(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】抜止め具及び吊車ユニット
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E05D15/06 123
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2022031636
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2023-10-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】坂村 光一
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299261(JP,A)
【文献】特開平08-021145(JP,A)
【文献】実開昭49-098126(JP,U)
【文献】特開2011-174264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊車の調整ネジに装着して当該調整ネジの脱落を防止する抜止め具において、
平板状のベース体に調整ネジが収まる二以上の嵌入部が間隔をあけて設けられ、
前記二以上の嵌入部のうち少なくとも一つの嵌入部は弾性変形可能な爪部材の間に形成された、
ことを特徴とする抜止め具。
【請求項2】
請求項1記載の抜止め具において、
嵌入部はベース体の端面に開口するガイド通路と、当該ガイド通路の開口側と反対側の端部に設けられた収まり部を備えた、
ことを特徴とする抜止め具。
【請求項3】
請求項2記載の抜止め具において、
ガイド通路と収まり部のつなぎ部分に各調整ネジの首元の外径よりも幅の狭い幅狭部がけられた、
ことを特徴とする抜止め具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の抜止め具において、
隣接する爪部材の間に切欠き部が設けられた、
ことを特徴とする抜止め具。
【請求項5】
吊車と当該吊車に連結されたケースを備えた吊車ユニットにおいて、
前記ケース内に、軸部を有する二以上の位置調整具が設けられ、
前記二以上の位置調整具の軸部に請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の抜止め具が設けられた、
ことを特徴とする吊車ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊車の調整ネジに装着して調整ネジの脱落を防止する抜止め具と、当該抜止め具を備えた吊車ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
引戸の上部や下部にはいわゆる吊車が実装される。従来、引戸に実装される吊車として、引戸の位置を調整するための調整ネジを備えたものが知られている(特許文献1)。調整ネジは、吊車を引戸に装着した際に木口面から操作できるように、頭部が木口面に露出するように構成されている。
【0003】
前記特許文献1の吊車のように調整ネジを備えた吊車では、調整ネジの不用意な脱落を防止するため、各調整ネジの首元にE型止め輪をはじめとする各種の抜止め具が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この種の吊車の中には、引戸の高さ方向の位置を調整する高さ方向調整ネジと引戸の左右方向の位置を調整する左右方向調整ネジのように複数の調整ネジを備えたものがあり、この場合には、調整ネジの数だけ抜止め具を装着しなければならないという面倒があった。
【0006】
また、抜止め具の種類によっては、調整ネジの首元を小径にするために追加工をしなければならないという面倒があることに加え、調整ネジの首元を小径にした場合には、首元の部分の強度が他の部分に劣るため、当該小径部分から破損若しくは折損しやすくなるという難点もある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、調整ネジ毎に抜止め具を装着する必要がなく、調整ネジへの追加工も不要な抜止め具と、当該抜止め具を備えた吊車ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[抜止め具]
本発明の抜止め具は、吊車の調整ネジに装着して調整ネジの脱落を防止するものであって、平板状のベース体に二以上の嵌入部が間隔をあけて設けられ、二以上の嵌入部のうち少なくとも一つの嵌入部が弾性変形可能な爪部材の間に形成されたものである。
【0009】
[吊車ユニット]
