(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】新規アミン官能基化ポリマーおよび調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20240306BHJP
C07C 211/52 20060101ALI20240306BHJP
C07C 211/48 20060101ALI20240306BHJP
C07C 211/34 20060101ALI20240306BHJP
C07C 217/84 20060101ALI20240306BHJP
C07C 323/28 20060101ALI20240306BHJP
C07C 323/36 20060101ALI20240306BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20240306BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20240306BHJP
C09J 139/00 20060101ALI20240306BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240306BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20240306BHJP
C09D 139/00 20060101ALI20240306BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240306BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08G61/02
C07C211/52 CSP
C07C211/48
C07C211/34
C07C217/84
C07C323/28
C07C323/36
C09J201/02
C09J153/00
C09J139/00
C09D201/02
C09D153/00
C09D139/00
C09J123/00
A61K47/32
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2020565482
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 CA2019050704
(87)【国際公開番号】W WO2019222852
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502087932
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー、ローレル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハトジキリアコス、サヴァス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ペリー、ミッチェル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア、ダモン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】トムコヴィック、タニア
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/191692(WO,A1)
【文献】特開2013-127057(JP,A)
【文献】特公昭48-018588(JP,B1)
【文献】米国特許第04217914(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329666(US,A1)
【文献】Perry, Mitchell Robert,Catalytic synthesis of amines : from small molecules to nitrogen-containing polymers,Ph. D. thesis, The University of British Columbia,[online], 2018.03.31, [令和5年4月27日検索], インターネット, https://open.library.ubc.ca/soa/cIRcle/collections/ubctheses/24/items/1.0355826
【文献】Shingo Kobayashi, et al.,Regioselective Ring-Opening Metathesis Polymerization of 3-Substituted Cyclooctenes with Ether Side Chains.,Macromolecules,Vol.49, No.7,pp.2493-2501
【文献】Rebecca C. DiPucchio, et al.,Catalytic and Atom-Economic Csp3-Csp3 Bond Formation: Alkyl Tantalum Ureates for Hydroaminoalkylation,Angewandte Chemie,Vol.57, No.13,pp.3469-3472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
C08G 2/00- 2/38
C08G 73/00- 73/26
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08C 19/00- 19/44
C07B 31/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
A61K 47/32
A61P 31/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2のアミン官能基化化合物:
【化1】
式中、
【化2】
は単結合であり;
式中、M
1およびM
2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC
1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、各X
1、X
2、X
3、およびX
4は独立してHまたはCH
3である;
式中、各Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の少なくとも1つは-CR
1R
2-NR
3R
4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR
3およびR
4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR
3およびR
4の一方はR
1およびR
2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【請求項2】
X
1、X
2、X
3、およびX
4のそれぞれがHである、請求項
1のアミン官能基化化合物。
【請求項3】
R
1およびR
2の
それぞれがHである、請求項
1または
2のアミン官能基化化合物。
【請求項4】
R
3およびR
4の
一方がHである、請求項
1~
3のいずれか1項のアミン官能基化化合物。
【請求項5】
式3のオリゴマーを含むポリマー:
【化3】
式中、
【化4】
は単結合であり;
式中、各X
1、X
2、X
3、およびX
4は独立してHまたはCH
3である;
式中、各Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の少なくとも1つは-CR
1R
2-NR
3R
4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR
3およびR
4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR
3およびR
4の一方はR
1およびR
2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマー単位は頭対頭様式、頭対尾様式、尾対尾様式、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【請求項6】
式XIのオリゴマーを含むポリマー:
【化5】
式中、
【化6】
は単結合であり;
式中、各X
1、X
2、X
3、およびX
4は独立してHまたはCH
3である;
式中、各Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、Y
10、Y
11、Y
12、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の少なくとも1つは-CR
1R
2-NR
3R
4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR
3およびR
4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR
3およびR
4の一方はR
1およびR
2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;
式中、mは1よりも大きい;および
式中、モノマー単位は頭対頭様式、頭対尾様式、尾対尾様式、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【請求項7】
X
1、X
2、X
3、およびX
4のそれぞれがHである、請求項
5または
6のポリマー。
【請求項8】
R
1およびR
2の
それぞれがHである
、請求項
5~
7のいずれか1項のポリマー。
【請求項9】
R
3およびR
4の
一方がHである
、請求項
5~
8のいずれか1項のポリマー。
【請求項10】
アミン官能基
化ポリアルカンであって、ここで
該ポリアルカンが以下を含む、アミン官能基
化ポリアルカン:
【化7】
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【請求項11】
式5のポリアルカン:
【化8】
式中、M
1およびM
2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC
1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、X
1、X
2、X
3、およびX
4のそれぞれは独立してHまたはCH
3である;
式中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Z
1、およびZ
2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R
a、R
b、R
cおよびR
dのそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR
bおよびR
aは結合して環状部分を形成するか、またはここでR
aおよびR
bの一方はR
cおよびR
dの一方と結合して環状部分を形成する;
式中、nは1よりも大きい自然数である;および
式中、モノマー単位は頭対頭様式、頭対尾様式、尾対尾様式、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【請求項12】
X
1、X
2、X
3、およびX
4のそれぞれがHである、請求項
11のポリアルカン。
【請求項13】
R
cおよびR
dの
それぞれがHである、請求項
11または
12のポリアルカン。
【請求項14】
R
bおよびR
aの一方がHである、請求項
11~
13のいずれか1項のポリアルカン。
【請求項15】
請求項
5~
9のいずれか1項で定義したポリマー、請求項
1~
4のいずれか1項で定義したアミン官能基化化合物、請求項
10で定義したアミン官能基
化ポリアルカン、または請求項
11~
14のいずれか1項で定義したポリアルカンの抗菌剤として、またはファウリングを低減するため、または接着剤として、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤としての使用。
【請求項16】
ファウリングがバイオファウリングを含む、請求項
15の使用。
【請求項17】
接着剤が基材に接着するためのものであり、基材がテフロン、ガラス、または金属である、請求項
15の使用。
【請求項18】
捕捉剤が海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものであり、汚染物質がオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
15の使用。
【請求項19】
膜が浄水のための電解質膜または濾過膜である、請求項
15の使用。
【請求項20】
請求項
5~
9のいずれか1項で定義したポリマー、請求項
1~
4のいずれか1項で定義したアミン官能基化化合物、請求項
10で定義したアミン官能基
化ポリアルカン、または請求項
11~
14のいずれか1項で定義したポリアルカンでコーティングされた基材。
【請求項21】
基材がバイオファウリングを低減する、請求項
20の基材。
【請求項22】
式1:
【化9】
式中:
X
1、X
2、X
3、およびX
4は独立してHまたはCH
3であり;
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4はそれぞれ独立して:H;置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル;置換または無置換のアリール;置換または無置換の複素環;アミン適合性保護基;-C(=O)R’;または-C(OR’)R’’であり;ここでY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の少なくとも1つは-CR
1R
2-NR
3R
4であり;
ここでR’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であり;および
ここでr = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
ここでR
1、R
2、R
3、およびR
4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であり、あるいはここでR
3およびR
4は結合して環状部分を形成し、またはここでR
3およびR
4の一方はR
1およびR
2の一方と結合して環状部分を形成する、
のアミン官能基化シクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP)によって調製されたポリマー
であって、ポリマー中の二重結合を除去するために水素化されている、ポリマー。
【請求項23】
式1のアミン官能基化シクロアルケンが、第5族金属ベースの触媒錯体の存在下、シクロアルケンを2級アミン含有部分と接触させ、式1のアミン官能基化シクロアルケンを得ることを含む方法によって調製され、ここで第5族金属ベースの触媒錯体が、式II
