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特許7448964光コム距離計測方法及び光コム距離計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光コム距離計測方法及び光コム距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20240306BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240306BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20240306BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01C3/06 120Q
G01B11/00 G
G01S17/32
G01S7/481 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021123532
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019066
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社OptoComb
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-032566(JP,A)
【文献】特開2010-203884(JP,A)
【文献】特開2010-014549(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203654(WO,A1)
【文献】特開2010-261911(JP,A)
【文献】特許第6745395(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01B 11/00
G01S 17/32
G01S 7/481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測方法であって、
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光の変調周期の状態を切り替えるとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する状態切替工程と、
上記状態切替工程において、変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記測定光と参照光の干渉光を干渉させて測定用干渉光を生成する干渉工程と、
上記干渉工程において生成された参照用干渉光と測定用干渉光を検出して参照信号と測定信号を得る干渉光検出工程と、
上記干渉光検出工程において得られた参照信号および測定信号と上記状態切替工程において出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理工程と
を有することを特徴とする光コム距離計測方法。
【請求項2】
上記状態切替工程では、上記互いに周波数の異なる3以上の整数N種類の変調信号が少なくとも3個のアイソレータを介して入力されるX(3以上の整数)入力Y(Yは正の整数)出力のスイッチ部を介して上記N種類の変調信号を光コム光源部のM個(Mは正の整数)の光コム発生器に選択的に出力する切替制御を行うとともに、上記スイッチ部により選択されるN種類の変調信号の選択状態に応じて上記M個の光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の光コム距離計測方法。
【請求項3】
上記状態切替工程では、3つの発振器を備える変調信号発生部の1の発振器により得られる周波数信号が入力される少なくとも2つの周波数変換器に上記変調信号発生部の上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号をスイッチ部により切り替えて入力させ、上記少なくとも2つの周波数変換器により周波数変換された互いに周波数の異なる少なくとも2種類の変調信号を、上記光コム光源部の少なくとも2つの光コム発生器に駆動信号として供給するとともに、上記2つの周波数変換器に切替入力される各周波数信号の切替状態に応じて上記少なくとも2つの光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の光コム距離計測方法。
【請求項4】
上記状態切替工程では、光コム光源部のN個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、光スイッチを用いたスイッチ部を介して、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力させる選択制御を行うとともに、その選択状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項1記載の光コム距離計測方法。
【請求項5】
参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測装置であって、
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光を出力する光コム光源部と、
上記光コム光源部から出力する測定光と参照光の変調周期の状態を切り替えるとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する状態切替制御部と、
上記光コム光源部から測定光と参照光が入力され、入力された測定光と参照光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記入力された測定光と参照光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記測定光と参照光を干渉させて測定用干渉光を生成する干渉部と、
上記干渉部により生成された参照用干渉光を検出して参照信号を出力する参照用光検出器と、
上記干渉部により生成された測定用干渉光を検出して測定信号を出力する測定用光検出器と、
上記参照用光検出器から出力される参照信号および上記測定用光検出器から出力される測定信号と上記状態切替制御部から出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理部と
を備えることを特徴とする光コム距離計測装置。
【請求項6】
上記光コム光源部は、M個(Mは正の整数)の光コム発生器を備え、上記状態切替制御部を介して選択的に入力される互いに周波数の異なる3以上の整数N種類の変調信号の内の少なくとも3種の変調信号により、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを、上記変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光として出力し、
上記状態切替制御部は、上記N種類の変調信号が少なくとも3個のアイソレータを介して入力されるX(3以上の整数)入力Y(Yは正の整数)出力のスイッチ部と、上記スイッチ部を介して上記N種類の変調信号を上記光コム光源部のM個の光コム発生器に選択的に出力する切替制御を行うとともに、上記スイッチ部により選択されるN種類の変調信号の選択状態に応じて上記M個の光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の光コム距離計測装置。
【請求項7】
互いに周波数の異なる周波数信号を発生する少なくとも3つの発振器を備える変調信号発生部と、
上記変調信号発生部の3つの発振器の内の1の発振器により得られる周波数信号と、上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号が入力される少なくとも2つの周波数変換器と
を備え、
上記状態切替制御部は、上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号を上記スイッチ部により切り替えて上記少なくとも2つの周波数変換器に入力させ、上記少なくとも2つの周波数変換器により周波数変換された互いに周波数の異なる少なくとも2種類の変調信号を、上記光コム光源部の少なくとも2つの光コム発生器に駆動信号として供給するとともに、上記2つの周波数変換器に切替入力される各周波数信号の切替状態に応じて上記少なくとも2つの光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の光コム距離計測装置。
【請求項8】
上記光コム光源部は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる3以上の整数N種類の光コムを発生するN個の光コム発生器を備え、
上記状態切替制御部は、上記光コム光源部のN個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、互いに変調周期が異なるM(Mは正の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力する光スイッチを用いたスイッチ部と、上記光スイッチを用いたスイッチ部による光コムの選択動作を制御する制御部とを備え、上記制御部により、上記光スイッチを用いたスイッチ部を介してN種類の光コムから、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力させる選択制御を行うとともに、その選択状態を示す状態信号を出力することを特徴とする請求項5記載の光コム距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測方法及び光コム距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密なポイントの距離計測が可能なアクティブ式距離計測方法として、レーザー光を利用する光学原理による距離計測が知られている。レーザー光を用いて対象物体までの距離を測定するレーザー距離計ではレーザー光の発射時刻と、測定対象に当たり反射してきたレーザー光を受光素子にて検出した時刻との差に基づいて、測定対象物までの距離が算出される(たとえば特許文献1参照)。また、例えば、半導体レーザーの駆動電流に三角波等の変調をかけ、対象物での反射光を半導体レーザー素子の中に埋め込まれたフォトダイオードを使用して受光し、フォトダイオード出力電流に現れた鋸歯状波の主波数から距離情報を得ている。
【0003】
ある点から測定点までの絶対距離を高精度で測定する装置としてレーザー距離計が知られている。たとえば、特許文献1には、測定光の干渉信号と参照光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計が記載されている。
【0004】
従来の絶対距離計では、長い距離を高精度で測れる実用的な絶対距離計を実現することが難しく、高い分解能を得るためにはレーザー変位計のように原点復帰が必要なため絶対距離測定に適さない方法しか手段がなかった。
