IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キタノ製作株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-錠剤取出し容器 図1
  • 特許-錠剤取出し容器 図2
  • 特許-錠剤取出し容器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】錠剤取出し容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/04 20060101AFI20240306BHJP
   A61J 7/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B65D83/04 G
A61J7/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020093171
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021187476
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000104526
【氏名又は名称】キタノ製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】池本 健二
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-252389(JP,A)
【文献】特開2009-137594(JP,A)
【文献】実開平05-054351(JP,U)
【文献】登録実用新案第3158443(JP,U)
【文献】米国特許第05351858(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/04
A61J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の収容物を収容した容器本体と、前記容器本体の一端部に設けられ前記収容物が通過する内側空間を有する誘導部を備えた錠剤取り出し容器において、
前記誘導部の先端に連続して設けられ前記収容物が取り出される取出口を有するノズルが設けられ、
前記誘導部の側板に弾性体が設けられ、前記弾性体は一方向に長いばねであり、長手方向の一方の端部が前記誘導部に連続し、自立して設けられ、前記弾性体の揺動する他方の端部は、前記ノズルの前記取出口よりも外側に達し、前記弾性体の揺動する前記端部付近には、前記取出口を開閉する外側係止片と、前記取出口よりも前記誘導部側の前記内側空間を開閉する内側係止片が形成され、
前記弾性体は帯状の板ばねであり、前記弾性体の幅広面が前記内側係止片と前記外側係止片の移動方向に対して垂直方向に設けられ、前記外側係止片は前記ノズルの前記取出口とほぼ同じ大きさの取出口を有した板体であり、
前記弾性体が弾性変形していない時は、前記外側係止片が前記ノズルの前記取出口の外側に離間して位置し、横方向には枠部が前記ノズルの前記取出口の投影位置の内側にあり、前記ノズルの前記取出口と前記外側係止片の前記取出口の位置は、前記収容物よりも小さい間隔を開けて対向し、前記外側係止片の前記枠部と前記ノズルの前記取出口による開口が前記収容物よりも小さく、前記取出口を閉じて前記収容物を係止するとともに、前記内側係止片は前記内側空間から離れて前記取出口に連通し、
前記弾性体を所定の方向に弾性変形させた時は、前記外側係止片は前記取出口から開いて前記収容物の係止を解除するとともに、前記内側係止片は前記内側空間に差し込まれて閉じ前記収容物の通過を係止し、前記弾性体の1回の弾性変形により一定量の前記収容物を、前記ノズルの前記取出口と、前記外側係止片の前記取出口を通過して取り出すことを特徴とする錠剤取り出し容器。
【請求項2】
前記弾性体は、前記外側係止片と前記内側係止片が一体に設けられている請求項1記載の錠剤取り出し容器。
【請求項3】
前記誘導部と前記弾性体が一体に設けられている請求項1又は2記載の錠剤取り出し容器。
【請求項4】
前記容器本体に、前記誘導部と前記弾性体を覆うキャップを着脱可能に取り付け、前記収容物を取り出す時は、前記キャップを外す請求項1又は2記載の錠剤取り出し容器。
【請求項5】
