え込み部21L,21Rあたり2つ)形成されている。シールドレンズ20は、フレーム10の中央フレーム部13にフレーム固定用切り欠きS1近傍が固定され、装用時に装用者の眼前を覆う。さらに詳しくは、シールドレンズ20は、装用時に装用者の真正面視線が鏡筒抱え込み部21の上方付近となるように、装用者の眼前を覆う。なお、シールドレンズ20は、度なしでも、装用者対応の度ありでもよい。また、シールドレンズ20は、拡大観察できないものであっても、僅かに拡大観察できるものであってもよい。
【0041】
ルーペ鏡筒30は、フレーム10を介さずにシールドレンズ20に直接固定されている。ルーペ鏡筒30は、拡大レンズ31と、拡大レンズ31を支持するレンズ枠部32と、シールドレンズ20の対物側の面に密着する対物側密着部33と、シールドレンズ20の接眼側の面に密着する接眼側密着部34と、対物側密着部33及び接眼側密着部34間を繋ぐ連結軸35と、を有している。
【0042】
拡大レンズ31は、1又は複数のガラスレンズ又は樹脂レンズで構成された拡大観察可能なレンズ光学系である。拡大レンズ31は、所望の拡大率や光学特性に従って、さまざまなレンズ構成が採用される。拡大レンズ31を構成する各レンズは、一般的には外形が円形のレンズであるが、例えば、太鼓形や四角形のレンズを採用してもよい。また、拡大レンズ31のレンズ構成にフィルター等のレンズ以外の光学部品が含まれていてもよい。
【0043】
レンズ枠部32は、拡大レンズ31を構成するレンズ光学系が内径部に嵌合するように構成された段付きの略円筒状又の筒である。レンズ枠部32は、拡大レンズ31を構成するレンズ光学系間のスペースを確保するために内径部に嵌合されるスペーサーや、拡大レンズ31を構成するレンズ光学系を押さえるために内径部に螺合される押さえリングを含む場合がある。レンズ枠部32の素材には、金属部材又は樹脂部材を採用することができる。レンズ枠部32は、内部光学系の乱反射の影響を抑えるために、黒色であることが好ましい。
【0044】
対物側密着部33は、
図1、2、5、及び8に示すように、レンズ枠部32の外周面から楕円フランジ形状で張り出している。対物側密着部33は、少なくともシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の周囲近傍を覆っている。対物側密着部33は、接眼側の面がシールドレンズ20の表面形状に倣った曲面となっており、少なくともシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の近傍において、シールドレンズ20の表面に密着している。対物側密着部33の接眼側の曲面は、シールドレンズ20の表面に密着させた際に、上下方向から見て、真正面視線方向L1に対して拡大レンズ31の光軸方向L2がやや内向きになるよう曲面が形成されている(
図5参照)。真正面視線方向L1と拡大レンズ31の光軸方向L2とのなす角αは、例えば、4°に設定されている。また、対物側密着部33の接眼側の曲面は、シールドレンズ20の表面に密着させた際に、左右方向から見て、真正面視線方向L1に対して拡大レンズ31の光軸方向L2がやや下向きになるよう曲面が形成されている(
図6参照)。真正面視線方向L1と拡大レンズ31の光軸方向L2とのなす角βは、例えば、30°に設定されている。対物側密着部33は、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22と重なる位置に貫通孔33hが形成されている。対物側密着部33の素材には、金属部材又は樹脂部材を採用することができる。なお、対物側密着部33の対物側の面は、接眼側の面と異なりシールドレンズ20の表面形状による制約はなく、曲面であっても平面であってもよい。また、対物側密着部33は、レンズ枠部32と一体として形成されたものであってもよいし、レンズ枠部32とは別体で形成された後にレンズ枠部32と結合されたものであってもよい。
【0045】
接眼側密着部34は、