【0005】
本件発明者等は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある参照光と測定光をパルス出射する2つの光コム発生器を備え、基準面に照射される参照光パルスと測定面に照射される測定光パルスとの干渉光を参照光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された参照光パルスと上記測定面により反射された測定光パルスとの干渉光を測定光検出器により検出して、上記参照光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、測定面までの距離の基準点位置を基準光路により規定して、長距離測定を高精度で、しかも短時間に行うことができるようにした光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある参照光パルスと測定光パルスを用いることにより、信号処理部において、参照光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)と、測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をPとして、参照信号と測定信号のP次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して測定信号パルスと参照信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0008】
ここで、マイクロ波帯域の変調周波数f(例えば25GHz)、周波数差Δf(例えば、500kHz)である1対の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出力される参照光パルスと測定光パルスを用いて測定される距離は、基準点から測定面までの全体の距離(絶対距離という)から変調周波数fの半波長の整数倍の距離を差し引いた剰余の部分である。干渉信号にはΔfの周期性があり、最も近い参照信号と測定信号の位相差が求められる。半波長を超える距離を測定する場合、2πに整数をかけた位相が基準時刻から比較している参照信号までの時間差に相当する位相として内在する。1組の周波数設定ではその整数値を判別することができない。変調周波数fをわずかに変えて複数回距離測定を実行することにより、複数の測定条件に合致する値としてその整数が逆算できる。
【0009】
すなわち、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、計測に要する時間は周波数の切り替え時間と計測時間、絶対距離計算時間を含めたものとなる。
【0010】
2つの光コム発生器を駆動する変調信号は、例えばPLL(Phase-Locked Loop)により周波数を設定できるようにした変調信号発生器を用いることにより、周波数を切り替えることができる。
【0011】
光コム発生器を駆動する信号はできる限り位相雑音の少ないものが望ましい。位相雑音の少ないVCOを外部参照信号に同期する際に制御の周波数帯域をむやみに広げず、駆動信号のクリーンアップを狙って参照信号の位相雑音のよりもVCOの位相雑音のほうが低くなるような周波数帯域についてはVCOの特性がそのまま出るように制御帯域を制限することが行われる。
【0012】
PLLの周波数が落ち着くまでの時間(セトリング時間)は概ね制御帯域の逆数に比例すると考えれば良く、クリーンアップを狙って制御帯域を狭めるとセトリング時間が長くなり、セトリング時間を短くするため制御帯域を広げると高周波数域の位相雑音の増加や比較周波数に関連するスプリアス信号の混入レベルの増加が発生する。
【0013】
PLLに関する参考文献(非特許文献1)には、設計例として、ローパス・フィルタの帯域幅を約207kHzとした場合、約51マイクロ秒で1kHzの誤差範囲内に周波数をロックすることが紹介されている。500kHzを周波数設定の単位とするように分周回路を設定する場合にはスプリアスの混入を避けるためにはローパス・フィルタの帯域幅をもっと下げなければならず、セトリング時間は51マイクロ秒の何倍もの時間がかかることが予想される。
【0014】
そこで、光コム距離計における2つの光コム発生器には、PLL回路により基準の周波数信号に位相同期された周波数が固定された状態の複数の変調信号をスイッチ回路で切り替えて駆動信号として供給するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2001-343234号公報
【文献】特許第5231883号公報
【文献】特開2020-12641号公報
【非特許文献】
【0016】
【文献】Analog Dialogue、AD33-03 フェーズ・ロック・ループ(PLL)の基礎 著者Ian Collins
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の如く、従来の光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある参照光パルスと測定光パルスを用いることにより、参照光、測定光の周波数切替によって参照光、測定光の光コム周波数間隔が変わると干渉信号の発生の時刻や参照信号と測定信号の時間差に変化が現れるので、距離計測に時間をかけて良ければ、外部の中央演算処理装置などから光源に周波数切り替え命令を送り、切替完了とみなされるまで十分時間をおいてデータ収集と位相計算を実行後、中央演算処理装置から次の周波数設定への周波数切り替え命令を送り、十分時間をおいてからデータ収集と位相計算を実行するという手順を繰り返すことによって周波数設定と位相値の関係を複数求めることができる。
【0018】
しかしながら、距離計算を実行するために必要な一組の位相値を得る過程で空気の屈折率揺らぎや測定対象距離の微振動が位相値に誤差として混入すると次数判別して距離計算をする際の誤差の要因となるので、空気屈折率の変動や測定距離の変化よりも速やかに一組のデータ収集を終える必要がある。
【0019】
そして、距離計算を短時間で確実に行うためには、周波数設定が確実に行われていることの確認やその位相値に対応した周波数設定状態など、位相値の信頼性を判断するための材料が各位相値それぞれに揃っていることが必須である。
【0020】
周波数設定状態の切換えを高速に実施して距離計算を短時間で行うためには、高速に切り替えられた状態で収集される干渉信号の波形のどの位置がどの周波数状態なのか波形単位で知ることが必要になる。
【0021】
本発明の目的は、上述のごとき従来の実情に鑑み、参照光と測定光の干渉信号と参照光と測定区間を通った測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測方法及び光コム距離計測装置において、周波数設定状態の切換えを高速に実施して距離計算を短時間で確実に行うことができるようにすることにある。
【0022】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明では、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定するにあたり、光コム距離計の干渉信号と光源状態信号を同期して取り込み、波形の場所とその場所における光コムの周波数設定を明確にして距離計算を行うことにより、信号処理によって得られる位相値とその位相値が出力される信号区間の周波数設定を同時にかつ正しく取得する。
【0024】
測定光と参照光を出力する光コム光源部における上記測定光と参照光の周波数状態を示す状態信号を用いて、干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く一定であることが確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換に利用される。
【0025】
すなわち、本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測方法であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光の変調周期の状態を切り替えるとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する状態切替工程と、上記状態切替工程において、変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記測定光と参照光を干渉させて測定用干渉光を生成する干渉工程と、上記干渉工程において生成された参照用干渉光と測定用干渉光を検出して参照信号と測定信号を得る干渉光検出工程と、上記干渉光検出工程において得られた参照信号および測定信号と上記状態切替工程において出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る光コム距離計測方法において、上記状態切替工程では、上記互いに周波数の異なる3以上の整数N種類の変調信号が少なくとも3個のアイソレータを介して入力されるX(3以上の整数)入力Y(Yは正の整数)出力のスイッチ部を介して上記N種類の変調信号を上記光コム光源部のM個(Mは正の整数)の光コム発生器に選択的に出力する切替制御を行うとともに、上記スイッチ部により選択されるN種類の変調信号の選択状態に応じて上記M個の光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【0027】
また、本発明に係る光コム距離計測方法において、上記状態切替工程では、3つの発振器を備える変調信号発生部の1の発振器により得られる周波数信号入力される少なくとも2つの周波数変換器に上記変調信号発生部の上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号をスイッチ部により切り替えて入力させ、上記少なくとも2つの周波数変換器により周波数変換された互いに周波数の異なる少なくとも2種類の変調信号を、上記光コム光源部の少なくとも2つの光コム発生器に駆動信号として供給するとともに、上記2つの周波数変換器に切替入力される各周波数信号の切替状態に応じて上記少なくとも2つの光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【0028】
また、本発明に係る光コム距離計測方法において、上記状態切替工程では、光コム光源部のN個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、光スイッチを用いたスイッチ部を介して、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力させる選択制御を行うとともに、その選択状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【0029】
