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特許74489453次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】3次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240306BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240306BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G06T7/00 650A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020090099
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184069
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年5月23日に、The 30th IEEE Intelligent Vehicles Symposiumのウェブサイト(https://iv2019.org/program/)にて講演要旨が掲載 令和1年6月8日に、The 30th IEEE Intelligent Vehicles Symposiumにて配布による公開 令和1年6月10日に、The 30th IEEE Intelligent Vehicles Symposiumにて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、戦略的情報通信研究開発推進事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・アムル・アッディバージャ
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512802(JP,A)
【文献】特開2019-211466(JP,A)
【文献】特開2019-124808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-10
G06T 7/00-194
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDAR(Light Detection and Ranging)から取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び前記強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、
生成された前記3次元データにおける位置誤差を削減することで、3次元マップを生成するマップ生成ステップとを含み、
前記マップ生成ステップは、
前記XY面マップに対してグラフSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減ステップと、
前記XY面誤差削減ステップによって位置誤差が削減された前記XY面マップに対応する前記Z面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減ステップとを含む
3次元マップ生成方法。
【請求項2】
前記3次元データ生成ステップは、所定の矩形領域における前記強度画像を前記XY面マップとし、前記強度画像に対応する前記標高画像を前記Z面マップとし、前記XY面マップと前記Z面マップとの組をノードとする複数のノードの連結を前記3次元データとして生成し、
前記複数のノードのそれぞれに対して、対応する前記XY面マップが示す矩形領域の特定のコーナーのグローバルポジションを識別子として付与する
請求項1記載の3次元マップ生成方法。
【請求項3】
前記3次元データ生成ステップは、前記複数のノードのそれぞれについて、前記車両に搭載されたGPS(Global Positioning System)から初期位置を取得し、取得された前記初期位置を基準として前記フレームを蓄積していく推測航法により、当該ノードの前記XY面マップ及び前記Z面マップを生成する
請求項2記載の3次元マップ生成方法。
【請求項4】
前記XY面誤差削減ステップ及び前記Z面誤差削減ステップでは、それぞれ、前記XY面マップ及び前記Z面マップに対して、前記複数のノードの連結を示すグラフにおけるループを前記車両で周回して同じ点を観測することで累積誤差を削減するループ閉鎖を行うことにより、前記XY面及び前記Z面での位置誤差を削減する
請求項2又は3記載の3次元マップ生成方法。
【請求項5】
前記XY面誤差削減ステップでは、位相相関によって2つの前記XY面マップが示す道路を含む地表面のテクスチャ及び形状の一致性を確保することで、前記位置誤差を削減する
請求項2~4のいずれか1項に記載の3次元マップ生成方法。
【請求項6】
前記XY面誤差削減ステップ及び前記Z面誤差削減ステップでは、それぞれ、
異なる2つのノードの前記XY面マップ及び前記Z面マップにおいて共通する領域の一致性である一貫性と、
異なる2つのノードの前記XY面マップ及び前記Z面マップにおけるエッジの連続性であるコヒーレンシと、
前記XY面マップ及び前記Z面マップでの位置とGPSで得られる位置との一致性である正確性と
の少なくとも一つを評価するコスト関数を用いて、前記位置誤差を削減する
請求項2~5のいずれか1項に記載の3次元マップ生成方法。
【請求項7】
車両に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDAR(Light Detection and Ranging)から取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び前記強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成部と、
生成された前記3次元データにおける位置誤差を削減することで、3次元マップを生成するマップ生成部とを備え、
前記マップ生成部は、
前記XY面マップに対してグラフSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減部と、
前記XY面誤差削減部によって位置誤差が削減された前記XY面マップに対応する前記Z面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減部とを有する