図3、4、及び8に示すように、内側に穴の開いた略楕円形状の部材である。接眼側密着部34の内側の穴は、レンズ枠部32の外径サイズに対応した内径又は内幅を有している。これにより、接眼側密着部34は、レンズ枠部32に嵌合可能である。接眼側密着部34は、レンズ枠部32に嵌合させた際、少なくともシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の周囲近傍を覆っている。接眼側密着部34は、対物側の面がシールドレンズ20の裏面形状に倣った曲面となっており、少なくともシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の近傍において、シールドレンズ20の裏面に密着している。接眼側密着部34は、それぞれのシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の周囲において密着する複数の密着部分同士が連結した一体構造となっている。接眼側密着部34は、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22と重なる位置にネジ穴34h(又はネジ用下穴)が形成されている。接眼側密着部34の素材には、金属部材又は樹脂部材を採用することができる。接眼側密着部34は、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫く後述の連結軸35を介して、対物側密着部33に着脱可能に固定されている。
【0046】
連結軸35は、一例として、固定ビスの軸である。連結軸35を含む固定ビスは、
図8に示すように、固定ビスの頭を対物側に向けて連結軸35が対物側密着部33の貫通孔33h、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫き、連結軸35の先端部分が接眼側密着部34のネジ穴34hと螺合している。これにより、連結軸35を含む固定ビスは、対物側密着部33をシールドレンズ20の表面に押し付けているとともに、接眼側密着部34をシールドレンズ20の裏面に押し付けている。
【0047】
これらの各部を有するルーペ鏡筒30は、装用者の内向き(真正面視線方向L1に対し4°内向き)及び下向き(真正面視線方向L1に対し30°下向き)の視線に対応させた光軸方向L2で、対物側密着部33と接眼側密着部34とでシールドレンズを挟み込み、シールドレンズ20に対して特に前後方向において強固に固定されている。このとき、ルーペ鏡筒30は、連結軸35がシールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫通していることで、シールドレンズ20に対して、上下方向及び左右方向においても強固に固定されている。なお、ルーペ鏡筒30は、連結軸35を含む固定ビスを緩めて外せば、シールドレンズ20から取り外し可能である。
【0048】
1-2.実施形態1に係る双眼ルーペ1の使用方法
医療現場によって異なるが、双眼ルーペ1は、概ね次のような装用方法となる。なお、滅菌等の作業が必要になる場合もあるが、滅菌等の作業については説明を省略する。
【0049】
(1)双眼ルーペの装着
装用者は、フレーム10の鼻受け部12を鼻に載せ、フレーム10の耳掛け部14を耳に掛けることで、双眼ルーペ1を装着する。
【0050】
(2)拡大観察を行わない時
装用者は、視線を正面に向けることで、シールドレンズ20越しに観察対象を観察する。なお、装用者の眼は、眼前がシールドレンズ20で覆われているため、前方からの飛沫等から保護されている。
【0051】
(3)拡大観察を行う時
装用者は、視線を僅かに下向きに向けることで、ルーペ鏡筒30の拡大レンズ31越しに観察対象を拡大観察する。
【0052】
1-3.実施形態1の効果
実施形態1に係る双眼ルーペ1によれば、装用時に装用者の眼前を覆う透明又は半透明のシールドレンズ20と、拡大レンズ31を有し、シールドレンズ20に固定されたルーペ鏡筒30と、を備えるため、装用者は、シールドレンズ20を通して前方を視認できるとともに視線を移動するだけでルーペ鏡筒30を通した拡大観察を行うことができる。
【0053】
