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特許7448956太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システム
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  • 特許-太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/10 20140101AFI20240306BHJP
【FI】
H02S50/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020559275
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048430
(87)【国際公開番号】W WO2020122105
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2018233647
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖之
(72)【発明者】
【氏名】金須 純祐
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135123(WO,A1)
【文献】特開2013-131678(JP,A)
【文献】特開2013-70045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0163213(US,A1)
【文献】小林靖之、菊元大地,変調光と位相検波器を用いたモジュール内セル電圧の非接触推定,電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌),2018年01月01日,Vol.138, No.1,pp.45-52
【文献】KOBAYASHI, Yasuyuki et al.,"Contactless Estimation of a Solar Cell Voltage in a Module Using Modulated Light and a Phase Detector",Electrical Engineering in Japan,2018年03月01日,Vol.204, No.2,pp.3-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H02S 50/10-50/15
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Wiley Online Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
太陽電池モジュールを構成する直列接続されたm(mは2以上の整数)個の太陽電池セルのそれぞれの動作電圧を推定するシステムであって、
前記m個の太陽電池セルのいずれかに変調光を照射する変調光照射部と、
前記m個の太陽電池セルのうちの1つの太陽電池セルである第1太陽電池セルが遮光された状態に設定する遮光状態設定部と、
前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記第1太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する出力電流微小変化検出部とを備え、
前記遮光状態設定部によって前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第1太陽電池セルを除く(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、
前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出する太陽電池モジュール動作電圧検出部と、
一方の軸である第1軸が電圧に設定され、他方の軸である第2軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸に第1点と第2点とをプロットすると共に、前記第1点と前記第2点とを結ぶことによって、第1検量線を生成する検量線生成部とを更に備え、
前記遮光状態設定部は、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態に設定し、
前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態で、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルである第2太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、かつ、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第2太陽電池セル以外の太陽電池セルである第3太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、かつ、前記太陽電池モジュール動作電圧検出部が、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出し、
前記検量線生成部は、前記座標軸にプロットされた第3点と前記第2点とを結ぶことによって、第2検量線を生成し、
前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値を算出する抵抗相対比率算出部と、
前記第2太陽電池セルの動作電圧を算出する太陽電池セル動作電圧算出部とを更に備え、
前記太陽電池セル動作電圧算出部は、前記第2軸の値が、前記抵抗相対比率算出部によって算出された前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値になる前記第2検量線上の点である第4点を算出し、次いで、前記第4点の前記第1軸の値を、前記第2太陽電池セルの動作電圧として算出し、
前記第1点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記第1太陽電池セルの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、
前記第1点の前記第1軸の値は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、
前記第1点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値であり、
前記第2点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、
前記第2点の前記第1軸の値は、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧であり、
前記第2点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最小値であり、
前記第3点の前記第1軸の値は、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、
前記第3点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値である、
太陽電池セル動作電圧推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムに関する。
本願は、2018年12月13日に、日本に出願された特願2018-233647号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直列接続された複数の太陽電池セルのうちの、どの太陽電池セルが異常状態であるかを正確に判定することができる太陽電池モジュールの異常判定システムおよび方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に記載された太陽電池モジュールの異常判定システムは、直列接続された複数の太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの異常判定を行う。詳細には、太陽電池モジュールの異常判定システムは、複数の太陽電池セルのうちの1つの太陽電池セルに変調光を照射する変調光照射部と、太陽電池モジュールの発電出力を示す信号と、変調光の位相(周波数)を示す参照信号とに基づいて、1つの太陽電池セルの状態に応じた信号を出力する位相検波部と、位相検波部からの出力信号に基づいて、1つの太陽電池セルが異常状態であるか否かを判定する判定部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/135123号
【非特許文献】
【0004】
【文献】高羽晃平、山中三四郎、青山泰宏、西戸雄輝、小林浩、「PVモジュールのセルの発熱に関する研究」太陽/風力エネルギー講演論文集(2016), pp. 315-318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている太陽電池モジュールの異常判定システムは、太陽電池モジュール内の太陽電池セルが異常状態であるか否かを判定することができるものの、太陽電池モジュール内の直列接続された太陽電池セルの動作電圧を推定することができない。
