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  • 特許-水系液状化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】水系液状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240306BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/19
A61K8/02
A61Q1/02
A61K8/39
A61K8/81
A61Q1/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022181843
(22)【出願日】2022-11-14
(62)【分割の表示】P 2018205743の分割
【原出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2023001376
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】山脇 夕佳
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176936(JP,A)
【文献】特開2008-056607(JP,A)
【文献】特開2007-091687(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129395(WO,A1)
【文献】特開2017-114824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、
前記スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であり、
前記水溶性分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はアクリル酸アルキル共重合体を含み、
前記水溶性分散剤の含有量が、化粧料全量基準で0.5~5質量%であり、
前記皮膜形成性ポリマーエマルションがアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションを含み、
前記皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量が、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%であり、
前記無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、
前記無機着色顔料がカーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックの含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、
25℃における粘度が50mPa・s以下であり、
オートペンタイプの容器に収容して用いられる、水系液状化粧料。
【請求項2】
HLBが8以上のノニオン界面活性剤を含まない、又は、HLBが8以上のノニオン界面活性剤の含有量が化粧料全量基準で0.1質量%以下である、請求項に記載の水系液状化粧料。
【請求項3】
水系液状化粧料を収容するための収容部、水系液状化粧料を塗布するための塗布部、及び、前記収容部内と前記塗布部とを結び、前記収容部内の水系液状化粧料を毛細管現象により前記塗布部に供給するための中継芯、を有するオートペンタイプの容器と、
前記収容部に収容された請求項1又は2に記載の水系液状化粧料と、
を備える、化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メークアップ化粧料に用いられる水系液状化粧料として、水及び水性有機溶剤などに着色剤を溶解又は分散させたものが知られている。アイライナーやアイブロウなどのメークアップ化粧料の場合、特にアイライナーでは目の印象を強くするために濃い描線が求められる傾向にあり、着色剤として無機着色顔料を用いることが多い。無機着色顔料は比重が大きく、凝集や沈降を引き起こしやすいため、水系液状化粧料では分散が不十分になりやすく、描線にムラが生じやすい。
【0003】
また、水系化粧料は、油性化粧料や油中水型乳化化粧料と比較して肌への密着性に劣る傾向があり、均一な化粧膜を形成することが難しい。アイライナーやアイブロウはファンデーション等のベースメークやアイシャドウを塗布した後の肌に使用することが多く、特に油系ファンデーションのような油性化粧料を塗布した肌には、はじかれやすい水系化粧料で均一な描線を設けることは難しい。更に、水系化粧料は、油性化粧料や油中水型乳化化粧料と比較して化粧膜の耐水性や耐摩擦性が劣る傾向にあり、化粧持ちを高めることが難しい剤型である。
【0004】
水系液状化粧料において粉体成分を分散させる方法として、界面活性剤の配合がある(例えば、下記特許文献1を参照)。しかしながら、無機着色顔料の分散性を高めるために、HLBの高い親水性のノニオン界面活性剤を用いたり、界面活性剤の配合量を多くすると、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性が低下する傾向にある。
【0005】
他方、界面活性剤以外の成分によって無機着色顔料の分散を補うことで、水系液状化粧料の耐水性を向上させる技術も提案されている(例えば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-315459号公報
【文献】特開2010-260839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、水系化粧料は油性化粧料や油中水型乳化化粧料と比較して肌への密着性に劣るため、均一な化粧膜を形成することが難しい傾向にある。アイライナーやアイブロウはファンデーション等のベースメークやアイシャドウを塗布した後の肌に使用することが多く、特に油性ファンデーションのような油性化粧料を塗布した肌には、はじかれやすい水系化粧料で均一な描線を設けることは難しい。
【0008】