本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測装置であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光を出力する光コム光源部、上記光コム光源部から出力する測定光と参照光の変調周期の状態を切り替えるとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する状態切替制御部と、上記光コム光源部から測定光と参照光が入力され、入力された測定光と参照光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記入力された測定光と参照光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記測定光と参照光を干渉させて測定用干渉光を生成する干渉部と、上記干渉部により生成された参照用干渉光を検出して参照信号を出力する参照用光検出器と、上記干渉部により生成された測定用干渉光を検出して測定信号を出力する測定用光検出器と、上記参照用光検出器から出力される参照信号および上記測定用光検出器から出力される測定信号と上記状態切替制御部から出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理部とを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る光コム距離計測装置において、上記光コム光源部は、M個(Mは正の整数)の光コム発生器を備え、上記状態切替制御部を介して選択的に入力される互いに周波数の異なる3以上の整数N種類の変調信号の内の少なくとも3種の変調信号により、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを、上記変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光として出力し、上記状態切替制御部は、上記互いに周波数の異なる3以上の整数N種類の変調信号が少なくとも3個のアイソレータを介して入力されるX(3以上の整数)入力Y(Yは正の整数)出力のスイッチ部と、上記スイッチ部を介して上記N種類の変調信号を上記光コム光源部のM個の光コム発生器に選択的に出力する切替制御を行うとともに、上記スイッチ部により選択されるN種類の変調信号の選択状態に応じて上記M個の光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【0031】
また、本発明に係る光コム距離計測装置は、互いに周波数の異なる周波数信号を発生する少なくとも3つの発振器を備える変調信号発生部と、上記変調信号発生部の3つの発振器の内の1の発振器により得られる周波数信号と、上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号が入力される少なくとも2つの周波数変換器とを備え、上記状態切替制御部は、上記1の発振器以外の各発振器により得られる各周波数信号を上記スイッチ部により切り替えて上記少なくとも2つの周波数変換器に入力させ、上記少なくとも2つの周波数変換器により周波数変換された互いに周波数の異なる少なくとも2種類の変調信号を、上記光コム光源部の少なくとも2つの光コム発生器に駆動信号として供給するとともに、上記2つの周波数変換器に切替入力される各周波数信号の切替状態に応じて上記少なくとも2つの光コム発生器から出射される上記測定光と参照光の変調周期の切替状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【0032】
また、本発明に係る光コム距離計測装置において、上記光コム光源部は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる3以上の整数N種類の光コムを発生するN個の光コム発生器を備え、上記状態切替制御部は、上記光コム光源部のN個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、互いに変調周期が異なるM(Mは正の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力する光スイッチを用いたスイッチ部と、上記光スイッチ部による光コムの選択動作を制御する制御部とを備え、上記制御部により、上記光スイッチを用いたスイッチ部を介してN種類の光コムから、互いに変調周期が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力させる選択制御を行うとともに、その選択状態を示す状態信号を出力するものとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、測定光と参照光を出力する光コム光源部における上記測定光と参照光の周波数状態を示す状態信号を用いて、干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く一定であることが確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換を行うことができる。
【0034】
すなわち、本発明では、光コム距離計の干渉信号と光源状態信号を同期して取り込み、波形の場所とその場所における光コムの周波数設定を明確にして距離計算を行うことにより、信号処理によって得られる位相値とその位相値が出力される信号区間の周波数設定を同時にかつ正しく取得することができ、距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0035】
したがって、本発明によれば、距離計算を短時間で確実に行うことのできる光コム距離計測方法及び光コム距離計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明を適用した光コム距離計測装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明を適用した光コム距離計測装置における光コム光源部の構成例を示すブロック図である。
図3】上記光コム光源部において、2つ光コム発生器に供給される駆動信号の状態遷移を示す状態遷移図である。
図4】上記光コム光源部に内蔵された状態切替制御部のスイッチ部の具体的な構成例を示すブロック図である。
図5】上記光コム距離計測装置により実施される本発明に係る光コム距離計測方法の手順を示す工程図である。
図6】上記光コム距離計測方法における信号処理工程の具体的な処理手順を示す工程図である。
図7】上記光コム距離計測装置における光コム光源部の他の構成例を示すブロック図である。
図8】上記光コム距離計測装置における光コム光源部の更に他の構成例を示すブロック図である。
図9】上記光コム光源部の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。
図10】本発明を適用した光コム距離計測装置における光コム光源部の更に他の構成例を示すブロック図である。
図11】本発明を適用した光コム距離計測装置の更に他の構成例を示すブロック図である。
図12】本発明を適用した光コム距離計測装置の更に他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0038】
本発明は、例えば図1のブロック図に示すような構成の光コム距離計測装置100に適用される。
【0039】
この光コム距離計測装置100は、参照光と測定光の干渉信号と参照光と測定区間を通った測定光の干渉信号の時間差から距離を測定するものであって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組の測定光と参照光を出力する光コム光源部10と、上記光コム光源部10から測定光と参照光が入力される干渉部20と、上記干渉部20により得られる参照信号と測定信号が入力される信号処理部30を備える。
【0040】
上記光コム光源部10は、測定光を出射する第1の光コム発生器11Aと、参照光を出射する第2の光コム発生器11Bを備え、上記第1,第2の光コム発生器11A,11Bから出射する測定光と参照光の各変調周期の状態を切替設定または切替状態の読み取りを行うとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する状態切替制御部12を内蔵している。
【0041】
上記光コム光源部10は、周期的に変調され、変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光を出力し、上記状態切替制御部12により、上記測定光と参照光の変調周期の状態を切替設定または切替状態の読み取りを行うものとすることができる。また、上記状態切替制御部12は、後述する光コム距離計測装置100Bのように、信号処理部に設けられていても良い。
【0042】
上記干渉部20は、上記光コム光源部10から入力される測定光、参照光のどちらか一方を測定対象物50に向けて出力し、測定対象物50まで距離を往復しない測定光と参照光を干渉させた参照用干渉光を参照用光検出器23で検出して参照信号として出力するとともに、どちらか一方が測定対象物50までの距離を往復した測定光と参照光を干渉させた測定用干渉光を測定用光検出器24で検出して測定信号として出力するもので、その構成は様々であり、各光検出器23,24で必要な干渉信号が得られるようにビームスプリッタ(BS)や偏光ビームスプリッタ(PBS)が使い分けられる。
【0043】
図1のブロック図に示す光コム距離計測装置100における干渉部20では、上記光コム光源部10から出射された参照光と測定光は、互いに偏光面が直交しているものとし、参照光が半透鏡(BS)からなる光混合素子22Aに入射されるとともに測定光が全反射鏡21を介して上記光混合素子22Aに入射され、上記光混合素子22Aにより2つの混合光に分岐されて、一方の混合光が偏光ビームスプリッタ(PBS)からなる光分離混合素子22Bに入射されるとともに、他方の混合光が参照用光検出器23に入射され、上記一方の混合光が上記光分離混合素子22Bにより偏光に応じて参照光と測定光に分離されて、上記参照光が1/4波長板26Aを介して基準面25に入射され、また、上記測定光が1/4波長板26Bを介して測定対象物50に入射されるようになっている。上記光分離混合素子22Bにより反射された参照光と、1/4波長板26Aを介して基準面25に入射されて、上記基準面25により反射されて上記1/4波長板26Aを再度通過して上記光分離混合素子22Bに入射される参照光とは、偏光面が直交した状態になっており、上記光分離混合素子22Bは、上記1/4波長板26Aを再度通過した参照光を透過し、上記光分離混合素子22Bを透過した測定光と、1/4波長板26Bを介して測定対象物50に入射されて、上記測定対象物50により反射されて上記1/4波長板26Bを再度通過して上記光分離混合素子22Bに入射される測定光とは、偏光面が直交した状態になっており、上記光分離混合素子22Bは、上記1/4波長板26Bを再度通過した測定光を反射する。なお、上記1/4波長板26A、26Bは、それぞれファラデ-ローテータであってもよい。