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、太陽電池モジュール内の直列接続された太陽電池セルの動作電圧を推定することができる太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、太陽電池モジュールを構成する直列接続されたm(mは2以上の整数)個の太陽電池セルのそれぞれの動作電圧を推定する方法であって、前記m個の太陽電池セルのうちの1つの太陽電池セルである第1太陽電池セルが遮光された状態にする第1ステップと、前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記第1太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する第2ステップと、前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第1太陽電池セルを除く(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する第3ステップと、前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出する第4ステップと、一方の軸である第1軸が電圧に設定され、他方の軸である第2軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸にプロットされた第1点と第2点とを結ぶことによって、第1検量線を生成する第5ステップと、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態にする第6ステップと、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態で、前記m個の太陽電池セルのうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルである第2太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する第7ステップと、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態で、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第2太陽電池セル以外の太陽電池セルである第3太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する第8ステップと、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態で、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出する第9ステップと、前記座標軸にプロットされた第3点と前記第2点とを結ぶことによって、第2検量線を生成する第10ステップと、前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値を算出する第11ステップと、前記第2軸の値が、前記第10ステップにおいて算出された前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値になる前記第2検量線上の点である第4点を算出する第12ステップと、前記第4点の前記第1軸の値を、前記第2太陽電池セルの動作電圧として算出する第13ステップとを備え、前記第1点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記第1太陽電池セルの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、前記第1点の前記第1軸の値は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、前記第1点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値であり、前記第2点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、前記第2点の前記第1軸の値は、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧であり、前記第2点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最小値であり、前記第3点の前記第1軸の値は、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、前記第3点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値である、太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法である。
【0008】
本発明の一態様では、前記抵抗の相対比率は、前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの微分抵抗の値を、前記m個の太陽電池セルのすべての微分抵抗の合計値と、前記太陽電池モジュールに直列接続された負荷抵抗の値との和によって除したものであってもよい。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化、および、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態における前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化が位相検波器もしくはロックインアンプの出力電圧によって検出され、前記第11ステップでは、前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値として、前記位相検波器もしくは前記ロックインアンプの出力電圧の比率(これをロックインアンプ比率と称する)の値が算出されてもよい。
【0010】
本発明の一態様では、前記第11ステップでは、前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値として、規格化値が算出され、前記規格化値は、前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの微分抵抗の値を、遮光された状態の前記第1太陽電池セルの微分抵抗の最大値によって除したものであってもよい。
【0011】
本発明の一態様では、前記第11ステップでは、前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値として、規格化値が算出され、前記規格化値は、前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの微分抵抗の値を、遮光された状態の前記第1太陽電池セルの微分抵抗の最大値と、前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの微分抵抗の値との和によって除したものであってもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記第1太陽電池セルに対してマスクを貼り付けることによって、前記第1太陽電池セルが遮光された状態にしてもよい。この遮光された状態の前記第1太陽電池セルに変調光を照射するため、セルの受光面の一部もしくは変調光照射部を除いて遮光すればよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1太陽電池セルに対して網を貼り付けることによって、前記第1太陽電池セルが遮光された状態にしてもよい。この遮光された状態の前記第1太陽電池セルに変調光を照射するため、セルの受光面に開口部があるように網で遮光すればよい。
【0014】
本発明の一態様では、遮光物を配置することによって、前記第1太陽電池セルが遮光された状態にしてもよい。この遮光された状態の前記第1太陽電池セルに変調光を照射するため、セルの受光面の一部もしくは変調光照射部を除いて遮光すればよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの等価回路における光発生電流の値が互いに等しくなるように、変調光の照射状態が調整されてもよい。
【0016】