上記特許文献2に記載の液状化粧料は、皮膜形成性樹脂からなる分散剤を特定量配合することによって肌密着性及び耐水性の向上を図っているが、化粧した肌における肌密着性や描線の均一性については満足できるものではない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる水系液状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であり、無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で3~20質量%であり、無機着色顔料がカーボンブラックを含む水系液状化粧料を提供する。
【0011】
本発明の水系液状化粧料によれば、上記構成を有することにより、油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる。
【0012】
ところで、液状化粧料の製品形態としてペンタイプの化粧品がある。ペンタイプは、化粧料を含浸した繊維収束体又は化粧料を充填した充填部といった化粧料貯蔵部と、これに接合された筆やフェルトからなる塗布部とを備えており、ダイヤルやノック等で貯蔵部に力を加えることによって化粧料が強制的に吐出されるメカニカルタイプと、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出されるオートペンタイプなどが知られている。
【0013】
本発明の水系液状化粧料は、低粘度化した場合であっても上述した効果を奏することがきる。この場合、本発明の水系液状化粧料は十分な吐出性を有することができ、オートペンタイプであっても安定的に吐出することができる。また、オートペンタイプにおいては、塗布部の種類によって毛細管力と液の保持力が異なるため、フェルトより筆の方が吐出しづらい傾向にあるが、本発明の水系液状化粧料によれば、筆からなる塗布部を備えるオートペンタイプであっても安定的に吐出することができる。
【0014】
無機着色顔料の分散性及び化粧膜の耐摩擦性を向上させる観点から、上記水溶性分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びアクリル系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0015】
化粧膜の耐摩擦性及び耐水性の観点から、上記アクリル系ポリマーは、アクリル酸アルキル共重合体であることが好ましい。
【0016】
吐出性の観点から、本発明の水系液状化粧料は、25℃における粘度が50mPa・s以下であってもよい。
【0017】
化粧膜の耐水性及び耐摩擦性を向上させる観点から、本発明の水系液状化粧料は、HLBが8以上のノニオン界面活性剤を含まない、又は、HLBが8以上のノニオン界面活性剤の含有量が化粧料全量基準で0.1質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる水系液状化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】液状化粧料容器について説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の水系液状化粧料は、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する。
【0021】
なお、本明細書において水系とは、少なくとも水が含まれていることを意味する。水系化粧料には、水以外にエタノール等の炭素数1~5の低級アルコールが更に含まれていてもよい。
【0022】
本実施形態の水系液状化粧料における水の含有量は、化粧料全量基準で、40~80質量%であってもよく、45~80質量%であってもよく、50~80質量%であってもよい。
【0023】
また、本明細書において液状とは、25℃において流動性を示すものであることを指す。本実施形態の水系液状化粧料の25℃における粘度は、10000mPa・s以下であってもよく、容器の形態によって適宜設定することができる。例えば、ボトルタイプは、25℃における粘度が10000mPa・s以下である化粧料が好ましく、ペンタイプは25℃における粘度が5000mPa・s以下である化粧料が好ましい。
【0024】
オートペンタイプでの吐出性を良好にする観点から、本実施形態の水系液状化粧料は、25℃における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更に好ましい。また、使用性の観点から、本実施形態の水系液状化粧料は、25℃における粘度が、2mPa・s以上であることが好ましく、3mPa・s以上であることがより好ましい。
【0025】
なお、上記の粘度は、25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)を用いて、下記の条件で測定した値を意味する。
5~50mPa・s:BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:ローターNo.4、回転数12rpm
【0026】
[スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム]
本実施形態において用いられるスルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム(スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa)は、水を溶媒とした溶液であってもよい。スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは、NIKKOL OTP-75(日光ケミカルズ社製、製品名)等の市販品を用いることができる。
【0027】
本実施形態の水系液状化粧料におけるスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの含有量は、化粧料全量基準で、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.8質量%であることがより好ましく、0.1~0.8質量%であることが更に好ましく、0.1~0.5質量%であることが更により好ましい。スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの含有量がこのような範囲にあると、肌上へのなじみ及びオートペンタイプに適用した場合の吐出性に優れた化粧料が得られやすくなる。