3次元マップ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置に関し、特に、自律走行車両のための3次元マップを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全な自律走行を可能にするためには、精度の高い3次元マップが必要である。GNSS(Global Navigation Satellite System;汎地球測位航法衛星システム)を用いることで、高い精度での測位が可能であるが、高いコストが必要とされるだけでなく、長いトンネル内、木が密集している箇所、高い建物が多い箇所等では、衛星信号が偏向されたり妨げられたりするため、精度の高い地図の生成が困難となる。このような問題を解決しない場合には、多大な時間、データ及びコストを失って、自律走行している車両をドリフトさせて交通事故を招く恐れがある危険なマップを生成してしまうことになり得る。
【0003】
そこで、従来、走行する車両に搭載したLiDAR(Light Detection and Ranging)から取得した3次元距離画像を示すポイントクラウド(point clouds)に対してSLAM(Simultaneous Localization And Mapping;同時位置推定と地図生成)を実行することでマップを生成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-207220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ポイントクラウドを用いた3次元画像を伴うマップを生成するものであり、正確なグローバルポジション(XY面での位置)と正確な標高(Z面での位置)を示す位置精度の高い3次元マップを生成するものではない。
【0006】
より詳しくは、特許文献1の技術は、ポイントクラウドを用いてSLAMに基づいてマップを生成しているが、実装に関しては非常に複雑である。これは、ポイントクラウドを用いて環境の3次元形状を表すからである。ポイントクラウドは、データサイズがきわめて大きく、長いコースを処理する際には大きな負荷となる。さらに、ポイントクラウドは、車両やその他の動的オブジェクトをマップで表すため、特にZ方向のトラフィックの流れの影響を受ける。さらに、SLAMで良好な結果を得るための最も重要な解決策として、環境機能を利用して位置誤差を補正しているが、ポイントクラウドは非常にスパースであり、2つポイントクラウドを一致させることによってエラーを補正できる可能性は低い。さらに、ポイントクラウドのスパース性のため、反復マッチング手法を使用する必要があるが、そのような手法は、時間の消費という点で非常にコストのかかるプロセスになる。
【0007】
そこで、本発明は、位置精度の高い3次元マップを生成する3次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る3次元マップ生成方法は、車両に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDARから取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び前記強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、生成された前記3次元データにおける位置誤差を削減することで、3次元マップを生成するマップ生成ステップとを含み、前記マップ生成ステップは、前記XY面マップに対してグラフSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減ステップと、前記XY面誤差削減ステップによって位置誤差が削減された前記XY面マップに対応する前記Z面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減ステップとを含む。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る3次元マップ生成装置は、車両に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDARから取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び前記強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成部と、生成された前記3次元データにおける位置誤差を削減することで、3次元マップを生成するマップ生成部とを備え、前記マップ生成部は、前記XY面マップに対してグラフSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減部と、前記XY面誤差削減部によって位置誤差が削減された前記XY面マップに対応する前記Z面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、位置精度の高い3次元マップを生成する3次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る3次元マップ生成装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態に係る3次元マップ生成装置の動作手順を示すフローチャートである。
図3図3は、3次元マップの生成に用いられた車両の外観、及び、車両に搭載されたLiDARから取得されるポイントクラウドの例を示す図である。
図4図4は、3次元データ生成部が生成する強度画像のフレーム及び標高画像のフレームの例を示す図である。
図5図5は、推測航法によりフレームを蓄積していく3次元データ生成部による処理を説明する図である。
図6図6は、3次元データ生成部によって生成されたXY面マップの例を示す図である。
図7図7は、3次元データ生成部によって生成されたZ面マップの例を示す図である。
図8図8は、3次元データ生成部によって生成される3次元データの例を示す図である。
図9図9は、3次元データ生成部が行うグラフSLAMのループ閉鎖を説明する図である。
図10図10は、XY面誤差削減部による位相相関処理を説明する図である。
図11図11は、コスト関数で評価される一貫性を説明する図である。
図12図12は、コスト関数で評価されるコヒーレンシを説明する図である。
図13図13は、コスト関数で評価される正確性を説明する図である。
図14図14は、図2のステップS12c及びS13bの処理をまとめた図である。
図15A図15Aは、図14に示される処理手順によるメリットを説明する図である。
図15B図15Bは、図14に示される処理手順によるメリットを説明する別の図である。
図16図16は、実験に用いた車両の走行軌跡を示す図である。
図17図17は、3次元マップ生成装置が生成したXY面マップの位置精度の高さを示す図である。
図18図18は、木が密集している箇所において3次元マップ生成装置が生成したXY面マップとGNSSを用いて生成したXY面マップとの比較を示す図である。
図19図19は、3次元マップ生成装置が生成したZ面マップの位置精度の高さを示す図である。
