(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】直接選択的レーザー線維柱帯形成術の保護
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61F9/008 151
A61F9/008 120E
(21)【出願番号】P 2021516473
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 IB2019059058
(87)【国際公開番号】W WO2020089737
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2018-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515212529
【氏名又は名称】ベルキン ヴィジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】サックス、ザッチャリ
(72)【発明者】
【氏名】レマン-ブルメンタール、ダリア
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-541883(JP,A)
【文献】特表平09-506521(JP,A)
【文献】特表2008-539824(JP,A)
【文献】特表2010-506689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニットであって:
可視凝視光を発光する光源と;
放射線ビームを方向づけるように構成された1つまたは複数のビーム指向要素と;そして
前記光源が前記可視凝視光を発光することの恩恵により、患者の眼が前記光源を凝視する間、1つまたは複数の治療ビームを前記ビーム指向要素に向けて放出して、前記ビーム指向要素が前記1つまたは複数の治療ビームを前記眼
の角膜輪部の近傍を照射させることによって、前記眼に波長が500~850nmの前記1つまたは複数の治療ビームを照射するように構成される放射線源と;
を有する光学ユニットと;
光学フィルタであって、前記ビーム指向要素と前記眼の瞳孔との間に介在
し、
そして前記1つまたは複数の治療ビームが前記角膜輪部の近傍を照射する間に、前記可視凝視光が通過するのは抑制しないが、前記1つまたは複数の治療ビームが前記瞳孔を通って前記眼の中に入るのを抑制する目的で、前記1つまたは複数の治療ビームを減衰させるように構成される、光学フィルタと;
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
眼球安定化構造をさらに備え、前記放射線源は、前記1つまたは複数の治療ビームを前記ビーム指向要素に向けて放出し、前記ビーム指向要素は前記1つまたは複数の治療ビームを前記眼球安定化構造経由で方向づけることによって前記眼を照射するように構成され、前記光学フィルタは前記眼球安定化構造に結合される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記眼球安定化構造の近位端は、前記光学ユニットに結合するように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記光学フィルタが前記眼球安定化構造の遠位端に結合されている、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記光学フィルタを含む接触光学系をさらに備え、前記接触光学系は、前記眼球安定化構造の遠位端に結合され、前記眼に接触するように構成される、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記眼球安定化構造の遠位端は、前記眼に接触するように構成され、前記光学フィルタは、前記眼球安定化構造の内壁に取り付けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記光学フィルタが、前記眼球安定化構造の遠位端から0.5~20mmの間に取り付けられている、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記眼球安定化構造の遠位端が、眼に接触するように構成された接触光学系を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記眼球安定化構造の遠位端が、眼に接触するように構成された接触リングを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記眼球安定化構造の内壁が、前記1つまたは複数の治療ビームを吸収するように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項11】
前記
可視凝視光の波長が350~850nmである、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記光学フィルタは、前記1つまたは複数の治療ビームを吸収することによって前記1つまたは複数の治療ビームの通過を抑制するように構成される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記光学フィルタは、前記1つまたは複数の治療ビームを反射することによって前記治療ビームの通過を抑制するように構成される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記光学フィルタは、前記1つまたは複数の治療ビームの反射を低減するように構成された反射防止表面を備える、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
光学フィルタと;そして
前記光学フィルタを取り囲み、前記1つまたは複数の治療ビームに対して透明な透明部分と;
を有する光学系を追加的に備える、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記光学フィルタは第1の光学フィルタであり、
前記光学系は、前記透明部分を取り囲み、そして前記1つまたは複数の治療ビームの通過を禁止するように構成された、第2の光学フィルタをさらに有する、ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記光学フィルタを含む接触光学系をさらに備え、前記接触光学系は眼に接触するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
接触光学系の厚さが2mm未満である、ことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記接触光学系の直径が10mm未満である、ことを特徴とする請求項17~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記光学ユニットは、前面を有し、前記光学フィルタは前記前面に結合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記前面は出口窓を含み、前記光源は
前記可視凝視光を発光するように構成され、前記ビーム指向要素は、前記出口窓経由で前記1つまたは複数の治療ビームを方向づけるように構成され、前記光学フィルタは前記出口窓を覆っている、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記前面は出口窓を含み、前記光源は
前記可視凝視光を発光するように構成され、前記放射線源は、前記出口窓を通過して前記1つまたは複数の治療ビームを放出するように構成され、前記光学フィルタは前記出口窓内に埋め込まれている、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記前面と前記光学フィルタとの間に延在する
結合要素をさらに備え、前記光学フィルタは、前記
結合要素を介して前記前面に結合される、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記前面は出口窓を含み、 前記光源は
前記可視凝視光を発光するように構成され、前記放射線源は、前記出口窓を通過して前記1つまたは複数の治療ビームを放出するように構成され、前記
