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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エラストマー発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20240306BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08J9/32 CET
C09K3/00 111B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021059672
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156134
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 真也
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-017140(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119048(WO,A1)
【文献】特開2006-117793(JP,A)
【文献】特開2004-323603(JP,A)
【文献】特開2014-070198(JP,A)
【文献】特開2005-023314(JP,A)
【文献】特開2020-100725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/32
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマーをベースポリマーとして、前記ベースポリマー100質量部に対する質量比で、40℃における動粘度が30~150mm/sの鉱物油系軟化剤175~200質量部と、発泡剤23.8~29.2質量部と、有機過酸化物からなる架橋剤2.9~4.9質量部と、が配合されており、
前記発泡剤は、ポリアクリロニトリルを主成分とするシェル剤で、膨張剤である低沸点炭化水素をマイクロカプセル化してなる熱膨張性マイクロカプセルが、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂によってペレット化されてなる組成物であり、前記熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対する質量比で、前記エチレン酢酸ビニル共重合樹脂50~150質量部が配合されており、
反発弾性率が70%以上である
エラストマー発泡体。
【請求項2】
請求項1に記載のエラストマー発泡体であって、
ASKER C硬度が30~36である、
エラストマー発泡体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のエラストマー発泡体であって、
比重が0.25~0.35である、
エラストマー発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エラストマー発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系熱可塑性エラストマーをベースポリマーとする発泡成形品が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5685343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡体の用途によっては、高い反発弾性を求められることがある。しかし、既存の発泡体は、高反発弾性と言われる発泡体であっても、その反発弾性率は概ね60%台に留まっている。そのため、更に高い反発弾性率を備える発泡体を入手することは容易ではない。
【0005】
このような背景の下、本件発明者は、高い反発弾性率を得るために種々検討を重ね、特定の成分を特定の配合比で配合することにより、従来品を超えるような反発弾性を示す発泡体が得られることを見いだした。
【0006】
本開示の一局面においては、従来よりも反発弾性率の高いエラストマー発泡体を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面におけるエラストマー発泡体は、スチレン系熱可塑性エラストマーをベースポリマーとして、ベースポリマー100質量部に対する質量比で、40℃における動粘度が30~150mm/sの鉱物油系軟化剤175~200質量部と、発泡剤23.8~29.2質量部と、有機過酸化物からなる架橋剤2.9~4.9質量部と、が配合されている。発泡剤は、ポリアクリロニトリルを主成分とするシェル剤で、膨張剤である低沸点炭化水素をマイクロカプセル化してなる熱膨張性マイクロカプセルが、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂によってペレット化されてなる組成物であり、熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対する質量比で、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂50~150質量部が配合されている。
【0008】
このように構成されたエラストマー発泡体によれば、上述のような各成分が上述のような配合比で配合されているため、従来品よりも高い反発弾性を示す発泡体となる。このような効果は、後述する実施形態の中で、さらに具体的に明らかになる。なお、本開示でいう低沸点炭化水素とは、沸点が100℃以下の炭化水素である。