【0028】
[無機着色顔料]
無機着色顔料としては、通常の化粧料に配合される公知の無機着色顔料を特に制限なく用いることができ、例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0029】
無機着色顔料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本実施形態の水系液状化粧料における無機着色顔料の含有量は、化粧料全量基準で、3~20質量%であることが好ましく、4~20質量%であることがより好ましく、4~15質量%であることが更に好ましい。無機着色顔料の含有量が上記の範囲にあると、描線の濃さに優れた化粧膜の形成と、分散性及び吐出性との両立が容易となる。
【0031】
本実施形態の水系液状化粧料は、無機着色顔料としてカーボンブラックを含むことができ、この場合においてもカーボンブラックが十分に分散され、描線の濃さに優れた化粧膜を均一性よく形成することができる。
【0032】
本実施形態の水系液状化粧料におけるカーボンブラックの含有量は、化粧料全量基準で、3~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量が上記の範囲にあると、描線の濃さと吐出性に優れた化粧料が得られやすくなる。
【0033】
本実施形態の水系液状化粧料は、無機着色顔料以外の着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、通常の化粧料に配合される公知の染料、色素及び有機性着色顔料を特に制限なく用いることができ、例えば、赤色227号、青色1号、黄色4号、黄色5号等の染料、カルミン、ベニバナ等の天然色素、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等のパール顔料などが挙げられる。
【0034】
本実施形態の水系液状化粧料は、シリカ、ガラス末、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、及びPMMA等の樹脂粒子などの体質顔料を含有することができる。
【0035】
[水溶性分散剤]
本実施形態において用いられる水溶性分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル系ポリマー等の水溶性ポリマー;親水性ノニオン界面活性剤、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム以外のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤などを用いることができる。
【0036】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群よりされる1種又は2種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~4又は8のアルキルエステルであることが好ましい。また、上記の単独重合体及び共重合体は、その主鎖を構成するモノマー単位構造として側鎖に酸性残基を有する構造を含み、中和によって水に溶解し得る水溶性ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーは、アンモニウム塩などの中和物であってもよい。
【0037】
上記のアクリル系ポリマーは、水、エタノール、多価アルコール又はこれらの混合液との混合溶液として配合してもよい。
【0038】
上記のアクリル系ポリマーは、アクリル酸アルキル共重合体が好ましく、Luvimer 100P(BASF社製、製品名)、COVACRYL A15(SENSIENT社製、製品名、固形分濃度30質量%)、ジュリマー AT-210、AT-510(東亜合成社製、製品名、固形分濃度30質量%)等の市販品を用いてもよい。なお、ここでいうアクリル酸アルキル共重合体とは、医薬部外品原料規格(外原規)のアクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体液(1)及びアクリル酸アルキル共重合体液(2)における共重合体を意味する。
【0039】
親水性ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及び、それらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリアスパラギン酸塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、レシチン、カルボベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
本実施形態の水系液状化粧料は、無機着色顔料の分散性と化粧膜の耐摩擦性の観点から、皮膜形成能を有する水溶性分散剤を含むことが好ましく、水溶性分散剤として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びアクリル系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0041】
水溶性分散剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本実施形態の水系液状化粧料における水溶性分散剤の含有量は、化粧料全量基準で、0.5~5質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、1~4質量%であることが更に好ましく、1~3質量%であることが更により好ましい。水溶性分散剤の含有量が上記の範囲にあると、無機着色顔料の分散性を向上させやすくなる。
【0043】
本実施形態の水系液状化粧料は、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性を向上させる観点から、HLBが8以上のノニオン界面活性剤の含有量が化粧料全量基準で0.1質量%以下であることが好ましく、0.09質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、HLBが8以上のノニオン界面活性剤を含まないことが特に好ましい。HLBが8以上のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0044】