【化10】
式中:
R
5およびR
6はそれぞれ独立して:メチル;エチル;イソプロピル;シクロヘキシル;フェニル;2,6-ジメチルフェニル;2,4,6-トリメチルフェニル;4-メチルフェニル;置換されていてもよいピペリジン;置換されていてもよいピロリジン;または置換されたモルホリンである;または一緒に結合し、それらが両方とも結合する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよい6-員環を形成する;
R
7はフェニル;2,6-ジメチルフェニル;または2,6-ジ(イソプロピル)フェニルである;またはR
5および/またはR
6と一緒に結合し、それらが結合する窒素原子のそれぞれと一緒になって、置換されていてもよい5-員環を形成する;
各Xは独立してClまたはBrである;
a =1または2およびb =(4 - a);および
R
8は-CH
3、-NMe
2、-CH
2C(CH
3)
3、または-CH
2Si(CH
3)
3である、
の構造を有する、請求項
22のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2018年5月23日に出願された米国特許出願第62/675,465号に対する優先権を主張し、その内容はそれらの全体が本明細書中に参考として援用される。
発明の分野
この開示は、アミン官能基化ポリマーに関する。より具体的には、この出願は、アミン官能基化シクロアルケンの開環メタセシス(ROMP)によって製造され得る新規アミン官能基化ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
アルケンの触媒官能基化は、化学、製薬、および農薬産業に関連のある分子の合成のための持続可能かつ効率的な方法を表す。このような有機変換は、価値のあるビルディングブロックとして魅力的であり、これらは比較的安価な出発物質から経済的に得られる。とりわけ、アミンのアルケンとの直接C-H官能基化、すなわちヒドロアミノアルキル化は、多置換アミンが現在任意の保護基/配向基または光開始剤の非存在下で容易に得られ得るという事実により、悪評を得ている。i
【0003】
第3族(Sc)、第4族(Ti、Zr)、および第5族(Nb、Ta)金属錯体がヒドロアミノアルキル化反応において強力なプレ触媒として働き得ることが当該分野で公知である。例えば、N,O-キレート化ピリドネートタンタルベースの錯体は、立体的にかさ高い内部アルケンと反応することができ、そしてそれらの2級アニリンとの反応を促進することが示された。これらの反応は、100%位置選択的様式で起こり、分枝生成物を与える。
【0004】
化学、製薬、および農薬産業におけるアミンビルディングブロックの合成のための単純かつ経済的な方法の高い要求にも関わらず、現在使用されている触媒系には公知の問題点がある。例えば、ヒドロアミノアルキル化は、しばしば高い反応温度(>110℃)および非常に長い反応時間(>20 h)を必要とし、これらの多くの触媒は許容するのに十分に頑強ではない。さらに、これらの触媒との基質適合性は、特にシクロヘキセンおよびシクロオクテンなどの内部アルケンについて問題のあることが知られている。過剰のアルケン(少なくとも1.5当量過剰)が完全な基質変換を達成するために必要とされるという事実は、なお課題のままである。
【0005】
活性種がTa-NMe2部分を有する触媒系の場合、過剰のアルケンはしばしば放出されたHNMe2とアルケン試薬との間の有害な副反応によって正当化され、それによって反応の化学量論に影響を与える。TaMe3Cl2の使用は、アミンおよびアルケン基質のヒドロアミノアルキル化がこの触媒を化学量論量で用いて達成されたので、成功したと証明されたが、TaMe3Cl2は光および温度感受性であり、そしてそれをもって大規模工業プロセスにとって適切ではないと警告されている。類似のアプローチを用いて、室温での1-オクテンの4-メトキシ-N-メチルアニリンへの付加は、触媒としてホスホルアミデート支持Ta-Me錯体を用いて達成された。この触媒は高い反応性を示したが、ホスホルアミデートTa-Me錯体は実際、基質を完全に変換するために過剰のアルケンを必要とする。前周期遷移金属錯体の安定性を改善するために、例えばCH2SiMe3およびCH2CMe3などの例えばバルキーなアルキル基の形態の立体的なかさ高さは、金属中心に錯体化され得る。以前に、WilkinsonおよびSchrockはアルキルタンタル錯体Ta(CH2SiMe3)3Cl2およびTa(CH2CMe3)3Cl2を記載した。しかし、ヒドロアミノアルキル化反応におけるそれらの活性は、当該分野において報告されていない。
【0006】
Martinezら(Applied Petrochemical Research, 5: 19-25)は、アミン官能基化した歪んだシクロオクテンモノマーの開環メタセシス重合(ROMP)、続いて水素化を利用して、骨格へ共有結合した官能基の鍵となる導入を有するポリエチレンに類似した線状ポリマーを得る戦略を採用した。しかし、市販で入手可能なグラブス触媒の無保護アミン官能基を有するモノマーに対する不適合性は、グラブスメタセシス触媒がアミン含有シクロアルケンモノマーとのROMPの間に不活性化されるので、このアプローチの有用性を制限することがしばしば観察された。
【0007】
従って、アミン含有ポリオレフィン物質の効率的な調製は、合成的課題のままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
この開示は、一部、シクロアルケンのヒドロアミノアルキル化、続く開環重合および必要に応じて水素化が少なくとも1個のアミン基を含む官能基化ポリマーをもたらすという発見に基づく。種々の実施態様において、当該アミン基は、自己修復、接着、および/または抗菌特性などの有用な特性を導入する。
【0009】
本開示の局面は、式2のアミン官能基化化合物に関連する:
【0010】
【0011】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【0012】
種々の実施態様において、式2のアミン官能基化化合物を形成するモノマーは、頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【0013】
本開示の局面は:上記のアミン官能基化化合物;およびラジカルまたはアニオン重合によって形成されたポリマーを含み、そのためにアミン官能基化化合物の官能末端基M1およびM2が開始点として働く、ブロックコポリマーに関連する。
【0014】
上記のアミン官能基化化合物;および少なくとも1種の追加のポリマーを含んで調製されたブロックコポリマー。
【0015】
本開示の局面は、式3のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0016】
【0017】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対頭様式で連結している。
【0018】
本開示の局面は、式4のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0019】
【0020】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは尾対尾様式で連結している。
【0021】
本開示の局面は、式7のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0022】
【0023】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対尾様式で連結している。
【0024】
本開示の局面は、式Xのポリマーに関連する:
【0025】
【0026】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対頭様式で連結している。
【0027】
本開示の局面は、式XIのオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0028】
【0029】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対頭様式で連結している。
【0030】
本開示の局面は、式6の異なるアミン官能基化モノマー単位の混合物を含むコポリマーに関連する:
【0031】
【0032】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでR3およびR4は結合して環状部分を形成するか、またはここでR3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、モノマー単位は頭対頭様式、頭対尾様式、尾対尾様式、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【0033】
本開示の局面は、上記のポリマーおよびポリマー毛またはブラシを含み、ここでX1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、Z4、R’、R’’、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つがポリマー毛またはブラシの続く合成のための開始点として働く、ブラシコポリマーに関連する。
【0034】
本開示の局面は、アミン官能基化ポリアルケンまたはポリアルカンに関連し、ここで該ポリアルケンまたはポリアルカンは以下を含む:
【0035】
【0036】
【0037】
【化10】
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【0038】
本開示の局面は、式5のポリアルカンに関連する:
【0039】
【0040】
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれは独立してHまたはCH3である;
式中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Z1、およびZ2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、Ra、Rb、Rc、およびRdのそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であるか、またはここでRbおよびRaは結合して環状部分を形成するか、またはここでRaおよびRbの一方はRcおよびRdの一方と結合して環状部分を形成する;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【0041】
種々の実施態様において、モノマーは頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結している。
【0042】
上記のポリマー、ポリアルカン、ポリアルケン、およびアミン官能基化化合物は、抗菌剤として有用であり得る。上記のポリマー、ポリアルカン、ポリアルケン、およびアミン官能基化化合物は、ファウリングを低減するために有用であり得る。ファウリングはバイオファウリングを含み得る。上記のポリマーは、接着剤として有用であり得る。接着剤は基材へ接着するためのものであり得る。基材はテフロン、ガラス、または金属であり得る。
【0043】
上記のポリマー、ポリアルカン、ポリアルケン、およびアミン官能基化化合物は、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤として有用であり得る。種々の実施態様において、捕捉剤は、海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものである。種々の実施態様において、汚染物質はオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む。種々の実施態様において、膜は浄水のための電解質膜または濾過膜である。
【0044】
本開示の局面は、上記のポリマー、ポリアルカン、ポリアルケン、およびアミン官能基化化合物でコーティングされた基材に関連する。
【0045】
本発明の他の局面および特徴は、添付の図面とともに本発明の特定の実施態様の以下の記載をレビューして当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の実施態様を説明する図面において、
【
図1】
図1は、本開示の実施態様による官能基化線状ポリエチレンの合成のための一般戦略の模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施態様によるアミン官能基化シクロオクタジエン誘導体にアクセスするためのシクロオクタジエンのヒドロアミノアルキル化を描写する略図である。重量測定収率はクロマトグラフィー後に報告した(%)。
【
図3】
図3は、本開示の実施態様によるアミン含有ポリシクロオクテンを得るための開環メタセシス重合(ROMP)を描写する略図である。
【
図4a】
図4aは、本開示の5つのポリマー、すなわち「P1」、「P2」、「P3」、「P4」、および「P1H」についての温度の関数としての質量損失率(%/分)のグラフである。
【
図4b】
図4bは、本開示の5つのポリマーについての温度の関数としての重量損失(%)のグラフである。
【
図5】
図5は、本開示の5つのポリマーのDSCサーモグラムである。
【
図6】
図6は、(a)50℃でのP1;(b)30°でのP2;(c)50℃でのP3;(d)50℃でのP4;(e)50℃でのP1Hの保存(G’)率および損失(G”)率ならびに複素粘度(|η*|)(記号)のマスター曲線を示す。
【
図7a】
図7aは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M1」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図7b】
図7bは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M1」のCDCl
3中、293 Kでの
13C-NMRスペクトル(75 MHz)である。
【
図8a】
図8aは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M2」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図8b】
図8bは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M2」のCDCl
3中、293 Kでの
13C-NMRスペクトル(75 MHz)である。
【
図8c】
図8cは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M2」のCDCl
3中、293 Kでの