前記弾性体を弾性変形させない状態では、前記外側係止片と前記内側係止片は、前記誘導部及び前記ノズルと接触せず、離間している請求項1又は2記載の錠剤取り出し容器。
【請求項6】
前記弾性体には、前記弾性体を所定の方向に弾性変形させた時に前記誘導部又は前記ノズルに当接し前記外側係止片及び前記内側係止片の移動を規制するストッパーが設けられている請求項1又は2記載の錠剤取り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収容物である錠剤等を収容し、錠剤等を計数して所定の数ずつ取り出す錠剤取出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば錠剤を収容する容器として、収容している錠剤を1個ずつ又は所望の数ずつ計数して取り出すものがあった。このように錠剤を取り出す容器は、例えば以下の特許文献1、2に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている錠剤取出し容器は、垂下する口顎部と、口顎部に横設する制御板差込み孔と、口顎部を覆う取付け筒と、前記取付け筒の前記制御板差込み孔に対面する位置に形成された窓孔と、前記窓孔の下端から前記口顎部の延長線に向かって延出する底板を有する容器体が設けられている。そして、窓孔には摺動部材が押し込み可能に設けられている。摺動部材は、窓孔に嵌合され取付け筒と面一となる押込み板と、摺動部材の押し込み方向に延出して設けられ口顎部の下端面を閉塞する中底板と、中底板に穿設された錠剤等通過孔と、前記錠剤等通過孔を囲んで形成され前記底板に摺動可能に当接する短筒と、中底板に対して平行に設けられ前記制御板差込み孔に対向し差し込み可能な制御板が設けられている。この錠剤取出し容器は、収容物である錠剤を取り出す時は、収容物の錠剤が口顎部の内に入り、次に押込み板を押し込むと、口顎部に、錠剤等通過孔が一致して口顎部から短筒を通過して錠剤が落下して取り出される。この時、前記制御板差込み孔に制御板が差し込まれ、容器体の次の錠剤が落下することを防ぐ。
【0004】
特許文献2に開示されている固形薬剤振出容器は、底壁と壁板からなる皿状の容器本体部材と、容器本体部材の開口を覆って収納室を形成する蓋体が設けられ、前記容器本体部材には、蓋体の外側に突出する台板部が設けられている。前記台板部は前記底壁の前部であり、台板部には一対の溝形成壁板が立設し、一対の溝形成壁板の間は、振出溝となる。振出溝は収納室に連通し、収納室とは反対側は台板部の先端に達している。振出溝の途中には、摺動溝が連通して設けられている。台板部には、振出溝の先端に連通する振出孔を有する摺動蓋が一方向に摺動可能に取り付けられている。摺動蓋には、摺動溝の内側に摺動可能に入れられる遮蔽板が設けられている。この固形薬剤振出容器は、収容物である錠剤を取り出す時は、収納室の錠剤が振出溝内に入り、次に摺動蓋を押して移動させると、振出溝の先端に振出孔が一致して錠剤が落下して取り出される。この時、摺動溝内を移動して遮蔽板が振出溝に差し込まれ、収納室の次の錠剤が落下することを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-252389号公報
【文献】特開平9-201400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の各容器の場合、錠剤を個別に取り出すための構造が複雑であり、製造コストと工数がかかるものである。特に、容器体や摺動部材とは別体の、摺動方向をガイドする部材が必要であり、部品点数が多い。また摺動部分の擦れや、摺動抵抗があり、収容物の取り出し操作も円滑ではない。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で簡単な操作により、収容している錠剤等の粒状収容物を定量だけ取り出すことができる錠剤取り出し容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、丸剤を含む錠剤等の粒状の収容物を収容した容器本体と、前記容器本体の一端部に設けられ前記収容物が通過する内側空間を有する誘導部を備えた錠剤取り出し容器である。前記誘導部の先端に連続して設けられ、前記収容物が取り出される取出口を有するノズルが設けられている。前記ノズルには、前記内側空間に連通する透孔が形成されている。