双眼ルーペ1おいては、シールドレンズ20は、ルーペ鏡筒30を抱え込む鏡筒抱え込み部21を有するとともに、鏡筒抱え込み部21の近傍に固定用小貫通孔22が形成されている。また、ルーペ鏡筒30は、拡大レンズ31を支持するレンズ枠部32と、固定用小貫通孔22の近傍においてシールドレンズ20の対物側の面に密着する対物側密着部33と、固定用小貫通孔22を貫く連結軸35を介して対物側密着部33に着脱可能に固定され、固定用小貫通孔22の近傍においてシールドレンズ20の接眼側の面に密着する接眼側密着部34と、を有している。すなわち、双眼ルーペ1によれば、ルーペ鏡筒30がシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の近傍を対物側密着部33と接眼側密着部34とで挟み込まれて固定される構造でよいため、シールドレンズ20の外形を大きくしなくてもよい位置に対物側密着部33を設ければよいことから、シールドレンズ20の外形形状を必要以上大きくしなくてもシールドレンズ20にルーペ鏡筒30を固定できる。また、双眼ルーペ1によれば、両密着部33,34をつなぐ連結軸35がシールドレンズ20の固定用小貫通孔22に引っかかる構造であるため、ルーペ鏡筒30がシールドレンズ20から脱落する虞を小さくしてシールドレンズ20にルーペ鏡筒30を固定できる。
【0054】
その結果、双眼ルーペ1は、シールドレンズ20の外形形状を必要以上に大きくしなくても、シールドレンズ20からのルーペ鏡筒30脱落の虞が小さい医療用の双眼ルーペとなる。
【0055】
双眼ルーペ1は、シールドレンズ20の表面が曲面であり、対物側密着部33の接眼側の面がシールドレンズ20の表面形状に倣った曲面である。このため、双眼ルーペ1においては、対物側密着部33をシールドレンズ20に十分に密着させることができるため、シールドレンズ20にルーペ鏡筒30を安定させて固定できる。
【0056】
双眼ルーペ1は、シールドレンズ20の裏面が曲面であり、接眼側密着部34の対物側の面がシールドレンズ20の裏面形状に倣った曲面である。このため、双眼ルーペ1においては、接眼側密着部34をシールドレンズ20に十分に密着させることができるため、シールドレンズ20にルーペ鏡筒30を安定させて固定できる。
【0057】
双眼ルーペ1は、固定用小貫通孔22が複数形成されており、接眼側密着部34がそれぞれの固定用小貫通孔22の周囲において密着する複数の密着部分同士が連結した一体構造となっている。このため、双眼ルーペ1においては、接眼側密着部34の部品点数を削減することができ、取り外した際の取り扱いを容易にすることができる。
【0058】
双眼ルーペ1は、接眼側密着部34がレンズ枠部32に嵌合する。このため、双眼ルーペ1においては、接眼側密着部34が対物側密着部33に固定されていない状態でもレンズ枠部32で支持されるため、接眼側密着部34の着脱を容易に行うことができる。
【0059】
双眼ルーペ1は、ルーペ鏡筒30が装用時における装用者の下向きの視線に対応させた光軸方向L2でシールドレンズ20に固定されている。その際、装用時の装用者の真正面視線方向L1と前記光軸方向L2とは、30°の角度βをなしている。このため、双眼ルーペ1においては、装用者が、身体の正面で拡大観察ができるとともに、わずかな視線移動だけで拡大観察の有無を切り替えることができる。
【0060】
双眼ルーペ1においては、鏡筒抱え込み部21がルーペ鏡筒30の逃げとしての切り欠きを有しているため、シールドレンズ20の外形を必要以上に大きくしないように構成できる。
【0061】
[実施形態2]
図9は、実施形態2の双眼ルーペ101の背面図である。
図10は、実施形態2の双眼ルーペ101におけるシールドレンズ20へのルーペ鏡筒130の固定状態を示す模式図である。
図10では、ルーペ鏡筒130の光軸に沿った断面を、ルーペ鏡筒130の内部を省略して示している。
【0062】
実施形態2に係る双眼ルーペ101は、材質を含め、基本的には実施形態1の双眼ルーペ1と同様の構成を有するが、ルーペ鏡筒の形態が実施形態1の双眼ルーペ1の場合と異なる。すなわち、
図9~10に示すように、実施形態1のルーペ鏡筒30がレンズ枠部32と嵌合する接眼側密着部34を有し、連結軸35を含む固定用ビスの頭を対物側に向けた形態であったのに対し、ルーペ鏡筒130がそうではない形態である。以下では、実施形態1と異なるルーペ鏡筒の形態、及び形態の違いに伴う固定形態の違いのみ説明し、他の説明を省略する。
【0063】