19F-NMRスペクトル(282 MHz)である。
【
図9a】
図9aは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M3」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図9b】
図9bは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M3」のCDCl
3中、293 Kでの
13C-NMRスペクトル(75 MHz)である。
【
図10a】
図10aは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M4」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図10b】
図10bは、本開示のアミン官能基化シクロアルケン「M4」のCDCl
3中、293 Kでの
13C-NMRスペクトル(75 MHz)である。
【
図11a】
図11aは、本開示のポリマー「P1」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図11b】
図11bは、本開示のポリマー「P1」のCDCl
3中、293 Kでの固体スペクトルである。
【
図12a】
図12aは、本開示のポリマー「P2」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図12b】
図12bは、本開示のポリマー「P2」のCDCl
3中、293 Kでの固体スペクトルである。
【
図13a】
図13aは、本開示のポリマー「P3」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図13b】
図13bは、本開示のポリマー「P3」のCDCl
3中、293 Kでの固体スペクトルである。
【
図14a】
図14aは、本開示のポリマー「P4」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図14b】
図14bは、本開示のポリマー「P4」のCDCl
3中、293 Kでの固体スペクトルである。
【
図15a】
図15aは、本開示のポリマー「P1H」のCDCl
3中、293 Kでの
1H-NMRスペクトル(300 MHz)である。
【
図15b】
図15bは、本開示のポリマー「P1H」のCDCl
3中、293 Kでの固体スペクトルである。
【
図16】
図16は、ポリマーP1球体の巨視的自己修復の画像である:(A)PTFE上の乾燥球体;(B)ちょうど接触させられた球体;(C)および(D)周囲条件下で24時間後(C)、球体は、引き離された場合にもはや個別の境界を示さない(D)。
【
図17】
図17は、ポリマーの接着特性を描写する画像である。
【
図18】
図18は、観察されたガラス転移温度に対するコポリマーにおけるCAN-1およびP2モノマー比の比率の効果を示すグラフである。
【
図19】
図19は、50℃でのポリマーP2、50℃でのコポリマーP(ACN-1-co-P2)、および50℃でのACN-1のホモポリマーの保存(G’)率および損失(G”)率ならびに複素粘度(|η*|)(記号)のマスター曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
定義
本明細書中で使用される「触媒」は、それ自体影響を受けることなく化学反応を加速する化学化合物をいう。「触媒」は、「プレ触媒」、「触媒系(catalyst system)」、または「触媒系(catalytic system)」などの用語と相互交換可能で使用され得る。本明細書中で使用される「触媒」は、インサイチュで形成される触媒中間体または種を含む。
【0048】
本明細書中で使用される「第5族金属」は、元素の周期律表に第5族として列挙されたd-電子を含む遷移金属をいい、遷移金属バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、およびドブニウム(Db)を含む。
【0049】
本明細書中で使用される「ヒドロアミノアルキル化」は、2級アミンを含む部分とオレフィンとの間の反応をいう。このような反応を促進するために触媒がしばしば使用され得る。
【0050】
本明細書中で使用される「2級アミン」は、アミノ基が任意の混成の2個のC-原子に直接結合されたアミンをいう。N-原子に対してα-位の2個のC-原子はsp3混成であり得る。
【0051】
本明細書中で使用される「オレフィン」または「アルケン」は、二重結合によって結合された1対以上のC-原子を含む不飽和炭化水素をいう。
【0052】
本明細書中で使用される「TOF」は、遷移周波数をいう。
【0053】
数値範囲は、範囲を定義する数字を含む。単語「含む(comprising)」は、本明細書中、無制限の用語として使用され、表現「含むが限定されない」と実質的に等価であり、そして単語「含む(comprising)」は対応する意味を有する。本明細書中で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数指示語を含む。従って、例えば、「物(a thing)」への言及は、1つを超えるこのような物を含む。本明細書中、参考文献の引用は、このような参考文献が本発明の実施態様に対する先行技術であることの承認ではない。本発明は、実質的に本明細書中上記した通りのおよび実施例および図面を参照して全ての実施態様および変形例を含む。発明の名称、表題などは、この文書の読者の理解を高めるために提供され、そして本発明の範囲を限定すると読まれるべきではない。
【0054】
アミン官能基化シクロアルケン
この開示は、式1のアミン官能基化シクロアルケンに関連する:
【0055】
【0056】
式中:
X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3であり;
Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4はそれぞれ独立して:H;置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル;置換または無置換のアリール;置換または無置換の複素環;アミン適合性保護基;-C(=O)R’;または-C(OR’)R’’であり;ここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4であり;
ここでR’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基であり;および
ここでr = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2。
【0057】
R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、R3およびR4は結合して環状部分を形成し、ここでR1およびR2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、R3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成し、この場合、R1、R2、R3、およびR4の残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0058】
アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれはHである。アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、そしてX2およびX4のそれぞれはCH3である。アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。
【0059】
アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子に隣接する少なくとも1個の環炭素原子は2個のH原子で置換されている。種々の実施態様において、Y3は-CR1R2-NR3R4であり、および:各Y1およびY2はHであり;Y5およびY6のそれぞれはHであり;または各Y1、Y2、Y5、およびY6のそれぞれはHである。
【0060】
アミン官能基化シクロアルケンの種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子は水素原子でさらに置換されている。種々の実施態様において、Y3は-CR1R2-NR3R4であり、およびY4はHである。
【0061】
この開示はさらに、上記のアミン官能基化シクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP)によって調製されたポリマーに関連する。
【0062】
この開示はさらに、上記の異なるアミン官能基化シクロアルケンの混合物の開環メタセシス重合(ROMP)によって調製されたポリマーに関連する。種々の実施態様において、混合物は、位置異性体であるアミン官能基化シクロアルケンを含む。種々の実施態様において、隣接する炭素上の-CR1R2-NR3R4基の位置は、位置異性体間で交換される。
【0063】
種々の実施態様において、モノマー単位は、頭対頭、頭対尾、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで重合されている。
【0064】
種々の実施態様において、ポリマーは、ポリマー中の二重結合を除去するために水素化されている。
【0065】
種々の実施態様において、ポリマーは自己修復特性を有する。種々の実施態様において、ポリマーは接着特性を有する。種々の実施態様において、ポリマーは抗菌活性を有する。
【0066】
上記ポリマーは、抗菌剤として有用であり得る。上記ポリマーは、ファウリングを低減するために有用であり得る。ファウリングはバイオファウリングを含み得る。上記ポリマーは、接着剤として有用であり得る。接着剤は、基材への接着のためのものであり得る。基材はテフロン、ガラス、または金属であり得る。
【0067】
上記ポリマーは、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤として有用であり得る。種々の実施態様において、捕捉剤は、海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものである。種々の実施態様において、汚染物質はオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む。種々の実施態様において、膜は浄水のための電解質膜または濾過膜である。
【0068】
アミン官能基化化合物
この開示はさらに、式2のアミン官能基化化合物に関連する:
【0069】
【0070】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nは自然数である。
【0071】
R1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、R3およびR4は結合して環状部分を形成し、ここでR1およびR2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、R3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成し、この場合、R1、R2、R3、およびR4の残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0072】
種々の実施態様において、式2のアミン官能基化化合物を形成するモノマー単位は、頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結されている。
【0073】
種々の実施態様において、nは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、nは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、nは3~600の範囲にある。種々の実施態様において、nは5~400の範囲にある。
【0074】
種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれはHである。種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、そしてX2およびX4のそれぞれはCH3である。種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。
【0075】
種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子に隣接する少なくとも1個の環炭素原子は2個のH原子で置換されている。例えば、Y3が-CR1R2-NR3R4である場合:各Y1およびY2はHであり;Y5およびY6のそれぞれはHであり;または各Y1、Y2、Y5、およびY6のそれぞれはHである。
【0076】
種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子は水素原子でさらに置換されている。例えば、Y3が-CR1R2-NR3R4である場合、Y4はHである。
【0077】
上記アミン官能基化化合物は、抗菌剤として有用であり得る。上記アミン官能基化化合物は、ファウリングを低減するために有用であり得る。ファウリングはバイオファウリングを含み得る。上記アミン官能基化化合物は、接着剤として有用であり得る。接着剤は、基材への接着のためのものであり得る。基材はテフロン、ガラス、または金属であり得る。
【0078】
上記アミン官能基化化合物は、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤として有用であり得る。種々の実施態様において、捕捉剤は、海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものである。種々の実施態様において、汚染物質はオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む。種々の実施態様において、膜は浄水のための電解質膜または濾過膜である。
【0079】
式3、4、および7のポリマー
この開示はさらに、式3のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0080】
【0081】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対頭様式で連結している。
【0082】
この開示はさらに、式4のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0083】
【0084】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは尾対尾様式で連結している。