結合要素は、前記出口窓と前記光学フィルタとの間に延在する、ことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を治療するための眼科用装置および方法に関する。
【0002】
(関連アプリケーションへの相互参照)
本出願は2018年10月28日に出願され、「DSLT 眼の保護」と題された米国暫定特許出願第62/751,629号(特許文献1)の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
線維柱帯形成術では、放射線源、通常はレーザーが、患者の眼の線維柱帯に1つまたは複数の治療ビームを照射し、眼の眼圧を低下させる。
【0004】
米国特許第4,848,894号(特許文献2)は、透明な光学レンズ材料に埋め込まれたレーザー反射層または吸収層で作られた、またはそのような材料の凸面に層として形成されたコンタクトレンズを記載している。層は、ファブリペロー反射器または薄膜またはホログラフィックに形成された反射または吸収干渉フィルタ、または吸収層であり得る。
【0005】
米国特許第4,966,452号(特許文献3)は、経強膜毛様体光凝固術に関連して使用するためのコンタクトレンズを記載している。レンズは、平面の入口面と、角膜を取り巻く強膜に接触する円錐台形状の出口面を持つ。レンズの中央部分は不透明であり、レーザー照射中に迷光レーザー光が眼の光学部分に入るのを防ぐ。
【0006】
米国特許第6,948,815号(特許文献4)は、有害な放射線から眼を保護するための個別にマークされたコンタクトレンズについて記載している。コンタクトレンズは、事前に選択された1つまたは複数の波長に対して吸収性または反射性になるようにコーティングまたは処理されている。レンズは、レンズが着用されていることを示し、レンズが使用されるべき適切な用途および/またはレンズが保護される波長を示すために、各レンズ上に1つまたは複数の識別領域を有する。第三者および/またはレンズを着用している人が着用したときに見えるはずの識別領域は、虹彩の周りの領域の色付きの帯または影付きの領域などのマーキングで構成されている。マーキングのさまざまな色またはカラーパターンは、レンズがどの波長から保護するかを示す。他の安全機能には、蛍光マーカー、眼への配置と保持、ピックアップまたはリリースを容易にするための追加機能および装置が含まれる場合がある。
【0007】
米国特許第8,004,764号(特許文献5)は、光ビームをフィルタリングするためのフィルタおよび方法を記載している。フィルタの一実施形態は、入射光ビームをフィルタリングするための光学フィルタであり、以下を特徴とする光学的に有効な材料を含む:420nm未満の波長に対して1%未満の光透過率;420nm未満の波長に対して相補的またはほぼ相補的な波長に対する光透過率が、420nm未満の波長の透過率と組み合わされて、約90%の輝度および5%以下の励起純度を有するフィルタリングされた光線を生成する。相補的波長は、約640nmを超える波長、約660nmを超える波長、および/または約540nm~約560nmの波長であり得る。
【0008】
米国特許第9,480,599号(特許文献6)は、様々なオプション機能を備えた眼科用レーザー切除システムを記載しており、いくつかは、眼の非浸透性濾過手術に特に適している。一例では、切除レーザーの集束は、レンズの焦点距離で収束する一対の収束光源に結合された可動レンズを使用する。別の例では、レーザー切除設定は、浸透する強膜組織の層の最適な切除および最小量の熱損傷のために選択される。
【0009】
国際特許出願公開WO/1998/022016(特許文献7)は、走査型レーザー検眼鏡と光凝固装置の組み合わせについて記載している。この装置には、治療用レーザー光源、光学機械式マクスウェル視カップリング、マクスウェル視制御、および治療用ビーム位置のリアルタイム電子レジスタが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国暫定特許出願第62/751,629号
【文献】米国特許第4,848,894号
【文献】米国特許第4,966,452号
【文献】米国特許第6,948,815号
【文献】米国特許第8,004,764号
【文献】米国特許第9,480,599号
【文献】WO/1998/022016
【文献】国際特許出願PCT/IB2019/055664
【発明の概要】
【0011】
本発明の幾つかの実施形態によれば、光学ユニットであって:光源と;1つまたは複数のビーム指向要素と;そして、光源が可視光を発光することの恩恵により、患者の眼が光源を凝視する間、治療ビームをビーム指向要素に向けて放出することによって前記眼に1つまたは複数の治療ビームを照射するように構成される放射線源と; を有する光学ユニットと;光学フィルタであって、ビーム指向要素と眼の瞳孔との間に介在している間、治療ビームの通過を阻害するが、可視光の通過を阻害しないように構成される、光学フィルタと;を有することを特徴とする装置が提供される。
【0012】
幾つかの実施形態では、装置は眼球安定化構造をさらに備え、放射線源は、眼球安定化構造を通過して治療ビームを放出することによって眼を照射するように構成され、光学フィルタは眼球安定化構造に結合される。
【0013】
幾つかの実施形態では、眼球安定化構造の近位端は、光学ユニットに結合するように構成される。
幾つかの実施形態では、光学フィルタが眼球安定化構造の遠位端に結合されている。
幾つかの実施形態では、装置は、光学フィルタを含む接触光学系をさらに備え、接触光学系は、眼球安定化構造の遠位端に結合され、眼に接触するように構成される。
幾つかの実施形態では、眼球安定化構造の遠位端は、眼に接触するように構成され、光学フィルタは、眼球安定化構造の内壁に取り付けられている。
幾つかの実施形態では、光学フィルタが、眼球安定化構造の遠位端から0.5~20mmの間に取り付けられている。
幾つかの実施形態では、眼球安定化構造の遠位端が、眼に接触するように構成された接触光学系を含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、眼球安定化構造の遠位端が、眼に接触するように構成された接触リングを含む。
幾つかの実施形態では、装置は、眼球安定化構造の内壁と光学フィルタとの間に延在する1つまたは複数の長手方向要素をさらに備え、光学フィルタは、長手方向要素を介して内壁に取り付けられる。
幾つかの実施形態では、眼球安定化構造の内壁が、治療ビームを吸収するように構成される。
幾つかの実施形態では、治療ビームの波長が200~11000nmであり、可視光の波長が350~850nmである。
幾つかの実施形態では、光学フィルタは、治療ビームを吸収することによって治療ビームの通過を抑制するように構成される。
【0015】
幾つかの実施形態では、光学フィルタは、治療ビームを反射することによって治療ビームの通過を抑制するように構成される。
幾つかの実施形態では、光学フィルタは、治療ビームの反射を低減するように構成された反射防止表面を備える。
幾つかの実施形態では、装置は、光学フィルタと;そして光学フィルタを取り囲み、治療ビームに対して透明な透明部分と;を有する光学系をさらに備える。
【0016】
幾つかの実施形態では、光学フィルタは第1の光学フィルタであり、光学系は、透明部分を取り囲み、そして治療ビームの通過を禁止するように構成された、第2の光学フィルタをさらに有する。
幾つかの実施形態では、装置は、光学フィルタを含む接触光学系をさらに備え、接触光学系は眼に接触するように構成されている。
幾つかの実施形態では、接触光学系の厚さが2mm未満である。
幾つかの実施形態では、接触光学系の直径が10mm未満である。
幾つかの実施形態では、光学ユニットは、前面を有し、光学フィルタは前面に結合されている。
【0017】
幾つかの実施形態では、前面は出口窓を含み、光源は可視光を発光するように構成され、放射線源は、出口窓を通過して治療ビームを放出するように構成され、光学フィルタは出口窓を覆っている。
幾つかの実施形態では、前面は出口窓を含み、光源は可視光を発光するように構成され、放射線源は、出口窓を通過して治療ビームを放出するように構成され、光学フィルタは出口窓内に埋め込まれている。
【0018】