更に、本実施形態の水系液状化粧料は、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性を向上させる観点から、ノニオン界面活性剤の含有量が化粧料全量基準で0.1質量%以下であることが好ましく、0.09質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、ノニオン界面活性剤を含まないことが特に好ましい。
【0045】
[皮膜形成性ポリマーエマルション]
皮膜形成性ポリマーエマルションに含まれるポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む水に不溶の重合体若しくは共重合体が挙げられる。共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、グラフト共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、コア・シェル型共重合体であってもよい。コア・シェル型共重合体は、例えば、コアがポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂又はポリウレタンなどのウレタン樹脂、シェルがポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂又はポリウレタンなどのウレタン樹脂であるコアシェル構造を有する粒子を含む、アクリル樹脂エマルション又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションであってもよい。
【0046】
皮膜形成性ポリマーエマルションとしては、例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミド共重合体エマルション、ウレタンアクリル複合樹脂エマルション等が挙げられる。この中でも、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性の観点から、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルションが好ましい。なお、ここでいうアクリル酸アルキルには、メタクリル酸アルキルも包含される。
【0047】
皮膜形成性ポリマーエマルションは、水を媒体とし、固形分濃度が30~60質量%のものを用いることができる。
【0048】
皮膜形成性ポリマーエマルションは市販品を用いることができる。アクリル酸アルキル共重合体エマルションとしては、ヨドゾールGH800F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度45質量%)、ヨドゾールGH810F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度46質量%)、ヨドゾールGH34F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度42質量%)、ダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製、製品名、固形分濃度50質量%)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルションとしては、ヨドゾールGH41F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度45質量%)、ダイトゾール5000STY(大東化成工業社製、製品名、固形分濃度50質量%)、エマポリーCE-119N(日光ケミカルズ株式会社販売、製品名)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルションとしては、ビニゾール2140L(大同化成工業社製、製品名、固形分濃度45質量%)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミド共重合体エマルションとしては、プラスサイズL-9540U(互応化学工業社製、製品名、固形分濃度40質量%)が挙げられる。ウレタンアクリル複合樹脂エマルションとしては、リカボンドSS-3000(ジャパンコーティングレジン社製、製品名、固形分濃度30質量%)が挙げられる。
【0049】
皮膜形成性ポリマーエマルションは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
本実施形態の水系液状化粧料における皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量は、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、4~10質量%であることが更に好ましい。皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量が上記の範囲にあると、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性の確保と、オートペンタイプにおける吐出性とを両立することが容易となる。また、皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量を上記上限値以下にすることで、化粧膜が強固になりすぎて肌が突っ張ったような感覚になることを回避しやすくなる。
【0051】
本実施形態に係る水系液状化粧料には、上記の各成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0052】
本実施形態に係る水系液状化粧料は、上述したスルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、皮膜形成性ポリマーエマルション及び水、並びに必要に応じてその他の成分を溶解又は分散し、均一に攪拌・混合することにより製造することができる。
【0053】