【0085】
この開示はさらに、式7のオリゴマーを含むポリマーに関連する:
【0086】
【0087】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;
式中、nおよびmは自然数である;および
式中、モノマーは頭対尾様式で連結している。
【0088】
式3、4、および7のオリゴマーについて、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、R3およびR4は結合して環状部分を形成し、ここでR1およびR2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、R3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成し、この場合、R1、R2、R3、およびR4の残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0089】
式3、4、および7は、現在、モノマーが頭対尾様式、頭対頭様式、または尾対尾様式で連結されていることを特定しているが、場合によっては、当業者は、モノマーがそれらの任意の組み合わせで連結され得ることを理解するであろう。
【0090】
式3、4、および7のオリゴマーを含むポリマーの種々の実施態様において、n+mは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、nは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、n+mは3~600の範囲にある。種々の実施態様において、n+mは5~400の範囲にある。
【0091】
式3、4、および7のオリゴマーを含むポリマーの種々の実施態様において、ポリマーは、-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、開環メタセシス重合に適切な官能末端基、またはそれらの任意の組み合わせでキャップされている。
【0092】
式3、4、および7のオリゴマーを含むポリマーの種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれはHである。式3および4のポリマーの種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。式3および4のポリマーの種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、およびX2およびX4のそれぞれはCH3である。式3および4のポリマーの種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。式3および4のポリマーの種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。
【0093】
式3、4、および7のオリゴマーを含むポリマーの種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子に隣接する少なくとも1個の環炭素原子は2個のH原子で置換されている。例えば、Y3が-CR1R2-NR3R4である場合:各Y1およびY2はHであり;Y5およびY6のそれぞれはHであり;または各Y1、Y2、Y5、およびY6のそれぞれはHである。
【0094】
式3、4、および7のオリゴマーを含むポリマーの種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子は水素原子でさらに置換されている。例えば、Y3が-CR1R2-NR3R4である場合、Y4はHである。
【0095】
種々の実施態様において、ポリマーは自己修復特性を有する。種々の実施態様において、ポリマーは接着特性を有する。種々の実施態様において、ポリマーは抗菌活性を有する。
【0096】
本開示の局面はまた、上記のアミン官能基化シクロアルケン;および少なくとも1種の追加のシクロアルケンの開環メタセシス重合によって調製されるブロックコポリマーに関連する。少なくとも1種の追加のシクロアルケンは、ノルボルネンまたはアリールアミン置換ノルボルネンを含む。
【0097】
本開示の局面はまた、上記のアミン官能基化化合物;およびラジカルまたはアニオン重合によって形成されたポリマーを含み、このためにアミン官能基化化合物の官能末端基Mが開始点として働く、ブロックコポリマーに関連する。
【0098】
本開示の局面はまた、上記のポリマーおよびポリマー毛またはブラシを含み、ここでX1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、Z4、R’、R’’、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つがポリマー毛またはブラシの続く合成のための開始点として働く、ブラシコポリマーに関連する。
【0099】
本開示の局面はまた、上記のアミン官能基化シクロアルケン;および少なくとも1種の追加のシクロアルケンの開環メタセシス重合によって調製されるランダムコポリマーに関連する。少なくとも1種の追加のシクロアルケンは、ノルボルネンまたはアリールアミン置換ノルボルネンを含む。
【0100】
上記ポリマーは、抗菌剤として有用であり得る。上記ポリマーは、ファウリングを低減するために有用であり得る。ファウリングはバイオファウリングを含み得る。上記ポリマーは、接着剤として有用であり得る。接着剤は、基材への接着のためのものであり得る。基材はテフロン、ガラス、または金属であり得る。
【0101】
上記ポリマーは、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤として有用であり得る。種々の実施態様において、捕捉剤は、海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものである。種々の実施態様において、汚染物質はオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む。種々の実施態様において、膜は浄水のための電解質膜または濾過膜である。
【0102】
アミン官能基化ポリアルケンおよびポリアルカン
本開示の局面はまた、アミン官能基化ポリアルケンまたはポリアルカンに関連し、ここで該ポリアルケンまたはポリアルカンは以下を含む:
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【0107】
種々の実施態様において、nは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、nは3~600の範囲にある。種々の実施態様において、nは5~400の範囲にある。
【0108】
本開示の局面はまた、式5のポリアルカンに関連する:
【0109】
【0110】
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれは独立してHまたはCH3である;
式中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Z1、およびZ2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nは1よりも大きい自然数である。
【0111】
Ra、Rb、Rc、およびRdのそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、RbおよびRaは結合して環状部分を形成し、ここでRcおよびRdのそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、RaおよびRbの一方はRcおよびRdの一方と結合して環状部分を形成し、この場合、Ra、Rb、Rc、およびRdの残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0112】
種々の実施態様において、RbおよびRaの少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、RbおよびRaの1つはHである。種々の実施態様において、Rbは-CR1R2-NR3R4であり、ここでR1、R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0113】
種々の実施態様において、式5のポリアルカンを形成するモノマー単位は、頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結されている。
【0114】
種々の実施態様において、nは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、nは3~600の範囲にある。種々の実施態様において、nは5~400の範囲にある。
【0115】
種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれはHである。種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、およびX2およびX4のそれぞれはCH3である。種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。
【0116】
本開示の局面は、式Xのコポリマーに関連する:
【0117】
【0118】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、M1およびM2のそれぞれは独立して-OH、置換または無置換のC1-15アルキル、置換または無置換の芳香環、置換または無置換の複素環、または開環メタセシス重合に適切な官能末端基である;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2;および
式中、nおよびmは自然数である;および
【0119】
R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、R3およびR4は結合して環状部分を形成し、ここでR1およびR2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、R3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成し、この場合、R1、R2、R3、およびR4の残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0120】
種々の実施態様において、式Xのコポリマーを形成するモノマー単位は、頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結されている。種々の実施態様において、モノマー単位は頭対頭様式で連結されている。
【0121】
式Xのポリマーの種々の実施態様において、n+mは3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、n+mは3~600の範囲にある。種々の実施態様において、n+mは5~400の範囲にある。
【0122】
種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれはHである。種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、そしてX2およびX4のそれぞれはCH3である。種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子に隣接する少なくとも1個の環炭素原子は2個のH原子で置換されている。種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子は水素原子でさらに置換されている。
【0123】
本開示の局面は、式6の異なるアミン官能基化モノマー単位の混合物を含むコポリマーに関連する:
【0124】
【0125】
式中、(---)は任意の二重結合を示す;
式中、各X1、X2、X3、およびX4は独立してHまたはCH3である;
式中、各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、アミン適合性保護基、-C(=O)R’、または-C(OR’)R’’であり、およびここでY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、およびZ4の少なくとも1つは-CR1R2-NR3R4である;
式中、R’およびR’’のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である;および
式中、r = 0または1およびq = 0または1、ここでr + q = 0、1、または2。
【0126】
R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。あるいは、R3およびR4は結合して環状部分を形成し、ここでR1およびR2のそれぞれは独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。さらにあるいは、R3およびR4の一方はR1およびR2の一方と結合して環状部分を形成し、この場合、R1、R2、R3、およびR4の残りの基のそれぞれは、場合によっては、独立してH、置換または無置換の線状または環状のアルキルまたはアルケニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環、またはアミン適合性保護基である。
【0127】
種々の実施態様において、コポリマーを形成する式6のモノマー単位は、頭対尾、頭対頭、尾対尾、またはそれらの任意の組み合わせで連結されている。
【0128】
種々の実施態様において、ポリマーを形成する式6のモノマー単位の数は、3~1000の範囲にある。種々の実施態様において、ポリマーを形成する式6のモノマー単位の数は、3~600の範囲にある。種々の実施態様において、n+mは5~400の範囲にある。
【0129】
種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれはHである。種々の実施態様において、X1、X2、X3、およびX4の1つのみがCH3である。種々の実施態様において、X1およびX3のそれぞれはHであり、そしてX2およびX4のそれぞれはCH3である。種々の実施態様において、R1およびR2の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、R3およびR4の少なくとも1つはHである。種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子に隣接する少なくとも1個の環炭素原子は2個のH原子で置換されている。種々の実施態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Z1、Z2、Z3、またはZ4が-CR1R2-NR3R4である場合、-CR1R2-NR3R4で置換された環炭素原子は水素原子でさらに置換されている。