幾つかの実施形態では、装置は、前面と光学フィルタとの間に延在する長手方向要素をさらに備え、光学フィルタは、長手方向要素を介して前面に結合される。
幾つかの実施形態では、前面は出口窓を含み、 光源は可視光を発光するように構成され、放射線源は、出口窓を通過して治療ビームを放出するように構成され、長手方向要素は、出口窓と光学フィルタとの間に延在する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、さらに患者の眼の画像を取得するように構成されたカメラと;放射線源と;そしてコントローラを有するシステムが提供される。コントローラは、画像内で角膜輪部の外側にある、カメラの視野内の静的領域を特定し、そして、それぞれの標的領域ごとに:標的領域が静的領域内にないことを確認し、そして確認に応じて、放射線源が標的領域を照射するようにさせることにより、眼の1つまたは複数の標的領域を処置する、ように構成される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、さらに光学ユニットを含む装置が提供される。光学ユニットは、可視光を透過するように構成された光源と;1つまたは複数のビーム指向要素と;そして治療ビームをビーム指向要素に向けて放出し、それにより、ビーム指向要素が治療ビームを光路に沿って第1の眼に向けることにより、1つまたは複数の治療ビームを患者の第1の眼に照射するように構成された放射線源と;を有する。装置はさらに、可視光と治療ビームが第1の眼の瞳孔に到達するのを防ぐように構成された光学フィルタを有する。光源は患者の第2の眼に向かって光路から変位され、光源が可視光を発光することの恩恵により、第2の眼が光源を凝視する間、放射線源は、第1の眼を照射するように構成されている。
幾つかの実施形態では、光源が、光路から18~44mm偏位されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願は以下の添付の図面を参照した実施形態の詳細な記載によりより完全に理解されよう:
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成術手順を実行するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成装置の概略図である。
【
図3A-B】本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ側面および正面から見た眼安定化構造の概略図である。
【
図4A-B】本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ側面および正面から見た眼安定化構造の概略図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、光学ユニットに結合された光学フィルタの概略図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、光学ユニットに結合された光学フィルタの概略図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、治療のために眼を方向付けるための技術の概略図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された眼の画像の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(概要)
本発明の実施形態は、眼に対して安全かつ効率的に線維柱帯形成術手順を実行するように構成された、自動化された線維柱帯形成術装置を提供する。線維柱帯形成術装置は、コントローラと、光学ユニットと、を有し、光学ユニットは、放射線源(通常はレーザー)と、カメラと、画像化のための1つまたは複数の照明源と、1つまたは複数のビーム指向要素と、そして光源とを備える。可視光を発光(すなわち、放出または反射)することにより、光源は眼の凝視標的として機能する。眼が光源を凝視している間、コントローラは、カメラからのフィードバックに応答して、ビーム指向要素に対し、放射線源によって放出される放射線のビームを、通常は眼の角膜輪部の近くにある眼の標的領域に向けさせる。
【0026】
本発明の実施形態は、治療ビームに対して不透明であるが、光源によって発光される可視光に対してはそうではない光学フィルタをさらに提供する。光学ユニットと眼の瞳孔との間に介在することにより、光学フィルタは、眼が凝視標的を凝視するのを妨げることなく、漂遊放射線ビームから眼の網膜を保護する。
【0027】
いくつかの実施形態では、光学フィルタは、システムの他の要素によって所定の位置に保持されることなく眼に装着される接触光学系に属する。他の実施形態では、光学フィルタは、光学ユニットと眼との間に延在する中空錐台型構造などの眼安定化構造内またはその端部に取り付けられる。光学フィルタを支持することに加えて、眼安定化構造は追加の機能を実行することができる。例えば、眼安定化構造は、眼球を開いたままにし、眼球を安定させ、および/または誤射された治療ビームを吸収することができる。さらに他の実施形態では、光学フィルタは、光学ユニットの出口窓を覆うか、出口窓内に埋め込まれるか、またはそうでなければ光学ユニットに結合される。
【0028】
いくつかの実施形態では、標的領域の外側にある眼の周辺部分も保護される。この保護は、追加の(物理的な)光学フィルタによって提供される場合がある。代替的または追加的に、この保護は、コントローラが、眼の周辺部分がその中に位置するカメラのFOV内の領域を識別し、次にこの領域で治療ビームが発射されるのを阻止することができるという点で、仮想フィルタによって提供され得る。
【0029】
本明細書は主に線維柱帯形成術に焦点を合わせているが、本明細書に記載の技術は、自動光凝固術、虹彩切開術、角膜手術、カプセル切除術、水晶体除去、または他の関連する眼科手術にも適用可能である。放射線の標的は、小柱網および/または眼の他の適切な部分を含み得る。本発明の実施形態は、緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を治療するために使用することができる。
【0030】
特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、ある光学要素が光を(反射および/または吸収によって)平均的な人間の眼が光を知覚できる最小強度よりも小さい強度に減衰させる場合、その光学要素は、それを透過する可視光に対して「不透明」であると言われることに留意されたい。他のタイプの放射線の場合、その光学要素がInternational Electrotechnical Commission(IEC)60825規格など、関連する規格で定義される、放射線の最大許容露光量(MPE)値よりも小さい強度まで放射線を(反射および/または吸収によって)減衰させる場合、その光学素子は放射線に対して不透明であると言われる。
【0031】
逆に、特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、光学要素が放射線に対して不透明でない場合、光学要素は、放射線に対して「透明」であると言われる。
【0032】
(システムの説明)
本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成術手順を実行するための線維柱帯形成術装置21を含むシステム20の概略図である
図1を最初に参照する。本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成装置21の概略図である
図2をさらに参照する。
【0033】
線維柱帯形成装置21は、光学ユニット30およびコントローラ44を備える。光学ユニット30は、例えば、まとめて「ガルボスキャナ」と呼ばれることができる1つまたは複数のガルボミラー50を含む1つまたは複数のビーム指向要素、および/またはビーム収束器56を備える。光学ユニット30は、放射線源48をさらに備え、放射線源48は、治療ビームをビーム指向要素に向けて放出し、ビームがビーム指向要素によって眼に向けられることにより、1つまたは複数の治療ビーム52で患者22の眼25を照射するように構成される。
【0034】