図20図20は、図18に示される木が密集している箇所において3次元マップ生成装置が生成したZ面マップとGNSSを用いて生成したZ面マップとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、手法、構成要素、構成要素の接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。また、本明細書において、GNSS及びGPS(Global Positioning System)は、GNSS/INS-RTK(GNSS-aided Inertial Navigation System-Real Time Kinematic)を意味する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る3次元マップ生成装置10の構成を示すブロック図である。3次元マップ生成装置10は、道路を走行する車両に搭載されたLiDAR11及びGPS12から、それぞれ、ポイントクラウド及び測位データを取得することで、XY面マップ及びZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成部13と、生成された3次元データにおける位置誤差を削減することで3次元マップ15を生成するマップ生成部14とを備える。
【0014】
3次元データ生成部13は、LiDARから取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像(つまり、輝度画像)のフレームで構成されるXY面マップ及び強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する。
【0015】
マップ生成部14は、3次元データ生成部13で生成された3次元データのXY面マップに対して、グラフをベースとするSLAM(以下、グラフSLAMという)を実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減部14aと、XY面誤差削減部14aによって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して、グラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減部14bとを有する。
【0016】
なお、3次元データ生成部13及びマップ生成部14は、データ処理を実行する機能ブロックであり、プログラムを格納する不揮発性メモリ、データを一時的に格納する揮発性メモリ、プログラムを実行するプロセッサ、周辺装置との入出力を行う入出力インタフェース等を備えるコンピュータ装置によって実現される。
【0017】
図2は、実施の形態に係る3次元マップ生成装置10の動作手順(つまり、3次元マップ生成方法)を示すフローチャートである。
【0018】
図2のステップS10]
まず、3次元データ生成部13は、道路を走行する車両に搭載されたLiDAR11及びGPS12から、それぞれ、ポイントクラウド及び測位データを取得する(S10)。
【0019】
図3は、3次元マップの生成に用いられた車両20の外観(図3の(a))、及び、車両20に搭載されたLiDAR11から取得されるポイントクラウドの例(図3の(b))を示す図である。
【0020】
図2のステップS11]
次に、3次元データ生成部13は、LiDAR11及びGPS12から取得したポイントクラウド及び測位データから、ノードの連結からなる3次元データを生成する(図のS11)。より詳しくは、3次元データ生成部13は、LiDAR11から取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレーム及び強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームを生成する。そして、3次元データ生成部13は、所定の矩形領域における強度画像のフレームを連結したものをXY面マップとし、強度画像に対応する標高画像のフレームを連結したものをZ面マップとし、XY面マップとZ面マップとの組をノードとする複数のノードの連結を3次元データとして生成する。このとき、3次元データ生成部13は、複数のノードのそれぞれに対して、対応するXY面マップが示す矩形領域の特定のコーナーのグローバルポジションを識別子として付与する。
【0021】
より詳しくは、3次元データ生成部13は、複数のノードのそれぞれについて、車両20に搭載されたGPS12から初期位置を取得し、取得された初期位置を基準としてフレームを蓄積していく推測航法(Dead-Reckoning)により、当該ノードのXY面マップ及びZ面マップを生成する。
【0022】
このように、環境を表すために、3次元ポイント分布パターンを用いるのではなく、道路の輝度画像を使用している。輝度画像は、道路のランドマークが静止しており、Z方向の車両表現などの動的オブジェクトの影響を受けずに位置誤差を補正するために利用できる非常に目立つパターンを形成しているからである。そして、グラフSLAMの適用を2つのフェーズに分割している。一つは、XY平面であり、もう一つは、Z平面である。XY平面では、路面とランドマークは、輝度値を用いて、ノード戦略に基づいて広い領域におけるLIDARフレームが蓄積されることから、非常に密(30cmで)にエンコードされる。これは、1つのまばらなポイントクラウドを使用する代わりに、環境機能を活用するという非常に重要な点である。ノードの輝度画像により、XY平面内のノード間の位置誤差を大幅に補正できる。したがって、XY平面にグラフSLAMを適用し、グローバル座標系でのノードの輝度画像の位置を最適化する。その結果、最適化されたノードの標高画像はXY平面で移動される。したがって、一部の領域を共有するノードは、実際の環境と同じ環境を表すため、同じZレベルにある必要があるので、Z平面での位置誤差を補正するために、標高画像にグラフSLAMが適用される。
【0023】
図4は、3次元データ生成部13が生成する強度画像のフレーム(図4の(a))及び標高画像のフレーム(図4の(b))の例を示す図である。3次元データ生成部13は、LiDAR11から取得したポイントクラウドに対して地表面から30cmの高さでカットすることで、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームを生成する。
【0024】
図5は、推測航法によりフレームを蓄積していく3次元データ生成部13による処理を説明する図である。ここには、車両20の位置の例(「Vehicle Position」)、LiDAR11から取得したポイントクラウドが示す道路、道路の端(「Road edge」)、縁石(Curbs)、フレーム(「One LIDAR Frame」、「1st LIDAR Frame in Node」)の例が示されている。
【0025】