前記誘導部に弾性体が設けられ、前記弾性体は一方向に長いばねであり、長手方向の一方の端部が前記誘導部に連続し、自立して設けられている。前記弾性体の揺動する他方の端部は、前記ノズルの前記取出口よりも外側に達し、前記弾性体の揺動する前記端部付近には、前記取出口を開閉する外側係止片と、前記透孔に差し込まれて前記内側空間を開閉する内側係止片が形成されている。前記弾性体は帯状の板ばねであり、前記弾性体の幅広面が前記内側係止片と前記外側係止片の移動方向に対して略垂直に設けられ、長手方向の所定の位置で湾曲して形成されている。前記外側係止片は、前記ノズルの前記取出口とほぼ同じ大きさの取出口を有した板体である。そして、前記弾性体が弾性変形していない時は、前記外側係止片が前記ノズルの前記取出口の外側に離間して位置し、横方向には枠部が前記ノズルの前記取出口の投影位置の内側にあり、前記ノズルの前記取出口と前記外側係止片の前記取出口の位置は、前記収容物よりも小さい間隔を開けて対向し、前記外側係止片の前記枠部と前記ノズルの前記取出口による開口が前記収容物よりも小さく、前記取出口を閉じて収容物を係止するとともに、前記内側係止片は前記内側空間から離れて前記取出口に連通し、前記弾性体を所定の方向に弾性変形させた時は、前記外側係止片は前記取出口から開いて前記収容物の係止を解除するとともに前記内側係止片は前記内側空間に差し込まれて閉じ前記収容物の通過を係止する。これにより、前記弾性体の1回の弾性変形により一定量の前記収容物を、前記ノズルの前記取出口と、前記外側係止片の前記取出口を通過して取り出し可能となる。
【0009】
前記弾性体は、前記外側係止片と前記内側係止片が一体に設けられている。さらに、前記誘導部と前記弾性体が一体に設けられていても良い。
【0010】
前記容器本体に、前記誘導部と前記弾性体を覆うキャップを着脱可能に取り付けて運搬や保管を行うことができ、前記収容物を取り出す時は、前記キャップを外すものである。
【0011】
前記弾性体を弾性変形させない状態では、前記外側係止片と前記内側係止片は、前記誘導部及び前記ノズルと離間し、接触していないことが好ましい。
【0012】
前記弾性体には、前記弾性体を所定の方向に弾性変形させた時に前記誘導部又は前記ノズルに当接し前記外側係止片及び前記内側係止片の移動を規制するストッパーが設けられていると良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠剤取り出し容器は、簡単な構造で簡単な操作により、収容している錠剤等の粒状収容物を定量だけ取り出すことができる。弾性体を弾性変形させる簡単な操作で、取出口を係止解除して収容物を取り出すことと、内側空間を閉じて次の収容物を係止することを、同時に行うことができる。特に、弾性体は帯状の板ばねにすると、収容物を取り出す開放状態となる方向にのみ可撓性が付与され、斜め横から押した場合でも安定して開放状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態の錠剤取り出し容器の閉鎖状態を示す縦断面図(a)と開放状態を示す縦断面図(b)である。
図2】この実施形態の錠剤取り出し容器の縦断面図である。
図3】この実施形態の錠剤取り出し容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図3はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の錠剤取り出し容器10は、有底筒状の容器本体12を備え、容器本体12はガラスやプラスチックで作られている。容器本体12は円筒形の側面14を有し、側面14は正立状態で上端部が開口し、径が小さい円筒状の容器開口部16が一体に設けられている。容器開口部16の開口縁部16aは、容器開口部16の上端部からさらに円錐状に径が小さくなり、先端が上方に突出する円筒形状になっている。容器開口部16の内周面には、後述する中栓18の係止凸部22が差し込まれて抜けないように係止する係止凹部16bが一周して設けられている。容器開口部16の外周面には、後述するキャップ52を螺合する雄ネジ16cが形成されている。
【0016】
開口縁部16aには、適度な弾力性を有する合成樹脂で一体に成形された中栓18が嵌合されて取り付けられている。中栓18には、容器本体12の開口縁部16aに差し込んで嵌合される円筒状の取付部20が設けられ、取付部20の外周面には開口縁部16aの係止凹部16bに差し込まれ抜けないように係止される係止凸部22が一周して設けられている。取付部20の、係止凸部22よりも少し上の位置には、開口縁部16aに当接するフランジ部24が一周して側方に突出して設けられている。