本発明の一態様は、太陽電池モジュールを構成する直列接続されたm(mは2以上の整数)個の太陽電池セルのそれぞれの動作電圧を推定するシステムであって、前記m個の太陽電池セルのいずれかに変調光を照射する変調光照射部と、前記m個の太陽電池セルのうちの1つの太陽電池セルである第1太陽電池セルが遮光された状態に設定する遮光状態設定部と、前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記第1太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出する出力電流微小変化検出部とを備え、前記遮光状態設定部によって前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第1太陽電池セルを除く(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、前記第1太陽電池セルが遮光された状態で、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出する太陽電池モジュール動作電圧検出部と、一方の軸である第1軸が電圧に設定され、他方の軸である第2軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸に第1点と第2点とをプロットすると共に、前記第1点と前記第2点とを結ぶことによって、第1検量線を生成する検量線生成部とを更に備え、前記遮光状態設定部は、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態に設定し、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態で、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルである第2太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、かつ、前記変調光照射部が、前記m個の太陽電池セルのうちの前記第2太陽電池セル以外の太陽電池セルである第3太陽電池セルに変調光を照射すると共に、前記出力電流微小変化検出部が、前記太陽電池モジュールの出力電流の微小変化を検出し、かつ、前記太陽電池モジュール動作電圧検出部が、前記太陽電池モジュールの動作電圧を検出し、前記検量線生成部は、前記座標軸にプロットされた第3点と前記第2点とを結ぶことによって、第2検量線を生成し、前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値を算出する抵抗相対比率算出部と、前記第2太陽電池セルの動作電圧を算出する太陽電池セル動作電圧算出部とを更に備え、前記太陽電池セル動作電圧算出部は、前記第2軸の値が、前記抵抗相対比率算出部によって算出された前記第2太陽電池セルの前記抵抗の相対比率の値になる前記第2検量線上の点である第4点を算出し、次いで、前記第4点の前記第1軸の値を、前記第2太陽電池セルの動作電圧として算出し、前記第1点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記第1太陽電池セルの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、前記第1点の前記第1軸の値は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、前記第1点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値であり、前記第2点は、前記第1太陽電池セルが遮光された状態における前記(m-1)個の太陽電池セルのいずれかの動作電圧の値と前記抵抗の相対比率の値との関係を示しており、前記第2点の前記第1軸の値は、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧であり、前記第2点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最小値であり、前記第3点の前記第1軸の値は、前記m個の太陽電池セルのいずれもが遮光されていない状態における前記太陽電池モジュールの動作電圧から、前記(m-1)個の太陽電池セルのそれぞれの開放電圧の合計値を減じたものであり、前記第3点の前記第2軸の値は、前記抵抗の相対比率の最大値である、太陽電池セル動作電圧推定システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太陽電池モジュール内の直列接続された太陽電池セルの動作電圧を推定することができる太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】特許文献1の図10に相当する図である。
図2】本発明の太陽電池セル動作電圧推定システムの動作原理を説明するためのI-V曲線の一例を示す図である。
図3】検証実験の測定データを示す図である。
図4】シグモイド曲線の一例を示す図である。
図5】第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システムの構成の一例を示す図である。
図6】検量線生成部によってプロットされる第1点、第2点などの一例を説明するための図である。
図7】第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図8】実施例2の測定データを示す図である。
図9】実施例3の測定データを示す図である。
図10】実施例4の測定データを示す図である。
図11】実施例4の他の測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムの実施形態を説明する前に、本発明の太陽電池セル動作電圧推定システムの動作原理などについて説明する。
【0020】
図1は特許文献1の図10に相当する図である。
図1に示すシステムでは、発電中の太陽電池モジュールM内のある太陽電池セルC3だけへ、太陽電池セルC3の動作電圧が変化しない程度の弱い変調光MLが照射される。変調光MLとの同期信号は、太陽電池セルC3の動作電圧に応じて、太陽電池モジュールMの出力電流にごく小さく混入する。太陽電池モジュールMの出力電流に混入するごく小さい同期信号は、太陽電池モジュールMに接続された配線に電気的に非接触な交流電流クランプセンサと、位相検波器またはロックインアンプ(ここでは位相検波器およびロックインアンプを単に「ロックインアンプ」と称する)とを用いることによって抽出される。
【0021】
図2は本発明の太陽電池セル動作電圧推定システムの動作原理を説明するためのI-V曲線の一例を示す図である。図2において、横軸は太陽電池セルC3(図1参照)の動作電圧を示しており、縦軸は太陽電池モジュールM(図1参照)の出力電流を示している。
図2に示すように、太陽電池セルC3(図1参照)の動作電圧が低下し負電圧の絶対値が大きくなる(図2の左側部分)ほど、I-V曲線の傾きが小さくなる。変調光由来の微小光発生電流が一定振幅であるとき、I-V曲線の傾きの逆数に比例して太陽電池セルC3内の電圧変化、つまり変調光との同期信号の振幅が増加する。この電圧変化の増加に応じて太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iも増加する。そのため、本発明の太陽電池セル動作電圧推定システムは、ロックインアンプによって抽出された同期信号の振幅に基づいて、太陽電池セルC3の動作電圧を推定することができる。
太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iは下記の式(1)および式(2)によって表される。詳細には、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iは、変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iph、太陽電池モジュールM内の太陽電池セルi(太陽電池セルiは、変調光が照射されている太陽電池セル(図1に示す例では、太陽電池セルC3)である。)のセル電圧(動作電圧)VにおけるI-V曲線の傾きの逆数(微分抵抗)R、および、太陽電池モジュールMに直列接続される負荷抵抗RL(図1参照)の抵抗値Rを用いることによって、式(2)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
式(1)および式(2)において、nは太陽電池セルiのダイオード因子であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。qは素電荷であり、Iは太陽電池セルiのダイオードの飽和電流値である。
太陽電池セルiの電圧(動作電圧V)の変化に伴って、太陽電池セルiの微分抵抗Rは変化する。一方、式(2)に示すように、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iは、変調光の振幅△Iphに比例する。そのため、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iの値は、変調光の入射条件の影響を受ける。
本発明者は、鋭意研究において、例えば図1に示すロックインアンプから出力される測定信号(太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化)△Iを用いることによって、変調光が照射されている太陽電池セルC3の動作電圧を定量的に推定できることを見い出したのである。
【0024】
例えば図1に示すようなm(mは2以上の整数)個の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5が直列接続されている太陽電池モジュールMを考える。また、m個の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの1つの太陽電池セルC1が遮光された状態(遮光状態)を考える。遮光状態の太陽電池モジュールMの動作電圧の値をVとする。
m個の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの遮光された太陽電池セルC1以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の動作電圧は、ほぼ開放電圧vOC(太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧の最大値)となる。一方、遮光された太陽電池セルC1の動作電圧は、値V-(m-1)vOCとなる。太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧の合計値である太陽電池モジュールMの動作電圧は、式(2A)によって表される。