本発明の吊車ユニットは、吊車と当該吊車に連結されたケースを備えたものであって、ケース内に軸部を有する二以上の位置調整具が設けられ、当該二以上の位置調整具の軸部に本発明の抜止め具が設けられたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抜止め具は、平板状のベース体に二以上の嵌入部が設けられているため、調整ネジ毎に装着する必要がなく、少なくとも一つの嵌入部を構成する爪部材が弾性変形可能なものであるため、調整ネジの首元を小径に追加工しなくても押し込むだけで調整ネジの首元に装着することができる。本発明の抜止め具を備えた本発明の吊車ユニットにも同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】(a)は跳ね上がり防止具の詳細説明図、(b)は跳ね上がり防止具の正面図。
【
図5】(a)は当接ブロックが下がった状態の断面図、(b)は当接ブロックが上がった状態の断面図。
【
図6】(a)は当接ブロックの当接位置の説明図、(b)は引戸に装備したケースの端面側の説明図。
【
図7】(a)は抜止め具の一例を示す斜視図、(b)は(a)の抜止め具の正面図。
【
図8】(a)は調整ネジが収まり部に収まる前の状態の説明図、(b)は調整ネジが収まり部に収まった状態の説明図。
【
図9】(a)は前面カバー、ケース及びケース保持具の連結状態の説明図、(b)は(a)の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。説明の便宜上、以下では引戸Dの戸先側を前、戸尻側を後、上側を上、下側を下として説明を行う。
【0013】
図1は本願の吊車ユニット10の一例を示す斜視図である。本願の吊車ユニット10は引戸を上吊りするための部材であり、
図2に示すように、出入り口Eの上縁に設けられたレールRと引戸Dの上部に装着して使用される。
【0014】
図1及び
図3に示すように、この実施形態の吊車ユニット10は、吊車1、ケース2、跳ね上がり防止具3、上下位置調整具4、左右位置調整具5、連結具6、抜止め具7、前面カバー8及びケース保持具9を備えている。
【0015】
前記吊車1はレールRに沿って移動する部材であり、
図3に示すように、前後方向に長い基体11と、基体11の両側に装着されるローラ12を備えている。ローラ12の内側にはベアリング13が設けられている。
【0016】
この実施形態では基体11の両面に二つずつローラ12が設けられている。各面の二つのローラ12は前後に並んで設けられている。前側の二つのローラ12は両ローラ12の内側のベアリング13に挿通された前軸材14で、後ろ側の二つのローラ12は両ローラ12の内側のベアリング13に挿通された後軸材15で連結されている。
【0017】
基体11のうち、前後のローラ12の間の位置には、上下方向に貫通する挿通孔11aが設けられ、連結具6の一端側が挿通されている。挿通孔11aを通過した連結具6の端部には止め輪11bが装着され、連結具6が抜け落ちないようにしてある。
【0018】
前記ケース2は引戸Dの上部の掘り込みD1内に収まる部分である。この実施形態のケース2は、前面部、背面部、左側面部、右側面部、平面部及び底面部を備えた箱型の部材である。
【0019】
ケース2の内部には、跳ね上がり防止具3が収まる第一収容部21と、上下位置調整具4が収まる第二収容部22と、左右位置調整具5が収まる第三収容部23が設けられている。第二収容部22と第三収容部23は、前者が下側、後者が上側となるように上下に並んで設けられている。
【0020】
この実施形態の跳ね上がり防止具3は、位置調整ネジ31と、位置調整ネジ31の操作によって移動する移動ブロック32と、移動ブロック32の移動に伴って上下方向に移動する当接ブロック33を備えている。
【0021】
移動ブロック32及び当接ブロック33は引戸Dの跳ね上がりを防止するための手段(規制手段)であり、位置調整ネジ31は規制手段の位置を調整するための手段(位置調整手段)である。規制手段及び位置調整手段はこれ以外の構成とすることもできる。
【0022】
図4(a)(b)に示すように、この実施形態の当接ブロック33は、対向する二つの対向片33aの上部が上繋ぎ部33bで繋がれた門型の部材である。上繋ぎ部33bの上面には左右のローラ12間に収まる凸部33cと、凸部33cよりも一段低い低所部33dを備えている。
【0023】
両対向片33aの相互に対向する面には、前側から後ろ側に向けて高くなる突ガイド33eが設けられている。両対向片33aの間には立方体状の移動ブロック32が設けられている。
【0024】
移動ブロック32の両対向片に対向する面には、突ガイド33eが収まる凹溝32aが設けられている。移動ブロック32の中央には前後方向に貫通するネジ孔32bが設けられている。
【0025】