図9~10に示すように、ルーペ鏡筒130は、フレーム10を介さずにシールドレンズ20に直接固定されている。ルーペ鏡筒130は、拡大レンズ131と、拡大レンズ131を支持するレンズ枠部132と、シールドレンズ20の対物側の面に密着する対物側密着部133と、シールドレンズ20の接眼側の面に密着する接眼側密着部134と、対物側密着部133及び接眼側密着部134間を繋ぐ連結軸135と、を有している。拡大レンズ131及びレンズ枠部132については、実施形態1の拡大レンズ31及びレンズ枠部32と同様であるため、説明を割愛する。
【0064】
対物側密着部133は、基本的には実施形態1の対物側密着部33と同様であるが、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22と重なる位置にある貫通孔がネジ穴133h(又はネジ用下穴)である点において異なる。その他、実施形態1の対物側密着部133と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
接眼側密着部134は、一例として、
図10に示すように、固定ビスの頭134a及び固定ビスの頭134aに押さえつけられている弾性体134bである。接眼側密着部134は、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22の数に対応させて複数箇所に存在している。接眼側密着部134は、固定ビスの頭134aが弾性体134bの接眼側の面を押さえつけ、弾性体134bが固定ビスの頭134aに押さえつけられて変形することで対物側の面においてシールドレンズ20の固定用小貫通孔22の周囲近傍に密着して、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22の周囲近傍を覆っている。接眼側密着部134は、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫く後述の連結軸135を介して、対物側密着部133に着脱可能に固定されている。
【0066】
連結軸135は、一例として、固定ビスの頭134aと一体の固定ビスの軸である。連結軸135は、
図10に示すように、シールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫き、先端部分が対物側密着部133のネジ穴133hと螺合している。これにより、連結軸135と一体の固定ビスは、対物側密着部133をシールドレンズ20の表面に押し付けているとともに、弾性体134b(接眼側密着部134)をシールドレンズ20の裏面に押し付けている。
【0067】
これらの各部を有するルーペ鏡筒130は、対物側密着部133と接眼側密着部134とでシールドレンズ20を挟み込み、シールドレンズ20に対して特に前後方向において強固に固定されている。このとき、ルーペ鏡筒130は、連結軸135がシールドレンズ20の固定用小貫通孔22を貫通していることで、シールドレンズ20に対して、上下方向及び左右方向においても強固に固定されている。なお、ルーペ鏡筒130は、連結軸135を含む固定ビスを緩めて外せば、シールドレンズ20から取り外し可能である。
【0068】
このように構成された双眼ルーペ101は、基本的には実施形態1の双眼ルーペ1と同様の構成であるため、実施形態1の双眼ルーペ1と同様、シールドレンズ20の外形形状を必要以上に大きくしなくても、シールドレンズ20からのルーペ鏡筒130脱落の虞が小さい医療用の双眼ルーペとなる。
【0069】
以上、本発明を上記の実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0070】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ、角度等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0071】
(2)上記した実施形態において、シールドレンズがゴーグルレンズ形状をしているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シールドレンズは、
図13及び14の従来例に示すように左右分離した眼鏡型レンズ形状であってもよい。その際、フレームは、左右分離したそれぞれのレンズ部を囲むようにしたフレーム部を有していてもよい。