【0130】
上記の種々のポリアルケンまたはポリアルカンは、抗菌剤として有用であり得る。上記の種々のポリアルケンまたはポリアルカンは、ファウリングを低減するために有用であり得る。ファウリングはバイオファウリングを含み得る。上記の種々のポリアルケンまたはポリアルカンは、接着剤として有用であり得る。接着剤は、基材への接着のためのものであり得る。基材はテフロン、ガラス、または金属であり得る。
【0131】
上記の種々のポリアルケンまたはポリアルカンは、コーティング、相溶化剤、安定化剤、金属捕捉剤、膜、ガスケット、抗凝固剤、薬物送達剤、または捕捉剤として有用であり得る。種々の実施態様において、捕捉剤は、海洋環境における環境復旧の間の汚染物質を結合するためのものである。種々の実施態様において、汚染物質はオイル、プラスチック粒子、またはそれらの組み合わせを含む。種々の実施態様において、膜は浄水のための電解質膜または濾過膜である。
【0132】
基材
本開示の局面は、上記のポリアルケンまたはポリアルカン、アミン官能基化化合物、またはポリマーでコーティングされた基材に関連する。種々の実施態様において、基材はバイオファウリングを低減する。
【0133】
ポリマーの調製方法
本明細書中に開示した新規アミン含有ポリマーは、第2世代グラブス触媒(「G2」)を用いるヒドロアミノアルキル化と開環メタセシス重合(ROMP)との組み合わせを用いる現在開発しそして開示した触媒合成によって可能となる。この調製は、添加剤または配向基/保護基の使用なしで市販入手可能な出発物質を豊富かつ多様な種類の新規ポリマーに変換し、それによって廃棄物の発生を最小限にする。この原子経済的なグラム規模の調製の開発は、一連の2級アリール-アミン含有シクロオクテン誘導体のために行われた。このようなアミン官能基化ポリエチレンアナログの調製は、2工程、および必要に応じて3工程を含む。第1に、モノマーは、シクロアルケン、例えばシクロオクタジエンの触媒ヒドロアミノアルキル化、原子経済的様式で進行するアルケンアミノアルキル化反応によって合成される。この方法論は、アミン配向基または保護基を回避する(
図2を参照)。第2に、これらのアミン含有モノマーは、次いでROMPを用いて重合され、ペンダント2級アミンを有する線状ポリ(シクロオクテン)を提供する(
図3を参照)。第3におよび必要に応じて、続くアルケン水素化還元は次いで、8個の炭素ごとに2級アミン官能基を含むアミン官能基化ポリエチレンを与えた。
【0134】
本開示の局面は、上記で定義した式5のポリアルカンの調製方法、上記で定義したアミン官能基化化合物の調製方法、上記で定義したポリアルケンまたはポリアルカンの調製方法、または上記で定義した式3、式4、または式7のオリゴマーを含むポリマーの調製方法に関連する。これらの方法は:(i)第5族金属ベースの触媒錯体の存在下、シクロアルケンを2級アミン含有部分と接触させ、ヒドロアミノアルキル置換シクロアルケンを得ること;(ii)当該ヒドロアミノアルキル置換シクロアルケンの開環メタセシス重合を行い、アミン官能基化ポリアルケンを得ること;および、必要に応じて、(iii)工程(ii)からの当該アミン官能基化ポリアルケンを水素化し、式5のアミン官能基化ポリアルカン、場合によってはポリアルケン、ポリアルカン、またはポリマーを得ることを含む。
【0135】
本開示の局面はさらに、式1のアミン官能基化シクロアルケンの調製方法に関連し、当該方法は:(i)第5族金属ベースの触媒錯体の存在下、シクロアルケンを2級アミン含有部分と接触させ、ヒドロアミノアルキル置換シクロアルケンを得ることを含む。
【0136】
上記方法の種々の実施態様において、2級アミン含有部分は、少なくとも2つのα-sp3混成C-H結合を含む。種々の実施態様において、2級アミン含有部分は、必要に応じて置換されたおよび/またはヘテロ原子を含むC4-C100線状、分枝状、または環状アルキルである。種々の実施態様において、2級アミン含有部分は、ハロゲン、エーテル、別のアミン、アルキル、アルケン、アセタール、ホスフィン、アミド、アルキン、イミン、ニトリル、イソシアニド、エポキシド、ボロン酸エステル;置換されていてもよいフェニルおよび/または縮合環系の一部、またはそれらの任意の組み合わせで置換されている。種々の実施態様において、2級アミン含有部分は:ピロリジン;ピペリジン;
【0137】
【0138】
式中、ZはH、OF3、F、Cl、Br、I、またはOCH3である;である。種々の実施態様において、2級アミン含有部分は:
【0139】
【0140】
である。
【0141】
シクロアルケン
上記方法の種々の実施態様において、2級アミン含有部分と接触させられるシクロアルケンはシクロオクタジエンである。しかし、当業者は、他のシクロアルケンがこの開示の文脈において使用され得ることを理解するであろう。
【0142】
触媒錯体
上記方法の種々の実施態様において、第5族金属ベースの触媒錯体は式Iの構造を有する:
【0143】
【0144】
式中:
R5およびR6は:
それぞれ独立して:H;C1-C40の置換または無置換の線状、分枝状、または環状アルキルまたはアルケニルまたはアルキニル;置換または無置換のアリール;または置換または無置換の複素環基である;または
一緒に結合し、それによって、それらが両方とも結合する窒素原子と一緒になって、複素環を形成する;
R7は:
H;C1-C40の置換または無置換の線状、分枝状、または環状アルキルまたはアルケニルまたはアルキニル;または置換または無置換のアリール;または置換または無置換の複素環基である;または
R5および/またはR6と一緒になって結合し、複素環を形成する
Mは第5族金属である;
a = 0~4およびb = 0~4、ここでaおよびbの合計は4である;
各Xはハロゲン置換基である;
各R8は独立して:H;または必要に応じてヘテロ原子を含むC1-C20の置換または無置換の線状、分枝状、または環状アルキルである。種々の実施態様において、各Xは独立してClまたはBrである。種々の実施態様において、a= 1またはa=2。
【0145】
種々の実施態様において、R5およびR6はそれぞれ独立して:メチル;エチル;イソプロピル;シクロヘキシル;フェニル;2,6-ジメチルフェニル;2,4,6-トリメチルフェニル;4-メチルフェニル;置換されていてもよいピペリジン;置換されていてもよいピロリジン;または置換されたモルホリンである。
【0146】
種々の実施態様において、R5およびR6は一緒に結合し、それらが両方とも結合する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよい6-員環を形成する。
【0147】
種々の実施態様において:R5およびR6はそれぞれフェニルである;R5はフェニルであり、およびR6はイソプロピルである;R5およびR6は一緒に結合し、それらが両方とも結合する窒素原子と一緒になって、ピペリジニルを形成する;R5はフェニルであり、およびR6はメチルである;R5はメチルであり、およびR6は1-フェニルエチルである;R5はメチルであり、およびR6はイソプロピルである;またはR5はフェニルであり、およびR6はジフェニルメチルである。
【0148】
種々の実施態様において、R7は:フェニル;2,6-ジメチルフェニル;2,6-ジ(イソプロピル)フェニル;または
【0149】
【0150】
である。
【0151】
種々の実施態様において、R7はR5および/またはR6と一緒になって結合し、それらが結合する窒素原子のそれぞれと一緒になって、置換されていてもよい5-員環を形成する。R7はR5および/またはR6と一緒になって結合し、そしてそれらが結合する窒素原子のそれぞれと:
【0152】
【0153】
を形成する。
【0154】
種々の実施態様において、R8は-CH3、-NMe2、-CH2C(CH3)3、または-CH2Si(CH3)3である。
【0155】
種々の実施態様において、Mはタンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、またはバナジウム(V)である。
【0156】
上記方法の種々の実施態様において、第5族金属ベースの触媒錯体は式IIの構造を有する
【0157】
【0158】
式中:
R5およびR6は:
それぞれ独立して:メチル;エチル;イソプロピル;シクロヘキシル;フェニル;2,6-ジメチルフェニル;2,4,6-トリメチルフェニル;4-メチルフェニル;置換されていてもよいピペリジン;置換されていてもよいピロリジン;または置換されたモルホリンである;または
一緒に結合し、それらが両方とも結合する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよい6-員環を形成する;
R7は:
フェニル;2,6-ジメチルフェニル;または2,6-ジ(イソプロピル)フェニルである;または
R5および/またはR6と一緒に結合し、それらが結合する窒素原子のそれぞれと一緒になって、置換されていてもよい5-員環を形成する;
各Xは独立してClまたはBrである;
a =1または2およびb =(4 - a);および
R8は-CH3、-NMe2、-CH2C(CH3)3、または-CH2Si(CH3)3である。
【0159】
種々の実施態様において、第5族金属ベースの触媒錯体は:
【0160】
【0161】
【0162】
クロロトリス(ジメチルアミド)(κ2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)である。
【0163】
反応条件は、50℃~200℃の範囲の反応温度、75℃~165℃の範囲の反応温度、90℃~150℃の範囲の反応温度、110℃~130℃の範囲の反応温度、約110℃の反応温度、または約130℃の反応温度を含み得る。
【0164】
反応条件は、溶媒を含み得る。溶媒は非プロトン性であり得る。溶媒はトルエン、ベンゼン、またはそれらの混合物であり得る。
【0165】
2級アミン含有部分および当該シクロアルケンは、0.1~1.5の化学量論比で提供され得る。2級アミン含有部分および当該シクロアルケンは、約1:1の化学量論比で提供され得る。
【0166】
実施例
種々の代替の実施態様および実施例が本明細書中に記載される。これらの実施態様および実施例は、一例であり、そして本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。特に、これらの研究のためにタンタルが代表的な第5族金属として使用されたが、当業者は他の第5族金属、および特にニオブが同様に性能を発揮することを予想するであろう。
【0167】
物質および方法
本明細書中に記載の手順は、例示および説明のみの目的のために与えられ、そして本発明の精神または範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0168】
1.一般
全ての反応は、N2および高真空(10-3mbar)を備えたシュレンクダブルマニホールドまたはN2を充填したグローブボックスを用いて不活性雰囲気下で行った。使用した全てのガラス製品は、使用前にオーブン中で160℃を超えて加熱した。反応は、テフロンコーティングした磁気攪拌棒およびテフロン加工ポリプロピレンねじ蓋を備えたねじ切り20 mLシンチレーションバイアル中で行った。トルエンおよびヘキサンは、グローブボックス中に集めそして保存する前に活性アルミナカラムに通すことによって精製した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EMDシリカゲル60 F254プレート上で行い、そして254 nmのUV光下で可視化した。フラッシュクロマトグラフィーは、固定相としてSilicaFlash F60シリカゲル(230-400メッシュ)(Silicycle)および移動相としてACS等級のヘキサン/酢酸エチルを用いる自動化Biotage精製システムを用いて行った。
【0169】
2.試薬
全ての試薬は、商業的供給源から購入した。3-メチル 2-ピリドン(Combi-blocks)は、昇華によって精製した。シクロオクタジエン(Aldrich)、N-メチルアニリン(Aldrich)、4-フルオロ N-メチルアニリン(Aldrich)、および4-ブロモ N-メチルアニリン(Oakwood)は、CaH2上で最少2 h攪拌し、蒸留によって単離し、次いで標準のシュレンク技術を用いて操作した。4-メトキシ N-メチルアニリンは、文献に従って調製し、そして昇華により精製した。[TaCl2(NMe2)3]およびクロロトリス(ジメチルアミド)(κ2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)は、先行する文献のとおり調製した。第2世代グラブス触媒TM(Sigma-Aldrich)は、購入し、そしてさらなる精製なしで使用した。
【0170】
3.機器
NMR分光法。1H NMRスペクトルは、周囲温度、293 KでBruker 300 MHz、または400 MHz、Avance分光計で記録した。13Cおよび19F NMRスペクトルは、293 KでBruker Avance 300機器で記録した。化学シフト(δ)は、100万分の1(ppm)で報告する。カップリング定数Jは、ヘルツ(Hz)で与える。以下の略号は、シグナル多重度を示すために用いる:s = シングレット;d = ダブレット;dd = ダブルダブレット;t = トリプレット;q = カルテット;m = マルチプレット;br = ブロード;appt = 見かけ。シグナルの帰属は、1D (1H、13C{1H})および2D (COSY、HSQCおよびHMBC) NMR実験を用いて行った。
【0171】
赤外(IR)分光法。スペクトルは、オイル物質およびポリマー物質に対する直接測定のためにATRアクセサリーを備えたPerkin Elmer FTIRで室温で記録した。バンドは、波数(cm-1)で報告し、そして略号s=強、m=中、w=弱、sh=ショルダー、br=ブロードを割り当てた。
【0172】
ゲル浸透クロマトグラフィー。ポリマーMn、Mwおよび分散度(D)は、Agilent 1200シリーズアイソクラティックポンプおよびオートサンプラー、Phenomenex Phenogel 5μm狭口径カラム、Wyatt OptilabEx示差屈折計、Wyatt tristar miniDAWN(レーザー光散乱検出器)およびWyatt ViscoStar粘度計を備えたWaters液体クロマトグラフを用いる三重検出ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて得た。0.5 ml・min-1の流速を用い、そしてサンプルをTHF(~2 mg・ml-1)に溶解した。測定を690 nmのレーザー波長、25℃で行った。データを、Wyatt Technology Corpによって提供されるAstra(登録商標)処理プログラムを用いて分析した。
【0173】