より具体的には、放射線源48からの各治療ビーム52の放出の前、またはビームが放出されている間、コントローラ44は、ビーム指向要素を眼25上の所望の標的領域に向け、それによりビームは、ビーム指向要素により、標的領域に指向される。例えば、ビームは、ガルボミラー50によってビーム収束器56に向かって偏向され、次いで、ビームはビーム収束器によって偏向され、それによりビームは標的領域に衝突しうる。(各治療ビームは微小でないスポットサイズで眼に衝突するので、本出願では一般に、各ビームが、眼の「点」に衝突するのではなく、その面積がスポットサイズの関数である、眼の「領域」に衝突すると記載する。)したがって、ビームは、ビーム収束器56などのビーム指向要素の最も下流から眼25まで延在する光路92をたどる。(実際には、ビームのそれぞれの経路は、標的領域間の距離が小さいため、互いにわずかに異なるが、この変動が非常に小さいことを考えると、本説明は、すべての治療ビームが従う単一の光路92に関する。)
【0035】
通常、放射線源は、Ekspla(登録商標)NL204-0.5K-SHレーザーなどのレーザーで構成される。レーザーは、減衰器、エネルギー計、および/または機械的シャッターを含むように変更することができる。レーザーに対して代替的または追加的に、放射線源は、他の任意の適切なエミッターを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、治療ビームは可視光を含む。代替的または追加的に、治療ビームは、マイクロ波放射、赤外線放射、X線放射、ガンマ線、または紫外線放射などの非可視放射を含み得る。典型的には、治療ビームの波長は、200~11000nmの間、例えば、500~850nm、例えば、520~540nm、例えば、532nmである。各治療ビーム52は、楕円形(例えば、円形)、正方形、または他の任意の適切な形状を有し得る。
【0037】
光学ユニット30は、カメラ54をさらに備える。
図2に示されるように、カメラ54は、典型的には、少なくともほぼ、光路92とアライメントされている。例えば、光路92と、眼25からカメラまで延びる仮想線との間の角度は、15度未満であり得る。いくつかの実施形態では、カメラは、カメラがビーム収束器を介して光を受け取るように、ビーム収束器56の後ろに配置される。
【0038】
手順の前に、カメラ54は、眼25の少なくとも1つの画像を取得する。画像に基づいて、コントローラ44および/または眼科医または別の医師などのシステムのユーザは、照射される眼の標的領域を画定および/または修正することができる。代替的または追加的に、画像に基づいて、コントローラ44は、
図8を参照して以下でさらに説明するように、1つまたは複数の仮想フィルタを画定することができる。その後、手順中に、カメラ54は、比較的高い周波数で患者の眼の複数の画像を取得することができる。コントローラ44は、これらの画像を処理し、それに応答して、眼の標的領域を照射するように放射線源48およびビーム指向要素を制御することができる。
【0039】
光学ユニット30は、少なくともほぼ光路92とアライメントされた光源66をさらに備える。例えば、光路92と、眼25上の光路92の端部から光源66まで延びる仮想線との間の角度は、10度未満など、20度未満でありうる。光源66は、可視光68を透過することにより、凝視標的64として機能するように構成される。(可視光68は、「凝視ビーム」または「凝視光」としても説明され得ることに留意されたい。)
【0040】
特に、手順の前に、患者22は、眼25が光源66を凝視するように指示される。続いて、手順中に、光源66が可視光68を発光することの恩恵により、眼25は光源を凝視し、それにより眼の視線は、光路92とほぼ一致し(光源が光路とほぼアライメントしているため)、眼球は比較的安定している。眼が光源を凝視している間、放射線源は、治療ビーム52で眼を照射する。光源66はまた、
図8を参照してさらに説明されるように、手順の前に照準ビームが眼を横切って掃引される間、眼の方向付けを助けることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、光源66は、発光ダイオード(LED)などの発光体を含む。他の実施形態では、光源は、発光体から放出された光を反射するように構成された反射器を含む。
【0042】
通常、可視光68の波長は、治療ビームの波長よりも長くても短くてもよく、350~850nmである。例えば、可視光68は、600~700nmの波長を有する赤色であり得るが、治療ビームは、527~537nmの波長を有する緑色であり得る。
【0043】
通常、光学ユニットは光学ベンチを含み、放射線源、ガルボミラー、およびビーム収束器などの光学ユニットに属する前述の光学要素の少なくともいくつかが光学ベンチに結合されている。典型的には、光学ユニットは、治療ビームおよび可視光68が通過する前面33をさらに備える。例えば、光学ユニット30は、光学ベンチを少なくとも部分的に包み、前面33を含むケース31を含み得る(ケース31は、プラスチック、金属、および/または他の任意の適切な材料ででき得る。)あるいは、前面33は、光学ベンチに取り付けられてもよく、または光学ベンチの一体部分であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、前面33は、治療ビームおよび可視光68が通過する開口部58を画定するように形作られている。他の実施形態では、
図5(以下に説明)に示すように、前面は、可視光68および治療ビーム52が出口窓を通過するように、開口部58の代わりに出口窓を備える。出口窓は、プラスチック、ガラス、または他の任意の適切な材料でできていてもよい。
【0045】
典型的には、光学ユニット30は、例えば、白色光または赤外線LEDなどの1つまたは複数のLEDを含む1つまたは複数の照明源60をさらに含む。例えば、光学ユニットは、開口部58を取り囲むLEDのリングを含み得る。そのような実施形態では、コントローラ44は、国際特許出願PCT/IB2019/055664(特許文献8)に記載されているように、照明源60に対し光を断続的に眼にフラッシュさせることができる。この文献は参照により本明細書に組み込まれる。この点滅は、カメラによって実行される画像化を容易にする可能性があり、さらに眼の瞳孔を収縮させるのに役立つ可能性がある。(作図を容易にするために、コントローラ44と照明源60との間の電気的接続は、
図2には明示的に示されていない。)いくつかの実施形態では、照明源60は、
図2に示されるように、前面33に結合される。
【0046】
光学ユニットの位置決めを容易にするために、光学ユニットは、複数のビームエミッタ62(例えば、それぞれのレーザーダイオードを含む)を含み得、これらは、例えば、国際特許出願PCT/IB2019/055564(特許文献8)に記載されるように、眼に複数の三角測量距離測定ビームを照射するように構成される。いくつかの実施形態では、ビームエミッタ62は、
図2に示されるように、前面33に結合される。他の実施形態では、ビームエミッタ62は、光学ベンチに直接結合される。
【0047】
光学ユニット30は、ジョイスティックなどの制御機構36によって制御されるXYZステージユニット32に取り付けられている。システム20のユーザは、眼を治療する前に制御機構36を使用して、(例えば、眼からの光学ユニットの距離を調整することによって)光学ユニットを配置することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、XYZステージユニット32は、ステージユニットの位置決めに続くステージユニットの動きを禁止するように構成されたロック要素を備える。 いくつかの実施形態では、XYZステージユニット32は、1つまたは複数のモーター34を含み、制御機構36は、インターフェース回路46に接続される。ユーザが制御機構を操作すると、インターフェース回路46は、この活動を適切な電子信号に変換し、これらの信号を出力する。信号に応答して、コントローラは、XYZステージユニットのモーターを制御する。
【0049】
他の実施形態では、XYZステージユニット32は、制御機構を操作することによって手動で制御される。そのような実施形態では、XYZステージユニットは、モーター34の代わりにギアのセットを含み得る。
【0050】