両対向片33aの間に移動ブロック32が設けられた当接ブロック33は、上繋ぎ部33bが上側になる向きで第一収容部21内に収容されている。第一収容部21内に収容された移動ブロック32のネジ孔32bには、ケース2の前面側から差し込まれた位置調整ネジ31が螺合されている。
【0026】
図5(a)(b)に示すように、移動ブロック32のネジ孔32bに螺合された位置調整ネジ31が一方向にネジ込まれると、移動ブロック32に回転力が働いて移動し、その移動する力が当接ブロック33に伝達されて、当接ブロック33が上方向に移動する。
【0027】
前記操作によって上方向に移動した当接ブロック33は、
図6(a)(b)に示すように、その上繋ぎ部33bの上面、具体的には、上繋ぎ部33bの凸部33cの上面が基体11の底面に当接し、跳ね上がり現象が防止される。このとき、上繋ぎ部33bの上面の低所部33dはローラ12の下側に収まり、基体11の底面ともローラ12とも干渉しない。
【0028】
一方、
図5(b)の状態で移動ブロック32のネジ孔32bに螺合された位置調整ネジ31が反対方向にネジ込まれると、移動ブロック32に逆方向の回転力が働いて移動し、その移動する力が当接ブロック33に伝達されて、当接ブロック33が下方向に移動する。
【0029】
ケース2の第二収容部22には、上下位置調整具4が収容されている。この実施形態の上下位置調整具4は、高さ調整ネジ41と、高さ調整ネジ41の回転力をケース2に伝達する高さ調整ブロック42を備えている。
【0030】
この実施形態の高さ調整ブロック42は、対向する二つの対向側面部42aの前側が前繋ぎ部42bで繋がれたコ字状の部材である。両対向側面部42aには、前側から後ろ側に向けて低くなるガイド孔42cが設けられている。
【0031】
両対向側面部42aに形成された両ガイド孔42cには、高さ調整ネジ41の回転力をケース2に伝達する伝達軸43が挿通されている。両ガイド孔42cを通過した伝達軸43の両端には止め輪43aが装着され、伝達軸43が抜け落ちないようにしてある。
【0032】
対向する両対向側面部42aの間には連結具6の下端側が収まり、両ガイド孔42cに到達した状態で、伝達軸43が当該連結具6の下端に形成された伝達軸挿通孔61内に収まるようにしてある。
【0033】
前繋ぎ部42bには肉厚方向に貫通するネジ孔42dが形成されている。ネジ孔42dには高さ調整ネジ41が螺合され、高さ調整ネジ41が螺合された高さ調整ブロック42は、ケース2の背面側から当該ケース2(具体的には、第二収容部22)内に収容されている。
【0034】
前繋ぎ部42bのネジ孔42dに螺合された高さ調整ネジ41を一方向にネジ込むと、高さ調整ブロック42に回転力が働いて移動し、その移動する力がケース2に伝達されて、ケース2が上方向に移動する。このケース2は引戸Dに固定されているため、ケース2の上方向への移動は引戸Dの上方向への移動を意味する。
【0035】
一方、高さ調整ブロック42のネジ孔42dに螺合された高さ調整ネジ41を反対方向にネジ込むと、高さ調整ブロック42に逆方向の回転力が働いて移動し、その移動する力がケース2に伝達されて、ケース2が下方向に移動する。この場合、ケース2の上方向への移動と同様、ケース2の下方向への移動は、引戸Dの下方向への移動を意味する。
【0036】
ケース2の第三収容部23には左右位置調整具5が収容されている。この実施形態の左右位置調整具5は、左右位置調整ネジ51と、左右位置調整ネジ51の回転力を吊車1に伝達する左右位置調整ブロック52を備えている。
【0037】
この実施形態の左右位置調整ブロック52は、対向する対向上下面52aの前側が前繋ぎ部52bで繋がれたコ字状の部材である。対向上下面52aには、前側から後ろ側に向けて形成されたガイド孔52cが設けられている。対向上下面52aに形成された両ガイド孔52cには、連結具6が挿通されている。
【0038】
前繋ぎ部52bには肉厚方向に貫通するネジ孔52dが形成されている。ネジ孔52dには左右位置調整ネジ51が螺合され、左右位置調整ネジ51が螺合された左右位置調整ブロック52は、ケース2の背面側から当該ケース2(具体的には第三収容部23)内に収容されている。
【0039】
前繋ぎ部52bのネジ孔52dに螺合された左右位置調整ネジ51を一方向にネジ込むと、左右位置調整ブロック52に回転力が働いて移動し、その移動する力が連結具6を介して吊車1に伝達される。吊車1はレールR内に収まって左右方向に移動しないため、吊車1に伝達された力によって引戸Dが左右方向に移動することになる。
【0040】