示差走査熱量測定(DSC)。DSCは、TA Instruments Refrigerated Cooling System 90を備えたTA Instruments DSC Q2000で行った。5℃/分の加熱/冷却速度を、-90℃~120℃の範囲の各実行について用いた。熱履歴を除去するために1回の加熱/冷却サイクルの完了後に2重の実行を測定した。
【0174】
熱重量分析(TGA)。熱重量分析計、モデルShimadzu TGA-60をサンプルのTG測定のために用いた。少量(3-5 mg)をアルミナるつぼを用いて分析した。サンプルをTGA炉中、105℃で15分間予備加熱し、水分を除去した。次いで、サンプルを窒素雰囲気下、30℃~600℃、10℃/分の速度で試験した。
【0175】
レオロジー的測定。レオロジー特性化を、コーン分割プレートジオメトリを備えたAnton Paar MCR 702回転レオメーターを用いて行った。このジオメトリの主たる利点は、端部破砕の除去である29。このタイプのジオメトリの上部は、変換器(中心プレート)に取り付けられた直径8 mmのプレート、および共軸固定リング(分割プレート、直径25 mm)を含み、これはシールドとして働き、そしてサンプルの端部破砕を防止する。ボトムプレートは、直径25 mmであり、0.07ラジアンの角度を有する。実験を51μmの距離間隙で行った。
【0176】
サンプルの熱安定性を、周波数0.1 Hzおよびせん断ひずみ0.01を付加することによって等温的に2時間モニターした。周波数0.1 Hzでの初期ひずみ掃引試験を用いて線形粘弾性領域の閾値を決定した。0.01の固定したせん断ひずみでの周波数掃引実験(0.01-100 Hz)を異なる温度で行い、これは、時間-温度換算則(tTS)を用いることおよび各サンプルについて基準温度でマスター曲線を生成することを可能にする。実験を3重で行い、そして代表的なデータを示す。
【0177】
4. 合成および結果
クロロトリス(ジメチルアミド)(κ2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)を含む本開示の文脈において有用な第V族金属触媒錯体の一般合成方法は、WO 2018/213938として発行された国際特許出願番号PCT/CA2018/050619に開示されており、その内容は本明細書中に参考として援用される。
【0178】
4.1 クロロトリス(ジメチルアミド)(κ2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)。
【0179】
【0180】
トルエン(~2 mL)中の[TaCl2(NMe2)3]2 (0.23 g, 0.3 mmol)懸濁液に、トルエン(~2 mL)中のナトリウム 3-メチル-2-ピリドネート(0.075 g, 0.6 mmol)の懸濁液を室温で加えた。一晩攪拌すると、最初に黄色の濁った混合物は橙色の透明な溶液になった。揮発物を真空中で除去し、0.250 gの燈褐色オイル(90%)を得た。粗残渣を1.0 gのトルエン溶媒(0.25 w/w%)に溶解し、そしてヒドロアミノアルキル化(HAA)のために用いた。1H NMR (400 MHz, d8-tol): δ 8.23 (d of d, 1H, ArH), δ 6.83 (d, 1H, ArH), δ 6.20 (t, 1H, ArH), δ 3.75-3.53 (br s, 18H, (NCH3)2)3) δ 2.10 (s, 3H, CH3)。特性評価は以前に報告された値と一致した。
【0181】
4.2 ヒドロアミノアルキル化反応:
図2は、本開示によるシクロアルケンのヒドロアミノアルキル化のための一般的スキームを描写する。シクロオクタジエンから誘導されるヒドロアミノアルキル化モノマーを、触媒クロロトリス(ジメチルアミド)(κ
2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)を用いたヒドロアミノアルキル化によって調製した。簡略化のためにクロロトリス(ジメチルアミド)(κ
2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V)を本明細書中で例示した実施態様において独占的に使用したが、当業者は、本明細書中に記載した他の第5族金属ベースの触媒錯体が、本明細書中に開示したアミン官能基化シクロアルケンおよびポリマーの製造において有用であり得ることを理解するであろう。同様に、当業者は、シクロオクタジエンが本明細書中で例示した実施態様において独占的に使用されたが、追加のシクロアルケンが、本明細書中に開示したアミン官能基化シクロアルケンおよびポリマーの製造において有用であり得ることを理解するであろう。全ての報告される収率は、カラムクロマトグラフィー後に計算される。
【0182】
図2を参照して、触媒錯体は、製造およびマルチグラムスケール反応性を示した(
図2を参照)。この触媒系を用いて、種々のパラ置換N-メチルアニリンを用いてハライドおよびメトキシ官能基化アニリン置換基を含む4種の異なるアミン官能基化モノマー(M1 - M4)にアクセスした。わずかに過剰のシクロオクタジエン(1.5当量)を用いることによって、ごく少量のビスアルキル化生成物が微量副生成物として形成し(<15%)、次いでカラムクロマトグラフィーによって除去し、高収量の所望のアミノ化シクロオクテンモノマーを高収率(>81%)で得た。
【0183】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)アニリン(アミン官能基化シクロアルケン「M1」)。クロロトリス(ジメチルアミド)(κ
2-N,O-3-メチル-2-ピリドナト)タンタル(V) (200 mg, 5 mol %)のトルエン(~3 mL)溶液に、N-メチルアニリン(1 g, 9.34 mmol)、続いてシクロオクタジエン(1.54 g, 14 mmol)を加えた。最初に橙色の濁った溶液に攪拌棒を備え付け、蓋をし、グローブボックスから取り出し、そして油浴中145℃で加熱した。温度に達すると、反応混合物は暗赤色になり、次いで攪拌しながら20 h加熱した。この時間後、反応物を周囲雰囲気に曝露しそして~1 mLのメタノールを添加してクエンチした。自動化カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサンの0~20%勾配)によって精製を完了し、1.68gの薄黄色オイル(84.0%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図7a): δ 7.20 (d of d,
3J
AB = 7.35 Hz,
3J
AC = 8.53 Hz, 2H, 2 × ArH), δ 6.72 (t,
3J
AB = 7.39 Hz, 1H, ArH), δ 6.64 (d,
3J
AC = 8.79 Hz, 2H, 2 x ArH), δ 5.68 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 4.09 (br s, 1H, NH), δ 2.96 (m, 2H, CH
2), δ 2.38 (m, 1H, CH), δ 2.16 (m, 3H, CH
2), δ 1.81-1.19 (m, 7H, CH
2)
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl
3,
図7b): δ 148.7 (C), δ 130.2 (CH), δ 130.1 (CH), δ 129.3 (CH), δ 117.0 (CH), δ 112.7 (CH), δ 51.7 (CH
2), δ 37.8 (CH
2), δ 33.5 (CH
2), δ 31.2 (CH
2), δ 28.3 (CH), δ 26.0 (CH), δ 24.9 (CH) IR (ニートオイル, cm
-1, int): 3428br, 3019w, 2924s, 2856sh, 1600s, 1506s, 1314m, 1252w, 1125br, 994br, 749s, 689s HRMS-ESI (m/z) Calcd: 216.1752; found: 216.748。
【0184】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-フルオロアニリン(アミン官能基化シクロアルケン「M2」)。アミン基質として4-フルオロ-N-メチルアニリンを用いてM1のとおりに調製し、1.53 gの薄黄色オイル(81.7%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, 図8a): δ 6.90 (t, 2H, 2 × ArH), δ 6.72 (m, 2H, 2 x ArH), δ 5.69 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.50 (br s, 1H, NH), δ 2.91 (m, 2H, CH
2), δ 2.38 (m, 1H, CH), δ 2.17 (m, 3H, CH
2), δ 1.79-1.19 (m, 7H, CH
2)
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl
3,
図8b): δ 157.2 (C), δ 154.1 (CH), δ 145.0 (CH), δ 130.1 (CH), δ 115.4 (CH), δ 113.5 (CH), δ 52.4 (CH
2), δ 37.7 (CH
2), δ 33.4 (CH
2), δ 31.2 (CH
2), δ 28.2 (CH), δ 25.9 (CH), δ 24.8 (CH)
19F{1H} NMR (282 MHz, CDCl
3,
図8c): δ -128.6 IR (ニートオイル, cm
-1, int): 3428br, 3010w, 2909m, 2856sh, 1615w, 1513s, 1470sh, 1320w, 1221s, 814s, 720m HRMS-EI (m/z) Calcd: 233.15798; found: 233.15817。
【0185】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-ブロモアニリン(アミン官能基化シクロアルケン「M3」)。アミン基質として4-ブロモ-N-メチルアニリンを用いてM1のとおりに調製し、1.29 gの薄黄色オイル(81.3%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図9a): δ 7.25 (d,
3J
AB= 8.77 Hz, 2H, 2 × ArH), δ 6.48 (d,
3J
AB = 8.77 Hz, 2H, 2 x ArH), δ 5.68 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.78 (br s, 1H, NH), δ 2.91 (m, 2H, CH
2), δ 2.36 (m, 1H, CH), δ 2.17 (m, 3H, CH
2), δ 1.78-1.18 (m, 7H, CH
2)
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl
3,
図9b): δ 147.5 (C), δ 131.9 (CH), δ 130.1 (CH), δ 114.3 (CH), δ 108.5 (CH), δ 51.7 (CH
2), δ 37.6 (CH
2), δ 33.4 (CH
2), δ 31.1 (CH
2), δ 28.2 (CH), δ 26.0 (CH), δ 24.8 (CH) ) IR (ニートオイル, cm
-1, int): 3422br, 3015w, 2922s, 2854sh, 1593s, 1497s, 1313m, 1249m, 1175w, 1073w, 999w, 808s, 723m HRMS-ESI (m/z) Calcd: 293.07791; found: 293.07770。
【0186】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-メトキシアニリン(アミン官能基化シクロアルケン「M4」)。アミン基質として4-メトキシ N-メチルアニリンを用いてM1のとおりに調製し、1.52 gの黄色オイル(85.0%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図10a): δ 6.81 (d,
3J
AB= 9.24 Hz, 2H, 2 × ArH), δ 6.60 (d,
3J
AB = 8.79 Hz, 2H, 2 x ArH), δ 5.68 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.77 (s, 3H, OCH
3), δ 3.38 (br s, 1H, NH), δ 2.91 (m, 2H, CH
2), δ 2.38 (m, 1H, CH), δ 2.18 (m, 3H, CH
2), δ 1.81-1.19 (m, 7H, CH
2)
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl
3,
図10b): δ 152.0 (C), δ 142.7 (CH), δ 130.2 (CH), δ 115.0 (CH), δ 114.1 (CH), δ 55.9 (CH
3), 52.9 (CH
2) δ 37.7 (CH
2), δ 33.5 (CH
2), δ 31.2 (CH
2), δ 28.2 (CH), δ 26.0 (CH), δ 24.9 (CH). IR (ニートオイル, cm
-1): 3415br, 3014w, 2919s, 2854sh, 1620w, 1506s, 1463m, 1228s, 1125w, 1035m, 818s, 724w HRMS-EI (m/z) Calcd: 245.17796; found: 245.17794。