3次元データ生成部13は、下記式1に示されるように、GPS12から得られる位置を初期位置とし、その初期位置に対して差分としてのフレームを蓄積(つまり、連結)していくことで、例えば、約200mの道路を含む矩形領域のノードを構成するXY面マップ及びZ面マップを生成する。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、XYDR は、時刻tにおける車両20のXY面マップでの位置を示し、g(v,xyDR t-1)は、その位置を算出する関数を示し、vは、車両20の速度を示し、xyDR t-1は、時刻(t-1)における車両20のXY面マップでの位置を示し、Δtは、直前の位置からの経過時間を示す。また、ZDR は、時刻tにおける車両20のZ面マップでの位置を示し、g(v,zDR t-1)は、その位置を算出する関数を示し、zDR t-1は、時刻(t-1)における車両20のZ面マップでの位置を示す。
【0028】
このような矩形領域のノード(XY面マップ及びZ面マップ)の生成は、複数のノード分だけ繰り返される。
【0029】
このように、GNSSを使用して車両の位置を推定する代わりに、衛星信号の精度が低いために生じ得るローカルジャンプを回避するために、推測航法を使用して各ノード内のLIDARフレームを蓄積する。推測航法によって、各ノード内で非常にスムーズな車両軌道が実現される。よって、LIDARフレームはスムーズに蓄積され、各ノード内の道路状況が保持される。
【0030】
図6は、3次元データ生成部13によって生成されるXY面マップの例を示す図である。図6の(a)及び(b)に示される2つのノードのXY面マップは、車両20の走行軌跡におけるXYグローバル座標系でのトップレフトコーナーの位置(各図に示される「Xmin」及び「Ymax」)が識別子として用いられて結合されることで、図6の(c)に示されるような全体を示すXY面マップが生成される。
【0031】
図7は、3次元データ生成部13によって生成されたZ面マップの例(ここでは、2つのノードのZ面マップの例(図7の(a)及び(b))を示す図である。本図に示されるように、本実施の形態では、各ノードのZ面マップは、車両20の走行軌跡におけるZグローバル座標系での非ゼロの標高の平均値(図7の(a)では153.22m、図7の(b9では154.06m)が識別子として用いられる。
【0032】
図8は、3次元データ生成部13によって生成される3次元データの例を示す図である。本図に示されるように、3次元データは、識別子(ここでは、Node1、2、・・、9)で識別される各ノードのXY面マップ及びZ面マップ(ここでは、Node5)が連結されて構成されるLiDARマップである。より詳しくは、本図では、強度マップ(つまり、XY面マップ)と標高マップ(つまり、Z面マップ)の2つの画像が含まれている。つまり、各ノードには2種類の画像(標高と強度)が含まれている。
【0033】
図2のステップS12]
次に、マップ生成部14のXY面誤差削減部14aは、3次元データ生成部13が生成したXY面マップに対してグラフSLAMを実行することで、XY面での位置誤差を削減する(図2のS12)。具体的には、以下のようなステップS12a~S12cを行う。
【0034】
図2のステップS12a]
XY面誤差削減部14aは、XY面マップに対して、3次元データ生成部13が生成した複数のノードの連結を示すグラフにおけるループを車両20で周回して同じ点を観測することで累積誤差を削減する処理であるグラフSLAMのループ閉鎖を行うことにより、XY面での位置誤差を削減する(図2のS12a)。
【0035】
図9は、3次元データ生成部13が行うグラフSLAMのループ閉鎖を説明する図である。いま、車両20が位置P0からスタートし、位置P1、P2、・・、P11と順に移動したとする。このようなケースでは、GPS12を用いて計測したスタートの位置P0は、正確であるが、その後、差分としてのフレームが蓄積されることから、スタート位置に近い位置(例えば、P1及びP2)では高い位置精度が維持されるが、車両20の移動が進むにつれて累積誤差が増す。車両は、位置P9では、位置P3のエリアに戻っている。これは、位置P3と位置P9の間の位置が車両の軌道に従ってループを形成するため、XY平面でのループ閉鎖イベント(あるいは、単に、ループ閉鎖)と呼ばれる。ただし、位置P6後の累積誤差のため、位置P3とP位置9との間に相対位置誤差がある。位置P3と位置P9で検知された環境特性を一致させることにより、相対位置誤差が補正され、ループ内の位置全体(位置P4…P8)の精度が向上される。これがグラフSLAMのループ閉鎖を用いたXY面での位置誤差の削減である。
【0036】
本実施の形態では、車両の位置を使用する代わりに、グローバル座標系のトップレフトコーナーの位置を最適化している。これは、推測航法に基づいてLIDARフレームを円滑に蓄積することを保証するノード戦略を用いているからである。
【0037】
図2のステップS12b]
上記ループ閉鎖における位置P3と位置P9のケース、あるいは、隣接する2つのノードにおける共通領域のように、2つのノードの強度画像を一致させる場合には、XY面誤差削減部14aは、位相相関によって2つのXY面マップが示す道路を含む地表面のテクスチャ及び形状の一致性を確保する処理(以下、この処理を「位相相関処理」という)を行うことで、位置誤差を削減する(図2のS12b)。位相相関とは、位相限定相関法とも呼ばれる手法であり、フーリエ変換後の位相スペクトルを利用して画像のマッチングを行う方法である。
【0038】
各ノードは、実際の路面の広い領域をエンコードしたものである。このことから、3次元の疎なポイントクラウドを使用する代わりに、非常に密にランドマークを表現することで、環境の特徴を活用できる。このような密集した表現、広い路面、30cmのランドマークのみの表現により、従来のポイントクラウドでのマッチング手法の代わりに、高レベルの画像処理テクニックを使用して強度画像をマッチングできる。したがって、位相相関を使用して、強度画像に対して、ノード間の相対位置を推定できる。さらに、従来のポイントクラウドでのマッチング手法は、通常、反復検索によって2つのポイントクラウドを位置合わせをする。これは、3次元パターンとポイントクラウドとに希少性が存在することが原因である。したがって、特に走行のコースが長く、多くのループ閉鎖が含まれている場合、ポイントクラウドでのマッチング手法は、時間の消費という点で非常にコストのかかるプロセスになる。一方、本実施の形態における位相相関は、非反復的な手法であり、処理時間が大幅に短縮される。
【0039】
図10は、XY面誤差削減部14aによる位相相関処理を説明する図である。ここでは、隣接する2つのノードA及びBの強度画像(図10の(a)及び(b))、それら2つの強度画像の共通領域(白枠で囲まれた領域)に対して位相相関処理を施して得られた強度画像(図10の(c))、及び、GNSSを用いて得られた正確な画像(図10の(d))の例が示されている。位相相関は、複数のノードにおける相対位置を推定するのにロバストであり、かつ、信頼性が高く、相対位置誤差を削減することができる。
【0040】