【0017】
取付部20の上端部には、取付部20の挿通方向に交差する円板状の上面部28が設けられている。上面部28は、フランジ部24より少し上に位置し、フランジ部24との間に段部23が一周して設けられている。上面部28の中央には、取付部20とは反対側に突出する筒状の誘導部30が設けられ、誘導部30の内側には、内側空間31が上面部28を貫通して設けられている。
【0018】
誘導部30の形状はテーパー状に変形した四角筒であり、互いに連続する4つの側板30a,30b,30c,30dが互いに連続して組み合わされて形成されている。誘導部30は、上面部28に対して平行な断面形状は一方向に長い矩形であり、側板30aと側板30cは、互いに対面する位置にあり、上面部28に接する位置から突出するにつれて互いに間隔が近くなるように傾斜している。上面部28に対する角度は、側板30aの方が大きい。側板30bと側板30dは、互いに容器本体12側に僅かに広がった略平行であり、側板30a,30cに各々交差し、上面部28に接する位置から突出するにつれて横の長さが小さくなる台形状である。
【0019】
誘導部30の上端部には、上面部28に対して平行な断面形状が一定のノズル32が連続して設けられている。ノズル32は、側板30a,30b,30c,30dに各々連続する矩形の側板32a,32b,32c,32dが互いに連続して組み合わされて形成されている。なお、ノズル32の内側は、誘導部30の内側空間31に連通し、側板32aと側板32cの間の長さは、容器本体12に収容する錠剤50の直径よりも僅かに大きく設定されている。
【0020】
ノズル32の上端部は取出口34が開口し、取出口34の開口縁部は、上面部28に対して平行である。ノズル32の、誘導部30の側板30cの上部に連続する側板32cには、ノズル32の内外を連通する透孔36が側板32cを貫通して設けられている。透孔36は、側板32cの突出方向に略平行な方向、つまり上面部28に対して略平行な方向に長い四角形に形成され、側板32cを横断し、両側の側板32b,32bを少し切り欠いている。
【0021】
誘導部30の側板30cには、弾性体38が一体に設けられている。弾性体38は、細長い帯状の板ばねであり、長手方向の一方の端部が側板30cのほぼ中央に連続し、揺動する他方の端部は上方に向かって延出し、自立しており、適度な力を加えると弾性変形が可能である。弾性体38の幅広面の幅方向は、側板30c及び側板32cに平行である。弾性体38の揺動する端部である上端部38aは、ノズル32の取出口34よりも少し上方に達している。長手方向の中間付近で、側板30cと側板32cの境界付近に近づくように湾曲し、全体に波形になっている。
【0022】
弾性体38の、側板32c側の面の透孔36に対向する位置に、内側係止片40が一体に設けられている。内側係止片40は、透孔36に向かって突出する板体であり、弾性体38がノズル32側へ弾性変形した時に透孔36からノズル32の内側空間31に差し込まれるものである。内側係止片40の面方向は、上面部28及び取出口34と平行であり、突出方向の長さは弾性体38がノズル32に近づくように弾性変形した時に透孔36から差し込まれて内側空間31に突出するが、弾性変形しない時はノズル32から離間する長さである。
【0023】
弾性体38の、側板32c側の面の、内側係止片40よりも上端部38aに近い位置に、ストッパー42が一体に設けられている。ストッパー42は、弾性体38の、側板32c側の面から僅かに突出する小さい突起であり、弾性体38が弾性変形した時にノズル32の取出口34付近に当接する当接面を有している。
【0024】