【0025】
【数2】
【0026】
この機構の詳細説明は、非特許文献1に記載されている。つまり、遮光状態の太陽電池モジュールMでは、遮光された太陽電池セルC1の動作電圧V-(m-1)vOCを、直接測定する必要なく、遮光状態の太陽電池モジュールMの動作電圧Vと、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれの開放電圧vOCとから、推定することができる。
また、式(2)を変形すると、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iと、変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphとの比である値△I/△Iphは、動作電圧の推定対象の太陽電池セルiの微分抵抗Rを、太陽電池モジュールMのすべての太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の微分抵抗の合計値ΣRと、負荷抵抗RLの抵抗値Rとの和(ΣR+R)で除したものである抵抗の相対比率rとして表すことができる。つまり、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧や太陽電池モジュールMの動作電圧が変化しても、相対比率rの値が変化しなければ、値△I/△Iphも変化しない。
【0027】
式(1)から、遮光状態では、遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)の微分抵抗Rが、下記の式(2B)で示すように、最大になる。
【0028】
【数3】
【0029】
また、太陽電池セルC1(遮光セルs)以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の微分抵抗Rが、下記の式(2C)で示すように、最小になる。
【0030】
【数4】
【0031】
よって、遮光状態では、遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)の値△I/△I =rmaxとなり、太陽電池セルC1(遮光セルs)以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の値△I/△Iph=rminとなる。
まとめると、遮光状態の太陽電池モジュールMでは、遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)の動作電圧vと値△I/△Iphとの関係が、(v,△I/△Iph)=(V-(m-1)vOC,rmax)となる。また、太陽電池セルC1(遮光セルs)以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の動作電圧vと値△I/△Iphとの関係が、(v,△I/△Iph)=(vOC,rmin)となる。
遮光状態の太陽電池モジュールMの動作電圧の値Vは任意である。従って、太陽電池モジュールMの様々な動作電圧Vの遮光状態における、遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)の動作電圧vと値△I/△Iphとの関係、および、太陽電池セルC1(遮光セルs)以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の動作電圧vと値△I/△Iphとの関係は、(v,△I/△Iph)のグラフにおいて下記の式(3)の2点を両端とする線分で表せる。
【0032】
【数5】
【0033】
太陽電池モジュールMが遮光状態ではない場合、値△I/△Iphは、rmin~r axの範囲の値をとる。
太陽電池モジュールMの動作電圧が値Vである場合、太陽電池モジュールM内の様々な状態の太陽電池セル(例えば、遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)、太陽電池セルC1(遮光セルs)以外の太陽電池セルC2、C3、C4、C5等)の動作電圧vと値△I/△Iphとの関係を示す点(v,△I/△Iph)が、式(3)の2点を両端とする線分に乗ると仮定する。
また、太陽電池モジュールMの動作電圧が値Vとは異なる値V’である場合、太陽電池モジュールM内の様々な状態の太陽電池セルの動作電圧vと値△I/△Iphとの関係を示す点(v,△I/△Iph)が、点(V’-(m-1)vOC,rmax)と点(v ,rmin)とを両端とする線分に乗ると仮定する。
【0034】
本発明者は、鋭意研究において、これらの仮定の妥当性を実験で検証した。実験では、図1にシステムを用いて測定を行いながら、太陽電池モジュールM内の各太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧を別法で直接測定した。
【0035】
図3は検証実験の測定データを示す図である。図3の横軸は太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の平均動作電圧[V]を示しており、縦軸はロックインアンプ比率(ロックインアンプの出力電圧の比率)r△Iを示している。
検証実験では、「●」で示す測定データから、抵抗値Rが0.3[Ω]の負荷抵抗RL(図1参照)を用いた場合のマスクあり検量線を示す線分(図3中の左側の線分)を推定した。「▲」および「〇」で示す他の測定データが、その線分にほぼ乗ることが確認できたため、上述した仮定が概ね妥当であると判断できた。
【0036】
また、本発明者は、鋭意研究において、上述した仮定の妥当性について、太陽電池セルの簡易的な等価回路モデルを用いて検証した。その結果、ロックインアンプ比率r△Iの値が1や0に近くない場合に、ロックインアンプ比率r△Iの曲線は太陽電池セルの動作電圧vについて線分として近似できることが確認できた。
【0037】
この検証では、m(mは2以上の整数)個の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5が直列接続されている太陽電池モジュールM(太陽電池モジュールMの動作電圧は値V)を考える。1つの太陽電池セルのI-V特性を下記の式(7)で近似し、残りの(m-1)個の太陽電池セルを合成したもののI-V特性を下記の式(8)で近似する。
【0038】
【数6】
【0039】
この検証では、光発生電流(変調光の振幅)△Iphと、ダイオード因子nとが、各太陽電池セルで等しいとする。式(7)および式(8)において、Iは1つの太陽電池セルのダイオードの飽和電流値であり、I’は合成した太陽電池セルのダイオードの飽和電流値である。
ある1つの太陽電池セルが開放状態(I=0)である場合に、その太陽電池セルの開放電圧vOCは、下記の式(9)によって表される。
【0040】
【数7】
【0041】
残りの(m-1)個の太陽電池セルを合成したものの開放電圧は概略値(m-1)v であるため、式(8)中の合成した太陽電池セルのダイオードの飽和電流値I’は、下記の式(10)によって表される。
【0042】
【数8】
【0043】
ある1つの太陽電池セル(太陽電池セルの動作電圧は値v)の微分抵抗Rは、下記の式(11)によって表される。
【0044】
【数9】
【0045】
残りの(m-1)個の太陽電池セルを合成したもの(合成したものの動作電圧は値V-v)の微分抵抗Rm-1は、下記の式(12)によって表される。
【0046】
【数10】
【0047】
式(9)~式(12)を用い、ある1つの太陽電池セルの微分抵抗の比率r△Iは、下記の式(13)によって表される(簡単のために分母の負荷抵抗RLの抵抗値Rを無視する)。
【0048】
【数11】
【0049】
ある1つの太陽電池セルの動作電圧vはv=V-(m-1)vOC~vOCの範囲をとるため、式(13)で示す太陽電池セルの微分抵抗の比率r△Iの値の範囲は、下記の式(14)によって表される。
【0050】
【数12】
【0051】
式(13)は、シグモイド曲線を表す。
図4はシグモイド曲線の一例を示す図である。
式(14)によって表される太陽電池セルの微分抵抗の比率r△Iの値の範囲は、図4に示すシグモイド曲線と図4の縦軸との交点に関して対称に存在する。図4の縦軸の値x=0の近傍では、シグモイド曲線が線分として近似できる。
よって、|V-mvOC|が小さい範囲、つまり、図4の縦軸に相当する太陽電池セルの微分抵抗の比率r△Iの値が1や0に近くない範囲(具体的には、r△I=0.2~0.8)であれば、太陽電池セルの微分抵抗の比率r△Iを示す曲線は、太陽電池セルの動作電圧vについて線分として近似できる。
【0052】
以下、本発明の太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムの実施形態について説明する。
【0053】
[第1実施形態]
図5は第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の構成の一例を示す図である。
図5に示す例では、第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1が、太陽電池モジュールMに適用される。太陽電池モジュールMは、直列接続された複数の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5を含む。太陽電池モジュールMは、負荷抵抗RLに接続されている。