【0044】
ここでは、上記光コム光源部10から出射された参照光と測定光は、互いに偏光面が直交したものとしたが、上記光混合素子22Aとして偏光ビームスプリッタを用いて、基準光と測定光の互いに偏光面が直交する成分を混合するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記基準面25により反射された基準光と、上記測定対象物50により反射された測定光は、上記光分離混合素子22Bにより混合され、その混合光が測定用光検出器24に入射されるようになっている。
【0046】
すなわち、上記干渉部20は、どちらも上記測定対象物50までの距離を往復していない参照光と測定光を干渉させた参照用干渉光を上記参照用光検出器23で検出することにより参照信号を得て、また、上記基準面25までの基準光路の距離L1を往復した参照光と上記測定対象物50までの測定光路の距離L2を往復した測定光を干渉させた測定用干渉光を上記測定用光検出器24で検出することにより測定信号を得るようになっている。上記干渉部20において、半透鏡(BS)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、波長板、ファラデーローテータなどは干渉信号を生成するための構成要素の一部であって、干渉計の構成が変われば必要な部品も変わる。
【0047】
なお、上記干渉部20において、半透鏡(BS)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、波長板、ファラデーローテータなどは干渉信号を生成するための構成要素の一部であって、干渉計の構成が変われば必要な部品も変わる。参照光と測定光は、直交した偏光状態では干渉しないが、上記参照用光検出器23、測定用光検出器24は、偏光子などで一方の射影成分を抽出するか、直交する射影成分のそれぞれを差動検出して干渉信号を強調する機能を含むなど、何らかの形で参照光と測定光の干渉を発生するようになっている。
【0048】
この光コム距離計測装置100において、上記参照用光検出器23により得られる参照信号と上記測定用光検出器24により得られる測定信号の時間差は、上記参照光が往復した上記基準面25までの基準光路の距離L1と上記測定光が往復した上記測定対象物50までの測定光路の距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当し、真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより上記距離差の絶対値(L2-L1)となる。
【0049】
上記信号処理部30は、上記干渉部20から供給される参照信号と測定信号に加えて上記光コム光源部10の状態切替制御部12から供給される状態信号を取り込むようになっており、それらを同期して入力することにより、上記参照信号と測定信号と状態信号を同期させて処理することにより、上記距離差の絶対値(L2-L1)を計算し、外部に出力する。
【0050】
この光コム距離計測装置100における信号処理部30では、上記測定光と参照光を出力する光コム光源部10における上記測定光と参照光の周波数状態を示す状態信号を用いて、上記参照信号と測定信号すなわち干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く、周波数設定の完了と状態の安定が確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換に利用される。
【0051】
すなわち、上記信号処理部30では、上記参照信号と測定信号と状態信号を同期して取り込み、信号処理によって得られる位相値とその位相値が出力される信号区間の周波数設定を同時にかつ正しく取得することにより、上記参照信号と測定信号の波形の場所とその場所における光コムの周波数設定を明確に把握した状態で距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0052】
ここで、この光コム距離計測装置100における光コム光源部10は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(Nは3以上の整数)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周期が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを出力するもので、ここでは、N=4、M=2として、図2に示すように、上記状態切替制御部12からN(N=4)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周期が異なるM(M=2)種類の変調信号が、上記光コム光源部10に備えられたM(M=2)個の光コム発生器11A,11Bに各駆動信号FmA,FmBとして与えられることにより、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(N=4)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周期が異なるM(M=2)種類の光コムを上記光コム発生器11A,11Bから出力する。
【0053】
上記状態切替制御部12は、基準発振器4Rにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期して周波数が固定された互いに周波数が異なるN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を発生するN(N=4)個のPLL発振器4A,4B,4C,4Dを備える変調信号発生部4からN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力されるN(N=4)入力M(M=2)出力のスイッチ部12Aと、このスイッチ部12Aによる変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の選択出力の切り替え制御を行う制御部12Bを備え、上記スイッチ部12Aを介して互いに変調周期が異なる2種類の変調信号を上記光コム発生器11A,11Bに各駆動信号FmA,FmBとして供給するようになっている。
【0054】
第1のPLL発振器4Aは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第1の周波数f(f=25000MHz)に固定された第1の変調信号Fm1を発生する。
【0055】
また、第2のPLL発振器4Bは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第2の周波数f+Δf(f+Δf=25010MHz)に固定された第2の変調信号Fm2を発生する。
【0056】
また、第3のPLL発振器4Cは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第3の周波数f+Δf(f+Δf=25000.5MHz)に固定された第3の変調信号Fm3を発生する。
【0057】
さらに、第4のPLL発振器4Dは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第4の周波数f+Δf(f+Δf+Δf=25010.5MHz)に固定された第4の変調信号Fm4を発生する。
【0058】
なお、図2のブロック図に示す光コム光源部10では、 上記変調信号発生部4と上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aの間にアイソレータ5A,5B,5C,5Dを挿入して、上記変調信号発生部4からアイソレータ5A,5B,5C,5Dを介して上記状態切替制御部12のスイッチ部12AにN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力されるようになっている。
【0059】
このようにアイソレータ5A,5B,5C,5Dを挿入して、上記変調信号発生部12から5A,5B,5C,5Dを介して上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aに変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を入力することにより、スイッチ部12A以降の回路の遮断や解放などによる負荷変動で信号源(PLL発振器4A,4B,4C,4D)の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0060】
上記アイソレータ5A,5B,5C,5Dには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、π型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0061】
そして、上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aは、その切り替え動作が制御部12Bにより制御されることによって、上記変調信号発生部4から上記アイソレータ5A,5B,5C,5Dを介して入力される4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えて2つの出力端子から交互に出力し、上記2つの出力端子に接続されている上記2つの光コム発生器11A,11Bに駆動信号FmA,FmBとして供給する4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4図3の遷移状態図に示すように巡回的に切り替える4入力2出力のセレクタスイッチとして機能する。
【0062】
ここで、上記制御部12Bは、4入力2出力のスイッチ部12Aを2ビットの信号で制御して出力周波数を選択する。2ビットの信号を1~4の数値で表して、光源部周波数設定の状態を#1~#4の値で出力することができる。駆動信号FmA,FmBには4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4のどれか一つの周波数が現れる。上記2つの光コム発生器11A,11Bは、駆動信号FmA,FmBに一致する周波数間隔または駆動信号FmA,FmBに同期した周波数間隔でサイドバンドを生成する外部変調型の光コム発生器でも良いし、モード間隔が駆動信号FmA,FmBに一致または同期された周波数の間隔となっているモード同期レーザー光源であっても良い。
【0063】
この光コム距離計測装置100における上記状態切替制御部12の制御部12Bは、2つ光コム発生器11A,11Bに駆動信号FmA,FmBの遷移状態を次の表1に示すように、上記光コム発生器11A,11Bに駆動信号FmA,FmBとして供給する4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えように上記スイッチ部12Aの切り替え動作を制御し、その切替状態を示す状態信号を出力するようになっている。