より詳しくは、図10の(a)及び(b)は、それぞれ、2つのノードA及びBを示している。図10の(c)は、位相相関に基づく2つのノードのマッチング結果を示している。図10の(d)は、左上隅を使用したGNSSに基づくノードA及びノードBの単純な組み合わせを示している。ノードA及びノードBは、GNSSが衛星から高品質の信号を受信できるエリア、つまり、非常に正確なオープンスカイのエリアに属している。したがって、GNSSによる図10の(d)の2つのノードの組み合わせは、リファレンス(真実の地面)と見なすことができる。位相相関によれば、ノードAとノードBの左上隅についての情報がなくても、GNSSと同じマップ品質が実現される。これは、位相相関によって、オープンスカイ環境でのノード間の相対位置と同程度のGNSS推定が実現されることになる。さらに、衛星信号が偏向または妨害される可能性のある厳しい環境での相対位置を完全に推定するためにも位相相関が役立っている。位相相関がノードの輝度画像によって広く/密に表される環境の特徴に依存しているからである。そして、環境の特徴は、静的で、固定的で、衛星信号の品質または走行距離に関連しているからである。
【0041】
図2のステップS12c]
また、XY面誤差削減部14aは、次の3つを評価するコスト関数を用いて、XY面での位置誤差(相対位置誤差及びグローバル位置誤差)を削減する最適化を行う(図2のS12c)。(1)一貫性、つまり、異なる2つのノードのXY面マップにおいて共通する領域の一致性である。(2)コヒーレンシ、つまり、異なる2つのノードのXY面マップにおける連続性である。(3)正確性、つまり、XY面マップでの位置とGPSで得られる位置との一致性である。
【0042】
図11は、コスト関数で評価される一貫性を説明する図である。本図に示されるように、ループ閉鎖における同じ位置を示す2つのノード(ここでは、ノードN及びNi+2)の強度画像は、それら2つのノードの強度画像間での一致性(差分が小さいこと)が、一貫性として、コスト関数で評価される。具体的には、一貫性の評価は、下記式2で示される画像エッジEImg i,jで示される。なお、エッジとは、評価の数学的表現である。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、EImg i,jは、相対位置を補償してループ閉鎖を構成する2つのノードN及びNの共通領域を評価する画像エッジを示し、f()は、相対位置を計算する関数であり、XNiは、ノードNでのX位置を示し、XNjは、ノードNでのX位置を示し、XImg Ni,jは、強度画像におけるノードN及びNの相対位置を示し、Ω()は、ノードN及びN間の位相相関の信頼性を表す共分散誤差である。この共分散誤差は、位相相関を算出する相関行列から得られる。このような一貫性の評価は、XY面マップでの相対位置誤差の削減に貢献する。
【0045】
図12は、コスト関数で評価されるコヒーレンシを説明する図である。本図に示されるように、隣接する2つのノード(ここでは、ノードN及びN)における共通領域の強度画像は、それら2つのノードの強度画像間での連続性が、コヒーレンシとして、コスト関数で評価される。連続性は、例えば、道路のコンテキストである。具体的には、コヒーレンシの評価は、下記式3で示される連続性エッジEImg i,i-1で示される。
【0046】
【数3】
【0047】
ここで、EDR i,i-1は、隣接する2つのノードN及びNi-1の共通領域を評価する連続性エッジを示し、f()は、相対位置を計算する関数であり、XNiは、ノードNでのX位置を示し、XNi-1は、ノードNi-1でのX位置を示し、XImg Ni,i-1は、強度画像におけるノードN及びNi-1の相対位置を示し、Σ()は、車両20のノードN及びNi-1内での速度の分散から推定できる共分散誤差を示す。
【0048】
このようなコヒーレンシの評価は、2つのノードにおける道路のコンテキストの連続性を維持するのに重要な役割を果たし、XY面マップでの相対位置誤差の削減に貢献する。
【0049】
図13は、コスト関数で評価される正確性を説明する図である。本図に示されるように、XY面マップでの位置とGPSで得られる位置の一致性(ここでは、ノードN及びNi+2のそれぞれにおけるXY面マップでの位置とGPS12で得られる位置との一致性)が、正確性として、コスト関数で評価される。具体的には、正確性の評価は、下記式4で示されるアンカリング・エッジXYGPS で示される。
【0050】
【数4】
【0051】
ここで、XYGPS は、ノードNの正確性を評価するアンカリング・エッジを示し、XNiは、ノードNのXY面マップでのX位置を示し、XGPS Niは、ノードNのGPSで得られるX位置を示し、Γ()は、GPS12を用いて得られる共分散誤差を示す。このような正確性の評価は、XY面マップでのグローバル位置誤差の削減に貢献する。3次元マップは、グローバル座標系(絶対座標系)で生成され表現される必要がある。そのために、GNSSに基づくアンカリング・エッジが使用される。
【0052】
図2のステップS13]
次に、マップ生成部14のZ面誤差削減部14bは、XY面誤差削減部14aによって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して、グラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減する(図2のS13)。具体的には、以下のようなステップS13a~S13bを行う。
【0053】
図2のステップS13a]
Z面誤差削減部14bは、XY面誤差削減部14aによって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して、XY面誤差削減部14aと同様の手法で、グラフSLAMのループ閉鎖を行うことにより、Z面での位置誤差を削減する(図2のS13a)。
【0054】
図2のステップS13b]
また、Z面誤差削減部14bは、XY面誤差削減部14aによって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して、XY面誤差削減部14aと同様の手法で、次の3つの少なくとも一つを評価するコスト関数を用いて、Z面での位置誤差(相対位置誤差及びグローバル位置誤差)を削減する最適化を行う(図2のS13b)。(1)一貫性、つまり、異なる2つのノードのZ面マップにおいて共通する領域の一致性である。(2)コヒーレンシ、つまり、異なる2つのノードのZ面マップにおける連続性である。(3)正確性、つまり、Z面マップでの位置とGPSで得られる位置との一致性である。
【0055】
なお、Z面での一貫性の評価は、下記式5で示される画像エッジZImg i,jで示されるが、そのための最適化の処理は、XY面誤差削減部14aによるXY面マップに対する一貫性の処理によって、同時に実現される。異なる2つのノードのXY面マップにおいて共通する領域の一致性が確保される処理によって、同時に、それら2つのノードのZ面マップにおいて共通する領域の一致性が確保されるからである。