【0187】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-(メチルチオ)アニリン(アミン官能基化シクロアルケン「M5」)。アミン基質としてN-メチル-4-(メチルチオ)アニリン(2.5 g)を用いてM1のとおりに調製し、1.52 gの黄色オイル(71%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.22 (d of d, 3J = 8.7 Hz, 3J = 2.5 Hz, 2H, 2 × ArH), δ 6.54 (t, 3J = 8.7 Hz, 1H, ArH), δ 5.67 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.88 (br s, 1H, NH), δ 2.93 (m, 2H, CH2), δ 2.42 (s, 3H, CH3), δ 2.38 (m, 1H, CH), δ 2.16 (m, 3H), δ 1.77-1.19 (m, 7H) 13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl3): δ 146.9 (C), δ 131.5 (CH), δ 130.1 (CH), δ 124.2 (C), δ 113.6 (CH), δ 51.9 (CH2), δ 37.5 (CH2), δ 33.3 (CH2), δ 31.1 (CH2), δ 28.1 (CH), δ 25.9 (CH), δ 24.7 (CH), δ 19.2 (CH3)IR (ニートオイル, cm-1, int): 3417br, 3013w, 2915vs, 2850s, 1598vs, 1500vs, 1466m, 1437w, 1400w, 1367w, 1312m, 1289m, 1248m, 1201w, 1181w, 1128w, 1103w, 966w, 884w, 812m, 756w, 722m HRMS-ESI (m/z) Calcd: 262.1629; found: 262.1637。
【0188】
(Z)-N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-シクロヘキサンアミン(アミン官能基化シクロアルケン「M6」)。アミン基質としてN-メチルシクロヘキシルアミン(0.45 g)を用いてM1のとおりに調製し、0.6 gの黄色オイル(53%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 5.64 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 2.44 (m, 3H, N-CH2 ,N-CH), δ 2.34 (m, 1H, CH), δ 2.12 (m, 3H), δ 1.88-1.00 (m, 18H) 13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl3): δ 130.2 (CH), δ 129.9 (CH), δ 56.9 (CH), δ 54.9 (CH2), δ 38.1 (CH), δ 33.7 (CH2), δ 33.6 (CH2), δ 31.6 (CH2), δ 28.2 (CH), δ 26.2 (CH2), δ 25.9 (CH2), δ 25.1 (CH2), δ 24.9 (CH2) IR (ニートオイル, cm-1, int): 3014w, 2923vs, 2851s, 1651m, 1612w, 1570w, 1463s, 1449s, 1374w, 1348w, 1258w, 1228w, 1131m, 1028w, 989w, 972w, 941w, 886m, 844w, 775m, 754m, 721vs HRMS-ESI (m/z) Calcd: 222.2222; found: 222.2228。
【0189】
表1は、合成した例示的なアミン官能基化シクロアルケンの要約を提供する。
【0190】
【0191】
ペンダント2級アリールアミンを有するこれらのモノマーは、第2世代グラブス触媒を用いたROMPに適しており、線状ポリマーを得た。
【0192】
4.3 重合
図3は、本開示によるヒドロアミノアルキル化シクロアルケンモノマーの重合のための一般的スキームを描写する。アミン官能基化シクロアルケンモノマーM1、M2、M3、およびM4の重合は、第2世代グラブス触媒
TMを用いる開環メタセシス重合(ROMP)を用いて完了した。一般に、触媒のCH
2Cl
2溶液を攪拌しながらモノマーのCH
2Cl
2溶液に加えた。反応を室温でグラムスケールの量で行い、モノマーの高い変換にアクセスした。反応を最少1 hr進行させ、完全な変換を確保した。反応が完了すると、溶液は、最初は暗琥珀色溶液からゆっくりと薄琥珀-黄/緑になる。反応物を周囲雰囲気に曝すことおよび過剰のエチルビニルエーテル([Ru]触媒1 mgあたり最少2滴)の滴下によってクエンチし、そして最少30分間攪拌し、その後溶液は暗琥珀/黒にゆっくりと色が変化する。ポリマーは、メタノールの攪拌ボルテックスへの滴下(-35℃、およびポリマー1 mgあたり最少1 mL)によってゴム様灰白色固体として沈殿し、これは、白色の綿状固体として沈殿した非官能基化ポリ(シクロオクテン)とは外見が著しく異なった。単離は、上澄みをデカンテーションし、そして集めた物質を高真空下で一晩乾燥することによって完了した。その後、GPC分析を除いて全ての特性化を完了し、GPC分析のために、さらなる精製を、2回の追加の沈殿(ポリマーのCH
2Cl
2溶液の大過剰のメタノールへの添加を用いて)、続く真空オーブン中での乾燥によって完了した。
【0193】
ポリ(N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)アニリン)(ポリマー「P1」)。上記のように調製し、0.602 gの灰白色のゴム様(gun-like)固体(81%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図11a): δ 7.17 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.73 (br s, 3H, 3 x ArH), δ 5.40 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.03 (d, 2H, CH
2), δ 2.00 (m, 4H, CH
2), δ 1.68 (br s, 1H, CH), δ 1.49-1.26 (m, 6H, CH
2) IR(ニートオイル, cm
-1,int,
図11b): 3425br, 2924s, 2847sh, 1602 s, 1505s, 1430sh, 1320m, 1258m, 1180w, 1023w, 964m, 862w, 743s, 691s。
【0194】
ポリ(N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-フルオロアニリン)(ポリマー「P2」)。上記のように調製し、0.690 gのゴム状の灰白色固体(88%). %)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図12a): δ 6.87 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.55 (br s, 2H, 2 x ArH), δ 5.39 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 2.97 (d, 2H, CH
2), δ 2.00 (m, 4H, CH
2), δ 1.63 (br s, 1H, CH), δ 1.36 (br s, 6H, CH
2)
19F{1H} NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -127.7 IR (neat オイル, cm
-1, int,
図12b): 3419br, 2919m, 2850sh, 1614w, 1510s, 1473sh, 1316w, 1214s, 1101w, 816s
【0195】
ポリ(N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-ブロモアニリン)(ポリマー「P3」)。上記のように調製し、0.592 gのゴム状の灰白色固体(94%)を得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl
3,
図13a): δ 7.27 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.52 (br s, 2H, 2 x ArH), δ 5.42 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.00 (d, 2H, CH
2), δ 2.01 (br s, 4H, CH
2), δ 1.66 (br s, 1H, CH
2), δ 1.38 (br s, 6H, CH
2) IR (ニートオイル, cm
-1, int,
図13b): 3422br, 2922s, 2854sh, 1593s, 1497s, 1313m, 1249m, 1175m, 1073m, 964m, 808s。
【0196】
ポリ(N-(シクロオクト-4-エン-1-イルメチル)-4-メトキシアニリン(ポリマー「P4」)。上記のように調製し、0.541 gのゴム状の灰白色固体(88%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3,
図14a): δ 6.78 (d, 2H, 2 × ArH), δ 6.59 (br s, 2H, 2 x ArH), δ 5.39 (m, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.74 (s, 3H, OCH
3), δ 2.98 (d, 2H, CH
2), δ 2.01 (br s, 4H, CH
2), δ 1.63 (br s, 1H, CH
2), δ 1.37 (br s, 6H, CH
2) IR (ニートオイル, cm
-1, int,
図14b): 3394br, 2923s, 2848sh, 1655br, 1510s, 1464sh, 1233s, 1017s, 816s, 668m。
【0197】
ポリ(N-(オクト-4-エン-1-イルメチル)-4-(メチルチオ)アニリン(ポリマー「P5」)。上記のように調製し、暗紫色固体(70%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.22 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.54 (m, 2H, 2 × ArH), δ 5.40 (br s, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 3.69 (br s, 1H, NH), δ 2.99 (m, 2H, CH2), δ 2.42 (m, 3H, CH3), δ 1.99 (m, 4H), δ 1.77-1.19 (m, 7H) IR(ニートオイル, cm-1, int): 3414br, 2917s, 2852m, 1597vs, 1500vs, 1474m, 1455m, 1435w, 1401w, 1312m, 1289m, 1250m, 1181m, 1101w, 966s, 812s, 735w。
【0198】
ポリ(N-(オクト-4-エン-1-イルメチル)-シクロヘキサンアミン(ポリマー「P6」)。上記のように調製し、暗橙色固体(42%)を得た。1H NMR (300 MHz, C7D8): δ 5.53 (br s, 2H, 2 x RHC=CHR), δ 2.55 (br s, 2H, CH2), δ 2.37 (m, 1H, CH), δ 2.11 (br s, 4H, CH2), δ 1.86-1.07 (m, 17H, CH, CH2), δ 0.52 (br s, 1H, NH) IR(ニートオイル, cm-1,int): 2921vs, 2851s, 1670w, 1449s, 1365w, 1347w, 1259w, 1241w, 1130m, 966vs, 922w, 888m, 845m, 845w, 786w, 723s。
【0199】
ポリマーP1~P6を、ペンダント2級アミン置換基に関係なく高収率(>80%)で得た。1H NMRスペクトルにおける化学シフトの分析は、ポリマー形成に一致するブロードになったシグナルを示した。例えば、ポリマーP2について、1つの主要なピーク;δ -127.7 ppmのブロードシングレットが19F NMRスペクトルにおいて観察され、一方、ポリマーP4について、メトキシ置換基は診断NMRシグナルを提供し、これは1H NMRスペクトルにおけるブロードシングレット(δ 3.74 ppm)として観察され;さらに、このピークは、δ 5.41 ppmのオレフィン共鳴と比較した場合、3:2の比で合体した。M1の場合、ヒドロアミノアルキル化からの粗反応混合物は、カラムクロマトグラフィーによる精製なしでROMPに適していることが見い出されたが、しかし、得られた物質は、P2およびP4と同様に、NMRおよびIR分光法によってのみ特性化され得た。
【0200】
表2は、合成した例示的ポリマーの要約を提供する。
【0201】
【0202】
【0203】
4.4 水素化
ポリマーP1のポリマー骨格の水素化還元は、ポリエチレンに類似する飽和ポリマーを得るために標的化した。還元は、ポリマーP1のC=C二重結合を選択的に還元した水素源としてトシルヒドラジンを用いて実現し得た。ペンダント2級アミンのせいで、ポリマーの塩基性後処理が必要であった。
【0204】
ポリ(N-(シクロオクト-4-アン-1-イルメチル)アニリン)(ポリマー「P1H」)。キシレン(15 mL)中のP1(480 mg, 2 mmolアルケン)およびp-トルエンスルホニルヒドラジド(1.5 g, 8 mmol)を、ラジカルスポンジとして添加した数mgの2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールとともに、テフロンの蓋付きバルブ(capped-valve)およびサイドアームならびにテフロンコーティングした攪拌棒を備えた100 mL反応容器に加えた。得られた不均一混合物をN
2で充填し、3回凍結脱気し、次いでN
2で充填しなおした。容器を密封し、そして油浴中、130℃で最少8時間加熱した。反応期間後、薄黄色の透明溶液を得た。容器を開け、そして混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチル(50 mL)を用いて定量的に移した。有機層を3 M NaOHで3回、次いでブラインで1回洗浄し、次いで減圧下、ロータリーエバポレーションによって~3 mLまで減らした。この残渣を、次いで大過剰のボルテックスしたメタノール(-35℃、250 mL)に滴下し、生成物を灰白色のゴム状固体として得た。3回の過度の沈殿後、0.350 gの物質を得た(73.0%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3,
図15a): δ 7.17 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.69 (t, 1H, ArH), δ 6.63 (d, 2H, ArH), δ 3.01 (d, 2H, CH
2), δ 1.61 (br s, 1H, CH), δ 1.28 (m, 14H, CH
2) IR (ニートオイル, cm
-1, int,