【表1】
【0064】
表1は、#1~4の設定における2つの光コム発生器11A,11Bの駆動信号FmA,FmBの周波数の遷移状態と位相差を示しており、基本周波数をf、距離判定に必要な基本周波数の偏移をΔf、光コム干渉を生成するための駆動周波数差をΔfとして、例えば、Δf=500kHz、Δf=10MHz、f=Fm1(25000MHz)、f+Δf=Fm2(25010MHz)、f+Δf=Fm3(25000.5MHz)、f+Δf+Δf=Fm4(25010.5MHz)となっている。
【0065】
すなわち、この光コム距離計測装置100において、2つ光コム発生器11A,11Bに供給される駆動信号FmA,FmBにより、各光コム発生器11A,11Bの駆動周波数は、上記状態切替制御部12によって次の表2に示すように遷移される。
【表2】
【0066】
ここで、光コム距離計測装置100では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器11A,11Bからパルス出射される干渉性のある参照光と測定光を用いることにより、信号処理部30において、参照光用検出器23により得られる干渉信号すなわち参照信号と測定用光検出器24により得られる干渉信号測定信号を上記状態切替制御部12により与えられる状態信号とともに取り込んで、上記状態信号に基づいて参照信号と測定信号について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をPとして、参照信号と測定信号のP次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定対象物面50までの距離を算出する。
【0067】
なお、測定距離が変調周波数fの半波長を超えると物体光の周期性によりその半波長の整数倍の距離が不明となって一義的に距離を求められないので、上記状態切替制御部12により表1に示す4通りの変調周波数に設定した基準光と測定光を用いて4回測定して、上記信号処理部30において、上記状態切替制御部12の制御部12Bにより状態信号とともに基準光と測定光を取り込んで、同じ処理を行うことにより得られる各位相差を用いて、半波長相当の多義性距離(La=c/2f c:光速)を超える距離を算出する。
【0068】
すなわち、上記状態切替制御部12により表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号の位相差は、2つの光コム発生器11A,11Bを駆動する変調信号の変調周波数がfとf+Δfである#1の設定では-2πfTとなり、変調信号の変調周波数がf+Δfとf+Δf+Δfである#2の設定では-2π(f+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がfm+Δfとfmである#3の設定では-2π(f+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がf+Δf+Δfとf+Δfである#4の設定では-2π(f+Δf+Δf)Tとなる。なお、位相差の符号は2つの光コム発生器11A,11Bを駆動する変調周波数の大小関係の逆転による符号反転を補正してある。
【0069】
距離(La=c/2f c:光速)よりも長い場合、参照信号と測定信号の位相差(-2πfT)は、mを整数としてφ+2mπの形であり、計算によりφの部分だけが求められるが、整数値mは不明である。
【0070】
一方、#1の設定での参照信号と測定信号の位相差-2πfTと#2の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tの差は2πΔfTであり、また、#3の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tと#4の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf+Δf)Tの差は2πΔfTであり、1/Δfの波長に相当する距離(Δf=10MHzであればLaは15m)までならば、一義的に位相が決まる。
【0071】
そして、この位相をf/Δf倍して#1の位相差との比較により整数mを判定することができる。
【0072】
さらに、表1の#1の設定での位相差-2πfTと#3の設定での位相差-2π(f+Δf)Tの差から2πΔfTが得られる。
【0073】
さらに、表1の#2の設定での位相差-2π(f+Δf)Tと#4の設定での位相差-2π(f+Δf+Δf)Tの差から2πΔfTが得られる。
【0074】
ここで、f=25GHz、Δf=500kHz、Δf=10MHzとした場合、Δf=500kHzであるからLa=300mまでの距離計測を行うことができる。
【0075】
この光コム距離計測装置100では、上記状態切替制御部12により、表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号を用いて絶対距離計測が行われる。すなわち、1つの状態を一定時間保持した後に他の状態に移り、一定の区間でその状態の信号位相計測を行い、#1,#2,#3,#4の設定状態の位相を使って絶対距離の計算処理を実行する。
【0076】
この光コム距離計測装置100における計測速度は、6mm以内の相対距離測定ではΔfに等しく500kHzであるのに対し、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、周波数の切り替え時間と絶対距離計算時間を含めたものとなるが、上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記状態切替制御部12により巡回的に切り替えて、2つの光コム発生器11A,11Bの駆動状態を迅速に遷移させることができ、上記信号処理部30では、上記状態切替制御部12の制御部12Bにより与えられる状態信号とともに上記参照信号と測定信号と状態信号を取り込み、上記参照信号と測定信号の波形の場所とその場所における光コムの周波数設定を明確に把握した状態で絶対距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0077】
すなわち、発振周波数を自由に切り替え設定することができるPLL発振器により、互いに変調周期が異なるM種類の変調信号を得るようにPLL発振器の発振周波数を実時間で切り替え設定するのでは、発振周波数を切り替えて設定周波数で位相同期させて目的の周波数で安定した周波数信号を得るのに必要なセトリング時間が長く、迅速な測定処理を必要とする移動体に対する距離測定などの用途において、絶対距離の測定に時間がかかってしまい、実用的でないが、この光コム距離計測装置100では、移動速度が速くなればなるほど絶対距離の測定時間を短縮する必要がある移動体に対しても、絶対距離の測定時間を短縮して高精度に絶対距離測定を行うことができる。
【0078】
なお、この場合15mまでの距離計測だけであれば、#1と#2の設定のみ、あるいは、#3と#4の設定のみでも可能であるが、上述のごとく#1,#2,#3,#4の設定、すなわち、上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記状態切替制御部12により巡回的に切り替えることにより、距離測定範囲が300mに拡張されるほか、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる。すなわち、2つの光コム発生器11A,11Bの変調周波数を入れ替えたときに測定対象距離に由来の位相は絶対値が変わらず符号が反転する。一方、干渉信号伝送路のケーブル長さに由来するオフセットは符号が変わらず一定値になる。したがって、2回の位相測定の結果を差し引いて2で割るとオフセットを除外した位相値を求めることができる。
【0079】
ここで、巡回的な状態遷移は、#1を起点としてみた場合、次に#3,#2,#4,#2,#3、そして、#1に戻るように切り替えを設定している。この設定は、光コム発生器11Aと光コム発生器11Bを駆動している駆動信号FmA,FmBの周波数を入れ替えた計測結果と、周波数の入れ替えの順序を逆順にして測定した結果も加味して距離計算することで、測定対象が速度をもって移動している間でも距離測定誤差が最小かつ最短時間で実行することに配慮して決定されている。
【0080】
位相オフセットを除外した位相値を得る2回の位相測定を行うに当たり、表1に示す4通りの変調周波数の切替順序は原理的には任意であるが、#1→#2→#3→#4→#4→#3→#2→#1の繰り返しや#1→#3→#2→#4→#4→#2→#3→#1の繰り返しのように、切替順序の一方向と逆方向を連続させて切り替える巡回方式を採用することにより、距離測定誤差や計測処理時間を少なくすることができる。
【0081】
なお、絶対距離計測を行うに当たり、基本的には周波数の「遷移状態」は4つ一組で距離計算を行うが、原理的にはΔf=Δfの場合も否定しないので、f、f+Δf、f+2Δfの3種類の変調周期でも可能あり、この光コム距離計測装置100では、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(Nは3以上の整数)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周期が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを出力する光コム光源部10と、基準周波数信号に位相同期されたM種類の駆動信号を上記光コム光源部10に供給して、上記M種類の光コムを出力させる制御を行う状態切替制御部12とを備えることにより、2つの光コム発生器11A、11Bの駆動状態を迅速に遷移させることができ、上記信号処理部30にいて、上記状態切替制御部12の制御部12Bにより与えられる状態信号とともに上記参照信号と測定信号と状態信号を取り込み、上記参照信号と測定信号の波形の場所とその場所における光コムの周波数設定を明確に把握した状態で絶対距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0082】
ここで、図4は、上記光コム光源部10に内蔵された状態切替制御部12の4入力2出力のスイッチ部12Aの具体的な構成例を示すブロック図である。
【0083】