上端部38aには、外側係止片44が一体に設けられている。外側係止片44は、取出口34とほぼ同じ大きさの開口を有した矩形の板体であり、取出口34の開口縁部に対して略平行である。内側係止片40と外側係止片44の離間する長さは、収容する錠剤50の直径よりも短い。そして、弾性体38が弾性変形しない時は、ノズル32の取出口34の少し上に離間し、取出口34から外側係止片44までの間隔も、収容する錠剤50の直径及び厚みよりも短い。また、横方向には、側板32aから少し離れて側板32cを覆うように側方に移動した位置にある。外側係止片44の中央には、取出口34に開口する内側空間31とほぼ同じ大きさの矩形の取出口46が設けられ、外側係止片44を貫通している。外側係止片44は、取出口34の側板32c側に移動した位置にあるため、外側係止片44の、側板32a側の枠部44aが取出口34の投影位置の内側にあり、ノズル32の取出口34と外側係止片44の取出口46の位置は、錠剤50の外径よりも小さい間隔を空けて対向している。従って、外側係止片44の枠部44aと取出口34による開口が錠剤50よりも小さく、錠剤50が通過できない配置になっている。
【0025】
弾性体38は波形に湾曲しており、側板32cに対向する部分は外側に湾曲し、弾性体38をノズル32に向かって押して弾性変形させる押圧部48となる。押圧部48の外側面には滑り止めの突起48aが形成されている。なお、押圧部48を押して弾性変形させると、ストッパー42がノズル32の取出口34付近に当接してそれ以上弾性変形せずに止まる。この時、内側係止片40の先端は透孔36に差し込まれて内側空間31に突出し内側空間31を狭める。外側係止片44は、取出口34の上方の投影位置に移動し、取出口46が取出口34に一致する。なお、外側係止片44と内側係止片40の移動方向は、弾性体38の幅広方向に対して略直角となる。
【0026】
次に、この実施形態の錠剤取り出し容器10の使用方法について説明する。まず、容器本体12に収容物である偏平な錠剤50を入れ、容器本体12の開口縁部16aに中栓18を取り付ける。弾性体38に力を加えないこの状態では、外側係止片44の枠部44aが取出口34の投影位置の内側にあり、錠剤50の直径よりも短い長さだけ離間して位置している。このため錠剤50は、取出口34と枠部44aの間を通過することができず、閉鎖状態となる。そして、容器本体12の容器開口部16に、中栓18を覆うキャップ52を着脱可能に取り付ける。
【0027】
キャップ52は、図2に示すように、円形の上面と、上面に連続する円筒形の側面が一体に設けられ、側面の内周面には、容器本体12の、容器開口部16の雄ネジ16cに螺合する雌ネジ52aが形成され、螺合して取り付けられる。キャップ52は、容器本体12に螺合して取り付けた時に、キャップ52の上面と、中栓18の外側係止片44との間に空間を有する大きさである。キャップ52の上面の裏面には、小さい円筒状の密閉筒部52bが設けられている。密閉筒部52bは、キャップ52の側面と同心円に形成され、キャップ52を容器本体12に閉じた時に誘導部30やノズル32、弾性体38との間に空間を有する内径を有し、突出方向の長さは側面よりも短く、中栓18のフランジ部24の上面に当接する長さである。キャップ52を閉めると、密閉筒部52bが中栓18のフランジ部24に当接し、中栓18が容器本体12から緩むことを防ぐことができる。キャップ52が係止された状態で運搬や保管を行う。
【0028】
容器本体12から錠剤50を取り出して服用する時は、キャップ52を外し、図1(a)に示すように、閉鎖状態のまま、錠剤取り出し容器10を斜め下に傾ける。この時、弾性体38が斜め上方に位置し、ノズル32の側板32aが斜め下方に位置する。これにより、容器本体12内の錠剤50が誘導部30を通過してノズル32の内側空間31に移動する。錠剤50は偏平な円形であるため、側板32b,32dに対して面方向が平行にそろえられて整列する。この状態では、弾性体38が弾性変形していないので、外側係止片44が取出口34を閉じて、錠剤50を係止するとともに、内側係止片40は内側空間31から離れて取出口34と連通している。
【0029】
次に、押圧部48を指等で押してノズル32に近づく方へ弾性変形させると、図1(b)に示すように弾性体38のストッパー42が取出口34付近に当接し、外側係止片44の取出口46が取出口34の投影位置に移動し、取出口34と取出口46が一致する。取出口34の延長上に妨げとなる枠部44aが無くなり、錠剤50が通過可能な開放状態となる。取出口34と透孔36の間に、つまり外側係止片44と内側係止片40の間にあった1個の錠剤50は、取出口34と取出口46を通過して取り出される。この時、弾性体38の弾性変形にともない、内側係止片40は透孔36に差し込まれてノズル32の内側空間31に突出し、内側空間31を狭める。これにより、次の錠剤50aは内側空間31の取出口34側に入ることができず、係止され、錠剤50が複数個取り出されることを防ぐ。