システム20は、額レスト26および顎レスト28を含むヘッドレスト24をさらに含む。線維柱帯形成術手順の間、患者22は、顎を顎レスト28上に置いている間、額を額レスト26に押し付ける。いくつかの実施形態では、患者の頭を後ろから固定し、したがって患者の頭をヘッドレストに押し付けたままにするように構成された固定ストラップ27を備える。
【0051】
いくつかの実施形態では、
図1に示されるように、ヘッドレスト24およびXYZステージユニット32は両方とも、トレイまたは卓上などの表面38の上に取り付けられる。(いくつかのそのような実施形態では、ヘッドレストはL字型であり、表面38の上面ではなく側面に取り付けられる。)他の実施形態では、XYZステージユニットは表面38に取り付けられ、ヘッドレストはXYZステージユニットに取り付けられる。
【0052】
通常、
図1に示すように、患者の眼を照射している間、光学ユニットは、眼に向かって斜め上向きに向けられ、一方、眼は、光路92が斜めになるように、光学ユニットに向かって斜め下向きに注視する。例えば、光路は、水平に対して5度から20度の間の角度θに向けられ得る。有利なことに、この向きは、患者の上眼瞼および関連する解剖学的構造による患者の眼の閉塞を低減する。
【0053】
いくつかの実施形態では、
図1に示されるように、光路の斜め方向は、XYZステージユニットに取り付けられた楔40に取り付けられた光学ユニットによって達成される。つまり、光学ユニットは楔40を介してXYZステージユニットに取り付けられる(楔40は
図2から省略されている)。
【0054】
システム20は、カメラによって取得された眼の画像を表示するように構成されたモニタ42をさらに備える。モニタ42は、光学ユニット30に取り付けられるか、または装置21の隣の表面38上などの他の適切な場所に配置され得る。いくつかの実施形態では、モニタ42はタッチスクリーンを含み、ユーザはタッチスクリーンを介してシステムにコマンドを入力する。代替的または追加的に、システム20は、ユーザによって使用され得る、キーボードまたはマウスなどの他の任意の適切な入力装置を含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、モニタ42は、有線または無線通信インターフェースを介してコントローラ44に直接接続されている。他の実施形態では、モニタ42は、標準的なデスクトップコンピュータに属するプロセッサなどの外部プロセッサを介してコントローラ44に接続されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、
図2に示されるように、コントローラ44は、XYZステージユニット32内に配置される。他の実施形態では、コントローラ44は、XYZステージユニットの外部に配置される。代替的または追加的に、コントローラは、本明細書に記載の機能の少なくともいくつかを別の外部プロセッサと協調して実行することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明するコントローラ44の機能の少なくともいくつかは、例えば、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェアに実装される。代替的または追加的に、コントローラ44は、ソフトウェアおよび/またはファームウェアコードを実行することによって、本明細書に記載される機能の少なくともいくつかを実行することができる。例えば、コントローラ44は、中央処理装置(CPU)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を備え得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコードおよび/またはデータは、CPUによる実行および処理のためにRAMにロードされ得る。プログラムコードおよび/またはデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形式でコントローラにダウンロードされ得る。代替的または追加的に、プログラムコードおよび/またはデータは、磁気、光学、または電子メモリなどの非一過性有形媒体に提供および/または格納され得る。そのようなプログラムコードおよび/またはデータは、コントローラに提供されると、本明細書に記載のタスクを実行するように構成された機械または専用コンピュータを生成する。いくつかの実施形態では、コントローラは、Varisite(登録商標)DART-MX8Mなどのシステムオンモジュール(SOM)を含む。
【0058】
(光学フィルタ)
図2に示されるように、線維柱帯形成術装置21は、治療ビームに対して不透明であるが可視光68に対しては不透明ではない光学フィルタ70をさらに備える。(いくつかの実施形態では、光学フィルタは、照明源60によって放出される光および/またはビームエミッタ62によって放出される光に対しても透明である。)光学フィルタ70は、ビーム指向要素と眼25の瞳孔との間に介在する間、治療ビームの通過を阻害するが、可視光68の通過を阻害しないように構成される。(説明を容易にするために、この介在する行為は、瞳孔を「覆う」と呼ばれる。)したがって、光学フィルタは、眼が凝視標的64を凝視することを可能にしながら、眼の網膜を保護する。通常光学フィルタは、楕円形、例えば円形である。光学フィルタは1~6、または6を超える光学密度(OD)で治療ビームを減衰させることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、光学フィルタ70は、治療ビームを吸収することによって治療ビームの通過を阻害する。例えば、光学フィルタ70は、吸収性プラスチックおよび/または吸収性ガラス、例えば、ThorlabsのLG14レーザー安全眼鏡またはLaser Safety Industriesの35-235レーザー安全眼鏡で使用される材料を含み得る。
【0060】
そのような実施形態では、光学フィルタは、治療ビームの反射を低減するように構成された反射防止表面を含み得る。例えば、光学フィルタは、それからの反射を低減するために、エッチングされた(例えば、サブ波長の表面テクスチャーが付けられた)またはコーティングされた(例えば、誘電体コーティングで)表面を有する吸収性材料を含み得る。(前述のコーティングは、単層または複数の層を含み得る。)いくつかの実施形態では、光学フィルタの両方の表面は反射防止である。光学ユニットに面する前面の反射防止面は、システムのユーザを一次反射から保護し、背面の反射防止面は、二次反射から眼を保護する。他の実施形態では、前面などの1つの表面のみが反射防止である。
【0061】
治療ビームを吸収する代わりに、またはそれに加えて、光学フィルタは、治療ビームを反射することによって治療ビームの通過を阻害することができる。例えば、光学フィルタは、薄膜または広帯域反射コーティングでコーティングされた一片の透明材料(例えば、プラスチックまたはガラスなど)を含み得る。そのようなコーティングは、光学ユニットに面する材料片の前面、および/または眼に面する背面に適用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、線維柱帯形成術装置は、光学フィルタを含み、眼に接触するように構成された接触光学系72をさらに含む。(通常、接触光学系72は楕円形、例えば円形である。)手順の間、接触光学系72は眼25に接触し、光学フィルタ70が眼の瞳孔を覆う。(特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、「接触」という用語は、光学的結合流体またはゲルを介した接触を含み得ることに留意されたい。)典型的には、接触光学系は、眼25の眼球の形状に一致するように湾曲している。いくつかの実施形態では、接触光学系の厚さは2mm未満であり、その結果、接触光学系は、所定の位置に保持されることなく眼内で着用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、接触光学系72は、光学フィルタを取り囲み、治療ビームおよび可視光68に対して透明である透明部分74と共に光学フィルタを備える。(典型的には、透明部分74は環状楕円形、例えば環状円形である。)そのような実施形態では、接触光学系の直径d1は、典型的には12~17mmであり、光学フィルタの直径d2は、典型的には10mm未満である。手順の間、光学フィルタ70は、眼の瞳孔(および、典型的には、瞳孔を取り囲む角膜の少なくとも一部)を覆い、一方、透明な部分74は、角膜輪部の標的近傍を覆う。したがって、輪部の近くは、治療ビームによって照射され得、また、カメラ54によって画像化され得る。