本実施形態に係る水系液状化粧料は、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラなどのメイクアップ化粧料として用いることができる。描線の濃さと使用性の観点から、アイライナーとして用いることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る水系液状化粧料は化粧品に使用される公知の製品形態で利用することができる。製品形態としては、例えば、ペンタイプ、ボトルタイプなどが挙げられる。ペンタイプとしては、化粧料を含浸した繊維収束体又は化粧料を充填した充填部といった化粧料貯蔵部と、これに接合された筆やフェルトからなる塗布部とを備えており、ダイヤルやノック等で貯蔵部に力を加えることによって化粧料が強制的に吐出されるメカニカルタイプ、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出されるオートペンタイプが挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る水系液状化粧料は、使用方法の簡便性、携帯性の観点から、オートペンタイプで利用することが好ましい。オートペンタイプの容器は、公知のものを用いることができ、例えば、特開2016-87094号公報に開示の液状化粧料容器が挙げられる。
【0056】
図1は、液状化粧料容器を示す模式断面図である。図1に示される液状化粧料容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を呈するものであり、円筒状の容器本体1と、容器本体1内に設けられ本実施形態に係る水系液状化粧料Lを収容する収容部2と、容器本体1の先端に装着され収容部2内の水系液状化粧料Lを塗布するための毛筆3と、容器本体1内に配置され収容部2内と毛筆3を結ぶ軸状の中継芯4と、中継芯4周りに装着された略円筒状のジャバラ部材5と、を概略備える。なお、ここでは、使用者が容器本体1を持って塗布しやすいように、容器本体1に対して、有底円筒状の把持筒6が螺合により着脱可能に装着されている。なお、容器本体1は円筒状に限定されるものではなく、矩形筒等であっても良い。
【0057】
容器本体1は、例えばPP等から形成され、鍔付きで先細の円筒状に構成される。容器本体1の外周面に設けられた鍔部の後端面には、容器本体1に螺子込まれた把持筒6の先端面が突き当てられ、鍔部の先端面には、容器本体1に装着されたキャップ10の開放端面が突き当てられる。また、容器本体1の後端の開口は、有底円筒状の尾栓7を差し込み装着することにより、閉じられている。
【0058】
ジャバラ部材5は、水系液状化粧料Lの流量をコントロールするためのもので、水系液状化粧料Lを含む溝(ジャバラ)を有し、その円筒状の後端部が、容器本体1の内周面の凹部に嵌合することにより、容器本体1に装着されている。そして、容器本体1内のジャバラ部材5の後端部と尾栓7との間に上記収容部2が形成されており、この収容部2内に水系液状化粧料Lが収容されている。
【0059】
中継芯4は、例えばアクリル樹脂等から形成され、ジャバラ部材5の筒孔を通過するように軸線方向に延在し、その先端側がジャバラ部材5の先端側と嵌合することでジャバラ部材5に装着されている。中継芯4は、その後端側の部分が収容部2内に進入すると共に、その先端側の部分が毛筆3に進入することで、収容部2内と毛筆3とを結んでいる。そして、中継芯4は、毛細管現象により収容部2内の水系液状化粧料Lを吸い上げ毛筆3へ供給するのを可能とする。
【0060】
図1に示される液状化粧料容器100においては、塗布体が毛筆とされているが、フェルトチップ、ウレタンチップに変更してもよい。
【0061】
容器本体1の先端側には、毛筆3等を保護するための有底円筒状のキャップ10が嵌合により着脱自在に装着されている。
【0062】
液状化粧料容器100にあっては、収容部2内に、水系液状化粧料Lと共に、軸線方向に移動可能な撹拌子20及び軸線方向に伸縮可能なコイルバネ21が収容されている。撹拌子20は、ここでは、特に好ましいとして、球体とされているが、多面体や錐体等であっても良い。
【0063】
コイルバネ21は、径違いの複数のバネ部(ここでは径違いの2個のバネ部)を軸線方向に一体的に連ねた一体成形のバネであり、ここでは、例えばSUS等より成形されている。このコイルバネ21は、撹拌子20の径よりも小径の小径バネ部を後半部に備えると共に、小径バネ部の前方の軸線方向隣に、撹拌子20の径より大径の大径バネ部を連ねて備える。
【0064】
ここで、使用者が容器100を振ると、撹拌子20は、コイルバネ21を構成する大径バネ部内を軸線方向に移動可能とされているため、撹拌子20が軸線方向に移動し、この撹拌子20の移動により水系液状化粧料Lが撹拌される。
【0065】
このように構成された液状化粧料容器100にあっては、収容部2内の水系液状化粧料Lは、中継芯4を介して先端側の毛筆3に向かって流出し、使用者により毛筆3による塗布に供される。なお、本実施形態に係る液状化粧料容器100においては、上述した撹拌子10及びコイルバネ21を備えることにより、効率よく水系液状化粧料Lを毛筆3へ流出させることができるが、撹拌子10及びコイルバネ21を備えない構成に変更してもよい。
【0066】
以上、本実施形態に係る水系液状化粧料を利用可能なオートペンタイプの容器として、所謂直液式の構成を有する液状化粧料容器100を例に説明したが、容器はこのような構造に特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、液状化粧料容器100のジャバラ部材5、撹拌子20、コイルバネ21を省略し、収容部2には水系液状化粧料Lを含浸した中綿部材を収容し、後端側の部分を中綿部材の内部に進入させた中継芯4により水系液状化粧料Lを吸い上げ毛筆3へ供給する、所謂中綿式の構成を有する容器を用いてもよい。
【実施例
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
<水系液状化粧料の製造>
(実施例1~15、比較例1~8)
表1~3に示される各成分を同表中に示す割合(質量%)で、ディスパーにて混合し、水系液状化粧料をそれぞれ得た。なお、表中の水溶性ポリマー及びポリマーエマルションの値はそれぞれ、分散液及びエマルションの配合量である。
【0069】
なお、表1~3に示される各成分は、下記に示すものを使用した。