【0072】
(3)上記した実施形態において、連結軸が対物側密着部及び接眼側密着部と分離可能な固定ビスの軸であるもとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、連結軸は、対物側密着部又は接眼側密着部と一体に形成されたこれらの部分から突出する軸であってもよい。また例えば、連結軸は、リベットのようなネジ山を有さないものであってもよい。また例えば、連結軸は、ボルトナットのようなセットの締結具の軸であってもよい。また例えば、連結軸は、ネジ頭のない圧入ピンであってよい。すなわち、連結軸は、シールドレンズの固定用小貫通孔を貫通するとともに対物側密着部と接眼側密着部とを連結可能あればよい。
【0073】
(4)上記した実施形態において、ルーペ鏡筒が装用者の真正面視線方向L1に対し30°下向きの視線に対応させた光軸方向L2でシールドレンズに固定されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ルーペ鏡筒は、装用者の要望に応じて、装用者の真正面視線方向L1に対し20°~55°程度の角度をなす下向きの視線に対応させた光軸方向L2でシールドレンズに固定されていてもよい。その際、シールドレンズは、ルーペ鏡筒との干渉度合いによって以下のような変形も可能である。
【0074】
図11は、変形例におけるシールドレンズの正面図である。
図11(a)は、真正面視線方向L1と光軸方向L2とのなす角が55°のルーペ鏡筒に用いられるシールドレンズ120の正面図である。
図11(b)は、真正面視線方向L1と光軸方向L2とのなす角が20°のルーペ鏡筒に用いられるシールドレンズ220の正面図である。
【0075】
図11(a)に示すシールドレンズ120は、真正面視線方向L1と光軸方向L2とのなす角が55°と、実施形態1よりもルーペ鏡筒が下向きに固定される双眼ルーペ用である。シールドレンズ120は、双眼ルーペに組み込まれた際にルーペ鏡筒を抱え込む鏡筒抱え込み部121(121L,121R)を稜線とした円弧状の鏡筒抱え込み切り欠きS13を有している。シールドレンズ120の鏡筒抱え込み切り欠きS13は、ルーペ鏡筒がより下向きであることで実施形態1の鏡筒抱え込み切り欠きS3と同等量の切り欠きではルーペ鏡筒の径の太い部分と干渉してしまうため、実施形態1の鏡筒抱え込み切り欠きS3よりも大きく切り欠かれている。これにより、鏡筒抱え込み部121は、ルーペ鏡筒の全周囲の1/2程度を囲っている。シールドレンズ120には、鏡筒抱え込み部121の近傍に、前後方向へ小サイズで貫通する固定用小貫通孔122が複数形成されている。固定用小貫通孔122は、鏡筒抱え込み切り欠きS13が実施形態1の鏡筒抱え込み切り欠きS3よりも大きくなっているのに伴い、実施形態1の固定用小貫通孔22よりも上方の位置に形成されている。すなわち、シールドレンズ120は、ルーペ鏡筒を固定するための面積拡大がされていない。
【0076】
図11(b)に示すシールドレンズ220は、真正面視線方向L1と光軸方向L2とのなす角が20°と、実施形態1よりもルーペ鏡筒が上向きに固定される双眼ルーペ用である。シールドレンズ120は、双眼ルーペに組み込まれた際にルーペ鏡筒を抱え込む鏡筒抱え込み部221(221L,221R)を稜線とした円形状の鏡筒抱え込み穴S23を有している。シールドレンズ120の鏡筒抱え込み穴S23は、ルーペ鏡筒がより上向きであることでルーペ鏡筒の径の細い部分しか干渉しないため、実施形態1の鏡筒抱え込み切り欠きS3のように切り欠きではなく、穴となっている。これにより、鏡筒抱え込み部221は、ルーペ鏡筒の全周囲を囲っている。シールドレンズ220には、鏡筒抱え込み部221の近傍に、前後方向へ小サイズで貫通する長孔形状の固定用小貫通孔222が複数形成されている。なお、双眼ルーペに組み込まれた際、この長孔形状の固定用小貫通孔222を貫く連結軸は、円柱形状に形成されていることが好ましい。このように構成することで、長孔形状の固定用小貫通孔222内で円柱形状の連結軸を移動可能であるため、瞳孔間距離を調整可能にすることができる。
【0077】