一方、左右位置調整ブロック52のネジ孔52dに螺合された左右位置調整ネジ51を反対方向にネジ込むと、左右位置調整ブロック52に逆方向の回転力が働いて移動し、その移動力が連結具6を介して吊車1に伝達される。この場合も、吊車1はレールR内に収まって左右方向に移動しないため、吊車1に伝達された力によって引戸Dが左右方向に移動することになる。
【0041】
図6(b)に示すように、この実施形態では、位置調整ネジ31、高さ調整ネジ41及び左右位置調整ネジ51の三本のネジをケース2の前面側(引戸Dに装備した際の木口面側)から操作できるようにしてある。三本の調整ネジは上下方向に間隔をあけて設けられ、相互に干渉しないようにしてある。
【0042】
図1及び
図7(a)に示すように、ケース2の右側面部のうち、前面部寄りの位置には、上下に細長いスリット24が形成されている。スリット24の内側には三本の調整ネジの頭部が収まるネジ頭部収容部24aがスリット24と連通して設けられている。
【0043】
この実施形態では、位置調整ネジ31、高さ調整ネジ41及び左右位置調整ネジ51の三本の調整ネジの不用意な脱落を防止するため、これら三本の調整ネジを抜止め具7で固定している。抜止め具7はこれら調整ネジの強度を高める役割も果たす。
【0044】
一例として
図7(a)(b)に示す抜止め具7は、平板状のベース体71に形成された三つの嵌入部72と、中央の嵌入部72の外側に形成された切欠き部73を備えた櫛状の部材である。この実施形態の抜止め具7は弾性変形可能な樹脂製である。抜止め具7は樹脂製以外であってもよい。
【0045】
三つの嵌入部72は、三つの調整ネジが個別に収まる部分であり、ベース体71の長手方向に間隔をあけて設けられている。各嵌入部72は対向する一対の爪部材74の間に形成されている。各嵌入部72はベース体71の端面に開口した長方形状のガイド通路72aと、ガイド通路72aの開口側と反対側の端部に設けられた円形状の収まり部72bを備えている。
【0046】
ガイド通路72aは開口側から収まり部72bに向けて間隔が狭くなるようにしてあり、ガイド通路72aと収まり部72bのつなぎ部分に、通路幅が最も狭くなる幅狭部72cが形成されている。ガイド通路72aの開口側の広さが各調整ネジの軸部の首元の外径よりも広く、幅狭部72cの広さが各調整ネジの軸部の首元の外径よりも狭くなるようにしてある。
【0047】
この実施形態のように、ガイド通路72aの開口側の広さを各調整ネジの軸部の首元の外径よりも広くすることで、各ガイド通路72a内に各調整ネジの軸部の首元を収めやすくなり、幅狭部72cの広さを各調整ネジの軸部の首元の外径よりも狭くすることで、収まり部72bに収まった各調整ネジが抜けにくくなる。なお、収まり部72bの直径は、各調整ネジの軸部の首元の外径と同じ又は若干大きめに設定してある。
【0048】
この実施形態では、隣接する爪部材74の間に切欠き部73が設けてあり、幅狭部72cを調整ネジの軸部の首元に押し込んだときに爪部材74が外側に弾性変形して、幅狭部72cの間隔が広がるようにしてある。調整ネジが幅狭部72cを通過する際に弾性変形した両爪部材74は、調整ネジが幅狭部72cを通過すると、元の位置に弾性復帰する。
【0049】
図7(a)に示すように、抜止め具7は各ガイド通路72aの入口側を差し込み方向先方に向けて、スリット24からネジ頭部収容部24a内に挿入する。
図8(a)(b)に示すように、ネジ頭部収容部24a内に挿入された抜止め具7は、各幅狭部72cに各調整ネジの軸部の首元が当接する位置で一旦止まるが、そこから更に奥へ押し込むことで、各調整ネジを各嵌入部72の収まり部72bに収まる。
【0050】
なお、ここでは、嵌入部72が三つの場合を一例としているが、嵌入部72は三つより多くても少なくてもよい。また、ここでは、すべての嵌入部72が弾性変形可能な爪部材74の間に形成された場合を一例としているが、複数の嵌入部72を備えている場合、少なくとも一つの嵌入部72が弾性変形可能な爪部材74の間に形成されていればよい。
【0051】
従来、この種の調整ネジを固定する場合、調整ネジ自体を追加工した上でケース内の樹脂部品で固定する方法や、調整ネジ自体を追加工した上でE型止め輪などで固定する方法がとられていた。しかし、いずれの方法も調整ネジ自体に追加工が必要である点で改善の余地があった。また、後者に関しては、調整ネジ毎にE型止め輪を装着しなければならず、部品点数の増加や作業性の向上という点で改善の余地があった。
【0052】
これに対し、本実施形態の抜止め具7のように、一枚の板状のベース体71に調整ネジの軸部が収まる嵌入部72を設けた場合、調整ネジ自体を追加工する必要もなく、個々の調整ネジに止め輪を装着する必要もないため、前記従来の方法が抱えていた課題を改善することができる。
【0053】