すなわち、状態切替制御部12の4入力2出力のスイッチ部12Aは、図4のブロック図に示すように、上記変調信号発生部4のPLL発振器4A,4B,4C,4Dにより発生される4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が、アイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して入力される初段のそれぞれ1入力2出力の4つのスイッチ回路141A,141B,141C,141D、上記初段のスイッチ回路141A,141B,141C,141Dを介して上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力される次の段に設けられたそれぞれ2入力1出力の2つのスイッチ回路142A,142B、上記2つのスイッチ回路142A,142Bの各出力端子に接続されたさらに次の段の1入力2出力の2つのスイッチ回路143A,143B、上記2つのスイッチ回路143A,143Bに接続された最終段のそれぞれ2入力1出力の2つのスイッチ回路144A,144Bが制御ロジックからなる制御部12Bにより10MHzの基準周波数信号FREFに同期して切り替え制御されることにより、上記第1,第2の光コム発生器14A、14Bに駆動信号の遷移状態を図3に示すように、上記第1,第2の光コム発生器11A,11Bに駆動信号として供給する上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えるようになっている。
【0084】
このスイッチ部12Aにおいて、初段の4つの初段のスイッチ回路141A,141B,141C,141Dは、それぞれ2つの出力端子のうちの一方が次段の2つのスイッチ回路142A,142Bの入力端子に接続され、他方の出力端子が終端抵抗により終端されている。
【0085】
なお、図4のブロック図に示すスイッチ部12Aの具体例では、それぞれ可変減衰器と帯域通過フィルタを組み合わせたアイソレータ回路からなるから第1乃至第4の13A,13B,13C,13Dを介して上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が初段の4つのスイッチ回路141A,141B,141C,141Dに入力され、終段の2つのスイッチ回路144A,144Bの出力端子から、上記巡回的に切り替える4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4がそれぞれアイソレーション増幅器と帯域通過フィルタを組み合わせたアイソレータ回路からなる第1、第2のアイソレータ15A,15Bを介して出力されるようになっている。
【0086】
そして、この光コム距離計測装置100では、図5の工程図に示す手順に従って本発明に係る光コム距離計測方法が実施される。
【0087】
本発明に係る光コム距離計測方法は、参照光と測定光の干渉信号と参照光と測定区間を通った測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測方法であって、先ず、状態切替工程S1では、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の測定光と参照光の変調周期の状態を切り替えるとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する。すなわち、上記光コム光源部10において、状態切替制御部12により、第1、第2の光コム発生器11A、11Bから出射する測定光と参照光の各変調周期の状態を切替設定または切替状態の読み取りを行うとともに、その切替状態を示す状態信号を出力する。
【0088】
次の干渉工程S2では、上記状態切替工程S1において、変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記変調周期の状態が切り替えられた測定光と参照光のどちらか一方を測定対象物50に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物50までの距離を往復した上記測定光と参照光を干渉させて測定用干渉光を生成する。
【0089】
次の干渉光検出工程S3では、上記干渉工程S2において生成された参照用干渉光と測定用干渉光を参照用光検出器23と測定用光検出器24で検出することにより参照信号と測定信号を得て出力する。
【0090】
すなわち、上記干渉工程S2において、どちらも上記測定対象物50までの距離を往復していない参照光と測定光を干渉させた参照用干渉光と、上記基準面25までの基準光路の距離L1を往復した参照光と上記測定対象物50までの測定光路の距離L2を往復した測定光を干渉させた測定用干渉光を生成して、次の干渉光検出工程S3において、参照用光検出器23と測定用光検出器24で上記参照用干渉光と測定用干渉光を検出することにより参照信号と測定信号を得ている。
【0091】
そして、次の信号処理工程S4では、上記干渉光検出工程S3において出力される参照信号および測定信号と上記状態切替工程S1において出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物50までの距離を計算する。すなわち、上記信号処理部30により、上記干渉部20から供給される参照信号と測定信号に加えて上記光コム光源部10の状態切替制御部12から供給される状態信号を同期して取り込み、上記参照信号と測定信号と状態信号を同期させて処理することにより、上記参照光が往復した上記基準面25までの基準光路の距離L1と上記測定光が往復した上記測定対象物50までの測定光路の距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当し、上記参照信号と測定信号との時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより、上記距離差の絶対値(L2-L1)を算出する。
【0092】
ここで、上記信号処理工程S3では、図6の工程図に示すように、上記信号処理部30により、先ず信号入力工程S31にて、上記状態切替工程S1において出力される状態信号と上記干渉工程S2において出力される参照信号および測定信号を取り込み、次の位相差計算工程S32で、上記参照信号と測定信号の包絡線パルスの位相差を計算する。位相差計算工程S32では、位相差を計算する際に、位相差データにその信号区間の光源状態すなわち周波数情報を付帯させる。
【0093】
次の距離計算基礎データ取得工程S33では、状態信号と駆動周波数の例に挙げた#1~#4の位相差データを各1データ以上収集する。この距離計算基礎データ取得工程S32において収集する位相差データは、最低でも#1,#2の1組または#3,#4の1組が必要である。
【0094】
次の次数判定工程S34では、上記距離計算基礎データ取得工程S33で収集した一組の位相差データの異なる状態間の差を計算する。すなわち、位相差の差を計算することになる。この計算によって、例えば、上記表1に示した設定状態における#1、#2であればΔfで計測した場合の位相差が求められる。Δfが10MHzであれば凡そ15mで2π[rad]の緩慢な変化となる。Δfの位相をφΔfmと表し、設定状態#1で計測した場合のfmの位相をφfmとすると、φΔfmをf/Δf倍した値はφfm+2Pπ(Pは次数)と近い値となっているはずであるので、この関係から次数を決定する。
【0095】
そして、次の距離計算工程S35では、φfm+2Nπ(Nは次数)を2πで除して基本周波数fの半波長を乗じることにより、光学距離で表された距離が基本周波数fの測定精度で得られ、得られた光学距離に屈折率補正や原点補正を行って距離出力とする。
【0096】
この光コム距離計測装置100では、このように本発明に係る光コム距離計測方法を実施することにより、測定光と参照光を出力する光コム光源部10における上記測定光と参照光の周波数状態を示す状態信号を用いて、干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く、周波数設定の完了と状態の安定が確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換を短時間で確実に行うことができる。
【0097】
ここで、上記光コム距離計測装置100における光コム光源部10として用いられる外部変調型の第1、第2の光コム発生器11A’,11B’を備える光コム光源部10’の構成例を図7のブロック図に示す。
【0098】
この光コム光源部10’では、レーザー光源1から出射されるレーザー光が光分配器2を介して外部変調型の第1、第2の光コム発生器11A’,11B’に入射されている。
【0099】
上記第1、第2の光コム発生器11A’、11B’は、変調信号発生部4のPLL発振器4A,4B,4C,4Dにより発生される4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aを介して巡回的に選択されて駆動信号FmA,FmBとして供給され、上記駆動信号FmA,FmBに同期した周波数間隔でサイドバンドを生成することにより、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組測定光と参照光を出射する。
【0100】
また、上記光コム距離計測装置100における光コム光源部10では、上記状態切替制御部12において、上記光コム発生器11A,11Bに駆動信号FmA,FmBとして供給する4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えように上記スイッチ部12Aの切り替え動作を制御部12Bにより制御し、その切替状態を示す状態信号を出力するようにしたが、次の図8のブロックに示す光コム光源部110のように、上記切替制御部12により変調周波数が巡回的に切り替えられた駆動信号FmA,FmBをアップコンバートして第1、第2の光コム発生器11A,11Bに供給するようにしてもよい。
【0101】
図8に示す光コム光源部110は、図2に示した光コム光源部10における2つ光コム発生器11A、11B供給する駆動信号として、変調信号発生部4により発生される1GHz帯域の周波数信号F,F,F,Fを周波数変換器7A,7Bによりアップコンバートして25GHz帯域の変調信号FmA,FmBを得るようにしたものである。
【0102】
この光コム光源部110における変調信号発生部114は、1GHz帯域の周波数信号F,F,F,Fを発生する4個のPLL発振器4A,4B,4C,4Dと24GHzの周波数信号Fを発生する1個のPLL発振器4Eを備える。
【0103】
この光コム光源部110において、変調信号発生部114の第5のPLL発振器4Eは、基準発振器4Rから供給される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数fが固定された24GHzの周波数信号Fをパワーデバイダ6を介して2つの周波数変換器7A,7Bに供給する。
【0104】
また、上記変調信号発生部114において、第1のPLL発振器4Aは、上記基準発振器4Rにより発生される周波数が例えば10MHzの基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’(f’=1000MHz)に固定された第1の周波数信号Fを発生する。
【0105】
また、第2のPLL発振器4Bは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf(f’+Δf=1010MHz)に固定された第2の周波数信号Fを発生する。
【0106】
また、第3のPLL発振器4Cは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf(f’+Δf=1000.5MHz)に固定された第3の周波数信号Fを発生する。