【0056】
【数5】
【0057】
この式5における各表記は、式2の表記におけるXをZに置き換えたものに相当する。このような一貫性の評価は、Z面マップでの相対位置誤差の削減に貢献する。
【0058】
また、コヒーレンシの評価は、下記式6で示される連続性エッジZDR i,i-1で示される。
【0059】
【数6】
【0060】
この式6における各表記は、式3の表記におけるXをZに置き換えたものに相当する。このようなコヒーレンシの評価は、2つのノードにおける標高の連続性を維持するのに重要な役割を果たし、Z面マップでの相対位置誤差の削減に貢献する。
【0061】
また、正確性の評価は、下記式7で示されるアンカリング・エッジZGPS で示される。
【0062】
【数7】
【0063】
この式7における各表記は、式4の表記におけるXをZに置き換えたものに相当する。このような正確性の評価は、Z面マップでのグローバル位置誤差の削減に貢献する。
【0064】
図2のステップS14]
最後に、マップ生成部14は、XY面誤差削減部14a及びZ面誤差削減部14bによって位置誤差が削減された3次元データを、最終的な3次元マップ15として、外部の記憶装置又はディスプレイ等の出力装置へ出力する。
【0065】
図14は、図2のステップS12c及びS13bの処理をまとめた図である。本図に示されるように、3次元データ生成部13で生成された3次元データ(XY面マップ及びZ面マップ)に対して、まず、マップ生成部14のXY面誤差削減部14aにより、XY面マップに対して、コスト関数を用いた最適化を実行することでXY面での位置誤差を削減した後に(図2のS12c)、位置誤差が削減されたXY面マップに対応する(つまり、投影される)Z面マップに対して、Z面誤差削減部14bにより、コスト関数を用いた最適化を実行することで、Z面での位置誤差を削減し(図2のS13b)、最終的な3次元マップ15として出力する。
【0066】
図15Aは、図14に示される処理手順によるメリットを説明する図である。ここでは、図14のマップにおいて複数の他のノードと関係性を持つ1つのノードの単純な例が示されている。これらの関係性とは、XY平面にグラフSLAMを適用し、次にZ平面にグラフSLAMを適用することで、ノードの位置に影響を与えるものである。本図に示されるように、本実施の形態に係る3次元マップ生成装置10によれば、まず、XY面マップに対して3種類の評価を行うコスト関数を用いた最適化を実行する(上述した3種類のXY面でのエッジの合計を最小化する)ことで、XY面での位置誤差を削減するためのXYオフセットが得られる(図15Aの(a)の1及び2行目、図15Aの(b))。各ノードには、トップレフトコーナーの座標に追加されるxおよびy方向の2つのオフセットがある。したがって、このようなXYグラフSLAMオフセットに基づいて絶対座標系で路面を移動させることを意味する。その後、ノード全体を組み合わせてマップが生成される。
【0067】
続いて、位置誤差が削減されたXY面マップに対応する(つまり、投影される)Z面マップに対して3種類の評価を行うコスト関数を用いた最適化を実行する(上述した3種類のZ面でのエッジの合計を最小化する)ことで、Z面での位置誤差を削減するためのZオフセットが得られる(図15Aの(a)の3及び4行目、図15Aの(c))。XYグラフSLAMオフセットに基づいてZ平面でマップを修正する手順は、標高画像にグラフSLAMを適用することによって行われる。したがって、Zオフセットのセットが取得され、各ノードには1つの標高オフセットが得られ、これが標高画像のピクセル全体に追加される。これは、ZグラフSLAMオフセットに基づいて標高画像をZ方向に移動することを意味する。次に、ノード全体を組み合わせてZ面マップを生成する。これらのステップにより、完全なマップが取得される。
【0068】
これにより、XY面での誤差がZ面での誤差に累積されるという不具合が抑制され、正確なグローバルポジション(XY面での位置)及び正確な標高(Z面での位置)を示す位置精度の高い3次元マップが生成される。
【0069】
図15Bは、図14に示される処理手順によるメリットを説明する別の図である。ここでは、2つのノード間に着目して、図14に示される手法が説明されている。図15Bの(a)は、2つのノードA及びBの強度画像及び標高画像の例を示す。図15Bの(b)は、XY平面とZ平面におけるノード間の3次元偏差の問題を示している。XY面度マップ内の道路のランドマークの複製が示されるように、2つのノード間においてx方向とy方向(XY平面)に相対位置エラーが生じている。さらに、Z面マップで異なるzレベルの路面が示されるように、z方向の相対位置誤差も示されている。図15Bの(c)は、強度画像のXY平面にグラフSLAMを適用した後の問題を示している。x方向及びy方向の相対位置誤差が補正され、ゴースト効果がマップから除去されている。その結果、図15Bの(d)に示すように、標高画像にグラフSLAMを適用することにより、2つの道路間の高度誤差(z方向の相対位置誤差)をできるだけ小さくすることができる。現実の世界では、2つの道路は同じ環境を表すものであることから、同じZレベルになっている。
【0070】
次に、本実施の形態に係る3次元マップ生成装置10を用いて3次元マップを生成する実験を行ったので、図を用いて説明する。
【0071】
図16は、実験に用いた車両20の走行軌跡を示す図である。図16の(a)は、走行軌跡と走行軌跡における特徴的な箇所を示し、図16の(b)は、走行軌跡を描いた地図を示す。本実験では、金沢市の香林坊町において、車両20で25kmの総距離を走行することで得られたポイントクラウドから、305個のノード及び286個のループ閉鎖エッジを含む3次元マップを生成した。図16の(a)に示されるように、走行軌跡には、高層ビルが建ち並ぶ箇所、及び、木が密集している箇所が含まれている。
【0072】
図17は、3次元マップ生成装置10が生成したXY面マップの位置精度の高さを示す図である。図17の(a)は、GNSSを用いて生成したXY面マップの各ノードにおけるX方向の標準偏差(m)を示し(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのX座標の予測精度を示し)、図17の(b)は、3次元マップ生成装置10が生成したXY面マップの各ノードにおけるX方向のオフセット(m)を示し(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのX座標に加算されたグラフSLAMオフセットを示し)、図17の(c)は、GNSSを用いて生成したXY面マップの各ノードにおけるY方向の標準偏差(m)を示し(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのY座標の予測精度を示し)、図17の(d)は、3次元マップ生成装置10が生成したXY面マップの各ノードにおけるY方向のオフセット(m)を示す(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのY座標に加算されたグラフSLAMオフセットを示す)。