【0064】
例えば、接触光学系72は、コーティングされていない周辺部分とともに、光学フィルタを構成する反射コーティングでコーティングされた中央部分を有する透明光学系を含み得る。あるいは、光学フィルタが吸収性材料を含む実施形態の場合、光学フィルタは、透明な光学部品の中心に埋め込まれ得る。そのような埋め込みは、拡散接合、溶接、はんだ付け、または接着剤を使用して実行することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、接触光学系は、
図4A-Bを参照して以下に記載されるように透明部分を取り囲み、それを通る治療ビームの通過を阻害する別の光学フィルタをさらに含む。
【0066】
他の実施形態では、接触光学系は、透明部分74を含まない光学フィルタを含む。そのような実施形態では、直径d1(透明部分74がないために直径d2に等しい)は、典型的には10mm未満であり、その結果、手順中、眼の角膜輪部および/または強膜が露出する。矯正コンタクトレンズは、通常、着用者を不快にさせないように大きな直径を有するが、本発明者らは、特に接触光学系が眼に配置される前に麻酔点眼薬が眼に適用される場合、接触光学系72は、そのサイズが小さいにもかかわらず、患者を不快感させる可能性が低いことを認識した。
【0067】
いくつかの実施形態では、線維柱帯形成術装置は、眼球安定化構造76をさらに含み、それを本明細書に記載の様々なタイプの放射線が通過する。典型的には、眼球安定化構造76の長さは10~70mmの間である。
【0068】
そのような実施形態では、光学フィルタ70は、典型的には眼球安定化構造76に結合される。例えば、
図2に示されるように、接触光学系72は、眼球安定化構造の遠位端に結合され、それにより光学フィルタを含む接触光学系によって光学フィルタ70が眼球安定化構造76の遠位端に結合される。(そのような実施形態では、接触光学部品の厚さは、典型的には2mmよりも大きい;例えば、厚さは3~20mmの間であり得る。)例えば、接触光学部品の端部は、ネジなどの機械的取り付け機構、および/または任意の適切な接着剤を使用して眼球安定化構造の遠位端に結合される。あるいは、光学フィルタ70は、
図3A-Bおよび
図4A-Bを参照して以下でさらに説明するように、他の方法で眼球安定化構造76に結合されうる。
【0069】
通常、眼球安定化構造76は中空であるため、本明細書に記載の放射線は眼球安定化構造内の空気を通過する。例えば、眼球安定化構造76は、錐台形状または円筒形の管を含み得、これは、金属、ガラス、または任意の他の適切な材料から作製され得る。いくつかのそのような実施形態では、眼球安定化構造は連続壁を含む。他のそのような実施形態では、眼球安定化構造76は、1つまたは複数の開口部を画定するように形作られている。例えば、眼球安定化構造76は、ワイヤメッシュなどのワイヤ構造を含み得る。
図8を参照して以下でさらに説明するように、そのような実施形態の利点は、ユーザが開口部を通して眼を見ることができることである。
【0070】
他の実施形態では、眼球安定化構造76は、放射線が材料を通過するように、錐台形状または円筒形の透明な材料片(例えば、ガラス)を含む。
【0071】
眼球安定化構造76は、典型的には、光学フィルタ70を保持することに代替的または追加的に、いくつかの利点を提供する。例えば、
図1に示されるように、眼球安定化構造76の遠位端は、眼25のまぶたを引っ込めることができる。追加的に眼球安定化構造76の遠位端は眼球を安定させる、つまり、眼の動きを抑制する。さらに、眼球安定化構造76は、光学ユニットを患者から正しい距離に配置することを容易にし得る。さらに、眼球安定化構造76の内面および/または外面は、誤って狙われた任意の治療ビームまたは散乱光を吸収し、および/または外光がカメラに干渉するのを遮断するように構成され得る。例えば、眼球安定化構造の内面および/または外面は、黒色の平らな塗料、黒色の植毛紙、またはベンタブラックを含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、
図1~2に示されるように、眼球安定化構造の近位端は、例えばばねを介して光学ユニットに結合するように構成される。そのような実施形態では、線維柱帯形成術装置は、眼球安定化構造76に結合され、眼球安定化構造に加えられた圧力を測定するように構成された圧力センサをさらに含み得る。圧力測定に基づいて、ユーザは、眼に加えられる圧力に等しい眼球安定化構造に加えられる圧力が、患者を傷つけずに眼を安定させるのに適した所定の範囲内にあるように光学ユニットを配置することができる。他の実施形態では、眼球安定化構造は光学ユニットに結合されていないが、むしろ、手順中にシステム20のユーザによって保持されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、眼球安定化構造76は使い捨てであり、異なるそれぞれの眼球安定化構造が各患者に使用される。
【0074】
上記のように、光学ユニットは、開口部58の代わりに出口窓を含み得る。そのような実施形態では、
図5を参照して以下でさらに説明するように、光学フィルタは、出口窓に重なるか、またはその中に埋め込まれ得る。
【0075】
図8を参照して以下でさらに説明するように、手順中に、コントローラ44は、眼の画像を処理して、各標的領域の位置を計算することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、各画像内の接触光学系72を識別し、接触光学系が眼に対して正しい位置にあることを検証する。選択肢として、コントローラはまた、接触光学系の位置を参照して標的領域の位置を計算することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、接触光学系の識別を容易にするために、接触光学系は、カメラが敏感である波長に対して不透明である。例えば、凝視光の波長が600~700nmの間である実施形態の場合、カメラは600nm未満の波長にのみ敏感であり得、接触光学系は600nm未満の波長に対して不透明であり得る。
【0077】
他の実施形態では、コントローラは、どの画像でも接触光学系を識別しない。
【0078】
いくつかの実施形態では、特に眼球安定化構造76が使用されていない場合、指、検鏡、または別のツールを使用して、眼25のまぶたの一方または両方を引っ込めることができる。
【0079】
図2に示される線維柱帯形成術装置21の構成は、例としてのみ提供されることが強調される。さらに、
図2に示される構成要素に代替的または追加的に、線維柱帯形成術装置21は、任意の適切な構成要素を含み得る。
【0080】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ側面および正面から見た眼球安定化構造76の概略図である
図3A~Bを参照する。さらに、
図1および
図2を参照する。さらに本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ側面および正面から見た眼球安定化構造76の概略図でもある、
図4A~Bを参照する。
【0081】
いくつかの実施形態では、光学フィルタ70は、眼球安定化構造76の遠位端の近くに配置され、光学フィルタではなく、眼球安定化構造の遠位端が眼に接触するようになっている。例えば、
図3Aおよび4Aに示されるように、光学フィルタ70は、眼球安定化構造76の内壁80に、例えば、眼球安定化構造の遠位端から0.5~20mmの距離D0で取り付けられ得る。そのような実施形態では、光学フィルタ(
図2)の直径d2は、距離D0に適合し、その結果、光学フィルタは、眼の標的領域をカバーすることなく瞳孔をカバーする。つまり、D0が小さい場合、d2は大きくなり、その逆も同様である。
【0082】
いくつかの実施形態では、
図3A~Bに示されるように、光学フィルタは、内壁と光学フィルタとの間に延在する堅いワイヤまたは支柱などの1つまたは複数の長手方向要素82を介して内壁80に取り付けられる。