ケース2の前面側には前面カバー8が設けられている。この実施形態の前面カバー8は、上下方向に長い薄板状であり、その長手方向に間隔をあけて三つの操作孔81a~81cが設けられている。上段の操作孔81aは位置調整ネジ31用の、中段の操作孔81bは左右位置調整ネジ51用の、下段の操作孔81cは高さ調整ネジ41用の孔である。
【0054】
この操作孔81a~81cは、ケース2の前面に露出する位置調整ネジ31、左右位置調整ネジ51及び高さ調整ネジ41を操作する際にドライバーなどを差し込むための孔である。このため、操作孔81a~81cは三つの調整ネジの間隔と同間隔で設けられている。
【0055】
図9(a)(b)に示すように、前面カバー8の背面側の上端寄りの位置には上側係止突起82aが、下端寄りの位置には下側係止突起82bが突設されている。上側係止突起82aはケース2の上面の前面寄りの位置に形成された上側係止溝25に係止される部分、下側係止突起82bは後述するケース保持具9の底部92の前面寄りの位置に形成された下側係止溝93aに係止される部分である。
【0056】
下側係止突起82bの上側には、押さえ片82cが両係止突起82a、82bと同方向に突設されている。押さえ片82cは下側係止突起82bと間隔をあけて設けられ、押さえ片82cと下側係止突起82bの間には、係止爪26aが収まる空間が確保されている。
【0057】
上側係止突起82aを上側係止溝25に係止し、下側係止突起82bを下側係止溝93aに係止することで、前面カバー8、ケース2及びケース保持具9が連結される。前面カバー8、ケース2及びケース保持具9が連結した状態では、係止爪26aが押さえ片82cと下側係止突起82bの間の空間に収まり、係止爪26aの下端側の下部突起26bがケース保持具9の底部92に設けられた下側第二係止溝93bに係止される。
【0058】
以上のように構成されたケース2は、引戸Dの掘り込みD1内に固定されたケース保持具9に装着されている。
図3及び
図5(a)(b)に示すように、この実施形態のケース保持具9は背部91と底部92を備えたL字状の部材である。
【0059】
背部91には二つのネジ挿通孔91aが、底部92には一つのネジ挿通孔92aが設けられている。ケース保持具9を掘り込みD1内の所定位置に配置し、各ネジ挿通孔91a、92aからネジをネジ込むことで、ケース保持具9が引戸Dの掘り込みD1内に固定される。
【0060】
底部92にはケース2の底面に形成された嵌合凸部26が嵌合する嵌合凹部93が設けられている。嵌合凸部26を嵌合凹部93に沿って後方にスライドさせると、嵌合凸部26の前方に設けられた係止爪26aの下部突起26bが嵌合凹部93の前方に設けられた下側第二係止溝93bに係止され、ケース2がケース保持具9に固定される。
【0061】
前記実施形態の構成は一例であり、吊車ユニットや引戸、これらを構成する各要素の構成は、所期の目的を達成できる範囲で、追加や省略、入れ替えといった変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の抜止め具7は、各種吊車に設けられた調整ネジの抜止め具として利用することができ、特に、吊車に設けられた複数の調整ネジの抜止め具として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 吊車
2 ケース
3 跳ね上がり防止具
4 上下位置調整具
5 左右位置調整具
6 連結具
7 抜止め具
8 前面カバー
9 ケース保持具
10 吊車ユニット
11 基体
11a 挿通孔
11b 止め輪
12 ローラ
13 ベアリング
14 前軸材
15 後軸材
21 第一収容部
22 第二収容部
23 第三収容部
24 スリット
24a ネジ頭部収容部
25 上側係止溝
26 嵌合凸部
26a 係止爪
26b 下部突起
31 位置調整ネジ
32 移動ブロック
32a 凹溝
32b ネジ孔
33 当接ブロック
33a 対向片
33b 上繋ぎ部
33c 凸部
33d 低所部
33e 突ガイド
41 高さ調整ネジ
42 高さ調整ブロック
42a 対向側面部
42b 前繋ぎ部
42c ガイド孔
42d ネジ孔
43 伝達軸
43a 止め輪
51 左右位置調整ネジ
52 左右位置調整ブロック
52a 対向上下面
52b 前繋ぎ部
52c ガイド孔
52d ネジ孔
61 伝達軸挿通孔
71 ベース体
72 嵌入部
72a ガイド通路
72b 収まり部
72c 幅狭部
73 切欠き部
74 爪部材
81a 上段の操作孔
81b 中段の操作孔
81c 下段の操作孔
82a 上側係止突起
82b 下側係止突起
82c 押さえ片
91 背部
91a ネジ挿通孔
92 底部
92a ネジ挿通孔
93 嵌合凹部
93a 下側係止溝
93b 下側第二係止溝
D 引戸
D1 掘り込み
E 出入り口
R レール