図5に示す例では、太陽電池モジュールMが5個の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5によって構成されているが、他の例では、太陽電池モジュールMが、直列接続された、5個以外の任意の個数(m個(mは2以上の整数))の太陽電池セルによって構成されていてもよい。
【0054】
図5に示す例では、太陽電池セル動作電圧推定システム1は、変調光照射部11と、出力電流微小変化検出部12と、遮光状態設定部13と、太陽電池モジュール動作電圧検出部14と、検量線生成部15と、抵抗相対比率算出部16と、太陽電池セル動作電圧算出部17と、交流電流クランプセンサ18とを備えている。変調光照射部11は、レーザ光照射部111と、ライトチョッパ部112と、チョッパ制御部113と、リフレクタ114と、フィルタ115とを備えている。レーザ光照射部111は、例えばHe-Neレーザのようなレーザ光を照射する。
図5に示す例では、上述したように、変調光照射部11がレーザ光照射部111を備えているが、他の例では、変調光照射部11が、レーザ光以外の光を照射する照射部を備えていてもよい。
【0055】
図5に示す例では、ライトチョッパ部112は、レーザ光照射部111から照射されたレーザ光を所定の位相(周波数)の変調光MLに変調する。チョッパ制御部113は、ライトチョッパ部112を制御する。また、チョッパ制御部113は、ライトチョッパ部112によって変調された変調光MLの位相(周波数)を示す参照信号RSを出力する。フィルタ115は、ライトチョッパ部112によって変調された変調光MLを減光する。フィルタ115は、例えばND(Neutral Density)フィルタである。リフレクタ114は、フィルタ115によって減光された変調光MLを反射する。リフレクタ114によって反射された変調光MLは、太陽電池セルC3に照射される。
図5に示す例では、リフレクタ114によって反射された変調光MLが太陽電池セルC3に照射されるが、他の例では、代わりに、リフレクタ114によって反射された変調光MLが、太陽電池セルC3以外の太陽電池セルC1、C2、C4、C5のいずれかに照射されてもよい。
図5に示す例では、レーザ光照射部111と太陽電池モジュールMとの間において、ライトチョッパ部112、フィルタ115およびリフレクタ114が、ライトチョッパ部112、フィルタ115、リフレクタ114の順に配列されている。他の例では、代わりに、ライトチョッパ部112、フィルタ115およびリフレクタ114の配列の順序を異ならせてもよい。
【0056】
図5に示す例では、出力電流微小変化検出部12が、ロックインアンプ12aを備えている。ロックインアンプ12aは、太陽電池モジュールMに接続された配線に対して電気的に非接触な交流電流クランプセンサ18に接続されている。
出力電流微小変化検出部12は、交流電流クランプセンサ18およびロックインアンプ12aを介して、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化(太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧に関係する微弱信号の大きさの変化)を検出する。詳細には、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化は、ロックインアンプ12aの出力電圧によって検出される。
ロックインアンプ12aには、チョッパ制御部113から出力された参照信号RSが入力される。つまり、ロックインアンプ12aに入力される参照信号RSは、変調光照射部11から太陽電池セルC3に照射される変調光MLの位相(周波数)を示す。
【0057】
図5に示す例では、遮光状態設定部13が、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの1つの太陽電池セル(例えば太陽電池セルC1)が遮光された状態に設定する。
太陽電池モジュール動作電圧検出部14は、例えば太陽電池セルC1が遮光された状態で、太陽電池モジュールMの動作電圧Vを検出する。
検量線生成部15は、例えば横軸が電圧に設定され、縦軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸(図6参照)に2つの点をプロットし、それらを結ぶことによって検量線を生成する。
抵抗相対比率算出部16は、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの、動作電圧の推定対象の太陽電池セル(例えば太陽電池セルC3)の抵抗の相対比率を算出する。
太陽電池セル動作電圧算出部17は、推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)の動作電圧を算出する。
【0058】
図5に示す例では、太陽電池セル動作電圧推定システム1が例えば太陽電池セルC3の動作電圧を推定する場合に、まず、遮光状態設定部13が、太陽電池モジュールM(詳細には、動作中の太陽電池モジュールM)の状態を、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの1つの太陽電池セル(例えば太陽電池セルC1)が遮光された状態(太陽電池モジュールMの遮光状態)にする。その結果、太陽電池セルC1の光発生電流は、他の太陽電池セルC2、C3、C4、C5の光発生電流よりも低下する。
【0059】
太陽電池セル動作電圧推定システム1の一例では、遮光状態設定部13が、太陽電池セルC1に対してマスク(図示せず)を貼り付けることによって、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1が遮光された状態にする。
太陽電池セル動作電圧推定システム1の他の例では、遮光状態設定部13が、太陽電池セルC1に対して網(図示せず)を貼り付けることによって、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1が遮光された状態にする。
太陽電池セル動作電圧推定システム1の更に他の例では、遮光状態設定部13が、遮光物(図示せず)を配置することによって、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1が遮光された状態にする。
【0060】
図5に示す例では、次いで、太陽電池セルC1が遮光された状態で、変調光照射部11が、太陽電池セルC1に変調光MLを照射する。
また、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC1に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12が、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
【0061】
図5に示す例では、次いで、太陽電池セルC1が遮光された状態で、変調光照射部11が、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの太陽電池セルC1を除く太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれに変調光MLを照射する。詳細には、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれの等価回路における変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphの値が互いに等しくなるように、変調光MLの照射状態は調整される。
太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iは、変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphにも比例する。変調光MLの照射状態によって、変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphは変化する。そのため、変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphを一定にしなければ、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iの比較は難しい。そこで、遮光状態の太陽電池モジュールM内の遮光されていない太陽電池セルC2、C3、C4、C5の動作電圧が開放電圧vOCであることを利用し、同じ開放電圧vOCでの太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iが等しくなるように変調光MLの照射状態を遮光される太陽電池セル1個を順次置換して調整すれば、調整した太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5同士の変調光由来の光発生電流(変調光の振幅)△Iphを等しくできる。
【0062】
また、図5に示す例では、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれかに変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