【0009】
本開示のエラストマー発泡体は、更に以下に挙げるような特徴を備えるものであってもよい。
(A)ASKER C硬度が30~36であってもよい。
【0010】
(B)反発弾性率が70%以上であってもよい。
(C)比重が0.25~0.35であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[エラストマー発泡体の構成]
次に、上述のエラストマー発泡体の構成に関し、具体的な例を交えて更に詳細に説明する。
【0012】
上述のエラストマー発泡体において、スチレン系熱可塑性エラストマーは、高い反発弾性を得るための成分である。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、重量平均分子量が15万~30万のスチレン系熱可塑性エラストマーが用いられる。重量平均分子量が15万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、軟化剤の保持能力を十分に高めることができ、低硬度でオイルブリードが抑制されたエラストマー組成物を得ることができる。また、重量平均分子量が30万以下のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、成形品表面の平滑性を良好にすることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーは、いずれか一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0013】
鉱物油系軟化剤は、エラストマー発泡体の硬度を調整するための成分である。鉱物油系軟化剤としては、40℃における動粘度が30mm/s~150mm/sの軟化剤が使用される。動粘度が30mm/s以上の軟化剤を用いることにより、高温環境下において軟化剤が揮発するのを抑制することができる。なお、本開示でいう高温環境とは、雰囲気温度が100℃の環境を想定している。また、動粘度が150mm/s以下の軟化剤を用いることにより、成形品の離型性や成形品表面の平滑性を良好にすることができる。鉱物油系軟化剤の具体例としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、及びアスファルト系オイル等を挙げることができる。これらの中でもパラフィン系オイルは、スチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が良好な点で好ましい。
【0014】
鉱物油系軟化剤の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対する質量比で、175~200質量部とされる。鉱物油系軟化剤の配合量を175質量部以上とすることにより、低硬度なエラストマー発泡体を得ることができる。鉱物油系軟化剤の配合量を200質量部以下とすることにより、オイルブリードの発生や成形品表面にタック性が生じるのを抑制することができる。
【0015】
発泡剤は、主にエラストマー発泡体の低比重化と、高反発弾性の維持を図るための成分である。発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルがエチレン酢酸ビニル共重合樹脂によってペレット化されてなる熱膨張性組成物である。熱膨張性マイクロカプセルは、ポリアクリロニトリルを主成分とするシェル剤で、膨張剤である低沸点炭化水素をマイクロカプセル化したものである。発泡剤中には、熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対する質量比で、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂50~150質量部が配合されている。
【0016】
発泡剤の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対する質量比で、23.8~29.2質量部とされる。発泡剤の配合量を23.8質量部以上とすることにより、発泡体内に十分な気泡を形成することができる。発泡剤の配合量を29.2質量部以下とすることにより、発泡体内に過剰な気泡が形成されるのを抑制することができる。
【0017】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、熱膨張性マイクロカプセルをペレット化する際にバインダーとして機能する成分である。これに加えて、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、エラストマー発泡体の反発弾性を高める上で、重要な役割を果たしている可能性がある。この点は、後述する実験例によって明らかになる。
【0018】
架橋剤は、エラストマー発泡体に圧縮永久歪が生じるのを抑制するための成分である。架橋剤は、有機過酸化物を含み、所定の温度以上に加熱されるとラジカルを発生して、スチレン系熱可塑性エラストマー同士を部分的に架橋させる。架橋剤としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド又は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が好ましい。
【0019】