【0030】
次に、押圧部48から指を離して弾性体38の弾性変形を復元すると、外側係止片44の枠部44aが取出口34の投影位置に戻り、再び閉鎖状態となる。内側係止片40は透孔36から引き抜かれ、内側空間31は通過可能となり、次の錠剤50aが整列する。
【0031】
この実施形態の錠剤取り出し容器10によれば、収容物である錠剤50を簡単な操作で確実に計数して1個ずつ取り出すことができる。弾性体38を弾性変形させてノズル32の取出口34に近づける簡単な操作で開放状態とし、錠剤50を取り出すことができる。内側係止片40と外側係止片44が、弾性体38と一体に設けられているため、弾性体38を弾性変形させるだけで取出口34を開口して錠剤50を取り出すことと、ノズル32を狭くして次の錠剤50aを係止することを、同時に行うことができる。指を離すと弾性変形が復元し、自動的に閉鎖状態に戻り、閉鎖状態と開放状態をワンタッチで切り替えることができる。
【0032】
また、誘導部30に、内側係止片40と外側係止片44を設けた弾性体38を、中栓18に一体に成形するだけのシンプルな構造であり、部品点数が少なく、製造工程が少なく、製造コストが安価である。内側係止片40と外側係止片44は、ノズル32から離間しているため、金型により中栓18の成形時に一体成形することができ、生産効率が良い。さらに、弾性体38は自立しているため、外側係止片44と内側係止片40の移動をガイドする他部材が不要であり、部品点数が少なく構造がシンプルである。また摺動部分の擦れや、摺動抵抗も無く、円滑に錠剤50を取り出す操作を行うことができる。
【0033】
弾性体38にはストッパー42が設けられ、ストッパー42が取出口34に当接すると開放状態となったことがわかり、押す力の調整を行い易い。ストッパー42の大きさを変えることで、弾性体38の弾性変形の大きさを変えることができ、内側係止片40を差し込む長さを変更することができる。また、押し込み位置が安定するだけでなく、弾性体38に過大なストレスを掛けることがなく、破損させることも防ぐ。弾性体38は帯状の板ばねであり、内側係止片40と外側係止片44の移動方向、つまり開放状態となる方向に曲がりやすいため、斜め横等から押した場合でも、押し込み方向にのみ可撓性が付与され、安定した開閉軌道を描き、確実に開放状態にすることができる。また、内側係止片40と外側係止片44は、ノズル32から離間しているため、押圧部48を押して弾性体38を弾性変形させた時、外側係止片44と内側係止片40は押し込み方向から円弧を描くように下方に移動するが、誘導部30やノズル32に干渉することがなく、円滑に移動することができる。キャップ52には密閉筒部52bが設けられ、中栓18を押し付けた密閉状態で保管することができ、錠剤50の品質を保持することができる。
【0034】
なお、この発明の錠剤取り出し容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、容器本体の形状は自由であり、また中栓の形状も適宜変更可能である。さらに、容器本体と中栓が一体に成形されたものでも良い。この場合、中栓と一体成形した容器本体の底部が開口し、容器本体の底部に底部閉塞部材を嵌合させて、有底の容器本体とする。その他、容器本体の形状や収容物の形状に合わせて、誘導部やノズル、弾性体、内側係止片、外側係止片等の形状を、各々適したものに変更することができる。誘導部と弾性体、外側係止片、内側係止片は、合成樹脂で一体成形することが可能であるが、別部品として成形した後に組み立てることも可能である。弾性体は、誘導部以外の場所に設けられてもよい。また、外側係止片と内側係止片との距離を長くすると、1回毎に取り出す錠剤等の数を2個又は3個に増やすことができる。
【0035】
さらに、この発明の錠剤取り出し容器の収容物は錠剤に限るものではなく、錠剤の他に、錠剤状の菓子等、適宜いろいろな粒状物の製品に使用することができる。収容する錠剤等の収容物の形状も、扁平な円形以外に球状体や紡錘形、糖衣錠でも良い。
【符号の説明】
【0036】
10 錠剤取り出し容器
12 容器本体
16 容器開口部
16a 開口縁部
18 中栓
30 誘導部
32 ノズル
34 取出口
36 透孔
38 弾性体
38a 上端部
40 内側係止片
42 ストッパー
44 外側係止片
50 錠剤
図1
図2
図3