詳細には、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC2に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。また、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC3に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。また、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC4に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。また、太陽電池セルC1が遮光された状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC5に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
【0063】
また、図5に示す例では、太陽電池セルC1が遮光された状態で、太陽電池モジュール動作電圧検出部14が、太陽電池モジュールMの動作電圧V(太陽電池モジュールMの出力端子の電圧)を検出する。
次いで、検量線生成部15は、上述した原理に基づいて、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧を推定する。また、検量線生成部15は、例えば横軸が電圧に設定され、縦軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸に第1点P1と第2点P2とをプロットする。
【0064】
図6は検量線生成部15によってプロットされる第1点P1、第2点P2などの一例を説明するための図である。図6において横軸は太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧vを示しており、縦軸は太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の抵抗の相対比率r△I(=△I/△Iph)を示している。
図6において、第1点P1は、太陽電池モジュールMの遮光状態における遮光された太陽電池セルC1(遮光セルs)の動作電圧v(セル電圧)の値V-(m-1)vOCと、抵抗の相対比率r△Iの値rmax(=r△Is)との関係を示している。つまり、第1点P1の座標は、(V-(m-1)vOC,rmax)である。
第1点P1の横軸の値V-(m-1)vOCは、太陽電池セルC1が遮光された状態における太陽電池モジュールMの動作電圧Vから、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれの開放電圧vOCの合計値(m-1)vOCを減じたものである。
第1点P1の縦軸の値r△Isは、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の抵抗の相対比率r△Iの最大値rmaxである。
【0065】
また、第2点P2は、太陽電池モジュールMの遮光状態における遮光されていない太陽電池セル(例えば太陽電池セルC3)の動作電圧v(セル電圧v)の値vOCと、抵抗の相対比率r△Iの値rmin(=r△Ii)との関係を示している。つまり、第2点P2の座標は、(vOC,rmin)である。
第2点P2の横軸の値vOCは、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれの開放電圧vOCである。
第2点P2の縦軸の値r△Iiは、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の抵抗の相対比率r△Iの最小値rminである。
【0066】
図5に示す例では、次いで、検量線生成部15が、第1点P1(V-(m-1)v ,r△Is)と第2点P2(vOC,r△Ii)とを結ぶことによって第1検量線L1(図6参照)を生成する。
【0067】
図5に示す例では、次いで、遮光状態設定部13が、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態(通常状態)に設定する。
次いで、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、変調光照射部11は、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)に変調光MLを照射する。
更に、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
また、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、変調光照射部11は、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)以外の太陽電池セルCj≠k(例えば太陽電池セルC1、C2、C4、C5のいずれか)に変調光MLを照射する。
更に、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態であって、変調光照射部11が太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)以外の太陽電池セルCj≠k(例えば太陽電池セルC1、C2、C4、C5のいずれか)に変調光MLを照射している状態で、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Ij≠kを検出する。
【0068】
また、図5に示す例では、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、太陽電池モジュール動作電圧検出部14が、太陽電池モジュールMの動作電圧Vを検出する。
次いで、検量線生成部15は、図6に示す座標軸に第3点P3をプロットする。
【0069】
図6に示すように、第3点P3の横軸の値V-(m-1)vOCは、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態における太陽電池モジュールMの動作電圧Vから、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のそれぞれの開放電圧vOCの合計値(m-1)vOCを減じたものである。
第3点P3の縦軸の値r△Isは、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の抵抗の相対比率r△Iの最大値rmaxである。つまり、第3点P3の縦軸の値r△Isは、第1点P1の縦軸の値r△Isと等しい。
【0070】
図5に示す例では、次いで、検量線生成部15が、第3点P3(V-(m-1)v ,r△Is)と第2点P2(vOC,r△Ii)とを結ぶことによって第2検量線L2(図6参照)を生成する。
次いで、抵抗相対比率算出部16は、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikを算出する。
【0071】
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の第1例では、抵抗相対比率算出部16が、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikとして、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれか)の微分抵抗の値Rkを、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のすべての微分抵抗の合計値ΣRと、太陽電池モジュールMに直列接続された負荷抵抗RLの抵抗値Rとの和(ΣR+R)によって除したもの(Rk/ΣR+R)を算出する。
【0072】
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の第2例では、太陽電池セルC1が遮光された状態における太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△I、および、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態における太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iが、出力電流微小変化検出部12のロックインアンプ12aによって検出される。
また、抵抗相対比率算出部16は、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikとして、ロックインアンプ比率r△I(詳細には、太陽電池セルCkにおける太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iに対するロックインアンプ比率r△I)の値(△I/(△I+Σj≠k△I))を算出する。
詳細には、検量線生成部15は、第1点P1(図6参照)の縦軸の値として、値(△I/(△I+Σi≠s△I))を算出する。
また、検量線生成部15は、第2点P2(図6参照)の縦軸の値として、値(△I/(△I+Σi≠s△I))を算出する。
抵抗相対比率算出部16は、後述する第4点P4(図6参照)の縦軸の値になる値として、値(△I/(△I+Σj≠k△I))を算出する。
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の第2例では、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のすべての微分抵抗の合計値ΣRを事前に得る必要がない。太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧が開放電圧vOC付近でなければ、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のすべての微分抵抗の合計値ΣRは負荷抵抗RLの抵抗値Rより大きく、問題ない。