架橋剤の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対する質量比で、2.9~4.9質量部とされる。この有機過酸化物の配合量を2.9質量部以上とすることにより、十分な架橋がなされて、最終的に得られるエラストマー発泡体の物理的強度を適正に確保することができる。また、有機過酸化物の配合量を4.9質量部以下とすることにより、過剰な架橋がなされるのを抑制し、最終的に得られるエラストマー発泡体が硬くなりすぎるのを抑制することができる。
【0020】
以上が、本開示のエラストマー発泡体を構成する上で必要となる必須成分であるが、エラストマー発泡体の機能を損ねない範囲内であれば、エラストマー発泡体の構成成分には、上記必須成分以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分の例としては、例えば、100質量部のスチレン系熱可塑性エラストマーに対する質量比で、1.4~2.4質量部の酸化防止剤が配合されていてもよい。酸化防止剤を配合することにより、エラストマー発泡体の酸化による劣化を抑制することができる。この他、例えば、カーボン、界面活性剤、架橋助剤、滑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、耐油性向上剤などが配合されてもよい。
【0021】
以上のように構成されるエラストマー発泡体によれば、ASKER C硬度が30~36という低硬度のエラストマー発泡体となる。また、以上のように構成されるエラストマー発泡体によれば、その反発弾性率が70%以上となるような、極めて高い反発弾性を有するエラストマー発泡体となる。さらに、以上のように構成されるエラストマー発泡体によれば、比重が0.25~0.35という、極めて低比重のエラストマー発泡体となる。
【0022】
したがって、このようなエラストマー発泡体であれば、低硬度、低比重で、高い反発弾性率が求められるような用途において、好適に利用することができる。例えば、各種競技用シューズのクッション材や、アミューズメント機器において利用される各種振動部品(例えば、振動するように構成された遊技機のレバー等。)、ボール等のスポーツ用品、椅子や寝具等のクッション材、各種玩具や日用品等において利用できる。
【0023】
[エラストマー発泡体の製造例]
下記表1に示す各成分を含有するエラストマー発泡体を製造した。表1に示す各成分に対応する数値は、それぞれが各成分の配合量(単位は質量部。)を表している。表1に示す通り、ベースポリマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、商品名:セプトン4044、株式会社クラレ製)を使用した。軟化剤としては、パラフィン系オイル(商品名:ダイアナプロセスオイルPW-32、出光興産株式会社製)を使用した。
【0024】
発泡剤としては、発泡剤A,B,Cの3種を使用した。発泡剤Aは、熱膨張性マイクロカプセルをエチレン酢酸ビニル共重合樹脂によってペレット化した熱膨張性組成物(商品名:マツモトマイクロスフェアー、品番:MBFN-190EVA50、松本油脂製薬株式会社製)である。発泡剤Aは、カプセル含有量が50質量%、バインダー(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)含有量が50質量%、カプセルの平均粒径が30~40μm、発泡開始温度が160~170℃、最大膨張温度が210~220℃である。
【0025】
発泡剤Bは、熱膨張性マイクロカプセルをポリエチレン樹脂によってペレット化した熱膨張性組成物(商品名:マツモトマイクロスフェアー、品番:MBFN-100MPE、松本油脂製薬株式会社製)である。発泡剤Bは、カプセル含有量が50質量%、バインダー(ポリエチレン樹脂)含有量が50質量%、カプセルの平均粒径が20~30μm、発泡開始温度が125~135℃、最大膨張温度が165~180℃である。
【0026】
発泡剤Cは、熱膨張性マイクロカプセルをポリエチレン樹脂によってペレット化した熱膨張性組成物(商品名:マツモトマイクロスフェアー、品番:MBFN-190SSPE、松本油脂製薬株式会社製)である。発泡剤Cは、カプセル含有量が50質量%、バインダー(ポリエチレン樹脂)含有量が50質量%、カプセルの平均粒径が28~38μm、発泡開始温度が122~132℃、最大膨張温度が192~207℃である。
【0027】
架橋剤としては、ジアルキルパーオキサイド(商品名:ルペロックス、品番:Di-Cup 40C、アルケマ株式会社製)を使用した。架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート(商品名:タイク、品番:WH-60、日本化成株式会社製)を使用した。これらの他、添加剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:SONGNOX、品番:1010、SONGWON社製)、ステアリ酸ソルビタン(商品名:レオドール、SP-S10V、花王株式会社)、カーボン(品番:#900、三菱化学株式会社製)を使用した。
【0028】
エラストマー発泡体を製造するに当たって、表1に示す材料を2つの材料群に分けた。具体的には、ベースポリマー、軟化剤及び添加剤(カーボン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びステアリ酸ソルビタン)を第1の材料群とし、架橋剤、架橋助剤及び発泡剤を第2の材料群とした。各材料群の成分を秤量し、まず、第1の材料群をラボプラストミル(型番:150C、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、温度150℃、回転数20rpm、時間3分の混練条件で混練した。その後、温度を150℃から100℃まで低下させ、更に第2の材料群をラボプラストミルに投入し、温度100℃、回転数20rpm、時間3分の混練条件で混練した。