【0107】
さらに、第4の発振器4Dは、上記基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf+Δf(f’+Δf+Δf=1010.5MHz)に固定された第4の周波数信号Fを発生する。
【0108】
上記変調信号発生部114において、上記第1乃至第4のPLL発振器4A,4B,4C,4Dにより得られる第1乃至第4の周波数信号F,F,F,Fは、アイソレータ5A,5B,5C,5Dを介して状態切替制御部12の4入力2出力のスイッチ部12Aに入力される。
【0109】
上記状態切替制御部12の制御部12Bは、上記変調信号発生部114の基準発振器4Rにより与えられる基準周波数信号FREFに同期して、上記変調信号発生部114から上記アイソレータ5A,5B,5C,5Dを介して上記スイッチ部12Aの4個の入力端子に入力される上記第1乃至第4の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えて上記スイッチ部12Aの2つの出力端子から出力し、1GHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第1、第2の変調信号Fma,Fmbを上記2つの周波数変換器7A,7Bに供給する4入力2出力のセレクタスイッチとして上記スイッチ部12Aを機能させる。
【0110】
ここで、上記変調信号発生部4と上記状態切替制御部12のスイッチ回路12Aの間にアイソレータ5A,5B,5C,5Dを挿入して、上記変調信号発生部4からアイソレータ5A,5B,5C,5Dを介してスイッチ回路12Bに周波数信号F,F,F,Fを入力することにより、上記スイッチ回路12A以降の回路の遮断や解放などによる負荷変動で信号源の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0111】
上記アイソレータ5A,5B,5C,5Dには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、π型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0112】
そして、上記第1,第2の周波数変換器7A,7Bは、上記第5のPLL発振器4Eから供給される周波数(例えば、24GHz)の周波数信号Fと、上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aから1GHz帯の4種類の周波数fm’=1000MHz、fm’+Δf=1010MHz、f’+Δf=1000.5MHz、f’+Δf’+Δf=1010.5MHzの周波数信号F,F,F,Fが巡回的に切り替えて交互に出力される第1、第2の変調信号Fma,Fmbを用いて、25GHz帯域の4種類の変調周波数f=25000MHz,f+Δf=25010MHz,f+Δf=25000.5MHz,f+Δf+Δf=25010.5MHzに周波数変換した第1、第2の変調信号FmA,FmBを得て、上記第1、第2の光コム発生器11A,11Bに駆動信号として供給する。
【0113】
すなわち、上記第1,第2の周波数変換器7A,7Bは、1GHz帯の周波数信号F,F,F,Fからなる第1,第2の変調信号Fma,Fmbを上記第1,第2の光コム発生器11A,11Bに駆動信号として供給する25GHz帯域の第1,第2の変調信号FmA,FmBに周波数変換するアップコンバータとして機能する。
【0114】
上記第1,第2の周波数変換器7A,7BにはダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器、あるいは、例えば、図9に示すような構成の位相同期を利用した周波数変換器7が用いられる。
【0115】
ここで、上記第1,第2の周波数変換器7A,7BにダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器を用いる場合、周波数混合器は、非線形素子であるために、上記#1,#2,#3,#4の設定状態で必要な周波数成分(f、f+Δf、f+Δf、f+Δf+Δf)以外の周波数成分が発生するので、第1,第2の周波数変換器7A,7Bの出力側にそれぞれ帯域通過フィルタ8A,8Bを挿入して必要な周波数成分だけを駆動信号として光コム発生器11A,11Bに供給することになる。
【0116】
例えば、周波数混合器を用いた第1の周波数変換器7Aでは、例えば#1の設定の場合、必要なfmの周波数成分だけでなく望まない周波数成分f+Sf(S=0を除く)のスプリアスが発生する。ここで、Sは整数であり、fは周波数混合器23Aに入力される周波数変換前の変調信号の周波数である。この周波数成分が第1の光コム発生器11Aに駆動信号として供給する第1の変調信号FmAに混入すると、上記第1の光コム発生器11Aによる光コム発生においてスプリアスとなって計測値に影響を及ぼす場合がある。この影響を避けるために帯域通過フィルタ8Aを用いて、必要なfの周波数成分だけを通過させ、それ以外の周波数成分を測定仕様に影響しない程度まで減衰させる。
【0117】
また、周波数混合器を用いた第1の周波数変換器7Aにより発生される望まない周波数成分f+Sfは、入力側のパワーデバイダ6の方向にも伝搬し、パワーデバイダ61も理想的な特性ではないので、第2の周波数変換器7Bに到達することになる。第2の周波数変換器7Bに到達した上記望まない周波数成分f+Sfが周波数変換されることにより、該第2の周波数変換器7Bの出力には、f+Sf+S’(f+Δf)の周波数成分が混入することになる。ここで(f+Δf)は周波数変換器7Bに入力される周波数変換前の変調信号の周波数である。
【0118】
ここで、S’は整数である。S+S’=0以外の周波数成分は、fから+f又は-fの外になるので、必要なf+Δfの周波数を通過させる帯域通過フィルタ8Aにより減衰させることできる。しかし、S+S’=0の周波数成分は、f+S’Δfとなり、必要なS’=1のf+Δfに極めて近い周波数成分で、帯域通過フィルタ24Aにより取り去ることは困難であるが、入力側にそれぞれアイソレータ5E,5Fを挿入することにより、周波数変換器7A,7Bによる反射成分を減衰させることができる。
【0119】
上記アイソレータ5E,5Fには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、パイ型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0120】
上記光コム光源部110では、実用上、これらを組み合わせて、パフォーマンスの向上が図られた最適な構造が採用される。
【0121】
なお、上記光コム光源部110において、f、f+Δfを100MHz程度とすると、40dB以上の相対位相雑音の改善が見込まれるが、f=25GHzの場合でf=100MHzの場合、帯域通過フィルタ8A,8Bには、f+f又はf-fのスプリアスを低減するには2500以上の極めてQ値の高いフィルタが必要となる。
【0122】
ここで、上記周波数変換器7A,7Bには、ダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器ではなく、図9に示すような構成の位相同期を利用した周波数変換器7を用いることもできる。
【0123】
この周波数変換器7は、位相比較器71と、この位相比較器71により発振位相が制御される電圧制御型発振器72と、この電圧制御型発振器72から出力される周波数信号が分岐されて入力される周波数混合器73を備える。
【0124】
この周波数変換器7では、100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fが位相比較器71に入力され、上記第5のPLL発振器4Eから周波数がf-fの周波数信号として24.9GHzの周波数信号Fが周波数混合器73に供給される。電圧制御型発振器72から出力される25GHz帯の変調周波数fの変調信号Fと上記24.9GHzの周波数信号F0との差周波数f’の周波数信号を上記周波数混合器73により得て上記100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fと上記位相比較器71により位相比較して得られる位相比較出力で上記電圧制御型発振器72の発振位相を制御することにより、上記100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fに位相同期して周波数が固定された25GHz帯の変調周波数fの変調信号Fを上記電圧制御型発振器72から出力する。
【0125】
すなわち、この周波数変換器7は、例えば上記周波数変換器7Aとして用いる場合、上記位相比較器71に上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aにより100MHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第1の変調信号Fmaが供給されることにより、上記差周波数f’の周波数信号と上記第1の変調信号Fmaとの位相比較を行い上記電圧制御型発振器72にフィードバックして、上記電圧制御型発振器72の発振位相を制御して、100MHz帯の第1の変調信号Fmaをアップコンバートした25GHz帯の周波数fmAの変調信号FmAを上記電圧制御型発振器72から出力することができる。
【0126】
また、この周波数変換器7は、例えば上記周波数変換器7Bとして用いる場合、上記位相比較器71に上記状態切替制御部12のスイッチ部12Aにより100MHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第2の変調信号Fmbが供給されることにより、上記差周波数f’の周波数信号と上記第2の変調信号Fmbとの位相比較を行い上記電圧制御型発振器72にフィードバックして、上記電圧制御型発振器72の発振位相を制御して、100MHz帯の第2の変調信号Fmbをアップコンバートした25GHz帯の周波数fmBの変調信号FmBを上記電圧制御型発振器72から出力することができる。
【0127】
ここで、この周波数変換器7において、上記位相比較器71は、ダブルバランスドミキサなどの位相比較器が用いられ、同一周波数同士の位相比較を行うため低雑音である。また、周波数比較が変調周波数fの100MHz帯の周波数で行われるため、制御帯域を大きくでき、例えば10MHz以上とることができる。そのため、周波数変換器7A,7Bの出力の相対位相雑音は、100MHz帯の変調周波数f、f+Δfの信号の相対位相雑音となる。さらに、PLLの制御帯域が大きいため目的の周波数で安定した周波数信号を得るのに必要なセトリング時間は小さくできる。
【0128】
また、周波数変換器7の出力は、100MHz帯の変調周波数f又はf+Δfの信号の位相同期の制御帯域より十分大きいので、電圧制御型発振器72のスプリアスf+f又はスプリアスf-fを小さくできる。
【0129】
したがって、上記周波数変換器7A,7Bとしてそれぞれ上記位相同期を利用した周波数変換器7を用いることにより、出力側の帯域通過フィルタ8A,8Bは、不要とする、あるいは仕様を軽減することができる。