水溶性ポリマー-1:アクリル酸アルキル共重合体、固形分濃度30質量%)
ポリマーエマルション-1:アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション(大東化成工業社製、製品名「ダイトゾール5000STY」、固形分濃度50質量%)
ポリマーエマルション-2:アクリル酸アルキル共重合体エマルション(大東化成工業社製、製品名「ダイトゾール5000SJ」、固形分濃度50質量%)
【0070】
<水系液状化粧料の評価>
上記で得られた水系液状化粧料を、図1に示す容器と同様の構造を有するオートタイプ容器(塗布体:毛筆、中継芯:アクリル樹脂)の収容部に充填して充填品を作製した。
【0071】
作製した充填品について、下記評価方法により、吐出性、塗布状態、耐摩擦性及び耐水性について評価した。なお、実施例15は、水系液状化粧料をボトル容器に充填し、吐出性以外の評価を行った。
【0072】
<吐出性の評価>
腕に長さ約5cmのラインを引き、描き具合を下記評価基準で吐出性を評価した。
[評価基準]
◎:十分に吐出し、描線が濃い。
○:問題なく吐出する。
△:吐出はするが不十分。
×:かすれがあり、吐出性に問題あり。
【0073】
<肌上での塗布状態(1)>
腕に化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、塗布状態を目視にて観察し、下記評価基準で塗布状態を評価した。
[評価基準]
◎:全くはじかず、均一な描線(極めて良好)。
○:ほとんどはじかず、ほぼ均一な描線(良好)。
△:少しはじいて、描線がややムラ付く(やや不良)。
×:はじいて、描線がムラ付く(不良)。
【0074】
<肌上での塗布状態(2)>
下記の組成を有する油性ファンデーションを塗布した腕に化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、塗布状態を目視にて観察し、下記評価基準で塗布状態を評価した。
[評価基準]
◎:全くはじかず、均一な描線(極めて良好)。
○:ほとんどはじかず、ほぼ均一な描線(良好)。
△:少しはじいて、描線がややムラ付く(やや不良)。
×:はじいて、描線がムラ付く(不良)。
【0075】
[油性ファンデーションの組成]
(成分) (組成:質量%)
メチルポリシロキサン 20
パルミチン酸2-エチルヘキシル 20
ポリエチレンワックス 6
タルク 5
ナイロン末 4
重質流動イソパラフィン 4
マイクロクリスタリンワックス 3
ワセリン 3
セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
架橋型メチルポリシロキサン 1
天然ビタミンE 適量
マイカ 残量
酸化鉄 3
酸化チタン 25
【0076】
<耐摩擦性の評価>
腕に化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、指の腹で擦過し、塗布物の残り具合を目視にて観察し、下記評価基準で耐摩擦性を評価した。
[評価基準]
◎:塗布部の剥がれがない(極めて良好)。
○:塗布部の剥がれが少ない(良好)。
△:塗布部の剥がれが少しある(やや不良)。
×:塗布部の剥がれが多い(不良)。
【0077】
<耐水性の評価>
腕に化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、流水で濡らし、指の腹で擦過し、塗布物の残り具合を目視にて観察し、下記評価基準で耐水性を評価した。
[評価基準]
◎:塗布部の剥がれがない(極めて良好)。
○:塗布部の剥がれが少ない(良好)。
△:塗布部の剥がれが少しある(やや不良)。
×:塗布部の剥がれが多い(不良)。
【0078】
<水系液状化粧料の粘度>
25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)を用いて、下記の条件で粘度を測定した。なお、測定時間は1分間とした。
5~50mPa・s:BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:ローターNo.4、回転数12rpm
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
(実施例16:水系液状アイライナー)
(成分) (配合割合(質量%))
1. スルホコハク酸ジエチルヘキルNa 0.4
2. カーボンブラック 8
3. アクリル酸アルキル共重合体液(固形分濃度30質量%) 8
4. ウレタンアクリル複合樹脂エマルション
(固形分濃度30質量%) 20
5. 1,3-ブチレングリコール 10
6. エタノール 3
7. 防腐剤 適量
8. 精製水 残量
【0083】
<製法>
成分1~8をディスパーで混合し、水系液状アイライナーを得た。
【0084】
<評価>
上記で得られた水系液状アイライナーについて、上記と同様に評価を行った。結果は、吐出性が「◎」であり、肌上での塗布状態(1)が「◎」であり、肌上での塗布状態(2)が「◎」であり、耐摩擦性が「○」であり、耐水性が「○」であった。また、水系液状アイライナーの粘度は、7mPa・sであった。
【0085】
(参考例17:水系液状アイブロウ)
(成分) (配合割合(質量%))
1. スルホコハク酸ジエチルヘキルNa 0.3
2. カーボンブラック 3
3. 赤色227号 0.05
4. 黄色4号 0.1
5. 青色1号 0.02
6. PVP 0.4
7. ポリマーエマルションD1(固形分濃度50質量%) 15
8. 1,3-ブチレングリコール 10
9. エタノール 3
10.防腐剤 適量
11.精製水 残量
【0086】
<製法>
成分1~11をディスパーで混合し、水系液状アイブロウを得た。
【0087】
<評価>
上記で得られた水系液状アイブロウについて、上記と同様に評価を行った。結果は、吐出性が「◎」であり、肌上での塗布状態(1)が「◎」であり、肌上での塗布状態(2)が「◎」であり、耐摩擦性が「○」であり、耐水性が「○」であった。また、水系液状アイブロウの粘度は、4mPa・sであった。
【符号の説明】
【0088】
1…容器本体、2…収容部、3…毛筆(塗布体)、20…撹拌子、21…コイルバネ(小径バネ部及び大径バネ部)、100…液状化粧料容器、L…水系液状化粧料。

図1