【0083】
他の実施形態では、
図4A~Bに示されるように、線維柱帯形成術装置は、透明部分74と共に光学フィルタ70を含む光学系84を含む。そのような実施形態では、光学系84の端部は、ねじなどの機械的取り付け機構および/または任意の適切な接着剤を使用して内壁80に結合され得る。(光学系84は眼の形状に一致する必要がないので、光学系84は通常湾曲していない。)
【0084】
いくつかの実施形態では、光学系84は、透明部分74を取り囲み、治療ビームの通過を阻害するように構成される別の光学フィルタ86をさらに含む。(典型的には、光学フィルタ86は、環状楕円形、例えば、環状円形である。)例えば、光学フィルタ86は、吸収材料および/または薄膜反射コーティングを含み得、その結果、光学フィルタ86は、治療ビームの通過を阻害するように構成される。典型的には、光学フィルタ86は、光学フィルタ70と同じ材料を含み、および/または光学フィルタ70と同じ方法でエッチングされる。
【0085】
光学フィルタが眼球安定化構造の遠位端の近くに配置される実施形態の場合、眼球安定化構造の遠位端は、眼に接触することによって眼を安定させるのを助けるように構成された接触光学系78を含み得る。典型的には、接触光学系78、または少なくとも角膜輪部の治療された近傍を覆う接触光学系の部分は、治療ビームおよび可視光に対して透明である。典型的には、接触光学系78の直径は、12~17mmの間である。(
図3Bおよび4Bのそれぞれにおける眼球安定化構造の図は、接触光学系78を通して見た図に対応することに留意されたい。)
【0086】
いくつかの実施形態では、接触光学系78は、開口部を画定するように形作られ、線維柱帯形成術装置は、(i)ポンプなどの吸引適用装置、および(ii)近位端が吸引適用装置に接続され、そして遠位端が開口部を通過するチューブ、をさらに備える。そのような実施形態では、吸引適用装置は、管を通して吸引力を適用することができ、したがって、接触光学系が眼球の安定を助けうる。
【0087】
接触光学系78に代替的または追加的に、眼球安定化構造の遠位端は、眼に接触することによって眼球を安定させるのを助けるように構成された接触リングを含み得る。典型的には、接触リングは、角膜輪部の外側で、そして角膜輪部から十分に離れて(例えば、少なくとも2mmから)眼に接触し、その結果、治療ビームによって標的とされる眼の部分(典型的には、角膜輪部および/または強膜の部分を含む)は、治療ビームとカメラに曝露される。例えば、接触リングの直径は、14~18mmの間であり得る。いくつかの実施形態では、接触リングは、連続的に眼に接触するのではなく、むしろ、いくつかの(例えば、3~10の間の)接触点にわたってのみ接触する。
【0088】
いくつかの実施形態では、眼球の安定化を容易にするために、接触光学系78について上で説明したように、吸引が接触リングを通して適用されうる。眼球を安定させることに加えて、接触リングは眼のまぶたを引っ込めることができる。
【0089】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、光学ユニット30に結合された光学フィルタ70の概略図である
図5~6を参照する。
【0090】
いくつかの実施形態では、光学フィルタ70は、光学ユニットに結合されている。
【0091】
例えば、
図5の光学ユニットの正面図に示されるように、光学フィルタは、前面33に属する出口窓90に重なるか、またはその中に埋め込まれ得る。例えば、光学フィルタは、出口窓90をコーティングする薄膜反射コーティングを含む。(混乱を避けるために、
図5に示される光学ユニットの正面図は、手順中に患者によって通常見られる図ではないことに留意されたい。後者の図では、光学フィルタ70は、通常、光学フィルタが患者の瞳孔全体をカバーすることを前提とすると、患者の視野を満たす。)
【0092】
別の例として、
図6に示されるように、剛性ワイヤまたは支柱などの長手方向要素88が、前面と光学フィルタとの間に延在することができ、光学フィルタは、長手方向要素を介して前面に結合することができる。言い換えれば、長手方向要素88の近位端は、(例えば、出口窓90を出るために)前面33に結合され得、長手方向要素の遠位端は、光学フィルタに結合され得る。(眼球安定化構造76(
図1)が使用される実施形態では、長手方向要素88は、通常、眼球安定化構造を通過する。)典型的には、長手方向要素は、光路92に平行である。
【0093】
通常、光学ユニットの前面と光学フィルタとの間の距離は、一般に長手方向要素88の長さに等しいが、10~50mmの間であり、および/または光学フィルタと眼との間の距離は、0.1~20mmである。
【0094】
さらに別の代替では、光学フィルタは、光学ユニットに属する光学ベンチに結合され得る。例えば、光学フィルタは、ビーム収束器56と開口部58との間など、ビーム指向要素の最下流より下流の光学ベンチに結合することができ、それにより光学フィルタがビーム指向要素の最下流と眼の瞳孔の間に介在する。
【0095】
(代替実施形態)
代替の実施形態では、光学フィルタ70は、治療ビームおよび凝視光、すなわち、光源66によって送られる可視光、の両方に対して不透明である(
図2)。例えば、光学フィルタは、金属またはセラミックディスクを含み得る。そのような実施形態では、光学フィルタは、可視光および治療ビームの両方が眼25の瞳孔に到達するのを阻害するが、それにもかかわらず、眼25は、すぐ下に記載されるように、治療のために配向され得る。したがって、光学フィルタは、手順の安全性および有効性を損なうことなく、より安価かつ容易に製造することができる。
【0096】
例えば、眼25が光源を凝視することを可能にするために、光源は、光学フィルタに平行または下流の光学ベンチに結合され得る。例えば、光学フィルタおよび光源はそれぞれ、ビーム指向要素の最も下流の要素と開口部58との間の光学ベンチに結合され得、その結果、(i)光学フィルタは、ビーム指向要素の最も下流と眼の瞳孔の間に介在し、そして(ii)光源66は、光路92の隣に、光学フィルタと平行にまたは光学フィルタから下流に、配置される。あるいは、
図2のように、光源を光学フィルタの後ろに配置することもできる。しかしながら、光学ベンチに結合された1つまたは複数の反射器は、開口部58を通して凝視光を反射することができ、その結果、凝視光は、光学フィルタを通過する必要なしに眼25に到達することができる。
【0097】
あるいは、眼25が光学フィルタを通して凝視光を見ることができない実施形態について、眼25は、患者の処置されない眼を光源66に凝視させることによって指向され得る。そのような実施形態では、手順の前に、患者は、処置されない眼を光源に向かって凝視するように指示される。続いて、可視光を発光する光源の恩恵により、処置されない眼は光源を凝視し、それにより眼25は、処置されない眼と連動して移動することにより、ほぼ光路92に沿って注視するようになる。従って、処置されない眼が凝視標的を凝視する間に、処置される眼は治療ビームを照射されうる。
【0098】
これに関して、本発明のいくつかの実施形態による、治療のために眼25を配向するための代替技術の概略図である
図7を参照する。(
図7は、光学ユニット30および患者22の概略俯瞰図を示す。)
【0099】
いくつかの実施形態では、光源の位置は調整可能である。例えば、光源は、光路92からの光源の距離が可変であるように、スライダーに取り付けられ得る。そのような実施形態では、患者の処置されない眼23を光源に凝視させることによって眼25の配向を容易にするために、光源の位置は、患者の眼が光源に収束できる程度に応じて変更される。
【0100】
例えば、眼が光源に収束することができる若い患者などの患者の場合、光源は、
図2を参照して上で説明したように、少なくともほぼ光路92とアライメントされ得る。処置されない眼23が、第1の視線93に沿って光源を凝視する時に、眼25は、光路92とほぼ一致する第2の視線95に沿って光源に向かって注視する。
【0101】