【0130】
上記光コム距離計測装置100では、上記切替制御部12により変調周波数が巡回的に切り替えられた駆動信号FmA,FmAを上記周波数変換器7A,7Bによりアップコンバートして第1,第2の光コム発生器11A,11Bに供給するようにした上記光コム発生部110から出射される低相対位相雑音光コムを参照光と測定光として用いて距離計測を行うことができる。
【0131】
また、上記光コム光源部10,110では、上記変調信号発生部4,114により発生される基準発振器4Rにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期された互いに発振周波数が異なる3以上の整数N種類の変調信号を上記状態切替制御部12のN入力M(Mは正の整数)出力のスイッチ部12Aにより巡回的に切り替えて、互いに変調周期が異なるM種類の変調信号を駆動信号としてM個の光コム発生器によりM種類の光コムを出力させるようにしたが、図10に示す光コム光源部120における状態切替制御部112のように、互いに変調周期が異なるN種類の光コムを発生するN個の光コム発生器11A,11B,・・・により発生されるN種類の光コムからN入力M出力の光スイッチを用いたスイッチ部112Aにより互いに変調周期が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力するように、制御部112Bにより上記N入力M出力の光スイッチを用いたスイッチ部112Aの切替選択動作を制御するともに、上記制御部112Bから切替選択状態を示す状態信号を出力するようにしてもよい。
【0132】
この場合、すべての光コムの変調周期が異なっている必要はなく、一部は同じ変調周期でも波長違いとか、別の切換えにも使うことができる。干渉を取るために変調周期が異なっている同一波長帯の光コムが一組含まれていることは必須であるが、同じ変調周期の組み合わせで別波長帯の光コムが含まれていても機能する。
【0133】
ここでは、N=4、M=2として、この光コム光源部120は、4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dと、基準発振器4Rにより発生される基準周波数信号FREFに位相同期されたN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を発生する4個のPLL発振器4A,4B,4C,4Dを備える変調信号発生部4と、上記4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dにより発生される4種類の光コムから互いに変調周期が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して出力する状態切替制御部112を備える。
【0134】
上記4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dは、上記変調信号発生部4の4個のPLL発振器4A,4B,4C,4Dにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期されたN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4により駆動されることにより、互いに変調周期が異なる4種類の光コムを発生する。
【0135】
上記4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dは、上記変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の周波数に一致する周波数間隔でサイドバンドを生成する外部変調型の物でも良いし、モード間隔が変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の周波数に一致または同期された周波数の間隔となっているモード同期レーザー光源でも良い。
【0136】
そして、上記状態切替制御部112は、上記4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dにより発生される4種類の光コムから互いに変調周期が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して出力する4入力2出力の光スイッチを用いたスイッチ部112Aと、上記4入力2出力の光スイッチを用いたスイッチ部112Aによる光コムの選択動作を制御する制御部112Bを備え、上記制御部112Bにより制御される上記4入力2出力の光スイッチを用いたスイッチ部112Aにより互いに変調周期や周波数が異なる4種類の光コムを巡回的に選択した2種類の光コムを出力するとともに、上記光スイッチを用いたスイッチ部112Aによる光コムの選択状態を示す状態信号を出力する。
【0137】
この光コム光源部120では、光コムを切り替えるので、変調信号発生部4で発生される互いに変調周期が異なる変調信号を切り替える必要がない。
【0138】
ここで、上記光コム距離計測装置100では、上記干渉部20に備えられた参照用光検出器23、測定用光検出器24により参照信号と測定信号を得るようにしたが、上記参照用光検出器23、測定用光検出器24への導光部分を光ファイバにすることにより、図11のブロック図に示す光コム距離計測装置100Aのように、信号処理部30Aに参照用光検出器23、測定用光検出器24を設けるようにしてもよい。
【0139】
この光コム距離計測装置100Aにおいて、干渉部20Aは、信号処理部30Aに設けられた参照用光検出器23、測定用光検出器24により参照信号と測定信号を得るために参照光と測定光の干渉を発生する干渉系として機能し、発生した参照用干渉光と測定用干渉光を信号処理部30Aに設けられた参照用光検出器23と測定用光検出器24に2本の光ファイバ123,124を介して入射させるようになっている。
【0140】
この光コム距離計測装置100Aにおける信号処理部30Aでは、光コム光源部10に内蔵された状態切替制御部12により該光コム光源部10の周波数状態を切り替え、その切替状態を示す状態信号を取り込み、参照用光検出器23と測定用光検出器24により得られる参照信号と測定信号と上記状態信号を同期させて処理することにより、上記参照光が往復した上記基準面25までの基準光路の距離L1と上記測定光が往復した上記測定対象物50までの測定光路の距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当し、上記参照信号と測定信号との時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより、上記距離差の絶対値(L2-L1)を算出する。
【0141】
上記参照用光検出器23、測定用光検出器24の設置位置は任意であり、光コム光源部10に含めるようにしてもい。
【0142】
また、上記光コム距離計測装置100,100Aでは、光コム光源部10に状態切替制御部12が内蔵されているものとしたが、状態切替制御部12の制御部12Bは光コム光源部10に内蔵されている必要はなく、図12のブロック図に示す光コム距離計測装置100Bのように、信号処理部30Bに設置されているものとしてもよい。
【0143】
この光コム距離計測装置100Bは、上記光コム距離計測装置100Aにおける信号処理部30Aに状態切替制御部12の制御部12Bを移動したものであり、信号処理部30Bには、干渉部20Aにおいて発生した参照用干渉光と測定用干渉光が2本の光ファイバ123,124を介して入射される参照用光検出器23と測定用光検出器24が設けられているとともに、状態切替制御部12の制御部12Bが設けられている。なお、直交する射影成分のそれぞれを差動検出する参照用光検出器23と測定用光検出器24を用いる場合には、参照用干渉光と測定用干渉光をそれぞれ直交する2偏光に分離して、それぞれ2本、計4本の光ファイバを介して参照用光検出器23と測定用光検出器24に入射させることになる。
【0144】
この光コム距離計測装置100Bにおいて、状態切替制御部12は、信号処理部30Bに設けられた制御部12Bから光コム光源部10側のスイッチ部12Aの動作制御を行うことにより、光コム光源部10Bの周波数状態を切り替え、信号処理部30Bでは、その切替状態を示す状態信号を取り込み、参照用光検出器23と測定用光検出器24により得られる参照信号と測定信号と上記状態信号を同期させて処理することにより、上記参照光が往復した上記基準面25までの基準光路の距離L1と上記測定光が往復した上記測定対象物50までの測定光路の距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当し、上記参照信号と測定信号との時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより、上記距離差の絶対値(L2-L1)を算出する。
【0145】
上記光コム距離計測装置100A,100Bでは、信号処理部30A,30Bにおいて、上記測定光と参照光を出力する光コム光源部10、10Bにおける上記測定光と参照光の周波数状態を示す状態信号を用いて、上記参照信号と測定信号すなわち干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く、周波数設定の完了と状態の安定が確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換を短時間に確実に行うことができる。
【0146】
なお、上記光コム距離計測装置100,100A,100Bの干渉部20,20A,10Bでは、参照光を通過させる距離L1の基準光路に基準面25を設けるようにしているが、上記基準面25に替えてリトロリフレクタや光ファイバを用いて基準光路の距離L1を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 レーザー光源、2 光分配器、4 変調信号発生部、4R 基準発振器、4A~4E PLL発振器、5A~5F,13A~13D,15A,15B アイソレータ、7,7A,7B 周波数変換器、8A,8B 帯域通過フィルタ、10,10’,10B,110,120 光コム光源部、11A~11D,11A’,11B’ 光コム発生器、12 112 状態切替制御部、12A,112A スイッチ部、12B,112B 制御部、141A,141B,141C,141D,142A,142B,143A,143B,144A,1444B スイッチ回路、20,20A 干渉部、21 全反射鏡、22A 光混合素子、22B 光分離混合素子、23 参照光検出器、24 測定光検出器、25 基準面、26A,26B 1/4波長板、30,20A、30B 信号処理部、71 位相比較器、72 電圧制御型発振器、73 周波数混合器、100,100A,100B 光コム距離計測装置
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図12