【0073】
図17の(a)及び(b)を比較して分かるように、3次元マップ生成装置10によれば、グラフSLAMオフセットの加算により、X方向の低精度なノードが検出され、それらのノードに対して、絶対座標系におけるグローバルマップ精度が高められている。Y方向についても、図17の(c)及び(d)を比較して分かるように、絶対座標系におけるグローバルマップ精度が高められている。
【0074】
図18は、木が密集している箇所において3次元マップ生成装置10が生成したXY面マップとGNSSを用いて生成したXY面マップとの比較を示す図である。図18の(a)は、木が密集している箇所を撮影した画像を示し、図18の(b)は、図18の(a)で示される箇所についてGNSSを用いて生成したXY面マップの例を示し、図18の(c)は、図18の(a)で示される箇所について3次元マップ生成装置10が生成したXY面マップの例を示す。
【0075】
図18の(b)から分かるように、GNSSを用いて生成したXY面マップでは、衛星信号が密集している木で妨げられるために、道路の車線の重複やゴースト等の相対位置誤差が生じている。また、道路が現実と異なって2箇所に示されているように、グローバル位置誤差が生じている。これに対して、図18の(c)から分かるように、3次元マップ生成装置10で生成されたXY面マップでは、図18の(b)における相対位置誤差及びグローバル位置誤差が大幅かつ完全に削減される。
【0076】
図19は、3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップの位置精度の高さを示す図である。図19の(a)は、GNSSを用いて生成したXY面マップの各ノードにおけるZ方向の標準偏差(m)を示し(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのZ座標の予測精度を示し)、図19の(b)は、3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップの各ノードにおけるZ方向のオフセット(m)を示す(つまり、各ノードのトップレフトコーナーのZ座標に加算されたグラフSLAMオフセットを示す)。図19の(a)及び(b)を比較して分かるように、3次元マップ生成装置10によれば、グラフSLAMオフセットの加算により、Z方向の低精度なノードが検出され、それらのノードに対して、絶対座標系におけるグローバルマップ精度が高められる。
【0077】
図20は、図18に示される木が密集している箇所において3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップとGNSSを用いて生成したZ面マップとの比較を示す図である。図20の(a)は、比較の対象となる2つのノード69及び239の強度画像を示している。点線は、車両の軌跡を示している。ノード69における長方形の枠で囲まれた領域の座標は、XY平面のグラフSLAMオフセットに基づいて、ノード239に投影される。したがって、ノード69における車両の軌道は、投影されたエリア座標に基づいてノード239に投影される。
【0078】
図20の(b)は、同一場所である2つの異なるノード(ノード69及びノード239)について3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップの標高プロファイル(車両20の移動に伴う標高の変化)及びGNSSを用いて生成したZ面マップの標高プロファイルを示す。本図において、破線(NodeSlam69)及び点線(NodeSlam239)は、それぞれ、3次元マップ生成装置10が生成したノード69及びノード239のZ面マップの標高プロファイルを示す。実線(NodeGPS69)及び一点鎖線(NodeGPS69)は、それぞれ、GNSSを用いて生成したノード69及びノード239のZ面マップの標高プロファイルを示す。
【0079】
図20の(c)は、3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップとGNSSを用いて生成したZ面マップについて、移動軌跡の各箇所におけるノード69での標高とノード239での標高との差を示す。本図において、破線(DiffSlam)は、3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップでの移動軌跡の各箇所におけるノード69での標高とノード239での標高との差を示し、実線(DiffGPS)は、GNSSを用いて生成したZ面マップでの移動軌跡の各箇所におけるノード69での標高とノード239での標高との差を示す。
【0080】
上述したようにノード69とノード239とは同一場所であるから、標高の差はゼロであるべきところ、GNSSを用いて生成したZ面マップでは、大きな値になっているのに対し、3次元マップ生成装置10が生成したZ面マップでは、極めて小さな値となっている。このことから、本実施の形態に係る3次元マップ生成装置10によれば、グラフSLAMを適用したうえでコスト関数による最適化が行われるので、Z面での位置誤差が小さい正確なZ面マップが生成されることが分かる。
【0081】
なお、図20におけるGNSSを用いて生成したZ面マップでの誤差は、XY面マップにグラフSLAMを適用した後のものであり、GNSSを用いて生成したXY面マップでの誤差が無視されている。よって、もし、GNSSを用いて生成したXY面マップでの誤差を勘案した場合には、GNSSを用いて生成したZ面マップでの誤差は、もっと大きい値となる。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係る3次元マップ生成方法は、車両20に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDAR11から取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成ステップ(S10、S11)と、生成された3次元データにおける位置誤差を削減することで3次元マップを生成するマップ生成ステップ(S12、S13)とを含み、マップ生成ステップは、XY面マップに対してグラフSLAMを実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減ステップ(S12)と、XY面誤差削減ステップ(S12)によって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減ステップ(S13)とを含む。
【0083】
これにより、XY面での位置誤差が削減された後に、位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して位置誤差を削減する処理が行われるので、XY面での誤差がZ面での誤差に累積されるという不具合が抑制され、正確なグローバルポジション(XY面での位置)及び正確な標高(Z面での位置)を示す位置精度の高い3次元マップが生成される。