【0073】
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の第3例では、抵抗相対比率算出部16が、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikとして、規格化値を算出する。
規格化値は、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれかの微分抵抗の値R(△I)を、遮光された状態の太陽電池セルC1の微分抵抗の最大値(遮光セルの示す最大△I)によって除したもの(△I/遮光セルの示す最大△I)である。
【0074】
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の第4例では、抵抗相対比率算出部16が、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikとして、規格化値(詳細には、改良された規格化値)を算出する。
改良された規格化値は、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれかの微分抵抗の値R(△I)を、遮光された状態の太陽電池セルC1の微分抵抗の最大値(遮光セルの示す最大△I)と、太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれかの微分抵抗の値との和によって除したもの(△I/(遮光セルの示す最大△I+(m-1)×開放電圧vOCの1セルの示す△I))である。
【0075】
図5に示す例では、次いで、太陽電池セル動作電圧算出部17は、縦軸の値が、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikになる第2検量線L2上の点である第4点P4(図6参照)を算出する。
次いで、太陽電池セル動作電圧算出部17は、第4点P4の横軸の値を、推定対象の太陽電池セルCkの動作電圧vとして算出する。
【0076】
図7は第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7に示す例では、ステップS1において、遮光状態設定部13が、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの1つの太陽電池セル(例えば太陽電池セルC1)が遮光された状態(太陽電池モジュールMの遮光状態)にする。
次いで、ステップS2において、太陽電池セルC1が遮光された状態で、変調光照射部11が太陽電池セルC1に変調光MLを照射すると共に、出力電流微小変化検出部12が、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
次いで、ステップS3において、太陽電池セルC1が遮光された状態で、変調光照射部11が太陽電池セルC2、C3、C4、C5のいずれかに変調光MLを照射すると共に、出力電流微小変化検出部12が、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
次いで、ステップS4において、太陽電池セルC1が遮光された状態で、太陽電池モジュール動作電圧検出部14は、太陽電池モジュールMの動作電圧Vを検出する。
次いで、ステップS5において、検量線生成部15が、例えば横軸が電圧に設定され、縦軸が抵抗の相対比率に設定された座標軸に第1点P1と第2点P2とをプロットし、第1点P1と第2点P2とを結ぶことによって第1検量線L1を生成する。
【0077】
次いで、ステップS6において、遮光状態設定部13は、太陽電池モジュールMの状態を、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態(通常状態)に設定する。
次いで、ステップS7において、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、変調光照射部11が太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)に変調光MLを照射すると共に、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Iを検出する。
次いで、ステップS8において、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、変調光照射部11が太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のうちの動作電圧の推定対象の太陽電池セルCk(例えば太陽電池セルC3)以外の太陽電池セルCj≠k(例えば太陽電池セルC1、C2、C4、C5のいずれか)に変調光MLを照射すると共に、出力電流微小変化検出部12は、太陽電池モジュールMの出力電流の微小変化△Ij≠kを検出する。
次いで、ステップS9において、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5のいずれもが遮光されていない状態で、太陽電池モジュール動作電圧検出部14が、太陽電池モジュールMの動作電圧Vを検出する。
次いで、ステップS10において、検量線生成部15が、座標軸に第3点P3をプロットし、第3点P3と第2点P2とを結ぶことによって第2検量線L2を生成する。
【0078】
次いで、ステップS11において、抵抗相対比率算出部16は、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikを算出する。
次いで、ステップS12において、太陽電池セル動作電圧算出部17は、縦軸の値が、動作電圧の推定対象の太陽電池セルCkの抵抗の相対比率rの値r△Ikになる第2検量線L2上の点である第4点P4を算出する。
次いで、ステップS13において、太陽電池セル動作電圧算出部17が、第4点P4の横軸の値を、推定対象の太陽電池セルCkの動作電圧vとして算出する。
【0079】
上述したように、第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1によれば、従来においては把握することができなかった、太陽電池モジュールM内の直列接続された太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧vを推定することができる。
【0080】
[第2実施形態]
以下、本発明の太陽電池モジュール内の太陽電池セルの動作電圧の推定方法および太陽電池セル動作電圧推定システムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1では、変調光照射部11のリフレクタ114によって反射された変調光MLが、太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5に照射される。つまり、第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1では、変調光MLの照射方向が、リフレクタ114によって制御される。また、第1実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例(図5に示す例)では、直列接続された複数の太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5が、直線状に配列されている。
一方、第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1では、変調光照射部11が、3D(3次元)レーザスキャナ(図示せず)を備えている。つまり、第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1では、変調光MLの照射方向(発射方向)が、3Dレーザスキャナによって制御される。また、第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例では、直列接続された複数の太陽電池セルが、アレイ状(グリッド状)に配列されている。
【0082】
3Dレーザスキャナは、計測対象点とセンサの間をレーザパルスが往復する時間を計測するTime Of Flight(TOF)法等を用いて距離を計測し、同時にレーザビームの発射方向も計測して計測対象点の3次元座標を得る。一度のスキャニングで大量のデータ点を得られる。昨今、3Dレーザスキャナは様々な地形や建造物等の3次元計測に応用されている。
【0083】
第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例では、複数の太陽電池モジュールMによって太陽電池モジュール群が構成されている。太陽電池モジュール群には、アレイ状に配列された複数の太陽電池セル(太陽電池セル群)が含まれている。複数の太陽電池セル(太陽電池セル群)に対する変調光MLの照射に、例えばTOF法の3Dレーザスキャナが適用される。
第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例では、TOF法の3Dレーザスキャナが、複数の太陽電池セル(太陽電池セル群)に対して、パルスを繰り返し照射して計測(パルス繰り返しレートの例:100kHz~1MHz)する。