【0029】
次に、混練を終えた材料を金型に投入して加熱し、発泡剤を発泡させた。金型に投入する材料の量は、金型容積に対し、狙いたい発泡倍率の仕込量を計量する。例えば、金型容積が約21.6mm、未発泡の材料比重が0.88、発泡倍率が2.7倍の場合、材料仕込量は21.6×0.88÷2.7=約7gとなる。金型へ材料を投入する際には、材料と上下板がくっつかないように離型フィルムを使用した。
【0030】
加熱プレス工程では、材料温度がマイクロカプセルの最大膨張温度になるような温度で加熱する。発泡成形では圧力はなるべく低い方がマイクロカプセルの膨張が安定する。例えば、最大膨張温度210~220℃の場合は、加熱温度225℃、加熱時間3分、圧力0.4MPa程度が好適である。加熱プレス工程の後は、冷却プレス工程へ移行する。冷却プレス工程では、圧力20MPa、60℃以下で3分以上冷却する。
【0031】
上述の手順で製造した試料1~試料10に対し、1:成形品の硬度(ASKER C)、2:比重、3:反発弾性率、及び4:シートの成形性、以上4項目を評価し、これら4項目の評価結果に基づいて総合判定を行った。成形品の硬度は、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)を用いて測定した。測定の際には、厚さ12mmの試験片を使用して、測定開始から30秒後の測定値を読み取った。比重は、電子天秤(品番:AG204、METTLER TOLEDO社製)を用いて測定した。
【0032】
反発弾性率は、以下の手順で算出した。縦60mm×横60mm×厚さ6mmの試験片を、試験片の厚さ方向が水平面に対して垂直になるような向きで水平面上に設置する。その試験片の上面から上方へ300mm離れた位置から、遊技球(パチンコ玉)を落下させて、その跳ね返り高さを測定し、反発弾性率(%)=跳ね返り高さ(mm)÷300(mm)×100を算出した。跳ね返り高さの測定は3回実施して、その平均値から反発弾性率を算出した。
【0033】
具体的な評価基準として、成形品の硬度(ASKER C)については、33±3以内であれば高評価(記号は「○」)、36を超えるか30未満であれば低評価(記号は「×」)とした。比重については、0.35以下であれば高評価(記号は「○」)、0.35を超える場合は低評価(記号は「×」)とした。反発弾性率については、75%以上であれば最高評価(記号は「◎」)、75未満70以上であれば高評価(記号は「○」)、70未満の場合は低評価(記号は「×」)とした。
【0034】
シートの成形性については、成形品にショートショット、凹凸及び歪がない場合は高評価(記号は「○」)、成形品にショートショット、凹凸及び歪のうちのいずれか1つ以上がある場合は低評価(記号は「×」)とした。総合判定については、反発弾性率が「◎」かつ残りの評価項目が「○」の場合に最高評価(記号は「◎」)、全評価項目が「○」の場合に高評価(記号は「○」)、少なくとも1つの評価項目が「×」の場合に低評価(記号は「×」)とした。評価の結果は表1に併記する。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示す試料1~試料10のうち、試料1は代表的な実施例に該当するエラストマー組成物である。試料1は、硬度が32で「○」、比重が0.32で「○」、反発弾性率が77%で「◎」となり、総合判定は「◎」となった。試料2は、発泡剤を試料1よりも増量した実施例である。試料2は、硬度が33で「○」、比重が0.32で「○」、反発弾性率が72%で「○」となり、総合判定は「○」となった。
【0037】
試料3は、発泡剤を試料2よりも増量した比較例である。試料3は、硬度が33で「○」、比重が0.31で「○」となったが、反発弾性率が69%で「×」となり、総合判定は「×」となった。試料4は、発泡剤を試料1よりも減量した実施例である。試料4は、硬度が32で「○」、比重が0.34で「○」、反発弾性率が72%で「○」となり、総合判定は「○」となった。試料5は、発泡剤を試料4よりも減量した比較例である。試料5は、成形時にショートショットが発生し、シートの成形性で「×」となったため、他の評価は行わず、総合判定は「×」となった。
【0038】
試料6は、ベースポリマーを試料1よりも増量した実施例である。表1では、ベースポリマーを100質量部と見なした場合の換算値で各成分の配合量を示してあるが、実際はベースポリマーを105質量部に増量し、他の成分は試料1と同一の配合量とした場合の例に相当する。試料6は、硬度が35で「○」、比重が0.32で「○」、反発弾性率が72%で「○」となり、総合判定は「○」となった。
【0039】
試料7は、ベースポリマーを試料6よりも増量した比較例である。表1では、ベースポリマーを100質量部と見なした場合の換算値で各成分の配合量を示してあるが、実際はベースポリマーを108質量部に増量し、他の成分は試料1と同一の配合量とした場合の例に相当する。試料7は、比重が0.32で「○」となったが、硬度が38で「×」となり、反発弾性率が67%で「×」となり、総合判定は「×」となった。
【0040】