他の患者、特に患者と光源の間の距離が比較的小さいために眼が光源に収束できない高齢の患者の場合、光源は、光路から処置されない眼に向かって、通常は患者の瞳孔間軸に平行な軸に沿って変位する可能性がある。例えば、光源は、患者の瞳孔間距離にほぼ等しい、光路からの距離D1に配置され得る。したがって、例えば、D1は45~80mmの間であり得る。手順の間、処置されない眼は、第2の視線95が光路92とほぼ一致するように、代替の第1の視線93´に沿って光源を凝視する。
【0102】
他の実施形態では、光源の単一の位置がすべての患者に使用される。例えば、光源は、光路から処置されない眼に向かって、典型的には患者の瞳孔間軸に平行な軸に沿って、適切な患者集団の瞳孔間距離の中央値または平均の30%~70%などよりも短い距離だけ変位し得る。例えば、平均瞳孔間距離が62mmであると仮定すると、光源は、光路から18~44mmの間変位し得る。有利には、この位置は、患者の眼が光源に収束する程度に関係なく、第2の視線95が光路92と十分に一致するのを助けることができる。
【0103】
(治療中の眼の保護)
ここで、本発明のいくつかの実施形態に従って処理される眼25の画像94の概略図である
図8を参照する。
【0104】
手順の前に、カメラは画像94を取得する。画像に基づいて、ユーザは、照射される眼の1つまたは複数の標的領域110を画定する。典型的には、国際特許出願PCT /IB2019/055664(特許文献8)に記載されているように、標的領域110は、モニタ42に表示されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)96を介したユーザからの入力に基づいて半自動的に画定される。標的領域は、眼の角膜輪部98の近く(例えば、2mm以内)に位置する。例えば、各標的領域は、角膜輪部98と重複し得る。
【0105】
通常、標的領域の画定に従って、コントローラは、放射線源48(
図2)に標的領域を横切って照準ビームを掃引させることによって、模擬線維柱帯形成術を実行する。あるいは、照準ビームは、放射線源48と同一直線上にある低出力レーザーなどの追加の放射線源によって放出され得る。(通常、照準ビームは、少なくとも照準のエネルギーが治療ビームとは異なる。この掃引が実行されている間、カメラ54(
図2)は、比較的高い周波数で眼の画像を取得し、画像は、ユーザが標的領域を検証できるように、モニタ42に表示される。代替的、または追加的に、眼球安定化構造76(
図1)が連続壁を有さない実施形態の場合、ユーザは、照準ビームが眼球安定化構造の開口部を通って、眼に衝突するときに照準ビームを見ることができる。
【0106】
標的領域の検証に続いて、ユーザは、通常、GUI96を介して適切な入力を入力することによって手順を開始する。続いて、
図1を参照して上記したように、眼の標的領域が放射線源48によって照射される。すなわち、放射線源は、それぞれの治療ビームを標的領域に向かって発射する。
【0107】
いくつかの実施形態では、手順中に、カメラは、比較的高い周波数(例えば、40Hzまたは50Hzを超える周波数)で眼の画像を取得する。画像に基づいて、コントローラ44は、画像処理ソフトウェアを実行することによって、例えば、各画像の角膜輪部の中心を識別することによって、眼球の動きを追跡する。モーショントラッキングに基づいて、コントローラは、各標的領域を照射する前に、カメラのFOV内の標的領域を特定し、治療ビームが標的領域に衝突するようにビーム指向要素を制御する。他の実施形態では、眼球安定化構造は、高周波運動追跡の必要性を取り除くように、眼球を十分に安定化させることができる。そのような実施形態では、手順中に、カメラは眼の画像を取得することができ、コントローラは、より低い周波数で眼の動きをチェックすることができる。あるいは、画像取得およびモーショントラッキングを完全に省略してもよい。同様に、少数の治療ビームのみが発射される場合、高周波モーショントラッキングは省略される場合がある。例えば、放射線源は、例えば、楕円または弧の形をした単一の治療ビームを放出することができ、それは、すべての標的領域を同時に照射する。
【0108】
いずれにせよ、高周波モーショントラッキングが実行されるかどうかに関係なく、本発明の実施形態は、追加の予防策として、角膜輪部から離れすぎている(ありそうもない)誤った照準の治療ビームから眼を保護する。そのような保護は、上記で詳細に説明された光学フィルタ70を使用して達成され得る。特に、光学フィルタ70は、眼の瞳孔104を覆うことによって眼の網膜を保護することができる。
図2を参照して上で説明したように、光学フィルタ70はまた、瞳孔を取り囲む角膜108の少なくとも一部を覆い、したがって角膜108を保護し得る。代替的または追加的に、(4A~Bを参照して上で説明した)光学系84に属する光学フィルタ86などの周辺光学フィルタは、強膜106を覆うことによって眼の強膜106を保護することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、光学フィルタは、カメラに対して不透明である(すなわち、カメラが敏感である周波数に対して)。そのような実施形態では、コントローラは、カメラによって取得された画像内の光学フィルタを識別し得、さらに、例えば、
図2を参照して上記したように、光学フィルタが瞳孔を覆っていることを検証し得る。他の実施形態では、光学フィルタはカメラに対して透過的である。(
図8は、光学フィルタがカメラに対して透明であると想定している;しかし理解を容易にするため、光学フィルタの端部を
図8に示す。)
【0110】
いくつかの実施形態では、光学フィルタを使用する代わりにまたはそれに加えて、眼は、コントローラによって実行されるソフトウェアおよび/またはファームウェアに実装された仮想フィルタを使用して保護される。特に、任意の治療ビームの発射の前に、コントローラ44(
図1)は、カメラ54に画像94を取得させる。画像94の取得に続いて、コントローラは、画像に基づいて、眼の非標的部分を含むカメラのFOV内で1つまたは複数の静止領域を識別する。続いて、眼の各標的領域の照射の前に(すなわち、標的領域に向かって治療ビームを発射する前に)、コントローラは、標的領域がいずれの静的領域内にもないことを確認する。標的領域がいずれの静的領域内にもないことを確認することに応答して、コントローラは、放射線源に標的領域を照射させる。それ以外の場合、治療ビームは発射されない。さらに、いくつかの実施形態では、コントローラは、放射線源が非アクティブである間でさえ、ビーム指向要素が静的領域のいずれかに向けられることを禁止する。
【0111】
たとえば、国際特許出願PCT/IB2019/055564(特許文献8)に記載されているように、画像94に基づいて、コントローラは、画像内の瞳孔104を含む中央の静的領域を識別し得る。続いて、コントローラは、放射線源が中央の静的領域に向かって治療ビームを発射することを禁止することができる。したがって、中央の静的領域は、光学フィルタ70が使用されない場合に眼の網膜を保護するか、または光学フィルタによって提供されるものに追加の保護を提供することができる。
【0112】
代替的または追加的に、コントローラは、画像において、眼の角膜輪部98の外側にある周辺静的領域102を識別し得る。周辺静的領域102は、周辺光学フィルタが使用されない場合に強膜106を保護するか、または周辺光学フィルタによって提供されるものに追加の保護を提供することができる。
図8に示されるように、周辺静的領域は、他の近くの組織とともに、眼のまぶたをさらに保護し得る。
【0113】
通常、周辺静止領域は、楕円形の(例えば、円形)境界100の外側にあるカメラのFOVの部分を含み、これは、画像94において、角膜輪部から1~5mmの間の距離で角膜輪部98の外側に位置し得る。
【0114】
静的領域のそれぞれは、カメラのFOVで定義されているため「静的」であり、検出された眼の動きに応答しても、静的領域の位置はコントローラによって調整されないことが強調される。したがって、コントローラによって実行されるモーショントラッキングで(ありそうもない)エラーが発生した場合でも、眼は保護される。
【0115】
本発明は、本明細書で特に示され、説明されたものに限定されないことは当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組合せおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだ当業者に想起される、先行技術には無い、その変形および修正を含む。