第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例では、パルスの照射方向と照射時刻を記録したデータベースと、太陽電池セルアレイ(太陽電池セル群)からの出力配線に接続された交流電流クランプセンサ18の信号が入力されるロックインアンプ12aの出力を記録したデータベースとが組み合わされる。つまり、3Dレーザスキャナによってスキャンされた太陽電池セルの位置と、ロックインアンプ12aの出力とが紐付けられる。その結果、太陽電池セル群を構成する個々の太陽電池セルの動作電圧を把握(測定)することができる。
詳細には、第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1の適用例では、太陽電池セルが吸収できるレーザ光が、3Dレーザスキャナによって照射される。太陽電池セルとしてシリコン太陽電池セルが用いられている太陽電池モジュール群に、太陽電池セル動作電圧推定システム1が適用される場合には、シリコン太陽電池セルを構成するシリコンのバンドギャップ(約1.2eV)を考慮し、シリコンが吸収できる約1030nm以下の波長のレーザ光が、3Dレーザスキャナから照射される。また、3Dレーザスキャナから照射されるレーザ光の一部がシリコン太陽電池セルに吸収されるため、シリコン太陽電池セルから3Dレーザスキャナへの反射光強度を確保すべく、3Dレーザスキャナからの照射レーザ光強度が大きい値に設定される。
【0084】
上述したように、第1および第2実施形態の太陽電池セル動作電圧推定システム1によれば、動作中の太陽電池モジュールMの内部に密封されている太陽電池セルC1、C2、C3、C4、C5の動作電圧を定量的に推定することができる。
【実施例
【0085】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
実施例では共通して以下の実験機材を用いた。
【0086】
・ロックインアンプ:NF回路ブロック製 LI-575実施例1、実施例2、実施例3:感度1mV、時定数1.25s、負荷抵抗と直列の32回巻きコイルに非接触でクランプさせた電流クランプセンサ入力実施例4:感度10mV、時定数1.25s、負荷抵抗の電圧(モジュール電圧)をロックインアンプへ直接入力
【0087】
・He-Neレーザ:JDSU NOVETTE 0.5mW ランダム偏光、ND1フィルタ
・チョッパ周波数:約330Hz
・各種の電圧測定:キーエンス製 データロガーNR-600の高速アナログ計測ユニットNR-HA08
・太陽電池:中国製 ETMP 250-0.5V 5個を直列接続したモジュール(各セルの開放電圧vOC=0.50Vと仮定)
【0088】
・模擬太陽光:Sunway製LEDライトにより
実施例1、実施例2、実施例3で約140W/m
実施例4で約100W/m
【0089】
[実施例1]
モジュールの電圧V=0.05,0.08~0.09,1.29Vにおいて各セルの平均セル電圧とロックインアンプ比率r△Iを測定した。上述した図3が実施例1の測定結果を示している。
モジュールの電圧V=0.05Vでは検量線作成のために十分な遮光マスクを施し、モジュールの電圧V=0.08~0.09Vでは不十分な遮光マスクあるいは遮光マスクなしとして各セルの電圧を変化させ、さらにモジュールの電圧V=1.29Vでは遮光マスクなしに加えて負荷抵抗を増加してモジュール電圧を増加した。
図3に示すように、検量線を作成したモジュールの電圧V=0.05Vのデータについて、セル電圧の予測値(V-4vOC,vOC)=(1.95V,0.5V)は実測データの最小・最大電圧(-1.89V,0.49V)に近かった。
さらに、モジュール電圧0.05Vでのロックインアンプ比率r△Iとセルの開放電圧vOC=0.50Vを用いて、任意のモジュール電圧での検量線を推定したところ、実測データ「○」(モジュール電圧1.29V),「▲」(モジュール電圧0.08~0.09V)のロックインアンプ比率r△Iに相当する推定電圧が実測データの電圧に近かった。これは本発明の妥当性を示していると考える。
【0090】
[実施例2]
図8は実施例2の測定データを示す図である。図8の横軸は太陽電池セルの平均動作電圧[V]を示しており、縦軸はロックインアンプの値△I(ロックインアンプ電圧(a.u.))を示している。
実施例2では、実施例1のデータを用いて、遮光マスク付きモジュールの電圧V=0.05,0.08~0.09,1.29Vにおいて各セルの平均セル電圧とロックインアンプの値△Iを図8にまとめた。
検量線を作成したモジュールの電圧V=0.05Vのデータについて、セル電圧の予測値(V-4vOC,vOC)=(1.95V,0.50V)は実測データの最大・最小電圧(-1.89V,0.49V)に近かった。
モジュール電圧0.05Vでのロックインアンプの値△Iの最大値で規格化した値△I(規格化値△I)による検量線を推定したところ、実施例1と比べて実測データ「▲」(モジュール電圧0.08~0.09V)と実測データ「○」(モジュール電圧1.29V)ともに推定検量線にズレが見られた。
ロックインアンプ比率r△Iによる検量線よりも、規格化値△Iによる検量線は劣っているが、全セルのロックインアンプの値△Iが測定できない場合の代替として規格化値△Iによる検量線を使用できると考える。次の実施例3では規格化値△Iによる検量線でよく推定できていたので、規格化値△Iの検量線がうまく利用できる条件をさらに検討する必要がある。
【0091】
[実施例3]
図9は実施例3の測定データを示す図である。図9の横軸は太陽電池セルの平均動作電圧[V]を示しており、縦軸はロックインアンプの値△I(ロックインアンプ電圧(a.u.))を示している。
実施例3では、モジュールの電圧V=0.56,1.09Vにおいて各セルの平均セル電圧とロックインアンプの値△Iを図9にまとめた。
モジュールの電圧V=0.56Vでは検量線作成のために十分な遮光マスクを施したが、モジュールの電圧V=1.09Vでは遮光マスクなしとして各セルの電圧を変化させた。
検量線を作成したモジュールの電圧V=0.56Vのデータについて、セル電圧の予測値(V-4vOC,vOC)=(1.44V,0.50V)は実測データの最小・最大電圧(-1.38V,0.47V)に近かった。
モジュール電圧0.56Vでのロックインアンプの値△Iの最大値で規格化した値△I(規格化値△I)による検量線を推定したところ、実測データ「○」(モジュール電圧1.09V)に近い推定値「×」が出ていた。
しかし、実施例2ではうまく推定できなかったので、規格化値△Iの検量線がうまく利用できる条件をさらに検討する必要がある。
【0092】
[実施例4]
図10は実施例4の測定データを示す図である。図11は実施例4の他の測定データを示す図である。図10および図11の横軸は太陽電池セルの平均動作電圧[V]を示しており、縦軸はロックインアンプ比率r△Iを示している。
実施例4では、モジュールの電圧1.21,1.42Vにおいて各セルの平均セル電圧とロックインアンプ比率r△Iを測定した。
モジュールの電圧V=1.21Vでは検量線作成のために十分に遮光マスクを施したが、モジュールの電圧V=1.42Vでは遮光マスクなしとして各セルの電圧を変化させた。
検量線を作成したモジュールの電圧V=1.21Vのデータについて、セル電圧の予測値(V-4vOC,vOC)=(-0.79V,0.50V)は実測データの両端電圧(-0.42V,0.42V)となりズレがあった。
そこで、実際の開放電圧vOC=0.42Vとすると、セル電圧の予測値(V-4vOC,vOC)=(-0.47V,0.42V)は実測データの両端電圧(-0.42V,0.42V)に近かった。
この開放電圧vOC=0.42Vを仮定した検量線を推定した結果は図10のとおりで、モジュール電圧1.42Vでの実測データの電圧「○」に近い推定値「×」が出ていた。
ちなみに、開放電圧vOC=0.50Vでのセル電圧の予測値(V-4vOC,v )=(-0.79V,0.50V)を仮定した検量線で推定した結果は図11のとおりで推定検量線は実測データから大きくずれていた。模擬太陽光の強度低下により開放電圧vOCが若干低下することが原因と考えられる。これより、事前にできるだけ正確な開放電圧vOCを与える必要がある。
【0093】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0094】
なお、上記の実施形態における太陽電池セル動作電圧推定システム1の全部または一部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
なお、太陽電池セル動作電圧推定システム1の全部または一部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各システムが備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
なお、太陽電池セル動作電圧推定システム1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0095】
1…太陽電池セル動作電圧推定システム、11…変調光照射部、111…レーザ光照射部、112…ライトチョッパ部、113…チョッパ制御部、114…リフレクタ、115…フィルタ、12…出力電流微小変化検出部、12a…ロックインアンプ、13…遮光状態設定部、14…太陽電池モジュール動作電圧検出部、15…検量線生成部、16…抵抗相対比率算出部、17…太陽電池セル動作電圧算出部、18…交流電流クランプセンサ、M…太陽電池モジュール、C1、C2、C3、C4、C5…太陽電池セル、RL…負荷抵抗、L1…第1検量線、L2…第2検量線、P1…第1点、P2…第2点、P3…第3点、P4…第4点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11