(5)上記した実施形態において、ルーペ鏡筒は、拡大レンズがレンズ枠部に固定され、対物側密着部がレンズ枠部と一体的となっていると説明した。すなわち、拡大レンズと対物側密着部との位置関係が変わらないものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ルーペ鏡筒は、例えば
図12(a)~(c)に示すような、いわゆる可動タイプであってもよい。
【0078】
図12は、変形例におけるルーペ鏡筒の模式図である。
図12(a)は、繰り出し量調節機構を有するルーペ鏡筒230の模式図である。
図12(b)は、角度調整機構を有するルーペ鏡筒330の模式図である。
図12(c)は、PD距離調整機構を有するルーペ鏡筒430の模式図である。
図12(a)~(c)に示すルーペ鏡筒230,330,430においては、それぞれのレンズ枠部232,332,432は、拡大レンズを支持する可動部分232A,332A,432Aと、可動部分232A,332A,432Aを移動可能に支持し、対物側密着部33と繋がる固定部分232B,332B,432Bと、を有している。
【0079】
図12(a)に示すルーペ鏡筒230のレンズ枠部232は、拡大レンズ(レンズ光学系)を内径部に嵌合させており、外径部の後方に雄ネジが形成された可動部分232Aと、円筒状で内径部に雌ネジが形成されている固定部分232Bと、を有している。ルーペ鏡筒230は、可動部分232Aが固定部分232Bに螺合されており、可動部分232Aが固定部分232Bに対して前後方向へ移動可能に構成されている。換言すると、ルーペ鏡筒230は、固定部分232Bに対する可動部分232Aの繰り出し量を調整可能な繰り出し量調整機構を有している。このように構成されたルーペ鏡筒230は、装用者にさらに合わせてレンズ光学系の繰り出し量の微調整をすることができる。なお、繰り出し量調整機構としては、他に例えば、固定部分に対して可動部分をスライドさせる機構等、既知の機構を採用してもよい。
【0080】
図12(b)に示すルーペ鏡筒330のレンズ枠部332は、拡大レンズ(レンズ光学系)を内径部に嵌合させており、外径部に球面凸部が形成されている可動部分332Aと、円筒状で内径部に球面凹部が形成されている固定部分332Bと、を有している。ルーペ鏡筒330は、可動部分332Aの球面凸部が固定部分232Bの球面凹部に嵌め合わされており、可動部分332Aが固定部分332Bに対して首振り可能に構成されている。換言すると、ルーペ鏡筒330は、固定部分332Bに対する可動部分332Aの向きを調整可能な角度調整機構を有している。このように構成されたルーペ鏡筒330は、装用者にさらに合わせて光軸向きの微調整をすることができる。なお、角度調整機構としては、他に例えば、固定部分と繋がるピンを軸にして可動部分を回転させる機構等、既知の機構を採用してもよい。
【0081】
図12(c)に示すルーペ鏡筒430のレンズ枠部432は、拡大レンズ(レンズ光学系)を内径部に嵌合させている可動部分432Aと、円筒状の固定部分432Bと、を有している。ルーペ鏡筒430は、可動部分432Aが径方向に延びる移動軸436を介して固定部分432Bに固定されており、可動部分432Aが固定部分432Bに対して左右又は上下方向へ移動可能構成されている。換言すると、ルーペ鏡筒430は、固定部分432Bに対する可動部分432Aの光軸と交わる方向への位置を調整可能な位置調整機構を有している。このように構成されたルーペ鏡筒330は、左右それぞれのルーペ鏡筒の位置を調整することで、装用者にさらに合わせて、瞳孔間距離(PD)の微調整をすることができる。なお、位置調整機構としては、他に例えば、カムを利用して固定部分に対する可動部分位置を移動させる機構等、既知の機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,101…双眼ルーペ、20…シールドレンズ、30…ルーペ鏡筒、21,121,221…鏡筒抱え込み部、22,122,222…固定用小貫通孔、31,131…拡大レンズ、32,132,232,332,432…レンズ枠部、33,133…対物側密着部、34,134…接眼側密着部、35,135…連結軸、232A,332A,432A…可動部分、232B,332B,432B…固定部分、L1…真正面視線方向、L2…光軸方向