試料8は、ベースポリマーを試料1よりも減量した実施例である。表1では、ベースポリマーを100質量部と見なした場合の換算値で各成分の配合量を示してあるが、実際はベースポリマーを94質量部に減量し、他の成分は試料1と同一の配合量とした場合の例に相当する。試料8は、硬度が31で「○」、比重が0.32で「○」、反発弾性率が72%で「○」となり、総合判定は「○」となった。
【0041】
試料9は、試料1とは異なる発泡剤(試料1は発泡剤A,試料9は発泡剤B)を使用した比較例である。試料9は、成形時にショートショットが発生し、シートの成形性で「×」となったため、他の評価は行わず、総合判定は「×」となった。試料10は、試料1とは異なる発泡剤(試料1は発泡剤A,試料10は発泡剤C)を使用した比較例である。試料10は、硬度が33で「○」となったが、比重が0.4で「×」となり、反発弾性率が62%で「×」となり、総合判定は「×」となった。
【0042】
試料1,9,10を対比すると、発泡剤の違いに起因して、反発弾性率に違いが生じることがわかる。試料1の発泡剤Aには、バインダーとしてエチレン酢酸ビニル共重合樹脂が含まれる一方、試料9,10の発泡剤B,Cには、バインダーとしてポリエチレン樹脂が含まれている。したがって、試料1がエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含有していることは、試料1が高い反発弾性率を示す一因となっている可能性が示唆される。
【0043】
[他の実施形態]
以上、エラストマー発泡体について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0044】
例えば、上記実施形態では、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)を利用する例を示したが、他のスチレン系熱可塑性エラストマーを利用してもよい。他のスチレン系熱可塑性エラストマーの例を挙げれば、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)などのスチレン系熱可塑性エラストマーが好適である。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、鉱物油系軟化剤として、パラフィン系オイルを利用する例を示したが、40℃における動粘度が30mm/s~150mm/sの鉱物油系軟化剤であれば、他の鉱物油系軟化剤を利用してもよい。他の鉱物油系軟化剤の例を挙げれば、例えば、ナフテン系オイル、及びアスファルト系オイル等が好適である。
【0046】
鉱物油系軟化剤の配合量については、ベースポリマー100質量部に対する質量比で175質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。また、鉱物油系軟化剤の配合量については、ベースポリマー100質量部に対する質量比で200質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。
【0047】
また、上記実施形態では、架橋剤として、ジアルキルパーオキサイドを利用する例を示したが、他の架橋剤を利用してもよい。他の架橋剤の例を挙げれば、例えば、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト等が好適である。
【0048】
架橋剤の配合量については、ベースポリマー100質量部に対する質量比で2.9質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。また、架橋剤の配合量については、ベースポリマー100質量部に対する質量比で4.9質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。
【0049】
また、上記実施形態では、カプセル含有量が50質量%、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂含有量が50質量%の発泡剤Aを例示したが、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の配合量を変更してもよい。エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の配合量については、熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対する質量比で50質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。また、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の配合量については、熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対する質量比で150質量部としたところ、所期の物性(すなわち、低硬度、低比重、かつ高反発弾性率)を有するエラストマー発泡体を得ることができた。
【0050】
なお、上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される複数の機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される1つの機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される複数の機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した構成の一部を省略してもよい。