【0084】
また、3次元データ生成ステップ(S11)では、所定の矩形領域における強度画像をXY面マップとし、強度画像に対応する標高画像をZ面マップとし、XY面マップとZ面マップとの組をノードとする複数のノードの連結を3次元データとして生成し、複数のノードのそれぞれに対して、対応するXY面マップが示す矩形領域の特定のコーナーのグローバルポジションを識別子として付与する。これにより、広域の3次元マップがノードの連結からなるグラフで表現されるので、グラフSLAMを適用した位置誤差の削減が可能になる。
【0085】
また、3次元データ生成ステップ(S11)では、複数のノードのそれぞれについて、車両20に搭載されたGPSから初期位置を取得し、取得された初期位置を基準としてフレームを蓄積していく推測航法により、当該ノードのXY面マップ及びZ面マップを生成する。これにより、常に衛星信号を必要とするGNSSを用いた地図生成に比べ、長いトンネル内、木が密集している箇所、高い建物が多い箇所等の衛星信号が届きにくい箇所であっても、位置精度の高い3次元マップの生成が可能になる。
【0086】
また、XY面誤差削減ステップ(S12)及びZ面誤差削減ステップ(S13)では、それぞれ、XY面マップ及びZ面マップに対して、複数のノードの連結を示すグラフにおけるループを車両20で周回して同じ点を観測することで累積誤差を削減するループ閉鎖を行うことにより、XY面及びZ面での位置誤差を削減する。これにより、XY面及びZ面での累積的な位置誤差が削減され、位置精度の高い3次元マップの生成が可能になる。
【0087】
また、XY面誤差削減ステップ(S12)では、位相相関によって2つのXY面マップが示す道路を含む地表面のテクスチャ及び形状の一致性を確保することで、位置誤差を削減する。これにより、複数のノードにおける相対位置の推定にロバストであり、かつ、信頼性が高い位相相関が用いられるので、相対位置誤差が削減された位置精度の高い3次元マップの生成が可能になる。
【0088】
また、XY面誤差削減ステップ(S12)及びZ面誤差削減ステップ(S13)では、それぞれ、異なる2つのノードのXY面マップ及びZ面マップにおいて共通する領域の一致性である一貫性と、異なる2つのノードのXY面マップ及びZ面マップにおけるエッジの連続性であるコヒーレンシと、XY面マップ及びZ面マップでの位置とGPSで得られる位置との一致性である正確性との少なくとも一つを評価するコスト関数を用いて、位置誤差を削減する。これにより、XY面及びZ面で、相対位置誤差及びグローバル位置誤差を削減する最適化が行われるので、位置精度の高い3次元マップの生成が可能になる。
【0089】
また、本実施の形態に係る3次元マップ生成装置10は、車両20に搭載され、道路を含む環境を検出するLiDAR11から取得したポイントクラウドから、道路を含む地表面を表す強度画像のフレームで構成されるXY面マップ及び強度画像を構成する画素の標高を示す標高画像のフレームで構成されるZ面マップを含む3次元データを生成する3次元データ生成部13と、生成された3次元データにおける位置誤差を削減することで3次元マップを生成するマップ生成部14とを備え、マップ生成部14は、XY面マップに対してグラフSLAMを実行することで、XY面での位置誤差を削減するXY面誤差削減部14aと、XY面誤差削減部14aによって位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対してグラフSLAMを実行することで、Z面での位置誤差を削減するZ面誤差削減部14bとを有する。
【0090】
これにより、XY面での位置誤差が削減された後に、位置誤差が削減されたXY面マップに対応するZ面マップに対して位置誤差を削減する処理が行われるので、XY面での誤差がZ面での誤差に累積されるという不具合が抑制され、正確なグローバルポジション(XY面での位置)及び正確な標高(Z面での位置)を示す位置精度の高い3次元マップが生成される。
【0091】
このように、本実施の形態に係る3次元マップ生成装置10及びその方法によれば、道路をノードに分割する手法により、ループ閉鎖の検出、エッジ計算、データの保存などのデータ関連付けを実現するための処理時間が短縮される。さらに、本実施の形態では、最適化処理において、ノードのトップレフトコーナーを処理するため、3次元マップを効率的に再生成できる。したがって、ノードの画像は、膨大な数のポイントクラウドを再蓄積するのではなく、取得したオフセットに基づいてグローバル座標系でのみシフトされる。ノードの画像は、道路についての広い領域と周囲の環境とを相対的にエンコードしている。反射率の値により、描かれたランドマークが目立つマッチングパターンが実現される。これにより、位相相関法の適用が可能になり、ノード間の共通領域の誤検出が減少する。
【0092】
処理時間の短縮については、図16を用いて説明したように、25kmを表す305のノードで構成されるコースは、収集されたLIDARフレームの数が61755個のポイントクラウドで構成されるが、ループ閉鎖エッジの数は286であり、ノード間のループ閉鎖を検出する処理時間は44秒、エッジの計算は約57分、最適化処理の実行時間は30秒で、ノードの画像を再調整して3次元マップを生成する時間は17秒であった。従来の方法によれば、61755のポイントクラウド間の正しい対応を検出するのが困難であり、2つのポイントクラウド間で反復スキャンマッチングテクニックを適用し(2つのポイントクラウドごとに17秒ほど要する)、最適化プロセスを実行し、ポイントクラウドを再蓄積してマップを生成するには、膨大な処理時間を要する。
【0093】
以上、本発明の3次元マップ生成方法及び3次元マップ生成装置10について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0094】
例えば、車両20に、道路を含む環境を撮影するカメラを搭載し、3次元マップ生成装置10は、LiDAR11から取得したポイントクラウドに対して、カメラから取得した画像を補完的に用いることで、強度画像のフレームを生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、LiDARが搭載された車両で得られたデータから位置精度の高い3次元マップを生成する3次元マップ生成装置として、例えば、自律走行車両に用いられる3次元マップを生成する装置として、利用できる。
【符号の説明】
【0096】
10 3次元マップ生成装置
11 LiDAR
12 GPS
13 3次元データ生成部
14 マップ生成部
14a XY面誤差削減部
14b Z面誤差削減部
15 3次元マップ
20 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20