図15b): 3420br, 3045w, 2922s, 2849sh, 1601s, 1504s, 1466sh, 1316m, 1261m, 1095br, 1030br, 804s, 746s, 689s。
【0205】
表3は、合成した例示的な水素化ポリマーの要約を提供する。
【0206】
【0207】
【0208】
2級アリールアミンおよびその置換基は変化させて、種々の物性、例えば、液体、ゲル様、軟質、または固体構造を示すポリマーを生じ得る水素結合相互作用を調整し得る。
【0209】
実施例2:NMR重合研究。M1の重合をNMR分光法によってモニターした。密封したNMRチューブにグラブス開始剤、100当量のM1および約1 mLの重クロロホルムを加えた。10分後、約35%のモノマーが消費され;30分後、反応は95%の完了を超えた。グラブス開始剤と不適合である他のアミン官能基化モノマーと対照的に、M1の迅速な変換は、アリール置換2級アミンがROMPに適していることを示す。特に、重合の期間中ずっと、19.2 ppmのベンジリデンRu=CHPhプロトンに帰属されるシグナルはスペクトル(
図X)中に存在したままであり、ここで、この観察は、触媒の不完全な開始および触媒開始の速度よりも大きい伝播速度を示唆し得る。
【0210】
反応が完了すると連鎖停止が起こるかどうかを調べるため、約25当量のM2のアリコートをモノマーM1が完全に消費されてからかなり後(12時間)に加えた。M2を添加すると、迅速な重合が起こり、そして30分後にはM2の内部アルケンに一致するシグナルは観察されなかったが、一方、P1およびP2の重複するアルケンピークは、重合が自己停止ではないこと、およびクエンチ試薬の添加が反応を完了させるために必要であることを示唆する。さらに、19F NMRスペクトルは、開環したM2ポリマー物質と一致する単一のブロードシングレットを示し、1H NMRスペクトルにおいて存在する証拠を裏付けた。
【0211】
4.4 分子量および分散度。
テトラヒドロフラン(THF)中への溶解性を有したポリマーを、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた分析に供し、ポリマー分子量および分散度を調べた(表2)。実験的分子量は、モノマー対開始剤比(Mn,theo = [M]/[I])によって予測されるものと厳密には相関しなかったが、1.1~1.6の分散度(D)の値は、重合が適度な制御でのみ進行したことを示唆した。以前に議論したように、反応のモニタリングは、伝播速度が開始に対して速く、予想されたよりも大きい分子量および増加したポリマー分散度を生じたことを示唆した。特に、全ての単離したポリマーがGPC分析のためにTHF中への溶解性を有したとは限らず;例えば、その水素結合メトキシ置換基を有するP4は、NMR分光法によってクロロホルム中で特徴付けられ得たが、THFまたはクロロホルム中に完全に溶解しなかった。この観察は、広範囲の水素結合ネットワークの形成が、増加した分子間力および分子内力によって、ポリマーのより低い溶解性を生じ得ることを示し得る。P2はまた、この溶解性の欠如が、おそらくフッ素置換基の強力なH-結合受容潜在力によることを示した。
【0212】
【0213】
4.5 熱安定性。
ポリマーの熱安定性(重量損失)を、動力学的TGA実験を採用することによって決定した。各サンプルを105℃で5分間予備加熱し、次いで窒素および酸素下、10℃/分の加熱速度で30℃~600℃で加熱した。
【0214】
3回の独立した測定の平均をとった。窒素または酸素雰囲気下で試験したサンプルについてTGA曲線に差異はなく、これは良好な熱酸化安定性を示した。
図4aおよび4bは、選択した重量損失曲線を示し、そして表4は試験したポリマーについて5%重量損失温度を要約する。結果は、P(シクロオクテン)が、ポリマー鎖の分解に帰属された415℃でただ1つの重量損失工程を有する熱的に安定なポリマーであることを実証する。官能基化P1は、2工程の重量損失を示す。約300℃での最初の重量損失は、N-メチルアニリン側基の損失に帰属された。約420℃での第2の熱分解は、ポリマー主鎖の分解に言及する。一般に、ポリマーは、熱分解の温度での結合解離によって開始されるフリーラジカル分解機構に従う。ポリマー構造および結合強度を観察することにより、ポリ(ペンダントアミン)(PPA)ポリマーについての可能性の高い最初の分解機構は、側基脱離によるものであり得る。
【0215】
微分TGA、すなわちDTG曲線は、重複する質量損失事象の決定、微小の質量損失工程の同定、および最大重量損失プロセスの発見に有用であり、ここでTG曲線における全てのピークは、質量損失の最大速度を示し得る分離した事象であり得る。
図5を参照して、示差走査熱量分析(DSC)から得られたサーモグラムは、アモルファスポリマーに典型的な挙動を示す。ガラス転移温度は、ガラス状領域からゴム状領域への鎖変換に起因し、そしてそれらの値を各ポリマーについて表4に要約する。
【0216】
【0217】
4.6 レオロジー
変化した角振動数の関数としてのポリ(シクロオクテン)の種々のアミン誘導体の変化した保存率および損失率および複素粘度の代表的なマスター曲線を
図6a~6eに描写する。多くの明確に異なるレオロジー挙動を得、これらは異なるアリールアミンによって促進される種々の水素結合環境に起因し得る。P1、P1H予備水素化、P1H、およびP3について得られた情報を以下の表5A~5Dに報告する。
【0218】
P1は、液体様の挙動(G”>G’)を示し、一方、P3、およびP4は、ゲル様の挙動を通って液体様から固体様の挙動への転移を示した。P2は、軟質固体様の挙動(G’>G”)を示し、一方、これは、水素結合相互作用にも携わり得る極性F官能基を導入することによってより明白になった。さらに、強力なF-H結合の存在は、基準物質よりも高い溶融温度を有する粘弾性固体として挙動する物質を生じる3Dネットワークの形成の原因であり得る。P1およびP2について保存率を比較して、液体様から固体様の挙動への転移は明白である。P2の強力な物理的架橋は、溶液流延法を用いたフィルムの作製/形成の間に観察された。これは、水素結合のより容易な形成を可能にする溶液中でのポリマー鎖の整列によって説明され得る。P3およびP4は、P3よりも高かった明確なゼロせん断粘度を示した。臭素官能基化ポリ(シクロオクテン)は、おそらくはより高い分子量のせいでより強力な水素結合構造を形成し得る。
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
4.7 自己修復特性
図17を参照して、本明細書中に開示したポリマーは、自己修復特性を示す。これらのポリマーの自己修復特性は、それらのアモルファス物質としての鎖運動性を有する能力に関連していると思われる。
【0228】
4.8 コポリマー
4.8.1 シクロオクテンとのコポリマー
これらの新規ポリマーの有利な特性がポリマーへのアミンのより低い取り込みで維持され得る程度を調査するために、最終ポリマーにおけるアミンの取り込みを、過剰な当量のシクロオクテンをROMP反応に加えることによって低減した。最終的な目標は、アミン官能基によって与えられる所望の特性を維持し、それと同時により安価でより官能基化されていないポリオレフィンにおけるその取り込みを低下させることである。
【0229】
減少したアミン取り込みを有するポリマーの合成は、以下のスキームに従って行った。
【0230】
【0231】
P(P1-コ-シクロオクテン) 1:1モルのコポリマーについての一般的調製を、以下の通り調製した:攪拌棒を有する20 mLのシンチレーションバイアルに、第1のモノマー、例えばシクロオクテン(51 mg, 0.4 mmol)およびG2 (3.7 mg, 0.004 mmol)のTHF(1 mL)溶液を加えた。第1のモノマーを室温で必要とする時間(例えば、シクロオクテンについて4時間)反応後、第2のモノマー、例えばM1(100 mg, 0.4 mmol。シクロオクテンと1:1モル比)。第2のモノマーを反応させるのに必要な時間後、反応物全体をクエンチし、そしてポリマーをエチルビニルエーテルの添加およびメタノール中への沈殿を有する標準的技法を用いて単離した。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.19 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.71 (br s, 3H, 3 x ArH), δ 5.40 (m, 4H, RHC=CHR), δ 3.03 (d, 2H, CH2), δ 2.00 (m, 8H, CH2), δ 1.68 (br s, 1H, CH), δ 1.49-1.26 (m, 14H, CH2)。合成の結果を以下の表6にさらに報告する。
【0232】
【0233】
Mn, calcは、P1のクエンチしたアリコートの分子量を用い、次いで1H NMRスペクトルにおける積分を用いることによってP2のMWを関連付けて決定した。
【0234】
4.8.2 アリールアミン置換ノルボルネンモノマー単位を有するコポリマー
本明細書中で開示しそして調製したポリマーとは対照的に、アリールアミン置換ノルボルネンモノマーから形成したポリマーは自己修復挙動を示さない。この挙動を調整し得、そして可変の物理特性を有する物質の調製を可能にするかどうかを調査するためにこれらのモノマーを組み合わせることは興味深かった。上記で開示したアミン官能基化シクロアルケンモノマーおよびいくつかのアリールアミン置換ノルボルネンモノマーのコポリマーは以下を含む:
【0235】
【0236】
モノマーACN-1およびACN-4は、Perryら(Macromolecules, 49: 4423 to 4430)によって開示された通り調製することができる。
【0237】
モノマーの同時添加をコポリマーの試みた形成において採用した
【0238】
【0239】
種々のパラR/R’置換基を有するモノマーの一連の異なる組み合わせをROMP(50当量の各モノマー)によって重合した。コポリマーを、異なるモノマーの種々の化学量論量を用いてホモポリマーと同様に調製し、ポリマー生成物における理論比を得た。典型的な手順は以下の通りである:
【0240】
【0241】
20 mLのシンチレーションバイアルに、ACN-1(50 mg, 0.25 mmol)およびポリマーP2(58 mg, 0.25 mmol)を約1 mLのCH2Cl2とともに加えた。この溶液に、第2世代グラブス触媒TM(「G2」;4.2 mg, 0.005 mmol)の約1 mL CH2Cl2溶液を加えた。反応物を室温で20 h攪拌し、その間、溶液は最初の琥珀色からゆっくりと緑褐色になる。ポリマーをエチルビニルエーテルの添加およびメタノール中への沈殿を有する標準的技法を用いて単離した;収量は定量的であり、沈殿物からの収集による損失をともなう。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.16 (s, 2H, 2 × ArH), δ 6.87 (m, 2H, 2 × ArH), δ 6.75 (m, 3H, 3 ArH), δ 6.55 (br s, 2H, 2 x ArH), δ 5.39-5.27 (m, 4H, 2 x RHC=CHR), δ3.05-2.97 (d, 4H, CH2), δ 2.90 (s, 1H, CH), δ2.53 (s, 1H, CH), δ 2.00-1.95 (m, 6H, CH2), δ 1.65-1.63 (br s, 3H), δ 1.36 (br s, 6H, CH2), δ 1.19 (s, 1H, CH)。
【0242】
クエンチした反応溶液の沈殿による単離は、それぞれのホモポリマーに対して中間の物理特性を有する物質を与えた。アリールアミン置換ノルボルネンモノマーから製造されたホモポリマーが硬い糸であり、そして本明細書中で開示したホモポリマーが粘着性のある固いゴムである場合、コポリマーは凝集し、そして後者のように粘着性であるが、しかし、より顕著な剛性を有する。1H NMR分光法によって、得られたポリマーは所定のCANのより高い取り込み(52-74%)を有したことが見い出された。ACN-1(R = H)およびACC-2(R’ = F)を、両方のモノマーが均等に組み込まれた(52:48 ACN:ACC)ので、モデル系として選択した。2つのホモポリマーよりもむしろコポリマーが形成されたことを確保するために、GPC分析をこのサンプルに対して行った;1つのピークが、理論値(Mn, exp = 18,130 g・mol-1, D = 1.61, Mn, theo. = 21,630 g・mol-1)との合理的な一致とともに観察された。
【0243】
熱的特性をモノマーの相対的取り込みに基づいて調整し得るかどうかを調査するために、3つの異なる比のポリマーP(ACN-1-co-P2)モデル系を調製した。
1H NMR分光学によって決定した実験的比を表7に示す。DSCによって決定したガラス転移温度を表7および
図18に示す。
図18に示すように、ガラス転移は、両方のモノマーの供給比を調節することによって調整され得た。各サンプルにおける単一のガラス転移の観察はまた、両方のブロックが混和性を有するコポリマー合成を示す。
【0244】
【0245】
これらの変化した比の粘弾性に対する効果を試験した。
図19を参照して、溶融レオロジーをACN-1およびM2部分の等しい組み込みを有するモデルコポリマーに対して行った。P(ACN-1-co-P2)コポリマーは、2つの純粋なホモポリマーに対して中間のレオロジー特性を実証する。ポリマーP2は、損失率が周波数範囲全体にわたって優勢であることを示し、液体様の挙動を示唆する。保存率は、軟質-固体物質としてP(ACN-1)において優勢である。コポリマーにおいて、保存率および損失率は、低周波数でおおよそ等しく;より高周波数では、保存率が優勢であり、末端区域で交差点を有する。この観察されたレオロジー挙動はまた、混和性領域を有するコポリマーを示唆する。
【0246】
定量的修復試験を行い、ガラス転移温度(Tg)を変化させる効果を調査した。室温以下でガラス転移を有した全てのサンプルは、自己修復を実証すると仮定した。3つのコポリマーのうち、3:1のM2:ACN-1比を有するサンプル(Tg = 8.6℃)のみが24時間以内に修復を実証した。1:1のM2:ACN-1比を有するサンプル(Tg = 17.3℃)は、周囲条件で修復を実証しなかった。これらの結果は、熱挙動の調整が物質の要求に依存して修復時間の調整を可能にし得ることを示唆する。
【0247】
本発明の特定の実施態様が記載されそして説明されているが、このような実施態様は、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるので、本発明を説明するのみであり、本発明を限定するのもではないと考えられるべきである。多くの適合および改変は、当業者の一般的な常識に従って本発明の範囲内でなされ得る。このような改変は、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の局面を公知の等価物で置換することを含む。